エンタプライズ発信〜メールマガジン【№97】 2019. 5

若葉のころを迎え、有酸素運動の代表ともいえるウオーキングを愉しんでいる人も多いと思います。№86でも触れましたが、いい歩き方は颯爽としています。そのポイントは、目線、姿勢、足の動かし方です。目線は下に落とさず、歩く方向の先を真っすぐ見つめるようにし、背筋を伸ばすことをお勧めします。ここでわかりにくいのは足の運び方です。それは靴の底を見ると課題が見えてきます。次の5つのパターンが考えられ、どれに該当するかで、足のどこに問題があるのかが分かります。①踵のやや外側が減っている、②足底の中心が減っている、③踵の内側が減っている、④踵の外側が減っている、⑤踵が左右非対称に減っている…。正常なのは①だそうです。歩くときは、踵の少し外側から着地し、次に足裏全体が着いて、足首が前に進んで親指の付け根で地面を蹴って抜けていきます。このとき最初に地面に接するのは、踵のやや外側です。したがって踵のやや外側とつま先のやや内側が減るのが正しいすり減り方です。②は、アキレス腱が硬く、縮んでいることが考えられます。縮んだアキレス腱に引っ張られて、体が後ろに傾き、重心が中心から踵に偏ってしまいます。③は、踵が内側に傾いた過回内の状態になっている可能性があり、さまざまな足のトラブルの原因に。過回内の運び方は足のアーチがつぶされて扁平足になります。すると歪みとなり、外反母趾やウオノメ、巻き爪などのトラブルを起こしやすくなってしまうのです。④は、足首が外側に傾く過回外の状態です。この場合、本来は正面を向くはずの膝が外を向いてしまい、足を外側に向けて歩くので、ふくらはぎの骨がねじれ、足首や膝に負担がかかり不調になりがちです。⑤の場合は、どちらかの足が強く、回内していて、重心が偏っているか、左右の足の長さが違っていることも考えられます。左右差があると一方の膝や股関節に負担がかかり、痛みの原因になります。重力はヒトに平等にかかっています。体幹・四肢をよく使ってバランスよく歩きたいですね。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
  バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S

Information

「みんなの統合医療カフェ」 2019 summer 開催予告 6/29

女性はホルモンバランスの影響で、定期的にさまざまな「ゆらぎ」を感じます。そんな「ゆらぎ」と上手につき合い続けるために、日本統合医療学会の部会〈統合医療女性の会〉の世話人・板村論子さん(内科、皮膚科、心療内科医師)がやさしく解説します。

  • 開催日: 6月29日(土)14時から15時30分
  • 場 所:赤十字看護大学広尾キャンパス(東京都渋谷区広尾4丁目1番3号)
  • 入場費:3,000円(お支払いの詳細は、e-mail まで)
  • ※入場者には同会監修の『カラダみつめる手帳』と『カラダみつめるNOTE』をプレゼント。

book review

女性向け『カラダみつめるNOTE』を発刊 〜ポケットサイズ〜

–日本統合医療学会・統合医療女性の会 監修—

『カラダみつめる手帳』の続編。女性特有の心身の「ゆらぎ」と上手に付き合い続けるために、日々のゆらぎを見つめながら1年間の自分のココロとカラダの変化を書き留めていくことを趣旨に制作されました。1日数分書き込んでいくうちに自分のカラダに向けるまなざしが少しずつ変化していくことに気づくことに期待できます。

A6判・158頁
定価:2,160円
発行:BIBLIOBAGA社
販売:産学社
〈Amazonにて発売中〉

★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

多領域に広がりを見せる水素研究

[安保] 太田先生が水素研究を始めて以来、いまではこの分野もずいぶん広がってきたのではないですか。
[太田] はい、世界中で英語論文は400ほど発表されていると思います。国内には40以上の研究機関があります。
[安保] 活性酸素を抑えるわけだから、ほとんどすべての病気の根本に関わっているわけですよね。研究領域がずいぶん広いでしょ。
[太田] 生体内での酸化が抑えられるとともに、抗炎症作用、抗アレルギー作用、エネルギー代謝促進、遺伝子の調整などにも効果があることがわかってきました。
[安保] 臨床的な面はいかがですか。
[太田] 国内では15の大学で臨床試験が行われています。基礎となる最初の論文が発表されてからわずか6年で、臨床研究の論文がすでに20ほどあります。
[安保] けっこうなハイペースですね。

