エンタプライズ発信〜メールマガジン【№96】 2019. 4
東京・池袋の路上で87歳の老人が運転する乗用車が信号を無視し多数の死傷者を出しました。2年前の免許更新では認知機能基準に抵触することはなかったと言います。事故原因は調査中ですが、高齢者ドライバーは都会・地方を問わず多く存在し、ほぼ日常的に道路上で運転をしています。特に地方では車という足は必須でしょう。本コラム68号にも記しましたが、老いても自分の運転には自信を持っているという高齢者ドライバーの心理や、車への憧憬、愛着が強い世代だけに「免許返納」は子や孫も含めてやすやすと説得できることではありません。免許返納は最大の転ばぬ先の杖です。識者によると、男性は認知機能の低下などには触れず、身体的な機能の低下について指摘する方が受け入れやすいと感じるそうです。たとえば視力の低下。年齢とともに視野が狭くなったり、視力が落ちたりするのは仕方がないことと理解してくれた、というのです。また、実際にドライブシミュレーターなどで判断力が低下していることを客観的に知ることで、運転をあきらめてくれたというケースも多数あるそうです。しかし二律背反的な事象もあります。免許を返納した直後から引きこもりのようになってしまい、認知症を発症したり、症状が進んでしまったりするケースも少なくないそうです。運転は、見る、聞く、判断する、操作するなど、脳のさまざまな機能を使う作業です。さらに計画して出かける、人と会って話をするなど、生きる意欲や楽しみにつなげてくれたりもします。高齢者ドライバー自身も、いたるところで事故などが生じていることは認知しています。日本人の得意な「折り合い」をどうつけていけば、この苛烈な社会問題を収拾できるのでしょうか。明日明後日の直近の課題でもあります。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S
Information 1
ホメオパシーの啓蒙活動を推進している日本ホメオパシー医学会では、多くの方にホメオパシーについて知っていただくために、オープンセミナーを開催している。
- 講義内容 :ホメオパシーとは/ホメオパシーの薬とは/ホメオパシーの診察とは/ホメオパシーの適応は/ホメオパシーは安全か
- 開催日:5月11日(土)15:00〜17:00 <参加無料>
- 講 師:板村論子氏(MD., Ph.D., MFHom)
- 会 場:新くりにっく (石川県白山市宮保新町130)
- 参加ご希望の方は日本ホメオパシー医学会事務局宛E-mailで 「参加希望」とお送り下さい。info@jpsh.jp(URL:http://www.jpsh.jp)
Information 2
日本統合医療学会(IMJ)の認定資格は、以下の規定および区分・対象者をもって加入への途が開かれています。
(1)認定医・認定師は、認定試験を申請する時点で、3年以上本学会会員であり、3年以上の臨床経験を有する医療従事者でなければならない。認定協働師は、認定試験を申請する時点で、3年以上本学会会員であり、3年以上の実務経験を有さなければならない。
(2)認定研修を修了していることが必要である。
<区分・対象者>
▽認定医…医師、歯科医師、獣医師
▽認定師…看護師、准看護師、保健師、助産師、薬剤師、臨床検査技師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、介護福祉士、歯科衛生士、精神保健福祉士、救急救命士、社会福祉士、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、公認心理士
▽認定協働師…カイロプラクティック、ヨーガ
※ カイロプラクティック=日本カイロプラクターズ協会(JAC)または全日本カイロプラクティック学会(ANCA)の会員または推薦があること。
※ヨーガ=日本ヨーガ療法学会認定ヨーガ療法士であること。
【詳細・細目については学会までお尋ねください。E-mail: imj@imj.or.jp】
㉓
老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)
水素が抜ける時間で健康がわかる?
[太田] 水素療法に取り組んでいるクリニックの医師からこんな話を聞きました。そのクリニックでは点滴で水素注入を行っているのですが、点滴後に水素が体から抜けるまでの時間が人によって大きく異なるそうです。
[安保] 水素が出たかどうかは呼気で測定するんですか?
