エンタプライズ発信〜メールマガジン【№124】 2021. 8
飲酒運転による人身事故が、例年より早い時刻18〜20時に多く発生していると警察庁が警告を発しています。どういうことでしょうか。例えば千葉県内では今年上半期の飲酒運転の検挙件数は前年同期比83件増の586件に上り、2016年以降で最多だったことが県警のまとめでわかりました。次に飲酒による人身事故発生の時間帯では18〜20時が最も多く、新型コロナウイルス対策での飲食店の時短営業や「宅飲み」の増加に伴い、例年より早い時間に人身事故が発生していると推測しています。この背景にはコロナ禍で飲酒のパターンが変わってきていることが窺えます。「宅飲み」が増えていると言われるのに、運転して検挙される人が多数出てくるのは、「足りなくなった酒を買い足すため」「つまみや弁当を買いに行った」「まだ明るいから大丈夫だろう」などといった事例があるといい、裏を返せばアルコール依存症の疑いがあることも重要になるところです(本コラム121号参照)。酒に強いタイプの男性は、飲み終わってからおよそ6時間、女性や酒に弱い人や高齢者はおよそ8時間たたないとアルコールは抜けきらないと言います(飲む量によります)。 また深夜まで飲むと、朝起きたときに前夜のアルコールが残っているおそれが強く、この状態で運転すれば「飲酒運転」になってしまいます。事故を起こさなければ大丈夫、運転する距離が短いから大丈夫、といった言い訳をするドライバーが多いと言われますが、飲酒を伴った交通事故は悲惨な結果を生み、ふりかかる刑罰も重くなります。昔はよく飲む人のことを上戸とか左党と軽佻浮薄な物言いで失笑を買いましたが、現代では酒による失敗は断罪にも似た非情の怒気が向けられることを認識すべきだと思います。
★☆★━━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】 エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【2】 “こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【3】 からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【4】 円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】 N・E・W・S
【 BOOK review 】
〜ディオスコリデスからルネサンスへ〜
大槻真一郎・著 / 澤元 亙・編
名著と呼ばれる『ディオスコリデスの薬物誌』(小社刊 1983)のエッセンスに、翻訳書(プリニウス等)の解説、晩年の雑誌連載を加えた新編集。図版多数。生涯を通じて植物研究と薬理研究に心血を注いだディオスコリデスの『薬物誌』(紀元1世紀成)を中心に、古代ギリシアから近代まで連綿と受け継がれた「ギリシア本草学」の豊かな知的遺産の具体的なすがたを、硬軟自在の語りで生きいきと解き明かす。故大槻真一郎氏の数ある遺稿の中から植物関連の論考を中心に編集構成されている。
(A5判、上製、296頁。3,850円(税込)八坂書房刊2021)
【 Topic 】
米国アクティベータ・メソッド・インターナショナル(AI)から技術供与およびセミナー開催の認可を受けているアクティベータ・ネットワーク・ジャパン(ANJ=代表:保井志之DC)が創設から20周年を迎えた。アクティベータ・メソッドはカイロプラクティックテクニックの一つで、神経系の働きの悪い箇所を分析し、脊椎を中心として筋骨格系の関節部位や筋に対しアクティベータ器で適切な振動刺激を与え、人体の神経エネルギーを調整することで症状の軽減や消失などを図ることができる。アメリカでは70%以上のカイロプラクターが常時/適宜に用いている。祝賀会は新型コロナ禍により控えている。
詳細はhttp://www.activator.gr.jp/
連載vol.82
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
コミュニケーションの個体発生論(つづき)
この章の冒頭で「鍼療法における経絡が本当に存在するのなら、なぜ西洋医学の研究で発見されなかったのか」という問題を掲げたが、ここまでの話の展開から答えが見えてきたと思う。経絡は何の変哲もない結合組織と細胞骨格の成分で形成されているので、解剖学的に独立した器官として識別できないのである。経絡のネットワークを形成している組織は、ジャフェ(Jaffe)が卵や胚で示したような発生パターンの決定に関わる電流に沿って並んでいるのだろう。経絡や経穴の性質は、目に見える組織によって決まるのではなく、半導体システムに特徴的な種々の粒子の協力現象やエネルギー現象といった、目に見えない要素によって決まるようだ。
