エンタプライズ発信〜メールマガジン【№103】 2019. 11
サービス業で大切なのはお客様に対する笑顔だと言われます。特に初来院のお客様にはビジネス・スマイルと言われる、お迎えする気持ちが視覚化された「明るさ」が伴うことが望まれます。ビジネス・スマイルは、口の形を「イー」を発音するときの形にするとよいことはご存知のことと思います。ここで重要なのは、挨拶をする前には、すでにこの笑顔になっていることです。お客様の心にスムーズに入っていくための、助走のような役割になります。笑顔は「柔らかい微笑み」が基本だと接待の専門家は言います。口の端を軽く上にあげる。頬にほんのり膨らみが出て、穏やかな表情になります。これは微笑んではいるけれども、相手との関係をニュートラルな状態にしやすい相好だと言います。こちらの意見をきちんと伝えるときは、「なるほど。しかし…」とスムーズに切り返しができるのだそうです。注意点は、初診のあいだずっと微笑んでいると、かえって感情が伴っていないようにも見えるので、同意するときはしっかりと頷き、眉を上げたりすることなどで表情にメリハリを、とのことです。そして治療が終わって相手との別れ際は、歯は見せずに「強さ=毅然さ」が感じられるキリっとした笑顔がふさわしいとも。この時点でニコニコしているのは治療家の威厳として締まりがない、と自意識を持っておくことが大切です。要訣としては、仕事で笑顔を使い分けるようにするには、日ごろから、自分の笑顔を意識しておくことです。もし、目の前の相手の顔が暗いと思ったら、それは自分が笑っていないことの証拠だと手厳しいです。笑顔は「危害を加えない」というサインとも言われるほどです。太古の時代から笑顔は必要とされてきました。日々自分たちの縄張りを、他の部族が侵略しないように警戒をしている中で、敵に出会ったときに、笑顔は即座に危害を加えないというサインであり、合従連衡を図る上ではとても重要だったはずです。それは現代のお客様商売やビジネスにも当てはまることは言うまでもないと思います。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S
Information
〜カラダみつめる習慣がテーマ〜
一般社団法人日本統合医療学会 統合医療女性の会は「みんなの統合医療カフェ」を2013年より定期的に開催しています。今回は、女性特有のホルモンバランスの影響で定期的に生じるさまざまな「ゆらぎ」への対応を主題として、同会の監修による冊子『カラダみつめるNOTE』を使って、体調のゆらぎとの上手な付き合い方を総監修者・板村論子氏がわかりやすく解説いたします。
- 11月30日(土)14:00〜15:30(受付開始=13:30)
- 日本赤十字看護大学 205号室(東京都渋谷区広尾)
- 参加費:3000円(参加者には『カラダみつめるNOTE』を進呈)
- 詳しくは http://aimw-r.com/
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老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)
生き方の偏りで病気になる
[太田] 安保先生は白血球の自律神経支配について数多く発表されていますが、自然の摂理に適った生体反応と言えますね。
[安保] はい。正常な反応においては、体を守るための仕組みですね。人間の生き方に偏りが生じると、つまり交感神経を過度に刺激しつづけたり、逆に副交感神経が優位になり過ぎるような楽な生活をつづけていても、病気になるということです。
特に現代人に多いのは、ストレスをため込むことによる生活習慣病です。ストレスにより交感神経緊張がつづくことで、アドレナリン分泌が促され、顆粒球が増殖し血管は収縮します。血管収縮による血液障害が低体温・低酸素をもたらして、がんや脳梗塞などの原因となるわけですね。
[太田] 体のエネルギー経路でも同じことが起こります。活性酸素が発生する最大の原因はストレスであると言いましたが、ストレスを受けて分泌されるストレスホルモンによって血管が収縮し、血圧や血糖値が上昇します。この上昇により酸素と糖分が不足するので、急速な供給が必要となり、無理をしてでもエネルギーを作りつづけようとします。そこで酸素が不足してくるのですが、苦しい状態は長つづきしないので、ふと緊張が途切れてしまう。そのときに活性酸素が大量発生するわけです。こんな状態を繰り返すことが老化の進行を速めたり、病気の原因となってしまいます。