[太田] そうです。点滴を始めてから何分後に呼気から水素が出てくるかを測定するんですが、がんの人は30分ぐらいしないと呼気に水素が出てこない人もいる。健康な人だと2-3分で出てくるそうです。
[安保] 水素が活性酸素を処理するのにどれくらいの時間がかかるかで、健康の度合いがわかるかもしれませんね。おもしろいなあ。水素は体に溜まることがないという点で、ほかの抗酸化物質と異なりますね。
[太田] 水溶性のビタミンCは細胞膜を抜けることができないし、水に溶けないビタミンEなどは細胞膜の奥にある水溶性の細胞質では作用できません。ましてや脳の中にはほとんどのビタミンや高分子物質は入ることができない。抗酸化物質は作用できる場所が限られているものですが、水素は気体分子なので細胞内のどこへでも入っていけます。しかも悪玉活性酸素にしか作用しない。だから私たちは、水素をこれまでの抗酸化物質の延長線上で考えていません。まったく別次元のものですね。
水素には副作用がない
[安保] 悪いところを良くして、問題のない部分には作用しない。西洋医学で使われる切れ味のいい薬とは、効き方が根本的に違いますね。
[太田] そうですね。血糖値を下げる薬だったら、血糖値が高い人が飲んでも低い人が飲んでも同じように下がってしまう。血圧剤もいっしょですね。
[安保] これらの薬の共通点は、血糖値や血圧を下げるなどの目的は達成するけれども、体のほかの部分にも関与してしまう。つまり副作用が必ずありますね。
[太田] 水素自体は無害な気体で、副作用がないことははっきりしています。水素が体内で活性酸素とどのように結びつくのか、化学式で示せば非常にシンプルな仕組みであることがわかります。体内で活性酸素(2つのヒドロキシルラジカル)と結びついた水素は、2分子の水に変化して体外に排出されます。体内に悪玉活性酸素がなければ、水素は呼気としてそのまま体外に出てしまうから、副作用は起こり得ないのです。
連載vol.54
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
整体という概念
「人間の物理学的構造を整える」という概念は非常に興味深い。スポーツアスリートや芸術的パフォーマーに対する整体の効果を見ると、分野を問わず、どのような偉業を達成するにも全身の貢献が必要であることがわかる。つまり、試合や舞台の本番で最大限の能力を発揮するには、体内あらゆる組織、細胞、分子、原子が一糸乱れず協力しあって、望みどおりの動きを作り出さなくてはならないのだ。その瞬間に体内で起きている現象は、言うまでもないことだが、セント・ジョージらの半導体理論によって説明できるだろう。
生体組織の伝導度が水分含有量に大きく依存するという研究結果は、ボディワーカーたちの経験と一致する。硬くなって痛みがある組織は、多くの場合、触っただけでごわごわした紙のように乾燥しているのが感じられるという。乾燥した組織はマッサージや整体などの手を使う治療法で柔軟性を取り戻すと、水を含んだような感触になる。あるボディワーカーは、治療中の患者に水を飲ませるという。その方がはるかに早く痛みが消えるのだそうだ。
鍼療法との関係
ロルフの同僚たちの中には、結合組織の実物を見るために死体解剖を行った研究者がいる。彼らが注目したのは、結合組織や筋膜の中を走る細い線維だったが、この線維の一部が、東洋医学で言う経絡と同じ位置にあることがわかったのである。そこで私は、セント・ジョージの言う「コラーゲン分子中の電子や陽子の運動」が鍼療法の原理として古くから伝わる「気」のエネルギーと関係するのではないかと考えた。
私がこの考えをニューイングランド鍼灸大学での講演で述べたところ、1人の教官が私の見解とまったく同じことが昔の鍼の教科書に書いてあることを教えてくれた。紀元16年から1980年の間に出版された10冊の鍼療法の教科書は、スティーブン・バーチと松本岐子によって英訳されている。
1980年刊の中に「厚い油の膜、筋膜、連続した膜の組織があり、その中を陽の気が流れる」と説明されている。油の膜とは、この組織が光って見えたためについた名称だという。「陽の気」とはエネルギーのことを意味しており、鍼術の文献にはこのエネルギーが筋膜の中を流れると明記されている。松本とバーチによれば、経絡の通り道が筋膜であるという記述は、古代の書物にも現代の論文にも繰り返し出てくるという。
