エンタプライズ発信〜メールマガジン【№104】 2019. 12

気温の低下に伴い、身体機能も緩慢になります。関東ではまだ積雪はないですが、街路では濡れ落葉で危うく滑り転びそうになる人も…。東京消防庁の’17年のデータでは、転倒が原因で救急搬送された65歳以上の人数は約5万5600人にも及びます。全国の話ではありません。東京都内だけの数字です。さらに厚労省の人口動態調査最新データでは、転倒による死者数は年間9673人と記されています。この数字は、転倒し、頭や首の骨を打ち亡くなった人などの関連数だと見られます。転倒をきっかけに寝たきりになったりして、その後、全身が弱って死亡した人は含まれていません。転倒というと階段や段差部分、脚立からの落下などと考えがちですが、じつはスリップ(滑り)、つまずき、よろめきという平坦な場所で多いそうです。具体的な場所は、1)居室・寝室、2)廊下・縁側、3)玄関・勝手口です。そして高齢者が転倒で骨折しやすいのは手首や肘、背骨・仙骨、大腿骨近位部です。骨折部位によっては回復に時間がかかり、寝たきりになりやすいと言えます。他方、「また転ぶかもしれない」「家族に迷惑がかかる」などと外出を恐れて家にこもるようになったり、認知症が進行したりする人も少なくないことも想像に難くありません。日本転倒予防学会によると、転倒してしまう主な原因は、1)年をとることによる身体機能の低下、2)病気や薬の影響、3)運動不足です。それを踏まえた上での予防のキーワードは「ぬ・か・づけ」だと啓発しています。「ぬ」は濡れている場所。風呂場や落ち葉の上、雨の日のマンホールの上などです。「か」は階段、段差のあるところです。敷居や玄関なども要注意です。そして「づけ」。片づけていない部屋です。足場が狭くつまずきやすいからです。「転ばない、そして転んでも骨折しない体づくり」が大切なのは言を俟(ま)ちませんが、最近は介護や福祉現場で職員らが転倒・落下をする事故が多いと聞きます。本末転倒というには厳しすぎますが、転ばぬ先の予知反応が機微には必要かもしれません。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S

★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

ストレス反応は生命保持のため(つづき)

[安保] ずっと免疫学をやってきて、ストレスが強すぎることは危険だという考えがずっとありました。しかしミトコンドリアや解糖系といったエネルギー生成の問題を取り入れることで、体のストレス反応は危機を乗り越えるための条件であり、短いスパンであれば体の間違いではないということに気づいたんです。だけど人間には理性があって、それが逆に自分を追い込んでしまう。それは人間特有の問題だという気がします。
[太田] 動物にも心理ストレスはあるのかな? マウスを狭い檻に閉じ込めたりすると、ストレスで記憶力が低下します。でもそれは人為的な話で、マウス自身の責任感でストレスをためることはなさそうだし、野生動物では心理ストレスはどうなんでしょうね? やはり人間だけ特別なのかな。