ストレス反応は生命保持のため
[安保] 本能だけで生き延びている野生動物であれば、そういったストレス反応もプラスに使っていると思います。草食動物が肉食動物に追いかけられて命からがら血も凍る思いで逃げるときは、やはり交感神経の緊張状態で、低酸素、低体温、高血糖となります。これは瞬発力の解糖系エネルギーを発揮するには最高の条件になっていて、生命保持の一瞬のために活用しているんです。
[太田] 動物の場合は、本当に必要なときだけストレス反応を使ってうまく生き延びているのでしょう。ライオンに狙われたシマウマが運悪く捕まってしまったとしても、そこで命は終わるので無駄にストレスをためることもないわけです。
[安保] 人間の場合は、生命保持という大事なときだけ使うのではありませんからね。限界を超えて頑張りすぎるとか、気真面目に悩みすぎるとかそんな状態が長引いていく。低酸素、低体温、高血糖の状態が長引けば生命の危機につながっていきます。
[太田] 瞬間的な解糖系エネルギーの発揮というのは、火事場の馬鹿力ってやつですね。一瞬だったら効果的なんですけど、それを長引かせると破綻してしまいます。血管を収縮して血液が滞るわけですからね。
連載vol.61
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
水の層
生体中の各分子は、整然と並んだ水とイオンから成る膜で覆われている。水の層が鎖のようにつながって並ぶのは、蛋白質の帯電部位に生じた電場によって引きつけられるからである。この水の層は複数の層から成り、それぞれの層には異なった性質がある。例えば、蛋白質分子に引きつけられて強く束縛された水分子は、真空状態で高温まで加熱されても遊離しない。次の層の水分子は蛋白質分子の表面で規則正しく並んでいるが、上の層になればなるほど規則性が失われていく。
ポラック(Pollack)の論文には、さまざまな物質や分子の表面に対する水の「凝着力」について調べた研究がまとめられている。水の凝着力とは、例えば顕微鏡観察に用いるスライドガラスを2枚重ね合わせたときを考えるとわかりやすい。乾燥した状態のスライドガラスが重なったときには簡単に離すことができるが、重なり合った面の間に1滴でも水が入ると、2枚を離すことができなくなる。
このような現象に関与する力を調べるため、イスラエラチビリ(Israelachvili)の研究グループは、水で濡れた面を引き離すのに必要な力を実際に測定した。その結果、2つの濡れた面が接近するほど、それらを離すにはより大きな力が必要だが、2面の間隔と引き離す力の関係は単なる比例関係ではないことが明らかになった。2面を離すのに必要な力は、2面の間隔に対して周期的に大きくなったり小さくなったりするのである。そこで、最も大きな力が必要になる周期を調べてみると、2面に挟まれた水の分子径に相当することがわかった。
つまり、物質の表面に強く密着した水の層の上に第2の水の層が密着し、またその上に第3の層が密着して、というふうに2面の間に挟まれた水は何層にも重なり合っているのである。イスラエラチビリらの実験では、挟まれた水の層の数に応じて、2面を引き離す力のピークが8-10回認められた。セント・ジョージが行った実験によると、2面の間隔が500ナノメートルほどになるまで水の凝着力が確認されており、水の分子径から計算すると、数百もの層ができていることになる。
従来の生物学では、水は空間を満たすための充填剤や、重要な生化学反応を担う分子を遊離させておくための溶媒であると考えられてきた。たしかに水は生体の各所に存在する普遍的な溶媒である。しかし溶媒としての機能以外に、生体中のあらゆる分子に密着した水は、きわめて規則性の高い構造で薄い被膜を作り出し、生命維持に欠かせない複雑な機能を果たしているのだ。分子に付随する水とイオンは、分子との相互作用によって特殊な性質をもつようになる。そして水とイオンが作り出す連続体が、高分子の構造や機能を維持したり、エネルギーと情報の伝達を助けたりしているのである。
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊)
連載エッセイ 70☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
運動や仕事などにおける「パフォーマンス低下」
あなたの人生で、こんな経験はありませんか?
