エンタプライズ発信〜メールマガジン【№116】 2020. 12

今年最後のコラムは、世界に感染が広がり、医療だけでなく経済にも大きな影響を与えている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの話題です。開発・治験・製造過程に関わる経緯は略して、日本で接種が始まった際に受けたほうがいいのか検討を重ねるべきなのか。それ以前に国内の医師やパラメディカルたちは早期にワクチンの接種を受けたいと考えているのでしょうか。医科系雑誌の最新アンケートによると、回答した医師(N=6830)のうち、「早期にワクチンの接種を受けたい」と考えているのは35%。一方で「早期に接種を受けたくない」は30%、「分からない」は35%で、計65%が早期の接種に後ろ向きでした。推奨派;「COVID-19の感染状況が深刻だから優先される」、「集団の感染症対策にはワクチン接種が有用だから」、「受けずに感染したら医師としての責任感が問われる」という回答が大部分を占めました。慎重派:「ワクチンは重症化を防ぐ目的であり感染予防にはならない。感染してしまった際の治療法が確立していないのにワクチン接種は早計。副作用の問題もある」、「死亡率が数%の現状では安全性、予防効果のエビデンスの確立が必要。医療態勢は逼迫しているが拙速は禁物」、「人種によってもワクチンの効果や副作用に差が生じることが予測されるため、国内生産がされるまでは接種したいと思わない」と拒否反応を示しています。総体的に見ると、推奨派も医師としての道義的立場が断片的に現れており、現段階では懐疑的な見方も仄聞されます。またCOVID-19診療に携わっているかどうかに影響されることも否めないと思います。年初に始まり掉尾まで燎原の火のように広がりを見せた本ウイルスは、来年施行予定のワクチンで沈静化するのか、はたまた新たな火種を生むのか、感染者急増の師走に不安が募ります。

★☆★━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★

【1】カイロプラクティックオフィスにおける
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【5】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療
【7】N・E・W・S

短期連載—その4

『カイロプラクティックオフィスにおける

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン』

監修 小林寅喆(東邦大学看護学部感染制御学教授)
編集 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)

1. 新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について

〔Ⅱ.〕カイロプラクティックオフィスでの感染症対策(つづき)
3)モノに付着したウイルス対策(つづき)

④ 次亜塩素酸水:テーブル、ドアノブなどには一部の次亜塩素酸水も有効である。次亜塩素酸水とは塩化ナトリウム水溶液を電気分解し、陽性極側に得られる次亜塩素酸(HOC)を主成分とする塩酸を含む強酸性の溶液をいう。酸化作用により新型コロナウイルスを破壊し無毒化する。一定濃度の次亜塩素酸水が新型コロナウイルスの感染力を一定程度減弱させる。
【使用方法】消毒したいモノの汚れをあらかじめ落とす。ⅰ)拭き掃除には、有効塩素濃度 80ppm 以上(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かした製品の場合は100ppm以上)の次亜塩素酸水を十分に使用し、消毒したいものの表面をヒタヒタに濡らした後、20 秒以上おいてきれいな布やペーパーで拭き取る。元の汚れがひどい場合などは、有効塩 素濃度 200ppm以上のものを使うことが望ましい。※ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かすと次亜塩素酸が生成され、簡単に次亜塩素酸水を作ることが可能。ⅱ)生成されたばかりの次亜塩素酸水を用いて消毒したいモノに流水掛け流しを行う場合、35ppm以上のものを使用する。20 秒以上掛け流した後、きれいな布やペーパーで拭き取る。
【注意事項】塩素に過敏な方は使用を控える。
⑤ アルコール消毒(日本薬局方 76.9〜81.4 v/v%エタノール):アルコールはウイルスの「エンベロープ膜」を壊し無毒化する。
【使用方法】消毒用エタノールを用いて拭き取る。 ※ 70%以上のエタノールが入手困難な場合、60%台のものを使用してもよい。
【注意事項】アルコールに過敏な方は使用を控える。