がんは低体温、低酸素、高血糖への適応現象

[安保] ストレス反応を長引かせることでさまざまな病気になりますが、その究極が「がん」ですね。がん細胞はストレスで起こる低体温、低酸素、高血糖の状態を長引かせて解糖系エネルギーにシフトしてしまった状態です。
[太田] ワールブルグ効果ですね。がん細胞が、酸素がある状態でも解糖系によってエネルギーを作り出すことを、ドイツの生化学者・ワールブルグが発見しましたね。
[安保] ワールブルグは80年近く前からがんの特徴を掴んでいたんですね。私はそこからがんの成り立ちを考えたのですが、がん細胞が解糖系の世界で増殖していくのは、低体温、低酸素、高血糖という身体の危機的な状況への適応現象なんですね。
[太田] がん細胞から見れば、生き延びる方策であり、その条件を作ったのはほかならぬ人間のストレスの多い生き方ということでしょうか。
がんはまた、歳をとるほどなりやすい病気ということができます。長生きする人が増えれば、がんになる人も多くなります。歳をとるほど細胞の修復能力は衰え、遺伝子が損傷して変異も多くなるからです。
[安保] がん遺伝子を調べていくと、正常な細胞も使っている増殖関連遺伝子や増殖を抑制するための遺伝子であることがわかってきました。つまり解糖系生命体が持っていた分裂遺伝子ですね。これらはがん細胞になるための遺伝子というより、細胞分裂するための遺伝子というべきでしょう。
[太田] がん遺伝子は、細胞を増やすアクセルみたいなものですからね。がん抑制遺伝子はブレーキですよね。がん遺伝子やがん抑制遺伝子に傷がつく確率は、歳をとるほど高まっていくわけです。アクセルもブレーキも壊れちゃうと制御がきかなくなります。遺伝子が傷つくという意味では、老化と同じで避けられないことですよね。
[安保] 日本人の2人に1人はがんという時代ですからね。老人が多い国は、自然とがん大国になるわけです。がんはありふれた病気だし、もはやそれほど怖がる必要もありません。低体温、低酸素、高血糖という状態から脱却すれば、がんは消滅していくのですから。そのためにはストレスをため込む生き方を改めて、ミトコンドリアを増やす生活を送ることですね。


連載vol.62

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

水の検証

細胞の内外に存在する水の研究は、長い歴史を持つにもかかわらずいまだに成果が上がっていない。その原因の一つは、細胞や分子に関する研究のほとんどが、組織を破壊してそれぞれの成分だけを取り出す手法を用いていることである。ここから得られたデータでは細胞の全体像を予測することができず、水がどのような状態で生体中に存在するかを正しく理解することができない。
細胞や分子の表面上で水が規則正しく並び、薄い被膜を作り出すのは、水が電気的に不安定な両極性の分子だからである。水の分子は、電場や磁場の影響を受けると、回転したり一定の方向に整列したりする性質があり、水分子が帯電した別の分子に近づいた場合には、回転するよりも、ある位置や向きに固定される傾向がある。ここで「傾向」という言葉を使ったのは常にこの現象が起きるとは限らないからだ。つまり水分子は別の分子の帯電した部分に完全に固定されるのではなく、電気的勾配が生じる方向に沿って並ぶ性質を持っているのである。この性質は電場の強さや分子間の距離によって強く顕れることもあれば、そうでないこともある。したがって水分子の行動は、相手の分子の電気的構造や集合体としての性質に応じて変化することになる。

このように、水には他の分子を合体させたり、分子の動きを支配したりする重要な役割があるのだが、その重要性はあまり認識されていない。それでも水がどれほど大切な役割を果たしているかは、ヘモグロビンを例にとってみるとわかるだろう。ヘモグロビンのような蛋白質は水溶液中では複数の分子が凝集した状態にあるのだが、尿素溶液中では水分子が尿素分子に置き換わるため、それぞれの分子がばらばらになる。尿素溶液中のヘモグロビンは、ちょうどヘモグロビンの半分の分子量を持つ2つのサブユニットに分かれる。このサブユニットを水の中に戻すと再びヘモグロビンが形成されるのである。
ヘモグロビンは、水溶液中で「自発的に」集合体を形成する蛋白質の1つである。この「自己集合」の例はヘモグロビン以外にもいくつかあり、また鍼療法の経絡や経穴が自己集合によって形成されるという説もあるほどである。
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊)


連載エッセイ 71☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


施術に“魔法”や“マジック”はない?

代替医療の治療者が施術をして驚くような結果がでると、施術を受けている人やそれを見ている人は“魔法”や“マジック”のように感じることがあります。また、施術者自身が「魔法の〇〇法」というように、自分の施術や手法を宣伝する目的でそのような言葉を使って注目を集めようとしたりします。自然治癒力を引き出す施術法に魔法やマジックが本当にあるのでしょうか?