ここまでの話をまとめると、経絡やその無数の分枝はすべて、結合組織と細胞骨格の連続体の中に存在する実体をもった経絡だということになる。この経絡を顕微鏡で観察すると、枝の先端は細胞表面を貫いて細胞質へ、そして核やミトコンドリアやそれらの小器官の内部へと伸びているのである。長いあいだ探し求めてきた経絡の正体は、蛋白質を主とする分子の巧妙な組み合わせと、それを覆う水の膜だったというわけだ。
抵抗の小さい経絡
以上に述べてきたことから、経絡がエネルギーと情報の通り道であると仮定すれば、鍼療法も西洋医学の理論で説明できるということがお分かりいただけたであろう。経絡が半導体的性質をもつという仮説は、経絡の通り道にある組織の光沢と電気的抵抗の低さから導かれたものだが、このような仮説があることを考えると、電気鍼という治療法は合理的である。電気鍼というのは、鍼にわずかな電流を流して気のバランスを整える手法だ。1999年のスコット・マンビ(Scott-Mumby)のレビューには、経絡の電気的および電子工学的性質に関する研究が多数紹介されており、それらの研究をもとにして画期的な診断設備や治療器具が開発されている。
しかし経絡が電気的抵抗の低い経絡であるという事実は、生体を網目のように走る経絡のほんの一部の性質を示しているに過ぎない。経絡には電気よりもはるかにダイナミックで多様な機能を可能にする半導体的性質があるのだ。経絡を構成するコンポーネントは、電子機器の抵抗器に相当すると見なされがちだが、それよりもトランジスタや集積回路と見なしたほうが、経絡のより高度な機能を説明しやすいだろう。また経絡の本質に迫るためには、単なる電気のコンジットとして扱うのではなく、電子、光そして音を媒体とする通信システムのマイクロプロセッサーとして扱うべきである。
(次号へつづく)
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊2005 )
連載エッセイ 91☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
オンラインセミナー後の質問での気づき
受講生からの質問:「機能的な神経異常を改善する治療はアクティベータ・メソッド(AM)だけでしょうか? ほかのカイロプラクティックも同じ目的で治療を行っているのでしょうか?」
最初にこの質問を受けたとき、一瞬、「えっ…」と首をかしげたのですが、よくよく考えると真っ当な質問で、その先生の立場になればごもっともな質問だと思い直しました。私も修行時代、整骨院の臨床現場で働いていたときは、機能的な神経異常とか、何の目的で治療しているのかなどは深く考えていなかったように思います。
患者さんの症状を良くするため、自然治癒力を高めるためなど漠然とした目的で、ハウツウ的な施術は行ってはいたものの、電気治療、鍼治療、手技療法などの背後にある治療メカニズムを熟知して施術を行っていませんでした。本質が分からないまま、マニュアルどおりの施術を行なっていた当時を振り返りました。
しかしながら、結果的にはその矛盾点や手技療法のメカニズム、奥義を知りたくてカイロプラクティック大学への米国留学。卒業して臨床現場で思考錯誤の結果、その本質を語れるまでに至ったわけです。そして、この治療法の本質は、カイロプラクティックの哲学書などで“知っている”というレベルではなく、臨床現場で繰り返し検証した経験、体験によって得た“確信している”というレベルです。
正規のカイロプラクティック大学教育を受けたDCでさえも、そのレベルまで確信して臨床を行なっている人がどれだけいるのかは分かりません。カイロプラクティックの目的は、様々な表現の仕方はありますが、端的に言えば、神経生理学的な機能異常の改善を目的にしています。今となっては私にとって当たり前過ぎるくらいの考え方なので、上記の質問に首を傾げてしまったのだと思います。
純粋に質問していただいた先生には申し訳なくも感じ、質問していただいている先生の立場で受け止めていない自分を反省しました。私が進みすぎていると言えば聞こえがいいのですが、治療法を教える指導者としての立場としては、今日にいたる過程を顧みずに麻痺していたようにも思います。
米国で53年継続しているAMセミナーは、米国カイロプラクティック大学が認めている卒後教育セミナーであり、DCやカイロプラクティック大学卒業間近な学生やその他のドクターレベルの治療者でしか受講することができません。当然のことながら基礎医学や基礎の臨床学を学んでいることが前提で行われるセミナーです。