4)空間中のウイルス対策

新型コロナウイルス等の微粒子を室外に排出するためには、こまめに換気を行い、部屋の空気を入れ換えることが必要である。室内温度が大きく上がらない又は下がらないよう注意しながら、定期的な換気に努める。窓を使った換気を行う場合、風の流れができるよう2方向の窓を1時間に2回以上、数分間程度、全開にする。1方向の窓しかない場合、サーキュレーターなどにより室内空気を排出することが望ましい。

5)空間噴霧について

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの消毒に関する見解の中で、室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の(空間)噴霧や燻蒸をすることは推奨されないとしている。また米国疾病予防管理センター(CDC)は、医療施設における消毒・滅菌に関するガイドラインの中で、消毒剤の空間噴霧は、空気や環境表面の除染方法としては不十分であり、日常的な患者ケア区域における一般的な感染管理として推奨しないとしている。

2. オフィスでの取り組み

新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした感染症対策は、飛沫感染及び接触感染による感染経路を遮断し、「3つの密」を避けることを中心に実施する。以下がオフィス内の各部屋(受付・待合室・施術室・更衣室・休憩室等)に共通する感染症対策である。
1)換気 外気に触れる窓やドアがある場合は定期的に空気の入れ換えを行い、こまめな換気に努める。
2)消毒 ①他者と共有する備品:テーブル、椅子の背もたれ、室内専用シューズ(スリッパやサンダルなど)、施術台(カイロプラクティック・テーブル)、治療器具(アクティベータ、三角ブロックなど)、検査器具(打診器、音叉など)、脊椎模型、物理療法機器などを消毒液(最適;70〜80%消毒用エタノール)を用いて清拭除菌する。 ※ 70%以上のエタノールが入手困難な場合、60%台のものを使用してもよい。② 手が触れやすい場所:部屋の手すりやドアノブ、電気のスイッチ、エレベーターのボタン、電話、キーボード、タブレット、タッチパネル、レジ、蛇口、水栓レバーハンドルなど上記同様に清拭消毒する。
(この項、次号へつづく)


連載vol.74

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

なぜほかの伝達系が必要か(つづき)

〔調節機能の謎〕(前号からのつづき)
◇成長、発達、形状の維持…胎児における代謝的成長プロセスには、神経系や内分泌系が形成される以前から調和が認められる。なぜ調和が保たれるのか。私たちは遺伝物質(DNA)の構造や生体組織を構成する蛋白質が基本単位であるアミノ酸から組み立てられる仕組みについてはよく知っているが、遺伝子を鋳型にして作られた蛋白質から1個の生物を組み立てるための設計図についてはほとんどわかっていない。生物を構成する物質が次々と製造され、組織の成分が休むことなく入れ替わる中で、生体全体の形状がどのように維持されているのかは、いまだに謎なのである。
◇外傷治癒…体のどこかに損傷が生じると、それを治癒させるための反応に、損傷部位から離れたところにある組織も協力することがある。この協力の仕組みは十分に証明されていない。
◇組織の再生…成長にも外傷治癒にも関係するのが、四肢や臓器の再生に関する謎である。例えばトカゲは四肢を切断されたり臓器を損傷したりしても再生することができるが、カエルや高等動物にはそのような再生能力はない。トカゲに可能なことが、なぜ人間には不可能なのか。この謎の証明は臨床的に貴重な意味がある。患者自身の組織から義肢や臓器を作ることが可能となるからだ。再生のメカニズムは難題ではあるが、研究者にとって魅力的なテーマであり、臨床応用が実現すれば、医療そのものが一新されることだろう。
◇システムの統一…以上の問題を含め、生体の調節機能全体に共通するのが、どのようにシステムが統一され、その統一されたものがどう維持されるのかという謎である。

私たちの知識が不完全な理由の一つは、個々の成分に分けて研究するという還元論的アプローチにある。例えば今の生化学的知識は、組織をすりつぶして遠心分離で選り分けた分画ごとの研究によって得られたものである。便宜上、研究の中心となる成分を単離・精製する中で、その成分を取り巻く細胞内あるいは組織内環境は破壊されてしまう。
今日の深刻な健康障害の多くはシステム全体に関係する疾患であり、まだ解明されていない調節機能が関与している。鍼治療は、システム全体の調節を目的とした治療法であるから、その原理を知ることは西洋医学的にも極めて有用であると考えられる。(次号へつづく)
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊2005 )


