エンタプライズ発信〜メールマガジン【№125】 2021. 9

台風シーズンに入りました。台風と聞くと低気圧の影響で自律神経が乱れ、頭痛、肩こり、めまい、関節痛、動悸などの体調不良に陥る人がいます。そこに拍車をかけるのが、今日的テレワークによる長時間のパソコンやスマートフォンの操作で、知らず知らずに座位姿勢が前かがみ(前屈=猫背)になっていることです。骨格(主に脊柱)が歪んで頚部や肩、腰などに疲労感や痛みをもたらすほか、悪姿勢によって自律神経にも悪影響を及ぼしさまざまな症状につながっていきます。自律神経は脳の視床下部から脊髄を通り、全身の各器官につながっているので、姿勢が悪いと自律神経の信号がうまく伝わらなくなるのは自明とも言えます。自律神経の働きは、交感神経と副交感神経のバランスで成り立っていることはご存じのとおりです。血管の収縮、心拍数の増加、消化抑制などを交感神経が支配し、逆に血管の拡張、心拍数の減少、消化促進などを副交感神経が担います。長時間にわたる前かがみ姿勢や足組みに端を発してこのバランスが崩れて交感神経が優位な状態が続くと、上記の症状が現れることになり、それを後押しするのが低気圧であり、これを気象病と呼びます。患者教育に使えれば幸いですが、正しい座位姿勢は次のように言われています。1)耳と肩が一直線上にあり、頭や顎は突き出ていない。2)視線はまっすぐ前に向いている。3)椅子に座った状態の骨盤がしっかり立って、臀部は太ももと90度近い角度を形成している。4)膝や足首も90度の角度を保っている。5)足の開きは首幅〜肩幅。6)つま先はまっすぐ前に向いている。—誰も見ていない自宅で作業をするときに鹿爪らしくこれを実行するのは強い意識が必要でしょうが、悪い姿勢でずっといるダメージを考えると、習慣化することができれば大きなベネフィットになります。

★☆★━━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】 エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【2】 “こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【3】 からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【4】 円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】 N・E・W・S


連載vol.83

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

抵抗の小さい経絡(つづき)

鍼師の中には、磁気やレーザーによる刺激を利用する人もいるが、これらのエネルギーは半導体システムに特殊な影響を及ぼすことが知られている。例えば磁気の作用に関係があると推測されるのが、1879年に発見されたホール効果である。半導体に垂直方向から磁気を作用させると偏向力が働いて、半導体を流れる電流にずれが生じる。これにより発生するトランスバース・ホール電圧から、電荷の担体の性質がわかるのである。
また、ある種の半導体には音と光を伝える性質があることから、電気や磁気の代わりに音で刺激を加える手法があっても不思議ではないだろう。

つまり、生体マトリックスと経絡のシステムは、情報とエネルギーを伝達・処理する分散システムなのだ。経絡は遠距離の生体コミュニケーションルートとして、経穴は局所のワークステーションとしてそれぞれ機能しているのである。ワークステーションの役割とは、生体の各所から送られてくるシグナルを近くの組織に伝えたり、近くの組織からの情報をシステム全体に送ったり、あるいはシグナルの強度と鮮明度を維持したり、シグナルを処理して指示メッセージに変換したり、その指示を実行するためのエネルギーを供給したりすることである。
したがって経穴にはスイッチをはじめ、アンプ、カプラー、フィルター、ゲート、さらには記憶装置といった機能が備わっているのかもしれない。経絡と経穴に関するこれらの性質は実験によって証明可能であるから、ここで述べた推論は科学的に真偽を試すことのできる仮説と言える。
実際にこの仮説は、生体マトリックスの個々のコンポーネントを調べている多くの研究者たちが部分的に試している。例えばハマーロフ(Hameroff)らの論文には、微小管の情報処理機能に関する報告が多数引用されている。

