エンタプライズ発信〜メールマガジン【№98】 2019. 6

世界保健機関(WHO)は近ごろ、日常生活に支障をきたすほどゲームに没頭する「ゲーム障害」を、新たな依存症として正式に認定しました。アルコールや薬物と並び、治療が必要な疾病となったわけです。ゲーム障害は、具体的にはどんな症状を指すのか。WHOは「ビデオゲームやオンラインゲームなどを継続的または繰り返しプレイするゲーム行動のパターン」と定義しています。それは例えば、1日の回数や時間などゲームをプレイする上で行動制御がきかない、ゲームプレイすることが他の興味や日常生活よりも優先される、また心身にネガティブな影響が出てもゲームを継続・やりこむようになる。その結果、自分自身や家族、社会、教育、職業といった他の重要な生活機能に支障をきたす、というものです。こうした症状が少なくとも12か月続いた場合に依存症と診断されると明文化しています。欧州の調査会社によると、世界のゲーム人口は推計で約23億人(世界の人口は約75億人)。WHOは2〜3%が依存症の恐れがあると試算しています。また依存症につながる別次の要素として、ゲームにギャンブルのようなメカニズムが導入されているものがあることです。ゲーム内で利用できるアイテム(道具や武器など)が入ったバーチャルパッケージを精算システムで買わせるものです。何回も購入するにつれ複数所有することになり、もっと稀少なレアアイテムもあり、それらは高い価値をもつので強くなるためにさらにお金を費消することになります。たしかに底なしの構造です。日本国内でもここ数年、eスポーツが盛り上がりを見せ、ビデオ・オンラインゲームが注目されています。ゲーム障害が依存症として国際認定されたことにより、日本も対策が必要となりそうです。ゲーム依存症を診断・治療できる医療機関はまだ少ないと聞きます。国は、予防も含め積極的な治療対策を検討することが迫られています。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
  バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S

Information

「みんなの統合医療カフェ」 2019 summer 6/29開催

女性はホルモンバランスの影響で、定期的にさまざまな「ゆらぎ」を感じます。そんな「ゆらぎ」と上手につき合い続けるために、日本統合医療学会の部会〈統合医療女性の会〉の世話人・板村論子さん(内科、皮膚科、心療内科医師)がやさしく解説します。

  • 開催日: 6月29日(土)14時から15時30分
  • 場 所:赤十字看護大学広尾キャンパス(東京都渋谷区広尾4丁目1番3号)
  • 入場費:3,000円(お支払いの詳細は、e-mail まで)
  • ※入場者には同会監修の『カラダみつめる手帳』と『カラダみつめるNOTE』をプレゼント。
★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

水素は放射線の害を軽減する(つづき)

[太田] 実は、僕は福島県出身で、2011年の原発事故にはひどく心を痛めています。それもあって原発作業員に水素水を配ったらどうかと提案したこともあるんです。ところが東京電力や現場に入っているゼネコンからはこの申し入れを断られました。水素水を受け入れると、こんないいものを配るということは放射能の危険性を認めることになるからだそうです。
[安保] いろいろと厳しい問題があるのでしょうがね。せめて子供たちだけでも水素で放射線の害から守れるといいのですが…。
[太田] 放射線で一つ思い出しました。宇宙空間には宇宙線と呼ばれる放射線が飛びまわっていますが、米国のNASAは水素を使って宇宙線の害を減らす研究を進めているそうです。