連載エッセイ 82☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


ピンチをチャンスに変える調和

コロナウイルス感染禍が続いており、未だに油断できない状況が続いています。緊急事態宣言が発令されてから、ほとんどの人がマスクを着用しています。マスクをするのが当たり前で、していない人が目立ってしまうというような状況は以前では考えられないことでした。特に人との接触をできるだけ避けること自体が大きな変化です。このような変化の時にこそ、ピンチをどのようにチャンスに変えていくのか、その心構えが問われているのかもしれません。
今回の危機を乗り越えるために今何をすべきなのか。今までにない大きな変化の中で何を考えどのように行動すべきなのかが問われているのかもしれません。この厄介なウイルスも大自然の中の一部であり、私たち人間が共存していくべきモノと言えます。しかしながら、このような状況になると、できるだけ“悪いモノ”を避け、攻撃するという思考が働きやすくなります。その思考は人間関係においても知らず知らずのうちに“悪いモノ探し”のように「対立」を生じさせる傾向があります。「対立」「避ける」よりも、「共存」「受け入れ」の方が大自然との調和という観点から言うと健康的だといえます。

人間も含めて“生き物”は閉鎖的になると不健康になります。心も身体も開放的な健康を維持するためには、適度な心と身体の“動き”が必要です。それは身体や脳への適度な刺激です。特に人間は刺激を必要とする生き物です。
“刺激”は生命体のエネルギー源でもあります。もしも、何もない閉鎖空間で動きや刺激がなくなると生命体は不健康になります。身体の健康を維持するためには適度な運動が必要です。人は往々にして“楽をしようとする”傾向が誰にでもありますので、今回のコロナ禍は、活動をしない言い訳になっているかもしれません。活動しないことが習慣になると結果的に不健康の道へと進む恐れがあります。“しんどいな〜”と思っても少し頑張る習慣を身につけると、身体は自然に鍛えられ強化されていきます。
よく“無理をしないように”と相手をいたわる気持ちを込めて言いますが、少しは無理をした方が、身体には程よい刺激になり、強くしてくれる刺激として捉える方が健康的と言えるでしょう。

活動を止めてしまうと、精神的にチャレンジすることもあきらめてしまいがちです。人は生きていく上で、心の成長は必要不可欠です。心の成長のためには、自分の心にチャレンジすることも必要です。チャレンジすることでネガティブな感情も湧き上がってきますが、ネガティブな課題も成長の種になります。その種は目を逸らしたくなるような課題かもしれません。でもその課題に向き合うことで成長の種は確実に育っていくことでしょう。誰の心にも自分では認めたくないネガティブな心が潜んでいるモノです。それが自然の姿です。大自然はすべてポジティブとネガティブで調和されています。昼があれば夜があり、晴れの日があれば、雨の日もあります。

私たちは人生を通じてネガティブな心と共存しながら心の調和を図り、成長し続けていく生き物です。心の健康を維持すためには、誰の心にもあるネガティブな心を受け入れて、その上でそのネガティブな心を、自分にとって意味あるものに書き換えること。すなわちその「解釈力」が問われているのです。そして、このような時期だからこそどのように解釈するのか、その究極的なポジティブ思考が問われているのかもしれません。

連載 第5回

からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜

安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)

3)呼吸にまつわる微生物

a)結 核
1935-48年(昭和10-23年)にかけてわが国の死亡原因の第1位であった。特に戦前に恐れられていた呼吸器の感染症にこの結核があります。

・結核菌 そもそも結核菌(tubercle bacillus)とは、ロベルト・コッホ(Robert Koch;1843-1910)によって1882年に発見された長さ1-4μm、幅0.3-0.5μmの繊細な桿菌です。これが乾燥したチリ紙の痰などから飛沫感染するもので、黄色いチーズのような膿のかたまりを形成する乾酪性肺炎を引き起こすものです。そして病巣は壊死巣となり、さらに空洞瘢痕組織となります。
コッホはこれに対し、その人が結核菌に感染しているかいないかをチェックすることができるツベルクリン反応を考案しました。

