エンタプライズ発信〜メールマガジン【№118】 2021. 2

過日、「令和3年2月13日福島県沖を震源とする地震」が発生し、10年前の東日本大震災を彷彿とした人が多かったと思います。津波こそなかったものの、今次の寒波で降り積もった雪がさらなる余震によって崩れる可能性が危惧されます。また至る所で生じた断水はライフライン寸断の危機的難題となっており、水の確保は健康を保つうえでもきわめて大切だと再認識しました。大手食品メーカーの大型調査によると、災害に対する水の備えをしている人は約66%存在すると伝えています。「備え」と言っても具体的に数量までは言及していません。通常1人が1日に必要な飲み水は約2リットルとされます。そのほかに3度の食事を作る際に必要な水分を1人分1リットル程度と類推すると、合計1日に3リットル程度の飲み水が必要です。必要なのは飲み水だけではありません。手や顔を洗う、トイレを流すなど、衛生を保つための生活用水が1人あたり1日10リットル程度必要になるだろうと専門家は言います。予想される首都直下型地震など大地震が発生すれば、例えば5日分を備蓄しておくとなると、飲用水1人:15リットル、生活用水1人:50リットル、合計65リットルが必要になります。3人家族の場合、195リットル必要ということになり、買い置きの飲料水以外にも水道水の汲み置きと、浴槽などにためた水で備えないと対応しきれない数量です。行政支給は物理的に限界があります。こと水の備蓄は場所をとるだけに個人ではきわめてむずかしいのが、現実ではあるのです。震災10年を迎え、頭を抱えたくなる数字です。

★☆★━━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】カイロプラクティックオフィスにおける
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【5】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療=休止=
【7】N・E・W・S

短期連載—その6

『カイロプラクティックオフィスにおける

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン』

監修 小林寅喆(東邦大学看護学部感染制御学教授)
編集 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)

1. 新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について

〔Ⅱ.〕カイロプラクティックオフィスでの感染症対策
4. 施術に際しての注意事項

1)施術ごとに以下を徹底する。
①流水と石鹸またはアルコール等の除菌消毒液による手洗い。②アルコール等の除菌消毒液による使用器具、備品の消毒。③タオルや衣服(ガウン)は共有せず、家庭用洗剤で洗濯し完全に乾かす。④咳エチケットを守る(無症状でも会話をするときはマスクを着用)。⑤治療台(カイロプラクティックテーブル)の顔が接触する部分(ヘッドピース)にはフェイスペーパーを使用することが望ましい(タオル使用の場合は、患者ごとに洗濯したものを使用する)⑥オフィス内では外履きではなく室内専用シューズ(スリッパやサンダルなど)を履くことが望ましい。
2)正しいマスク(サージカルマスク)の着用方法 ①マスクを触る前に手洗いをする。②スクが汚れていないか確認する。 ③マスクの上下・裏表を確認する。 ④鼻、口と顎を確実に覆う。⑤ゴムひもを耳にかける。⑥隙間がないよう鼻まで覆う。⑦マスクは触らないようにする。
3)問診時の留意点 来院する患者に対して、発熱、味覚・嗅覚障害、だるさ(倦怠感)、息苦しさ(呼吸困難)、風邪の症状の有無について問診を行う。いずれかの症状があれば施術を中止する。

以下の①〜③いずれかに該当する患者に対しては、かかりつけ医、地域の医療相談窓口、もしくは「帰国者・接触者相談センター」に問い合わせるよう伝える。予約の際も同様の対応を行う。①息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合。②重症化しやすい方で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合 ※ 高齢者、糖尿病・心不全・ 呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)などの基礎疾患がある、透析を受けている、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている。③上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合 ※ 症状が4日以上続いたり、解熱剤を飲み続けなければならない場合。症状には個人差があるため、強い症状と思う場合にはすぐに相談。
4)検査および施術時の留意点
①施術者および患者の目、鼻、口を触らない。②床、靴底からの感染を防ぐため、検査や施術の際には患者に履物を脱いでもらう。但し、消毒済みの検査専用の履物を使用する場合は除く。③患者のマスク着用は個々の患者の状態に応じて施術者が判断する。

