エンタプライズ発信〜メールマガジン【№119】 2021. 3

春です。花より団子。ビールがおいしい季節。…と所感を述べつつも春から不興なのですが、痛風にちょっと触れます。高尿酸血症(痛風)になるとずっと薬による治療が続くというのが通説ですが、体重を減量して、お酒をやめ、質の高い食事を取り、利尿薬を使用しなければ、痛風の発症を77%抑制できる可能性があることが、約4万5000人の米国人男性を対象とした研究で示されました。順に補足すると、減量=BMIは25未満、禁酒=プリン体ほかを減らす、食事=食物繊維やミネラル、蛋白質を多めに摂取し、塩分や糖質は少なめにする、利尿薬=血液中の尿酸値が上昇するので減薬する、という呈示になっています。研究者がこの4つの要因のそれぞれと痛風発症との関係を調べたところ、影響が最も大きかったのはBMIでした。23未満の参照群に比べ、25以上30未満の人の痛風リスクは1.9倍、30以上の人では2.65倍になっていました。続いて、4つの危険因子のうちの2つまたは3つ、もしくは4つすべてを組み合わせた場合の痛風発症リスクへの影響を推定したところ、4つすべてが最低リスク(BMIが25未満+飲酒しない+食の遵守度が良好+利尿薬服用なし)であれば痛風発症のリスクは77%低下することが示されました(4要素の複合因果の相対例の報告もあるが略)。とまれ本報告の第一義的推奨は、肥満の人には、まずは減量しないと他の3つの危険因子を正常化しても利益は得られないことが強調されていました。痛風患者は世界的に増加しており、有効な予防策が求められています。尿酸値が気になる人は、コロナ蔓延防止措置下でもあるし、花より団子は戒めて、桜花を愛でて春風の中散歩するのがよろしいようで…。

★☆★━━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】カイロプラクティックオフィスにおける
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【5】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療=休止=
【7】N・E・W・S

短期連載—その7

『カイロプラクティックオフィスにおける

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン』

監修 小林寅喆(東邦大学看護学部感染制御学教授)
編集 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)

1. 新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について

〔Ⅱ.〕カイロプラクティックオフィスでの感染症対策
6. 緊急時の対応

1)スタッフおよびスタッフの家族に感染の疑いが出た場合の対応
➀勤務するオフィスの代表者に連絡する。➁感染の疑いがある本人は、かかりつけ医や医療機関もしくは「帰国者・接触者 相談センター」に相談する。➂保健所の指示に従い行動する。
➃スタッフの感染が明らかになった場合は、各所属団体(日本カイロプラクターズ協会など)に報告する。
2)患者が感染していた場合の対応
➀保健所から当該オフィスへ連絡が届く。➁保健所の聞き取り調査に協力する(患者および来院日時の特定、スタッフやその他の患者などの濃厚接触者の特定など)➂オフィスの消毒を行う。➃経過観察に伴いオフィス営業の判断を行う。➄各所属団体(日本カイロプラクターズ協会など)に報告する。➅営業を再開する。
3)緊急事態宣言が発令された際の対応
・ 特定警戒都道府県のカイロプラクティックオフィスは、自治体の休業要請に従い行動する。休業要請の対象外施設として認められた場合、感染拡大防止策を講じたうえで営業する。
・ 特定警戒都道府県以外の自治体のカイロプラクティックオフィスは感染拡大防止策を講じたうえで営業する。

〔Ⅲ.〕新型コロナウイルス感染症の拡大防止チェックリスト

本チェックリストは、カイロプラクティックオフィスにおける新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策の実施状況について確認することを目的としている。