セント・ジョージらの研究グループが考え出した生体におけるエネルギーと情報の伝達系は、鍼師たちが何千年も前から知っていた現象に通じているのかもしれない。またロルフィングをはじめポラリティ療法、ヒーリングタッチ、セラピューティックタッチ、レイキ、ゼロバランシングといった種々のエネルギー療法のメカニズムも、セント・ジョージらの仮説で説明できるに違いない。教授が予測した伝達系は、生物の全身にエネルギーと情報を伝え、活動を制御・統括しているのである。このような仕組みがあるからこそ、生体は外傷やトラウマに反応し、また病気に対する防御反応を起こすことができるわけだ。
(出典『エネルギー療法と潜在能力』小社刊)
連載エッセイ 64☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
患者への「質問力」 〜隠れたニーズを読み解く洞察力〜
過去の記憶が急性腰痛の原因
50代男性。腰痛と肩こりが主訴で来院。定期的に腰痛があるとのことで、今回は左腰部、左股関節周辺、ならびに右肩関節周辺の機能障害に対応した。アクティベータ療法で調整すると、すぐに筋肉の働きも正常化して、症状も改善する。しかし、次の来院日にはぶり返していた。3回ほど継続的に施術をさせていただいた。毎回、治療後は症状が軽減しているようだが、朝起きた時が悪いという。ハード面の施術だけ様子を見ていたが、寝ている際のイメージで誤作動記憶の反応が毎回示されたので、次回はソフト面の施術の提案をした方が良いだろうと考えていた。朝起きて症状がある場合は、寝ている間の無意識の誤作動を疑う。
4回目の来院時、ぎっくり腰(急性腰痛)のように悪いとのこと。寝ている状態でのイメージ検査でも陽性反応が示されるので、ハード面調整を行なった後にソフト面調整法を行なった。寝ている状態を目安に検査を進めていくと、いくつかのキーワードが示され、会社の人事異動に関することで、責任のある立場に関する事柄がストレスになっていた様子だった。恐らく脳は無意識にそのことを思い身体を緊張させたのだろう。調整後はかなり改善した。
その次の日の来院の際、前回の改善が維持されている様子。朝起きた際の腰痛も良かったとのことだった。機能検査ではかなり改善しているのに、痛みをかばっている様子があるので、おそらくエピソード記憶が関係しているのではと予測した。そして、検査では予想どおりエピソード記憶の陽性反応が示され、その誤作動記憶を調整。さらに検査をすすめると。「恐れ」→「時系列」→「6ヶ月前」に反応を示す。『6ヶ月前に何か「恐れ」や「不安」などに関係することで思い当たることがありますか?』と尋ねると、丁度、その時に人事異動の辞令を受け、いくつかの恐れや不安があったとのことだった。
前回の施術で人事異動がストレスとして関係していたことは知っていた。しかし、6ヶ月前に初めて会社から人事異動の辞令を受けたことまでは知らなかった。でも、PCRTの検査では、ピンポイントで誤作動記憶の陽性反応にたどり着く。このようなピンポイントの誤作動記憶の検査結果で多くの患者さんは驚かれる。そして症状がその誤作動記憶の調整で改善するので、その記憶が影響を及ぼしていたということを認めざるを得ない。
施術者は淡々と検査を進めてはいるが、「ん〜なるほど!」と因果関係が明確になることが、内心とても面白い。「面白い」というと、つらい症状を抱えている患者さんに対して不謹慎ではあるが、原因があっての結果なのだという繋がりが明確になることが、難問を解決したように面白い。
このように人間の脳の記憶が、いかに慢性症状に影響を与えているのかということをもっと多くの人に知ってもらいたいと思う。
円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
一貫性の重要性
多くの経験豊富なセラピストに聞いたところ、クライアントが常連さんになるには、一貫性が大切だという意見が多くありました。セラピストがいつも(仕事に関して)一貫して信頼できる(この場合の一貫性とはプロとしての基準を守って、一貫していい仕事をするという意味です)とクライアントは安心できます。そしてクライアントが徐々にセッションルームの環境やワークのスタイルに慣れてくると、彼らはセッションの形式やセッションルーム内の配置、セッション時間の変更やそのほかのクライアントとのワークについて変更事項があると落ち着かなくなってしまいます。