5. 患者への対応

1)患者同士が密着しないよう一定の間隔を空けて予約枠を取る。
2)待合室に患者が密集していないよう確認する。万が一、密集する場合はしばらく経ってから来院することを勧める。
3)待合室に手指消毒液を配置し、消毒の徹底を促す。
4)トイレ(洗面所)では、流水と石鹸による手洗いができるよう準備する。手拭きにはペーパータオルを使用する。(※タオルの共有は避ける)
5)マスク着用に関しては、個々の患者の状態に応じて施術者が判断する。
6)ホームページ、SNS、店頭掲示などで予約時の留意点(発熱等風邪の症状の際には施術をお断りする等)を呼びかけ、政府機関や自治体の通達等の情報発信体制を整える。
7)感染が疑われる際には、かかりつけ医や地域の医療相談窓口、もしくは「帰国者・接触者相談センター」にまずは電話で相談することを勧める。


連載vol.76

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

なぜほかの伝達系が必要か(つづき)

〔局所のコミュニケーションと全体のコミュニケーション〕
調節生物学を知るうえで、なぜほかの伝達系が必要なのかを埋めるべく新しい生体コミュニケーションを探る第3の意義は、生体の隅々にまでどのようにして情報が行きわたるのかを明らかにすることである。体内を網の目のように走る神経系はたしかに生体全体を支配しているが、それでも直接神経系の支配を受けていない細胞や基質が多数存在する。血流に乗って運ばれるホルモンも、個々の細胞に作用することは明らかだが、作用が発現するまでに時間がかかり過ぎる。ホルモンは拡散によって細胞に到達するので、(確実に到達するとはいえ)分泌腺から遠く離れた細胞上の適切な受容体に出合う偶然を待たねばならず、瞬時に作用をもたらすことは不可能だ。
生体全体が生理学的に統合するためには、個々の細胞と小器官と分子が速やかに情報を交換し、即座に反応して、瞬時のうちにフィードバックすることが必要なのである。

〔調節に関する固相生物学的アプローチ〕
細胞と組織の構造に関する研究や、半導体的性質をもつ生体物質の協力効果に関する研究から、粒子や素粒子を担体とする高速コミュニケーションシステムが物理学的に証明されつつある。この物理学的理論が確立されれば、鍼療法、武道、補完および従来医学、そして能力の限界に挑むスポーツや芸術の世界で起きている現象のいくつかを科学的に説明することができるだろう。実はそれこそが本書のテーマなのである。

◇コミュニケーションシステムの設計と構築…生体全体の生理学的統合には相互連携が必要だ。つまり生体の各要素がほかのすべての要素の行動を正確に、少なくとも十分に認識していなければならないのである。生体には局所のレベルでも全身のレベルでも対応できる迅速かつ臨機応変な調節機能が備わっている。生物は、ある部位を負傷したり失ったとしても、その部位の機能を補って現状に適応する能力をもっているが、このことは主たる情報伝達系に支障をきたしたとしても、全身の機能を維持できるだけの伝達系や調節機能が多数存在していることを意味している。
仮に人体の各要素や反応を統合するのに最適なコミュニケーションシステムを設計してみるとしよう。このシステムは神経系の支配も血液の流れも「及ばない」部位までカバーしなければならないとする。できればシステムの終点は細胞表面ではなく、個々の細胞の細胞質から種々の小器官、そして核とその中の遺伝物質にまで到達していることが望ましい。
このようなコミュニケーションシステムをつくり出すためには、優れた半導体的特性をもつ何種類もの天然物質が必要だが、それらをどのように組み合わせてどのように組み立てれば最も優れたシステムが完成するかは、何百万年という進化の中で試されているはずである。

ではそのコミュニケーションシステムにどのような特性をもたせるべきか、シンプルで自動的で、なおかつ作動ミスがまったくない最小のシステムを作るには、どのような電子工学的、光学的、および量子力学的メカニズムを採用すればよいか、部品を組み立て、メインの回路をいくつも複製し、それらを生体の適切な場所に配置するにはどうすればよいか、生体を動かすためには、どのようなプログラムをシステムに組み込めばよいか…。(次号へつづく)
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊2005 )


