エンタプライズ発信〜メールマガジン【№90】 2018.10
前号の本欄でロコモティブシンドロームへの対策は下半身の強化にあると記しましたが、車いすに乗りながらリハビリができる世界初の、足でこぐ車いすが開発されました。手で動力を得る車いすと違い、自転車のようにペダルがついた「足こぎ車いす」です。ペダルはわずかな力で進み、左右どちらかの足を動かすことができれば、もう片方の足が反射的に動く。身体にマヒなどがある人が、この動作を続けることによって足を動かすためのリハビリになるというのです。足が思うように動かせないから車いすを使うのに、ペダルをどうやってこぐの? そう感じた方も多いのではないかと思います。私たち人間には、脳や脊髄の中に歩行機能の神経回路があります。何かしらの疾患が原因で歩行に障害をもつ人は、この神経回路が十全に動かなくなっています。しかし、足こぎ車いすに乗ってペダルをこぐことによって、脊髄の「原始的歩行中枢」が刺激され、左右交互に足を動かすための反射的な指令が出るためだとしています。つまり、刺激や神経反射などによって、ふだんは動かない足が動くのであろうと考えられています。機能学的には脊髄内の反射弓(反射の神経回路)や歩行などのリズム運動を発生させる脊髄の神経回路網を含む中枢性神経回路網が、ペダルをこぐ動作に関与している可能性が大きいと考えられます。この車いすは、宮城県仙台市の医療・介護器具メーカーがこの10月、東京ビッグサイトで開催された「国際福祉機器展」に出品しました。すでに一部の医療・介護の現場で、脊髄損傷者をはじめ、脳性麻痺、二分脊椎症、脳梗塞での片足麻痺、四肢体幹麻痺、パーキンソン病など、様々な障害を持つ人が実用していると言います。どちらかの足が少しでも動かせれば、自分の両足でこげる可能性がある。体を動かさないとリハビリは有用とならないので、この車いすがあれば積極的に外に出て行って体を動かすきっかけになり、個々のQOLは格段に上がるのではないかと想像する編集子です。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S
Information 1
日本統合医療学会の部会の一つ「統合医療女性の会」が、専門医の監修のもと『カラダみつめる手帳』を上梓しました。
同部会は医師、歯科医師、看護師など医療の専門家が中心となって女性の健康情報を発信する主旨で創設されました。このたびの出版は女性特有の心身の変化に気づいたら、この手帳に収録された95の症状と対策を知り、日常的に健康と向き合ってほしいとの願いで制作されました。148×105mmのポケットサイズで150頁、和風の意匠に凝ったブックデザインに仕上がっています。
定価1,000円+税。発行:BIBLIOBAGA社 販売:産学社 tel 042-735-1193
Information 2
日本カイロプラクティック科学学会はカイロプラクティックを医療(ヘルスケア)として科学的側面から検証し、安全性と有効性のエビデンス(科学的)評価を行うカイロプラクティック専門研究会です。今年、臨床カイロプラクティック学会が日本カイロプラクティック科学学会(JSCS)へ名称変更し、千葉の幕張メッセ国際会議場にてスポーツとカイロプラクティックをテーマに開催します。大会の概要は以下のとおり。
- 日時:11月11 日(日)10時00分〜17時00分、
12日(月)9時30分〜16時00分 - テーマ:「スポーツとカイロプラクティック」
- 会場:幕張メッセ国際会議場 102 & 103 (千葉市美浜区中瀬 2-1)
- 招待講演:マーティン カマラ Martin Camara DC
(フィリピンオリンピック委員会医療部長) - 主催:日本カイロプラクティック科学学会、一般社団法人日本カイロプラクターズ協会
- 問合せ:大会事務局:電話 03-3578-9390 E-mail : rcg2018@jac-chiro.org
Information 3
小社とゆかりの深い元国際腰椎学会会長にして前福島県立医科大学理事長兼学長の菊地臣一先生が、本メールマガジンのコラムニスト・長谷川淳史先生が主宰するTMSジャパンに招かれ講演することになりました。テーマは「EBMが明らかにしたNBMの重要性―腰痛診療を通じて―」で、直接キクチイズムを学びたい方、また世界の頂点を極めた脊椎外科医から薫陶を受けたい方は絶好の機会です。
- 【講 師】 菊地臣一MD(福島県立医科大学常任顧問兼ふくしま国際医療科学センター常勤参与)
- 【日 時】 12月16日(日) 14:00〜16:00を予定(13:30開場)
- 【会 場】 TKP品川カンファレンスセンター4F バンケットルーム4D
東京都港区高輪3‐16‐33 京急第10ビル
(品川駅高輪口より徒歩1分 MAP) - 【受講料】 一般=12,000円 TMSジャパン会員=10,000円
学生・介護職・シングルマザー=10,000円
ペア割(2名様)=20,000円
※早割=各1,000円引き(10月16日締切) - 【最終締切】 12月9日(ただし定員になり次第終了)
- 【詳 細】 TMSジャパン
- 【お申し込み】 「12月の特別講演会」と明記の上、メールフォームからどうぞ。
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老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)
