エンタプライズ発信〜メールマガジン【№127】 2021. 11
小学生が使うランドセルについて議論がわいています。重すぎるというのです。今ごろ?という感はあるのですが、生体力学の観点からも見逃せない事象ではあります。テーマは「ランドセル症候群」です。信頼できる調査によると、小学1〜3年生1300人にアンケートをとった結果、およそ3人に1人がランドセルの重さや体にフィットしないなどの理由で体の不調を訴えていることが判明しました。たしかに自分のランドセル通学を思い起こすと、「教科書やノートが重い!」と感じていたような気がしますが、その比ではないようです。実態調査によると、平成17年度と令和2年度の全教科の教科書のページ数は4857pから8520pに増えています。加えて教科書の大判化+カラー印刷化によるインクの重さで重量が増したことも背景にあります。ほかにも要因があります。令和2年度からはICT(情報通信技術)教育が推進され、一部の小学校では電子端末の配布が開始され、ただでさえ重いランドセルがさらに重くなっているのです。米国の研究では、背負う荷物の重さは一般的に体重の10%が望ましいという解析値が出ています。小学1〜3年生の平均体重は約25kgなので、2.5kg以下が適切な重さだと言えます。しかし調査結果によると、およそ66%の子どもが3kg以上のランドセルを背負っていることがわかりました。反射的に「置き勉」による荷物の軽減はできるのではと思いますが、置き勉を禁止されている小学校は全体の46.8%にものぼるそうです。神経筋骨格系をみている臨床家からすると、まだ筋肉が十分できていない華奢な体つきの子どもが重いランドセルを背負うと、重みで後ろに引っ張られるので、バランスをとるために頭を前に倒すと猫背やストレートネックなどになることが第一に考えられます。また成長期の子どもに多い側弯症を予防するためにも、あらゆる場面で正しい背負い方や姿勢を教え、指導することが望まれます。
★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━★☆★
【1】 エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【2】 “こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【3】 からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【4】 円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】 N・E・W・S
連載vol.85
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
結 論(つづき)
本書の大きなテーマの一つは、生体がどのように構造と機能を統一させ、その統一を維持しているのか、あるいは生体内の細胞や組織はどのようにしてコミュニケーションを取り合っているのかを考察することだ。生体には、防御反応、自他の認識、組織の修復といった医学的にも重要な調節機能があり、これらの調節機能を解明する一つの方法として、鍼やそのほかのエネルギー療法の原理を生物物理学的に探ることが有用と考えられる。
自己防御や修復反応といった調節機能は進化論的に古い仕組みであり、「動物の進化とともに必要な新しい機能を付加したり、バージョンアップを繰り返しながらも、もともとの性質を何千年も保てるだけの知恵と適応力」を備えていた。鍼療法の原理とは、この進化論的に古い調節機能を刺激することであり、神経系などの「新しい」調節機能に注目する西洋医学との大きな違いはこの点にある。
生物物理学研究がもたらした最大の効果は、東洋医学でも西洋医学でも解決できなかった問題の答えを見い出したことだろう。その重要な答えの一つが、傷ついたり失ったりした組織の再生である。
生物物理学の研究は、物理学にも貢献できる可能性がある。物理学の研究テーマの中で、多様な物理学的法則に従う種々のシステムが完璧に協調・協力しあって、一つの機能を生み出すという現象があるだろうか。生物は、既知の、あるいは未知のあらゆる形態のエネルギーを利用し、相互変換している理想的な物理学的システムだ。このようなエネルギー変換を行うために、生体は必ず量子力学的原理を活用しているはずだが、その原理は無生物を相手にしている物理学者には想像もつかないものだろう。