私は長年、代替医療の世界にどっぷり浸かってきた人間です。「なぜ治るのか、なぜ治らないのか」を探求し続けてきました。代替医療の専門教育も長年受けてきました。理論や理屈も大事にしてきましたが、何よりも臨床現場における結果に興味を注いできました。代替医療の中でも本場の米国で発祥したカイロプラクティックには大きな影響を受けています。学生時代から様々なカイロプラクティックのセミナーを受けました。若いころに遭遇した米国のカイロプラクターの施術を目の当たりにして、最初は“魔法”というよりも半信半疑で見ていたことを思い出します。
そして、研修を重ねるにつれて、臨床現場で自分でも同じような結果が得られると、そこから「なぜ、そのような結果」が得られるのかという「本質への探求」が始まりました。捻挫で足を引きずる、あるいは腰痛のために車椅子で来院されるような重度の症状を抱えた患者さんが、普通に歩いて帰ることができるなどの結果がある一方で、結果が伴わない患者さんに遭遇することもあります。「その違いは何か?」という本質的な因果関係への探求は現在でも大きなテーマです。

魔法のようにも思える施術法の本質は何か? そもそも、なぜ魔法のように感じるのか? それは多くの人々の考え方、受け止め方が現代医学の「科学信仰」に基づいてい
るからです。代替医療の多くは特に目には見えない「生体エネルギー」を対象にして施術を行っているので、そのような施術で効果が現れれば、「あら不思議」「魔法みたい」となるわけです。折れた骨をつなぎ合わせる、飛び出た軟骨を取り除く、あるいは詰まった血管の通りを良くするなど、目で確認できる施術は何の不思議もありません。当たり前の治療になります。

代替医療の中で、自然治癒力を引き出すことを目的に施術を行っている治療者は、多かれ少なかれ目には見えない生体エネルギーを基本に施術を行っているはずです。もしも、そうでなければ、それは現代医療の考え方に基づいて目に見えるモノを対象に施術している可能性があります。現代医学の医師と同じ目線で症状を捉えているということになるかもしれません。もしかすると、現代医学に基づいた考え方だからこそ安心感を覚え、あるいは当たり前の考え方として感じる人も少なくはないかもしれません。言い換えると、現代医学とは、異なる考え方で症状の因果関係を説明されると“怪しい”ということになり、たとえ施術で症状が改善してもそれは“不思議”となるのかもしれません。

多くの人たちにとって現代医学の考え方は“当たり前”になっています。そして、その考え方から外れた考えで施術効果が現れると“魔法”や“マジック”のようだとなるわけです。もしも、目には見えない生体エネルギーによって、私たちの身体の働きが調整されているのだということが当たり前の考え方になれば、代替医療の施術は至極当たり前の療法になるのですが、科学が主流の現代医療の世界において、目には見えないモノを信じるということはまだまだ難しい課題だということができます。

連載…11

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

〔バウンダリーに注意する〕
あなたに対して恋愛感情を抱いているクライアントは、あなたと遊びたいのでちょくちょく誘い出します。そういうクライアントが求めているのは、ふつうよくあるギブ・アンド・テイクといった社会的な関係ではなく、自分が大切に扱われるセラピューティック・リレーションシップの延長のようなものです。ですからオフィス以外での場所でクライアント(特に恋愛感情を抱いているクライアントに関しては間違いなく)と会うというのは、いいこととは言えません。もしあなたがそうしたいという衝動に駆られたら、自分に正直になりなさい。あなたはクライアントを弄んでさらに深い関係になりたいと思っていますか? もしクライアントがあなたをパーティに誘って、そこにあなたが現れたら、あなたはそのクライアントに興味があるというメッセージを送っているように思われたりしませんか。あなたはその関係を、プロとしてのバウンダリー(プロとしての存在や立場、関係を取り囲む防護壁)の中に留めておいて、クライアントのはかない気持ちを尊重する必要があります。