細胞骨格内に存在する細胞の「神経系」や、細胞骨格の情報処理能は、もはや多くの科学者たちが認めている。微小管はチューブリンという球形ポリペプチドをサブユニットとするポリマーで、このサブユニットが螺旋状に集まることによって、微小管の構造をつくり出している。微小管の各サブユニットには2種類以上のコンフォメーションがあるので、情報を保存することができるのである。微小管は、双極子が一定の方向に並んだエレクトレットであるから、圧電気の性質をもつと考えられる。(次号へつづく)
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊2005 )


連載エッセイ 92☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


健康に及ぼす 「暗示効果」

プラシーボ効果という心理的要因が身体に影響を及ぼすということは多くの人が知っていると思います。筆者は40年近く治療、施術の業界に携わっていますが、プラシーボ効果の健康への影響は大きいと常々感じています。当院の患者さんにも、体調不良が生じて予約の電話をしてから症状が緩和されてきたなど、冗談のように言われる方がいますが、これもプラシーボ効果だと思います。これは当院で治療効果を体験すると、そのポジティブな条件付け、すなわち痛みを軽減する神経回路が作用して、症状の緩和につながるのだと予測されます。

プラシーボ効果の反対のノーシーボ効果があります。この効果も同様に心理的な暗示効果ですが、ノーシーボ効果に対する臨床事例はいくつもあります。例えば、腰痛や膝関節痛の病院での画像診断で、椎間板や変形した関節などの構造的異常が指摘された画像を見ながら医師から説明を受けた場合、「構造異常=痛み」という思い込み(暗示効果)が入って症状の改善を悪くする事例があります。最近ではNHKやインターネットの情報で、「構造異常=痛み」の原因ではないということが多くの人に知られるようになりましたが、まだまだそのようなネガティブなノーシーボ効果の影響で症状の改善を悪くしている方も少なくはありません。

アレルギー症状のノーシーボ効果の事例として、花粉症の人が造花を見て鼻水が出てきた、あるいは花粉情報のニュースを聞いてから花粉症状が出てきたなどです。また、ある実験で「うるしの葉」と「栗の葉」を触らせる2つのグループ分けて、うるしを触らせたグループには「栗の葉」だと説明、栗の葉を触らせたグループには「うるしの葉」だと逆の説明しておいたのです。すると驚くことに、栗の葉を触ったグループに発疹が出て、うるしの葉を触ったグループには何もなかったという結果になったといいます。少し乱暴な研究ですが、アレルギー症状の多くの方が心理的要因に関係しているので、あり得る話だと思います。

ノーシーボ効果は、いわゆる「思い込み」に関係しますが、意識的に思い込むというよりも知らず知らずに入ってきた情報をネガティブに解釈して受け止めて、それが本当に体調不良に作用してしまうのです。例えば、今回の新型コロナのワクチンでも多かれ少なかれノーシーボ効果の影響を受けて副反応が生じている方も少なくはないと思います。今回のワクチンに関して、最初は情報が少なく、様々な不安情報が入ってきましたが、最近では段々と全体的な効果や副反応の割合なども見えてきているのではないでしょうか。
ワクチンの種類、全体的な情報を総合すると、予防効果は高く、変異ウイルスには予防効果が低くなる傾向があるようですが、重症化や死亡率はインフルエンザ程度には押さえ込むことができるということです。このワクチン効果もネガティブに解釈するか、ポジティブに解釈するのかはその人次第です。その解釈の仕方によってはノーシーボ効果によるネガティブな影響を受けるかもしれません。おそらく、ワクチンを恐れる解釈をするよりも、自分の身体の柔軟性を信じてワクチンを受け入れる方が健康に対するメリットが大きいのではないかと感じています。

連載 第14回

からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜

安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)

