エンタプライズ発信〜メールマガジン【№115】 2020. 11

現代人とくに若い人には唾液が少ない人がいます。日々のストレスやあまり噛まない食生活が原因と言われています。また高齢者でも加齢による咀嚼の衰えや食べる意欲の減退などで唾液は出にくくなっています。今般の新型コロナウイルス禍に鑑みると、ウイルスが唾液腺の中に棲みつくと口の中で増殖しはじめ、もし口内に悪玉菌が多い場合、ウイルスが活動しやすい環境となるだけに傍観はできません。1回3分ほどの歯磨きといえども、口の中の汚れや食べかすは悪玉菌(歯周病菌、むし歯菌)を繁殖させ、やがて口内環境にダメージを与えます。しかし抗菌作用・抗ウイルス作用に優れる唾液は、口の中の悪玉菌を殺し、善玉菌(主に乳酸菌)を増やすことで、歯周病、むし歯さえも予防します。良質な善玉菌を食事で取り入れるなら、乳酸菌・酵母菌・麹菌・酢酸菌・納豆菌・酪酸菌を含む食材をお勧めします。乳酸菌は腸内に長く留めておくことができないので、できるだけ毎日続けて摂取することが大切です。それ以外では、唾液を十分出すには「ベロ回し」という方法があります。ベロ回しはとても簡単です。口内の歯ぐきの上から下に、ぐるっとベロを回します。歯ぐきの表面と裏面の両方で回しましょう。口を閉じて1回1分、数回行うだけ。唾液がじわっと出て、約1分後には、唾液が下顎の内側にたまっているのを実感できると言います。 近年の研究では、歯周病は全身疾患の原因になることがわかっています。悪玉菌排除にも好適の方法ですね。ところで、ベロには「正しい置き場所」があります。口を自然に閉じたとき、ベロの先が上の前歯のすぐ後ろの歯肉についていて、奥舌が上顎に吸盤のように張りついている状態を言います。舌の位置が悪いと口臭悪化やいびきをはじめ、口呼吸や睡眠時無呼吸症候群などを引き起こしやすくなり、歯並びにも大きな影響を与えます。たかが唾液、されど唾液、口腔内は重要なのだと痛感させられます。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆★

【1】カイロプラクティックオフィスにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【5】円熟したプロフェッショナルになるためのバウンダリー・マネジメント・スキル
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療
【7】N・E・W・S

Information

日本統合医療学会学術大会がWeb上で開催 12/12-13 (再掲)

第24回 日本統合医療学会学術大会がWeb方式で開催される。今年の大会テーマは「幸せの統合医療:AI からスピリチュアリティまで」。AI(人工知能)などの先端技術に加えて人間の本質でもあるスピリチュアリティを大切にし、「幸せ」を追求する次世代型統合医療の実現を目指す。視聴するには参加登録が必要です。開催後約2週間の視聴が可能。
http://web.apollon.nta.co.jp/imj2020/sanka.html

会期:12 月 12 日(土)〜13 日(日)
早期登録:10月31日(土)
後期登録:11月1日(日)〜12月18日(金)
会場:東京大学フューチャーセンター
大会長:酒谷 薫(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 人間環境学専攻)
問合せ:E-mail

短期連載—その3

『カイロプラクティックオフィスにおける

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン』

監修 小林寅喆(東邦大学看護学部感染制御学教授)
編集 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)

1. 新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について

〔Ⅱ.〕カイロプラクティックオフィスでの感染症対策(つづき)
2)手指のウイルス対策

「衛生的手洗い」と「アルコール消毒」が推奨されている。

① 衛生的手洗い:カイロプラクティック施術者の手指は、病原体の伝播媒体となり得るので、石鹸を用いた手洗いを正しい手順で行うことで、施術者自身と、患者を感染から防御することができる。
※衛生的手洗いの手順:時計や指輪を外す。蛇口をひねり、水を出したままにする。両手、両手首全体に流水を十分につける。多めに石鹸を取り、できるだけ泡をたて最初に手のひらをこすり合わせる。続いて指の間と手の甲をよくこする。続いて手をすぼめてくぼみを作り、そこに反対側の手のすべての指先と爪の先の内側を当てて、よくこすり合わせる。これを左右の手でそれぞれ行う。続いてそれぞれの親指を、反対の丸めた手で包み込んで回転させこすり合わせる。さらに親指以外の指も同様にして包み込むように回転させながらこすり合わせる。続いて両手首を反対の手を丸め包みこみ、回転させてよくこする。最後に水道流水で、それまでの動作を意識して繰り返すようにして石鹸をよく洗い流す。