水素ガスで脳梗塞が縮小

[太田] 僕たちが最初にやったのは、水素ガスでラットの脳梗塞を縮小させる臨床試験です。2%程度の水素ガスを吸ったラットでは、脳の損傷がはっきり抑えられました。
[安保] 脳梗塞や心筋梗塞では虚血後再灌流(虚血状態から血流が再開されること)の問題がありますね。活性酸素の害としてはとても切実です。
[太田] 血流停止で酸欠状態になったところに、治療により酸素が大量に流れ込む。先ほどから話しているもっとも活性酸素が発生しやすい条件ですよね。虚血後再灌流や心肺蘇生後の障害軽減に関しても、慶應義塾大学と共同で研究を進めています。ほかには認知症、パーキンソン病、がん、アレルギー疾患、糖尿病、メタボなども重要テーマにしています。そういえば放射線の副作用を軽減するという論文も出ています。

水素は放射線の害を軽減する

[安保] 放射線の害というのはほとんど活性酸素の害でしょ。
[太田] はい。放射線の害の80%は、悪玉活性酸素であるヒドロキシルラジカルによるものです。放射線が水と反応して活性酸素が生じるわけです。だから抗酸化物質で放射線の害を防ぐことができるはずですが、なかなか効果的な抗酸化物質がありませんでした。
放射線の副作用軽減薬としては、唯一アミフォスチンという抗酸化剤があります。アメリカでは薬として認証されていますが、血圧低下、吐き気、嘔吐などの副作用が強いんです。だから口内炎がひどいときの限定的な使用しか認められていません。そのアミフォスチンと水素の効果を比較する論文が発表されたのですが、水素にはアミフォスチンと同等の効果があることがわかったのです。水素だからもちろん副作用はありません。
[安保] これはいい話だ。福島や宮城県に普及できませんか?(つづく)


連載vol.55

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

鍼療法との関係(つづき)

鍼療法においては、垂直方向の気の通り道を「経」、水平方向のそれを「絡」と呼ぶ。絡は枝分かれを繰り返し、個々の細胞にまで入り込んでいる。したがって生体マトリックスという概念は、細胞構造に関する最新の解釈として先人たちの知恵にも通用すると言えるだろう。
鍼師が鍼を刺す経穴は主要な経絡に沿って並んでおり、それらの経絡には12の臓器・器官の名前がついている。ここで重要なのは、これら経絡が生体エネルギーにとっての「高速道路」だということである。つまりどこかに支障が生じるとエネルギーは大渋滞に巻き込まれてしまうのだ。

1984年のエリソンとギャロッドの報告によって、皮膚は生体マトリックスを介して全身のあらゆる組織とつながっていることが明らかになった。真皮と表皮の細胞を結ぶフィラメントは表層筋膜の結合組織線維と直接つながっているのである。したがって皮膚に刺した鍼は全身に広がる組織と接触したことになる。だとすれば、経穴を介して脳をはじめとする臓器・器官の機能を変化させることができても何ら不思議はないはずだ。

重要な証拠

生体マトリックスが連続した情報伝達系であるという仮説は、カリフォルニア大学のジョーンズらの研究グループによって裏付けられた。彼らは足の側面にある視覚の経穴を刺激すると、脳の側頭葉の神経が速やかに活性化されることを証明した。この神経の活動は、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって確認されたのだが、神経系を介した情報伝達では証明できないほど素早く活動が始まる。このような所見がきっかけとなって生体マトリックスを伝わるシグナルが注目されるようになり、その性質および伝達速度に関する研究が始まったのである。