肯定的転移:特別なクライアント

あるクライアントは別格で、ほかのクライアントと違うと思ったり、デートしたいという願望に駆られたり、ほかの人にはあなた方2人が共有する「特別な感情」は理解できないだろうと思ったり……これらはすべて危険信号のサインです。クライアントに対して強い感情を持つというのは、逆転移(施術者が自分の感情などをクライアントに転移させること)の現れなのです。もし、2人の間にある恋心が強いものであると思ってルールを破ることさえ正当化するときは危険な状態です。大きなトラウマになって禍根を残すこともあり得ます。同僚の話を取り上げてみましょう。
《 ある女性が、女性のボディワーカーから数か月にわたってセッションを受けている間に、その女性の中に強烈な転移の感情(彼女は施術者に夢中になっていた)が育っていたことを話してくれました。彼女曰く、その施術者も彼女に惹かれていて冷静さを失っているような感じだったと言います。この関係は徐々に不適切なものへと発展していき、セラピーと称して、セラピストはクライアントの胸や性器を数セッションにわたって触っていました。結果的に、クライアントは心身ともにたぶらかされ、傷つけられたように感じてしまいました。彼女の中にある羞恥心と罪悪感とが入り混じった混乱した気持ちはとても強かったため、この関係について誰にも話すことができませんでした。彼女は匿名でいられるSNS上でのアンケートに対する返答の中でしか、このことのついて語ることができなかったのでした。》

たとえどんなにクライアントが魅力的でも、あなたがどんなにこの関係が平等なものだと思っていたとしても、施術者はプロとして良いバウンダリーを守る責任があります。あなたが不適切な感情に赴くままに行動すると、結果的にクライアントを傷つけることを憶えておきましょう。
(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )

◆連載25◆

『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く

孫 維良(東京中医学研究所所長)

「自信を取り戻すひとりあんま気功」

・全身の働きを強化する
中国では昔から腎を「先天の本(もと)」と呼んできました。先天の気は腎に蓄えられ活力の源となります。ですから全体的に体力の衰えを感じてきたら、重点的に腎の機能を強化する必要があります。そこでその対策を紹介しましょう。あんま気功法では、特に足腰に衰えを感じている人に有効です。
①まず腰眼(ようがん)というツボを刺激します。腰眼は第4腰椎の下の窪みから指の横幅4本分ほど横の左右にあります。指を揃えて、腰眼の位置を確かめたうえ、両手とも拳を作って親指の付け根の下のふくらんだ部分を腰眼につけ、円を描くように押し揉みます(最初は軽く徐々に力を入れて押し揉みしましょう)。ツボの周囲に、だるい、温かいなどの感覚が出てくるまで続け、その後も30秒くらい続けます。腰眼は経絡のコースから外れたツボの一種ですが、ここを刺激すると腎機能を強くし、腰を強化することができます。
②臍のほぼ真裏、第2腰椎の下の窪みに、体の活力をよみがえらせるツボ・命門(めいもん)があります。このツボの上に右手の平を置き、その上に左手の平を重ね、円形を描いて時計回りに20回まわしながら命門の周囲をさすります。まわすたびに少しずつ円を大きくしてください。20回まわしたら今度は逆回りに20回まわします。
③両手をこすり合わせ、手が温かくなったら命門から親指の横幅1.5本分ほど横にある腎兪(じんゆ)というツボに手を当て、腎兪から尾骶骨の両脇まで、腰椎の横を両手の平で押しさすります。左右の腎兪→尾骶骨の両脇のコースを約2分間マッサージしてください。

腎兪は腎経の気が集まる要所ですから、ここを刺激すると腎の機能を高めることになります。この①-③の方法は、精力減退、インポテンツなどにも効果があります。なお本法は立っても、椅子に座ってやってもかいません。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(78)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■患者の年齢・罹病期間や症状の内容・日常生活と仕事への影響・過去の治療に対する反応は急性腰痛の治療において重要である。病歴聴取によってレッドフラッグ(危険信号)を確認できる。特に55歳超の患者にとっては重要。http://amzn.to/Hk8veA
……言うまでもなく急性腰痛の初期評価は、画像検査よりも問診(病歴聴取)の方がはるかに重要だということです。

