エンタプライズ発信〜メールマガジン【№110】 2020. 6

ここ数か月、外出自粛が続いたことから、体に異変が出てきたという声は多々ありますが、スマホやパソコンを使用する時間が増えたことなどから、手の不調を訴える人が増えていると言います。ヒトの手には、骨と筋肉を付着させて指の関節を曲げ伸ばしする腱と、滑らかな動きを助ける腱鞘ほかがありますが、特定の部位を繰り返し使うことでこれらがこすれ合い、炎症が生じることがあります。この炎症が、ドケルバンde Quervain病(狭窄性腱鞘炎)の正体です。多くは関節まわりのこわばりや痛みを伴いますが、腫れ、しびれなどの症状が現れることもあります。スポーツをする人や楽器奏者、物書きなど手を酷使する職業の人に多く見られるのですが、テレワークが多くなってスマホ・パソコンを使う機会が顕著に増えたこともあると思います。整形外科医師によると、スマホをよく使う人は誰でもドケルバン病になる可能性があると言います。「スマホを実際に片手で動かしてみると親指の付け根をすごく使うので、その動きが筋腱に一番影響が出るのです」。スマホの操作は片手ではなく両手で行うか、置いて示指などで操作することを推奨しています。では、すでに痛いという人はどうすればいいのでしょうか。親指と手首を外側に伸ばすストレッチです。1:背筋を伸ばしてイスに座り、右腕を前にまっすぐ伸ばす(立ったままで行ってもOK)。ひじを完全に伸ばし切った状態を10とすると9に伸ばすイメージ。指先はそろえて上に伸ばし、親指は90度くらいに開く。2:左手の親指で右手の親指の付け根を押すようにして、順手で右手の親指を握る。3:そのまま右手の親指をレバーのように手前に引く。15秒キープ。左の親指も同様にします。そのほか、同様の症状の人向けに、手指の負担をやわらげるグッズがいま売れているそうです。ただし使用説明書をよく読んで適応するか判断してくださいね。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S

★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

【 対談結語 ① 】

医者任せでは病気は治らない(安保 徹)

社会が進歩して複雑化すると、それぞれの分野は専門化して、その結果スペシャリストが生まれます。今の日本がその状況になっていて、学問の分野でも医療の分野でも高度に専門化が進んできています。臨床医学の専門医制度もその流れで生まれました。
一般の人たちも、専門化した分野に対してはしだいに理解が遠ざかるので、その分野はその分野のスペシャリストにお任せする傾向が強くなってきます。このようにして医療の世界では、一般人が患者の立場になると「すべてお任せ」になってきたと感じています。^

その結果、2つの現象が生じています。医療側では専門化が進み過ぎて自分の専門分野しか知らない、身体全体から病気を見る目が低下するという現象が起こっています。患者側の方では、どうせ病気のことは理解できないので、「お任せ」のはびこりと自助努力の低下という状態が拡大しているのです。
しかし、多くの病気が生活習慣病と呼ばれているように、患者自身の生きざまを抜きにして病気の診断はできないし、治療しても良い成果は期待できないのです。実際いまの日本では医学や医療が進歩したはずなのに、病人は治らずに増え続けています。医師不足にはなるし、医療費も増大するばかりです。

文明社会の弱点が見えてきたように思います。良い流れをつくるためには、生き物の仕組みや病気の成り立ちを考え直す必要があるでしょう。身体の構成は、部分の集合と同時に、全体を束ねるシステムが巧妙に働いています。自律神経や白血球、そしてエネルギー生成が相互に関連しあうことで、身体全体の仕組みは成り立っているのです。専門分野にばかり目を向ける医療関係者もこうした理解をもっと深めるべきでしょう。
一方、一般の人たちも病気になったときに医師任せにばかりしていたのでは治るものも治らないのです。その人の過酷な生き方が全身を束ねるシステムに変調をきたし、個々の臓器の病気をつくり出しているからです。例えば、忙しさが続くと心臓も悲鳴を上げるし、血流低下によって腎機能にも影響が出ます。