連載エッセイ 85☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


患者への質問力:関心を寄せるためのスキル

臨床上で「寄り添う力」を高めるためには、患者の求めている結果にいかに期待を込めた関心を寄せるかが重要課題となるだろう。「関心を寄せる」にはどのようなことを意識すればいいのだろうか? また、そのためのスキルはあるのだろうか?
まずは目の前の患者を一人の大切な人として、先入観をできる限り取り払って受容すること。患者を意識するのは、単に接している時だけでなく、患者と面会する前や後も含まれるだろう。患者への意識の度合いは、目下の関心ごとのみならず、その背後にある生活習慣や思考習慣、あるいは過去や未来に及ぶ時間軸も含めて幅が広い。どの程度関心を寄せるかは、患者が求めているニーズの程度にもよる。

患者本人が関心を寄せられることを求めていないのに、必要以上に関心を抱くと様々な誤解を招く恐れもある。まずは患者の求めている言語的、あるいは非言語的なメッセージをしっかりと汲み取ることが肝心だろう。患者が意識的にも無意識的にも求めているものは何か、という関心のアンテナを立てることから第一歩が始まる。私たちは関心を寄せることで情報が入ってくる。何かに関心を持つとそれに関係する情報が自然に入ってくる傾向がある。例えば、海外旅行が計画された場合、なぜか普段は意識していない英会話や海外の情報が目に入ったり耳に入ったりした経験はないだろうか。それは「海外」というアンテナを立てたがゆえに無意識的にそれらの情報をキャッチするのである。すなわち相手に関心を持つということは、コミュニケーションの基本になる。

医療者と患者とのコミュニケーションは専門領域によって異なる。何らかの問題を抱えているという点においては共通しているが、単に肉体の構造上の問題なのか、メンタル面が関係する心身相関的な問題なのか、あるいは精神的、社会的な問題が関係しているのか様々である。慢性的な症状を抱えている患者は、多かれ少なかれメンタル面が関係することが多い。それは知らず知らずに身についた思考習慣や生活習慣に関係する。医療者が病気や不定愁訴に関係する原因に関心を寄せる場合、身体的側面に関心を寄せて、構造異常に目を向けて改善しようとするだろう。構造学的、あるいは機能学的な異常の多くは、結果であって原因ではないことが多い。身体的側面よりもより深い本質的な原因に目を向ける場合、患者の心理的側面に関心を寄せる必要があるだろう。

原因の本質がどこにあるかによって関心の寄せどころが異なるが、身体的な問題やメンタル的な問題にかかわらず、まずは一人一人の人間に関心を寄せる姿勢は大切になることは知っておきたい。

連載 第6回

からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜

安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)

3)呼吸にまつわる微生物

b)SARS(つづき)
・症状 潜伏期間は2-10日であり、その後高熱や咳、倦怠感、悪寒、筋痛症などから始まり、数日後には呼吸困難、痰の少ない咳など重症肺炎を呈します。このころが最も感染力が強く、危険性も高くなります。致死率は全体の10%前後と言われています。
・インフルエンザとの相違 SARSは低温に強いためインフルエンザ同様冬に流行します。ともに前駆症状が似ているため識別がむずかしいとされています。SARSはもっぱら院内感染、インフルは市中感染によるので、SARSは早期発見して隔離を徹底することで予防を確保する必要があります。
・胸部X線像、CT画像 まずX線像では早ければ発現2日後から淡い限局性の浸潤がみられ、3-4日後には壊死性気管支炎から周囲の肺胞への炎症の波及がみられます。CT画像は胸膜側の濃厚な陰影または早期の末梢の淡い限局性のスリガラス状陰影から急激に進行した急性呼吸困難症候群にまで及ぶことがあります。
・治療法、対処法 SARSコロナウイルスに対する抗薬はまだありません。いまのところメチルプレドニゾロンを投与し21日かけて減薬していくかなどで対応しています。空港などでは入国の際に体温検査などで水際対策を講じます。中国の広東省では野生の小動物が食用とされていることから食の衛生管理の必要性があるとも言われています。

c) 鳥インフルエンザ
鳥インフルエンザとはオルソミクソウイルス科に属するエンベロープをもったRNAウイルスの引き起こす鳥のA型インフルエンザのことです。A型は鳥の場合もヒトの場合も遺伝子が非常に変化しやすく、この際、低病原性鳥インフルエンザウイルスではH1〜H5までのヘマグルチニン(H)をもつウイルスがみられ、高病原性鳥インフルエンザではH5とH7をもつもののみがみられます。
・ヒトへの感染 鳥インフルエンザはヒトには感染しにくいと言われていますが、濃厚な接触をとおしてヒトに感染する場合があり、生きた鶏がそのまま売られている香港、ベトナム、タイなどでは感染が報告されています。またH5N1やH7N7ウイルスに関してはヒトからヒトへの伝播も家族間などで確認されています。(次号へつづく)

