エンタプライズ発信〜メールマガジン【№95】 2019. 3

2月の終わり、早咲きの桜を見に伊豆半島へ行きました。春うららを彷彿とさせる気温12℃の絶好の花見。しばし歩き疲れたところで自販機へ。常温の水・常温のお茶・常温のコーヒーが8種類もあり、消費者ニーズに歩調を合わせています。ここ数年よく言われているのが、冷たい水は身体を冷やすため常温の水がいいということ。コンビニやスーパーなどでも常温の飲み物を売っているところが多くなりました。常温の水は身体にやさしいのです。ざっと水温の特性を記すと、▽冷水(5〜15℃)運動した直後に飲むと吸収が早くなるので効果的。熱くなった身体を冷やす意味でも良いでしょう。また、冷水が胃壁を刺激して便通が良くなったり、交感神経への切り替えを促して目覚めが良くなったりするという効果もあります。▽常温の水(20〜35℃)ぬるい、蛇口から出てくる水の温度です。この温度は胃腸への負担が少ないことが一番のメリット。冷水に比べると吸収の速さは劣りますが、日常的に飲む水として好適だと言えます。▽温かい水(60〜80℃)胃腸への負担がもっとも少ない半面、吸収速度も遅くなります。しかし身体を温めることができるため、冷え性が気になる方や就寝前の1杯に最適です。恒常性でみるとヒトの免疫機能は、体温が1℃下がっただけで大きくダウンします。冷たい飲み物を飲んで身体が冷えると免疫機能も低下します。その結果、ウイルスや菌、老化を促進する物質を排除する能力が落ち、身体がダメージを受けやすくなります。免疫力をキープするためにも、常温の水を普段から取り入れるのがいいですね。自販機メーカーの調べでは、女性は全体の60.6%、男性でも46.8%の人が夏にホットドリンクを飲むという結果が出ています。これはホット缶コーヒーのニーズもあるでしょうが、アンチ極冷の健康志向が反映しているのではないかと思います。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】円熟したプロフェッショナルになるための
  バウンダリー・マネジメント・スキル
【2】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【3】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【4】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【5】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S

Information 1

オープンセミナー 「ホメオパシーを知ろう!」 大阪

ホメオパシーの啓蒙活動を推進している日本ホメオパシー医学会では、多くの方にホメオパシーについて知っていただくために、オープンセミナーを開催している。3月は大阪市内にて行われる。参加費無料。(5月は金沢および東京で開催予定)

  • 講義内容 :ホメオパシーとは/ホメオパシーの薬とは/ホメオパシーの診察とは/ホメオパシーの適応は/ホメオパシーは安全か

  • 開催日:3月21日(祝)13:00〜15:00 <参加無料>
  • 講 師:板村論子氏(MD., Ph.D., MFHom)
  • 会 場:アットビジネスセンターPREMIUM新大阪駅9階
  • 参加ご希望の方は日本ホメオパシー医学会事務局宛 E-mailで 「参加希望」とお送り下さい。info@jpsh.jp(URL:http://www.jpsh.jp

    Information 2

    「春のテキストフェア」 を開催しています。

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    4月10日(水)までの開催です。小社HPならびにFAX,電話にてご注文ください。
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    連載…2

    円熟したプロフェッショナルになるための
    バウンダリー・マネジメント・スキル

    Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

    クライアントを第一に考えた行動と発言

    このクライアントに対する概念は、セラピューティック・リレーションシップ(利益を相互が得ることの契約の意識)の本質を担うものです。「クライアントを第一に考える」とは、クライアントにとって一番有益となることを念頭に置いて(セラピストが)言動を行うことです。そのため私たちは自らのエゴや興味、しなくてはいけないこと、好き嫌いをセッションの中に持ち込まず、クライアントにとって一番有益となるよう行動します。それは同時に「お客様がいつも正しい」や何でもクライアントの言いなりになるという意味ではありません。すなわち、クライアントに私たちの能力やサービスの限界を知らせることもまた、彼らにとって大切なことです。

    またクライアント第一主義では、クライアントもどういったサービスを受けたいのかはっきり言う権利があります。私たちは勝手にクライアントがしゃべり過ぎていると決めつけて彼らに静かにするよう注意したり、彼らがもっと心地よくなるように通常のワークのパターンをあえて変えるように私たちに頼んできたことに腹を立てたりして、クライアントを支配しないほうがよいのです。もし要望内容が毒舌的、破滅的、不適切でないのであれば、クライアントは私たちに好きなだけ注文をつけていいのです。彼らは、セッションの中で私たちにどういったことをしてほしいとか、どんどん言うことができるような状態であるべきなのです。もしクライアントが要望を出してきたら、テクニックやマッサージの圧を調整して、彼らの要望に応えるべきです。もし私たちがクライアントの利益を考えての上か、自分たちの能力やトレーニングの限界のためで、その要望に応えられないときは、なぜ彼らの要望を満たすことができないかを説明する義務があります。