私は長いあいだ自律神経の働きや免疫系の仕組みを研究してきましたが、ここ10年以上、エネルギー生成の問題にも目を向けるようになりました。地球上に最初の生命体が誕生した36億年前からの歴史をたどると、私たち人間を含む真核生物は、嫌気的解糖系生命体に好気的ミトコンドリアが共生することで再出発しています。このため食べ物からエネルギーを取り出す方策も2つ抱えています。
このような背景を思い、日常を見直したとき、2つのエネルギー生成系が、かなりの頻度で個別の役割を果たしているように見えてきたのです。運動一つとっても、白筋の瞬発力は解糖系に依存しているし、赤筋の持続力はミトコンドリア系に依存しています。息を止めて走ることと、有酸素でエアロビクスを愉しむことは、前者が解糖系・白筋・瞬発力、後者がミトコンドリア系・赤筋・持続力につながります。
さらに細胞分裂の促進と抑制が、それぞれ解糖系とミトコンドリア系に依存していることに気づいてからは、エネルギー生成系の勉強も始めました。そんな時に出合ったのが太田先生と瀬名秀明氏の共著『ミトコンドリアのちから』(新潮文庫)であり、このたびの太田先生との対談のお話でした。このきっかけが読者の皆様の健康観に寄与できたとするなら良い機会となりました。


連載vol.68

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

励起する媒体(つづき)

励起可能な媒体というと、すぐに神経細胞の膜を思い浮かべるかもしれないが、すべてではないにせよ、上皮細胞と呼ばれる細胞層を含めた生体中の多くの膜や組織にもある。そして液体(波紋)にもその性質があるという。励起を可能とする媒体や波に関する研究はきわめて重要であるとして多くの研究者の関心を集めている。その第一人者がA. T. ウインフリーである。
ウインフリーらのグループは、天然、人工にかかわらず、種々の媒体が励起可能であることを示したが、そこから経時的解剖学という新しい研究分野が誕生した。この研究分野では刻々と変化する組織の動きや心臓で起きる不整脈などの病態・病因を研究する。心臓は励起可能な3次元的媒体であり、その動きを明らかにすることは、困難であるにせよ、臨床的に大いに意味がある。
また経時的解剖は、生体の日内周期や、走ったり呼吸をしたり、あるいは心臓が拍動するときなどの筋収縮パターンを知る上でも非常に重要である。心臓にはペースメーカーの役割をする細胞があることはよく知られているが、心臓だけでなく、胃、小腸、腎臓、子宮、卵巣などにもペースメーカーが存在する。あらゆるスポーツや芸術的パフォーマンスにおいてこれらの生体リズムが協調しあう仕組みを解明することができれば、応用調節生物学の新しい道を切り開くことができるだろう。
ウインフリーは心臓のことを「地球上でもっとも高性能な時計」と表現している。「エラーが生じたときに取って代われるバックアップシステムがなくても、あらゆる方法で正常な状態に回復できるようになっていることから、心臓の著しく高い性能の一部は、進化によって生まれたのだろう」

光ファイオバーシステムか

生体を構成する蛋白質組織を光ファイバーシステムにたとえる研究者もいる。例えばロシアのバンクラトフが行った実験は非常に興味深い。鍼療法の経穴に光を当てると、同じ経絡上にある別の経穴から光が検出されるというのだ。この発見は、光が体内を通過するときの主たる経路が経穴であることを示唆している。またバンクラトフが引用した文献によると、植物にも光の通路があるらしい。
バンクラトフはこの実験結果について、光が知覚細胞の中でソリトンに変換されることによって起きる現象だという証明可能な仮説を立てているが、この仮説はカラーパンクチャーなどの光療法の効果を説明する理論に通じると考えられる。光を吸収する反応は可逆的なので、網膜細胞などの中にある微小管の末端に到達したソリトンは再び光に変換される。バンクラトフの仮説は推論に基づく部分が多いにせよ、さらに研究を重ねる価値は間違いなくある。(つづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』 )


連載エッセイ 77☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


環境に適応できる健康体質

新型コロナウイルス感染症の影響で、外出制限や世界中の人々がマスクを毎日着用するなど、私たちにとっては初めての経験が今も続いています。心も身体も閉鎖的にならざるを得ない状況と言えます。人に限らず動物や植物などの生物が閉鎖的になると、内部の秩序(バランス調整)が乱れることは様々な実験でも明らかです。生物は外部環境との調和の中で生かされています。そのような健康維持のための基本条件に制限がある状況なので、いかにして、このような状況でも健康を維持していくことができるかを考えなくてはなりません。