【確認事項】
チェック1:三つの密を回避する行動について全員に周知し、徹底を求めている。
チェック2:咳エチケットを全員に周知し、徹底を求めている。
チェック3:こまめな換気について全員に周知し、徹底を求めている。
チェック4:こまめな手洗いや手指消毒について全員に周知し、徹底を求めている。
チェック5:出勤前に体温を確認するよう全員に周知し、徹底を求めている
チェック6:全員の日々の体調(風邪症状や発熱の有無等)を確認してい。
チェック7:十分な栄養摂取と睡眠の確保について全員に周知し、意識するよう求めている。
チェック8:オフィス内でスタッフや患者が触れる備品、機器等について、こまめに消毒を実施している。
チェック9:オフィスでは、人と人との間に距離をなるべく保持するようにしている。
チェック10:不特定多数が接触する場所は、清拭消毒を行うこととしている。
チェック11:風邪症状等が出た場合は「出勤しない・させない」の徹底を全員に求めている。
チェック12:新型コロナウイルスに陽性であると判明した場合は、速やかに事業場に電話、メール等により連絡することを全員に周知し、徹底を求めている。

(了)(参考文献は割愛)


連載vol.77

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

なぜほかの伝達系が必要か(つづき)

〔調節に関する固相生物学的アプローチ〕
◇コミュニケーションシステムの設計と構築(つづき)…以上のことを考慮すると、細胞や小器官にも連続する生体マトリックスがコミュニケーションシステムとして最適であることがわかる。生体マトリックスは電子工学的にも、情報科学的にも、あるいはサイバネティックスやエネルギー輸送や協力効果の面でも、求められたコミュニケーションシステムの条件を満たしているからだ。
このシステムの主要な細胞外蛋白質であるコラーゲンには、細胞で簡単に製造できる分子を付加することもできる。自然界に広く知られている基本的な設計と組み立ての原則に従って、複雑な微小構造を自ら構築できる分子を加えても良い。コラーゲン上に並んだこれらの分子は、生体の各ドメインで組織、細胞および小器官をカバーする集積回路やマイクロプロセッサーの役割を果たすだろう。生体組織の結晶構造は、エネルギーと情報を瞬時に伝え、シグナルを処理し、局所に情報を保存しておくのに最適な構造なのである。

◇分散システム…以上のようなコミュケーションシステムは情報科学の用語で「分散システム」と呼ばれる。生体には複数のコンピュータネットワークで1つの共通の問題を解決しようとする分散システムと似たような仕組みがある。つまり、物理的に離れた場所にある複数のマイクロプロセッサーを通信回線で結ぶことによって、ネットワーク全体で共通の作業を行うという仕組みだ。システムに接続した個々の端末は、それぞれが処理能力と記憶能力を保有しており、システムから送られてくる分担作業をこなして、ネットワーク全体にプロトコルメッセージを送り出す。

個々の端末の作業を支配するプログラムを「ノードアルゴリズム」と言い、システム内のノードアルゴリズム全体の組み立てを「分散システムプロトコル」と言う。コンピュータネットワークにせよ、生体にせよ、分散システムで何らかの問題を解決しようとする場合には、情報のルーティング、ネットワークの同時化、最短経路の決定、接続性のテスト、ルーティングの更新、共通チャンネルの調整といった作業が必要になる。コンピュータの場合と同様に、生体のコミュニケーションシステムにも1つあるいはいくつかの端末の犯したエラーをカバーする能力がある。つまり外傷や病気などで生体のある部位の機能が一時的または長い時間失われても、生体全体でその機能をカバーすることができるのだ。したがって「ネットワークのトポロジーがどのように変化しても作業を続行できるプロトコルでなければならない」。(次号へつづく)
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊2005 )


連載エッセイ 86☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


生命力を高める「心の行」

コロナ感染が未だ終息がみられず、ウイルスの変異も確認されています。人との接触を避ける一方で、健康維持に大切なのは、生活のリズム、心身の習慣です。人との接触や外出を避けるようになると、行動が制限され、心も身体も内側にこもり、心と身体の秩序が乱れがちになります。これは多くの人が経験していると思いますが、狭い空間に長時間閉じこもると肉体的にも精神的にも不調が生じます。このようなコロナ禍において、感染予防を行いながら日々の生活をどのように過ごせば良いのでしょうか。

