エンタプライズ発信〜メールマガジン【№122】 2021. 6
前号の巻頭コラムで単身高齢者とアルコール依存症について少し触れましたが、高齢者の一人暮らしは孤独感やうつ病など、心身状態を悪化させるリスクとなります。そんな中、動物学に関する国際学術誌に、日本人を対象とした研究論文が最近掲載されました。この研究は東京都大田区に在住する1万5500人の高齢者に対しアンケート調査を依頼、回答が得られた9856人(平均79.9歳)を対象に、心理的な健康状態および社会的孤立度やペット(イヌとネコ)の飼育状況の関連性などが検討されました。その結果、社会的に孤立している高齢者は、イヌを飼っている(または最近まで飼っていた)人に比べて、心理的な健康状態が良くないと報告した事例が1.22倍と有意に高く示されました(ネコの飼育と心理的な健康状態については関連性を認めませんでした)。イヌを飼うことができる人は、そうでない人に比べて、もともと心身状態が良い傾向にあったのかもしれません。そのためイヌを飼うことが直接的に高齢者の心身状態を改善していると結論づけることはできませんが、現下の新型コロナウイルスの感染拡大により、今まで以上に社会的な接触を避けることが求められる中で、イヌと触れ合うことは人の生活を豊かにする側面があると窺い知ることができます。今月にも米国アリゾナ大学の研究チームによって「イヌは学習せずとも、ヒトと社会的なコミュニケーションをとれる」、また「イヌのヒトとの社会的なコミュニケーション能力の40%以上が遺伝的要因によるもの」ということが明らかになりました。イヌは進化の過程で人間に可愛がられるような特性を獲得してきたと考えられています。ペットはイヌ派・ネコ派と好みはあるようですが、イヌは、人間の子どものように、私たちが送る社会的シグナルを理解して反応することができる動物なのかもしれませんね。
★☆★━━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】 エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【2】 “こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【3】 からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【4】 円熟したプロフェッショナルになるためのバウンダリー・マネジメント・スキル
【5】 N・E・W・S
連載vol.80
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
電子工学との共通点(つづき)
生体をコンピュータシステムにたとえて話をしてきたが、自然界には現代の電子工学をはるかにしのぐ知恵や技術があることだろうと思う。コンピュータはどれだけ性能を高めても電子がコンポーネント間を移動するのに一定の時間がかかるため、シグナルの伝達および処理速度が制限されてしまう。そこで電気の代わりに光や音を用いて、よりコンパクトで処理速度の速いシステムの開発が進んでいる。しかし新しいシステムが開発されても、生体に存在するマイクロサイズの超高性能システムには到底かなわないだろう。
生命は、物理学の法則ばかりを優先させるわけではない。物理学も化学も、そして量子力学も、生体マトリックスのシステムとして採用できるかどうかを、進化の中で「平等に」試されてきたはずだ。例えば電気光学や光磁気や聴覚光学を応用した集積回路が生体コミュニケーションシステムに役立つとすれば、自然界は、より性能を高めた形でそれらの回路を取り入れているのである。したがって今後は、固相生物物理学や量子生物学が、調節生物学の研究にとってますます力強い味方となっていくことだろう。
やがて量子ワイヤーや量子ドット、光共鳴、半導体ダイオード、量子井戸、自由電子レーザーなどに対応する生物物理学的システムが発見されるかもしれない。これらのシステムは、高速、高容量、省エネ、低騒音、コヒーレンス、暗号化や変換の容易さ、電磁波干渉対策、低毒性といった面できわめて有利な性質をもつ。さらに自己集合能をもったコンポーネントを作れるという意味でも、これほど便利なシステムはないのである。
一部の科学者は、生体が、超電導現象やプラズマ現象を活用している可能性を示唆している。今のところ、この仮説ははっきり証明されたわけではないが、その生物学的意義や技術的意義についてさらに研究を深める価値はあるだろう。
生体のコミュニケーションシステムや統合システムの本質を探り当てることはむずかしい。またこれらのシステムがどのように作られ、組み立てられ、そして各サブシステムがそれぞれの機能を果たしながら、全体としての連係と調和を保っているのかを詳細に明らかにすることは困難な仕事に違いない。しかしそのような研究こそ、生命のメカニズムや天然の物質からマイクロサイズの超高性能システムが作られる過程について、多くの情報を与えてくれるのである。そしてそれらの情報は医学や先端技術の様々な分野で活用されることだろう。(次号へつづく)
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊2005 )
連載エッセイ 89☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
「脳」 と 「Wi-Fi」
