エンタプライズ発信〜メールマガジン【№113】 2020. 9

最近でも世界では24時間の新規感染者が最高数字を示し、ついには3000万人の感染者に達し、またインドでは9月16日に感染者が総計500万人を超えるなど、世界的視点で見れば新型コロナ感染禍は留まるところを知らないと言えます。あにはからんや、わが国では第2波が来るには来たけれども死者数で測れば約1500人と「禍」というほどではない感触を受けます。厚労省による人口動態統計(月報・概数)の4月版を紐解くと、今年と昨年同期の死亡者数を比較してみると、2019年1-4月:49万2599人、2020年同期:48万2155人でした。その差は1万444人の減となり、近年は1年の総死亡者数が毎年2万人超増加傾向なのにこの期間のみで見ると異例の減数になっているのです。この調査でもう一つ気づくことがあります。呼吸器系疾患の死因です。新型コロナ(+)516人、インフルエンザ(-)2224人、肺炎(-)3865人、慢性閉塞性肺疾患;COPD(-)624人…結果は新型コロナで約500人増えましたが、ほかの疾患では約6700人の死亡者減です。これから類推すると、新型コロナの感染予防対策が、インフルエンザ予防ほかに効果があったと言えそうです。特にマスクのこまめの着用は特筆できると思います。実際、多くの医師が口を揃えて「2月以降インフルエンザが激減した」「9月に入ってもインフルエンザがほとんど増えていない」と語っているそうです。世界的に見ると猛威をふるっている新型コロナ感染ですが、一部で言われる「日本の奇跡」とはあながち中らずと雖も遠からず、なのでしょうか。対応するワクチンの開発が待たれるところですが、GoToトラベルの障壁撤廃が次なる第3波を呼び込まないことを願うばかりです。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━★☆★

【1】新連載: カイロプラクティックオフィスにおける
   新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【5】円熟したプロフェッショナルになるための
   バウンダリー・マネジメント・スキル
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 =休止=
【7】N・E・W・S

Topic

PCRT(心身条件反射療法)セミナー、OneDay実技を開催

本年度は新型コロナ感染禍の蔓延により「Web講義-事前動画配信-+OneDay実技」のセミナースタイルで開催されているPCRT(心身条件反射療法)研究会(保井志之代表)。9月13日には今年度第2回目のOneDay実技セミナー(中級1)が東京・浜松町で開催された。実技セミナーの前にWeb講義で予習し課題点を探し出し実技でマスターするというこの取り組みは好評で、分かりにくいところは繰り返し観ることができる、実技によるスキルが手にとるようにわかるという。心身条件反射療法の詳しい情報はこちら。http://www.mindbody.jp/category/1157469.html

Information

日本カイロプラクティック科学学会学術大会 11/3開催

日本カイロプラクティック科学学会(事務局・東京)は来たる11月3日(祝)に東京・新橋において第11回日本カイロプラクティック科学学会学術大会を開催する。オンラインでも同時配信する。今回は感染症対策を含めた健康情報を入手し理解・評価・活用するための知識と能力を高めるべく「カイロプラクターに必要なヘルスリテラシー」をテーマに、基調講演、招待講演、会員発表、学生の研究発表を予定している。
【会期】11月3 日(祝) 10 時00分〜16 時30分
【会場】交通ビル(東京都港区新橋 5-15-5)
【基調講演】小林寅喆氏 (東邦大学 看護学部看護学科・感染制御学研究室 教授)
【主催】日本カイロプラクティック科学学会
〔問合せ〕 日本カイロプラクティック科学学会事務局
電話:03-3578-9390 E-mail

短期連載—その1

『カイロプラクティックオフィスにおける

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン』

監修 小林寅喆(東邦大学看護学部感染制御学教授)
編集 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)

はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)に伴い、2020年4月7日、日本政府は7都府県を対象に緊急事態宣言を発令し、4月16日には緊急事態宣言を全国に拡大した後、5月25日に全面解除した。WHO(世界保健機関)指針が示す通り、カイロプラクティック業務が法制化されている各国ではカイロプラクターはヘルスケア従事者とされ、カイロプラクティックオフィス(カイロプラクティックを専門とする治療院)は人々の健康に携わる医療施設とされている。
日本全国で各々の業種が新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策を講じている中、国内で法的資格制度がない状況においてもカイロプラクターは新型コロナウイルス感染症の対策を含めた業務を遂行する社会的責任がある。本ガイドラインは、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」を参照し、東邦大学看護学部看護学科・感染制御学研究室の小林寅喆教授による監修のもと作成された。

本ガイドラインは、カイロプラクティックオフィスで業務に従事するカイロプラクターを対象に、①新型コロナウイルス感染症の概要、②オフィスでの感染リスクの認識、③オフィスでの感染拡大防止の取り組み、から構成される感染症対策の提示に加え、感染拡大防止のチェックリストを提供している。WHO(世界保健機関)指針のカイロプラクティック専門教育を履修したカイロプラクターのみならず、すべてのカイロプラクティック療法業や脊椎徒手療法を臨床に取り入れている方々にもぜひ参考にしていただければ幸いである。当会は、今後の感染状況と政府の対処方針を踏まえて本ガイドラインの随時改定を行う。(なお本連載では新型コロナウイルス感染症の概要については割愛する)

〔 I.〕 カイロプラクティックオフィスでの感染リスク

1. カイロプラクティックオフィスについて
カイロプラクティックオフィスの多くは独立した店舗(治療院)であり、各オフィスの代 表者(院長)はスタッフを雇用しているケースが多い。スタッフは、カイロプラクターをはじめとする医療従事者やセラピスト等の施術者、および受付、事務管理、清掃等の業務担当者が含まれる。カイロプラクティックオフィス内の施術室(施術を行う部屋)は、個室形態もしくはパーテーションやカーテン等で区切る形態に分類される。
中には、診療所(クリニック)、病院、薬局、鍼灸院、接骨院、フィットネスセンター、リラクゼーションサロン等でカイロプラクティックの施術が提供されるケースもあり、その場合は該当する各業種の感染対策ガイドラインを併せて参照すること。各カイロプラクティックオフィスにおいては、本ガイドラインに基づく新型コロナウイルス感染拡大防止に取り組むことで、感染リスクを最小限に抑えた環境下で施術を行うことができる。

2. 感染リスクを高める「3つの密」
一般的に主な感染経路は飛沫感染および接触感染と考えられており、特に「3 つの密」と呼ばれる、①換気の悪い「密閉空間」、②多数が集まる「密集場所」、③間近で会話や発生をする「密接場面」の3つの条件がそろう場所が感染拡大リスクを高めるとされている。そのため、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、カイロプラクティックオフィス(治療院)では「3つの密」を避ける環境を準備する必要がある。(次号へつづく)


連載vol.71

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

生体マトリックスと鍼療法(つづき)

固相物理学の領域では、生体組織中での迅速な情報およびエネルギー伝達の原理につながる協力現象や集合体的現象が多数発見されている。そして鍼療法の基礎にあるのも生体組織の協力的あるいは集合体的性質がもたらすエネルギー現象だ。一方、現代の生理学者たちは、一般的に見て神経系と内分泌系と免疫系こそが生体のコミュニケーションシステムであるという説に満足している。この両者の隔たりを埋めるのは、生物物理学的アプローチだろう。つまり生体には未知のコミュニケーションシステムがあり、そのシステムが全身の構造や機能を統合させ、鍼療法をはじめとするエネルギー医学的手法の作用に貢献しているということを証明していかなければならない。

理論の不足

鍼療法を利用する人の数は今や世界的規模で増え続けており、この治療法に関する基礎研究や臨床研究が求められている。そこでアメリカの国立補完代替医療センターでも、いくつかの手法の鍼療法について有効性と安全性を評価するための大規模な試験が行われることになった。しかし臨床試験で素晴らしい結果が出ても、その結果を科学的に説明する理論がなければ、実用的な治療法とは認められない。
逆に、臨床試験の結果が芳しくなくても、臨床の現場にはあまり影響を及ぼさない場合もある。例えば近年、デューク大学ではうつ症状の緩和に用いられるハーブのセント・ジョーンズ・ワートと、ゾロフトの商品名で知られるうつ病治療薬セルタリン、そしてまったく薬理活性のないプラシーボを比較する試験が行われた。1997年に始まったこの試験は、600万ドルという費用をかけ、薬の効果を判定する臨床試験としては科学的に最も厳密な、プラシーボを対照とした多施設二重盲検法で行われたのである。ところが、デヴィッドソンの報告によると、この臨床試験からは、プラシーボがゾロフトよりも有効で、ゾロフトとセント・ジョーンズ・ワートの効果は同等であるという結果が出た。