まずは感染予防に関してですが、このことは連日ニュースで情報が入ってくるので語るまでもありません。心構えとしては、人と人との関わりの中で「自分自身も無症状感染者かもしれない」という自覚をもって、人との接触には十分に注意を払うことです。今回のウイルスに関しては、謎めいた情報が錯綜しています。分かっているのは通常のインフルエンザよりも感染力が強く、急変して死亡する人がいること、また無症状の人もたくさん存在しているということです。
長年健康に関して研究している一人の治療者として興味深いのは、急変するような重症患者と無症状患者や軽症患者の違いです。免疫系の違いと言えばそれまでなのですが、免疫系の何がどのように違うのか。重傷者の多くはサイトカインストームという免疫系の暴走によって、正常な細胞まで攻撃されてしまい、容態が突然悪化するとのことです。これが起こる人と起こらない人の違いは何か、どういう人に起こりやすいのか、どうすれば防げるのか、残念ながらまだ分かっていません。

最近、欧米や日本国内での抗体保有率に関する情報が少しずつ明らかになってきており、無症状の感染者が思いのほか多い可能性が示されています。その一方、抗体ができてからもウイルス感染が持続するケースも結構あるようで、集団免疫ができればウイルスが収束するということでもないのではないかという見解もあります。であるならば、人類はインフルエンザと同じように、このウイルスと上手に「共存」あるいは「共生」する必要性が高いということになります。恐らくそれを可能にしてくれるのはワクチンや命を守ってくれる新薬の開発です。それと大切なのは、私たち自身の免疫力や適応力を上げなくてはなりません。

「ウイルスと共生するなんて、滅相もない…」と思う方もいるかもしれませんが、命に影響のない通常の風邪ウイルスなどは、むしろ過剰に避けない人の方が適応力が高まり、無症状患者の体質のなるのかもしれません。ウイルスに自然感染することで、免疫系が自然調整の仕方を学習記憶し、自然免疫が身につきやすい体質に変化する可能性もあります。今までの歴史をみてもウイルスは変異し続けているようです。もしかすると、その変化に人間が追いついていないのかもしれません。人間もその流れに適応して、感染しても自然免疫を獲得しやすい体質になるように学習記憶し進化し続ける必要があるのではないでしょうか。
世界中で命に関わる感染症に注目が集まっています。世論に歩調を合わせた捉え方も大切ですが、人類、生命、共生という広い視点で捉えることも大切だと思います。「ローマは一日にして成らず」の言葉のように、健康は長年の習慣の積み重ねです。健康は与えられると言うよりも自らが創り出すものです。刻々と変化する環境に適応できる健康体質をコツコツと創っていきましょう。(5/14記)

連載…15

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

コンサルテーションとスーパービジョン(つづき)

〔コンサルテーションを使うとき〕
以下にあなたがコンサルテーションを必要とするかどうかを考えるうえで、目安となる危険信号を列記しました。
・クライアントに対して頻繁に我慢できないとか苛立ったりした感情や、またワークするのに疲れてしまったり、そんな自分に嫌悪感を覚えたりなどの強いネガティブな気持ちをもち続けたとき
・クライアントに対して客観的な理由もなしに特別扱いをしたいとか、クライアントと性的な関係をもちたいなどの強いポジティブな感情が現れたとき
・性的または身体的な虐待の問題について積極的に取り組んでいるクライアントに対してワークするとき
・強いうつの症状を呈しているクライアントや精神的にアンバランスな症状を見せているクライアントにワークするとき
・リミットを決めるうえでいつも苦労させられている特定のクライアントがいるとき
これ以外にも特殊なケースがあると思いますが、コンサルタントがどのように助けてくれるか救いを求めることが優先される場合も少なからずあるはずです。