② アルコール消毒(日本薬局方 76.9〜81.4 v/v%エタノール): 手洗いがすぐにできない状況ではアルコール消毒液も有効である。アルコールはウイルスの「エンベロープ膜」を壊し無毒化する。
※ 70%以上のエタノールが入手困難な場合、60%台のものを使用してもよい。
※ アルコールに過敏な方は使用を控えること。消毒手順:速乾性アルコール製剤(例:アルコールジェル)を適量(3mL)手のひらに受け取る。手のひらどうしを擦り合わせる。指先、指の背をもう片方の手のひらで擦る(両手)。手の甲をもう片方の手のひらで擦る(両手)。指を組んで両手の指の間を擦る。親指をもう片方の手で包みねじり擦る(両手)。両手首まで丁寧にする。乾くまで刷り込む。

3)モノに付着したウイルス対策

以下の5つの手法が推奨されている。

① 熱水:食器や箸などは熱水でウイルスを死滅させることができる。【使用方法】80℃の熱水に10 分間さらす。【注意事項】やけどに注意。

② 塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム): テーブルやドアノブなどには、市販の塩素系漂白剤の主成分である次亜塩素酸ナトリウム(アルカリ性)が有効である。次亜塩素酸イオン(OCI-)の酸化作用などにより、新型コロナウイルスを破壊し無毒化する。
【使用方法】市販の家庭用漂白剤を、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が 0.05%になるように薄めて拭き、その後に水拭きする。
【注意事項】刺激臭があることから使用にあたっては換気を良くする。塩素に 過敏な方は使用を控える。塩素ガスが発生するため酸性のものとは混ぜない。金属腐食性があるので使用後は水拭きを推奨する。 ※次項④の次亜塩素酸水とは異なる。

③ 洗剤(界面活性剤:テーブル、ドアノブなどには市販の家庭用洗剤の主成分である界面活性剤も一部有効である。界面活性剤は、ウイルスのエンベロープ膜を壊すことで無毒化する。9 種類の界面活性剤が新型コロナウイルスに有効。
【使用方法】有効な界面活性剤が含まれた家庭用洗剤を選ぶ。家具用洗剤の場合、製品記載の使用方法に従ってそのまま使用。台所用洗剤の場合、薄めて使用。【注意事項】目に入らないよう注意。
(この項、次号へつづく)


連載vol.73

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

なぜほかの伝達系が必要か(つづき)

新たな生体コミュニケーションシステムを探る研究には、次のような西洋医学的意義がある。その1つは、まだ解明されていない生物の調整機能の本質に迫れることであろう。また生物は、進化に伴って神経系のような新しい調節機能をつくり出しても、古い調整機能をいつまでも残しておく傾向があるが、2つ目の意義は、この生物が古い機能を保存する理由を明らかにできることである。3つ目の意義は、直接神経系の支配を受けていない細胞や細胞内の小器官が、どのようにして生体全体とコミュニケーションを保っているのかを探れることだ。そして最後に、これまでに述べてきた固相物理学の理論によって生体コミュニケーションのメカニズムを説明することができれば、画期的な調節生物学の理論が誕生することになる。

新たな生体コミュニケーションシステムという概念は、今のところ西洋医学の中に取り入れられていないが、もしそれが可能になれば東西の医学がともに発展し、現代の医学的知識だけでは解決できない問題が解明されることにつながるかもしれない。