ここまで述べてきた結合組織の特性は、意識のような「創発的現象」と関係がある。つまり、何もないところから突如として現れるように見える意識は、結合組織の半導性、圧電気、結晶性、親水性、連続性および情報処理能力の協働から生まれるのである。ヒトの身体能力が、外傷、姿勢、記憶、ストレスなどによって制限される場合、生体マトリックスの中に問題がある可能性は高い。したがって例えば神経系や関節など1つの系だけを治療する手法は、全身を治療しようとする手法よりも低い効果しか得られないと考えられる。
次号より、生体マトリックスの特性へと歩を進めていく。(出典『エネルギー療法と潜在能力』小社刊)


連載エッセイ 65☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


治せる治療者〜令和の新時代を迎えて(上編)

令和の新時代になりました。筆者の治療家としての原点を振り返ってみると、「自然療法で治す」ことを30年以上も問い続けてきたわけですが、自然(手技)療法で「治す」とは、どういうことでしょうか?
薬や外科的手術などを行わない代替医療に携わっている治療者は、患者が本来持っている自然治癒力を高める、あるいは引き出すことを目的に施術を行います。例えば、全身のマッサージをして自然治癒力を高める。足つぼのマッサージをして自然治癒力を高める。また、第1頸椎にだけ刺激を行う治療者は、そこだけを調整して後は自然治癒力に任せる。あるいは別の言い方でイネイト・インテリジェンス(内なる自然の叡智)に任せるというカイロプラクティック由来のハイカラな言葉を使う人も最近は多くなってきているようです。

薬や外科的手術などの西洋医学であれ、代替医療の東洋医学であれ、あらゆる療法で効果があるというのは患者自身に自然治癒力、すなわち生命力が本来備わっているからです。死を迎える時が来るまでは、ほとんどの人に自然治癒力、生命力が備わっています。かすり傷がほっといても自然に治るように、誰もがその力を持っています。しかし、特に骨折や脱臼などの障害は、治療者による施術がなければ、変形したままの状態になります。その一方で腰痛などの障害は、西洋医学でも代替医療でも治療者が施す施術によって治る場合もありますが、治療者が関わらなくても時間をかけて自然に治る場合もあります。

例えば、手技療法で、ある部分だけを調整して「後は自然治癒力に任せる。身体に治させる」という理屈で患者を帰して、数日後に症状が改善したとします。その改善は調整したから改善したのか、もしかしたら調整しなくても自然治癒力で治っていたかもしれません。その真意を判断することは容易なことではありません。調整したから数日後に症状が改善したかもしれないし、ある種の儀式のような暗示効果で改善したかもしれません。患者にとっては改善されれば、どのような理屈でも関係のないことですが、治すことを重んじている治療者にとっては、大切な関心ごとだと思います。

前述したように治す治癒力は患者自身にありますが、自然治癒力を100%発揮できるように施術をしているのは治療者であるということが、明確に分かる施術を行っているかどうかが治療者としての価値を決めているのではないでしょうか。代替医療の治療者は、構造や病理ではなく生命エネルギーの滞り(ブロック)を治すことが本来の役割だと私は考えています。しかしながら、その本質から外れて、西洋医学の医師のように診断して、慢性症状を構造的に捉えている代替医療の治療者は少なくはないように思います。(次号へつづく)

連載…4

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

プロとしての私たちの権利

私たちはワークからどのようなことが期待できるのか詳細に説明して、クライアントの同意を得つつ、私たちがクライアントに対してどのようなことを期待するかについても、はっきりしておかなければなりません。私たちのプロとしての権利を確認しておくことも、健全なセラピューティック・リレーションシップ(利益を相互が得ることの契約の意識)を築くうえで重要な要因です。
例えばクライアントにセッション時間どおりに来てもらい、終わったら帰ってもらう。またキャンセルの場合は早めに連絡をしてもらったり、セッション料金をきちんと決められたときに払ってもらうなど、私たちは不正をしたり無礼なクライアントにはワークすべきではないですし、実際、そのクライアントにワークすることが自分の利益につながらないと感じたときは拒否することもできることを知っておいてください。

プロフェッショナル・セラピューティック・リレーションシップ—-何が含まれない?