アンチエイジングと美容にも効果

[安保] 太田先生はいつも肌の色つやがいいけど、それも水素のおかげかもね。
[太田] たしかに久しぶり会う人からは「別人のように若返って…」みたいなことをよく言われます。自分でも10年前の写真と見比べると、水素研究を始めてから若くなった気がしています。まあ、それはさておき、水素はアンチエイジングや美容にも効果があります。
[安保] 皮膚も活性酸素が発生しやすいですからね。皮膚の場合は一重項酸素ですが、水素はどのように作用するのですか。
[太田] 皮膚が紫外線を浴びると、酸素が一重項酸素という活性酸素に変貌します。一重項酸素はヒドロキシルラジカルの次に酸化力が強い活性酸素で、メラニン細胞を刺激して増やします。
[安保] いわゆるシミ、ソバカスの原因ですね。シワやタルミは皮膚の真皮で、コラーゲンが酸化することで起こる。いずれにしろ活性酸素が原因です。
[太田] メラニンというのは、紫外線が皮膚の奥まで届かないようにするためのバリア機能です。そういう意味では、メラニンをせっせと増やす活性酸素は善玉です。しかし大量の紫外線でメラニンが増えすぎたり、いつまでもメラニン細胞が居座ったりすることでシミができます。
水素は皮膚も通過するので、すぐに吸収され、メラニンをつくる活性酸素の作用を減らしてくれていると考えられますが、この辺については今後の研究で明らかになると思います。


連載vol.56

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

生体マトリックスの特性

自然には種もなければ殻もない。だから瞬時にしてどんな姿にもなれる。(ゲーテ)
この世に存在するすべてのものは、この世のあらゆる存在とつながりあっている。(ジョン・ミュア)

話は先へ進む。自然界の出来事がアルバート・セント・ジョージという大科学者を新しい研究へと導いた。彼が注目したのは、生命の特徴である迅速で臨機応変の反応を可能にする高速の情報エネルギー伝達システムである。その研究は実に画期的であった。当時の生物学者は、神経とホルモンと化学反応が生体のすべてをコントロールするという解釈に満足していたので、その先を見ようとはしなかった。おかげでセント・ジョージの研究は学会から見向きもされなかったが、彼自身は煩わしい思いをせずに済んだのである。
セント・ジョージが予測した伝達システムには、非常に小さくて動きの速い担体が必要だった。分子やイオンは素早く動くには重すぎるし、嵩も高すぎる。また神経系は伝わる速度が遅すぎる。教授が予測したのは、極小最速の担体だ。最もふさわしいのは、電子や陽子など、原子より小さい粒子である。これらの粒子は質量も内径も小さくて、光に近い速度で波のように動くことができる。教授は原子以下の粒子のことを知るために、研究グループのメンバーともども量子物理の世界へと足を踏み込んだのである。

先見の明

ありきたりの現象を見て新しいことを思いつくのが先駆者である。1941年にセント・ジョージが予測した有機ポリマー中の電子の運動は、人工のポリマーであるプラスチックでも起きることが証明された。この導電性プラスチックに関する研究を1977年に報告した白川英樹は、アラン・ヘイガー、アラン・マクダーミドとともに2000年のノーベル化学賞に輝いた。電気を通すプラスチックは、次のようなさまざまな技術を可能にする。
・軽量で成形しやすい素材であるため、大きさや形を選ばずに、テレビやモニターなどの画面、電子回路、太陽電池などを作ることができる。
・スーパーマーケットの個々の商品にプラスチック製のメモリーチップを印刷しておけば、レジのカウンターで駕籠から1つずつ商品を取り出さなくても精算が可能になる。
・郵便物や小包にメモリーチップを印刷しておくことにより、いつでもどこに配送が動いているかがわかる。
・インクジェットプリンタやレーザプリンタを使って、どんなものにも回路を印刷することができる。

しかし人工のポリマーが開発されるずっと前から、自然界には天然の半導体ポリマーが存在していた。人間の科学技術がようやく自然の知恵に追いついたのである。そして自然が作り出したポリマーを生体中に見出したのがセント・ジョージだったというわけだ。
教授が新しい仮説を発表したころは、ほとんどの生物学者が量子力学的解釈に戸惑いを感じており、また専門外である物理学にはまったく興味を示さなかった。私は学術的で理論的な批判を聞かされることを予測して、教授の研究について多数の生物学者に意見を求めてみたのだが、そのような反論は1つとして出なかった。
彼らにとっては、反論を試みるより教授に引退を促す方がずっと簡単だったからだろう。しかし教授の新しい仮説が極めて重要な生物学研究のきっかけとなったことは、いずれ歴史が証明してくれるはずである。すでに他分野では教授の仮説を裏づける新事実がいくつか見つかっているのだ。
(出典『エネルギー療法と潜在能力』小社刊)