連載…25

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳
倫理的バウンダリー :倫理に関する質問集(4)

審判のとき!(つづき)

あなたは自分自身ならびに自分の限界を知らなければなりません。セッション中は、あなたは自分のポリシーを単に満たすのではなく、常にクライアントのニーズを満たすために全身全霊を注がなくてはいけません。もしクライアントに対して強烈にロマンティックな感情や性的な感情を抱いてしまった場合、それらの感情は通常プロとしてのあなたとクライアントの関係をじゃまにしてしまいます。もしクライアントに強く惹かれたときには、そのことについて素直にコンサルタントやスーパーバイザーに相談してみましょう。

また、あなたは常に転移(クライアントが無意識のうちに施術者をリスペクトに似た感情や心理をもつこと)の効力について考えておかなければなりません。そんなにたやすく誰かの施術者になることを決めるべきではないのです。もし誰かが治療院を訪れたらすでに転移は始まっており、双方の気持ちは高ぶっています。クライアントの目には、すでにあなたは実際より大きく(思いやりのある世話人、また痛みを和らげてくれるヒーロー、懐の大きな親のような姿に)映り始めているはずです。この状況下で、クライアントは施術者からのロマンスの誘いを無下に断ることができなくなっているのです。この弱みに付け入ることは倫理に反することを忘れないでください。

一度誰かがクライアントになると、あなたはその人と二度と普通の社交的な関係をもつことができなくなります。転移の効力は単純に強烈なのです。一度その人の施術者になってしまうと、あなたはその関係を限られたものにしてしまうのです。業界(協会や組合)の基準では、施術者は元クライアントとデートすることは、セッションが終了してから6か月は待たなければならないと規定しているところが多いのです。しかしセッションが終わって何か月たっているかにかかわらず元クライアントとデートしている施術者は、業界の中では懸案人物になったり詮索される対象になると思います。ですから最初からその関係がプロとしてのものか、社交性のものなのか決めておくべきでしょう。

もしあなたが性的な誘惑に対して衝動的な行動を起こす危険がないことが自分でわかっていれば、彼(彼女)があなたのクライアントである間もしくは一生そのクライアントと性的な関係をもつことはないと認識しつつ、その人をクライアントとして受け入れられることでしょう。もしあなたが、その可能性を否定できるかどうか不確かな場合は、もっと時間をかけたほうがいいのではないでしょうか。たとえばもし、その人が電話をかけてきたら、いまはセッション時間に空きがないので、しばらくしてからこちらより連絡しますと伝えればよいでしょう。時間をかければあなたの倫理的な振る舞いを確認でき、その人をクライアントとして受け入れられるかどうかじっくりと決断できるようになるのです。
(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )

 N  E  W  S

NEWS ■ 強力ステロイドの外用の継続使用…骨粗鬆症と関連

作用が強力なステロイド外用薬の継続的使用は、用量依存的に骨粗鬆症や骨粗鬆症性骨折のリスクを増大するとの研究結果が示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のAlexander Egeberg氏らが、2003〜17年に強力もしくは非常に強力なステロイド外用薬治療を受けた成人患者72万3251例について後ろ向きに解析し、明らかにした。これまで内服もしくは吸入コルチコステロイドについては、継続的使用や大量使用において骨粗鬆症や骨粗鬆症性骨折リスクとの関連性があることが示唆されていたが、外用薬については大規模な検討は行われていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版1月号掲載の報告。
データはデンマーク全国レジストリから入手し、記入済みの処方データをモメタゾンフランカルボン酸エステル(1mg/g)に等価用量変換して評価した。患者は、モメタゾンを等価用量で累積500g以上処方されていた場合に曝露群とし、200〜499gの患者を参照群とした。主要アウトカムは、骨粗鬆症またはMOFの診断とした。Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。主な結果は以下のとおり。
・解析には、等価用量200g以上のモメタゾン治療を受けていた、計72万3251例の成人患者が含まれた(女性52.8%、平均年齢52.8[SD 19.2]歳)。
・強力もしくは非常に強力なTCSの使用増大と、骨粗鬆症およびMOFリスクとの間に用量依存の関連が認められた。
・たとえば、MOFのHRは、500〜999g曝露群では1.01(95%CI:0.99〜1.03)、1000〜1999g曝露群は1.05(1.02〜1.08)、2000〜9999g曝露群は1.10(1.07〜1.13)、1万g以上曝露群は1.27(1.19〜1.35)であった。
・骨粗鬆症およびMOFの相対リスクは、いずれもTCSの累積用量が倍増するごとに3%増大した(いずれもHR:1.03[95%CI:1.02〜1.04])。
・全体的な集団寄与リスクは、骨粗鬆症が4.3%(95%CI:2.7〜5.8)、MOFが2.7%(1.7〜3.8)であった。
・危害を受ける患者が1人増えるのに要した最低曝露(454人年)は、MOFを呈した1万g以上曝露群で観察された。
(2/17 ケアネット)