ソマティック・プラクティショナーとして、私たちは自分たちの職業の中での過去の伝統に基づいた知識と施術基準である業務範囲を超えた施術を行ってはいけません。バウンダリー(プロとしての自己防衛策)を守るためには、時に微妙な判断が要求される場合があります。例えば、最近離婚したクライアントを励ますのは心理カウンセリングになりますか? また私たちがクライアントに、もう靴のかかとの中敷きを入れなくてもいいですよと告げたら、それは医療アドバイスになりますか?
もし友達とクライアントという枠を超えてしまったときは? もし個人的な話をおおっぴらにクライアントに打ち明けてしまったら?

ときにはソマティック・プラクティショナーもバウンダリーに反することがあります。良いバウンダリーを守っていくことは、車を操縦するのと同じなのです(常に正しい方向へ軌道修正する必要があります)。平坦な道を走っているだろうと思っているときに、こぶに当たるのです。私たちが間違いをしたのかどうかが問題なのではありません。私たちは人間であり、失敗することもあるのです。そこでより大切なのは、失敗をしたときに、それに気づき、それから同じ失敗をしないように行動を改められるかどうかということなのです。(つづく)

(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,Bodyworkers,and Movement Teachers. 2nd ed. 2006)

◆連載18◆

『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く

孫 維良(東京中医学研究所所長)

「痛みをやわらげる、ひとりあんま気功・実践編2」

・めまいを改善する
中国医学では、めまいは主に「肝血虚」すなわち肝臓の血流が不足したために起こるのだと考えています。肝は経絡で目と結ばれているため、肝血虚により目に症状が現れめまいになると考えられているのです。
ところで、耳には全身のすべての機能に対応する、たくさんの反応点が集まっていますが、耳たぶには目の反応点があります。めまいは目に関連した症状ですから、この目の反応点を刺激することで症状は緩和されることになります。
①楽な姿勢で椅子に座り、全身の余分な力を抜いて心身ともにリラックスしてください。軽く目を閉じ、静かに腹式呼吸を繰り返しながら、両手の平をこすり合わせて手に気を集めます。手の平が十分温かくなるまで続けてください。
②手が温かくなったら、指先が後頭部に向かうようにして、両手の平を左右の耳に当てます(すっぽり覆うようにしましょう)。ゆっくり息を吐きながら、手の平を後頭部の方へ動かし、手の平で耳をさすります。
続いて、息を吸いながら手を前に引き、また耳をさすります。前後に往復で18回さすって、耳が温かくなったら、そこで終了します。まだ耳が温かくなっていない場合は、さらに往復で18回さすります。特に親指の付け根の下のふくらんだ部分で耳たぶを刺激すると良いでしょう。
③症状がひどく、①②で改善しないときは、めまいに効果的なツボ刺激も行いましょう。頭のほぼてっぺんに百会(ひゃくえ)というツボがあります。昔からめまいに効能があるとしてよく知られたツボです。ここを片手の親指の指面でやや力を入れて約2分間押し続けます。ツボの真下に向かって押すようにしてください。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(71)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****

腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■分離辷り症患者44名を対象に、PLF(腰椎後側方固定術)群とPLIF(後方侵入腰椎椎体間固定術)群の術後成績を2年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、複雑で大がかりなPLIFよりも比較的単純なPLFの方が成績は良いことが判明。http://1.usa.gov/oW84Rp
……腰椎の手術に限っていうと、術式が新しければ新しいほど、いじくりまわせばまわすほど成績が落ちるように見えるから不思議です。他の分野ではあまり聞かない話ではないでしょうか。

■脊椎固定術に関する論文47件を厳密に検討した結果、優または良と評価できたのは平均68%だったが、論文によっては15%〜95%の開きがあり、研究デザインにも不備があるため脊椎固定術の有効性を示す証拠は見つけられなかった。http://1.usa.gov/pdP0Eg
……腰椎の手術の中でこれほどコストパフォーマンスの悪い手術はありません。それにもかかわらず盛んに行なわれているのですから不思議です。医療仕分けの筆頭に挙げられるのも当然ではないでしょうか。

■脊柱管狭窄症と診断された腰下肢痛患者88名を対象に減圧椎弓切除術の成績を6年間追跡した結果、1年後の改善率は89%だったが6年後には57%に低下し17%は再手術を受けていたことから、これまで報告されていた成績より悪い。http://1.usa.gov/qEMqae
……脊柱管狭窄症の自然経過は比較的良好で、馬尾症候群の疑いがなければ手術を遅らせても問題ないことが明らかになっています。手術を決断する際、必ずしも全例が完治するわけではないことを知っておくべきです。