〔調節機能の謎〕
生物の体内では、健康な状態にあるときも、病気にかかったときも、全身の調和を維持または回復するための活動が行われているが、この活動に関する私たちの知識はまだ完全なものではない。生体コミュニケーションシステムについてはすでに一部の詳細が明らかになっているものの、それ以外にも未知のシステムがあるらしい。
たしかに現代科学の発展により生体コミュニケーションに関する知識は飛躍的に増大したが、これでほぼ全体像が明らかになったのか、それともまだ表面しか見えていないのかは、じつのところ誰にもわからないのである。
生物に備わった仕組みを検証してみると、機能、役割、および既知のシステムとの関係がまだ西洋医学的に解明されていない生体コミュニケーションの存在が予測される。ただしその生体コミュニケーションで、鍼療法などの代替療法において知られている客観的現象を説明できるかどうかはわからない。しかし以下のような例を見れば、既知の理論だけでは説明のつかない重要な生物学的調整機能があることが理解できるであろう。(この項、次号へつづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊2005 )


連載エッセイ 82☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


「本質を見抜く」 について考えてみる

私どもが運営するライフ・コンパス・アカデミー(LCA)において人間学のテーマとして「本質を見抜く」を議題にしたことがあります。本質とは何か? とても幅広く深いテーマです。私はセミナーで治療法を指導させていただく立場の者として、以前から「本質的……」という言葉をよく口にしています。今回の勉強会を通じて、私が話している「本質とは何か」というその伝え方を改めて工夫しなければならないと思いました。

治療、施術に関しての「本質」というと、症状の原因は何かということ。対症療法に対して原因療法の方が、より「本質」といえるでしょう。でも、もしかすると、人によっては原因療法であれ、対症療法であれ治ることが「本質」であれば、治る過程や症状の因果関係などは関係ないと言い切るかもしれません。
このように考えると「本質」の正しい答えというよりは、その人それぞれに考える「本質」があるということにもなります。しかし私は、症状が「なぜ治るのか、なぜ治らないのか」にとても興味があり、治療家としてずっと結果を追求してきました。そのような意味では原因療法、本質的療法を追究し、ある意味ではそのことに執着してきた治療家だといえます。

治療家の中で根本療法と言っている人に遭遇することがありますが、症状の原因と結果を追求すればするほど「根本」とは言えない深い領域があることは認めざるを得ないと私は考えています。それが故に「根本療法」とは言い難いところがあり、その方向性を含めて本質的療法と言うようにしています。

このたびの「本質を見抜く」というテーマで、治療法に限らず、物事の見方や捉え方において、本質を見抜くためには「蟻の目、鷹の目、魚の目」で多角的、多面的にみる観方も大切だという話もしました。「人間万事塞翁が馬」という「本質」に触れたことわざのように、今はコロナウイルス感染禍で不幸に悩まされても、その不幸が原因で幸運を引き寄せたという話はよく耳にします。大切なのは、この困難をどのように受け止めて、どのように今を生きるか—。私たち自身の「本質」が問われているのだと思います。もしも、今回の禍を否定的にだけ受け止めるのであれば、それはあなたにとっての「本質」になるでしょうし、肯定的に受け止めるのであれば、それもあなたにとっての「本質」なのだと思います。

私は今回のコロナウイルス感染禍によって、自分自身の成長が試されているような気がしています。「今までに考えたことのない『知恵』をもっと出せ」と誰かが叱咤激励しているような声が聞こえてきます。

連載 第4回

からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜

安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)

2)食にまつわる微生物(つづき)

b)狂牛病
狂牛病(mad cow disease)とは、ウシ海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy:BSE)のことです。すなわちウイルスよりも小さな異常(悪玉)プリオン(prion)と呼ばれる病原体をもつスクレーピー(scrapie)病の羊から作られた濃厚飼料である肉骨粉を与えられた牛が感染させられ、その牛の脳が海綿状になるものです。
英国で発生し、欧州全土に広がり、そのため1988年に英国は肉骨粉を濃厚飼料として使用することを禁止しました。その翌年、英国はこれを牛のプリオン病として発表しました。ただ1990年以降に生まれた牛にもわずかながら狂牛病の発生がみられることから、飼料のみならず母子感染によることもあると思われます。1995年末までに157,223頭の牛に狂牛病の発生が確認されました。