・BCG ツベルクリン反応が陰性の場合には現在BCGワクチンが接種されます。これはフランスの細菌学者、パスツール研究所のカルメット(Calmette)とゲラン(Guerin)によって1921年にウシ型結核菌を弱毒化して作られたワクチンです。これによりイギリスの調査では非接種者に比べ、発病率を1/2から1/3、死亡率を1/5から1/10に減少することができたと言います。わが国でも成人して30歳までにほぼ100%の予防になりました。
また1873年、ノルウェーの医師ハンセン(Hansen)によって発見されたハンセン病(Hansen’s disease)においてもこのBCGは発病予防に有効です。
BCGの保存については1949年(昭和24年)にわが国の研究により凍結乾燥が行われるようになり、1955年(昭和30年)には大林容二らによって耐熱性の凍結乾燥BCGワクチンを完成させています。

・X線直接撮影 X線そのものはドイツの物理学者、レントゲン(Rontgen)によって1895年(明治28年)に発見されましたが、肺結核の発病後の鑑別診断・確定診断については、その後のレントゲン学、レントゲン診断学の進歩に伴う胸部X線直接撮影の普及が貢献しています。
それまでは打診や聴診器を用いた診断で肋膜炎、肋膜カタル、肺炎、肺カタルなどの診断名がみられ、それらが結核菌によるものであるかどうかの鑑別的・確定的な診断はなされていないことが多く、そうした場合あるいは結核であるとの鑑別的・確定的診断がなされている場合においてすら、その処方はもっぱら消化薬、栄養剤などでした。
(次号へつづく)

連載…22

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳
倫理的バウンダリー :倫理に関する質問集(4)

・その行動はクライアントに対して失礼にあたりませんか?

次の2つの事例について考えてみましょう。
<例1> 深部組織ワークを受けているクライアントが最初のセッションのあとにそのボディワーカーの留守電に「治療を受けてから背中の痛みがひどくなった」というメッセージを残しました。ボディワーカーはそのクライアントはずっと文句をつける、うるさい人だと決めつけてメッセージに返信しませんでした。
<例2> 数週間にわたってマッサージを受けているクライアントは、膝の不快感がなかなか良くならないと訴え、セラピストに対し不満を言いました。しかしセラピストは、そっけなく「もしあなたがもっと痩せてソファでじっとしていたりせずに運動をすればきっと良くなると思いますよ」と言いました。

通常私たちのサービスに感謝して喜んでくれているクライアントに対しては私たちも敬意をもって接するのは容易なことです。上の2例のように不平を言ったり、手のかかるクライアントに対するには我慢が必要ですし、あなたのプロとしての駆け引きが試されるのです。そしてプロである以上、あなたは不平や不満に対して、思いやりや少なくとも礼儀を失せずに対応するように運命づけられています。たとえクライアントがどんなに口汚かったとしても、それに対して無礼な振る舞いや侮辱したりするのは倫理に反します。

クライアントもあなたを個人的に侮辱したり、名前で呼んだり、とげとげしい言葉や低俗な言葉を使ってよい権利があるわけではありません。もちろん威圧的に脅したり、性的に不適切な言動についても同じです。しかしながら、彼らにはあなたのワークに対して不平を言ったり、あなたのプロとしての意識に疑問を抱いたりすることはよい立場ですし、あなたも彼らの懸念に対して思いやりや第三者的な視点をもちながら対応したいと思うのではないでしょうか。

不平ばかり言う人には通常、よく説明し元気づける必要があります。状況にもよりますが、例えばまだ背中が痛いというクライアントには痛みがなくなるまでには通常あと1-2日かかることを言ってあげる必要があります。また膝がまだ痛いというクライアントに対しては、あなたが彼女の味方であることをまず知らせることです。「そうですか、まだ痛むのですね。マッサージは関節の痛みを和らげるのでもう少しするときっとあなたの痛みも良くなるでしょうし、そうあってほしいと私は願っているのです」

クライアントと良好なプロの関係を保つということは、あなたが重大な問題に巻きこまれないようにするためでもあります。最初は些細な不満であってもそれを邪険に扱えば一気に問題化することがあり得ます。腹を立てたクライアントは苦情を地域にまき散らすかもしれません。さらに最悪の場合、その苦情を業界組合や裁判所にまで持ち込むかもしれないのです。
(出所:『エデュケーティド・ハート』TheEducatedHeart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(88)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****