■腰痛患者520名を対象に診療ガイドラインに従った治療群と従来の治療群の治癒率、再発率、満足度、医療費を1年間追跡して比較した研究によると、従来の治療群よりガイドライン群の方がすべての面でかなり優れていることが判明。http://1.usa.gov/reNbPT
……新しい腰痛概念に基づく治療は従来の治療をはるかに凌駕する成績が得られます。強制はしません。どちらを選ぶかはあなた次第です。

■ありふれた症状を訴える患者200名をプラス思考で接した治療群と無治療群、マイナス思考で接した治療群と無治療群に割りつけたRCTによると、2週間後の改善率は治療の有無に関わらずプラス思考で接した群の方がはるかに高かった。http://1.usa.gov/qJyVdX
……患者に安心と勇気を与えた場合と不安と恐怖を与えた場合を比較すると、治療の有無にかかわらず前者のほうがはるかに早く回復することが明らかになったわけです。

■腰痛で長期欠勤している患者975名を3年間追跡したRCTによると、200日後の復職率は教育プログラム(従来の常識はすべて忘れて怖がるなという指導)群が70%だったのに対して、標準的治療群はわずか40%でしかなかった。http://1.usa.gov/mUEwJH
……従来の標準的な治療よりも新たな腰痛概念に基づく教育プログラムの方がはるかに有効だということがランダム化比較試験で証明されたわけです。腰痛にまつわる根拠のない迷信や神話は1日も早く忘れましょう。

 N  E  W  S

NEWS■ 7年ぶりに「腰痛診療ガイドライン」が改訂

5月13日、日本整形外科学会と日本腰痛学会の監修による『腰痛診療ガイドライン2019』が発刊された。本ガイドラインは改訂第2版で、初版から実に7年ぶりの改訂となる。初版のガイドライン作成から現在に至るまでに、腰痛診療は大きく変遷し、多様化した。また、有症期間によって病態や治療が異なり、腰痛診療は複雑化してきている。そこで、科学的根拠に基づいた診療(EBM)を患者に提供することを理念とし、『Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014』で推奨されるガイドライン策定方法にのっとって本ガイドラインは作成された。
9つのBackground Questionと9つのClinical Questionを設定本ガイドラインでは、疫学的および臨床的特徴についてはBackground Question (BQ)として解説を加え、それ以外の疫学、診断、治療、予防についてはClinical Question (CQ)を設定した。それぞれのCQに対して、推奨度とエビデンスの強さが設定され、益と害のバランスを考慮して評価した。推奨度は、1.行うことを強く推奨する、2.行うことを弱く推奨する(提案する)、3.行わないことを弱く推奨する(提案する)、4.行わないことを強く推奨する、の4種類で決定する。エビデンスの強さは、A(強):効果の推定値に強く確信がある、B(中):効果の推定値に中程度の確信がある、C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である、D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない、の4種類で定義される。
腰痛は「疼痛の部位」「有症期間」「原因」の3つの観点から定義された。疼痛の部位からの定義では、「体幹後面に存在し第12肋骨と殿溝下端の間にある、少なくとも1日以上継続する痛み。片側または両側の下肢に放散する痛みを伴う場合も、伴わない場合もある」とされた。有症期間からは、発症から4週間未満のものを急性腰痛、発症から4週間以上3ヵ月未満のものを亜急性腰痛、3ヵ月以上継続するものを慢性腰痛と定義した。原因別の定義では、「脊椎由来」「神経由来」「内臓由来」「血管由来」「心因性」「その他」に分類される。とくに「悪性腫瘍」「感染」「骨折」「重篤な神経症状を伴う腰椎疾患」といった重要疾患を鑑別する必要がある。