牛のプリオン病は3-6歳に発症し、2週間から6か月の経過を経て死亡するものです。その間、運動時における協調運動の失調や興奮状態がみられ、攻撃的になったり起立不能になったり異常な行動がみられます。
ヒトへの影響としては、1980年代にすでにウシ海綿状脳症の病原体への、すなわち異常(悪玉)プリオンへの暴露があったものと思われます。これは英国で最初、例えばハンバーグに脳などのくず肉が混ざっていたためと十分考えられます。

1994-96年にかけて英国でウシ海綿状脳症の変形、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)の発症がみられるようになり、世界的な問題となりました。CJDとは進行性の脳症のことで、知能の低下、大脳皮質性の視覚障害、小脳性の運動失調、パーキンソン症候群、そしてミオクローヌス(間代性筋痙攣の一種で速く不規則な不随意運動が生じる)などの病状が進行する疾患で、特にその変形の場合はより年齢の若い層に発生する傾向があります。狂牛病の感染にとって特定危険部位とは、牛の眼球、脳脊髄(脊髄液・硬膜を含む)、こめかみ肉(脳に隣接し三叉神経などを介し汚染される可能性が高い)、舌と頬肉を除く頭部の肉、そして小腸の一部などを指します。(次号へつづく)

連載…22

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳
倫理的バウンダリー :倫理に関する質問集(3)

<例1> 僕はもしクライアントがそうしているのが快適だというのであれば、いつも身体をシーツで覆っている必要なんかないですよと、クライアントに言っています。
<例2> 私はBobとデートしたかったので、彼に無料でマッサージをしてあげると言って私のオフィスに招待しました。そのセッションは無料だったから、私のプロとしてのイメージには影響しないでしょ。

例1の男性セラピストの発言が、私たちや業界に対してどんな悪影響を与えるか想像がつくと思います。たとえばセラピーを検討している客が、マッサージセラピストはシーツで身体を覆うことを要求しないということを耳にしたとします。そのことはこの客のセラピストあるいは業種に対する見方を狂わせますし、またもし、彼が通常は身体をシーツで覆うことが基準になっているという事実を知らなければ、すべてのマッサージセラピストに対する見方が狂ってくるのです。

次の例では、社交的または性的な要因をワークやオフィスに持ち込むこと自体が、たとえ営業時間外であろうと良くない考えです。そんな事実を耳にしたクライアントやそのほかの人は、あなたがロマンティックな関係と仕事をごちゃ混ぜにしていると思ってしまいます。あなたは他人が勝手な想像を膨らませるようなことをしてはいけません。あなたやクライアントなど当事者たちにとっては潔白なことでも、世間の目にはどのように映るかわかりません。
もし地域の中でマッサージセラピーやボディワークの評判を落とすようなことをあなたがしでかすと、同じ地域で営業し暮らしている同僚や仲間はいい気持ちはしないはずです。なぜなら彼らは、風俗サービスを求める客からの電話をより多く受けるようになって尊厳を傷つけられる恐れもあります。また不愉快感を味わい、オフィスに性的な想像をして客がやってくる危険性さえあるのですから。しまいには自分の職業に向けられる他人からの白い目に耐えることにもなりかねません。

誰も真空状態で働いているわけではありません。施術者がプロの協会に所属していようがいまいが、彼らの行動が業界や地域に住むその他の施術者に影響を与えるのです。ですから、非のうちどころがないようにしておくことが一番安全なのです。あなたは、友達や同僚が安心して、彼らの年老いた叔母や思春期の息子や娘をあなたの元へ来させられるような振る舞いを心がけることが求められています。次号ではクライアントの尊厳について検討してみます。
(出所:『エデュケーティド・ハート』TheEducatedHeart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(87)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛やむち打ち症に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■【単純X線撮影】3)時には屈曲位か伸展位での撮影を必要とするかもしれない。4)意識がはっきりしていて理学所見のないグレード1の患者は、知覚麻痺をきたすようなアルコールや麻薬といった薬物の影響がみられない限り単純X線撮影は必要ない。

http://1.usa.gov/LYNegq

……頚部痛・凝り・圧痛だけで理学所見に異常のないグレード1は、基本的に画像検査の適応ではないということです。腰痛疾患と同じように、何でもかんでも画像検査を行なうのは明らかに過剰診療です。