まずは「身体の健康」を維持するためにバランスの良い食習慣と適度な運動習慣を身につけることです。コロナ禍だから外出は避けたいという人もいるかと思いますが、人を避けて散歩や運動することは可能だと思います。肝心なのは「心の健康」です。「どうすれば心を健康に保つことができるのか」、これは永遠のテーマでもあり、明確な答えはありません。一般的にはストレス発散をするために、娯楽やスポーツ、友人との交流などがありますが、特にこのコロナ禍では「ソーシャルディスタンス」という人と人との交流をできるだけ制限することが求められています。「密」はできるだけ避けるということが求められているのです。

心身の健康を維持するためには、本来であれば、人と人との健全な関係性、すなわち「密」が求められるわけですが、このコロナ禍ではその真逆で「密」が制限されます。しかしながら、身体の行動が制限されても、心の動きが制限されるわけではありません。心は本来「自由」です。遠く離れた人に対しても「想い」を寄せることができます。不思議な話ですが、心の電波、信号は無制限に伝わります。このことはとても非科学的であるようですが、一部の科学者は真剣に研究しているのです。心の健康を高めるために、心の交流、関係性を保つことは大切です。コロナ禍ではとても厳しい状況ではありますが、直接会えない人や遠く離れた人への純粋な想い、「真心」を伝えることはできます。

直接的に話さなくても、ただ無心に「ありがとう」という感謝の気持ちを思うだけで、プラスの生命力が心を浄化してくれるでしょう。これは大切に想う人だけでなく、特に嫌いな人に対して何らかの意味づけ、肯定的な解釈を加えて唱え続けることで不思議な感覚や現象が生じるでしょう。眉唾的な話だと思うかもしれませんが、ただただ理屈抜きに「ありがとう」の心の信号を伝えるだけで、心の生命力が高まるわけですから、たとえ効果を感じなくても失うものはありません。
適度な運動を行うように、心の修行として習慣づけてみてはどうでしょうか?特にこのコロナ禍ではそのような「心の行」が求められているように思います。

連載 第8回

からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜

安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)

3)呼吸にまつわる微生物(つづき)

c) 鳥インフルエンザ
・症状(ヒトの場合) 潜伏期間は2‐4日です。初診時には発熱、呼吸数の増加、胸部聴診のクラック、すでに呼吸不全を呈している場合もあります。胸部X線検査では両側性または一側性の多発斑状態、肺炎像、気胸などがみられます。本症は重症化しやすく死亡率も55%ときわめて高く、呼吸不全、腎不全、心不全などが示されます。
・治療と対策(ヒトの場合) インフルエンザ迅速診断キットで陽性になりますが、これによりH5N1であるとの確定診断はできません。またアマニタジンやリマンタジンに耐性があるものの、N(ノイラミニダーゼ)については試験管内でその阻害薬が有効とされます。

4)性にまつわる微生物

性感染症(sexually transmitted diseases)は、1999年(平成11年)のはじめまでは「性病予防法」によって、1;梅毒、2;淋疾、3;軟性下疳、4;鼠径リンパ肉芽腫(第四性病)の4つに限定されていた性病も、同法の廃止によりこれら4つを含め、性行為によって感染する可能性のあるもの、例えば、5;性器クラミジア感染症、6;カンジダ膣炎、7;膣トリコモナス、8;疥癬、9;毛虱、10;尖圭コンジローム、11;陰部ヘルペス、12;BまたはC型肝炎感染症、13;エイズなどすべてに対して性感染症と呼ぶようになりました。
そしてこれらを病原体の種類によって分類すると、細菌によるもの⇒1,2,3、クラミジアによるもの⇒4,5、真菌によるもの⇒6、原虫によるもの⇒7、寄生虫によるもの⇒8,9、ウイルスによるもの⇒10,11,12,13、となります。