    ≪セラピストはクライアントについて文句を言っていました。「クライアントに服を脱いでテーブルに横になってと言った後に、私が部屋を出て行って戻ってきたら、彼女は勝手に部屋中の枕をテーブルの上に寄せ集めて、自分の首や膝やらに敷いてるのよ」。≫

    この話を聞いて、なぜセラピストは文句を言っているのだろう、と思った人がいらっしゃると思います。このクライアントの行動は、セラピストがやろうとしていたことを事前にしていてくれたかのように映るかもしれません。しかし部屋の中の備品を壊したりしない限り、クライアントは遠慮せずに自分が一番くつろげる状態(位置)になっていてもかまわないのです。
    しかし一方では、クライアントの要望に応えたくなかったり、機械的にクライアントの言うことを聞きたくなかったりする場合もあるでしょう。もしクライアントが枕を置いたことでセッションが円滑に行えなかったりする場合は、セラピストはその旨と理由をクライアントに伝え、枕の位置を変えさせてもいいのです。またもしクライアントが首の痛みでセッションを受けに来て、首だけに1時間のセッション中ずっとワークするように言ってきたら、クライアントに首の痛みは全身にある緊張が起因する場合があるので、全身マッサージを受けたほうが症状は改善しますよ、と提案してみてもいいのです。(つづく)
    (出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists, Bodyworkers,and Movement Teachers. 2nd ed. 2006)

    ★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

    老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

    * 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
    * 太田成男(日本医科大学教授)

    悪玉活性酸素を取り除く、驚くべく水素のチカラ

    [安保] それまでは活性酸素をすべて悪者として一括りしていたから、害を取り除こうとして体に必要な作用まで打ち消してしまうことがあったでしょう。その辺のことがよくわからないでやっていたわけだから、なかなかうまくいきませんよね。
    [太田] ところが今では、活性酸素ではヒドロキシルラジカルが悪者だとわかってきました。ヒドロキシルラジカルの前段階であるスーパーオキシドラジカルと過酸化水素は体に必要な成分だから取り除いてはいけないですね。
    [安保] 活性酸素にも善玉と悪玉があって、善玉は残して悪玉のみを取り除けばいい。だけど今までの抗酸化ビタミン的な発想ではそれがむずかしいわけですね。
    [太田] 悪いものだけを取って、いいものだけを残す。具体的にはスーパーオキシドラジカルと過酸化水素を壊さずに、ヒドロキシルラジカルだけに反応するものがあれば、悪玉活性酸素の害は防げるはずです。
    しかしそんなに都合の良い抗酸化物質があるのか? といろいろ探してたどりついたものが「水素」でした。

    水素は悪いところだけに効く

    [安保] なるほど。太田先生の水素研究はここにつながってくるのですね。先生によれば、水素は悪玉活性酸素にだけ反応し、善玉活性酸素には干渉しない。悪いところだけに効く。水素には不思議な力がありますね。
    [太田] 水素分子はほかの活性酸素に影響を与えずにヒドロキシルラジカルの細胞毒性だけを弱めるという研究論文が『Nature Medicine』誌に掲載されました。この論文の反響は大きく、全国ネットのニュース番組や新聞各紙で報道されました。その内容は「水素によって活性酸素が除去され、さまざまな病気の治療や予防への活用が期待できる」というものでした。
    悪いところだけに効くという水素の作用は、さまざまな実験を通して明らかになってきています。例えば肥満マウスに水素を与えると、エネルギー代謝が上がって肥満を解消できます。そこで正常なマウスに水素を与えてみましたが、エネルギー代謝は上がらず何の変化も認められませんでした。
    体に異常が起きている場所には、やはり活性酸素がたくさん発生します。するとその部分の脂質に変化が起きて水素が介入します。活性酸素が悪さをするところに水素が入ってくるという感じだから、活性酸素が生じていない場所では効果がない。その機構は6段階ほどあって、一つひとつの代謝経路がだんだんわかってきました。
    [安保] キノコのβグルカンとか乳酸とか、免疫力を上げるという物質の研究を頼まれることがあるのですが、実際に人体で効果があるかどうかを調べる際には、病気のある人で試さないと効果が出ないことがほとんどですね。健康な人をそれ以上健康にするのは無理なんです。水素の働きはそれと似ている。
    [太田] まさにその話と同じで、病人や高齢者ほど体の変化を実感できる傾向があります。若くて健康な人は水素を摂取しても何の変化も感じないことが多いですね。
    [安保] 若くて健康な人は、ミトコンドリアのエネルギー生成がうまくいっているから活性酸素もあまり生じない。水素が悪玉の活性酸素にだけ介入しているのならば、何も感じないのは当たり前の反応ですね。