この結果を見る限り、ハーブに効果がないのか、それとも試験そのものが失敗だったのかはわからない。いずれにせよ、この臨床試験の結果の解釈についてはしばらく議論がつづくことだろう。ただ一つ明らかになったのは、「とりあえず臨床試験には参加してみるといい」ということだ。

ある治療法の臨床的有用性を評価しようとするなら、試験を始める前に、可能な限り既存の科学的理論でその手法の作用メカニズムを説明しておくべきだろう。いかなる医学的手法も、世間に認められるためには、臨床的有用性が証明されると同時に、どのようなメカニズムで作用するのかを従来の知識の範疇で説明できることが必要だ。わかりやすく、しかも信頼できる理論があれば、臨床試験を始めるモチベーションにもなり、また有用性が証明されたときには、より大きなインパクトを与えることができるからである。ある現象を非主流的な概念で説明しようとする前に、いま一度、一般的な科学を振り返ってみることが先決なのだ。(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊2005 )


連載エッセイ 80☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


「心のブレーキ」がもたらすパフォーマンスの低下(前編)

先日、全日本クラスのバドミントン選手のパフォーマンス低下に対する問題に関して相談を受けました。ある練習試合で前半戦は大幅にリードして、通常であれば勝つのが当たり前のような状況だったとのこと。しかし、そこからまさかの逆転負け。何がそのようにパフォーマンスを低下させてしまったのか? その記憶を辿ってPCRT(心身条件反射療法)の生体反応検査で探索してみると、その記憶のパフォーマンスに陽性反応が示されました。陽性反応があるということは、無意識的な神経信号に関係する何らかの「誤作動記憶」があるということです。

その誤作動記憶に関連するキーワードを検査してみると「虚栄心」という言葉が示されました。その時の対戦相手は大学の後輩で、お互いに気心を知る間柄とのこと。試合中、無意識的に後輩のことを想い、リードしすぎると後輩の練習にはならないという想いが心のどこかにあったかもしれないという。それがどのように「虚栄心」につながるかというと、平たく言えば「良い先輩」として思われたいという無意識の心につながっていたということです。
もしも、大幅にリードしたまま後輩を負かしてしまうと、それは思いやりのない先輩につながり、相手を敬う良き先輩であるという理想像が崩れてしまうというような状況で、無意識ではありますが、後輩のことを思って少し手を抜いたということになります。以前には「慈悲心」というキーワードがパフォーマンスを下げる要因として関係しており、先輩を負かしてしまうと申し訳ないという心のブレーキがパフォーマンスに影響を及ぼしていた様子でした。

私は彼を6歳の時から事あるごとに治療やコーチングでのサポートをさせていただいています。小学生の頃からすでに全日本レベルの選手でした。中学生から親元を離れて遠方で寮生活を送っていました。帰省の際には毎回治療院を訪ねてくれたり、遠隔での治療も受けていただいたりしていました。陰ながら彼の成長をみさせていただいており、多くの人に好かれるタイプであることは明らかでした。それはひとえに人への「思いやり」を大切にしているということがよく分かるのですが、その「相手を敬う心」に関係する「心のブレーキ」がパフォーマンスを下げているということにつながっていました。

「相手を敬うという心」は、人としてのあり方を支える大切な心の信念ですが、試合のパフォーマンスに影響を及ぼしているというのは別の意味で問題です。そのような「心の在り方」をどこで培ったのか、最初のきっかけはいつだったのかなどを質問したところ、親元を離れて最初に寮生活を始めた時とのことでした。その教えはバドミントン部の監督を通じて、先輩後輩の関係性を寮生活、部活動を通じて学んだということでした。(後編へつづく)