3)近年のストレス研究の動向

筆者は交感神経の緊張度をBiofeedback Unit を用い、手掌の発汗状態をもとに測定していますが、そのほか血圧、心拍数、また血液、尿検査によるストレスホルモンの測定などがストレス判定には有効です。
ただそうした従来の測定法に対して、富山大学の山口昌樹准教授は唾液α-アミラーゼがストレスにより上昇することに注目しました。これは唾液α-アミラーゼのもつ殺菌効果や消化作用によるものだと考えられますが、同氏はこの事実を用い、1分ほどでその人のストレスのその時点あるいは経時的変化を測定できる小型の装置を開発しています。
また徳島大学大学院の六反一仁教授は、内科外来ですぐに診断がつく患者が80%であるのに対し、すぐに診断のつかない患者が20%であるとすると、その20%の中には急性ストレスの患者と慢性ストレスの患者があり、前者は休養により回復するものの、後者には治療が必要である可能性があり、疾病はストレスが持続的に続く慢性ストレス状態に到って発症するとしました。そしてストレスホルモンにより様々なタンパクや酵素をつくり出す作用のある白血球を用い、急性と慢性で発現の度合いに著しい差異の生じる遺伝子について発表しています。

4)睡 眠

ストレス解消の手段として、睡眠の果たす役割は欠かせません。ここで睡眠について科学し、その不調についてもふれてみます。眠りには、ある一定のリズムがあります。

a)眠りのリズム
それは深い眠りと浅い眠りの繰り返しのリズムであり、人はそれを意識しなくても、およそ90分周期で繰り返します。正常な睡眠では、最初の3段階でより深くなり、それを過ぎると徐々に浅くなっていきます。
眠りのリズムの中にあって、浅い眠りのとき人は夢を見るのです。この段階は無意識であってもほとんど目覚めに近い状態で「レム睡眠」と呼ばれます。REMとは、rapid eye movementのことで、おそらく眼で夢の映像を追っているのでしょう。眼球が盛んに動いている様子が記録される状態です。
そしてこのとき同時に記録される脳波がアルファ(α)波です。それは速波でも徐波でもない、それらの中間の8-13c/s(Hz)の波です。
(この項つづく)

連載…32

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

審判のとき!(つづき)

クライアントは施術を受けているという事実をさまざまな理由(例えば配偶者にどんなことにお金を使っているか知られたくなかったり、誰かにその人がマッサージを受けて胡散臭いとか、好き放題していると思われるのが嫌だったり)で、秘密にしておいてほしいと言います。
もしあなたが(元あるいは現在の)クライアントにオフィスの外で会った場合、規定では最初にこちらから声をかけてはいけないと定められています。クライアントの中には家族や友達に彼らがマッサージセラピーに通っているということを言っておらず、同伴者にあなたが誰であるか説明したくないかもしれません。もし彼らがあなたに気づいたのであれば、彼らがあなたに接するやり方であなたも接すればよいのです。例えば、もしクライアントがあなたに対して軽く会釈した程度でしたら、あなたも会釈を返すだけでいいのです。決して話しかけたりしてはいけません。たとえクライアントが一人であったとしてもです。彼女は自分のプライバシーを侵害されたくないかもしれないからです。

守秘義務に例外はありません。ときに有名人があなたのクライアントであるなら、ふとその人の名前を口にしたくなるかもしれません。しかし有名人は守秘義務を守ってくれることを有難いと思っているし、その権利もあるのです。
また守秘義務にはあなたの個人的なケアに関連した側面もあります。インストラクターのDaigleは、仕事をしていくうえで私たちの中に溜まってくる感情の適当なはけ口がないと守秘義務を履行していくのは難しいと言っています。私たちの多くは、クライアントが話す感情的な話に対処していく方法を身につける必要があります。Daigleは絵を描いたり、ダンスをしたり、瞑想などを定期的にすることで、それらの感情が健全に昇華するのではないかと提案しています。前の項で述べたコンサルテーションやスーパービジョンなどもはけ口になるし、また定期的にボディワークなどを受けるなどすれば、感情的な負担が軽減されることでしょう。

しかしながら、ストレスのはけ口として、友達や同僚とクライアントの話をするということは、たとえ名前は出さなくても良い考えではありません。個人情報が流出したり、偶然クライアントが誰であるかわかってしまう危険性が高すぎます。
(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )

 N  E  W  S

NEWS ■シンガポール、接種率8割でも感染急増

新型コロナウイルスのワクチン接種完了率が8割を超えたシンガポールが、深刻な市中感染者急増に見舞われている。経済への打撃が大きいコロナ根絶戦略から、「コロナとの共存」に向けて行動制限緩和に切り替えたところ、早くも試練に直面した。人口約570万人の同国で、新規感染者は9月12日まで3日連続で500人を超えた。人口比で考えると日本で1万人超に匹敵する。ワクチン接種者を対象に1組5人までの外食を認めるなど、厳格だったコロナ制限を一部緩和したのが響き、感染者が8月下旬から急増し始めた。
ワクチン接種完了率は81%と「おそらく世界一の水準」(オン保健相)に達し、満を持して緩和に着手したはずだった。しかし、感染力が強いデルタ株が生鮮市場や商業施設を通じて拡散。期待された集団免疫はいまだ獲得されておらず、保健省は「接種率9割を大幅に超えないと獲得は難しい」と悲観的だ。それでも、ワクチン接種浸透により重症化リスクは着実に低下。政府はコロナ共存をにらみ、感染者が出ても重症者が増えなければ規制を緩めていく出口戦略を描く。シナリオ通り緩和姿勢を維持できるのか、重症者急増で厳格な規制に逆戻りするのか、「今後2、3週間が正念場」(オン氏)になりそうだ。(9/14 時事通信)

NEWS ■運動+200kcalの削減で血管の健康が改善か

肥満の高齢者では、適度な運動を行いつつ、1日の摂取カロリーをわずか200kcal減らすだけで、体重が減少するだけでなく、血管の健康が大幅に改善する可能性があるとする研究結果が報告された。米Wake Forest School of Medicine老年学・老年医学分野のTina Brinkley氏らは、「このようなライフスタイルの変化により、加齢に伴い進行する大動脈硬化を相殺できる可能性がある」と述べている。研究の詳細は、「Circulation」に掲載された。
Brinkley氏らは、座位時間の多い65〜79歳の肥満者160人を対象に、有酸素運動とカロリー摂取量の削減の組み合わせが大動脈硬化にどのような影響を及ぼすかを調べた。対象者は20週間にわたって、通常の食生活を送りながら有酸素運動を行う群(56人)、運動を行い、かつ1日のカロリー摂取量を200kcal(55人)または600kcal(49人)減らす群の3群にランダムに割り付けられた。
その結果、体重減少量は、運動のみを行った群で1.66kgであったのに対して、運動と200kcalのカロリー削減を組み合わせた群では8.0kg、運動と600kcalのカロリー削減を組み合わせた群では8.98kgであり、運動にカロリー削減を取り入れた群で有意な減少が認められた。その一方で、大動脈の硬化度については、運動と200kcalのカロリー削減を組み合わせた群でのみ変化が認められ、大動脈進展性の21%の上昇、PWVの8%の低下が確認された。その他の2群では、有意な変化は認められなかった。
Brinkley氏は、「カロリー削減量が最も大きかった群では、それよりもカロリー削減量が少なかった群と同程度に体重と血圧が低下したにもかかわらず、大動脈の硬化度には改善が認められなかった」と話す。同氏は、「これらの結果は、運動と適度なカロリー削減を組み合わせることで、減量に加え、体組成および体脂肪分布の改善が最適化され、それにより血管の健康へのベネフィットを最大化できる可能性が高いことを示唆している」と結論付けている。(8/25 TMS-Net)