腰痛やむち打ち症に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■【頚椎カラー】頚椎カラーの有効性はRCTで証明されていないため、グレード1の患者に頚椎カラーを処方してはならない。たとえグレード2や3の患者に処方したとしても、回復が遅れるので72時間(3日間)を越えてはならない。

http://1.usa.gov/LYNegq

……むち打ち症といえば頚椎カラーを想像する日本人が多いと思いますけど、その有効性は認められていませんし、回復を遅らせる危険性すらあります。頚椎カラーはむち打ち症にまつわる迷信のひとつです。

■【安静】安静の有効性はRCTで証明されていないため、グレード1の患者に安静を処方してはならない。回復が遅れるのでグレード2や3の患者に4日以上の安静を処方してはならない。むしろ普段通りの生活を送るよう勇気づけること。

http://1.usa.gov/LYNegq

……腰痛疾患同様これもむち打ち症にまつわる迷信のひとつです。安静が有効であるという研究はこの地球上に存在しません。日本にはびこる古い考え方を根拠のある事実に置き換えなければ、最善の治療ができないばかりか回復を遅らせてしまいます。一日も早くそれに気づくことを切に願っています。

■【頚椎枕】頚椎枕(サービカルピロー)の有効性はRCTで証明されていないため、WAD(むち打ち関連障害:whiplash-associated disorders)に頚椎枕を処方してはならない。

http://1.usa.gov/LYNegq

……多種多様なサービカルピローが市販されていますけど、こと「むち打ち症」に関しては使用するべからずという勧告です。高価な壺や掛け軸を買ってもむち打ち症は治らないということですね。

 N  E  W  S

NEWS ■ 肉体労働は認知症リスクを高める?

余暇時間の身体活動は認知症リスクを低下させることが知られているが、職業上の高強度の身体活動は、認知症リスクをかえって増大させる可能性のあることが報告された。コペンハーゲン大学(デンマーク)のKirsten Nabe-Nielsen氏らの研究結果で、「Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports」オンライン版に掲載された。
Nabe-Nielsen氏らは、コペンハーゲンに拠点を置く14社の男性労働者を対象に行われている縦断研究のデータを用いて、肉体労働と認知症リスクの関連を解析した。解析の対象はベースライン時年齢40〜59歳の男性労働者4721人で、8万6557人年の追跡中に697人が認知症を発症。年齢の他、アンケートの回答から把握した社会経済的地位、婚姻状況、および心理的ストレスで調整後、座業中心の労働者を基準として認知症リスクを比較した。その結果、職業上の身体活動量が多い労働者の認知症の発生率比(IRR)は1.48(95%信頼区間1.05〜2.10)であり、有意に高リスクであることが明らかになった。
また研究では余暇時間の身体活動が多い人は認知症のリスクが低いという有意な関連が認められた。また同大学が最近行った別の研究からは、健康的な生活様式が認知症リスクを半減させることが示されている。これらの結果から、余暇時間の身体活動と職業上の身体活動は、認知症リスクに対して異なる影響をもたらすと考えられた。
Nabe-Nielsen氏は、「認知症の予防のための身体活動は“質の高い”ものでなくてはならず、きつい肉体労働はそれに該当しないことが示唆された。職業上の身体活動は余暇時間に行う身体活動と正反対の影響があると考えられ、両者を区別しなければならない」と述べている。また、職業上の身体活動と認知症の関連について、さらなる研究の必要性を指摘している。
(12/12 TMS-net=部分)