***

さて、微生物ならびに感染症についてはここで閉じることとし、以下からは今般のコロナ禍でも表出した「ストレスと心身の健康」についての輪郭(アウトライン)を記していきます。

「あなたがたは、この世では悩みがある。しかし安心するがよい。私はすでに世に勝っている」

日々の生活に追われ、生きる苦悩にさいなまれ、人は、このイエスの言葉にどれほど救われることでしょう。
釈迦は人生皆苦と言い、四苦を語りました。生きる苦しみ、老いる苦しみ、病める苦しみ、そして死ぬ苦しみのことです。より複雑な現代社会に生きるわれわれは、より複雑に苦悩し、そして“気”の病に至ります。
現代社会を生きる現代人にとって、日々の生活にストレスを感じずに生きることは、ほとんど不可能に近いことです。そしてそのストレスが心身に与える影響について、世界で初めて体系的に解き明かした人が、ハンス・セリエ博士(Hans Selye 1907-1982)です。
彼は動物実験を通し、動けないように強く緊縛し、フラストレーションという心理ストレスを与えられたネズミにおいて、まず副腎が肥大し、そして充血と脂肪分泌顆粒の放出とにより暗色に変化し、次に胸腺とリンパ節が萎縮し、さらには潰瘍状態を呈した胃壁が無数の出血点を見せることを発見しました。
現在では彼の時代よりも医学もさらに数段の進歩を遂げ、ストレスがもたらす諸疾患についてもさらに明らかになりつつあります。この項では、それらストレスがもたらす自律神経系、内分泌系の諸疾患に始まり、睡眠、欲求と適応、神経症、さらには精神病、そしてこころの安定について言及していきます。

連載…26

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳
倫理的バウンダリー :倫理に関する質問集(5)

審判のとき!(つづき)

また、施術者がすでにクライアントである人に魅了されているという2つ目の状況では、そのクライアントに継続してセッションを行うかどうかを決める前に、一度助言を求めてみるのが一番いいと思います。恋愛感情にせよ嫌悪感にせよ、あなたがクライアントに対して強い感情を抱いたときは、精神力学についてのトレーニングを受けた人と話をしてみて、その感情がどんなものか自分で整理できるように助けてもらえばいいのです。
もしあなたがなぜクライアントに魅了されたのか、そのわけが理解できるようになったら、その感情が消えてなくなるかもしれません。もし消えないようなら、そのクライアントにワークするのをやめる必要があるかもしれません。どちらの場合もこれといって決まった対処法はありません。あなたの感情の大きさや動機、また特定のクライアントには何が一番いいのかなどを注意深く調べる必要がありますし、ワークをどうするかの判断は、外部からのヘルプを考慮したうえでなされるべきでしょう。

否定的な判断

私たちはクライアントに対して思いやりと集中力をもって接する義務があります。その人物とすでにつながりをもてないかもしれませんが、もし特定のクライアントに対してプロの態度をもつことができないようなら彼もしくは彼女とワークするべきではありません。クライアントに対して敬意をもって、個人的に判断することなしに、タッチする能力が妨げられるようなものに対して注意しておく必要があります。私たちは単にクライアントの身体に触っているのではありません。彼らの魂に触れているのです。

審判のとき!

—-新しく来たクライアント(男性)は、あなたに対して彼があなたの信条を攻撃するような団体(例えばライフル協会や同性愛者の権利を出張する団体、原理主義者等)のメンバーであることを打ち明けました。もしくはあなたが漠然とした偏見をもちそうな団体に彼が所属していることがわかったとき。
—-クライアント(女性)は、あなたを苛立たせるようなことをします。例えば彼女はいつも話をしていたり、決して話さなかったり、めそめそした声で話したり、大声で話したりします。あなたは彼女に対するセッションにだんだんと気が進まなくなってきているのに気づきました。