NEWS ■歯がなくて噛めない人は転倒リスクが上がる

東京・大田区にあるKデンタルクリニックでは、毎週延べ100人前後の訪問診療に対応している。田邉弘毅院長は、歯がない、噛み合わせが悪いことで、全身に症状が及ぶケースも多いという。「噛めないことで認知症が悪化することもありますし、食事がおいしく感じられず痩せてしまう方もいます。また、奥歯を食いしばれないせいで、手に力が入らなくなったり、うまく歩けなくなってしまうことも。『歯がなくて噛めない人は転倒リスクが上がる』という統計データもあるくらい、歯の有無は体全体のコントロールに深くかかわっているのです」
症状を悪化させないために、どんな治療ができるのか。 田邉院長によれば、虫歯の切削や歯石除去、薬剤等による歯周病治療、審美歯科(被せ物や詰め物)など、院内でできる治療は訪問診療でもほとんどできるという。また、歯がない場合は、入れ歯を作ることも可能だ。ただし、外科手術が必要なケースやインプラント治療は、現時点では対応できない。
「1日1回、少しケアするだけでも歯の寿命は変わります。麻痺があってうがいが難しい場合は、歯ブラシにガーゼを巻き付けて汚れを拭き取る。認知症の場合は、ご夫婦やご家族で互いに声を掛け合って歯磨きを忘れないように習慣づけることが大切です」
厚生労働科学研究班の調査発表によると、ほとんど歯がなく義歯もしていない人は、20本以上歯が残っている人に比べて、認知症になるリスクが1.9倍高いという。1本でも多く自分の歯を残すために、日々のケアを怠らないようにしたい。(9/17 週刊朝日)

NEWS ■ コロナ禍で「巣ごもり便秘」〜生活見直しを

昨年から新型コロナウイルス感染拡大に伴い、人々の暮らしは変化しました。在宅時間が増えることで需要が伸びたことに関しては「巣ごもり需要」と言われます。コロナ禍の自粛期間に増えた便秘に関しても、俗に「巣ごもり便秘」と称されています。
当院でも自覚症状で便秘を挙げる人が増えました。しかも「今までは便秘とは無縁だったけれど、最近はスッキリしなくて…」という便秘初心者も多いように感じています。
便秘解消のためにはストレスをためないことも大切ですが、具体的な方法はなかなか難しいです。ですから、まずは行いやすい運動をする。ウオーキングやジョギングに加えて、おなかをひねるようなストレッチを行ってみましょう。体をひねるポーズもある上、ストレス対策にも役立つヨガもお勧めです。腹筋のパワーでおなかを外側からマッサージする効果もあるので、腹筋運動も行いたい運動です。
食事は朝食を含めて規則正しい食事をして、野菜や果物や海藻で食物繊維を取り、ヨーグルトや、みそなどで腸内細菌のバランスを整えるように心掛けましょう。便秘の人が「食物繊維をたっぷり取ろう」と、野菜サラダを急に大量に取り過ぎると、かえって便秘が悪化することがあるので要注意です。多くの野菜に含まれる不溶性食物繊維は便のかさを増やすため、便秘解消に効果的ですが、既に腸の動きがとても悪くて便秘になっている人は、かえって便が腸内で詰まり、便秘が悪化することもあります。他の方法で腸の調子を整えつつ、野菜は徐々に摂取量を増やすことが大切です。さらに、サラダに使うような野菜だけではなく、水溶性食物繊維である根菜や海藻も取りたいものです。(8/26 医学博士 福田千晶=時事メディカル)

NEWS ■温水洗浄便座で皮膚炎に。お尻の洗い過ぎ注意

温水洗浄便座は肛門などを清潔に保てる上に使用後に気持ちまですっきりするが、使い方を誤ると、肛門周囲に皮膚炎が起こることもあるという。適切な使い方について、大腸肛門病の専門医である辻仲病院柏の葉肛門外科の赤木一成部長に聞いた。
国内ではここ30年ほどで温水洗浄便座が急速に普及した。2020年の内閣府調査によると、一般世帯の80%以上で使用されているという。そのメリットは局所の清潔を保てること。「排便後に温水洗浄便座を使って洗うことで、トイレットペーパーで拭くだけの場合に比べ、手指に付く病原菌の数が大幅に減ったとの研究結果が明らかにされています」と赤木部長は話す。さらに「痔の患者さんの多くが、温水洗浄便座のおかげで、紙で拭く回数が減り、拭くときの痛みが軽くなったと喜んでいます」というメリットもある。
しかし、適切に使用しないと問題も起こる。温水洗浄便座のトラブルで最も多いのは、肛門周辺がかゆくなり、湿疹ができる肛門周囲皮膚炎だ。強い水圧や高い温度、長時間の温水洗浄で肛門周辺の皮膚のバリア機能を担う皮脂が流される上、常在菌と呼ばれる菌のバランスが崩れて、細菌感染や便による炎症で発症すると考えられる。
「肛門がかゆいから洗浄して治そうとする人もいますが、逆効果となります。また、便秘の人が洗浄水で肛門を刺激して排便を促そうとすることもありますが、習慣となって、洗浄しないと出ない状態になってしまいます。水圧が強いと切れ痔を起こす可能性もあります」
お尻のトラブルを起こさない温水洗浄便座の使い方について、赤木部長は「温水洗浄はいいと思います。ただ、水圧を強くせず、ぬるま湯で10秒程度にとどめ、あとは軽く紙で拭き取るようにしてください」とアドバイスする。(8/26 メディカル トリビューン=時事)