連載 第2回

からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜

安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)

1)微生物の種類 <前号よりつづき>
b)ウイルス(virus)の特性と種類

そこでその宿主細胞によって動物ウイルス(animal virus)、植物ウイルス(plant virus)、細菌ウイルス(bacteria virus)すなわちバクテリオファージ(bacteriophage)の3種類に分けたりもします。そうした分け方に依らなければ、その大きさと、通常の種類は次のようになります。
大きさは平均20-300nm(ナノメーター)、1nmは1000分の1μmです。そして種類はその核酸によってDNAウイルスとRNAウイルスに分かれます。エイズウイルスのように逆転写酵素(reverse transcriptase)を働かせ、RNAから逆にDNAを合成してしまうレトロウイルスも一応はRNAウイルスに分類されます。

c)その他の微生物

細菌とウイルスの中間的存在として、リケッチャ(rikettsia)やクラミジア(chlamydia)があります。これらは大きさから言えば細菌と同じように光学顕微鏡で観察することができますが、その特性から言えばウイルスと同じように、例えばツツガムシ病リケッチャのようにツツガムシなどほかの宿主の細胞に寄生しなければ増殖することができません。

2)食にまつわる微生物
a)細菌性食中毒

細菌性食中毒には、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌のように、細菌そのものによる細菌型のものと、ブドウ球菌やボツリヌス菌のようにその細菌の出す毒素によるものとがあります。いずれも症状は腹痛・下痢・発熱などですが、後者の方がより重症になる傾向があります。
・細菌型…桿菌であるサルモネラ菌(salmlnella)によるものにせよ、螺旋菌に属する腸炎ビブリオ菌(vibrio parahaemolyticus)によるものにせよ、細菌そのものによるものが細菌型食中毒です。
前者サルモネラ菌の二次感染は、保菌者・保菌ねずみなどを媒介とするが、後者の腸炎ビブリオ菌のそれは俎板などを媒介とします。それは腸炎ビブリオ菌が好塩菌であり、食塩濃度約3%で最もよく培養され、この濃度が海水のそれとほぼ同じだからです。ゆえに夏季の海の幸(鯵、タコ、イカ、貝類など)がその原因となり、それらを調理した俎板でそのまま生野菜などを扱えばそれは二次感染のもとになります。俎板に熱湯をかければ予防することができます。
(次号へつづく)

連載…20

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

倫理的バウンダリー :倫理に関する質問集

以下の質問は、あなたがどのような行動をすれば破滅の道を歩むことになるかを認識するためのものです。それにより、あなたとクライアントの関係、もしくはあなたの評判や業界全体の評判を傷つけないで済むことになるでしょう。

・その行動をとることで私たちの立場にクライアントが与えてくれた厚意・好意を利用していることになりませんか?
・その行動はクライアントのプライバシーや守秘義務に違反することになりませんか?
・その行動をとることによってクライアントと二重関係(クライアントと施術者の関係のほかに関係をもつこと)になってしまい、プロとしての立場が明確ではなくなっていませんか?
・その行動は当初の契約にあるもの(自分の専門の領域および同意事項等)を逸脱していませんか?
・その行動はあなたの通常のポリシーから外れていませんか?
・他人の目から見て、その行動は適切だと思われますか?
・その行動はクライアントに対して失礼にあたりませんか?

いくつかの質問は、この質問集に含まれる理由がはっきりとわかるでしょうし、反対になぜここに含まれたのかわからないものもあると思います。これらの質問事項を倫理的な意図によって分類しながら、1つ1つ詳しく見ていきましょう。

クライアントの弱い立場を守る

・その行動をとることで私たちの立場にクライアントが与えてくれた厚意・好意を利用していることになりませんか?
・その行動はクライアントのプライバシーや守秘義務に違反することになりませんか?
【概説】ほとんどの倫理基準は、施術者がクライアントとの間に発生する力の不均衡を利用(彼らの気持ちを個人的な利益のために利用するなど)しないようにすることを目的につくられています。クライアントのプライバシーや守秘義務を重んずることはプロの本質を担うことであり、クライアントの弱い立場を思いやることにもつながります。