この項においては、「経絡が本当に存在するのなら、なぜ西洋医学的研究で証明できなかったのか」という問題にも迫ってみた。経絡は生体の各所に存在する結合組織や細胞骨格によって形成されるので、解剖学的に独立した器官として識別できないのである。経絡の特性は、マクロな解剖学的構造から生まれるのではなく、生体マトリックスの目に見えない半導体的性質や量子力学的性質から生まれると推測される。
一般に、エネルギーの流れは目で見ることのできない現象であり、軟部組織を流れるエネルギーが解剖学的に独立した経路を通っているのかどうかについて、視覚的に判断することはできない。経絡を見つけ出す最良の方法は、何千年も前から鍼師たちがしてきたように、組織のエネルギー的性質を探ることしかないのだろう。
鍼療法の生物物理学的原理に関する研究は、まだ始まったばかりである。科学の新しい分野を切り開こうとするとき、最初に必要なのは「情報収集」だ。つまり研究テーマに関するあらゆる情報を集め、実験によって証明するべき現象を知り、追究するべき問題を探し、答えのありそうな場所を見つけなければならないのだ。(この項つづく)
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊 2005 )
連載エッセイ 94☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
歯科の噛み合わせ基準による意味づけ問題(下編)
歯を噛み合わせる、口を大きくあけるなどの動作で誤作動反応があれば、顎関節に何らかの機能異常の症状を生じていることがほとんどである。逆にいうと、それらの検査で誤作動反応がないにもかかわらず何らかの問題があるのは、今回の事例のように「意味づけ」による問題と言える。 スマートな患者さんで、いろいろと理論的なことは理解されているが、肝心の自分の身体の治る力、柔軟性を信じていないところがネックになっているように思う。
人間の身体は本来、柔軟性、適応力があり、様々な環境に順応し適応させる力がある。人間はそもそも左右不対称な生き物で、左右の噛み合わせがミクロ単位で異なることは多少なりともあるだろう。
人間を機械構造論的に捉えて、左右の不対称が不健康だとしたら、パラリンピックで活躍している選手の健康をどのように捉えるのだろうか? 厳密に人間の身体を左右比較すると、不対称であるのが自然である。また、ストレスを受けたり、時と場合によってヒトの構造も多少なりとも変化するのが自然であり、正常だといえよう。たとえ歯の噛み合わせが正常でも不健康な人はいるだろうし、医学的に問題がなくても、本人にとってはつらい健康問題を抱えている場合もある。ヒトの健康をサポートする治療者にとって、患者さん自身が自分の身体の本来の健康、治る力を信じられるようにサポートすることが大切だと思う。もしも、噛み合わせに囚われている患者さんがいたら、それがすべての健康の基準ではないことをアドバイスしてほしい。
医学や様々な健康法の理論、理屈はあるが、基本的に人間の身体には目には見えない治癒力が備えられている。不健康な時にそれが信じられないから医療に藁をもすがる思いで利用するのであるが、根底にあるのは自分自身の生命力であり、その本質があるが故に、私たち治療者も健康のお手伝いができるのである。巷では「神の手」「神の〇〇」などと、あたかも凄技の治療者を持ち上げるメディアもあるが、根底には患者自身の生命力をいかに引き出すことができるかどうかが肝心で、治療者が生命力を患者に与えることはできない。
今回の患者さんにはできるだけ、今までの治療効果も含めて「意味づけ」による問題を丁寧に説明させていただいた。予約を2日続けて取られていたが、次の予約は必要ないと感じたようで、2回目の予約は治療後にキャンセルされた。「意味づけ」による問題から解放されて、もっと自分の身体の柔軟性、治癒力を信じてさらに健康的な自分を取り戻してほしいと願う。
からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜
安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)
4)睡 眠
b)「眠り」のリズムの不調