日本国内ではAM開発者のDr.ファーと私との信頼関係でセミナープログラムが委託され、日本語に翻訳して米国と同様のカリキュラムでセミナーを開催しています。日本国内では20年継続しており、国際基準のカイロプラクター以外の医療従事者も広く受け付けて、その概念および技術などを啓蒙しています。
当然のことながら、国内の医療従事者はカイロプラクティックの哲学や思想など知らない人がほとんどです。そのような日本国内の事情を考慮して、カイロプラクティックに関する哲学や思想を間接的にではありますが、少しずつ学んでいただいています。また、認定試験までの必修単位(受講時間)も国際基準のカイロプラクティック学位者よりも多く設定しています。
また、実技試験のハードルは、おそらく国際的に十分なレベル、いやそれ以上に設定されていると思います。できるだけAMセミナーを繰り返し受講していただくことで、実際に臨床で効果を引き出すことができる施術者が毎年育成されています。今後もさらにセミナーの質を高めて結果の出せる施術者の育成に努めていきたいと思います。
からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜
安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)
2)汎あるいは一般適応症候群
生体のもつ適応のメカニズムによって外界から五感をとおして受ける様々なストレスに対して自己防衛反応が起こるとき、副腎皮質ホルモンが大切な役割を果たしていることを世界で初めて突き止めたのがハンス・セリエ博士です。
彼の偉大さは動物実験をとおして実証し体系化したことです。彼は生理学者・内分泌学者であり、1936年に『ネイチャー』に発表したストレス概念に関する論文で、生体が非特異刺激すなわちストレスにさらされると、下垂体前葉・副腎皮質系を中心として一連の反応が起こるとしました。
またこのときに生体のもつ防衛反応を3つの段階に分けました。それらの経時的反応相は、ストレスに対し生体が起こす初期反応の時期である警告反応期、初期反応に対し生体が抵抗を試み恒常性を維持しようとする抵抗期、生体が疲れ果ててそうした抵抗をやめてしまう疲憊(ひはい)期の3期です。
彼はこの3つの時期を総称して、特異的ではなく非特異的刺激による汎あるいは一般的な人の反応であるという意味を込めて、汎あるいは一般適応症候群と名づけました。
つまりこころとからだが一つになって動く人にとって汎あるいは一般的なものなのです。だから筆者は、ストレスが悪いものであるという考えは決してとりません。人間関係が複雑になった現代社会の中で生きていく上において、我々が精いっぱい生きていこうとするときの障壁であり試練なのです。
要はストレスに対する自己のコントロールであり、マネジメントです。ストレスによって変化した自己の生理的状態をもとに戻そうとするネガティブフィードバックの働きです。ハンス・セリエ博士は「ストレスは人生のスパイスである」との名言を残しています。塩があればこそ人生の甘味はより引き立つものなのです。
円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
倫理的バウンダリー:守秘義務
審判のとき!(つづき)
守秘義務はいろいろなケースで起こります。例えばメリーとスージーは友達であり、2人ともマッサージセラピストのジョーからセッションを受けています。ある日マリーはジョーに「ここしばらくスージーに会っていないんだけど彼女は元気にしている?」と聞きました。ジョーにすれば「いや彼女はまだ夫婦仲がうまくいっていなくて…」と簡単に言ってしまえます。でももしそう言ってしまうと、彼はスージーに対する守秘義務に違反したことになります。さらに悪いことに、いまマリーはジョーがクライアントの情報をほかの人に漏らす人だということを知ってしまいました。単に「スージーは元気ですよ」と言うのも守秘義務違反にあたります。
フレームワークをはっきりさせるためには、ジョーはきちんと「私がほかの人のことを話せないのはご存じですよね」と言えばいいのです。クライアント同士が友達だった場合、時に(意識的ではないにしろ)彼らはあなたが彼らの友達について話をするかどうか、私たちを試すこともあるのです。
次に、施術者にありがちなそのほかのエピソードを紹介します。ごく頻繁に起こることですが、もしあるクライアントが友達にあなたを紹介して、彼/彼女がクライアントになった場合、あなたは紹介してくれた人に次の機会に感謝の気持ちを伝えますね。しかしそのことで、彼の友達があなたのクライアントになったことを知ってしまいます。これは営業ではよくあることで、感謝の気持ちを表すというのは誰にも害を及ぼさない、良いビジネスマナーだと思えますが、もう一度再考してみてはいかがでしょう。それは新しいクライアントに対する守秘義務違反だと思いませんか?