あなたはちょっとだけバウンダリー(プロとしての存在や立場、関係を取り囲む防護壁)を越えることがありますし、それは他愛もないと思われます(たとえばクライアントの転移の感情を利用してセッション中におしゃべりをしたり、クライアントの紹介をしてくれた人に対してそのクライアントがいついつに予約を入れてくれたなどと守秘義務を無視したりなど)。しかしあなたが転移や守秘義務について、どんな些細なことでもバウンダリーを守れるようになれば、さらに切実な問題が起こったときに過ちを犯さないで済むことになるのです。(つづく)
(出所:『エデュケーティド・ハート』The EducatedHeart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )

 N  E  W  S

NEWS ■ 新型コロナウイルスに対する心理的影響は性格によるか

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活に大きな影響を及ぼし続けており、その心理的な負担は決して小さなものではないでしょう。とはいえ、すべての人が同じように不安を抱え、同じように感染対策に関心を持ったわけではないかもしれません。感染を極度に恐れる人がいる一方で、それほど意識せず生活を続けた人もいることでしょう。
日本人を対象に、人の性格と新型コロナウイルスに対する心理的影響の関連を検討した研究論文が、科学と医学分野のオープンアクセスジャーナル誌「プロスワン」の電子版に掲載されました。この研究は、緊急事態宣言が発出された翌日の4月8日に実施されたアンケート調査で、日本全国から1856人(平均46.7歳、男性56.3%)が回答しました。オンラインで行われたこの調査では、回答者の性格特性と新型コロナウイルス感染症に対する不安やストレス、予防行動などとの関連について統計的な解析が行われています。
その結果、「外交的」「勤勉的」「開放的」「協調的」「神経症的」、いずれの性格においても予防行動の積極性の増加と関連していましたが、神経症的な性格では、ストレス、不安、抑うつレベルの増加と関連していました。他方で、協調的な性格では不安やストレスレベルの低下と関連していました。また、勤勉的な性格の人では抑うつレベル低下との関連を認めています。さらに、男性は女性に比べて、感染状況を過小評価しがちであることも示されました。
感染拡大によって受ける心理的な影響は、人の性格によってさまざまであることが示されています。こうした個人差に配慮した感染対策やケアの実施で心理的な負担も軽減できるかもしれません。(9/7 日刊ゲンダイヘルスケア)

NEWS ■ 睡眠不足は怒りを増幅する

最近イライラしてしまいがち、という人は睡眠不足なのかも? ストレス要因に対し、充分な睡眠をとった人に比べて睡眠不足の人は怒りの反応が高く、増幅しやすいことがわかった。米イリノイ大学の研究。
この研究では、まず大学生202名を対象とし、1か月間の睡眠・ストレス要因・怒りの状態についての記録をしてもらうとともに実験室の分析をする予備実験を行った。すると、通常より睡眠不足だった翌日に怒りを経験する傾向が示された。次に、147人の地域住民を対象に実験を行った。まず参加者は、通常の睡眠スケジュールを維持するか、自宅での睡眠を2晩で約5時間減らすかのいずれかに無作為に割り当てられ、実験室で刺激性の騒音にさらされている間の怒りを評価した。すると、十分な睡眠をとった人は騒音に順応し、怒りが少なくなった一方、睡眠不足の人は騒音に反応して怒りが高くなり、増幅した。これらのことから、睡眠不足ではイライラする状況への感情的な適応が損なわれることが示唆された。主観的な眠気は、怒りに対する睡眠不足の影響のほとんどと比例していた。また、オンラインの競争ゲームの後の怒りの感情について調べた関連実験でも、同様の結果となった。
「睡眠不足は怒りを増大させ、時間とともに欲求不満を増大させるという強い因果関係の証拠を提供するため、この結果は重要です。さらに、毎日の睡眠等の記録を用いた研究の結果は、若者が睡眠不足の午後に怒りがより多くみられたため、その影響が日常生活につながることを示唆しています」と研究者の一人。著者らは、この調査結果は、睡眠障害において、怒りやその加減などの特定の感情的反応を考慮することの重要性を強調していると指摘している。(9/2 TMS-net)