誰でも他人に対して偏見をもつことはあります。人は見た目や服装、彼らの信条を聞いただけでその人を判断してしまうことがあります。あなたが子供のころに家族や地域、社会全体から良い人たちではないと教えられた集団に対して、今でも悪い印象をもたずにいられないと思います。さらに人には個人的な好き嫌いもいくらかはあります。ここで問題になってくるのは、これらの否定的な感情がどれくらいあなたのワークに影響を及ぼすかということです。

あなたが思いやりをもてないような人に対するワークでは、治癒環境の安全性が大きく損なわれます。セッションに遅れがちになったり、ワークに集中できなかったり、ソッポを向いてしまいたくなったり、不当に扱ったり、共感がもてなくなったりと…。施術者は個人的な感情をクライアントに対して隠しとおすことはできません。そんな思いやりのない手でクライアントは触られたいと思いますか?

(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )

 N  E  W  S

NEWS ■ 世界の感染者1億1750万人、死者260万人…WHO

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が、新型コロナウイルスの流行を「パンデミックとみなすことができる」と宣言してから、3月11日で1年となる。各国でワクチン接種が進むものの、地域差と数量不足から、終息には時間がかかる見通しだ。1年前の宣言時に世界の感染者数は約11万8000人、死者数は4291人だった。米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、10日現在の感染者数は約1億1750万人、死者数は約260万人に上る。新規感染は一時、減少傾向にあったが、今年2月下旬から再び増加した。変異ウイルスの広がりや、「コロナ疲れ」による対策の不徹底が背景にある。
WHOによると、世界のワクチン接種回数は計約2億7000万回で、米英など一部の先進国や中国が先行する。国際的枠組み「COVAX(コバックス)」による途上国へのワクチン供給も始まったが、数が足りず、生産増が課題だ。テドロス氏は8日の記者会見で「私たちは大変に苦しみ、あまりに多くを失ってきた」と振り返り、「(ワクチンなど)パンデミックを制御する手立てはあるが、継続的かつ公平に使ってこそ可能だ」と指摘した。
(3/11 ヨミドクター)

NEWS ■ 一歩目が危険…高齢者の大腿骨骨折はほとんどが屋内

高齢者が寝たきりとなる原因に大腿骨の上部付近の骨折があります。若い人にはほとんどありませんが、40歳を超えてから徐々に増え始め、70歳を超えると急増します。人口10万人当たりの年間発生率は、60歳代で男性51人、女性90人ですが、80歳代では男性574人、女性1478人との統計があり、女性の方がかなり多くなっています。
高齢者がこの部位を骨折するのは、ほとんどが屋内での転倒時です。転び方に特徴があり、滑るように横向きに体が落ちて、お尻を床に強打します。その際、大腿骨の上端にあって外側に出っ張っている大転子を打ち、近くが裂けるように折れます。激痛があり、ほとんど歩けません。ベッド脇や滑りやすい床で足をとられ、「夜中にトイレに行こうとして、暗くて脚がもつれた」などとよく聞きます。体を起こして歩き始めようとした一歩目が危険です。
なぜ高齢になると、この部位を骨折しやすくなるのでしょうか。それには加齢による骨密度の低下が関係します。骨密度は40歳代まではほぼ一定ですが、加齢によるホルモンバランスの変化で50歳前後から低下していきます。特に女性は閉経後に急激に低下します。骨がもろくなる骨粗しょう症の状態になるのです。こうした骨折を予防するためのアプローチを日々工夫しておく必要があります。
(3/17 関西労災病院副院長・津田隆之=よみドクター)