もしくはクライアントが「あなたをデイブに紹介したんだけど彼はまだ電話をしてこない?」と言っていませんか? あなたは紹介してくれたことにクライアントに感謝したいと思いま
すが、デイブとあなたがどのようなやり取りをしているのか、クライアントには関係ありません。「紹介していただいてありがとうございます。そしてあなたが彼がちゃんと連絡しているかどうか知りたい理由もわかります。しかしながら私とクライアントのやり取りは守秘義務にあたりますので、それについてはお答えできないのです」と言っても良いのです。あなたが友達や他のクライアントから紹介されてきた見込み客と最初に話をするときに、友達や他のクライアントに対して紹介してくれたことについて感謝の気持ちを伝えてもいいかどうか、その見込み客に尋ねてみてもいいでしょう。
(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )
N E W S
食物繊維は便秘改善や腸内環境を良くするほか、血糖値上昇抑制、体内の塩分排出促進、血液中のコレステロール濃度の低下など、さまざまな効果が知られています。日本人を対象にした「JPHC研究」では、食物繊維の摂取量と死亡リスクとの関係について調査が行われています。欧米の研究では食物繊維の摂取量が多いほど死亡リスクが低いとの報告がありましたが、アジア人を対象にしたものはこれまでありませんでした。
対象となったのは、調査開始時にがん、循環器疾患になっていなかった45〜74歳の男女9万2924人。食事アンケートから食物繊維の摂取量を計算し、5つのグループに分け、17年間の死亡との関連を調べました。すると、食物繊維の摂取量が多いほど、男女共に総死亡リスクが低下。死因別では、心筋梗塞や心不全、脳卒中などの循環器疾患による死亡リスクが低下していました。食物繊維の摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループに対し、総死亡リスクが男性で23%、女性で18%低下。循環器疾患による死亡リスクは、男性で20%、女性で27%低下していました。
欧米の研究では、穀物由来の食物繊維の摂取量が多いと死亡リスクが低いとの結果でしたが、今回の日本人を対象とした研究では、豆類、野菜類、果物類からの食物繊維摂取量が多いほど総死亡リスクが低下。穀類からの食物繊維に関しては、摂取量と死亡リスクの相関関係は見られませんでした。日本では穀類として食物繊維量が少ない精白米が主に摂取されていることが関係しているのではないかと指摘されています。
(8/17 日刊ゲンダイヘルスケア=部分)
厚生労働省の2016年国民生活基礎調査によると、介護が必要になった主な原因として「骨折・転倒」が指摘されている。うち転倒は老人の夜間頻尿が原因としてあげられる。夜間頻尿とは1日の尿量の3分の1以上が夜間に排せつされる場合を指す。通常なら睡眠中は脱水にならないよう尿の生成が抑えられるが、高齢になると尿量の調節に関わるホルモン分泌の乱れや腎臓機能の低下などの要因で、夜間に尿が作られやすくなる。高血圧、心機能低下、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群なども夜間多尿に関係する。また、塩分の取り過ぎも夜間多尿を招きやすいという。
ほかに原因として考えられるのは、過活動膀胱や前立腺肥大症など泌尿器系の疾患による膀胱の容積の減少であり、睡眠障害(寝付きが悪い、途中で起きる)も関与する場合がある。
夜中に起きてトイレに行くまでにはいろいろな動作が必要で、十分に目が覚めていないと転倒しやすい。転倒予防の工夫について、東邦大学医療センター大橋病院泌尿器科の関戸哲利診療部長は「場合によっては尿瓶やポータブルトイレを利用するなど、排尿するまでの動作がより少ない環境にすることで安全性を確保することも一手です」と助言している。
(8/12 メディカルトリビューン=時事)
糖尿病の患者は動脈硬化が進行しやすく、脳卒中や心筋梗塞といった病気を起こしやすいことが知られています。薬で血糖値を下げることはできても、そうした動脈硬化の病気自体はなかなか減らないのが一番の問題です。