NEWS ■ ヨガ、太極拳、瞑想は退役軍人にメリット

ヨガ、太極拳、瞑想などの人気の補完統合健康(CIH)療法は、退役軍人の自覚的な健康状態を大きく改善するかもしれない、という米国エディスノースロジャース記念退役軍人病院とブラウン大学の報告。
研究チームは、119名の退役軍人の自己申告による健康と幸福に対するCIH療法への影響を調べるために12か月の調査研究を実施した。全体として、参加者は、14の異なるCIH療法を報告した。ヨガが最も一般的であり、半数近くの参加者が実施していた。次いで、瞑想、鍼、太極拳の順だった。3つのCIH療法が自己申告によるアウトカムの改善に有意に寄与したという。
・ヨガはストレスの知覚を低下させることに関連した
・太極拳(Tai Chi)は、全般的な身体および精神の健康の改善にリンクした
・瞑想は、身体機能の改善に関連した
「我々の研究は、瞑想、太極拳、ヨガが、全体的な身体的および精神的健康を改善し、知覚されるストレスを軽減するように見えることを示した」と主任研究者のラニ・エルウィ准教授は語っている。(9/1 TMS-net)

NEWS ■散歩よりも徒歩通勤のほうが望ましい

人は目的を持って歩く時、特に仕事に行く時には、普段よりも速足になるので、より健康的である、という米国オハイオ州立大学からの研究報告。研究チームは、米国で2016年4月から2017年5月にかけて収集された2017全国世帯トラベル調査のデータを解析した。
データには、18-64歳の12万5885名の自己申告による健康評価が含まれていた。参加者は、異なる目的で何分間歩くか、通勤、ショッピング、遊びに行く、自宅以外からの徒歩旅行などについて回答した。
研究チームは、歩く時間や目的に関係なく、歩くこと自体が人々の自分を健康と感じる度合いを高めていることを発見したという。また通勤での徒歩(たとえばバス停まで10分歩くなど)が10分増すごとに、他の目的で歩く人と比べて、健康スコアが6%上昇することも発見したという。仕事、ショッピング、遊びに関係ない徒歩は、健康スコアを3%上昇させた。
研究チームはまた、通勤で歩く時に人は別の目的である時に比べてより速く、平均で約2.7マイル(約4.3㎞)/時で歩くことを発見した。それに対して、例えば夕食後の散歩の平均歩行速度は、約2.55マイル(約4.08㎞)/時だった。
人々は、家から歩く場合、他の場所から歩く時に比べて、より長い距離をあることが多いようだ。家から歩く場合の64%が10分以上であるのに対し、他の場所からでは50%に過ぎなかった。「ジムやレクリエーションセンターに行くことだけが運動の方法ではない。簡単な方法でアクティブな時間を毎日のスケジュールに入れることができる」と研究者はコメントしている。(8/31 TMS-net)

NEWS■大股、速足、腕振りが「歩き」を「運動」に変える

「運動として捉えるのであれば、『私は今しっかりと歩いています』という意識を持ちながら歩きに集中することをおすすめします。”買い物ついでにウオーキング”よりは、”ウオーキングのついでにちょっと買い物”ぐらいのほうがいいでしょう」
こう話すのは、パーソナルトレーナーとして活動するアスレチックトレーナーの三田貴史さんだ。「なるべく大きめの歩幅で歩きましょう。歩幅が狭いと、使う筋肉量が減ってしまいます。使う筋肉量が多ければ多いほど、消費する酸素量が多くなる。そうすると取り込む酸素量も増えるため、心肺機能も上がります。心肺機能がアップすると身体活動量が増え、生活習慣病の予防にも効果が期待できますよ」(三田さん)。大股の速足で歩くことで脳の血管が拡張して血の巡りが良くなり、ひいてはそれが認知症予防になるというデータもある。
ウオーキング時の正しいフォームと、番外編ともいえる歩き方を教えてもらった。「腕はしっかりと振ってください。腕を振ると下半身が自動的にねじれるので、足が前に出やすくなります。また、たまには後ろ向きに歩いてみるのもいいですね。人間が前に進むためには、体を押す役割をする腿の後ろの筋肉の動きも大切になってくる。後ろ向き歩きをすることで、腿後ろの筋肉を効果的に鍛えることができます」
後ろ向き歩きをするときには、危険じゃない場所を選び、後ろに障害物などがないことを確認してから行いたい。ぶらぶらと楽しむウインドウショッピングが、健康効果を上げるものに変われば一石二鳥。さらには、大股で速足、腕を振りながらのウオーキングも日常的に取り入れたい。今後はそちらも習慣化させようと心に誓った。(8/30 日刊ゲンダイヘルスケア)