「今まで上手くできていた〇〇が、なぜか今までどおりにできなくなった」、「今まで〇〇がスムーズに進んでいたのに、なぜかやる気が起きなくなった」「練習のときには問題ないが、いざ本番になるといつものような力が発揮できない」などです。
身体の不調に連動して運動や仕事などのパフォーマンスが低下するという場合も少なくはないですが、身体の不調は感じていないのになぜか運動や仕事のパフォーマンスが低下していたことがあるという経験は多くの人にあるようです。このような原因不明の「パフォーマンス低下」は、単に精神面が弱いといった精神論の問題ではないことが多いのです。
運動や仕事などのパフォーマンス低下で相談を受けて施術を行うと、ほとんどの患者さんは本来のパフォーマンスを取り戻すことができているようです。一体何が原因なのでしょうか? それは個人によって様々ですが、一括りにいうと「脳の誤作動記憶」です。私たちの脳は約千億もの神経細胞からなる複雑で巨大なネットワークでプログラム化され、運動や仕事のための様々な情報を入力して学習と記憶を繰り返し、様々なパフォーマンスが自動的に出力できるよう機能しています。もしも、本来機能するはずのパフォーマンスを制限するような誤作動記憶が脳で無意識的に構築されると、脳の機能が制限されてパフォーマンス低下につながります。
身体の痛みやコリ、違和感などの身体的不調は、身体が訴えているサインです。施術経験のある方であれば、調整すればすぐに改善されると思っていただける方が多いかと思いますが、パフォーマンス低下の場合、それが施術の対象になるのか否かは分かりにくいところかもしれません。一つの目安として、「今まで当たり前のようにできていたことができなくなった」と感じたら、「身体に聞く検査」をすれば、それが「脳の誤作動記憶」によるパフォーマンス低下なのかどうかがすぐに分かります。
「脳の誤作動記憶」が過去のトラウマや無意識的なストレス、人間関係などに関係しているかもしれません。特徴として意識的にはほとんど気にしていないが、よくよく考えると関係しているかもしれないというような内容の記憶が多いようです。施術によってパフォーマンス低下が改善した患者さんの多くが、単にそのことだけでなく他のことにも波及してプラスの効果を感じてくださるケースが多いのも特記できる特長です。
円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
〔その感情を個人的なものとして受け止めるな〕
クライアントがあなたに対して純粋な恋愛感情を抱いたからといってうろたえたり、喜んだりすることはないと思います。あなたはクライアントがそのような感情を持っているからといって、その人に対して今までよりも冷たく、よそよそしく接するようなことはしないと考えるに違いありません。
純粋な恋愛感情は、クライアントが私たちのことを信頼しているというふうにも受けて取れます。そのクライアントはあなたが安全な人だというように判断のですから、それ以上の感情を作り出すことをするべきではありません。あなたにとっても、じっとあなたを見つめてくれて、あなたの言うこと一言一言をじっと聞き、冗談にも笑ってくれる人がいればうれしいはずです。でもそんなことでのぼせあがってはいけません。クライアントは、あなたがその役割にいるから特別な感情を抱いているのであって、日常生活でのあなたに対してそのような感情を持っているわけではないということをしっかりと肝に銘じておかなくてはなりません。どんなクライアントに対しても、集中力を切らさず、敬意を払えるようにベストを尽くしてください。
もしクライアントの思いが、あなたにとってありがたくないものであるときは、問題はあなたが抱いた不快な感情の中にあるのであって、クライアントの感情にあるのではありません(ここではクライアントがバウンダリーを踏み越えていないと仮定して)。そういう場合は、信頼できる先生か、メンタルヘルス専門のカウンセラーと話をしてみて、この経験をあなたやクライアントにとって健全になる学習の機会になるように努力しましょう。
〔不適切なクライアントからあなた自身を守れ〕