NEWS ■“腰痛の有無”を削除、腰部脊柱管狭窄症ガイドライン

『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版』は、2011年の初版を踏襲しつつも今版では新たに蓄積された知見を反映し、診断基準や治療・予後に至るまで構成を一新している。
本ガイドラインの目的の1つは、これを一読することで今後の臨床研究の課題を見つけてもらい、質の高い臨床研究が多く発表されるようになることだが、脊柱管狭窄症の “定義” 自体に未だ完全な合意が得られていない。そのため診断基準も日進月歩で、明らかになった科学的根拠を基に随時更新を続けている。今回は初版の診断基準で提示していた「歩行で増悪する腰痛は単独であれば除外する」を削除し、以下のように「腰痛の有無は問わない」と明記された。
<診断基準>(1)殿部から下肢の疼痛やしびれを有する。(2)殿部から下肢の症状は、立位や歩行の持続によって出現あるいは増悪し、前屈や座位保持で軽減する。(3)腰痛の有無は問わない。(4)臨床初見を説明できるMRIなどの画像で変性狭窄所見が存在する。—-である。
その理由は、脊柱管や椎間板の狭小化による神経組織や血流の障害から惹起する腰痛と非特異的腰痛を鑑別する確立された評価法がないためである。さらに、策定委員長の川上守氏(和歌山県立医科大学 名誉教授、済生会和歌山病院長)によると「ガイドライン作成の基本は論文査続だが、腰痛の定義が一致していないことが問題で、臀部の痛みを腰痛に含める場合もある。本書にあるように、腰痛を明確に鑑別することができないことから『腰痛の有無を問わない』とした。ただし診断基準の1)2)4)は従来通りで、これが揃えば腰部脊柱管狭窄による症状であると判断できる」と説明した。(8/18 CareNet=一部改変)

NEWS ■マスクを着けてのトレーニングは不快でも安全

COVID-19感染拡大防止のため、ジムでマスクを着用しながらトレーニングを行うことで、呼吸機能や心臓への負担が増すのではないかと不安になる人もいることだろう。しかしその心配はほとんど無用であることを示すデータが報告された。米国のMatthew Kampert氏らの研究で「JAMA Network Open」に掲載された。
Kampert氏らの研究は、全ての研究参加者に、マスクなし、布製マスクの着用、N95マスクの着用という3つの条件でトレッドミル運動負荷試験を行うというもの。参加者は、日常的に身体活動を行っている疾患のない20人の非喫煙者。男性が11人で平均年齢39±11歳、BMI25.0±2.4、女性は9人で35±11歳、BMI25.1±4.2。トレッドミルの運動負荷を徐々に上げていき、最高酸素摂取量(VO2peak)や心拍数、自覚的運動強度などを比較した。
結果に有意差はなく、安全性への懸念は認められなかった。また自覚的運動強度にも有意差がなかった。マスク着用条件でのトレッドミル走行中に走行を中止した理由の大半は、マスクの不快感によるものだった。特に主観的な呼吸抵抗感が、マスク非着用条件と着用条件とで差が最も大きかった。
著者らは、マスクを着用してのトレーニングは一般的に安全と考えられると述べている。ただし、呼吸抵抗感などの主観的な負荷が増大し、結果としてマスク着用時にはつらさが増すことは避けられない可能性があるとしている。(8/17 CareNet =部分)


次号のメールマガジンは2021年10月15日ごろの発行です。

(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