    連載vol.53

    エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

    <小社編集部編>

    生体マトリックスの構造と振動

    今号では本コラムの核心に近づく。生体マトリックスの構造と振動を理解することは、生物学や医学において極めて重要だ。神経系や循環系はたしかに全身に伸びているが、どちらの系とも接していない細胞がある。またこれらの系は、情報伝達としては比較的遅い部類に入る。

    生体が全体として機能するには、どの細胞にも、そして細胞の内部にも入り込めるシステムが必要となる。生体の機能が100%発揮されるためには、自然界で可能な限りのスピードでエネルギーと情報を伝達することにより、あらゆる部位の活動や反応などを統合しなければならない。その生体全体の活動を統合するシステムが、生体マトリックスなのである。
    従来の結合組織に関する研究では、力学的特性ばかりが問題とされてきたが、今後の研究においては、生体マトリックス全体の構造やエネルギーおよび情報伝達の仕組みが主要なテーマになるだろう。

    神経系と細胞外基質の相互関係について注目すべき仮説を打ち立てた科学者がロバート・ベッカーである。ベッカーは何年にもわたって神経線維を含む「神経周囲細胞」について研究してきた結果、この細胞が構成する連続体に直流電流が発生することを明らかにした。この電流は神経系の活動や外傷治癒のコントロールに重要な役割を果たしている。生体分子には半導体的性質があるとセント・ジョージの仮説により裏付けられているが、ベッカーはその仮説を組織レベルで証明した数少ない生理学者の1人である。

    <トラウマとの関連性>
    「結合組織には過去のトラウマやトラウマに対する適応が刻み込まれている」と言い出したのはアイダ・ロルフである。ロルフは「重力」の生理学的および臨床的意義に注目して、ほとんどの人がふだんは気にも留めない重力が、人間の生活に大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。ロルフによると、身体的トラウマに対する生体の反応様式は、感情や慢性的な心理状態に対する反応にも当てはまるという。

    ロルフの目に映った人間の体の形には、重力の作用の歴史が現れている。熟練のセラピストであるロルフは、感覚の優れた手で手際よく「歴史」を消していく。すると結合組織は本来のバランスと柔軟性を取り戻すのである。この治療法によって、多くの人々が生命への愛着を改めて認識し、生きる力を取り戻していった。ロルフが考案した治療法は「ロルフィング」という名称で広く知られるようになったのである。
    (出典『エネルギー療法と潜在能力』小社刊)


    連載エッセイ 63☆

    “こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

    ・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


    患者への「質問力」 〜隠れたニーズを読み解く洞察力〜

    過去の記憶(プチ・トラウマ)が、現在の症状につながる

    トラウマ(心的外傷)というと、命が脅かされるような出来事(戦争、事故、虐待など)によって、強い精神的衝撃を受けることが原因とされます。当院で慢性症状の本質的な原因を探求していると、一般的に知られているようなトラウマ(心的外傷)と言わないまでも、「プチ・トラウマ」とも言える慢性症状に関係する過去の「誤作動記憶」の影響が多く存在していることが分かります。プチ・トラウマの特徴として、理性的に処理して意識的にはほとんど気にしていなくても、無意識的に心の奥に保存されている記憶と言えるケースがほとんどです。

    過去に起こった記憶が無意識に思い出されて、それが現実に起こっているかのような感覚があるときに「フラッシュバック」という心理用語で表現されます。フラッシュバックは「恐怖」や「怒り」などの感情や身体的症状など、感覚の記憶として再現されます。そして、その記憶はまともに意識に上らないため、フラッシュバック性の記憶は鮮明に再現されますが、言語化するのが困難な場合が多いようです。

    このフラッシュバックは、強いトラウマ体験(心的外傷)を受けた場合の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の特徴的な症状の一つとして知られていますが、冒頭で述べたように長年の心身条件反射療法の臨床研究では、強いトラウマ体験でなくても、過去の記憶がフラッシュバックして、身体的症状を引き起こすケースに多く遭遇します。検査で示された過去の記憶を引き出して調整を行うと、施術直後にその患者さんが訴えていた症状が消失することから、過去の記憶が関係していたことが分かります。