睡眠の主な目的の1つに、脳の加熱のクールダウンということがあります。そのため体温は就寝後5時間目までは次第に低下していきます。また人には、一晩に発汗および不感蒸泄という100-200ccすなわちコップ1杯ほどの寝汗および皮膚と肺からの蒸散があります。したがって掛け布団と敷き布団の間の気候すなわち寝床気候はきわめて重要となります。その気候は、人の皮膚温の平均値にほぼ等しい33℃、その湿度は、人の皮膚にとって0%のカラカラでも100%のべとべとでもない、その中間のしっとり爽やかな状態である50%前後が一応の目安になります。
ところで、体の温度には2つあり、それは脳・内臓など体の中心の温度である核心温度(37.1℃)と、皮膚・筋肉など体の外側の温度である外殻温度です。暑いときには内側の核心温度がたとえ37.1℃であったとしても、皮膚血管が拡張し、各臓器組織を流れる血液に熱が伝導され、皮膚表面を流れるとき冷たい外気の影響を受け、熱を放散し、外側の外殻温度は36℃ほどになります。
寒いときには、熱は内側の核心温度に集まって頭や心臓などに熱がこもり、四肢すなわち手や足は、それぞれ36→32→28℃、34→31℃というように末端にいくほど温度が下がります。その最たる例が冬山の遭難における凍傷です。その場合、不幸なことですが、壊死により手足の一部の切断を余儀なくされることもあります。大切な生命維持の臓器である脳や心臓を守るためそのようになるのです。
そしてそうした体温の調節をしているのが自律神経であり、その中枢が視床下部の体温調節中枢であり、ここは2つに分かれています。その1つは、前視床下部の熱放散の中枢すなわち温中枢であり、いま1つは後視床下部の熱産生の中枢、すなわち冷中枢です。
ところが、こうした自律神経系が不調なときによくあるパターンとして、上体がほてり、下半身が冷え、頭がぼーっとし、足が冷え、とても寝付かれないことがあります。上記のように眠りの目的の1つが脳の加熱のクールダウンにあるならば、この場合「頭寒足熱」に努めるべきです。つまり頭は熱をもたせず、足は冷やさないということです。すなわち頭頚部は冷やせということではなく、ちょっと涼しく保ち、足部は冷やさずやや温めることです。
具体的に書けば、体温が36.5℃だとすれば、頭頚部は32℃、足部は37‐37.5℃が適温です。それが眠りの間にも、この自律神経系を快調に働かせ、足部を中心に末端を冷やさず、寝付きよく熟睡につながる方法の1つです。
円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
他の専門職を失礼に扱う
倫理規定:
私たちの技術レベルやマニュアルセラピーのやり方が、他の施術者や他の種類のボディワークよりも優れているかのようにクライアントにほのめかすのは倫理に反しています。
履 行:
もしあなたが他の施術者を中傷すれば、クライアントにはあなた自身に自信がないように映ってしまいます。あなたが批判的な発言をすればクライアントはあなたのことを白眼視するかもしれないし、クライアントの判断力(いい治療家探し)についても疑問視していることにつながってしまうのです。ですから、もし話が出たら、他の施術者の評判も大切にしましょう。
他業種についても同じことが言えます。他の医療業種を軽視したりすると、あなたはちっぽけな存在に見られるし、それらの治療を良く思っているクライアントの気持ちを傷つけることになります。
クライアントが他の施術者についてイヤそうに話をしているのであれば、あなたは中立の立場にいる必要があります。「それはあなたにとって不快な体験になってしまったようですね」と言ってみましょう。またそんな経緯であなたのワークを十分に享受できていない様子があったら、その施術者との関係を終えるよう提案しても良いでしょう。「他の施術者のワークについてはコメントできませんが、あなたはまだ腹を立てているようですし、電話か何かで、なぜあなたが彼のワークに満足しなかったか彼に知らせることは、あなたにとってもその施術者にとっても有益かもしれませんよ」と言ってみてください。
(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )
N E W S
「このところ『ぎっくり腰』で診察にいらっしゃる患者さんが増えています。長引くコロナ禍と、急な冷え込みが関係していると考えられます」。こう話すのは、東京・お茶の水セルクリニックの院長で、整形外科医の寺尾友宏さんだ。 先月、東京や大阪などで出ていた時短営業の要請が解除された。また各地方で県内旅行限定の割引クーポンが発行されたことなどもあって、出歩く人が急激に増えている。 一方、先月中旬ごろから日本各地を寒波が襲った。10月22日には東京の正午の気温が10.7度と12月中旬並みの寒さに。 こうした「寒波」と「自粛明け」が“ぎっくり腰”急増の要因になっていると寺尾さんは言う。 「コロナ禍で運動や外出を控えて、筋肉を使う機会が減った人は少なくありません。筋肉は、使わなければ減り、硬くなってしまいます。そこに急な冷え込みがあると、血管が収縮し血行が悪くなる。この『体が固まり、血行が悪くなっている』状態がぎっくり腰を招くのです」