■馬尾症候群の症状と徴候、広範な神経症状、重度または進行性の運動麻痺は、重篤な神経系疾患を示す危険信号である。年齢に関連した重大な外傷歴(若年者の高所からの転落や交通事故、骨粗鬆症や高齢者の転倒など)は骨折の可能性を示唆する。http://amzn.to/Hk8veA
……これらのレッドフラッグがある場合は生物学的問題ですから専門医へ紹介しなければなりません。特に馬尾症候群は緊急を要します。けっして見逃すことのないように注意しましょう。

■心理的・社会的・経済的問題などの非身体的因子は評価と治療を複雑にする可能性があるため、初期評価の時点で患者の生活における心理的・社会的・経済的問題などを探る必要がある。http://amzn.to/Hk8veA
……このイギリスのガイドラインが発表された1996年の時点で、すでに心理的・社会的・経済的問題に目を向けるよう勧告が出ているのです。日本はいつまで患部に目を奪われているつもりなのでしょう。このままでは患者が増える一方です。

■若年成人の坐骨神経痛においては、SLR(下肢伸展挙上)テストを行ない記録する必要がある。脊柱管狭窄のある高齢者においては、SLRテストに異常が見られないことが多い。http://amzn.to/Hk8veA
……高齢者の場合はSLRが陰性というのも不思議ですけど、勉強不足のためかSLRの意義がいまいち良く分かりません。SLRでヘルニアの存在が確定できるわけではありませんし、痛みを誘発させる検査は心理的に好ましくないのではないかとも思います。いずれにしても最近の腰痛診療ガイドラインではほとんど重視していません。

■神経障害の検査ではアキレス腱反射と膝蓋腱反射、足関節と母趾の背屈力、感覚に関する愁訴の分布に重点を置く必要がある。http://1.usa.gov/Ht6ICY
http://1.usa.gov/HyhYli http://1.usa.gov/HvJ3Gv
……これも最近の腰痛診療ガイドラインではあまり重視していませんが、稀に重篤疾患が潜んでいるかもしれませんので初期評価としてはありでしょう。特に知覚麻痺には気をつけなければなりません。

■画像検査についてはエビデンスをA〜Dの4段階で評価したAHCPRの『成人の急性腰痛診療ガイドライン』を踏襲している。臨床検査で危険信号が認められない限り、発症後1ヶ月以内の腰痛患者に単純X線撮影は推奨されない(B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……全腰痛患者でレッドフラッグ(危険信号)が認められるのは10%未満ですから、日本の整形外科医が腰痛診療ガイドラインの勧告に従えば画像検査実施率は1/10になるかもしれません。大幅な医療費の節約にはなりますが、経営が成り立たなくなる恐れもあります。実に歯がゆい問題です。