NEWS ■ 口腔ケアでコロナ感染のリスク減…熊本県歯科医師会

新型コロナウイルスの感染拡大で医療機関の受診控えが顕在化する中、熊本県歯科医師会は歯周病の進行などが全身の健康リスクにつながるとして、定期的な受診を呼び掛けている。口の中を清潔に保つことで新型コロナの感染リスク低減や重篤化を防ぐ可能性も指摘されており、適切な口腔ケアの重要性を訴える。
「唾液にウイルスが含まれているという前提で対策し、診療している」。伊藤歯科医院(合志市)の伊藤明彦院長は、マスクやゴーグル、手袋などの完全装備で患者の診療に当たりながら、感染対策の徹底を強調する。ただ、コロナ禍の影響から、県保険医協会が5月上旬までに実施したアンケートでは、県内の歯科開業医の92%が「外来患者が減った」と回答した。
受診控えで懸念されるのが「口の中の健康」だ。成人の8割がかかるといわれている歯周病はさまざまな病気とかかわっており、歯周病対策を怠るとほかの病気を引き起こしかねない。また、口腔ケアがインフルエンザの発症率を10分の1に低減させたとの報告があり、コロナウイルスも同様に感染リスクが低くなる可能性が指摘されている。
コロナ禍は既に「第2波」との認識も示されており、「第2波、第3波に備え、かかりつけ歯科医と相談しながら口腔ケアを徹底してほしい」と伊藤院長。歯周病軽度の人は4〜6カ月に1回、中度、重度の人は毎月1回の受診を勧める。(8/21 熊本日日新聞=部分)

NEWS ■ コーヒーは健康に良いのか悪いのか

コーヒーにはさまざまな健康上のメリットが認められる。しかし、あくまでも楽しむためにコーヒーを飲むべきであり、疾患の予防のために飲むべきではないとする総説が「The New England Journal of Medicine」 オンライン版に掲載された。
シンガポール国立大学のvan Dam氏によると、カフェイン入りコーヒーによる疾患リスクの増大は一般的には認められず、さまざまな疾患のリスク低下との関連が見られ、また「適量」のカフェインはほとんどの人にとって安全であるという。ただしその量には個人差があると述べている。寝つきが悪くなったり、興奮、不安などの影響が見られたりした場合には、摂取する量や時間帯を調整することを同氏は勧めている。特に妊婦はカフェイン摂取量を1日200mg、12オンス(約350mL)のカップ1杯相当に抑える方が良いという。妊婦以外は、個人差はあるものの1日8オンス(約240mL)のカップで最大5杯までにしておいた方が良いとのことだ。
カフェインの功罪については長年、堂々巡りの議論が繰り返されてきたが、van Dam氏によると、フィルターを用いたコーヒー(ドリップコーヒーなど)に比べ、フィルターを用いないコーヒー(エスプレッソ、ボイルドコーヒー、フレンチプレスなど)はコレステロール値を上昇させる可能性があるという。ただし、そのような違いよりもコーヒーに加える砂糖やクリームなどの方が問題であることをWright氏は指摘。またエナジードリンクは例外で、そのカフェイン量はコーヒー1杯よりも多く、「過剰に摂取すると血圧上昇や動悸の原因となることがあると」同氏は注意を促している。(8/22 TMS-net)


次号のメールマガジンは2020年10月15日ごろの発行です。

(編集人:北島憲二)


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