時にあなたは自分の身を守る必要がある場面に遭遇します。もしクライアントがあなたに不適切に触ってきたり、ちょっかいをかけてきたり、デートに誘ってきたりした場合は、その恋愛感情は純粋なものだと思わないほうがいいでしょう。そのようなクライアントには、はっきりとしたリミットを設定する必要があります。まずはじめに、そうした行動はセッションの中では適切ではなく、またあなたがクライアントとはデートをしないことをはっきりとさせてください。そしてその後、セッションを続けたり、そのクライアントに対してワークすることがあなたにとって何ともないようでしたら、そうすればいいでしょう。しかし、もしクライアントがあなたをぞんざいに扱ったり、彼のことが信用できなかったり、あまり気が進まないようでしたら、そこでセッションを終えたいということ、またもうセッションを受けに来てほしくないことを彼に告げてください。(つづく)
(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )
◆連載23◆
『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く
孫 維良(東京中医学研究所所長)
・全身の症状を改善する耳のひとりあんま
耳には全身のあらゆる器官とつながった、たくさんの反応点があることは読者もご存じでしょう。耳を押しただけで体のどこが悪いのかがわかるだけではなく、耳をくまなく刺激すると、体中のいろいろな場所の痛みや不快症状を一斉に緩和することができます。
つまり、耳のひとりあんまは体中の病気を改善したり未病を目指すことのできるオールマイティな健康法なのです。もちろん生活習慣病の緩和にも役立ちます。
では、中国で大変人気のある耳全体を刺激するひとりあんまを紹介しましょう。誰でも簡単にできるあんま気功法ですから、ぜひ一度試してみてください。ただし耳は柔らかく傷つきやすいので、前もって必ず手を洗い、爪は切っておきましょう。
① 楽な姿勢で椅子に座って、両手の平をこすり合わせます。手が温かくなったら、両手の平を両耳に当て、耳たぶから上に向かって、耳の形に沿って楕円形を描くように耳全体をこすってください。まず前まわりに15回こすり、次に後ろまわりに15回こすりましょう。耳の表側をこすり終えたら、裏側も同じようにこすりましょう。
② 人差し指を耳の穴に軽く入れ、左右の親指の指面を左右の耳たぶの後ろ側(の中央)に当てます。そのまま前まわりと後ろまわりに各30回、指をまわします。
③ 両手の親指を除く4本の指を軽く握ります。握った人差し指の側面と親指の指面で耳の外縁の上の方をはさみます(親指は耳の外縁の真ん中にある凹んだ溝に当てます)。そして両方の耳を上の端から下の端まで上下に揉みさすります(親指は凹んだ溝に沿って下降します)。約30秒間続けてください。
④ やはり握った人差し指の側面と親指の指面とで耳の外縁をはさみ、前方(顔の方)に引っ張ります(耳の穴に、耳で蓋をするような形になります)。この動作を、外縁の上の端から下の端まで約30秒間繰り返してください。
⑤ 同じく握った人差し指の側面と親指の指面で耳たぶをはさみ、耳たぶを下へ30回引っ張ります。
⑥ 耳のつけ根の内側のいちばん上端にある三角形の窪み(三角窩)に人差し指を当て、指面で約30秒間押しこすります。
この①〜⑥を毎日2回、朝晩つづけてください。頭も軽快になります。
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(77)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■急性腰痛の治療法に関するエビデンス(科学的根拠)はすべて体系的レビューかRCT(ランダム化比較試験)で判断し、急性腰痛の疫学・評価・自然経過・合併症などに関するエビデンスは前向きコホート研究に由来している。http://amzn.to/Hk8veA
……体系的レビューとは、RCTを中心に世界中の臨床試験を収集し、批判的吟味を行ない、統計学的に統合すること。RCTとは、臨床試験等におけるデータの偏り(バイアス)を軽減するため、被験者をランダム(無作為)に処置群(治験薬群)と比較対照群(プラセボ群など)に割り付けて評価を行なうこと。前向きコホート研究とは、大規模集団を長期間にわたって追跡調査し、仮説要因と疾病との関連性を分析すること。
■トリアージ(診断用分類)は「非特異的腰痛」「神経根症状」「重篤な脊椎病変の可能性(レッドフラッグ)」の鑑別診断であり、専門医への紹介・検査・管理を決定する根拠となる。トリアージは病歴聴取と理学検査で行なわれる。http://amzn.to/Hk8veA