そんな中で注目されるのが運動の効果です。運動の習慣は脳卒中や心筋梗塞などの病気を予防し、健康寿命を延ばす効果があることが知られています。ただし、どのような運動が糖尿病の患者に有効なのか、という点については、これまで明確なことが分かっていませんでした。ジョギングに時々全力疾走を挟むような運動が有効であることは分かっていますが、それを習慣にするのはかなりハードルが高いと思います。
そこで今、サイクリングが注目されています。今年の米国医師会の内科専門誌に、ヨーロッパの研究結果が報告されています。約7500人の糖尿病患者を5年間観察したところ、サイクリングの習慣が1週間に2時間半以上あると、ない場合と比較して、総死亡のリスクが30%以上低下していたのです。
糖尿病に限らず、サイクリングの習慣は健康寿命を延ばす決め手でもあるのかもしれません。ジョギングと併用すれば飽きずに励行できると期待されます。
(8/8 日刊ゲンダイヘルスケア)
国立循環器病研究センター、新潟大学、大阪大学の共同研究チームが、大阪府の吹田市民を対象としたコホート研究を解析しました。50〜79歳の一般住民のうち歯科検診を受診した1547人を追跡したところ、噛む力=最大咬合力が低い人は、高い対象者に比べて循環器疾患の新規発症リスクが最大5倍も高いことがわかったのです。しっかり噛む、という動作そのものが心臓に影響を与えていることが考えられます。
食事をするなどして上下の歯を合わせて噛む動作をすると「噛んだ」という情報が脳に伝わり、次に消化吸収を促進させようとします。このとき、活発に働くのが副交感神経です。副交感神経が優位になると、心拍数が抑えられ、血管が拡張して血圧も低下し、心臓の負担は少なくなります。日頃からしっかり噛むことができる人は、副交感神経が優位になる状態が多くなり、心臓や血管へのダメージを減らせると考えられるのです。
また、われわれが噛む動作をするときは、咀嚼筋だけでなく、舌、口蓋、喉、咽頭などさまざまな筋肉が動きます。噛むことでそうした筋肉が緩むと副交感神経の働きが高まり、心拍数を上げたり血圧を上昇させるストレスホルモンの過剰な分泌が抑制されることもわかっています。
さらに、噛む力が弱くなると食べ物をうまく噛み砕けなくなるため、野菜や肉、魚介類といった硬いものを避け、糖質が多く含まれた軟らかいものを選んで食べるようになる。そうした食生活の変化が動脈硬化を促進して、心臓疾患の発症リスクが高まるという見方もあります。
噛む力は歯の本数と関係していることも考えられます。歯が多く残っている人ほど認知症や転倒のリスクが低いこともわかっていて、心臓疾患との関連も指摘されています。こういったいくつもの理論に対してきちんとした科学的な裏付けが揃ってくれば、心臓疾患の予防や治療に大いに役立つでしょう。
(8/2 日刊ゲンダイヘルスケア=部分)
子どもに野菜や果物をしっかり食べさせたかったら、食事にかける時間を増やすと良いかもしれない。昼食時の着席時間を10分増やしたところ、野菜と果物の摂取量が有意に増えたとの研究結果が報告された。詳細は「JAMA Network Open」 に掲載された。
この研究は、米イリノイ大学で行われたサマーキャンプに参加した小中学生を対象に実施された。同大学のMelissa Pflugh Prescott氏は、「子どもたちは食事の最初に、まず楽しみにしている料理を食べ、時間が余ったらほかの料理を食べる。しかし、時間がなければ好きな物以外はあまり手をつけない。残されるのは野菜や果物だ」と話す。
Prescott氏らは、参加した38人の子どもに対して20日間にわたり計241回、学校給食プログラムの栄養基準に準拠して調理された昼食を提供。着席時間を無作為に10分または20分に設定し、摂取量の違いの有無を検討した。
その結果、着席時間が10分の時は20分の時に比べて、野菜と果物の摂取量が有意に少なかった。前菜とメインディッシュ(タンパク質と穀物)および飲み物(牛乳と水)については、条件間の有意差がなかった。