連載エッセイ 66☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


治せる治療者〜令和の新時代を迎えて(下編)

西洋医学の知識と技術がなければ治らない様々な病気や症状はたくさんあります。機械論的な思考でなければ治せない症状や病気がある一方で、機械論的思考の医療では限界がある慢性症状もたくさんあります。とくに慢性症状の多くは、機械論的に分離・分割的な思考ではなく、有機論的思考、すなわち生体エネルギーを基準に、関係性、統合性、システム思考で考える必要性があると私は考えています。

構造的異常がなく機械論的な医療が施せない慢性症状に対しては、特に治る力を阻害している生体エネルギーのアンバランスをいかにして整えることができるかが重要な鍵になるのです。代替医療の治療者に求められるのは、自然治癒力を妨げている生体エネルギーブロックを除去するために生体エネルギーを調整して“治す”ということです。生体エネルギーブロックは目で確認することはできませんが、外科医が肉体の構造を修復して治すという行為と同じように、生体エネルギーブロックを調整して治しているのだと私は考えています。

生体エネルギーブロックが判断できる熟練した治療者は、症状に関連する生体エネルギーブロックを検査し、それを調整することができるので、多くの症例において、なぜ、症状が改善したのかが理解できていると思います。そのように生体エネルギーブロックを調整することで、自分が“治している”という感覚を毎日の臨床で感じられるようになります。そして“治せる治療者”としてのアイデンティティや誇りを確立することができると思います。
代替医療の治療者を志す多くの方々とともに“治せる治療者”の価値を高めてまいりたいと思います。

連載…5

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

社交的ニーズと個人的ニーズ

たぶん私たちが一番頻繁に遭遇するバウンダリー(boundaries;プロとしての存在や立場、関係を取り囲む防護壁)に関する問題は、私たちのプロとしての生活と私生活のバウンダリーについてではないでしょうか。この問題に関する領域は、時々ちょっと気が緩んでセッション中におしゃべりしてしまったといった比較的小さなものから、クライアントと社交的につきあったりといった少し問題になるもの、そしてクライアントとデートするといった、まったく倫理に反するものまで含まれます。

私たちの中には、なぜプロとしての生活と私生活にしっかりとバウンダリーを引くことが大切かを理解していない人もいます。セッション中にカジュアルな話をしたり、クライアントと私個人のことについて話をすることの何がいけないの? お茶を出すことの何がダメなの? 何もいけないことはないかもしれません。しかしこれらの行動は、クライアントの弱みにつけ込んだり、クライアントがセッションを十分に堪能するための妨げになっていることがあります。
私たちは何の気なしにバウンダリーに関する勘違いを犯してしまいます。以下になぜ私たちが社交的なニーズを営業に持ちこんでしまうのか、いくつか理由を挙げてみました。

社交的な話がしたい!
施術者に対するクライアントの不満の中で、たぶん一番多く聞かれるのは、施術者がセッション中にしゃべり過ぎる、ということではないでしょうか。クライアントがリラックスして、夢見心地に落ちようとしているときに、私たちは話を聞いてもらおうという欲求から彼らのその夢見心地の世界から引きずり降ろしているのです。しかしクライアントはめったに私たちに静かにするように言ったりしません。「あなたの新しい車についてこれ以上聞きたくないわ」なんてね。クライアントは遠慮がちであり、またこの関係における力の不均衡の影響下にあるのです。
そしてクライアントは私たちにしゃべるのをやめるようには言わず、その場は穏やかに収め、あとでこの件に関する不満を友達とかにぶちまけて、そして最悪の場合、二度と来なくなってしまうのです。(つづく)
(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,Bodyworkers,and Movement Teachers. 2nd ed. 2006)