NEWS ■肩こりが胃の不調に? 寝る4時間前まで夕飯を

「マイライフニュース」を運営するヒューマン・データ・ラボラトリ社は10月、全国の男女2000人に「胃の不調」に関するアンケート調査を実施しました。胃・腸の専門医である「ファミリークリニックひきふね」の梅舟仰胤院長によると、特に今年はコロナ禍でリモート生活になり、生活習慣が急に変わったことから運動不足や食生活の乱れ、さらにはストレスも溜まりがちとなって、胃の不調をきたす人が増えるのは間違いないとのこと。「短気」や「せっかち」のため忍耐強く待つことができなかったり、「頑固」なので新しい生活習慣への変化にうまく対応できなかったり、「心配性」や「几帳面」なのでこの状況に対して不安を抱いたり……やはり、気が長く楽観的で柔軟性のある性格の方が、変化を乗り越えやすいようです。
一日の中で胃の不調を感じやすい時間帯は「夜(35.7%)」が最も多く、次いで「夕方(28.6%)」「朝(27.1%)」と続きました。しかし不調の程度を時間別で尋ねてみたところ、1位は「朝に重いorやや重い」と感じる人が74.9%で、次いで「夜に重いorやや重い」と感じる人が64.0%でした。 梅舟先生は、朝に重い症状を感じる人が多いのは、本来寝ている間に胃が休まることで胃の疲れがリセットされるが、胃が弱っていると食べ物が胃の中に残っている状態で寝てしまうので胃に大きな負担がかかることも原因と考えられるそうです。胃の不調を感じている人が同時に抱えている他の不調を尋ねてみると、1位は肩こり(51.6%)、2位は目の疲れ(47.9%)、3位は疲れ(35.0%)となりました。
梅舟先生によると、肩こりが起きると首回りの血流が低下し、自律神経の機能を低下させるため、胃の働きも低下してしまうケースも考えられるそうです。胃の不調を感じたら、胃の負担を軽くするために固形物よりも果物やヨーグルト、スープ、ゼリーなどを摂取して、寝る4時間前までに夕飯を終えることが理想的だとアドバイス。
(12/11 Hint-Pot=部分)

NEWS ■ 階段を上ると幸福感もアップ

身体活動は幸福感を生み、精神的な健康を維持するために重要だ。独・カールスルーエ工科大学(KIT)と中央精神保健研究所(CIMH)は、身体活動で中心的な役割を果たす脳領域を研究し、階段を上るなどのふだんの何気ない動きでさえ、特に精神的に不調になりやすい人の幸福感を大幅に高めることを明らかにした。
運動は身体的・精神的健康を高める。しかし階段を上る、歩く、車は使わず電車を利用するなどの日常活動が人のメンタルヘルスに与える影響については、これまでほとんど研究されてこなかった。たとえば、どの脳構造が関与しているかについても、いまだ明らかになっていない。
研究チームは、現在、日々の運動のうち最大のシェアを占める日常活動について研究している。「毎日階段を上ることは、注意力と気力に満ちていることを感じるのに役立つかもしれません。このことは幸福感を高めます」と筆頭著者であり中央精神保健研究所のマルクス博士らは説明している。
対象者は67人とし、7日間に渡って注意力に対する日常活動の影響を確認するための歩行評価をした。活動の直後、人々はより注意力が向上し、さらに多くの気力が急激に高まることがわかった。注意力とエネルギーは、対象者の幸福感と精神的健康の重要な要素であることが証明された。
これらの分析を、別の対象者83人に対するMRIと組み合わせたところ、大脳皮質の一部である帯状回が、日常活動と幸福感との相互作用にとって重要であることがわかった。感情や精神の不調に対する体制を調節しているのは、脳のこの領域とされている。著者らは、この脳領域が、身体活動と主観的エネルギーとの関係を仲介する決定的な神経相関であると特定した。
中央精神保健研究所のリンデンバーグ教授は、「この結果は日常生活における身体活動が、特に精神障害になりやすい人の幸福感に有益であることを示唆している」と結論付けている。
(12/9 TMS-net=部分)