リモートワークも要因としてある。ぎっくり腰のなかで「最も痛みが強い」といわれるのが、椎間板に傷が入ることで起こるものだが、「背骨が凝り固まっていると、多くある椎間板のうち、一部しか動かされません。すると、そこにばかり負担がかかり、傷ができて裂けてしまうんです」。 またリモートワークなどでの“座りすぎ”も、ぎっくり腰の急増に影響している可能性がある。「背骨は肋骨と接している範囲の動きが少ないのに対して、それ以外の首に近い部分や腰に近い部分の動きは大きく、その部分の椎間板に負担がよりかかりやすくなっています。特に、座っている状態は、腰の部分の椎間板に常に圧力がかかる状態になります」。座りすぎで腰に蓄積したダメージと、運動不足による筋肉の衰え。そこに寒さが重なった現在の状況は、今までぎっくり腰になったことがない人も要注意だという。
(11/23女性自身=部分)
靴の中敷き=インソールのオーダーメイドが静かにブレイク中です。インソールと靴の専門店「足道楽」で販売されているインソールは、24,980円と高額にもかかわらず、3年半で累計2.3万足も売れたそうです。社長の三河尚さんに製作の過程を聞きました。
「まず専門スタッフがヒアリングを行ったあと、足の可動域や形状、硬さなどを触診で確認します。次に、椅子に座って足を浮かせた無加重の状態で片足ずつ長さ・横幅など、足本来の大きさを測ります。純粋な足裏の形に合わせたインソールにすることで、本来の正しい姿勢を取り戻し、立った時の足首の歪みを矯正することを目指します。形状測定後は、体重がかかっている足の部分や歩き方の癖を調べるため、手型ならぬ『足型』をとり、足圧(足裏の圧力)のかかり方のクセを見ていきます」(三河さん)
次に具体的なインソール作りに入っていきます。「インソールは3層構造(上層・中間層・下層)。最大の特徴は中間層で、一定の高温下で自在に変形するコルク素材を使用しています。 コルクを180度に設定したオーブンで熱し、粘土のように柔らかくし、上層(複合素材)のかかと部分の外側に沿わせるように貼り付けます。そのコルクが熱いうちに、指でこねるようにして、各人の足裏の形に合わせて変形させます。
コルクの形が整ったら、その上から下層(樹脂素材)を貼り合わせ、足裏に当てながら、インソール全体を最終成形していきます。最終成形時も、高い椅子に座り、足を地面から浮かせた状態(無加重状態)で行います。その際、足首から下全体をビニール袋で包み、袋の中の空気を抜きながら真空状態をつくります。足本来の形にインソールが吸い付くような状態を保ち、コルクが固まるのを3分ほど待ちます。 最後にインソール自体の長さを調整すれば完成です。土踏まずのくぼみに沿い、踵を包み込む、足本来の形にピッタリ収まる『世界に一つだけのインソール』が完成します」(三河さん)
ここまでの時間は30〜45分。そのまま店内で自分だけのインソールを完成させることができるのだそうです。
「まだ体の各所に痛みが出ていない方でも、インソールを入れてしっかり足元を支えることにより、加齢などで起こりやすい不調・痛みを防ぐことができるはずです。インソールを入れることで姿勢が良くなり、気持ち良く歩いたり走ったりすることもできます」
(三河さん)(11/13 まいどなニュース)
人工膝関節置換術(TKA)を受けた患者ではオピオイド依存症になる人が多く、深刻な問題となっている。こうした中、術中に耳介への鍼通電療法を行うことで痛みが軽減され、オピオイド依存症リスクの低下にもつながる可能性のあることを示した研究結果が明らかになった。米ワイルコーネル医科大学麻酔学分野のStephanie Cheng氏らが実施。結果は米国麻酔科学会議で発表された。
研究ではTKAを受ける41人の患者に対し、術中に標準的な麻酔プロトコルに加え、鍼通電療法を実施した。この鍼治療は、耳の8カ所のツボに刺した細い針に弱い電流を流すというものだった。