Prescott氏によると、子どもたちの昼食時の着席時間が10分しかないという実態は、かなり一般的なことだという。「給食では列に並んで自分の食事を受け取る順番を待たなければならない。また、給食の時間は食後の休憩時間と連続している。子どもたちが実際に食事にあてる時間は、大人が考えているよりもはるかに短い」と同氏は語っている。
(8/2 HealthDay News)
秋田大学大学院医学系研究科精神科の竹島正浩氏らの研究結果が「Scientific reports」に掲載された。2万人以上の小中学生の保護者を対象とする全国規模の調査から、日本の子どもたちの睡眠実態が明らかになった。日本の子どもは睡眠時間が不足している可能性があり、18.3%の子どもが何らかの睡眠障害に該当した。また、情緒・行動面の問題に睡眠に関する症状や睡眠潜時、中途覚醒時間の延長が関連していたという。著者らは「子どもたちに情緒・行動面の問題がある場合、睡眠に関する問題を考慮する必要がある」と述べている。
竹島氏らは文部科学省と各地域の教育委員会の協力を得て、小学校148校と中学校71校の子どもたちを対象に睡眠の実態調査を行った。子ども8万7548人の保護者に対してアンケート調査を行い、2万2604人(平均年齢10.3±2.5歳、男児51.0%)を解析対象とした。
結果だが、睡眠習慣については就床時刻の変化が最も顕著であった一方で、起床時刻は概ね一定だった。小学校1年生から中学校3年生の9年間で就床時刻は約2.2時間後退し、その結果9年間で睡眠時間は2時間減少していた。18.3%の子どもが何らかの睡眠障害に該当し、心象面では情緒や行動面の問題は学年が上がるに従い減少し、特に多動性と不注意を示すスコアが成長とともに大きく低下していた。本研究では本人ではなく保護者が子どもの睡眠時間を判断したため、入眠潜時や中途覚醒時間の補正が正しくなされていなかった可能性がある。
著者らは、本研究が横断研究であり因果関係には言及できないと述べた上で、「日本の多くの子どもたちが睡眠負債や睡眠障害を抱えている可能性があり、睡眠習慣や睡眠障害が情緒・行動面の問題に関連している」と結論づけている。
(7/28 TMS-Net=部分)
子どもの睡眠時間は概して、思春期が近づくにつれて少なくなりがちだ。しかし、学校がマインドフルネスを学ぶカリキュラムを組んで、深呼吸やヨガなどを教えると、睡眠時間が増え、睡眠の質も高まる可能性があるとする研究報告。米スタンフォード大学医学部のChristina Chick氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Clinical Sleep Medicine」に掲載された。
この研究は、米サンフランシスコの主にヒスパニック系から成る2つの低所得コミュニティに住む子ども115人を対象にしたもの。どちらも治安が悪く、食料不安や過密で不安定な住環境によるストレスを抱えている。「こうした住環境の条件は、睡眠に悪影響を及ぼす」と研究グループは説明する。
対照群1はマインドフルネスのカリキュラムで週に2回、2年にわたって授業を受け、ゆっくりとした深呼吸やヨガの動きの練習、ストレスに関する教育などが行われた。対照群2は通常の体育の授業を受けることとした。
研究開始時点では対照群2の方が一晩当たりの睡眠時間が平均54分、REM睡眠の時間が平均15分長かった。ところが2年間の研究期間の間に、両群の睡眠パターンは変化していき、睡眠時間が対照群2では平均64分短くなったのに対して、対照群1では平均74分も長くなっていた。またREM睡眠についても、対照群2では変化が見られなかったのに対して、対照群1では24分増えていた。
Chick氏は、「われわれは、マインドフルネスによる介入が役立つだろうと考えてはいたが、これほど大きな効果が得られたことに感銘を受けた」と話す。また「何らかのスキルにより自分の内面に集中できるようになると、自分が元来持っている力で眠りにつくことができるようになる」と話している。
(7/27 TMS-Net=部分)
次号のメールマガジンは2021年9月15日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