運動療法は慢性腰痛に対して強く推奨
運動療法については「急性腰痛」「亜急性腰痛」「慢性腰痛」のそれぞれについて評価され、そのうち「慢性腰痛」に対しては「運動療法は有用である」として強く推奨されている(推奨度:1、エビデンスの強さ:B)。それに対して「急性腰痛」「亜急性腰痛」に対してはエビデンスが不明であるとして推奨度は「なし」とされた。
本ガイドラインが初版と大きく異なる点は、推奨する薬の評価方法である。まず「薬物療法は疼痛軽減や機能改善に有用である」として、強く推奨されている(推奨度:1、エビデンスの強さ:B)。そのうえで腰痛を「急性腰痛」「慢性腰痛」「坐骨神経痛」に区別して、各薬剤についてプラセボとのランダム化比較試験のシステマティックレビューを行うことでエビデンスを検討し、益と害のバランスを評価して推奨薬を決定した。オピオイドについては、過量使用や依存性を考慮して弱オピオイドと強オピオイドに分けられている。(5/21 Care Net=部分)

NEWS■ 「ヨガは心臓の健康に良い」を証明…米国心臓協会

米国心臓協会(AHA)は、一部の研究では心身に働きかける「ヨガ」においても血圧や脂質の値を下げ、ストレスの軽減、肥満度の改善など心血管の健康増進に有効性が示されているとし、そのエビデンスについてまとめている。米国では、ヨガの愛好者は年々増え続けている。米疾病対策センター(CDC)の調べでは、2017年には3520万人がヨガを実践し、成人人口に占める割合は2012年の9.5%から14.3%へと増加した。その多くは、健康の増進やストレス解消を目的にヨガを始めたという。
米エモリー大学医学部心臓病学のPuja Mehta氏は、「仕事や夫婦関係のストレスなどの心理社会的なストレス要因のほか、不安や抑うつがあると心血管疾患リスクが上昇することを示した研究論文は数多い」と指摘する。その上で「慢性的にストレスがかかると交感神経系が亢進し、炎症が起こって血圧が上昇する可能性がある」と説明する。
一方、Mehta氏よると、ヨガは、深い呼吸とリラクゼーションによって副交感神経系を活性化させ、身体のストレス反応を抑える一助となる可能性がある。さらに、マインドフルネスを培うことで自己認識力と自己管理能力が向上し、ヨガを行うこと以外にも別の生活習慣の改善につながる可能性もあるという。この点について、米ハーバード大学医学部准教授のGloria Yeh氏は「ヨガは健康的な食生活や運動習慣を続ける大きな原動力ともなりうる」と指摘する。
ヨガの健康効果については、複数の研究で有望な結果が示されているが、参加者が少ないといった限界や、さまざまな要素で構成されるため標準的な運動量というものがなく、研究間の比較ができないといった課題もある。(5/21 HealthDayNews=部分)

NEWS■ 気候変動で花粉症の有病率が高まる?

米メリーランド大学応用環境医学准教授のAmir Sapkota氏らの研究から、気候変動によって季節にずれが生じ、例年より3週間以上も早く春が訪れた地域では、花粉症の有病率が14%高まることが明らかになった。同氏は「気候変動は生態系に影響を与え、その影響はわれわれの健康にも及んでいる」としている。この研究結果は「PLOS ONE」オンライン版に発表された。
Sapkota氏らは今回の研究で、NASAから提供された高解像度の衛星データを用いて、植物が緑色に変化した時期に基づき、2001〜2013年における米国全土の春の緑化や開花が始まった時期を調べた。また、この情報を、2002〜2013年に、米疾病対策センター(CDC)が収集した米国人を代表する標本データと関連づけ、春が始まる時期が早まったり、遅くなったりすることが健康に及ぼす影響について検討した。
その結果、春の緑化や開花のタイミングが早まると花粉症の有病率は高まることが分かった。Sapkota氏は、春の始まりが早まると木々の開花も早まるため、例年よりも早く花粉が飛散し始め、飛散期間が長期化したことが影響した可能性があるとしている。
では、季節性アレルギーに苦しむ患者はどのような点に注意すべきなのか? 米ノースウェル・ヘルスのアレルギー専門医であるPunita Ponda氏によれば、アレルギー患者は3月中旬から予防的に薬物療法を開始すべきという従来の考え方を変える必要があるかもしれない。同氏は「患者は花粉の飛散量の情報に注意し、飛散量が増え始めたら2月下旬には予防的に薬物療法を開始し、少なくとも6月中旬まで治療を続ける必要があるかもしれない」と話している。ただ、患者は自分に合った対策や治療について、かかりつけ医に相談すべきとも、同氏は付け加えている。(5/20 HealthDayNews)