 N  E  W  S

NEWS ■ 記憶力や認知力の向上にヨガが脳に与える効果

近年注目されているアクティビティの1つであるヨガが脳にどのように影響を与えるのかは、まだあまり知られていないところ。イリノイ大学でキネシオロジーと地域医療について研究するネハ・ゴーテ教授らの研究チームは、過去に行われた11の科学研究を総合的に分析し、ヨガと脳の健康の関係について明らかにしました。
ゴーテ教授らが評価を行った11の研究のうち5つは、ヨガ経験のまったくない被験者に10〜24週間にわたって週一度以上のヨガを実践してもらい、実験前と後でどのように脳が変化したかを観察するという内容でした。そして残り6つの研究は、定期的にヨガをやっている人と、そうでない人との脳の違いを測定するという形で実施されました。
いずれの研究においても被験者が行ったのは身体活動を含むハタ・ヨガであり、脳の測定にはMRIやfMRI、単一光子放射断層撮影などが用いられました。
複数の研究を評価した結果、まずヨガの実践によって海馬が大きくなることが示されました。認知症やアルツハイマー病になったとき、真っ先に影響を受けるのが海馬です。さらに、ヨガを実践している人に見られる脳の変化は、認知テストや感情制御のパフォーマンスの向上と関係していることも示されました。
研究者は、ヨガが脳へポジティブな影響をもたらすカギは「感情の制御」ではないかと考えているとのこと。ゴーテ教授は、「過去の研究で私たちはヨガがどのようにコルチゾールのストレス反応を変えるかを観察しました。実験の結果、8週間にわたってヨガを実践した人はストレスに対するコルチゾールの反応を弱めました。これは、意志決定・タスク切り替え・注意といったテストのパフォーマンスの向上と関連しているとみられています」と語っています。
(12/16 Gigazine)

NEWS ■鉢植え植物は治療院の空気をきれいにする?

鉢植え植物に室内の空気の質を良くする効果は期待できないようだ。自宅やオフィスの空気の質を良くするには、室内に植物を置くよりも自然換気を行う方がはるかに高い効果が得られることが、米ドレクセル大学建築環境工学准教授のMichael Waring 氏らによる研究で示された。この研究結果は、「Journal of Exposure Science and Environmental Epidemiology」11月6日版に掲載された。
今回の研究は、過去30年間に実施された、鉢植え植物が室内の揮発性有機化合物(VOC)量に及ぼす影響を検討した12件の研究結果を分析したもの。Waring氏らは、これらの研究から得られたデータをクリーンエア供給率(CARD)と呼ばれる空気清浄機の性能を表す指標に換算した。
分析の結果、自然換気か換気装置によるものかにかかわらず、換気によって室内のVOC濃度が低下する速度は、植物が空気中からVOCを除去する速度を大幅に上回っていることが明らかになった。
結果を受けてWaring氏は、「鉢植え植物が部屋の空気をきれいにするというのは、かねてより信じられてきたよくある誤解の1つだ。植物に優れた力があるのは確かだが、自宅やオフィスの空気の質に効果をもたらすほど素早く室内の空気を清浄化することはできない」と述べている。
(12/13 Care Net)

NEWS ■若いのに”老人歩き”する人が全身不調になる訳

健康のために1日1万歩を目指す方も増えていますが、歩き方によっては曲がった釘をガンガン打ち続けていることと等しい行為で、体を壊しかねません。猫背で首を突き出した、ゆるゆる歩き。いわゆる「老人歩き」を続けていると、いろいろな弊害が出てきます。
まずは筋力が落ちてしまいます。私は老人歩きのことを別名「省エネ歩き」とも呼んでいます。使う筋肉が少なく、どんなに歩いてもエネルギーを使わない歩き方のことです。
使う筋肉に偏りがあるのも「省エネ歩き」の特徴です。とくに背中やお尻といった体の後ろ側についている筋肉をちゃんと使わず歩いてしまうので、どんどん弱くなります。使わない筋肉は弱るだけでなく、硬くなっていくので、背中側に痛みが出やすくなります。
また、骨盤と繋がっている股関節の可動域が悪くなり、左右差が出やすくなります。股関節のトラブルは膝のトラブルと直結するので歩くと太ももの付け根だけでなく膝が痛くなったり歩いただけなのにすぐに疲れてしまうようになります。もう負の連鎖でしかありません。多くの人が痛みをかばい、それを補う方法を勝手に編み出します。かばう歩き方を続けると、体の歪みはどんどんひどくなります。
問題は痛みだけではありません。筋肉がしっかり動くことで血液やリンパが流れやすくなるので、体の機能を正常に動かすためにも筋肉はちゃんと使わなくてはいけません。「質のいい歩き方をちょこっとずつ」を意識して積み重ね、無意識にできることを目指しましょう。習慣になれば、歩くだけでバランスのいい筋トレを勝手に行う体が手に入ります。
(12/10 東洋経済オンライン=部分)

NEWS ■寝室の明るさが動脈硬化と関連…睡眠中は暗い方が良い?