例えばもしクライアントがいつも決まった時間に来ているのであれば、できるだけ彼がその時間で来つづけられるように配慮して、彼をほかの時間枠にまわされないようにすることが大切です。もし私たちがオフィスを引っ越したり、営業時間を変更しなければいけないときには、そのほかのワークに関連する事柄はできるだけ変更しないようにしましょう。クライアントは、私たちがいつも一貫して思いやりをもって、プロとしての仕事をしていれば信頼してくれますし、そのことでクライアントがセッションの中でより深くリラックスできるようになるのです。
インフォームド・コンセントと拒否権
インフォームド・コンセントを十分に得ることでセッションが倫理にかなって行われるようになります。できるだけ私たちはクライアントに対して言葉で詳細に説明し、書面での契約をする方が望ましいように思います。彼らは私たちがどんなトレーニングを受けたか、どんな方法でセッションを行うのか、それらの方法の考えられる利点とリスクについて知る必要があります。そして私たちはクライアントにいつでもどんな理由であれ、彼らがセッションの中止を要求することができるということを伝えます。彼らには(正式には)拒否権と呼ばれるものがあります。私たちはワークや免状や資格に関するクライアントからの質問や、彼らがワークを一切受けたがらなかったことに関して、イライラしたり、不快に思ったりしてはいけません。ワークをするのは私たちですが、セッションの主導権は彼らが握っていることをクライアント自身も知っておかなければいけません。(つづく)(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,Bodyworkers,and Movement Teachers. 2nd ed. 2006)
◆連載17◆
『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く
孫 維良(東京中医学研究所所長)
・認知症を予防する
中国医学の考え方では、脳は腎の精気によってつくられたものです。順を追って言うと、腎の精が骨髄を生み、その骨髄が脊髄になって上に連なり、頭に達して脳をつくったと考えられているのです。つまり腎は脳の生みの親なのです。
それだけに脳と腎は密接に結びついていて、腎の機能の衰えは、確実に脳の働きの低下となって現れます。認知症も、そんな腎の機能によって引き起こされる症状の一つです。ですから認知症を予防するあんま気功法は、単に脳を刺激するだけではなく、腎の機能も強化する方法でなければなりません。
①楽な姿勢で椅子に座り、肩の力を抜いてリラックスします。軽く目を閉じ、腹式呼吸をしながら、温かくなるまで両手の平をこすり合わせましょう。
②最初に、頭の血液の循環を良くするあんま気功法を行います。首の後ろ、髪の生え際の左右に、風池(ふうち)というツボがあります。
まず右手を首の後ろ左にまわして、手の平を髪の生え際に当て、ちょうど中指の指面が左側の風池に当たるようにします。そこから右側の風池まで手を移動しながら、手指と手の平で首を押しさすります。
次に、手を斜め下に動かして首を押しさすり、首のつけ根の左側まで移動させます。続いて手を首のつけ根の右側まで移動し、首を押しさすります。つまり、左の風池→右の風池→首のつけ根の左側→同右側と手を移動させ、アルファベットのZの字を書いていくのです。
首のつけ根の右側に達し、Zの字を書ききったら、今度は手を斜め上に動かし、再び左側の風池へと手を移動させます。そこからまた右側の風池→首のつけ根の左側→首のつけ根の右側と手を動かしていきます。つまりZの字に対照の斜め線が加わったことになります。この変則的な動作を首の後ろが温かくなるまで続けてください。
③両手の10本の指で、頭全体を叩きます。手に力を入れずに手首のスナップを利かせて、軽くリズミカルに叩きましょう。2-3分続けてください。
④第2腰椎の下のくぼみから親指の横幅で1.5本分ほど横に腎兪(じんゆ)という腎の機能を強化するツボがあります。最後にこのツボを刺激します。
右側の腎兪に右手の平を当て、左側の腎兪に左手の平を当て、上下に押しさすります。腎兪から尾骶骨まで手を往復させて2-3分間押しさすりましょう。
①-④を毎日1回、日課とするとかなりの効果があります。