NEWS ■肩こりと腰痛が両方ある人はQOLが低下している―弘前大

肩こりや腰痛はいずれもQOLを低下させるが、両者が併存している人のQOLは、より大きく低下している研究結果が報告された。弘前大学大学院医学研究科整形外科の熊谷玄太郎氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Musculoskeletal Disorders」に掲載された。
研究の対象者は関節リウマチや脊椎疾患などのある人を除いた1,122人(平均年齢54.2±15.4歳、男性38.0%、BMI22.7±3.4 kg/m2)。本研究では痛みに影響を及ぼす因子の検討、および、痛みの程度とQOLを前記4群で比較検討した。QOLの評価には、身体的側面と精神的側面の双方をスコア化する「SF-36」という指標を用いた。
この評価との関連については、男性で肩こりと腰痛が併存している群では、精神的QOL(MCSスコア)が他の全ての群(肩こりのみの群、腰痛のみの群、症状のない群)よりも有意に低いことが明らかになった。また、女性では、身体的QOL(FCSスコア)は腰痛のみの群が最低だったが、併存群は2番目に低い値で、肩こりのみの群や症状のない群よりも有意に低値だった。さらに女性のMCSスコアは、併存群が最も低く、腰痛のみの群や症状のない群との間に有意差が存在した。
まとめると、肩こりと腰痛の併存は、男性と女性双方のメンタルヘルス状態の悪化と関連しており、女性では身体的QOLが低いこととも関連していた。この結果について著者らは、「肩こりと腰痛が併存する場合、身体的・精神的QOLへの影響がより大きいと考えられる」とした上で、「この知見は、非特異的な肩こり・腰痛の予防や、QOL低下を来す疾患の鑑別に援用できるのではないか」と述べている。
(3/15 HealthDayNews=部分改変)

NEWS ■ 60歳以上、約3割が認知機能低下…コロナ前と比較

コロナ禍で外出を控えると、お年寄りにどのような影響があるのか、筑波大の久野譜也教授(健康政策)らが調べた。昨年11月時点で、60歳以上の3割近くに認知機能の低下がみられた。5月と比べ、割合は約2倍に増えていたという。
調査は北海道や埼玉県、京都府などの5市町に住む60歳以上の約4700人に郵送で実施した。昨年1月までの「コロナ前」と11月時点の状態について尋ねた。外出や運動習慣、もの忘れが気になるかなどについて選択式で答えてもらった。
回答を分析し、コロナ前と比べて理解や判断など認知機能の低下があると判定された人は、11月時点で約27%にあたる約1300人。5月の調査では約13%が低下していて、割合は2.1倍に増えた。
(3/4 朝日新聞)

NEWS ■ 動き続ければ、動き続けられるのか

研究開始時に可動性障害がなく軽度身体活動に最も多くの時間を費やした女性は、最も少ない時間を費やした女性に比べて、6年間に可動性障害を起こすリスクが40%低かった、という米国カリフォルニア大学からの研究報告。
ここで可動性障害(Mobility Disability)は、自己申告で普段1ブロックの歩行または1階分の階段を昇ることができないことと定義されている。研究チームは、女性健康イニシアチブの補助研究である「客観的に測定された身体活動と心血管の健康に関する研究」に登録された米国在住で63歳以上の5735人の女性のデータを解析した。身体活動量は、7日間の加速度計データから算出し、軽度身体活動は1.6-2.9METsの運動とした。軽度身体活動に費やされた平均時間は、1日4.8時間であった。
軽度身体活動に費やされた時間によって女性を4群に分けたところ、軽度身体活動に最も時間を費やした女性は、最も時間が少なかった女性に比べて、6年間に可動性障害を起こすリスクが40%低かった。
「最高レベルの経度身体活動は不要である。5時間以上で効果は増えなかった」と筆頭著者のニコール・グラス博士候補生はコメントしている。「さらに我々の結果は、ウォーキング、ジョギング、ランニングなどのより高い強度の身体活動の量に関係なく、軽度身体活動が可動性の維持と関連していることを示していた。したがって、あなたが運動しているかどうかにかかわらず、より多くの軽度身体活動は健康的である」と説明している。
(3/4 TMS-net)

NEWS ■高齢者の歩き方から認知機能障害を特定できる?