NEWS ■ 寒い所で運動すると脂肪燃焼が増える

同じ運動でも、寒い場所で行った方が暖かい場所で行うよりも脂肪燃焼量が多いことを示したデータが報告された。この研究では、その差は約4倍に上ったという。ローレンシャン大学(カナダ)のStephanie Munten氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Applied Physiology」に12月号に掲載された。
定期的な身体活動では、脂質代謝に影響を及ぼす因子は運動のやり方だけでなく、環境、とりわけ周辺温度も影響を及ぼすことが知られている。Munten氏らは健康な成人を対象としてどのような影響を及ぼすかを検討した。対象者は11人(男性7人)で平均年齢23±3歳、BMI26.4±1.89であり、運動耐容能の指標である最高酸素摂取量(VO2peak)は39.2±5.73mL/kg/分。研究デザインは、参加者全員に対して21℃の通常室温の条件と、0℃に設定した寒冷条件で、同一の高強度インターバル運動を、それぞれ別の日に行ってもらうという、クロスオーバー法を用いた。
高強度インターバル運動は、各参加者の90%VO2peak(運動耐容能の90%)に負荷設定された自転車エルゴメーターを60秒間できるだけ速くこぎ、続く90秒間は30%VO2peakのインターバルとして、これを10回行うというもの。この運動に伴う、体温、心拍数、大腿四頭筋への酸素供給量、血糖値などの変化を調べるとともに、翌朝の血清脂質値や血糖値の変動も検討した。
その結果、寒冷条件では通常条件に比べて高強度インターバル運動中の脂質酸化速度(脂肪が燃焼されるスピード)が有意に速く、脂質酸化量は358%多かった。一方、炭水化物の酸化には条件間の有意差は認められなかった。
このデータから著者らは、「寒冷環境での高強度インターバル運動は、それを行っている最中の脂質酸化を増やすと考えられる。しかし、今回の研究条件では、翌朝の高脂肪食摂取後の脂質代謝への影響があまり好ましいものでなかった」と述べている。
(2/11 HealthDayNews=部分)

NEWS ■ COVID-19は将来ただの風邪になる?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は米エモリー大学などの研究グループの分析では、今後ウイルスがいなくなることはないが、感染しても入院や死に至ることはまれで、煩わしさや不快感をもたらすだけの軽い病気になる可能性が高いという。詳細はScience誌1月号に掲載された。
この分析結果は、一般的な風邪の原因ウイルスである4種類のヒトコロナウイルスが辿った疫学的パターンに基づき得られたものだ。これらのウイルスはいずれも、すでに長期間、世の中に残り続けており、普段から継続的に罹患する人がいる「エンデミック」の状態にある。エンデミックの段階では、ほとんどの人が小児期にウイルスに感染して免疫を獲得し、成人期には重症化リスクから守られるという。
研究グループは今回、これら4種類のヒトコロナウイルスと同様、ほとんどの人が小児期に新型コロナウイルスに曝露した場合に、将来的に予測される状況をモデル化した。その結果、COVID-19がエンデミックの状態に達すれば、感染者致死率は季節性インフルエンザと同程度(0.1%)にまで下がり、最終的にはヒトコロナウイルスを原因とする風邪と同じようなものになる可能性が高いと予測された。ただし、それがいつになるのかに関しては、1年とする見方がある一方で、10年はかかるとする見方もあり、現時点では予測困難だとしている。
また、新型コロナウイルスが、いずれは軽症の風邪の症状をもたらすだけになるというこのシナリオは、小児や若者のほとんどは感染しても軽症、あるいは無症候であることを前提としたものだ。それゆえ、今後、このウイルスに感染した小児でも重い症状が現れるようになった場合には、「長期的なシナリオは暗いものになる」とLavine氏は言う。
(2/10 HealthDayNews=部分)