スーパービジョンの目的

多くの施術者がクライアントとトラブルを起こしたり、問題に巻き込まれたりする前に、クライアントとの関係についての新たな観点やそれに基づく安らぎを得るため、また営業における周囲からの孤独を解消するために継続的なスーパービジョンを受けることは大いに意味があります。あなたがワークに疑問や物足りなさを感じ始めたときもスーパービジョンは役立ちます。

「スーパービジョン」とは、誰かがあなたに何をしたらいいのか、またどのようにビジネスを運営していったらいいのか指示をするものだと思われがちなので、あなたは受けようと思っても二の足を踏んでしまうかもしれません。しかしスーパービジョンは、いらぬ差し出し口をしたり、あなたに劣等感を与えたりせず、いいサポートやガイドとなるのです。スーパーバイザーとのひと時は、あたかも、とても協力的で親しみがもてる先生のもとに訪れているように感じられるものであるべきです。
1回きりや、不定期に行われるコンサルテーションと違い、スーパービジョンは定期的に月1回程度の割合で行われます。スーパービジョンのゴールは、プロとしてのあなたの意識を高めること、またクライアントとの人間関係におけるあなたの長所や短所を明らかにすることなのです。(この項、つづく)
(出所:『エデュケーティド・ハート』The EducatedHeart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(83)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****
腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■全身麻酔下における脊椎マニピュレーションが有効だというエビデンスはなく、重篤な神経障害を誘発するリスクが増大する(★)。

http://1.usa.gov/LF3JIJ

……アメリカでは全身麻酔をかけてカイロプラクティックを行なっていた時期があったようですけど、日本ではあり得ない話なので無視していいでしょう。

■ギプスジャケットが急性腰痛や坐骨神経痛に有効だというエビデンスはなく、脊椎のこわばり、筋肉の衰弱、ギプスによるただれ、呼吸器系の合併症を誘発することがあり、心理社会的影響も大きい(★)。

http://amzn.to/Hk8veA

……ギプスジャケットで腰を固定しても急性腰痛や坐骨神経数には無効で、リスク(危険性)がベネフィット(有益性)を上回るから勧めないということです。コルセットやサポートベルトも無効だというエビデンスがあるのですから、当然といえば当然でしょう。さて、今回でRCGP(英国家庭医学会)の腰痛診療ガイドラインは終了となります。

■耐え難い腰痛を訴える椎間板に起因する腰痛患者は、手術を受けなくても3年後には68%が改善し、労災補償患者でさえ80%が改善していた。改善率が68%を超えられないのであれば、ある治療法を椎間板変性腰痛に実施すべきでない。

http://1.usa.gov/LPB9IN

……こういうデータがあるから医学は腰痛治療から撤退すべきだという議論が勃発するんですよね。腰痛のないタンザニアのハザ族には、腰痛を治療する人がいないことを考えてみましょう。腰痛の自然治癒率の86%、プラシーボの平均有効率の70%を超えられない治療法は、積極的に行なうべきではありません。

■硬膜外ステロイド注射は坐骨神経痛患者の費用対効果の高い治療法とされてきたが、腰椎や仙骨への硬膜外ステロイド注射に関する二重盲検比較試験はなく、坐骨神経痛に対して有効性を示す根拠がないためオーストラリアでは使用制限を検討。

http://1.usa.gov/Kyps98

……局所麻酔剤を使うにしろステロイドを使うにしろ、現時点では硬膜外ブロックが有効だという明確なエビデンスは存在しません。

■AHCPRが1994年12月に『成人の急性腰痛診療ガイドライン』を発表した翌年の1995年1月、カナダのケベック特別調査委員会が『むち打ち関連障害の診療ガイドライン』を発表しています。これからその勧告を紹介します。

http://1.usa.gov/LYNegq

……腰痛疾患のお話は少し中断して、これからむち打ち症のお話をさせていただきます。参考にしていただければ幸いです。

■むち打ち症は自動車の追突事故などで頚部に過伸展と過屈曲が加わって生じる外傷性頚部症候群であり、損傷の程度によって無症状のものから骨折や脱臼による脊髄損傷に至るまで様々であるがゆえに、むち打ち症の捉え方にばらつきがある。