◆連載18◆

『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く

孫 維良(東京中医学研究所所長)

「痛みをやわらげる、ひとりあんま気功・実践編2」

・足や腰が冷えてやりきれない
足や腰が冷えて眠れない、真夏でも靴下をはかないとやりきれない、このような人は少なくありません。中国医学では、冷え性は体の中の気の流れが悪くなって起こるものだと考えています。そこで気の流れが良くなるひとりあんまを紹介しましょう。
①楽な姿勢で椅子に座り、全身の余分な力を抜いて心身ともにリラックスしてください。軽く目を閉じ、静かに腹式呼吸を繰り返しながら、両手の平をこすり合わせます(手が温かくなるまでこすり合わせてください)。
②臍から指の幅で4本ほど下に、冷え性に効果的な関元というツボがあります。この関元に右手中指の指面を当て、その上に左手の平を重ね、ツボの位置を軽く意識しながら、呼吸に合わせて関元を押します。
すなわち、息を吐くときに力を入れて押し、息を吸うときに手を引きます。いきなり強く押すのではなく、徐々に力を入れて押すようにします。手を引くときも徐々に引きます。呼吸はゆっくり行ってください。
この呼吸に応じたあんま気功法を、はじめは36回繰り返してください。慣れてきたら症状に応じて回数を増やします。ただし上限は72回です。関元は気が集まる要所ですから、ここを刺激すると気の流れがスムーズになり、冷え性に大変有効です。
③布団の上か、床に腰を下ろして両膝を立て、右手の平を右脚の膝に当てます。手の指を開いて、主に親指と中指に少し力を入れ、脛から足元に向かってゆっくり手でさすっていきます。足先まで脚の表側をさすったら、脚の裏もさすっていきます。右脚が終わったら今度は左手で左脚をさすります。

脚には胃につながる胃経、脾につながる脾経という2本の経絡が縦に走っているので、脛から足先までさするとこれら経絡が刺激され、気の流れが良くなり、胃の働きも活発になって足が温かくなるのです。このあんま気功法を毎日2回、朝晩に実行してください。日増しに症状が改善してくはずです。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(72)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■(1)あるキャンペーン群では腰痛患者の動作恐怖スコアが改善した。(2)あるキャンペーン群では腰痛による欠勤日数が減少した。(3)あるキャンペーン群の労災申請件数は15%減少した。http://1.usa.gov/mQ628O http://1.usa.gov/qTkwry
……腰痛に対する考え方を改めるだけで回復速度が上がり、腰痛の発症率が低下したということです。

■(4)あるキャンペーン群の医療費は20%減少した。すなわち、正しい情報提供だけで33億円を超える経費(労災補償費と医療費)を削減できたのである。日本でできないはずがない。http://1.usa.gov/mQ628O http://1.usa.gov/qTkwry
……指1本触れることなく腰痛患者を減らすと同時に医療費を削減させることは可能なのです。これも国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した論文です。専門家が知らないはずはありませんし、万が一知らないというのなら腰痛患者に手を出すべきではありません。

■患者に不安や恐怖を与えると間違いなく痛みが増幅する。このノーシーボ効果は想像以上に強力で、ヴードゥー死、タブー死、ノスタルジー死で証明されているように命に関わることさえある。http://1.usa.gov/nCm2wd http://amzn.to/pXA5WR
……ことに腰痛・肩こり・関節痛のような筋骨格系疾患は、どんな治療をするのかより、患者が症状をどう捉えているかの方がはるかに重要です。慢性化している場合はこのあたりをチェックすべきです。

■椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を厳密に検討した結果、椎間板ヘルニアの手術成績は短期的に見れば良好だが長期的に見れば保存療法とほとんど変わりがなく、心理社会的因子の影響を強く受けていることが確認された。http://1.usa.gov/q1HPOA
……椎間板ヘルニアの手術成績は長期的にみれば保存療法と変わらないことを第一級のエビデンスが証明しているのです。「椎間板ヘルニア=手術」という思い込みを頭の中から消去しましょう。

■腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者84名を対象に、画像所見、理学所見、心理テスト(MMPI)と手術成績との関係を調べた結果、手術成績と最も関係が深かったのは、画像所見でも理学所見でもなく心理テストだったことが判明。http://1.usa.gov/qMXXcm
……椎間板ヘルニアの手術成績を左右するのは心理社会的因子(イエローフラッグ)とのこと。腰下肢痛、この未知なるもの。

 N  E  W  S

NEWS■ 咀嚼が全身に影響を与えるメカニズム…医科歯科大学

東京医科歯科大学は6月13日、口で物を噛む動作が、異なる2つの運動制御機構に働くことを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科顎顔面矯正学分野の研究グループが、国立精神・神経医療研究センター神経研究所のグループと共同で行ったもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。
研究グループは、咀嚼時に脳内で働く運動制御機構に着目し、食物を力強くすりつぶす臼歯と、繊細な力で物を咥えたり噛み切ったりする前歯を介した2つの咀嚼様式について、過去に報告された「手」で物をつかむ運動時の脳活動パターンとの比較を行いながら解析を行った。
研究では、15名の成人被験者の協力を得て、奥歯のみで噛むことが可能な装置および前歯のみで噛むことが可能な装置を各被験者ごとに作製した。被験者には、装置を装着した状態で「奥歯で噛む」、または「前歯で噛む」運動を指示し、咀嚼筋の筋活動を計測しながら、fMRIによる脳活動の解析を行い、脳の各領域における脳活動の強さと噛む力の相関関係を比較した。その結果、「奥歯で噛む」時は、咀嚼筋の筋活動の上昇に応じて小脳をはじめとした運動の命令を送る領域の脳活動が活性化し、「前歯で噛む」時に比べ、有意に強い正の相関が示された。
一方、「前歯で噛む」時は、逆に咀嚼筋の筋活動の上昇に応じて帯状皮質運動野をはじめとした繊細な力のコントロールに関与する領域の脳活動が減少し、「奥歯で噛む」時に比べ有意に強い負の相関が示された。つまり「奥歯で噛む」時は、噛む力が大きい程、脳内の力強く噛む機能がより強く働くことが示され、逆に「前歯で噛む」時は、噛む力が小さい程、脳内の繊細に力をコントロールする機能がより強く働くことが明らかとなった。今回の結果により、咀嚼時に発揮される力と脳活動の関係が、歯の種類によってそれぞれ異なることが示され、奥歯で噛む時はpower grip時と、前歯で噛む時はprecision grip時と類似した様相を示すことが明らかとなった。(6/20 QLifePro=部分)

NEWS■病院で血圧上昇、原因はやはり白衣か…オムロンが説明

家庭用血圧計で高いシェアを持つオムロンは6月18日、京都市で定時株主総会を開いた。株主から「自宅より病院での血圧の測定値が高いのはなぜか」との声が上がったの対し、山田義仁社長は「白衣の人に測ってもらうと、緊張で数値が上がることがある」と答弁。機器の故障や設定ミスではなく、病院での検診時に血圧が高くなる現象「白衣高血圧」が原因との見方を示した。白衣高血圧はすぐに降圧治療をする必要はないとされるが、オムロンは将来高血圧となり、脳や心臓の疾患に発展する可能性があると説明している。(6/16 中日新聞)