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(70)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■(5)椎間板摘出術は比較的安全な治療法とされているが、これまで考えられていた以上に再手術を必要とする例が多い。(6)椎間板ヘルニアに対する手術成績は、心理社会的因子の影響を強く受けている。http://1.usa.gov/q1HPOA
……手術を受けた患者の5〜50%は症状がまったく変わらないか、あるいはさらに悪化することが判明しています。
■椎間板摘出術が予定されていた腰下肢痛患者84名の治療成績を、神経学的所見、SLR、画像所見、心理テストの4項目で比較した結果、治療成績と最も関係が深かったのは、理学所見や画像所見ではなく心理テストだったことが判明。http://1.usa.gov/qMXXcm
……椎間板ヘルニアの治療成績を左右するもっとも大きな要因は、心理社会的因子だということが明らかになったわけです。
■椎間板摘出術を受けた患者46名を2年間にわたって追跡調査した結果、職場復帰には心理的因子(抑うつ状態)と職業上の心理社会的因子(職場での精神的ストレス)が深く関与していて、画像所見や臨床症状は無関係であることが判明。http://1.usa.gov/osP4XY
……椎間板ヘルニアの手術成績は、画像所見や臨床症状より、抑うつ状態と職場のストレスに左右されることが明らかになったわけです。
■腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者69名を対象に、椎弓切除術群と椎弓切除術+固定術群の術後成績を3年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、優または良と評価できた割合は椎弓切除術群が71%で、椎弓切除術+固定術群が53%だった。http://1.usa.gov/pNHEa3
……椎間板ヘルニアに対する脊椎固定術の術後成績は悪いことが明らかにされているのに、なぜか脊椎外科医はやめるどころか盛んに脊椎固定術を勧めます。
■脊柱管狭窄を伴う変性辷り症患者76名を対象に、器具固定群と骨移植固定群の術後成績を2年間追跡したRCTによると、器具固定によって骨癒合率の向上は認められるものの、それが必ずしも臨床症状の改善に結びつかないことが判明。http://1.usa.gov/nfQM86
……インストゥルメンテーション手術(金属のネジとプレートを使用)によって固定力を向上させても、それが臨床転帰(治療成績)の改善に繋がらないことを明らかにした国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した研究です。
■慢性腰痛を訴える変性辷り症患者130名を対象に、器具固定群と骨移植固定群の術後成績を2年間追跡したRCTによると、骨癒合率と満足度に差はないが器具固定群は手術時間、出血量、再手術率を増大させ、深刻な神経損傷を招く危険性大。http://1.usa.gov/rd6vMx
……インストゥルメンテーション手術(ネジやプレートなどの金属を使用)には大きなリスクが伴うことを明らかにした国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した研究です。
N E W S
腰痛の原因の一つである椎間板変性症の患者に、他人の細胞に由来する細胞治療製品を注入する治療法の臨床試験(治験)を始めると、東海大学付属病院(神奈川県伊勢原市)の酒井大輔准教授らの研究グループが4月18日発表した。細胞治療製品を使った腰痛症の再生医療の治験は、国内で初めて。
椎間板変性症は背骨の間でクッションの役割を果たす椎間板がつぶれて変形し、痛みなどが生じる。現状では背骨を金具で固定するなどの治療を行っているが、根本的な治療法はない。(4/18 時事通信)
軟骨細胞が増殖して骨が長く伸びる仕組みの一端を解明したと、京都大の市村敦彦特定助教らのグループが発表した。論文は4月10日、米科学誌電子版に掲載される。グループは、生まれる直前のマウスの大腿骨を薄く削り、軟骨細胞内のカルシウムイオンを解析する手法を開発。細胞内のカルシウムイオンの濃度が不規則に変動を繰り返していることが分かった。
この変動は、細胞膜にある「Trpm7」というカルシウムイオンなどの流入を制御する遺伝子が引き起こしていたことが判明。軟骨細胞だけでTrpm7を働かないようにしたマウスは、骨の伸びが抑えられ、体重も半分程度だったという。(4/10 時事通信)