    施術後に「そういえば、そのこと(過去の記憶)をふと思い出しました」とフィードバックしてくれる患者さんも少なくはありません。症例によっては、10年〜20年以上も前の記憶でも、検査を進めるとほとんどのケースで、症状に関係する誤作動記憶にたどり着き、調整を行うと症状の改善につながります。時系列の検査をLPRT(言語生体反応検査法)で進めると、ピンポイントでその誤作動記憶にたどり着き、患者さんはもちろん、術者もその検査の正確性に驚かされます。その検査の結果も慣れてくると当たり前になりますが、それでも、抱えている患者さんの問題はそれぞれに異なるので、その症状が改善されるときの喜びはいつも新鮮です。

    もしも、「プチ・トラウマ」が慢性症状の原因になっている場合、タイムカプセルのように保存されていた内容を引き出して、その過去の記憶に戻って調整を行います。その内容が明確に表現できる場合もありますが、場面だけで言葉に表現できない場合もあります。内容が明確に言語化されなければ調整ができないわけではないので、誤作動反応を示している場面だけで調整を行います。慢性症状に関係する誤作動記憶は複数存在することが多いのですが、調整後には多くの症例で症状の改善を確認することできます。隠れたプチ・トラウマを見つけて慢性症状を解消していきましょう。

    ◆連載16◆

    『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く

    孫 維良(東京中医学研究所所長)

    「痛みをやわらげる、ひとりあんま気功・実践編2」
    すぐに血圧を下げる

    軽く耳やツボを刺激するだけで、目に見えて血圧が下がる、即効性のあるあんま気功法を紹介します。この気功は、降圧溝と呼ばれる耳の反応点(ツボのように刺激すると症状を改善できるところ)および首にある橋弓(きょうきゅう)と呼ばれるツボを刺激します。

    耳の裏側には、外縁の真ん中に縦にはしる溝のようなへこみがあります。ここが降圧溝です。橋弓は首の側面、左右の耳の後ろに出っ張った骨から鎖骨に向かって垂直に下した線上のツボです。この2か所の治療点を別々に刺激してもいいのですが、一つの動作で同時に刺激できる一石二鳥の方法が、これから説明するあんま気功法です。

    ①楽な姿勢で椅子に座り、体から余分な力を抜いて、心身ともにリラックスします。目を軽く閉じ、静かに腹式呼吸を繰り返しながら両手の平をこすり合わせます。両手が温かくなるまで続けてください。
    ②両手の人差し指と中指をハサミのようにして、左右の耳をはさみます(人差し指が耳の裏側、中指が耳の表側につきます)はさんだとき、人差し指がそれぞれ降圧溝にあたるようにします。そして手の平はぴったり顎につけておきます。
    この状態から、顎の下で両手が合わさるまで、手を軽く撫でおろしていきます。人差し指によって耳の降圧溝が上から下まで刺激を受けると同時に、親指によって首の橋弓が刺激を受けることになります。撫でおろすとき、手の動きに合わせて、意識を耳から首へと意識しながら、上→下へ36回繰り返します。


    根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(69)

    長谷川淳史(TMSジャパン代表)
    ***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****

    腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

    ■慢性腰痛患者109名を対象に椎間関節ブロックの有効性を3ヶ月間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、椎間関節ブロック群、椎間関節周囲ブロック群、プラシーボ(生理食塩水)群の改善率に差は認められないことから心理社会的因子が影響と結論。

    http://1.usa.gov/pFTonQ

    ……慢性腰痛に対する椎間関節ブロックの効果は、自然治癒と心理社会的因子によるものだということです。

    ■坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者60名を対象に、ラブ法群と顕微鏡下髄核摘出術群の術後成績を1年間追跡したRCTによると、術中の出血量、合併症、入院日数、欠勤日数、改善率など、いずれも両群の間に差は認められない。

    http://1.usa.gov/p43qmF

    ……新たに開発された術式なら従来の成績を凌駕するだろうと思いきや、脊椎固定術の例でも分かるように必ずしもそうとは限りません。

    ■坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者141名を対象に、キモパパイン注入群と経皮的髄核摘出術群の術後成績を1年間追跡したRCTによると、6ヶ月後と1年後のどの時点においても改善率はキモパパイン注入群の方が優れていた。

    http://1.usa.gov/n4KLZQ

    ……元プロゴルファーの岡本綾子さんが受けたことで知られるキモパパイン(タンパク分解酵素)注入療法は、日本でよく行なわれている経皮的髄核摘出術より有効ですが日本では認可されていません。ただしラブ法より効果がないことに注意してください。