NEWS■ 「首ポキッ」実は危険…米で『左下半身まひ』報道

あなたもクセになっていないだろうか…。米国で、男性が首を伸ばそうとしたところ「ポキッ」という音がし、脳卒中を起こして左半身まひになったと報じられた。専門家によると、これは特殊なケースのようだが、肩こりや疲労の際に首を動かして音を鳴らす行為は「関節や神経を傷つける恐れもある」として危険性を指摘する声もある。
米CNNの報道によると、オクラホマ州の男性が首に痛みを覚え、伸ばしたところ「ポキッ」と音がした瞬間、左半身がまひをしはじめたという。男性は入院治療を受けたが、治療に当たった医師は「音が鳴った際、首の骨につながる動脈が破裂してしまった」と血管が切断されたとの見方を示したという。
これについて「かなり特殊なケースだろう」とみるのは近畿大学奈良病院整形外科の戸川大輔准教授だ。「腱がこすれたり、関節が適合性のある形に戻ったときに鳴ることも考えられるが、一概に危険ともいえない」という。一方で「基本的に加速度がついた動きはさまざまな力がかかる可能性がある。血管の中で固まっていた組織のかたまりなどが飛び、脳梗塞になったりする危険性はある」と戸川氏はみる。普段の生活でも、肩が凝ったり、疲労を感じた際に首を曲げたり、回したりすると「ポキッ」と音が鳴ることもあるが、この動作にも注意が必要だという。
Kメディカル整体院東京神田院の黒木祐太朗院長は、「ポキッポキッと鳴らしつづければ潤滑油がなくなり関節が滑りにくくなる。場合によっては神経を傷つけたり、ひどければヘルニアなど神経症状の要因になることもある。鳴らすことで脊髄神経に負担がかかって、まひ的な症状になることも考えられる」という。
黒木氏は「首をポキッとしたくなるときは、デスクワークなどで猫背になって、首が前に出ていることが多い。腕を後ろで組み、肩甲骨を内側にして胸を張ることで首の可動域が広がるので、ポキッとしたくなる気がなくなるのではないか」とアドバイスした。(5/20 夕刊フジ)

NEWS■ 10代の3人に1人に背部痛の経験、米調査

米国では、10代の若者の約3人に1人が背中から腰にかけて痛みを抱えた経験があることが、ニューヨークHospital for Special Surgery(HSS)のPeter Fabricant氏らが行った研究で明らかになった。研究結果の詳細は、米国整形外科学会(AAOS)で発表された。米国立衛生研究所(NIH)の推計では、米国成人の約80%が、ある時期に背部痛に苦しむとされる。Fabricant氏らは今回、10歳から18歳の若者を対象に背部痛の実態を調査した。同氏によれば、若者の背部痛を全国規模で調査したのは今回が初めてだという。
3,669人の若者(男児と女児がほぼ半数ずつ、平均年齢は14.0歳)を年齢と性別により均等に分けて分析した結果、約3人に1人(33.7%)が「過去1年以内に背部痛を経験したことがある」と回答していた。背部痛を経験した若者は、そうでない若者に比べて体重が重く、肥満度(BMI)も高かった。また、背部痛の頻度は男児よりも女児で高いことも分かった(38.3%対29.0%)。さらに年齢が上がるごとに、背部痛を経験した若者の割合は約4%増加した。また、治療を受けた505人のうち44.0%が理学療法を、34.1%がカイロプラクティックを、33.9%がマッサージ療法を受けていた。
今回の研究では、背中に背負うバックパックも若者の背部痛の原因に挙げられた。特に、片方のストラップだけでバックパックを背負う若者は、ストラップを両方使う若者よりも背部痛を経験する割合が高かった。Fabricant氏は「親は子どもたちが背部痛の原因になりそうなスポーツや活動をしないように促す必要がある。また片方の肩でバックパックを背負うのはやめた方が賢明だ」と助言している。(5/15 Care Net)