NEWS ■うつ病に対する音楽療法〜メタ解析

音楽療法や音楽医学がうつ病に及ぼす影響およびその影響に関連する潜在的な因子を調査するため、中国・Bengbu Medical UniversityのQishou Tang氏らが検討を行った。PLOS ONE誌11月号の報告。
2020年5月までにうつ病に対する音楽による介入の有効性を評価した研究を、PubMed(MEDLINE)、Ovid-Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、EMBASE、Web of Science、Clinical Evidenceより検索した。標準化された平均差(SMD)の推定には、変量効果モデルおよび固定効果モデルを用いた。主な結果は以下のとおり。
・55件のランダム化比較試験をメタ解析に含めた。
・音楽療法は、対照群と比較し、抑うつ症状の有意な改善を示した(SMD:-0.66、95%CI:-0.86〜-0.46、p<0.001)。音楽医学は、抑うつ症状軽減に対する強い効果が認められた(SMD:-1.33、95%CI:-1.96〜-0.70、p<0.001)。
・音楽療法の種類により、異なる効果が認められた。
a)レクリエーション音楽療法(SMD:-1.41、95%CI:-2.63〜-0.20、p<0.001)
b)音楽とイメージ誘導法(SMD:-1.08、95%CI:-1.72〜-0.43、p<0.001)
c)音楽支援リラクセーション(SMD:-0.81、95%CI:-1.24〜-0.38、p<0.001)
d)音楽イメージ療法(SMD:-0.38、95%CI:-0.81〜0.06、p=0.312)
e)即興音楽療法(SMD:-0.27、95%CI:-0.49〜-0.05、p=0.001)
f)音楽ディスカッション療法(SMD:-0.26、95%CI:-1.12〜0.60、p=0.225)
・音楽療法および音楽医学は、長期介入と比較し、短中期介入において強い効果が認められた。
著者らは「うつ病に対する音楽療法および音楽医学は、その種類により異なる効果が認められており、その効果は治療プロセスにより影響を受ける可能性がある」としている。
(12/5 TMS-net)

NEWS■緑豊かな環境が心血管疾患による死亡を減らすか

木々や草地などの緑のある空間が増えると、大気の質が改善され、心血管疾患(CVD)による死亡リスクが低下する可能性があるとする研究結果を、米マイアミ大学ミラー医学部のWilliam Aitken氏らが発表した。米国心臓協会学術集会2020で発表された。
Aitken氏らは、2014〜2015年の米疾病対策センター(CDC)の報告による米国でのCVDによる死亡率、米国環境保護庁が公表している大気質指数(PM2.5濃度)、および米国国勢調査局が公表している国民の年齢、人種、教育レベル、収入に関するデータを収集。これらのデータを用いて、郡単位で算出した米国の正規化植生指数(NDVI)とCVDによる死亡リスクとの関連を検討した。なお、NDVIは、衛星などから見た植物による光の反射の状態を指数化したもので、植物の繁茂の状態や活性度を示す。緑が濃い場合、NDVIの値は大きくなる。
その結果、2014〜2015年の米国では、PM2.5濃度は3〜19.7μg/m3、NDVIは0.00〜0.80の間で推移していたことが判明した。さらに以下の2点についても明らかになった。
・NDVIの値が0.1単位増加する(緑が多い)ごとに、CVDによる死亡者数は成人10万人当たり13.2人減少する。
・大気1m3当たりのPM2.5が1μg増加するごとに、CVDによる死亡者数が成人10万人当たり38.8人増加する。
この結果を受けてAitken氏は「われわれの研究から大気の質が良い地域ほど緑が多く、同様に緑が豊かな地域ほど、CVDによる死亡率が低いことが明らかになった」と述べている。
さらにAitken氏は「政策立案者は緑化を推し進めるべきであり、そのためには、誰もが等しく緑地や澄んだ空気、きれいな水へアクセスできるようにしなければならない。それとともに人々の環境有害物質への曝露を最小限に抑えることも必要だ」と付け加えている。
(12/2 TMS-net)

NEWS ■23年春に慶応大「歯学部」…東京歯科大と統合協議

慶応大学と東京歯科大学は11月26日、運営する学校法人の合併協議を始めると発表した。2023年4月をめどに東京歯科大学歯学部を慶応大学に統合する。慶応大学には医学部と看護医療学部、薬学部があり、歯学部を新たに設置することで医療系の研究や教育の一層の推進を目指す。医療系4学部を持つ私立の総合大学は初めてとみられる。
慶応大学は2001年に看護医療学部を開設。2008年には共立薬科大学と合併して薬学部を設けた。歯学部統合が実現すれば、文系と理系合わせ11学部体制となる。「より多様な人材を輩出し、総合大学として社会への貢献を続ける」としている。
最近の医療系では2011年、看護系の聖母大学と上智大学の運営法人が合併し、上智大学が看護学科を設けた。2016年には大阪医科大学と大阪薬科大学が合併し、来年4月から大阪医科薬科大学となる。
(11/28 共同通信=部分)