その結果、鍼通電療法を受けた患者では、術後30日間にわたって低用量のオピオイド(15錠以下)服用で済んだ患者の割合が65%(26人)に上り、このうちの3人はオピオイドをいっさい服用することがなかった。これに対して通常は、TKAを受けた患者で術後に使用するオピオイドの量が同程度まで抑えられる割合は、わずか9%に過ぎないという。Cheng氏は、「術後の痛みに対してオピオイド投与に代わる治療法を探し出すことが急務だった。鍼治療が魅力的な選択肢となり得ることが分かった」と説明する。Cheng氏らは現在、膝以外の人工関節置換術を受ける患者に対しても鍼通電療法の検討を行っているという。
同氏は「ただ、そこまでの効果が得られず、術後に鎮痛薬が必要になるケースもある。その際にオピオイドが使われることもあるが、オピオイドはとても良い鎮痛薬で、適切な期間と量を守ることができるのであれば、果たすべき役割はある」と話している。
(11/10 HealthDayNews=部分)
慢性的な腰や背中の痛みで理学療法や薬物治療を試したものの、効果が得られなかったという経験がある人は多いだろう。こうした中、痛みに対する思い込みを払拭することを目指した心理療法によって痛みを緩和できる可能性が米コロラド大学心理学・神経科学のYoni Ashar氏らの研究で示唆された。この研究結果はJAMA Psychiatryにて発表した。
この研究は、過去6カ月間のうちの半分以上の日数で軽症から中等症の腰痛が生じた21〜70歳の男女151人(平均年齢41歳、女性54%)を対象に実施された。対象者は、疼痛再処理療法(Pain Reprocessing Therapy;PRT)と呼ばれる心理療法を4週間にわたって受ける群(心理療法群、50人)、生理食塩水を皮下注射するプラセボ群(51人)、これまで通りのケアを続ける群(通常ケア群、50人)にランダムに割り付けられた。PRTでは、最初に電話で医師が1時間にわたって患者の評価と教育を行った後、1セッション当たり1時間のセラピーが計8回実施された。
その結果、疼痛が完全に解消したか、ほぼ解消した患者の割合は、心理療法群では66%に達していたが、プラセボ群では20%、通常ケア群では10%にとどまっていた。また、心理療法群の脳のMRI画像では、痛みに曝されたときでも、痛みの処理に関連する脳領域の活性が大幅に低下していることが確認された。さらに、治療後1年の追跡調査時の簡易疼痛質問票(0〜10点。0および1点は痛みがない、またはほぼないことを表す)の平均スコアは、心理療法群1.51点、プラセボ群2.79点、通常ケア群3.00点であり、心理療法群では他の2群に比べて、1年後でも高い治療効果の持続が確認された。
Ashar氏は、「長らく、慢性疼痛の主な原因は身体の問題にあると考えられてきた。そのため、これまでの治療法のほとんどが身体の問題を標的としていた」と説明する。さらに同氏は、「今回の研究で確認された疼痛の軽減効果は大きく、効果の持続期間も長かった。慢性疼痛の臨床試験では極めて稀なことだ」と言う。なお、強い疼痛の管理に使用されるオピオイド系薬に関する臨床試験では、わずかな疼痛軽減効果が示されているに過ぎず、その持続期間も短いと同氏は付け加えている。
(10/27 HealthDayNews=部分)
電車の座席で居眠りをしているとき、体が突然「ビクッ」と動いて目が覚めた経験はないでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
Q.突然、体が「ビクッ」と動く現象は何でしょうか。
市原さん「医学的には『入眠時ミオクローヌス』といい、覚醒から睡眠への移行時、脳の誤作動によって手足の筋肉が収縮することで起こります。自分の意思とは関係なく、体が勝手に動いてしまう不随意運動で、どの年代、性別にでも起こり得る生理現象です」
Q.「ビクッ」となる現象が頻繁に起こる場合、何らかの病気の可能性もあるのでしょうか。
市原さん「頻繁に起こる場合、『周期性四肢運動障害』の可能性があります。これは睡眠中に手足が動くので、本人は無自覚なことが多く、眠っているはずなのに熟睡感が得られないことがあります。他には、てんかん発作の可能性もありますが、この場合は睡眠とは無関係です。 なお、てんかんにはさまざまな種類があり、数秒から30分以上持続するけいれん発作もあるので、時間だけでの区別は難しく、最終的には脳波などを検査することになります。入眠時、特に不自然な姿勢のときに『ビクッ』となるのであれば心配はありませんが、睡眠中や起きている時間帯に手足の不随意運動があれば神経内科を受診してください」