Wi-Fiを使っている人であれば経験していると思いますが、大雨の時や、多くの人が通信している時などはWi-Fiの通信が悪くなるのではないでしょうか? 確かなことは分かりませんが、おそらく同じ周波数帯で多くの電波が混雑して電波干渉を起こしているのでしょう。その時に行う対処法はWi-Fiの電源を一旦切って、再起動することです。すると大抵の場合は通信が正常に改善します。このような現象で思うのは、長年、臨床研究し続けている「脳の誤作動記憶」の調整についてです。
「脳」と「Wi-Fi」を同類にするのは、いささか無理があるかもしれませんが、目には見えない誤作動の現象は、脳や生体エネルギーの誤作動現象と類似しています。Wi-Fiの通信異常の原因の一つに電波干渉が考えられます。これは脳の誤作動記憶の原因の一つと類似していると思います。脳は見た目では柔らかい神経細胞組織の塊ですが、目には見えない電気信号の神経回路が密集しています。
何らかの体調不良がある場合、脳の電気信号や生体エネルギーの電波が混雑して電波干渉による誤作動記憶を生じさせ、生体機能に不具合を生じさせている現象であると言えます。施術では不具合を生じさせている電波干渉を引き出して、その信号を再起動させて誤作動記憶を調整しているのですが、脳の調整で厄介なのは、その電波信号が「無意識的な思い」の信号であるということです。無意識なので普段は意識していないような「思い」が混線して誤作動を生じさせます。
長年の臨床経験から一般的に言われているような分かりやすいストレスは混線することは少ないと言えます。混線しやすい思考信号とは、何かモヤモヤするけれども言葉では言い表し難い「思い」が多いようです。このような電波干渉による誤作動記憶の異常を調整するためには、その誤作動に関係する「思い」を明確に意識化して、一旦、表に引き出します。そして、明確にした「思い」を意識化したままで振動刺激を加えて生体エネルギーを再起動させて調整しています。この調整はWi-Fiの電波干渉を改善させるために電源を再起動させる作業ととても似ています。
体の不調が生じると、多くの人は肉体的な構造異常があるのではないかと疑います。もちろんそのような構造異常による体調不良もありますが、脳や生体内を流れる生体エネルギーの電波信号の混線による異常が体調不良の原因になることが比較的多いようです。当院では主にそのような目には見えない電波信号を再起動させいるということをご理解いただくと、施術がさらに効果を増してくるのではないかと思います。
からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜
安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)
1)ストレスと自律神経系・内分泌系の諸疾患
b)呼吸器・循環器系の疾患 〔つづき〕
心臓そのものは体循環(大循環)から直接O2や栄養分を吸収することができないため、心臓自身を養う血管をもっています。冠状動脈と呼ばれるその血管は、大動脈のつけ根、大動脈弁のすぐ上から始まり、心筋表面を冠状に取り囲んでいます。静脈もほぼ動脈と並行して走り、冠状静脈と呼ばれますが、こちらは完全な冠状はなしていません。静脈血はいったん心筋後面の冠状静脈洞に集まってのち直接右心房に注ぎます。そしてこの冠状動脈の障害(動脈硬化・閉塞)に狭心症や心筋梗塞などがあるのです。
前者は、この動脈が硬化し、血行不良によるO2不足の結果、痙攣を起こし、心筋の働きが一時的に乱れて起こるもので、後者は、その硬化した冠状動脈が血栓などで閉塞し、そこから先に血が通わなくなるため、心筋の一部が壊死を起こすものです。
心臓は分布している自律神経を切り離し、それだけ取りだしても一定条件のもとリンゲル氏液に浸けておけば動き続けることができます。この心臓のもつ自動能は、刺激伝導系と呼ばれるシステムによって維持されています。
洞結節には自律神経が分布しており、体の様々な条件に応じ心臓のリズムは調節されます。交感神経が興奮し、その末端からノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質が遊離すると、胸が高鳴るというように心臓の鼓動が激しくなり、逆に副交感神経である迷走神経が優位になると、その末端からアセチルコリンと呼ばれる化学伝達物質が遊離し鼓動がゆっくりになります。
いま狭心症や心筋梗塞に罹患した人が怒りを覚えたとします。その結果、交感神経が興奮し心臓の鼓動が激しくなり、心拍数が増加したとしても、それに伴って拡張期の時間も短くなるため、1回の弛緩で右心房に流れ込む静脈血の量も少なくなります。拍動による1分間あたりの血液量が分時拍出量ですが、したがってこれもそれほど増えません。
そして冠状動脈も激しくなった鼓動に応じ拡張しますが、その増加した心拍数に、動脈硬化や閉塞を起こした冠状動脈や一部壊死を起こした心筋が、ついには付いていけなくなり心臓発作に襲われることはよくあることです。事実、心臓学者の中には、「非常に活動的なタイプの人は、りラックスしたタイプの人に比べて心臓発作に襲われる率が高い」という人がいます。
円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
倫理的バウンダリー:ワークを断ったりやめることはできるのか
倫 理 規 定
施術者はワークを行うことを断る権利があります。もしあなたがクライアントと協力して治療に取り組めなかったり、そのとき必要な能力やトレーニングを積んでいないのであれば、予約客に対してのワークを断ったりワークを途中でやめる権利があります。
審判のとき!