NEWS ■ 統合失調症患者に対する補助的ヨガトレーニング

統合失調症患者の認知機能障害改善に対するヨガトレーニングの許容性および有効性に関連する要因を特定するため、インドのDr. Ram Manohar Lohia HospitalのTriptish Bhatia氏らは、検討を行った。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版12月号の報告。
インド人統合失調症患者の認知機能に対するヨガトレーニングの影響を検討した2つの臨床試験でのデータを分析した。分析に使用した臨床試験は、21日間のランダム化比較試験(286例、3、6ヵ月のフォローアップ)および21日間の非盲検試験(62例)であった。ヨガトレーニング後の認知機能(注意力、顔の記憶)改善とベースライン特性(年齢、性別、社会経済状況、教育状況、教育期間、症状重症度)との関連を調査するため、多変量解析を用いた。許容性に関連する要因は、スクリーニングされた参加者と試験に登録された参加者、試験完了者と非完了者の人口統計学的変数を比較することで特定した。主な結果は以下のとおり。
・試験に登録された参加者は、スクリーニング時に試験を拒否した参加者よりも年齢が若かった(t=2.952、p=0.003)。
・試験への登録または完了に関連する他の特性は認められなかった。
・有効性に関しては、顔の記憶の尺度において、認知機能の改善効果および持続性と教育期間との関連が認められた。
・その他のベースライン特性とヨガトレーニングとの関連は認められなかった(148例)。

著者らは、「若年の統合失調症患者ではヨガトレーニングは許容される。また、心理社会的特性の個人差も認められず、特定の認知機能改善に役立つであろう。そのため、統合失調症患者の補助療法として、ヨガトレーニングは、すべての年齢の統合失調症患者の認知機能を改善する可能性があることが挙げられる」としている。
(2/8 ケアネット)

NEWS ■ セルフコントロール力は健康的な人生の鍵?

小児期に、目的意識が高く、思考や行動、感情をうまくコントロールできていた人では、老化の速度が遅く、中年期の脳や身体が生物学的に若いとする研究結果が報告された。米ミシガン大学アナーバー校のLeah Richmond-Rakerd氏らによるこの研究論文は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」1月号に掲載された。
この研究は、1972年4月から1973年3月の間に生まれた1037人を対象にしたもの。小児期のセルフコントロール力については、対象者の3、5、7、9、11歳時に、教師や親、子ども自身の報告や、子どもに実施したテスト結果に基づき評価した。老化速度については、対象者の26、32、38、45歳時に、BMIやHbA1c、血圧、VO2MAX(最大酸素摂取量)、各種コレステロール値など19種類のバイオマーカーを測定することで評価した。さらに、45歳時には3T-MRI装置を使って、脳の老化に関連する構造的特徴を調べた。
その結果、小児期にセルフコントロール力の高かった人では、身体能力や認知能力、脳の構造的な老化も含めた総合的な老化の速度が遅いことが明らかになった。これらの人では、歩く速度が速く、45歳時の顔は実年齢より若く見えたという。この結果は、生まれ育った家庭の社会的地位と小児のIQで調整しても変わらなかった。また、小児期にセルフコントロール力の強かった人では、健康や財政に関してより多くの実際的な知識を持ち、人生に対する満足度も高いなど、中年期以降の健康管理や経済・社会面での備えがしっかりできていることも明らかになった。
このほか、この研究では、小児期のセルフコントロール力が、変化しない老化速度の予測因子であるのかどうかも検討された。その結果、一部の小児では成人期にセルフコントロール力のレベルが変化したことが判明した。このことは、セルフコントロール力が介入により変えられる可能性のあることを示唆する。さらに、中年期にセルフコントロール力が高い人では、小児期のセルフコントロール力で調整しても、老化速度が遅く、中年期以降の経済・社会面や健康に対する備えができていた。
(2/4 HealthDayNews=部分)