NEWS■ 漢方薬を見極めるには「虚・実」を知っておく

漢方薬の多くは、患者の体質やその時の症状に合ったものでないと、十分に効果を発揮することができません。つまり、効かないのは漢方薬自体の問題ではなく、「選び方」に問題がある可能性もあるのです。
体質を見極める尺度として「証」という漢方独特の物差しがあります。簡単にいうと「体質・体力・抵抗力・症状の現れ方といった個人差を表すもの」になります。「証」は物差しなので分け方があり、そのひとつに「虚・実」があります。
体力がない・細い・華奢・顔色がよくない・声が小さい・胃腸が弱い・寒がりなど、弱々しい方は「虚証」。他方、体力がある・筋肉質・血色がよい・肌つやがよい・声が大きい・胃腸が強い・暑がりなど、元気なイメージの方は「実証」に分類されます。「虚」と「実」は、本人が訴える症状、体格、見た目などから判断しますが、それらは相対するものです。その「証」に合った漢方薬でないと効かないということになります。
たとえば最も有名な漢方のひとつ葛根湯は、風邪のひき始めには誰にでも効くイメージがあるかもしれませんが、葛根湯にも適した「証」があります。葛根湯は比較的体力があり胃腸の丈夫な人、つまり「実証」の人に使う漢方なのです。ですから「虚証」の人には用いません。知らずに飲んで葛根湯でお腹の調子が悪くなるような方は「虚証」という捉え方もできるかもしれません。このように、漢方には合う合わないがあり、自分に合った漢方を見極めるには「虚・実」を知っておくことが大切といえます。(神崎浩孝/医学博士、薬剤師)(5/19 夕刊ゲンダイ)

NEWS■ 中年期の心拍数75回/分以上で早期死亡リスク倍増?

中年期の安静時心拍数が、正常範囲内(50〜100回/分)でも1分当たり75回を超える男性では、55回未満の人と比べて早期死亡リスクが約2倍に高まる可能性があることが、ヨーテボリ大学(スウェーデン)のSalim Bary Barywani氏らの研究で明らかになった。この研究では、50〜60歳の間に心拍数が経時的に増加した男性では、死亡リスクや心血管疾患の発症リスクが高まることも分かったという。研究結果の詳細は「Open Heart」オンライン版に発表された。
研究では、ヨーテボリで1943年に生まれた男性1450人をランダムに抽出し、このうち1993年の生活習慣などに関する質問紙調査に回答した798人を対象に、2014年まで21年間追跡した。対象者には、1993年と2003年、2013年の計3回、安静時心拍数を含む検査を行った。
追跡期間中に、男性の約15%が死亡し、約30%が心血管疾患を発症した。分析の結果、50歳の時点(1993年時点)で安静時心拍数が75回/分を超えていた男性では、55回/分未満だった男性と比べて、その後の全死亡リスク(ハザード比2.3、P=0.018)と心血管疾患(同1.8、P=0.014)および冠動脈疾患(同2.2、P=0.025)の発症リスクがいずれも約2倍に高まることが分かった。
また、50歳から60歳(1993年から2003年時点)の間に、安静時心拍数が1分当たり5回以上増加した男性と比べて、心拍数の変化が4回未満と安定して推移した人では心血管疾患リスクが44%低いことも明らかになった。さらに、50歳以降の心拍数が毎分1回増えるごとに全死亡リスクは3%、心血管疾患リスクは1%、冠動脈疾患リスクは2%高まっていた。ただし、Barywani氏らは、今回は観察研究であるため、これらの因果関係を証明するものではないと断っている。
なお、心拍数は高すぎても低すぎても健康によくないという。40歳代で心拍数が低下している人では、全身に血液を送る心臓のポンプとしての働きが弱まっている可能性があるという。また安静時心拍数が高い場合には、有酸素運動を行うと心拍数は改善するとしている。さらに、心拍数の上昇がみられたら、高血圧や脂質異常症などのリスク因子の管理について、医師に相談するべきだと付け加えている。(5/10 HealthDayNews=部分)


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