■【画像検査】1)グレード1および2の患者に断層撮影・CTスキャン・MRI・ミエログラフィー・椎間板造影・シンチグラフィー・血管造影の適応はない。2)画像検査はグレード3の患者に専門家か外科医の判断で実施されるべき。

http://1.usa.gov/LYNegq

……上でも記したように頚部痛・凝り・圧痛だけで理学所見に異常のないグレード1ならびに頚部の症状に加えて筋骨格系所見があるグレード2はCTやMRIといった特殊な画像検査の必要はなく、それらは頚部の症状に加えて神経学的所見があるグレード3だけに限られるということです。

■【特別な検査】1)SSEPP(誘発電位)はグレード3の患者に専門家か外科医の判断で実施されるべき。2)EMG(筋電図)や神経ブロックはグレード2および3の患者に専門家か外科医の判断で実施されるべき。

http://1.usa.gov/LYNegq

……頚部の症状に加えて筋骨格系所見があるグレード2と、頚部の症状に加えて神経学的所見があるグレード3では、特別な検査が必要になる場合があるということです。

■【特別な検査】3)WAD(むち打ち関連障害)患者に対するその他の特殊な検査は、すべて専門家か外科医の判断に任せるべき。

http://1.usa.gov/LYNegq

……WAD(むち打ち関連障害)患者に画像検査以外の精査が必要か否かは専門家の判断に委ねられるということです。

■ケベック特別調査委員会はWAD(むち打ち関連障害:whiplash-associateddisorders)治療法として、次の15について勧告を出している。すなわち「頚椎カラー」「安静」「頚椎枕」「マニピュレーション」

http://1.usa.gov/LYNegq

……これからWAD(むち打ち関連障害)の治療法に関する勧告を紹介していきますけど、ここで診断について簡単にまとめておきます。頚部痛・凝り・圧痛だけで理学所見に異常のない「グレード1」にレントゲン撮影などの画像検査は必要ありません。頚部の症状に加えて筋骨格系所見がある「グレード2」と頚部の症状に加えて神経学的所見がある「グレード3」はレントゲン撮影が必要ですが、基本的にCTやMRIなどの画像検査の適応はありません。

■「モビリゼーション」「運動」「姿勢のアドバイス」「スプレー&ストレッチ」「牽引」「物理療法」「外科手術」「ステロイド注射」「無菌水注射」「薬物療法」「その他の治療」である。h
ttp://1.usa.gov/LYNegq
……文字数制限がありましたのでここでもう一度。「頚椎カラー」「安静」「頚椎枕」「マニピュレーション」「モビリゼーション」「運動」「姿勢のアドバイス」「スプレー&ストレッチ」「牽引」「物理療法」「外科手術」「ステロイド注射」「無菌水注射」「薬物療法」「その他の治療」に関する勧告をご紹介します。

 N  E  W  S

NEWS ■ 男性6793歩、女性5832歩…1日の平均歩数

厚生労働省が10月に発表した定期調査「国民健康・栄養調査」の最新版となる2019年分における概要報告書から、その実情を確認する。今回の調査結果では、1日平均の歩数は男性6793歩、女性5832歩となり、女性より男性の方が高い値が出ている。これは平均値だけでなく、各年齢階層別に見ても同様の結果が確認できる。体力の減退などの理由から、歳を重ねるに連れて歩数が減っていくのは仕方のない話ではある。しかし実情としては20〜50代までは大きな違いは無く、60代で初めて大きく減る動きを示しているのは興味深い。
高齢によるケガのリスクを考えた上での自制は別にしても、若さがありあまる年齢のうちは、積極的に歩くよう心がけたい。それだけでも十分な運動になり、体を鍛えることにもつながるのだから。昨今では数百円で歩数計を手に入れることもできる。携帯電話には歩数計機能を持つものもある。最近では「Ingress(イングレス)」や「ポケモンGO」のように外歩きを促進させるデジタル世代の遊びも提唱されている。自分の歩数実態を把握し、「歩くこと」を健康管理の一環としてみてはいかがだろうか。
(11/5 不破雷蔵・ジャーナリスト=部分)