    ■坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者126名を対象に、保存療法群とラブ法群の治療成績を10年間追跡したRCTによると、1年目まではラブ法群が優れていたが4年目以降は両群間に差はなくなっていた。長期成績は両群とも同じ。

    http://1.usa.gov/pbjVPJ

    ……椎間板ヘルニアに対する手術でもっとも優れているラブ法でさえ、長期成績は保存療法と変わりありません。レッドフラッグ(危険信号)のない腰下肢痛はグリーンライト(自己限定性疾患)だからです。

    ■椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を分析した結果次の6点が判明した。(1)椎間板ヘルニアが確認された2ヶ月間の保存療法に反応しない坐骨神経痛患者はそのまま保存療法を続けるよりラブ法を実施した方が早く改善する。

    http://1.usa.gov/q1HPOA

    ……腰痛診療ガイドラインの勧告に従った保存療法の場合は2ヶ月ではなくて2年の猶予期間があります。

    ■(2)4年〜10年の長期成績という観点から見るとラブ法と保存療法の効果に差は認められない。(3)顕微鏡下髄核摘出術と経皮的髄核摘出術が腰痛に効果があるという証拠はない。(4)経皮的髄核摘出術はラブ法より再手術率が高い。

    http://1.usa.gov/q1HPOA

    ……要するに椎間板ヘルニアは日にち薬が有効だということです。最近の腰痛診療ガイドラインでは手術はガイドラインに従った保存療法を2年間行なっても改善しないか、激しい痛みが続く患者に限るべきと勧告しています。

     N  E  W  S

    NEWS ■ 週に3個以上の卵 → 心疾患のリスク増大か…米研究

    1週間に卵を3〜4個食べる人や、食事から1日当たり300㎎のコレステロールを摂取する人は、そうでない人に比べて心疾患や早死にのリスクが高い――。そんな調査結果がこのほど医学誌JAMAに発表された。
    論文を執筆した米ノースウエスタン大学のビクター・ゾン氏によると、卵の黄身は特にコレステロール値が高く、卵1個には大きなもので約186㎎のコレステロールが含まれる。研究チームは、2万9000人あまりについて平均で17年半にわたって追跡調査した米国内の6研究グループのデータを詳しく調べた。
    その結果、心血管系の疾患を発症していたのは計5400人で、うち1302人は脳卒中(死者を含む)、1897人は心不全(同)を発症し、113人はそのほかの心疾患のため死亡していた。それ以外の原因で死亡した患者は6132人だった。卵は1日当たりの消費量が半個増えるごとに、心血管系疾患のリスクは1.1%上昇し、早死にリスクは1.9%上昇するとしている。
    今回の研究にはかかわっていないコロラド大学医学校のロバート・エッケル氏によると、卵の消費や食事からのコレステロール摂取と、心血管系疾患との関係は長年の論議の的になっているが、最近の研究では重要性は薄いと考えられていた。しかし今回の研究は従来の研究に比べてはるかに包括性が高いとエッケル氏は指摘、「心臓にいい食生活に対し、卵の消費やコレステロール摂取が及ぼす悪影響を考えると、コレステロールの多い食品の摂取を制限することの重要性を見過ごすことはできない」と解説している。(3/18 CNN)

    NEWS ■ 重度の歯周病はCOPDの発症リスクが3.5倍に

    九州大学は3月14日、歯周病と慢性閉塞性肺疾患(COPD)発症との関係を明らかにしたと発表した。この研究は久山町研究の一環として、同大歯学研究院口腔予防医学分野の竹内研時助教(当時)と山下喜久教授らの研究グループ、同大医学研究院呼吸器内科学分野の松元幸一郎准教授らとの共同研究によるもの。研究成果は国際科学誌「Journal of Dental Research」に掲載された。
    今回研究グループは、近年全身の健康を脅かす病気として知られる「歯周病」に着目。福岡県久山町の60歳以上成人900名の追跡調査データを分析し、歯周病とCOPD発症との関連を検討した。
    その結果、喫煙などの影響を加味した上でも、歯茎が健康な人や歯周病が軽度の人に比べ、歯周病が重度な人はCOPDを5年以内に発症する割合が3.5倍も高く、COPD患者の約4人に1人は中等度以上の歯周病が原因である可能性が示された。このことは、歯周病の予防のために普段から自宅や歯科医院で口内環境を健康に保つことはもちろん、歯周病になっても適切な治療を受けて重症化を未然に防ぐことで、COPD発症のリスクが下がる可能性を示している。COPDにならないために、禁煙だけでなく、口の健康もしっかりと守っていくことが今後重要になると考えられると研究グループは述べている。(3/18 QLifePro)