……腰痛疾患を詳細な病歴聴取と簡単な理学検査で3つのカテゴリーに分類するという考え方は、この時点(1996年)で確立されたと言っていいでしょう。
■非特異的腰痛とは、「発症年齢が20〜55歳」「腰仙部・臀部・大腿部の痛み」「メカニカルペイン(動作によって痛みの程度が変化する)」「患者の状態は良好」で、専門医へ紹介する必要はない。http://amzn.to/Hk8veA
……6週間以内に90%の患者が回復するグリーンライト(自己限定性疾患)。万国共通のゴーサインですから画像検査は必要ありません。
■神経根症状とは、「腰痛よりも片側下肢痛が重篤」「足またはつま先へ放散する痛み・しびれ・感覚異常」「SLR(下肢伸展挙上)テストで下肢痛が再現」「局所における神経徴候」で、発症後4週間以内は専門医へ紹介する必要がない。http://amzn.to/Hk8veA
……これも6週間以内に50%の患者が回復するグリーンライト(自己限定性疾患)です。やはり万国共通のゴーサインですから画像検査は必要ありません。
■重篤な脊椎病変の可能性(レッドフラッグ)とは、「発症年齢が20歳未満・55歳超」「非メカニカルペイン」「胸部痛」「がんやHIVの既往歴・ステロイド使用歴」「体調不良・体重減少」「広範な神経症状」「変形」で4週以内に専門医への紹介が必要。http://amzn.to/Hk8veA
……レッドフラッグ(危険信号)が認められる場合は、画像検査(単純レントゲン撮影・MRI)や血液検査(ESR・CRP)が必要です。腰痛疾患にCTはお勧めできません。
■重篤な脊椎病変の可能性(レッドフラッグ)には直ちに専門医へ紹介しなければならない馬尾症候群がある。「膀胱直腸障害」「起立不能・歩行不能」「サドル麻痺」があれば緊急手術が必要。http://amzn.to/Hk8veA
……プライマリーケアレベルで馬尾症候群にお目にかかることはまずないでしょうけど、万が一にも見つけたら48時間以内に手術をしないと後遺症が残ってしまいます。気をつけましょう。
N E W S
英国Glasgow大学のDaniel F. Mackay氏らは、コンタクトスポーツの疾病リスクを調べるために、引退したスコットランドのプロサッカー選手と条件がマッチする一般の地域住民の死因を比較する後ろ向きコホート研究を行い、虚血性心疾患や肺癌の死亡リスクは一般人より低いが、神経変性疾患による死亡リスクは高かったと報告した。結果はNEJM誌電子版に掲載された。
プロサッカー選手データベースから、1977年1月1日以前に生まれ、選手としてプレーした後に引退した選手を抽出し、生まれた年、試合数、ポジションなどを調べた。次に選手1人当たり3人の割合で、性別、年齢、社会的剥奪度の5分位群がマッチする一般人を選んで対照群とした。その上で死亡統計から元選手と対照群の死因を調べ、NHSの処方データから2009年以後に使用していた薬の種類を調べた。
対象にした疾患は、全ての神経変性疾患、アルツハイマー病、非アルツハイマー型認知症、特定不能の認知症、運動ニューロン疾患、パーキンソン病とした。死因として多い疾患(あらゆる循環器疾患、虚血性心疾患、脳卒中または脳血管系疾患)と、呼吸器疾患と癌による死亡の有無を検討した。
条件がマッチした対照群は2万3028人。年齢が40歳の時から追跡を開始して、中央値18.0年の追跡期間に、元選手の1180人(15.4%)と対照群の3807人(16.5%)が死亡していた。死亡時の平均年齢は67.9歳と64.7歳だった。
死因別に検討すると、虚血性心疾患死亡のハザード比は0.80(0.66-0.97)、肺癌死亡のハザード比は0.53(0.40-0.70)で、元選手の方が低かった。一方、神経変性疾患が死因となっていた人の割合は、元選手が1.7%、対照群は0.5%で、ハザード比は4.10(2.88-5.83)になった。虚血性心疾患による死亡やあらゆる癌による死亡といった競合リスクを補正し、サブハザード比を推定したところ、3.45(2.11-5.62)になった。脳卒中や脳血管疾患による死亡のハザード比は0.88(0.78-1.00)、あらゆる癌による死亡は0.94(0.71-1.25)、呼吸器疾患による死亡のハザード比は0.61(0.46-0.82)で、いずれも比例ハザード性は成立しなかった。