NEWS ■ ヒトの体には2つの「季節」が存在する

1年には四季があるが、ヒトの体には4つではなく2つの「季節」が存在する可能性が、米スタンフォード大学遺伝学分野教授のMichael Snyder氏らによる研究で明らかにされた。研究結果の詳細は「Nature Communications」オンライン版に掲載された。この研究で対象とされたのは、25〜75歳までの105人(女性55人)。参加者は、1年に4回程度、4年にわたって血液サンプルを提供した。Snyder氏らは、その血液サンプルを基に、免疫、炎症、心血管の健康、代謝、マイクロバイオーム(微生物叢)などに関わる分子情報を分析した。
その結果、1年単位で見ると、ヒトの体内では1 000以上の分子が増減しており、それらの分子の変動パターンから、主に2つのグループに大別できることが明らかになった。そして各グループの分子の増減のピークは、米カリフォルニア州では、晩春と、晩秋から初冬にかけての季節に相当することも判明した。晩春には、アレルギーへの関与が知られる炎症性バイオマーカーの上昇や、関節リウマチおよび変形性関節症に関与する分子の急増が認められた。また、2型糖尿病のリスクを示すタンパク質であるHbA1cの値や、睡眠-覚醒サイクルの重要な調節因子であるPER1遺伝子の発現レベルがピークを迎えるのも晩春であった。
一方、初冬には、ウイルス感染の防御に役立つ免疫分子や高血圧に関連する分子の増加が認められた。また、ニキビ(ざ瘡)の発生に関与する分子の増加がピークとなることも確認された。ただし今回の研究対象者はカリフォルニア州の住民に限定されている。Snyder氏は「居住地域が変わればそこに住む人々の分子パターンは異なる可能性が高い」と述べている。
(11/3 TMS-net=部分)

NEWS ■ 新型コロナ、O型の人は感染しにくい?

血液型が、新型コロナウイルスの感染リスクや感染した場合の重症化リスクに影響を与える可能性を示唆する研究結果が「Blood Advances」に掲載された。これらの研究から、O型の人は新型コロナウイルスに感染しにくく、感染した場合も重症化しにくいことが示されたという。この研究は、オーデンセ大学病院(デンマーク)のTorben Barington氏らが実施した後ろ向きコホート研究で、ABO式血液型と新型コロナウイルスへの感染のしやすさの関連について検討された。
解析対象者はデンマークで新型コロナウイルスの検査を受けた全ての人(47万3654人)と非感染者である一般集団220万4742人(対照群)。新型コロナウイルスの検査を受けた人のうち、RT-PCR検査で新型コロナウイルス陽性と診断されたのは7422人(陽性群)であった。それぞれの血液型の人が、対照群と陽性群に占める割合を比較した結果、O型の人が占める割合は、陽性群では38.41%であったのに対し、対照群では41.69%に上った(O型の人の新型コロナウイルスに感染する相対リスクは0.87)。その一方で、A、B、AB型の人が占める割合は、いずれも対照群に比べて陽性群での方が多かった(A型:42.39%対44.41%、B型:11.46%対12.09%、AB型:4.47%対5.09%)。この結果から研究チームは、A、B、AB型の人は、O型の人よりも新型コロナウイルスに感染しやすい可能性があると結論付けている。
(11/4 CareNet=部分)