NEWS ■「高齢者の腰痛」に社会的格差との深い関連指摘

日本人の「腰痛」の生涯有病率はなんと83%–。体幹筋機能の低下は、腰痛の発症やQOLの低下につながる。特に高齢になればなるほど腰痛は深刻化する。東北大学大学院国際歯科保健学の杉山賢明氏らの研究グループは、「日本人の高齢者の腰痛の有訴率は、社会経済的な格差がある可能性がある。教育レベルが低く、所得が低いほど腰痛の有訴率が高い」とする研究成果を「International Journal for Equity in Health」に発表した。腰痛は、筋力の低下などの身体的要因に加え、社会的な役割の衰退などの心理的要因が関連するが、教育歴や所得による有訴率の差は不明だった。
研究グループは、2013年に日本老年学的評価研究(JAGES)のアンケートに回答した65歳以上の自立した生活を送っている高齢者2万6037人を対象に社会経済的状況と腰痛の有訴率との関連を調べた。その結果、対象者の63.4%が過去1年間に腰痛を有していたことが判明。対象者を教育歴(9年以下、10〜12年、13年以上)によって3群に分けて比較したところ、最も短い群の腰痛の有訴率は、教育歴が最も長い群よりも1.07倍高かった。
最も長く従事した職業(専門職・事務職・肉体労働職・就労経験なし)によって4群に分けて比較すると、肉体労働に就いていた群の有訴率は専門職に就いていた群よりも1.06倍高かった。
また、対象者を所得によって4群に分けて比較したところ、最も低い群の腰痛の有訴率は所得が最も高い群よりも1.16倍高かった。さらに、現在の資産によって5群に分けて比較しても、最も低い群の有訴率は資産が最も高い群よりも1.18倍高かった。
研究グループは「高齢者の腰痛の有訴率に社会経済的な格差があるため、社会経済的な格差の関連因子を考慮した抜本対策が必要だ」と説明している。つまり高齢者の腰痛は、教育歴、職歴、所得、資産などの格差に深い関連があると指摘した。腰痛を単に生物学的損傷としてではなく、教育歴や所得などの格差による社会的疼痛症候群として捉えることの重要性が高まっている。(6/18 HEALTH PRESS=部分)

NEWS ■A型血液をO型に変える方法開発…万能輸血の夢に近づく

事故や手術の際に必要になる輸血。だが、血液型が合わないと拒絶反応が起き、命に関わる。カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究チームは、A型の血液を、拒絶反応の起きにくいO型に変える方法を開発した。世界的にはO型とA型が半分以上を占めており、将来、献血や輸血の幅が広がるかもしれない。
輸血の目安となるABO式血液型は、赤血球の表面についた抗原という物質の構造の違いで4種類に区別している。異なる血液型が混ざると、組み合わせによっては抗原が攻撃されて赤血球が壊れてしまうが、O型の赤血球はもともと抗原を持たないため、どの血液型にも輸血できる。このため、多くの科学者が、世界的に多いA型の赤血球から抗原を取り除き、「万能血液」を作ろうとしてきた。
研究チームは今回、A型の抗原と似た構造の成分を栄養源とする腸内細菌からDNAを切り出して、酵素をつくった。2種類の酵素を同時に使うと、少量でも効率よく抗原を赤血球から切り離すことができたという。酵素が抗原以外に影響を与える恐れもあるため、今後調べるとしている。(6/13 朝日新聞)

NEWS ■メンタル相談、男性は2倍=40代、中間管理職で悩み

日本産業カウンセラー協会は6月12日、2018年度に寄せられた悩み相談の件数を公表した。男性の「メンタル不調・病気」に関する相談は718件(15.3%)で、355件(6.3%)だった女性の2倍以上となった。年代別では特に40代が目立ち、協会は「中間管理職に当たる世代で心の悩みを抱える人が多くなっている」と指摘する。
男性の相談内容は「うつ」が最多の334件。「メンタルな病気」が248件で続く。中間管理職は仕事で上司と部下の板挟みになり、家庭も忙しいため、自分のことが後回しになり、気づかない間に重症になってしまう傾向があるという。
協会では「つらいと思ったら、心にため込んで頑張ってしまわずに、できるだけ定期的にカウンセリングに行き、気持ちを話してほしい」と呼び掛けている。悩み相談は電話と対面で実施しており、18年度の件数は男女計で1万371件。全体の内容別では男女ともに「職場の問題」が首位で、2位は「自分自身のこと」だった。(6/12 時事通信)