世界保健機関(WHO)は4月4日、年次報告書「世界保健統計(World Health Statistics)」を発表し、2000〜16年の16年間で世界の平均寿命が5.5歳延びたと明らかにした。一方、所得の不均衡と保健医療へのアクセスの不平等により、多くの人々の寿命は平均よりはるかに短いと警告した。
報告書によると2016年生まれの子どもの平均余命は72年と、2000年の66.5年から上昇した。WHOによると2000〜16年の16年間で、5歳未満の子どもの死亡率が大幅に減少。特にマラリア、麻疹(はしか)などの伝染病対策で進歩が見られたサハラ以南のアフリカ諸国でこの傾向が確認された。
1990年代にアフリカの広範囲で猛威を振るったエイズウイルス(HIV)とエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)のまん延予防と治療の進展も、平均寿命の伸長に貢献した。
一方でWHOは、貧困国で向上したものの、先進国と発展途上国の寿命には依然として大きな隔たりが存在すると指摘。例えばレソトと中央アフリカの平均寿命はそれぞれ52歳と53歳だが、スイスは83歳以上、日本は84歳以上となっている。また、富裕国では死者の大半を高齢者が占める一方で、貧困国では死者3人中1人近くが5歳未満の子どもという。(4/8 TMSnet)
飲酒による負傷リスクについて、性別、飲酒頻度、負傷の原因(交通事故、暴力、転倒など)によって違いがあるかを、米国・Alcohol Research GroupのCheryl J. Cherpitel氏らが分析を行った。
Alcohol and Alcoholism誌オンライン版3月号の報告。イベント後6時間以内に救急部(ED)に搬送された負傷患者1万8627例についてケース・クロスオーバー分析を行った。主な結果は以下のとおり。
・男女間での飲酒による負傷リスクは、3杯以下では同等であった(男性OR:2.74、女性OR:2.76)。
・大量飲酒における負傷リスクは、女性において男性よりも高く、3.1〜6杯(OR:0.60、CI:0.39〜0.93)および6.1〜10杯(OR:0.50、CI:0.27〜0.93)で、飲酒量の相互作用による性差(gender by volume interaction:GVI)が有意に大きかった。
・5回/月以上飲酒をしていた女性は、飲酒量に関係なく男性よりも負傷リスクが高く、5回/月未満で3杯以下の女性(OR:0.51、CI:0.28〜0.92)および6.1〜10杯の女性(OR:0.39、CI:0.18〜0.82)よりもGVIの強い関連が認められた。
・女性では、6杯未満での交通事故に関連するものを除き、男性よりも負傷リスクが高く、GVIは、3.1〜6杯でほかの原因による負傷についてのみ有意であった(OR:0.23、CI:0.09〜0.87)。
著者らは「大量飲酒の頻度に関係なく、女性は男性よりも飲酒による負傷リスク(交通事故関連を除く)が高いことが示唆された」としている。(4/4 ケアネット)
過体重や肥満の人は、朝30分程度のウォーキングをすると、血圧コントロールに有用な可能性があることが、ベイカー心臓・糖尿病研究所(オーストラリア)のMichael Wheeler氏らの研究から明らかになった。この研究では、特に女性は、朝の運動に加えて座位時間を頻繁に中断することで、さらに血圧が下がることも示された。「Hypertension」オンライン版に発表された。
Wheeler氏らは今回、座りがちな生活習慣の55〜80歳の高齢者67人(平均年齢67歳)を対象に、運動と座位時間の中断の組み合わせが血圧に及ぼす影響について調べた。参加者には(1)8時間連続して座る(対照群)(2)1時間座った後に中強度のウォーキングを30分行い、その後6.5時間座って過ごす(3)1時間座った後に中強度のウォーキングを30分行い、その後6.5時間座っている間に30分ごと3分間の軽いウォーキングを行う-という3つの実験を、6日間以上の間隔を空けてランダムな順序で行ってもらった。
その結果、男女ともに朝30分のウォーキングを行うと、運動しなかった場合に比べて、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)の平均値がいずれも低下したことが分かった。特に女性では、朝のウォーキングに加えて、その日の座っている時間を頻繁に中断するとSBP値が大きく低下することが明らかになった。一方、男性では、座位時間を中断しても、さらなる降圧効果は認められなかった。Wheeler氏は「男女ともに朝の運動後または座位時間を頻繁に中断した後にみられたSBP値の低下効果は、降圧薬を服用した場合に期待されたものに近かった」と述べている。(4/3 TMSnet)