NEWS ■高齢者の転倒をダンスで予防

ダンスを楽しむことが高齢者の転倒予防につながるかもしれない。その可能性を示す論文が「JAMA Network Open」オンライン版に発表された。チューリッヒ大学(スイス)のMichele Mattle氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、ダンスなどの身体活動と転倒リスクの低下に有意な関連が認められたという。
先進国では65歳以上の約3割が年に1回転倒し、80歳以上ではその割合が約5割に上るとの報告もある。また転倒を起こした場合、その5〜7%が骨折を来すという。Mattle氏らは今回の研究で、頭を使いながら行う「ダンスベースの運動」(dance-basedmind-motor activities)に着目し、そのような運動に転倒予防効果があるか否かを、これまでの報告を統合して解析した。ダンスベースの運動とは、音楽や呼吸などのリズムに合わせて立位で行う運動と定義した。計29件のランダム化比較試験の論文が抽出された。研究が実施された地域は北米や欧州、アジア、南米など世界各地域に及び、対象者数は19〜684人で、女性の割合が高かった。介入期間は6週間〜12カ月で1回あたり35〜120分、多くは週に2〜3回の介入を行っていた。
メタ解析の結果、ダンスベースの運動は転倒リスクの有意な低下と関連していた〔リスク比(RR)0.63、95%信頼区間0.49〜0.80。発生率比(IRR)0.69、95%信頼区間0.53〜0.89〕。Mattle氏は、「結果には一貫性が認められ、われわれは良い意味で驚いた」と述べている。Mattle氏によると「話しながら歩くといったマルチタスクを実行する能力は加齢に伴い衰える。これに対し、ダンスベースの運動は頭を使いながら身体を動かすために、予想外の状況に陥った時でも瞬時にバランスを保持して対応するための良い訓練になる」としている。
(11/3 TMS-net=部分)

NEWS■坐骨神経痛に早期の理学療法が有効か

坐骨神経痛と背部痛のある患者には、早期の理学療法開始が良い結果につながる可能性のあることを示唆する臨床試験の結果が明らかになった。米ユタ大学College ofHealthのJulie Fritz氏らによるこの研究結果は「Annals of Internal Medicine」オンライン版に掲載された。
Fritz氏らは、坐骨神経痛の診断後、早い段階での理学療法の開始により、回復が早まるかどうかを調べるための臨床試験を実施した。この試験には、過去90日以内に坐骨神経痛を発症した、18〜60歳の患者220人が参加した。これらの患者が坐骨神経痛で苦しんでいた日数の平均は、35日間だった。このうちの半数(110人)を、4カ月にわたり理学療法(PT)を行う群(早期PT群)に、残る半数を、経過観察のみ行う群(対照群)にランダムに割り付けた。早期PT群では、患者の症状に合わせて内容を調整した運動療法と腰椎モビライゼーションなどの徒手療法が行われた。
その結果、早期PT群では、治療開始から4週間後、6カ月後、および1年後のいずれの時点でも、対照群と比べて、OSWスコアが大きな改善を示した。PTを始めるには痛みが強過ぎるため、運動を行える状態になるまで鎮痛薬の使用が必要な患者もいる。Portugal氏は全ての坐骨神経痛患者に有効な治療法は存在しないとし、今回の臨床試験では“管理された方法”で身体活動を維持することの有用性が示されたとの見解を示している。
(11/1 TMS-net=部分)

NEWS ■膝関節の痛みにウコンが有効か

カレーに使われるスパイスであるターメリック(ウコン)が、膝関節の痛みを和らげてくれるかもしれない。タスマニア大学メンジーズ医学研究所(オーストラリア)のBenny Antony氏らが実施した臨床試験で、ウコン抽出物に変形性膝関節症の痛みを軽減する効果のあることが示された。「Annals of Internal Medicine」オンライン版に掲載された。
今回の研究では、症状のある変形性膝関節症患者70人を、ウコン抽出物を12週間にわたり1日2カプセル摂取する群(ウコン投与群36人)とプラセボを1日2カプセル摂取する群(プラセボ群34人)にランダムに割り付けて、膝の疼痛軽減に対するウコン抽出物の有効性を検討した。その結果、試験開始12週間後に、ウコン投与群ではプラセボ群と比べて、視覚アナログスケール(VAS)で評価した膝の痛みが改善したことが明らかになった(−9.1mm、95%信頼区間−17.8〜−0.4、P=0.039)。
また、変形性膝関節症に特異的なQOL尺度で、痛み、こわばり、身体機能の3つのサブスケールから成るWOMAC(WesternOntario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)を用いた評価でも、痛みの軽減が確認された(−47.2mm、95%信頼区間−81.2〜−13.2、P=0.006)。一方、MRIによる測定では、滑膜炎に伴う滲出液の量に変化は認められず、関節軟骨の構成成分にも変化は認められなかった。Antony氏は「スパイスは大量に摂取すると胃腸障害を引き起こす可能性があるが、ほどほどの量の摂取であれば安全だと考えられていることから、ウコンを試してみる価値はある」としている。
(10/29 TMS-net=部分)