NEWS ■体内時計刻むスイッチ、京大など発見…DNA配列がカギ

朝起きて夜眠るといった1日周期の行動リズムを決める「体内時計」を正常に動かすためのスイッチを発見した、と京都大などのチームが6月12日、発表した。DNAの一部の役割を突き止めた。人間の朝型、夜型といったタイプや睡眠障害などのメカニズムを解明する手がかりになるという。
体内時計は、2017年にノーベル医学生理学賞を受賞した米国の研究者らが関連遺伝子を発見。この遺伝子の働きで作られるたんぱく質は約24時間周期で量が増減し、体温などのリズムを刻んでいるが、この遺伝子が働く詳しい仕組みはわかっていなかった。
京大の岡村均特任教授らはマウスで、この遺伝子の端にあり、役割が未解明だったDNA配列を改変。その結果、マウスはたんぱく質を作れるが、うまく減らすことができなくなった。遺伝子改変マウスは体内時計が乱れ、行動が不規則になったという。
DNA配列が、生物の行動をコントロールするスイッチになっていることがわかったのは初めてだという。この仕組みは人間も共通していると考えられる。京大の土居雅夫教授は「体内時計の仕組みを理解する重要な一歩だ」と話している。研究成果は英科学誌「英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した。(6/12 朝日新聞)

NEWS ■照明つけて眠ると肥満リスク…中高年の女性

照明やテレビをつけっぱなしにして眠るのは、中高年の女性にとって肥満のリスクを高めるとする研究結果を、米国立衛生研究所(NIH)のチームが6月10日、発表した。「真っ暗にして寝ることで、女性の肥満の恐れを減らせる可能性がある」としている。明るい状態で眠ることと太ることの因果関係は不明だが、チームはホルモン分泌の乱れなどが関係している可能性があるとみている。
チームは、米国内の35〜74歳の健康な女性約4万4千人を対象にしたアンケートを分析。5年あまり追跡調査した結果をまとめた。(6/11 共同通信)

NEWS ■日本人口は44万減、「老衰」が死因第3位に…2018年、厚労省

2018年、出生数と死亡数の差である「自然増減数」はマイナス44万4085人で、人口減少ペースはさらに加速している。死因をみると第1位のがん、第2位の心疾患に変わりはないが、脳血管疾患を抑えて、第3位に「老衰」が浮上している。このような状況が、6月7日に厚生労働省が公表した2018年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況)から明らかになりました
出生数と死亡数の差である「自然増減数」は前年に比べて4万9753人の減少ペース加速となっています。自然増減率(人口1000対)はマイナス3.6で、前年から0.4ポイント低下しています。自然減数・自然減率ともに12年連続の減少かつ低下となっており、我が国の「人口減少」にはますます拍車がかかっていることが分かります。
死因別の死亡数を見ると、第1位は悪性新生物(腫瘍)で37万3547人(人口10万対の死亡率は300.7で、前年に比べて1.3ポイント増加)、第2位は心疾患(高血圧性を除く)で20万8210人(同167.6で、同3.8ポイント増加)、第3位は老衰で10万9606人(同88.2で、同6.5ポイント増加)、第4位は脳血管疾患で10万8165人(同87.1で、1.0ポイント増加)第5位は肺炎で9万4654人(同76.2で、1.5ポイント低下)となっています。
第1位の悪性新生物は、2018年の全死亡者に占める割合が27.4%(前年度に比べて0.4ポイント低下)で、日本人の3.6人に1人が「がんで死亡している」計算です。2016年までは「肺炎」が第3位でしたが、2017年には「脳血管疾患」が第3位、「老衰」が第4位となり、2018年には「老衰」と「脳血管疾患」の順位が逆転しました。今後、高齢化がますます進行し、また医療・医学等の水準が上がることに鑑みれば、「老衰」が、我が国の3大死因の1つになっていくと考えられそうです。(6/10 メディ・ウオッチ=部分)


■次号のメールマガジンは7月15日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