http://1.usa.gov/LYNegq

……ケベック特別調査委員会の『むち打ち関連障害の診療ガイドライン』は10,000件以上の研究から明らかになった真実と迷信を区別する報告書です。

 N  E  W  S

NEWS ■ 世界の感染者が800万人…僅か8日間で100万人増加

新型コロナウイルスの全世界における感染者数が800万人を突破した。6月16日時点の感染者数は世界累計で812万人となり、僅か8日間で700万人から追加で100万人の感染者が増加。死者数も43万9000人に増え、南米を中心に新型コロナウイルスの感染者数が急増している。日本だと新型コロナウイルスの増加スピードは緩やかになっているが、世界的には減るどころか感染者数が急増している状態。特にブラジルやペルーがある南米の汗腺状況が深刻で、冬が到来した南半球は全体的に増加スピードがアップすると見込まれる。
このままだと来月には世界で1000万人を超えると見られ、新型コロナウイルスが終息する気配はない。ワクチンが完成したとしても全員が予防接種するまでに1〜2年の時間は必要だと言われているので、現在の流れだと東京オリンピックも中止が確定的になると思われる。
米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計によると、新型コロナウイルスの世界の感染者が日本時間16日、累計800万人に達した。米国で210万人を超え、ブラジルが90万人に迫るほか、ロシアも50万人を上回っている。
4月3日に100万人だった世界の感染者は、10〜13日間で100万人ずつ増え、5月31日に600万人になった。ところが700万人、800万人までそれぞれ8日間しかかからず、ペースが速まっている。(6/16 情報速報ドットコム)

NEWS ■ 進む薬系大学の定員割れ…経営は「厳冬期

薬系大学の定員割れが進んでいる。本紙の調査では5割近い大学が定員を割り込んでいることが判明した。少子化の流れは避けられず、大学経営は「厳冬期」 に入りつつあるが、薬学部新設に歯止めがかかる兆しは見られない。このアンバランスな状況をどう捉えればいいか。
昨年、財務当局から基本的な教育の質を保証できていない大学があるとして、6年制薬学教育が名指しで問題視された。教育成果に応じて補助金が配分されるという将来的な方向性を暗示したものと言えなくもない。大学関係者は、財務当局が照準を当てていることにもっと危機感を持つべきだろう。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大は、遠隔授業の実施など大学教育にかつてない転換をもたらした。この間、学生への支援や対応に各大学の特色が出たように感じる。
今回のコロナ禍は、学生をどれだけ大事にしているか大学の本気度を示す一つの出来事でもあった。将来ある学生の努力に報いるためにも、質の高い教育と充実した支援で結果を出していくしかない。(6/17 薬事日報)

NEWS ■ うつ病の「引き金」物質を確認…疲労やストレスで増加<

過労や強いストレスが、なぜうつ病を引き起こすのか。この謎の答えの鍵を握るウイルス由来のたんぱく質を、東京慈恵会医大の研究チームが確認した。このたんぱく質はうつ病の発症リスクを大幅に高めるといい、この存在が確認された人は、そうでない人に比べ12.2倍うつ病になりやすかった。研究チームはうつ病の血液検査法の開発や発症の仕組みを調べる手がかりになると期待している。
慈恵医大の近藤一博教授(ウイルス学)らは長年、疲労とウイルスの関係を調べ、疲労が蓄積すると唾液中に「ヒトヘルペスウイルス(HHV)6」が急増することを突き止めていた。 HHV6は、赤ちゃんの病気である突発性発疹の原因ウイルスで、ほぼ全ての人が乳幼児期に感染し、以降ずっと体内に潜伏感染している。普段は休眠しているが、体が疲れると、HHV6は目覚め「弱った宿主から逃げだそう」と唾液中に出てくる。その一部が口から鼻へ逆流する形で、においを感じる脳の中枢「嗅球」に到達し、再感染を起こしていた。
近藤教授らは、再感染すると、嗅球で「SITH(シス)1」というたんぱく質が作られ、この働きで脳細胞にカルシウムが過剰に流れ込み、死んでいくことを培養細胞やマウスの実験で突き止めた。さらに、嗅球の細胞死によって、記憶をつかさどる海馬での神経再生が抑制されていた。ストレス状態に置かれたマウスが、状況から逃げる行動をあきらめるまでの時間を計る「うつ状態モデル」とされる実験では、嗅球でこのたんぱく質が作られるようにしたマウスは通常のマウスより早くあきらめ、抗うつ剤を与えると通常マウス並みに戻った。また、計166人の血液で、このたんぱく質があることの証明になる「抗体」を調べると、うつ病患者の8割で確認され、量も健常人に比べ、うつ病患者で極めて多かった。
これらの結果から、研究チームは、過労やストレスからうつ病が発症する経緯を(1)過労などでHHV6が唾液に出る、(2)嗅球に再感染し、SITH1を作る、(3)SITH1によって嗅球や海馬などで脳細胞の状態が激変する、(4)意欲減退などが起きる――という流れではないかと推論している。(6/15 朝日新聞)