夜間の寝室の照明が明るいほど動脈硬化が進行する可能性が報告された。奈良県立医科大学疫学・予防医学講座の大林賢史氏らの研究によるもので、詳細は「Environment International」10月号に掲載された。
ヒトは昼と夜が24時間周期で繰り返される環境で進化してきた結果、「概日リズム」という生理機能が備わっている。そのため、夜の不適切な明るさは「光害」として概日リズムを乱す可能性があり、これまでにも夜勤労働者で肥満や高血圧、糖尿病のリスクが高いことが報告されている。今回発表された論文は、夜間の寝室の明るさと動脈硬化の進行の関連を、縦断的に研究したものだ。
前向きコホート研究「平城京スタディ」に登録されている60歳以上の地域住民を追跡調査(観察期間中央値34カ月)、対象者数は989人で平均年齢71.4±6.9歳、男性が47.2%、寝室の明るさは、最も暗い第1四分位群が平均0ルクス、第2四分位群は0.3ルクス、第3四分位群は1.6ルクス、最も明るい第4四分位群は9.3ルクスだった。
大林氏らは「夜間の寝室の明るさが動脈硬化の進行と関連していることが示された。この関連は、年齢や肥満、喫煙、高血圧、糖尿病など、既知の動脈硬化危険因子とは独立していた」と結論をまとめている。
(12/10 Care Net)

NEWS ■ヘディングの影響…サッカー選手は認知症になりやすいのか

ボクシングやアメリカンフットボールなど、頭部外傷のリスクが高いスポーツ選手では、数カ月から数年を経て脳の異常をきたすケースが知られています。世界的に人気の高いサッカーは安全性の高いスポーツという印象もありますが、選手の健康状態について、詳しい研究報告は限定的でした。そんな中、世界的にも有名な米国の医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、元サッカー選手の健康状態について調査した研究論文が11月7日付で掲載されました。
この研究では英国(スコットランド)の元サッカー選手7676人と、年齢、性別、社会経済的状況が同等な一般人口2万3028人を18年にわたり追跡調査して、死亡リスクを比較検討しています。
解析の結果、元サッカー選手は一般人口と比べて、心臓病による死亡リスクが20%、肺がんによる死亡リスクが47%、統計学的にも有意に低いという結果でした。また、元サッカー選手における認知症治療薬の処方状況について解析したところ、元フィールドプレーヤーよりも元ゴールキーパーで治療薬の処方が少ないという結果でした。
(12/8 日刊ゲンダイ)

NEWS ■深い眠りが脳の老廃物の除去に有効

深い眠りについている状態であるノンレム睡眠中に、脳内の有害物質が洗い流されている可能性が米ボストン大学のLaura Lewis氏らの研究で示唆された。今回の研究では、ノンレム睡眠中に脳波が徐波化し、それを受けて血液の振動が起こり、次いで脳脊髄液が律動的に脳内を出入りすることが示されたという。この研究結果は「Science」11月号に発表された。
これまでの研究で、代謝の過程で生じる副産物が脳内に蓄積しないように脳外へ除去するプロセスにおいて、脳脊髄液が重要な役割を果たしていることが示されていた。また、このプロセスは睡眠中に活発になることも分かっていた。しかし、その機序や理由については不明な点が多く残されていた。
そこで、Lewis氏らは今回、11人の健康な成人を対象に、非侵襲的な方法を用いて睡眠に関する研究を実施した。研究では、MRIを用いて脳脊髄液の流れを観察し、脳波によって脳内の細胞の電気活動を測定した。
その結果、ノンレム睡眠の中でも大きくゆるやかな波が現れる深い眠りの段階である徐波睡眠中の研究参加者において、脳活動で徐波が起こるたびに血流の速さや量が変動し、脳脊髄液が大きな振幅を有する波として脳内の隙間に流れ込んでいることが分かった。
今回の報告を受け、睡眠の専門家らは「これまでに明らかにされている脳脊髄液の働きを踏まえると、徐波睡眠は脳内の老廃物の除去を促していると考えるのが妥当」とする見解を示している。
(12/5 HealthDay News=部分)