テレビの健康番組を見る高齢女性は、そうでない女性に比べて死亡率が10%低いことが、東京大学客員研究員の佐藤豪竜氏らが実施した研究で示された。一方、高齢の男性、活字メディアやインターネットから得た健康情報については、こうした関連は見られなかったという。「Social Science & Medicine」に掲載された。
佐藤氏らは今回、2013年に実施された日本老年学的評価研究(JAGES)に参加した65歳以上の男女1万8242人(男性8544人、女性9698人)を3年間追跡したデータを用いて、メディアごとの健康情報の入手状況と死亡率との関連について調べた。参加者には、過去1カ月以内に(1)テレビのニュース番組(2)テレビの情報番組(3)新聞や一般雑誌の記事(4)健康や医療について特集した雑誌(5)行政からのお知らせ(6)インターネットといった情報源別に、健康情報を入手したか否かを尋ねた。なお、参加者は全員、要介護認定を受けていなかった。
平均3.2年間の追跡期間中に、956人が死亡していた。情報源を「テレビ番組」「新聞や雑誌などの活字メディア」「インターネット」の3タイプに分けて分析した結果、テレビ番組から健康情報を入手していた女性では、そうでない女性に比べて死亡率が10%低いことが分かった(ハザード比0.90、95%信頼区間0.83〜0.98)。一方、男性やその他のメディアに関しては、健康情報の入手と死亡率との間に有意な関連は認められなかった。(4/1 TMSnet)
兵庫県宝塚市は4月から、障害者施策などに関する市の議事録や広報誌などの公文書で「障碍(がい)」の表記を使う。市によると、常用漢字にない「碍」を公的に使う自治体は全国初。既にホームページの一部で表記を変えたほか、「碍」を入れた文書の印刷を発注するなど準備を進めている。市民への啓発も行う方針だ。これまで市は「害」に否定的な印象があるとして「障がい」と表記してきた。「妨げ」を意味する「碍」の字を広め、障害者の生活を妨げる社会的障壁への認識を促す。
具体的には4月から政策の計画書や庁内文書、チラシなどで「障碍」を使う。一部の計画書は、「碍」を使うよう業者に発注済みという。読みがなを付ける方針で、市HPには先行的に「障碍(しょうがい)者」の表記が登場。「碍」の意味を紹介し、啓発するページも設けた。過去に作った封筒やチラシなどには「障がい」の字の上に「障碍」のスタンプを押すことも考えている。
障害福祉課は2020年度から「障碍福祉課」に改める。法律用語や固有名詞は「障害」を残すが、条例や規則で可能な箇所は来年4月までに変更。職員にも表記変更を促す通知をした。ただ、方針が決まったのが今年2月で、庁内からは「準備が進んでいない」との声も聞かれる。(3/30 時事通信)
・医師 減塩について、具体的にどんなことに気をつけておられますか?
・患者 昼はカップラーメンのことが多いですが、スープは飲まないようにしています。
・医師 なるほど。気をつけておられますね。
・患者 はい(嬉しそうな顔)。
・医師 ここにカップラーメンがあります。食品の栄養成分表示にエネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物に加えて、食塩相当量が記載されるようになっています。ここです(指をさす)。
・患者 あっ、本当だ!
・医師 食塩相当量が4.8gとなっていますが、よくみるとスープが2.5g、めん・かやくが2.3gとなっています(2.5g+2.3g=4.8g)。
・患者 ということは、麺にも塩分が多く含まれているんですね。
・医師 そうですね。1日に6g以下が目標のところ、この1食で2.3gなので、ちょっと超えていますね。
・患者 なるほど。これからは麺にも気をつけたほうがいいんですね。
<ポイント>
食品栄養成分表示の見方を説明することで、麺類にも塩分が多いことに気づいてもらいます。
(坂根直樹氏:京都医療センター 臨床研究センター予防医学研究室長 出所=ケアネット)
■次号のメールマガジンは5月15日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