NEWS ■ 自宅テレワークは避難所並みの血栓症リスク

コロナウイルスの第2波が懸念される中、テレワーク(在宅勤務)を続ける人や自宅にいる時間が長いという人も多い。新潟大学大学院特任教授の榛沢和彦さん(心臓血管外科)は、そうした人に血栓症のリスクがあると警鐘を鳴らす。「自宅にこもって仕事を続ける生活は、災害時の避難所生活と同じです。テレワークは家の中でじっとし、特に椅子の上でじっとしていることが多い。椅子に座った状態で長くいると、足に血栓ができやすくなります」
災害時の避難所などでこの問題に取り組んできた榛沢さんによれば、東日本大震災後の避難所では平均10%、最もひどい避難所では42.1%の被災者に血栓が見つかった。「トイレが十分に整備されていない、水や食料など支援物資が届かず十分な食事がとれないなど、避難所の環境がよくないところは血栓が多くみられました」
血栓症のサインはあるのか。奈良県立医科大学教授の嶋緑倫さん(小児血液学)は、ふくらはぎの痛みやむくみ、突然の胸の痛みや歩行時の息切れ、冷や汗、激しい頭痛や突然の手足の麻痺などを挙げる。「こうした症状が現れたらすぐ病院に行ってほしい。治療は、血液をサラサラにする抗凝固療法で血栓を溶かすことが基本になります」
ただ血栓は自覚症状が少ないため早期診断が難しく、「日本人で血栓ができて亡くなるまでの最短時間は2時間半という報告があります。車を運転していた方です。同じ姿勢で座り続けるのが一番よくない。仕事中でも2、3時間に一度は立ち上がり、数分程度でいいので歩くことが大切です」。水分もこまめにとることが大事で、目安として、食事以外に1日に1.2リットル飲んでほしいという。
ほかの予防では弾性ストッキングは弾力性を持った特殊なストッキングが有用で、足を引き締めることで下肢の静脈の血流がよくなり血栓ができないようにする。榛沢さんは東日本大震災の避難所で、血栓が見つかった被災者に弾性ストッキングを着用してもらい2回目の検診を実施したところ、弾性ストッキングを着用した被災者の血栓が消失した。自宅にいる時間が長い人は日頃から着用するといいだろう。(6/12 アエラ)

NEWS■AIが医師を手助け=診断システムの開発開始―内閣府など

内閣府などは6月10日、人工知能(AI)が医師の診断などを手助けするシステムの実用化に向けたプロジェクトを開始すると発表した。AIがレントゲン画像を分析したり、検査結果や心電図、血圧などの膨大な情報を整理し、患者の容体悪化の兆候を見つけたりすることなどを目指す。
病院や人間ドックの医療従事者らがさまざまな医療用AIにアクセスできるプラットフォームを構築。今秋にも試行を始め、2022年の実現を目指す。プロジェクトを率いる中村祐輔プログラムディレクターは、医療従事者の負担軽減を通じ、「もっと患者に寄り添い、思いやる医療ができる」と話した。(6/10 時事通信)