NEWS ■コーヒー摂取で腸内環境が改善する

コーヒーを摂取すると、腸内細菌叢のバランスが改善する可能性があることが、米ベイラー医科大学消化器内科准教授のLi Jiao氏らが行った研究で明らかになった。研究の詳細は、米国消化器病学会(ACG)で発表された。
Jiao氏らは、カフェイン摂取と腸内細菌叢の組成との関連を調べる研究を行った。なお、これまでは便サンプルを用いた研究が多かったが、同氏らは今回、大腸内視鏡検査中に、結腸のさまざまな部位から組織の一部を直接採取して、腸内細菌叢の組成を分析した。また、食物摂取頻度調査票を用いて、カフェインの摂取量について尋ねた。
研究では、34人の参加者から採取した97カ所の生検サンプルを分析。その結果、過去1年間にコーヒーを1日2杯以上飲んでいた人は、それ以下か全く飲まなかった人と比べて腸内細菌叢のバランスが優れていたことが分かった。また、コーヒーの摂取量が多い人の腸内細菌は種類が豊富で、大腸全体により広く、均一に分布していることも明らかになった。
Jiao氏は「コーヒーが腸内細菌叢に良い影響を及ぼす理由は分かっていない」としながらも、「カフェインなどの一部の成分が細菌の代謝に影響を与え、その代謝の最終産物が体と相互作用している可能性がある」と説明。「1日1〜2杯のコーヒーは安全で、健康に保護効果をもたらす可能性がある。コーヒーが好きなら、我慢せずに楽しんで欲しい」と付け加えている。
(12/3 HealthDayNews)

NEWS ■「天候は関節痛に影響する」は本当か

英マンチェスター大学のWill Dixon氏らが、同国の慢性疼痛患者を対象に、スマートフォンを用いた調査を実施したところ、湿気が高い日と風が強い日には関節の痛みが増す可能性があることが分かった。一方、痛みの程度と気温との間には有意な関連はみられなかったという。「NPJ Digital Medicine」10月号に掲載された。
この研究は、関節炎や線維筋痛症、片頭痛、神経障害性疼痛を有する英国人の慢性疼痛患者2657人(平均年齢51歳、女性83%)を対象としたもの。参加者には、スマホアプリを用いて、関節痛の症状の程度を毎日記録してもらった。次に、スマホのGPS機能から得た位置情報を用いて地域の天候を特定し、痛みの程度と関連づけた。これらのデータは約6カ月間にわたり収集された。
その結果、乾燥した日よりも湿度が高い日には、関節痛の重症度が高まることが分かった。また気圧が低い日や風速が強い日にも痛みは強まったが、これらの天候条件のうち「湿度」が痛みの強さと最も強く関連していた。一方で、気温と関節痛の重症度との間には明らかな関連は認められなかった。しかし「湿度が高くて寒い日」や「風が強くて寒い日」には、痛みはより増す可能性が示された。なお、雨と痛みの強さとの間に関連はみられなかった。
ヒポクラテスの時代から、天候は関節炎の症状に影響すると考えられてきた。今回の研究では、試験開始時点で、対象患者の4人に3人は「天候は関節痛の症状に影響する」と信じていたことも判明した。
(11/21 HealthDay News=部分)


■1年間のご講読ありがとうございました。来年は新連載を含め企画増進に努めますので引き続きご後援のほどよろしくお願いいたします。佳き新年をお迎えください。

■次号のメールマガジンは2020年1月15日ごろの発行です。

(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