——常連客が来院しましたが、午後に庭仕事をしてきたと言い、いつになく汚く、汗まみれでした。
——あなたは往診で数回にわたって夫婦にワークを行いました。あるとき、奥さんは不在でご主人とあなたが2人きりでいると、彼はあなたを誘惑してきました。
——あなたは体重が約50kgです。予約客はざっと2倍もある体重で、身体の深部へ届くようなワークを希望しています。
あなたがクライアントにワークしないことを選択する理由はいくつもあります。上の審判のとき!の理由はその範疇と言えます。また精神障害があったり、あなたのワークが合わないような身体的な症状があったりする場合も考えられます。あなたはどんな症状がそれにあたるか注意しておく必要があるでしょうし、またあなた自身の体格的・精神的な限界も知っておくべきです。
さらにそれに対応すべく予約を受けないようにすることと、仮に受ける場合は1日に何人受け入れるかの制限を設けておくべきでしょう。あなたが効果的にワークできないことを知っていながら、そのクライアントの予約を受け付けることは倫理に反する行為です。
汗まみれのまま来たクライアントに対する件では、ほとんどの施術者はたまに汚れた格好でやってくるケースについてはあまり気にしていません。もし嫌な場合は、自分のポリシーを事前に掲げておき、無碍に追い返したり惨めな思いをさせないよう配慮することが大事でしょう。初回のときに質問票に衛生面について示しておくのが良心的だと思います。女性の施術者の場合、性的に不適切な行為や発言があった際にはワークを断ったり中止することがありうると覚書の一条に署名してもらうところもあります。
不適切な誘惑をしてきたご主人の例では、その人物とあなたが以前どのような関係であったか、またその発言がどのくらい本気であるのかによって判断が変わってきます。例えば、もしクライアントがあからさまに攻撃的であったり、あなたの面目を失わせるような発言をしているのであれば、すぐにワークをやめるべきです。もしその人物の意図が不明確であったり、あなたを試しているようでしたら彼に対して警告を与えるのもいいでしょう。(明らかにあなたを侮辱したり攻撃的でなく、下品なジョークを言い飛ばす常連客は例外にしても良いかもしれません)(この項つづく)
(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )
N E W S
ファイザー社とアストラゼネカ社の新型コロナウイルスワクチンが、2回の接種でB.1.617.2系統の変異株「デルタ株(インド型)」による入院回避に非常に高い効果を示すことが明らかになった。英・イングランド公衆衛生庁(PHE)が、6月14日付のプレスリリースで発表した。
PHEでは、今年4月12日〜6月4日の間に「デルタ株」感染が確認された1万4019例を対象に分析を実施。その結果、2回接種で入院治療を回避できる有効性は、ファイザー社のワクチンが96%、アストラゼネカ社のワクチンが92%であり、いわゆる英国型の変異株「アルファ株」に対する有効性と同等だったという。当局では、先のワクチンについて「デルタ株」感染による死亡を防ぐ効果についても研究を進めており、ほかの変異株と同様に効果は高いと予測している。
(6/17 ケアネット)
新型コロナウイルス感染症により、ユニバーサルマスク(全ての人がマスクをすること)が推奨されるようになり、呼吸が荒くなることの多い運動トレーニング中でもマスク着用が求められる。こうした中、布製マスクを着用すると、運動パフォーマンスがやや低下する可能性のあることが分かった。研究者らは、布製マスク着用時のトレーニングでは、負荷量を加減することを推奨している。British Journal of Sports Medicineに4月13日掲載された。
研究の対象は18〜29歳の健康な成人31人(平均年齢23.2±3.1歳、女性が14人)で、習慣的に中強度運動を170±158分/週、高強度運動を206±205分/週行っている人たち。参加者全員に対して、布製マスクを着けた状態と着けない状態で、トレッドミルによる心肺運動負荷試験(CPET)を施行。血圧、心拍数、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、最大酸素摂取量(VO2max)、自覚的運動強度(RPE)などを測定した。