NEWS ■ 難聴は認知症の危険因子…補聴器は早めの装着

「70歳を越えると、ほとんどの音域の聴力が、軽度から中等度の難聴レベルにまで低下する人が多くなります」。こう話すのは、国際医療福祉大学熱海病院検査部の〆谷直人部長。聴力は30代以降になると、高音域からゆっくり低下していく。それでも日常生活の中の音や会話を構成する音の大部分は聞こえているため、60代になるまで特に聞こえの悪さを意識しない人が多いそうだ。
記者は母に「プレゼントするから補聴器を使っては?」と何度か提案したのだが、かたくなに拒否され続けている。しかし、補聴器はつけなくても問題ないのだろうか。
「補聴器は、購入してすぐに快適に聞こえるものではないんです。脳の聴覚中枢が補聴器に慣れるには約3〜6カ月かかるといわれています。できるだけ年齢が若いうちから使い始めた方が、補聴器を通して聞く音に慣れやすい」(〆谷部長)
最近の主流はデジタル補聴器で、聴力に合わせて細かく音を調整できる。そのため年齢を重ねて多少聴力に変化が出たとしても、再調整して長く使い続けられる。装着しても、あまり目立たない小さなサイズもある。
「残念ながら、一度低下した聴力は取り戻せません。生活に不便があるなら補聴器相談医(耳鼻咽喉科)による診断と聴力検査を受けることをお勧めします」と〆谷部長。
難聴になって時間が経つと、言葉を聞き分ける力がだんだんと低下し、QOL(生活の質)が下がることもある。2017年には、国際アルツハイマー病会議で「予防できる認知症の要因の中で、難聴は最も大きな危険因子」と指摘されている。補聴器装着を早めに検討した方がいい。(6/8 日刊ゲンダイ)

NEWS ■ 肌と肌の触れ合いで気持ちもつながることをMRIで確認

誰かとぴったりと寄り添うと、「マインド・メルド」がもたらされるかもしれない。密接に体が触れ合っている人たちの脳を革新的なMRI技術を用いて評価したところ、脳の変化が同期していたことが分かったという。この研究論文の責任著者であるトゥルク大学(フィンランド)のLauri Nummenmaa氏は、「大まかに説明すると、人と人との触れ合いの基本的なかたちである寄り添うという行為の中で、それぞれの脳も相手に“適合”することが明らかになった」と話し、「この手の研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)など、社会的な交流が困難になる疾患に対する対処法を考える上で有用だ」との見方を示している。研究結果の詳細は「Frontiers in Psychiatry」オンライン版に掲載された。
この研究では、恋人同士を含む10組の被験者に、毛布の下で体を寄せ合い、30秒間の静止時間を挟んで交互に相手の下唇を30秒間指で軽く叩く行為を繰り返してもらった。その間、2人の脳の変化を機能的MRI(fMRI)で観察した。このMRIは、通常の脳スキャンで用いられる16チャンネルのヘッドコイルを2つに分割して、MRI装置内で密着した姿勢をとる2人の脳を同時にスキャンできるようにしたもの。
MRI画像を解析した結果、相手の下唇を指で軽く叩く側と、相手の指の動きを見て触れられるのを感じている側の双方で、脳の感覚野および運動野のネットワークが賦活することが確認された。Nummenmaa氏は、「この装置によって、2人の被験者の脳のシグナルを正確に検出することができた。また、相手に触れているか、触れられているかで、運動野および体性感覚野に明確に異なる活性化パターンが生じることが確認できた」と述べている。(5/29 HealthDay News)

NEWS ■ 運動不足で「ロコモ」懸念、特設ウェブサイト開設

「ロコモチャレンジ!推進協議会」は、巣ごもりによる運動不足解消に役立つ特設WEBサイト「コロナに勝つ!ロコモに勝つ!」を開設した。 全国整形外科専門医による運動指導や、足腰などの運動器の健康維持に関するアドバイスを配信する。全国整形外科専門医等からの投稿も受け付けている。このほか、近畿大学准教授・谷本道哉氏による「ロコモ予防スペシャルレッスン」などを配信している。本会委員長の大江隆史氏は、「外出の自粛やスポーツの制限で、移動能力が低下することが心配されています。移動能力の低下を示す言葉がロコモなので、新型コロナ感染症によりロコモの危険も高まります。ロコモである人が幸いにしてコロナを避けられてもロコモが進行しては大変です。あなたやあなたの大切な人がコロナにもロコモにも負けないようにこのページをお役立てください」としている。(5/25 健康産業速報)


次号のメールマガジンは2020年7月15日ごろの発行です。

(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