主な死因である、または死に寄与したと見なされた神経変性疾患のサブタイプごとにハザード比を推定したところ、最もハイリスクだったのがアルツハイマー病で5.07(2.92-8.82)、逆に最もローリスクだったのはパーキンソン病で2.15(1.17-3.96)だった。
(11/14 TMS-net=部分)
街中に「肩こり・腰痛改善」「保険診療可」などの看板を掲げる整骨院や鍼灸マッサージ店があふれている。特に「整骨院」は国家資格の柔道整復師(以下、柔整師)養成学校の規制緩和で資格所有者が急増し、店舗数が増加。厚生労働省によると、柔整師が手がける施術所(整骨院)は2018年末時点で約5万77カ所まで増加し、10年間で約1.4倍に膨れ上がっている。供給過多となった整骨院は同業との競合が厳しく、保険診療の不正請求に手を染めるケースが後を絶たない。以下に業態の調査概要を示す。
1)整骨院・療術・マッサージ業者2090社のうち、2016年度から2018年度まで3期連続で収入高が判明した1888社の2018年度の収入高合計は前年度比4.8%増の2038億4800万円。新規出店や高齢者増加が追い風となった。
2)業歴別では「10〜30年未満」が946社(構成比45.3%)で最多。
3)従業員数別では「10人未満」が1702社(構成比81.4%)となり、小規模業者が全体の8割を占めている。一方「100人以上」は28社(構成比1.3%)にとどまった。
4)2019年(1月〜10月)の倒産件数は78件発生しており、2000年以降で最多の2018年に迫るペースで推移している。負債1億円未満の小規模業者の倒産が目立った。
5)近時では厚生労働省が保険審査を厳格化する動きが強まっており、整骨院業者の業績に影響を及ぼしかねない問題になっている。すでに保険診療から骨格矯正やマタニティ整体、猫背矯正など自由診療のシェア拡大に注力する業者が増えるなか、今後は鍼灸マッサージやカイロプラクティック、リラクゼーション業者と競合となり、淘汰が加速する可能性がある。
(11/11 帝国データバンク)
米国・ジョンズホプキンス大学のJennifer A. Deal氏らが、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究で調べたところ、禁煙は認知症リスク減少に有益ではあるものの、禁煙期間に依存することがわかった。本研究では、禁煙後9年以上経過した場合に認知症発症との関連が消失し、認知症リスクを減らすためには中年早期に禁煙する重要性が示唆された。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版に掲載。
ARIC研究では52〜75歳の1万3002人の男女が参加。認知症は、縦断的認知データ、代理報告書、病院および死亡証明書における認知症のコードを組み込んだ標準化アルゴリズムを用いて定義した。認知機能低下は、2つの時点(1996〜98年および2011〜13年)で測定された3つのテストによる複合認知スコアを用いて測定した。喫煙と禁煙は、1987〜89年および1996〜98年のデータを用いた自己申告によって定義した。認知症発症リスクと喫煙有無による認知機能低下の違いは、それぞれCox比例ハザードモデルと線形回帰モデルで推定した。主な結果は以下のとおり。
・非喫煙者、元喫煙者、現在喫煙者の割合は、44%、41%、14%であった。
・元喫煙者の79%は、ベースライン時点で9年以上禁煙していた。
・1347人の参加者が認知症を発症した。
・非喫煙者に対する現在喫煙者の認知症の調整ハザード比は1.33(95%信頼区間[CI] :1.12〜1.59)、ベースライン時に禁煙から9年未満の元喫煙者は1.24(95%CI:1.01〜1.52)であった。
・ベースライン時に9年以上禁煙していた場合、認知症との関連はなかった。
・認知機能低下率について喫煙の有無による差は認められなかった。
(11/8 ケアネット)
80歳以上で腰の痛みがある人は、認知症になるリスクが、痛みがない人に比べて半分になることが、大規模調査研究プロジェクト「日本老年学的評価研究(JAGES)」のデータ解析でわかった。80歳以上で腰痛を感じること自体が、脳の機能を維持できていることを示す可能性がある。英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。