高齢者の歩行パターンから様々なタイプの認知症をより正確に診断し、アルツハイマー病を同定できるようだ、というカナダ・ローソン健康研究所などからの研究報告。
研究チームは、パーキンソン病、軽度認知障害、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など様々な認知機能障害、疾患をもつ人々と認知的に健康な人々を含む500名の高齢者の歩行パターンを検討した。
因子分析によって、4つの独立した歩行領域(リズム、ペース、変動性、姿勢制御)が同定された。高い歩行変動性のみが低い認知パフォーマンスと関連しており、それによって70%の信頼性でアルツハイマー病を同定することができたという。歩行の変動性とは、歩行時に発生する歩幅の距離とタイミングの変動を意味する。
「これは、歩行の変動性が、認知障害と運動制御の両方に関連する脳の領域で発生するプロセスの重要なマーカーであることを示す最初の強力な証拠である」と筆頭研究者のフレデリコ・ペルッチーニ=ファリア博士は語っている。
(3/1 TMS-net)

NEWS ■AIが肩・肘の可動域を自動測定…リハビリに活用

富士通は2月24日、AIを活用して、タブレット端末などで撮影した動画から肩や肘の可動域を自動測定するサービス「HOPE ROMREC」(ホープ ロムレック)の販売を始めた。整形外科やリハビリ現場での利用を見込む。
AIは、人間の肩と肘関節の動作パターンを学習させた画像認識モデルを複数組み合わせて開発した。患者が関節を動かす様子をタブレット端末のカメラなどで撮影し、AIを搭載したPCにデータを送ると、映像から患者の骨格を自動で推定。肩・肘の曲がる角度を方向別に計16通り測定する。 これまで関節の可動域を自動計測する際は、加速度センサーや赤外線レーダー、目視の場合はゴニオメーターと呼ばれる機器が必要だった。HOPE ROMRECの場合はタブレットだけで計測でき、これらの装置を用意する手間などが省けるという。
肩・肘以外の関節の可動域の測定をサポートするオプションとして、目視で測った数値を音声でタブレットに入力できる機能も提供できるようにする。測定した値をメモする必要がなくなるため、ゴニオメーターを使った計測を効率化できるという。今後は肩・肘以外の関節の可動域も自動で測定できるようAIの開発を進める。富士通は、2024年度末までにAIと音声入力機能のセットを計350件提供するとしている。
(2/24 Tmedia NEWS)

NEWS ■コロナの重症度、過去の喫煙が関連か/日本疫学会

喫煙者の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクについては、海外から相反する結果が報告されている。また、過去喫煙者と現在喫煙者では重症化リスクが異なるとの報告もある。日本人のCOVID-19入院患者を対象に、喫煙歴と重症度の関連を検討した結果を、1月27〜29日にオンライン開催された第31回日本疫学会学術総会で、大曲貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター長) が発表した。
解析に使われたのは、国立国際医療研究センターが中心となり日本全国の施設からCOVID-19入院症例を登録するレジストリ研究COVIREGI-JPのデータ。2021年1月12日時点で、872施設から2万4017例が登録されている。このうち、日本国籍を有し、転院・転送例を除く20〜89歳の患者1万853例が解析対象とされた。
その結果から、大曲氏は喫煙歴とCOVID-19重症化リスクについて下記のように考察した:
1. 過去喫煙者は何らかの疾患に罹患したことで禁煙した可能性がある
2. 過去喫煙者は禁煙したものの、併存疾患により重症化リスクが高いのではないか
3. 現在喫煙者はまだこれらの疾患に罹患していないために、重症化リスクが上がらないのではないか
4. 現在の喫煙そのものは現在の重症化リスクとは直接関係しないが、他の疾患に罹患することで将来COVID-19に罹患した場合には重症化リスクが高まるのではないか
また、女性では過去の喫煙と重症度との間に関連がみられなかったことについて、女性では全体として喫煙者が少なく、検出力が不足していた可能性を指摘した。
(2/19 ケアネット=部分)


次号のメールマガジンは2021年4月15日ごろの発行です。

(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