その結果、布製マスク着用条件では非着用条件に比べて、疲労困憊に至るまでの時間が有意に短く(条件間の差-01分39秒)、VO2maxが有意に低下すること(同-818±552mL/分)が分かった(ともにP<0.001)。結論として、布製マスクを着用したまま運動を行うと、非着用時に比較して疲労困憊に至る時間が14%短くなり、VO2maxは29%低下することが明らかになった。
(6/12 HealthDayNews=部分)
名古屋大学は6月9日、サルコペニアのより的確な診断方法を検討するため、大腿中央部を撮影したCT画像より計測される「大腿四頭筋の筋肉の量と質」に注目し、性別・年代別での違いや膝伸展筋力との関係性について明らかにしたと発表した。この研究は、国立長寿医療研究センター共同研究グループによるもの。研究成果は、Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscleのweb版に掲載されている。
加齢性変化は下肢で明らかであり、研究グループはこれまでに、大腿の前側に位置する大腿四頭筋が、ハムストリングスなどの大腿後方の筋肉と比較して加齢による筋量の低下が著しいことを報告している。そのため、大腿四頭筋についての詳細な評価がサルコペニアのより適切な評価につながる可能性があると推察した。
今回の研究は520人の中高年の地域住民(男性273人、女性247人、平均年齢63.1歳)を対象に、右大腿中央部CT画像を撮影。専用のCT画像解析ソフトで、大腿四頭筋全体や4つの構成する筋肉と、筋間脂肪別に筋断面積、CT値ほかを計測した。
筋断面積、CT値は多くの場合で男性が女性よりも高い数値を示すことが判明したが、大腿直筋ではCT値に男女差を認めないなど、他とは異なる特徴が認められた。また、男性は断面積もCT値も高齢になると、加速度的に低値を示すようになることが判明。男性と女性では年齢が筋肉に与える影響の程度が異なると推測された。
今回の研究成果により、高齢になるほど筋肉の量も質も、男性が女性と比べて急激な低下を示すことや、膝伸展筋力には量も質も関係していることが明らかにされた。また、大腿四頭筋を4つの細かい筋肉に細分化した詳細な検討でも、筋肉毎に筋力への関係度合いに男女差があることなどが明らかになった。
(6/10 QLifePro編集部=部分)
強い力で引っ張られると強くなり、繰り返しの負荷にも耐える高分子ゲル素材の開発に、東京大学物性研究所の真弓皓一准教授らの研究チームが成功した。人工靱帯や人工関節などへの応用が期待されるという。論文は6月4日、米科学誌サイエンス電子版に掲載された。
高分子ゲルは、長い紐状高分子の網目構造で水などを閉じ込めたゼリー状の素材。生体適合性が高く、コンタクトレンズなどにも使われる。しかし、人工靱帯などへの応用には十分な強度と、元の状態に素早く戻って繰り返しの負荷に耐える能力(回復性)が必要で、両方を兼ね備えたものはなかった。
研究チームは、高い回復性を持つが強度に難があった「環動ゲル」と呼ばれるゲルに着目。実験中に研究室の学生が誤って高分子の濃度を高くした「失敗作」の環動ゲルが、高い強度と回復性を示したことをヒントに、新たなゲルを開発した。
詳しく調べたところ、このゲルは引っ張られると、内部のひも状高分子の向きがそろい、結晶のような状態となって強度を増すことが判明。力が弱まると元の状態に戻り、繰り返しの負荷に耐えることも分かった。
(6/4 時事通信社)
太極拳は、肥満者の腹囲を減らすために、従来の運動とほぼ同じくらい効果的であるようだ、という香港大学によるランダム化対照試験の結果報告。太極拳は、しばしば「動きのある瞑想」と呼ばれる、しかし、これまで太極拳の健康上の利点に関するエビデンスはあまり存在しなかった。
今回研究チームは、3か月以上の太極拳、従来の運動、または運動なしのグループに、中心性肥満の50歳以上の成人500人以上をランダムに割り当てた。太極拳と運動グループの参加者は、インストラクター主導のトレーニングのために1時間週3回、12週間集った。太極拳プログラムは、文献で採用されている最も一般的なスタイルである楊式太極拳で構成され、従来の運動プログラムは、活発なウォーキングと筋力トレーニング活動で構成されていた。