2013年に全国でひざや腰の痛みを調べた65歳以上の1万4627人が、16年までに認知症になったかどうかを追跡。298人が認知症になった。年齢や痛みの部位に分けて解析したところ、65〜79歳でひざの痛みがある人は、痛みがない人に比べ、認知症のリスクが1.7倍高かった。ひざの痛みがあり毎日30分以上の歩行習慣がないと1.9倍になった。
一方、80歳以上では、ひざの痛みがある人が認知症になるリスクは、痛みがない人に比べて統計的な差がなかったが、腰痛がある人が認知症になるリスクは0.5倍になった。データを解析したカナダのマギル大学の山田恵子博士研究員は、「80歳以上で痛みがあることが良い、ということではない。脳の機能が何らかの形で痛みと認知症を結びつけている可能性がある」という。
(11/6 朝日新聞)
「体調不良の元凶は、自律神経の乱れによる“冷え”です。これは、自律神経のリズムが乱れ、体温調節が機能しなくなることです」。そうアドバイスするのは、東京有明医療大学の川嶋朗教授だ。冷えを放っておくと、血行が悪くなり低体温になる。すると代謝や免疫機能が低下し、細胞の働きが衰える。さらに内臓の機能が低下して、病気のリスクが高まってしまうことに。
「漢方医学では、冷えはさまざまな病気を引き起こす前兆として非常に重視されています。漢方医学のセルフケアの中で、高い効果が得られるお灸を、手軽にできるのが “ドライヤーお灸” です。夜、お風呂から出た後、ドライヤーで髪を乾かすついでに、冷えに効く足のツボに温風をあてるだけ。体をしっかりと温めてから布団に入れば、深い眠りにつくことができますよ」(川嶋教授)
ドライヤーお灸はコストがかからないうえ、1人で、手軽に、毎日続けられる。やり方は簡単。冷えに効く主要の4つのツボ「足三里」「百会」「三陰交」「湧泉」を指で探しあて、ドライヤーで温めるだけ。
ドライヤーお灸のやり方は、1)ドライヤーの風を50〜60度の低温風に設定。2)吹き出し口を肌から10〜15センチ離れたところから風をあてる。3)「熱い!」と感じたら吹き出し口を肌から離す。以上4カ所のツボを温めても5分程度だ。
「やけどを防ぐため、ツボにあてる時間は長くても1カ所1〜2分にとどめましょう。そして必ず自分でやること。人にやってもらうと熱さの加減がわからず、やけどの原因になってしまいます。服上からあててもいいのですが、肌の乾燥が特に気になるときや、けがなどで痛めたところが熱を持っているときはやめましょう」(川嶋教授)
(11/6 女性自身=一部)
脳神経細胞の活性が、ヒトの加齢と寿命に重要な役割を果たしているかもしれない、という米国ハーバード大学からの研究報告が『ネイチャー』誌に発表された。脳の過剰な活性が寿命の短縮に関連し、過活性を抑制することで寿命が延びる可能性が示唆されたという。この知見は、ヒトにおける脳の活性が寿命に関連することに関する初めてのエビデンスであるという。
神経活動は、脳内における電流の間欠的な伝達である。過剰な活性(興奮)は、筋肉のけいれんや気分の変化など様々な形で現れる。
ただし、人間の高次の精神活動が寿命にどのような影響を及ぼすかはまだわからないという。だが、本研究は、アルツハイマー病や双極性障害のような神経過活性を伴う病気の治療に役立つ可能性があるという。
研究チームが、60-100歳以上でなくなった数百人の人々の脳組織における遺伝子発現パターンを分析した結果、85歳上の長寿だった人では、60-80歳で死亡した人に比べて、神経過活性に関する遺伝子の発現が低いことが明らかになった。
線虫、遺伝子改変マウス、百寿者の追加の脳組織分析などを行った結果、神経の過活性は寿命に影響することが明らかになった。全ての兆候はRESTたんぱく質に関連していたという。
研究チームは、遺伝子を制御するRESTが、神経の過活性を抑制することを発見した。動物モデルでRESTあるいはその同等物を阻害すると、神経活動が活発になり死亡が早まった。RESTの活性を高めると寿命は延長した。百寿者は有意にREST活性が高かったという。
(11/2 TMS-net=部分)
突発的なけいれんを起こす病気のてんかんについて、群馬大大学院医学系研究科の柴崎貢志准教授らの研究グループは10月29日、病態が悪化する仕組みを解明したと発表した。発作が起こると脳が部分的に発熱して特定のタンパク質の働きが異常に活性化し、症状を悪化させていた。発熱部分を冷やすと発作が完全に治まることも判明。治療器具や治療薬の開発など「病気の進行を防ぐ新たな手法の確立につながる成果」としている。