    NEWS ■ 「ハゲタカジャーナル」には投稿控えて。日本医学会

    掲載料を目的にずさんな審査で論文を掲載するインターネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、国内の医療系129学会(延べ約103万人)が加盟する日本医学会が、所属する医師や研究者にハゲタカ誌への論文投稿を控えるよう注意喚起した。ハゲタカ誌の増加は「学術誌への信頼を低下させる」と指摘している。国内の大規模学会によるハゲタカ誌への注意喚起は初めて。
    3月8日付で注意喚起の文書を学会のホームページに掲載した。ハゲタカ誌を「悪徳雑誌」と表現し、「著者から徴収する掲載料収入のみを目的とし、論文の質の管理が粗雑」と批判。論文投稿先を慎重に選ぶよう呼びかけた。研究室の主宰者にも、ハゲタカ誌の情報を入手して各研究者を指導するよう求めた。研究倫理などに関し、同学会が加盟全学会に注意喚起をするのは異例という。
    ハゲタカ誌を利用した場合の悪影響として、想定より高額な掲載料を請求される▽論文掲載で著者や所属機関が否定的な印象を持たれる▽怪しい雑誌と気付いても論文を取り下げられない――などと列挙。ハゲタカ誌と気付かず投稿する事態を避けるため、審査内容や編集委員の確認など点検項目を例示した。「ホワイトリスト」と呼ばれる健全な学術誌をまとめた海外のサイトも紹介している。(3/13 毎日新聞)

    NEWS ■ 夜に運動しても睡眠には影響しない?

    午前中や昼間に運動できない人は、夜にジムで汗を流しても睡眠に悪影響はないようだ。チャールズ・スタート大学(オーストラリア)のPenelope Larsen氏らが「Experimental Physiology」オンライン版に発表した研究によると、夜に30分間の高強度運動をしても睡眠に影響はなかったほか、空腹感が軽減する可能性も示されたという。
    Larsen氏らは今回、11人の中年男性を対象に、朝(午前6〜7時)、午後(午後2〜4時)、夜(午後7〜9時)のいずれかの時間帯に、30分間の自転車による高強度インターバルトレーニングを実施してもらい、その後の睡眠と空腹感や食欲を調整するホルモンに与える影響を調べた。運動は、高強度運動を1分間行い、その後4分間休むというサイクルを6サイクル繰り返すというものだった。なお、参加者は研究が始まる前は座りがちな生活を送っていた。
    その結果、睡眠時間は午後に運動した場合が最も長く、夜の運動が続き、朝の運動が最も短かったが、それぞれの差はわずかであることが分かった。夜に運動しても寝付きが悪くなることはなく、運動した時間帯別の入眠までの時間の差は1〜2分程度に過ぎなかった。
    この研究には関与していない二人の専門家は、時間帯にかかわらず、運動すること自体が重要だと強調する。米クイニピアック大学でアスレチック・トレーニングとスポーツ医学を専門とするDana Angelo White氏は「夜の運動は興奮し過ぎて眠れなくなるのではと不安に思う人もいるかもしれないが、習慣的に運動する方が良く眠れることは明らかだ」と述べ、「重要なのは、1日のうちに運動する時間を確保することだ」と付け加えている。(3/8 tms-net)

    NEWS ■ 週末の「寝だめ」は睡眠負債の解消にはならない

    睡眠不足が続くと健康への悪影響が借金のように積み重なる「睡眠負債」を抱えてしまい、身体や精神に不調を来すと考えられている。平日は忙しくて十分な睡眠が取れなくても、週末に寝だめをすれば睡眠負債は解消されるのだろうか? 今回、米コロラド大学教授のKenneth Wright氏らが行った研究から、週末に寝だめしても代謝への悪影響は解消できず、かえって悪い結果になる可能性があることが分かった。詳細は「Current Biology」オンライン版に掲載された。
    この研究は、36人の健康な若年成人(平均年齢25.5歳)を対象としたもの。参加者を睡眠パターンで3つの群にランダムに割り付けて、研究室で9日間観察した。一つ目のグループでは、対照群として毎晩9時間までの睡眠を取ってもらい、2番目のグループでは睡眠時間を5時間に制限してもらった。3番目のグループでは、まず5日間にわたり睡眠時間を5時間に制限してもらった後、週末には好きなだけ遅くまで寝てもらい、再び、睡眠時間を5時間に戻して2日間過ごしてもらった。なお、3番目のグループでは、研究開始時と比べて週末に約1時間多い睡眠を取っていた。
    その結果、睡眠不足だった2つのグループでは、血糖値の調節に働くインスリンの感受性が低下し(インスリン抵抗性が高まり)、夕食後のエネルギー摂取量と体重が増えていた。
    また、週末に睡眠時間を多く取ると夕食後のエネルギー摂取量は減少したが、再び5時間睡眠に戻るとエネルギー摂取量は増え、インスリン感受性が低下した状態が続いていた。さらに、このグループでは、特に肝臓と筋肉のインスリン抵抗性が高まっていたが、週末に寝だめをしなかったグループではこうした変化は認められなかった。(3/6 tms-net)