Q.「ビクッ」となる現象には、医学的な予防法はありますか。
市原さん「安定した睡眠導入によって予防できます。寝る前の過度のアルコールやカフェインの摂取、夜の激しい運動、夜更かしを控えることをおすすめします。ストレスによっても寝つきが悪くなるため、なるべくストレスをため込まないようにできるといいですね」
(11/11 オトナンサー編集部=部分)
むずむず脚症候群は、脚がむずむずする、うずく、ほてる、かゆいなどの症状が出て脚をじっとしていられず、脚を動かしたくなる病気です。脚を安静にしていられないことから、欧米ではレストレスレッグス症候群(Restless legs syndrome)と呼ばれます。症状は夜間やリラックスしているときに出やすく、動かすと楽になるという特徴があります。特に夕方から夜間にかけて発生・悪化すると言われていることから、睡眠が妨げられ、不眠症の原因になります。
むずむず脚症候群はなぜ起こるのでしょうか。久米クリニック(名古屋市瑞穂区)院長の久米明人氏は、原因は脳の鉄欠乏だと話します。「脳で鉄が欠乏すると、脳で分泌されるドパミンの日中の産生量が大きく増えます。一方、夜間にはドパミン産生が少なくなるので、むずむず脚症候群の患者さんは産生量の差が激しくなります。ドパミンには余計な感覚や興奮を脊髄でブロックする役割がありますが、その作用が日中と比べて夜間に急に弱まるために、ささいな感覚でも大きく感じられ、脚の違和感で脚を動かさずにいられない衝動にかられます」。
脳の鉄が不足する背景には体質が関係しています。脳に鉄が入り込みにくいタイプの人が存在し、この体質は遺伝しやすく、「当院を受診するお子さんの約30%は親やきょうだいもこの病気を持っています」(久米氏)。
むずむず脚症候群は日本人の1〜4%に見られ、女性の患者が男性の約2倍います。その理由について久米氏はこう話します。「女性は妊娠中に胎児に鉄分を取られるからだと言われています。そのため、出産経験が多い女性ほど発症しやすく、逆に出産経験のない女性は男性と同じ頻度だとされます。鉄欠乏性貧血と診断されている人は脳の鉄も少なくなっているので、むずむず脚症候群になりやすいと言えます」。このほか人工透析を受ける人にも多いことが知られています。 むずむず脚症候群と似た症状は脊柱管狭窄症や変形性脊椎症などの脊椎の病気、下肢静脈瘤、注意欠如多動性障害(ADHD)などがあります。
(10/25 日経グッデイ=一部改変)
両親に喫煙習慣があった子どもは、後年に関節リウマチ(RA)を発症しやすいことが、新たな研究で明らかにされた。論文の筆頭著者である、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の吉田和樹氏は、「この知見は最も頻繁に生じる自己免疫疾患の1つであるRAの発症に、喫煙および受動喫煙が大きな影響を及ぼすことを再認識させるものだ」と話している。Arthritis & Rheumatologyに掲載された。
吉田氏らは、1989年から2017年の間に、35〜52歳の米国人女性9万923人から2年に1度の頻度で集められた、看護師健康調査2(Nurses’ Health Study 2)質問票への回答データを収集。また、これらのNHS2参加者の診療記録から、RAの発症と血液中のRAに関わる抗体の有無についての情報も得た。その上で、統計的モデルを用いて、受動喫煙がRA発症に与える直接的な影響の大きさを推定した。
中央値で27.7年間に及ぶ追跡期間中に、532人がRAを発症した。解析の結果、小児期に親からの受動喫煙に曝露していた女性では、RAの発症リスクが75%高いことが明らかになった。このリスクは、対象者自身が能動喫煙者である場合にはさらに上昇していた。これに対して、母親の妊娠中の喫煙および18歳以降に喫煙者と同居した期間とRA発症との間に有意な関連は認められなかった。
吉田氏は、「小児期の親の喫煙と成人期のRA発症との間に認められたこの関係は、リウマチ学の範囲にとどまらない可能性がある。今後の研究では、小児期の吸入物の曝露により、後に、自己免疫疾患全般の発症リスクが増加する可能性について検討する必要がある」と、同病院のニュースリリースで述べている。
(9/25 HealthDayNews)
次号のメールマガジンは2021年12月15日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