グループは発作が起こる際のマウスの脳を詳しく分析した。その結果、発作時には脳の原因部分の温度が正常より1度ほど高くなることを突き止めた。さらに体温を感知する「TRPV4」と呼ばれるタンパク質が発熱により異常に活性化し、てんかんを引き起こす神経活動が強まって発作が悪化することも分かったという。
マウスの実験で、脳を冷やす器具を作成し、発熱を抑えたところ、発作は完全に治まった。さらに臨床試験を行い、ヒトで同様の効果が得られることを確かめた。成果を踏まえ、グループは患者の脳に小型の冷却装置を埋め込み、発作を自動で検知して発熱を抑える治療法を研究している。今後5年程度をめどに実用化を目指している。
研究では、TRPV4の働きを抑える薬をマウスに投与しても発作が治まることが分かった。副作用などの課題をクリアすれば、薬による効果的な治療の道も開けるとしている。
(10/30 上毛新聞)
がんの家族歴は、いくつかのがん種におけるリスク増加の重要な因子である。がんの家族歴と遺伝的に一致するがんリスクとの関連は多くの疫学研究で報告されているが、生活習慣を調整した包括的な前向き研究はない。今回、わが国のJPHC研究において、国立がん研究センターの日高章寿氏らによる研究から、膀胱がん、膵がん、食道がんなどのいくつかのがん種で、がんの家族歴ががんリスク増加と関連することが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版に掲載。
本研究は、日本の集団ベースの前向き研究であるJPHC研究において、がんの家族歴と遺伝的に一致するがんリスクとの関連を調査した。対象は、がんの既往がなく、ベースライン時にがんの家族歴などの自記式調査票に回答した10万3707人の適格な被験者で、2012年まで追跡し、多変量調整Cox比例ハザード回帰モデルを使用して分析した。主な結果は以下のとおり。
・追跡調査した180万2581人-年で、合計1万6336人が新規にがんと診断された。
・がんの家族歴がない人に対して、家族歴がある人におけるがん発症のハザード比は、すべてのがんで1.11(95%信頼区間:1.07〜1.15)、食道がん2.11(同:1.00〜4.45)、胃がん1.36(同:1.19〜1.55)、肝がん1.69(同:1.10〜2.61)、膵がん2.63(同:1.45〜4.79)、肺がん1.51(同:1.14〜2.00)、子宮がん1.93(同:1.06〜3.51)、膀胱がん6.06(同:2.49〜14.74)であった。
(10/25 CareNet)
運動をしすぎると脳の疲労を招き、物事の判断力が鈍る可能性があることが、ピティエ・サルペトリエール病院(フランス)のMathias Pessiglione氏らの研究で示された。持久力を必要とする持久的スポーツにはさまざまな健康へのメリットがあるが、過度のトレーニングで負荷がかかると脳に悪影響が及ぶ可能性があるという。「Current Biology」オンライン版に発表された。
Pessiglione氏らは今回、持久的スポーツの男性アスリート37人(平均年齢は約35歳)を対象に、3週間にわたって通常のトレーニングを行う群(18人)と1回当たりのトレーニング負荷を40%増やして行う群(19人)に割り付けて観察した。その結果、機能的MRI(fMRI)による画像検査から、トレーニング負荷を増やし、疲れ果てるまで自分を追い込んで運動した群では、物事を判断する際に重要な役割を果たす脳領域の「外側前頭前皮質」の活性が低下していることが分かった。また、金銭的な意思決定能力を評価したところ、運動負荷を増やした群では、時間がたてば獲得できる大きな報酬よりも、即座に得られる目先の報酬を獲得しようとする確率が高く、より衝動的な行動がみられた。
今回の研究は、脳を働かせる時だけでなく、身体を動かす時も認知的コントロールが必要であることを示唆している。「スポーツに限らず、政治や法律、金融といったさまざまな分野で間違った判断をしないためには、疲労の程度を見極めることが重要かもしれない」とPessiglione氏らは話している。
(10/1 HealthDayNews)
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