NEWS ■ 「うま味」の味覚感度が低いと太りやすい

食べ物の「うま味」を感じとる味覚感度と、肥満や摂取エネルギー量との関係が報告された。うま味に対する感度が低い人には肥満者が多く、かつ将来的に摂取エネルギー量が増加する人の割合が高いという。山陰労災病院循環器科の水田栄之助氏らの研究によるもので、詳細は「Hypertension Research」12月号に掲載された。
この研究の対象は日本人成人47人(男性14人、女性33人。平均年齢は37.4歳)。下記の味覚検査や体重計測、血液検査などを実施し、その9〜12カ月後にも体重計測や血液検査を行い、初回の味覚検査の結果との関連を検討した。
味覚感度の検査方法は、甘味と塩味については専用の試薬を用いて判定した。うま味に関しては、グルタミン酸ナトリウム(味の素)を0.03%に希釈した液体1mLを口に含んでもらい、味を感じとれるか否かで判定した。その他、「甘いもの/塩辛いものは好きか?」との質問に、「嫌い」「好きでない」「どちらとも言えない」「好き」「大好き」の五択で回答してもらい、味の好みを評価した。
初回の検査結果を基に、うま味を感知できなかった「低感度群」(22人)と感知できた「対照群」(25人)の2群に分類。年齢と性別で調整した上で、両群を比較した。すると、肥満者の割合(36.4対8.0%、P=0.011)、高尿酸血症の割合(13.6対0.0%、P=0.028)、甘いものが好きな人の割合(71.4対33.3%、P=0.033)は、いずれも低感度群で高いという群間の有意差が認められた。なお、甘味や塩味への感度が低下している人の割合や、塩味が好きな人の割合は、群間に有意差がなかった。また喫煙・飲酒習慣に関しても群間差がなかった。
2回の食事調査を基に摂取エネルギー量の変化を比較検討すると、低感度群では初回に比べて2回目の摂取エネルギー量が増えていた人が、68.2%を占めていた。一方、対照群で摂取エネルギー量が増えていたのは36.0%であり、有意差が存在した(P=0.032)。BMIや腹囲長が増加した人の割合、尿酸値、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、中性脂肪値が上昇した人の割合などには有意差がなかった。
(2/2 HealthDayNews=部分)

NEWS ■頻繁に旅行をする人は幸せが7%増し

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延している現状下で、遠く離れた場所への旅行は想像しにくいかもしれない。そんな中、旅行好きな人は家に引きこもりがちな人よりも、より多くの幸せを感じているとする研究結果を、米ワシントン州立大学のChun-Chu Chen氏らが報告した。研究の詳細はTourism Analysis12月号に掲載された。
Chen氏らは今回、なぜ一部の人は頻繁に旅行をするのか、またそうした旅行経験は幸福感や健康に長期にわたる影響を及ぼすのかを明らかにするために、500人を対象に調査を行った。調査参加者には、自分の人生における旅行の重要性、今後の旅行計画を立てるのに費やす時間、年間の旅行回数のほか、人生に対する満足度についても尋ねた。
調査の結果、参加者の半数強が、「1年に4回以上旅行をする」と回答し、「旅行を全くしない」と回答したのはわずか7%に過ぎないことが明らかになった。旅行に関わる情報に注意を払い、旅行計画について友人とよく話をする人は、次の旅行のことが常に念頭にあるわけではない人と比べて、定期的に旅行をする傾向が強かった。さらに、自宅から75マイル(120km)以上離れた場所を定期的に旅行する人は、めったに旅行をしない人、または全く旅行をしない人と比べて、約7%多く幸せを感じていることも判明した。
こうした結果を受けてChen氏は、「ウェルビーイング(精神的・身体的・社会的に良好な状態)を問う調査で鍵を握るのは概して仕事、家庭生活、友人などだ。しかし、われわれの研究結果は、旅行経験の蓄積は、自己報告による人生の満足度に、小さいながらも際立った影響を及ぼす可能性を示すものだ」と述べている。そして、「つまり、日常生活から抜け出して、新しいことを体験することが重要だということだ」と付け加えている。
(2/2 HealthDayNews)


次号のメールマガジンは2021年3月15日ごろの発行です。

(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