NEWS ■五十肩の手術治療、理学療法に対する優越性示せず

凍結肩(frozen shoulder;五十肩)の治療において、麻酔下肩関節授動術(MUA)、内視鏡視下関節包切離術(ACR)および早期構造化理学療法(ESP)は、いずれも1年後の患者報告による肩の痛みや機能を大きく改善するが、これら3つの治療法に、臨床的に明確な優越性を示す差はないことが、英国・ヨーク大学のAmar Rangan氏らが実施したUK FROST試験で明らかとなった。研究の詳細はLancet誌10月号に掲載された。
研究グループは、外科的介入と非外科的介入としてのステロイド注射を含むESPの有効性を比較する目的で、実践的な無作為化優越性試験を行った。対象は年齢18歳以上、患側の肩の他動的外旋が健側肩の50%未満に制限されることで特徴付けられる片側性凍結肩の臨床診断を受けた患者であった。被験者は、MUA、ACR、ESPのいずれかを受ける群に、2対2対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは、割り付けから12ヵ月後のオックスフォード肩スコア(OSS、12項目の患者報告アウトカム、0〜48点、点数が高いほど肩の疼痛と機能が良好)とした。2つの外科的治療とESPでOSSの5点の差(臨床的に意義のある最小差)、または2つの外科的治療間の4点の差を目標に検討を行った。
12ヵ月の時点で、OSSのデータはMUA群が189例(94%)、ACR群が191例(94%)、ESP群は93例(94%)で得られた。平均OSS推定値は、MUA群が38.3点(95%信頼区間[CI]:36.9〜39.7)、ACR群が40.3点(38.9〜41.7)、ESP群は37.2点(35.3〜39.2)であった。臨床的に意義のある最小差(4〜5点)は達成されなかった。著者は「これらの知見は臨床医にとって共同意思決定において患者と治療選択肢について話し合う際に有用と考えられる。また、外科医には、より安価で侵襲性の低い介入が失敗した場合に、関節包切離術を行うことが推奨される」としている。
(10/25 TMS-net=部分)

NEWS ■ゲーム感覚でリハビリ。仮想世界で体の機能回復

病気やけがで失われた身体機能を訓練によって取り戻すリハビリテーションの分野で、仮想現実(VR)技術を使った新たな手法が注目されている。ゲーム感覚で楽しみながら課題をクリアしていくことで、体の動きやバランス感覚を少しずつ回復させる狙い。リハビリを手伝う医師や療法士と患者の体があまり密着しないのもメリットだ。新型コロナウイルスの感染リスクを抑えながら、患者が元気な生活を取り戻すのに役立ちそうだ。
装置は大阪府豊中市の医療ベンチャー、mediVR(メディブイアール)が開発した「カグラ(神楽)」。兵庫県西宮市の兵庫医大病院リハビリテーションセンターは今年から1台導入し、実際の患者で効果を調べている。カグラを考案したのは島根大学の原正彦客員教授。心筋梗塞が専門の循環器内科医だったが、2016年に起業し昨年3月から販売を始めた。すでに病院やリハビリ施設など全国10数カ所で使われている。原さんは「うまく歩けないのは脚力が衰えたからだと考えがち。だが実際は上半身のバランスが重要だ」と話す。
仮想空間の狙った位置に正確に手を伸ばす練習をすることで、脳と体の”ずれ”を修正してバランスを回復させる。歩く以外の体の機能にも効果があるという。「何よりも楽しみながら続けられる」と原さん。「お年寄りに『水戸黄門ゲームをやろう』と言うと『うん、やるやる』と返ってくる」と語る。新型コロナの国内流行では、集団感染が起きて患者の受け入れができなくなったリハビリ施設が相次いだ。VR装置をうまく使えば、患者と療法士の濃厚接触を最小限にとどめることができそうだ。
(10/20 共同通信=部分)


次号のメールマガジンは2020年12月15日ごろの発行です。

(編集人:北島憲二)


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