NEWS ■外反母趾…親指だけでなく、体のバランスにも響く

外反母趾の問題点について、足を専門的・総合的に治療する下北沢病院足病総合センター長の菊池恭太さんに聞いた。
外疫学調査では、変形性膝関節症と外反母趾の相関が強いことがわかっているという。つまり、外反母趾は親指だけの問題ではない。だからこそ、外反母趾は出っ張りの部分が痛むだけではなく、さまざまな症状を伴うという。 あまり知られていないのが、外反母趾になると親指の機能が落ちてしまうことだ。「外反母趾になると、歩行時の蹴りだし動作のときに親指が十分に働かなくなります。これは米国の足病学(ポダイアトリー)の生体力学の理屈になりますが、歩行時に地面をしっかり押して蹴りだすためには、親指の根元のMTP関節がしっかりと反ることが必要です。しかし、外反母趾で親指にあまり力を込めて蹴りだしができないとなると、親指ではなく第2趾、第3趾に蹴りだしの重心が移ってしまいます。するとますます第2-第3趾に負担がかかり、タコなども親指ではなく、第2-第3趾の下にできやすくなります」
外反母趾が強くなればなるほど、親指は「歩行」という重要な役割から外れていく。「外反母趾は歩行バランスを崩し、歩行速度を低下させるというデータもあります。だから、外反母趾は放置せず、きちんと様子を見て対処をしていくことが大切なのです」
では、自分の足が外反母趾ではと思ったらどうすればよいのだろうか。変形が軽度で痛みなどもないのであれば、足指のストレッチをまめに行うことで、外反母趾の進行を予防できるという。
(12/8 日経スタイル=部分)

NEWS ■冬に足がつりやすいなら…隠れ脱水症状に注意

アスレチックトレーナーの三田貴史さんは都内の整形外科で多くの患者にリハビリ指導を行っている。患者の体の不調に耳を傾ける中、最近気になるのは、冬場の水分摂取不足。「暑い夏には熱中症を恐れて水分補給に気を配る人は多いですが、汗をかかなくなると水分を取らない人が増加します。でも水分不足による脱水症状には、冬場も注意が必要なんですよ」(三田さん=以下同)
冬は気温が下がり、空気も乾燥する。そのため、皮膚からの水分蒸発が進み、体の中の体液が失われやすい状態に。ところが夏のように頻繁に水分を補給しないことで、知らない間に脱水状態になっていることも。いわゆる“隠れ脱水”だ。「冬場になると足がつりやすい、むくみやすいと話す患者さんが多いのですが、話を聞いてみると『冬は夏ほど積極的に水分補給を意識してない』という人がほとんど。水分不足で体内のミネラルバランスが崩れ、足のつりやむくみにつながることもある。夏場と同量程度の水分補給を意識して予防体操も習慣化しましょう」と語る。
体操は、まず立った姿勢で足を上下に大きく開く。前の足に体重をぐっと乗せて、後ろ足のふくらはぎが伸びる感覚を感じられればOK。このとき、後ろ足のかかとが浮かないように注意。かかとが浮かないほうが、しっかりとふくらはぎのストレッチを行うことができる。20秒ぐらいしたら足を入れ替え、また同じ動きを行う。両脚1日3回を目安に。一日の水分量はお水なら1500〜2000mlを目安に。寒い季節は常温か白湯がおすすめです」 「冬場はトイレが近くなるから…」と水分を控える人も多いだろうが、水分不足は肌のかさつきや、疲れやすさの原因にもなる。ひどくなるとめまいや頭痛、立ちくらみなどの深刻な脱水症状が起こることも。夏場同様、水分補給を常に意識したい。
(11/26 日刊ゲンダイデジタル)


■新型コロナウイルス一色に染まった2020年。世界を席巻したウイルスだけに予断は許さぬ動勢ですが、晴れやかな元旦を皆様お迎えください。

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(編集人:北島憲二)


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