    NEWS ■ たかが便秘、されど便秘。選択肢広がる治療薬

    腹痛や腹部膨満感で生活の質(QOL)を低下させる便秘。女性や高齢者に多く、国内で便秘に悩む人は1000万人以上と増加の一途をたどっている。鳥居内科クリニック(東京都世田谷区)の鳥居明院長は「便秘の対処には食事や運動、ストレスの軽減に加えて、治療薬をうまく使いこなすことがコツです」と話す。
    便秘の原因となる病気があれば、その治療が優先されるが、鳥居院長は「便秘が起こっている状態を理解して、生活環境や習慣を改善することが大切です」と説明する。
    生活習慣を見直しても十分改善しない場合には、薬物療法を行う。長年、酸化マグネシウムや刺激性下剤のセンナなどが主に使われてきたが、近年、従来とは作用の仕方が異なり、エビデンスレベルの高い新薬が登場している。
    2012年から使用できるようになったルビプロストンは32年ぶりに発売された慢性便秘症に対する新薬で、小腸に働きかけて便を軟らかくして排便を促す作用がある。17年には、腸から水分を分泌させる作用と腸の痛みを和らげる作用を持つリナクロチドが便秘型過敏性腸症候群に対して発売された。さらに18年4月には、水分分泌と消化管運動の促進により自然な排便を促すエロビキシバットが慢性便秘症に対して発売されたばかり。
    便秘薬を使い過ぎると依存性が高くなると敬遠する人もいる。しかし、鳥居院長は「それを怖がるより、症状に合った薬を適量使って、完全な排便を目指すことが大切です」とアドバイスする。(3/6 時事メディカル)

    NEWS ■ 楽観主義は痛みを軽減する? 米研究

    慢性疼痛に対処するには、楽観的に物事を捉えることが重要かもしれない。米ミシガン大学アナーバー校のAfton Hassett氏らの研究から、約2万1000人の退役軍人のうち、海外に派兵
    される前から気持ちが前向きだった人では、派兵された後に新たな背部痛や関節痛、頻繁な頭痛などの痛みを経験する頻度が低かったことが明らかになった。この研究結果は「JAMA Network Open」オンライン版に発表された。
    米陸軍のデータを用いたこの研究では、2010年2月〜2014年8月にアフガニスタンまたはイラクに派遣された米軍兵士2万734人(平均年齢29.06歳、男性87.8%)を対象に、派遣前後の心理的な健康度を評価した。
    その結果、米軍兵士の37.3%が、派兵されて以降に1カ所以上の身体の部位で新たな疼痛を経験したと報告した。新たな疼痛が起こった部位の内訳は、背部痛が25.3%、関節痛が23.1%、頻繁な頭痛が12.1%だった。
    このほか、今回の研究からは、ある程度の楽観主義でも、海外派遣後の痛みの発生が抑えられることが明らかになった。このことは、完全な楽観主義者ではなくても、ある程度、楽観的な思考の持ち主であればメリットはあることを示している。
    米国疼痛医学会会長のJianguo Cheng氏は「楽観的に物事を捉えることは、慢性疼痛に対処する上で有効な手段になりうるだろう。このことは、精神状態が、身体的な健康にも影響することを改めて明確に示したものだ」と説明している。また「楽観的に考えるトレーニングを通して、ストレスやトラウマになるような出来事に備えることもできる。さらに、既に慢性疼痛に苦しんでいる人であっても、ポジティブな思考法を身に付ける認知行動療法によって疼痛を緩和できる可能性がある」としている。(3/1 tms-net)