腹囲およびその他の代謝の健康の指標は、ベースライン、12週間、および38週間で測定された。解析の結果、研究チームは、太極拳介入群と従来の運動介入群の両方で、対照群と比較して腰囲が減少していることを発見したという。研究著者によると、今回の発見は、中心性肥満を患っているが、好みや運動制限のために従来の運動を嫌う可能性がある中高年の成人にとって朗報になるだろうと述べている。
(6/5 TMS-Net=部分)
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、仕事や収入が減った人や失業した人は、歯の痛みを訴えることが多いというデータが報告された。この関連の背景には、精神的ストレスや歯科受診の延期、間食の増加などが関与しているという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の松山祐輔氏らの研究の結果であり、詳細はJournal of Dental Researchに掲載された。
この研究は、COVID-19パンデミックの社会・医療への影響を把握するために2020年8月25日〜9月30日に実施された大規模Web調査「JACSIS(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)研究」のデータを利用して行われた。解析対象者の年齢は15〜79歳で、有効回答数2万5482件、男性が49.7%だった。
結果についてCOVID-19パンデミックによる収入や就労の変化を見ると、25.1%の人は世帯収入が減り、19.5%は仕事量が減少、1.1%は失業していた(仕事量の減少および失業は調査時に就業していた人における値)。次に、口腔衛生に関連する質問項目については、全体の27.3%は間食が増え、13.9%が歯科受診を延期し、3.0%は歯磨きの回数が減ったと回答した。また8.3%は、ストレスの負荷が強い状態(K6スコアという合計24点の指標で13点以上)と判定された。直近1カ月間に歯痛があった人の割合は9.8%だった。
著者らは、「コロナの影響で経済状況が悪化した人には、歯痛が多いことが明らかになった。経済状況の悪化が精神的ストレスや健康行動の変化につながり、歯痛を引き起こした可能性がある」と結論付けている。また、「国内には何らかの歯科処置を必要とする人が4000万人近くいるとされており、パンデミックによってそれらの人に痛みが現れる可能性もある。収入減や失業などに対する経済的政策が、歯科疾患の悪化を抑制し得るのではないか」と付け加えている。
(6/4 TMS-Net=部分)
任天堂のエクササイズゲーム『リングフィット アドベンチャー(RFA)』は、慢性腰痛患者における痛みの自己効力感を高め、痛みを軽減する可能性があることが、千葉大学のTakashi Sato氏らによって報告された。著者らは「痛みの自己効力感の改善を目的にした治療プロトコールの開発が望まれる」としている。本研究は、Games for Health Journalオンライン版に掲載された。
近年、エクササイズの治療効果に関する研究が増加しているが、慢性腰痛症に対するこれらのタイプの介入に関する研究は多くない。したがって本研究では、エクササイズゲーム RFAが慢性腰痛患者に有用であると仮定し、前向き無作為化縦断研究を実施した。
40例の慢性腰痛患者を、経口薬単独群(男性12例および女性8例、平均年齢55.6歳)、経口薬に加えてRFAエクササイズを週1回40分行う経口薬+RFA併用群(男性9例および女性11例、平均年齢49.3歳)にランダムに割り付け、8週間にわたる治療の前後における、痛みと心理的スコア(痛みの自己効力感、痛みの破局的思考および運動恐怖症)を分析した。主な結果は以下のとおり。
・経口薬+RFA併用群において、8週間後の腰痛、臀部の痛みおよび痛みの自己効力感が有意に改善された。
・下肢のしびれ、痛みの破局的思考および運動恐怖症といった心理的スコアに有意な改善はみられなかった。
・経口薬単独群では、8週間後の治療効果に変化は認められなかった。
(6/1 TMS-Net)
次号のメールマガジンは2021年7月15日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