    NEWS ■ 中高年の歩数にポケモンGOが影響

    『Pokemon GO(ポケモンGO)』は、位置情報機能を利用し、現実世界のさまざまな場所でポケモンを捕まえて楽しむ、スマートフォン向けゲームアプリである。2016年夏の発売以降、いまだに根強い人気のあるこのゲームの意外な効果が、東京大学の樋野公宏氏らの研究で明らかになった。
    現在、スマートフォンは健康アウトカム改善ツールとしての役割が期待され、とくに身体活動(PA)を増加させる可能性への関心が寄せられている。ポケモンGOに関するいくつかの研究ではゲーム発売前後の歩数が比較されているが、試験期間が短く、若者だけが対象となっている。今回、研究者らは、ポケモンGOの発売前後における、中高年の利用者と非利用者の歩数の差を確認し、歩数は発売後7ヵ月までの期間で多いことを明らかにした。Journal of Medical Internet Research誌2月号の報告。
    対象は40歳以上の利用者(46例)と非利用者(184例)で、性別、年齢、およびPAレベルをマッチさせた。参加者は、無作為に送られたアンケートに答えた横浜市民で、市から無料の歩数計が与えられた。また、プレイ状況はアンケートを通じて確認し、プレイ状況によるポケモンGO発売前後の歩数変化は、二元配置反復測定分散分析(Two Way Repeated Measures ANOVA)で調査した。主な結果は以下のとおり。
    ・利用者と非利用者の平均年齢±SDは、それぞれ56.5±9.9歳、57.3±9.6歳だった。
    ・利用者と非利用者のベースラインの平均歩数±SDは、それぞれ7641.8±2754.5歩、7903.3±2674.7歩だった。
    ・両側検定によると、ベースラインの歩数には、年齢で有意差はなかった。
    ・すべての対象を分析したところ、プレイ状況と時間による相互作用は、発売後8ヵ月のうち3ヵ月間で有意だった。
    ・サブグループ解析の結果、相互作用はそれぞれ有意(男性:3ヵ月間、55〜64歳のグループ:7ヵ月間、労働者:2ヵ月間、PAレベルが活発なグループ:4ヵ月間、主観的に健康な参加者:2ヵ月間)で、利用者は55歳未満の男性、労働者、活動的、そして主観的に健康である可能性がより高かった。
    ・ほかのサブグループで相互作用が有意であったのは、たった1ヵ月間だった。
    ・利用者群は冬季の間でも歩数を維持したが、非利用者では歩数は減少した。
    (2/28 ケアネット)

    NEWS ■ 病院や施設でセラピードッグの派遣広がる

    2017年に開業した「デイサービスワンケア常盤平」(千葉県)。2階建ての一軒家で、要介護認定を受けた10人のお年寄りが体の機能回復のため体操やレクリエーションなどをして過ごす。一番の楽しみは、ラブラドルレトリバーの「ハニー」と触れ合うことだ。
    朝、利用者が通ってくると真っ先に出迎える。なでられるとうれしそうにしっぽを振る。お座りやちんちんをしたり、一緒に散歩したりとまるでペットだ。ハニーはほえたりかんだりせず、飛びつきもしない。散歩では利用者におとなしく従うという。
    社長の遠藤正憲さんによると、セラピードッグの公的な資格は定められていない。ハニーは2年間の盲導犬の訓練を受けたが、他の犬が苦手で盲導犬になれなかった。その能力を生かそうと中部盲導犬協会(名古屋市)から借り受け、昨年6月から常駐させているという。「人に危害を加えることはないので常駐させても安心」と話す。
    盲導犬の訓練を受けたセラピードッグは国内に3頭だけで、遠藤さんの会社が松戸市内で運営する別の施設にも1頭いるという。「ハニーがいるからみんな喜んで通って来る。表情のなかった人が笑うようになり、ご家族が驚いたこともある」。利用者が何事にも積極的になり、認知症の予防や回復にもつながっているという。
    県内にはセラピードッグを派遣する団体などもいくつかある。その一つ、千葉市のNPO法人「アニマルセラピーwithワン」は登録している30頭ほどを首都圏の老人ホームやグループホームなどに派遣している。事業を始めた15年には10回程度だった訪問依頼が、昨年は県内外で計180回ほどになったという。
    病院からの依頼も増え、17年からは同県山武市にある「さんむ医療センターかんわケア病棟」を年に数回訪れている。セラピードッグとの触れ合いでがん患者が明るくなり、普段はしゃべらない患者もセラピードッグやスタッフには話しかけてくるという。(2/28 朝日新聞)


    ■次号のメールマガジンは4月15日ごろの発行です。
    (編集人:北島憲二)


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