脂肪がたまると食欲が増す悪循環
[太田] 生物の歴史を見ると、いつでもエサがある状態というのはここ最近の人間に限られた話です。自然界の生物はいつ飢えるかわからないから、体内のエネルギーが無駄にならないように効率よく食物をエネルギーに変換しようとするシステムを発達させてきました。
逆に食物からエネルギーをとりすぎてしまった場合どうするかという仕組みはありません。飽食という状態はこれまでの自然界には存在しなかったから、生物にとって未経験の領域ですね。脂肪を蓄え過ぎた場合にそれを解消するシステムがないまま、人間は文明を進化させて飽食の時代を迎えてしまったわけです。
生物の進化ではダメな部分を良くするというフィードバック作用が働くものですが、脂肪代謝についてはそのようなフィードバックがありません。むしろ脂肪がたまるとさらに食欲が出てメタボになってしまうという逆の方向に向かってしまうわけです。
[安保] 本来は食べ過ぎたらむかむかしたり、消化器官に負担がかかってある程度セーブしようとする作用はあると思います。ところがそのセーブがうまくかからない最大の原因はストレスだと思います。すごい肥満になってしまった人に「いつごろから肥満になったの?」と聞くと、すごくつらい経験をしたとかの原因があるわけです。体の声をストレスが聞こえなくしているんですね。
消化器の活動はリラックスの副交感神経支配なので、ストレス解消にはもってこいなわけです。一番手っ取り早いストレス解消法は食べることなんだね。だから何の理由もなくメタボにはなっていませんね。やはり忙しいとか、頑張りすぎてるとか、何かつらいことがあるんですよ。
かといって、やみくもに「やせろ、やせろ」というのは危険だね。必要なことは、ガツガツ食べざるを得ない状況になぜ陥ったのかを知ることです。そしてそこから逃れることの方が大切です。
[太田] ストレスの原因を突き止めて、その状態から脱却することですね。
太り過ぎがやせ過ぎに変わる65歳に注意
[安保] 数年前でしたけど、三重県伊勢市の公務員がダイエット中に死亡したことがあったでしょう。
[太田] テレビでやっていた「メタボ侍」ですね。伊勢市の7人の公務員がメタボ対策で減量に挑戦するという内容で、そのうちの1人がジョギング中に死亡したというものですよね。
[安保] この事件はメタボになる原因をはき違えたために起こった悲劇と言えるでしょう。伊勢市の職員がなぜメタボになったかと言えば、仕事が忙しくストレスがたまりやすいという状況が一番の原因と考えられます。ところがこの番組では、メタボの本質をまったく理解しようとせず、食事制限と運動だけでやせさせようとしていました。
職員たちがたくさん食べてメタボになったのには理由があります。好きなものをたくさん食べてストレスを解消することで、体型的にはメタボでも生きていくためのバランスがとれていたのです。メタボ体型はストレスで悲鳴を上げていた体を守ろうとする生命維持のための反応なんですね。だから一番必要なのは忙しい職場環境などストレスとなる原因を取り除くことでした。体の声を無視して無理なダイエットを行ったから生命維持のバランスが崩れてしまったんだね。
[太田] この企画は途中で中止になりましたが、たしかに大きな無理がありますよね。仮にダイエットが成功して少しやせたとしても、すぐにリバウンドしていたでしょう。ダイエットを行うにしても、カロリー制限などは年齢も考慮すべきですね。メタボで糖尿病などになりやすいのは40-50代です。やせすぎて死にやすくなるのは70代が多い。60代で自然にコレステロール値が下がってくるので、65歳ぐらいを境に考え方を変えないとだめですね。65歳以下の場合は食べ過ぎによる生活習慣病に注意し、それ以上の年代は逆にやせ過ぎで筋肉が衰えるのを防ぐために栄養をしっかりとった方がいいですね。
(次号から水素水と免疫力をテーマに話を進めてまいります)
連載vol.48
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
精神的修行
常識では説明のつかない感覚は、誰もが特別な環境に置かれたときに到達する一つの境地での意識と関係があるらしい。このことは意識や認知能力、もしくは生命そのものについての何事かを物語っている。
武道や座禅といった自己の内面と向き合う修行では、無心になって己の限界に挑むことが推奨され、その修行の結果、人並み外れた感覚や動きが身につく。武道の師範は、たとえば背後からの不意打ちのような「見えない」刺激に瞬時かつ正確に反応することができる。この現象は通常の神経学的な認識よりも先に、感覚や動作が生じることを示しており、いわゆる「秘伝書」にはその奥義が詳しく書かれているのである。生命のしくみに迫ろうとしている私たちにとっては、この現象も一つのヒントになるはずだ。
古代仏教の経典である『ゾクチェン』には、「時間の影響を受けない原始的な認知能力」という概念がある。生物には「心」の作用をほとんどあるいはまったく受けない素朴な反応を示す力がある、という意味らしい。この概念は時間の多元性を示唆するチベット仏教の「イェーシェー(純粋意識)」が現代語に翻訳されて初めて明らかになったのだが、この古代思想と現代科学の融合は、「第3の悟り」とも呼ばれている。
さて、結合組織のエネルギー特性が明らかになるにつれ、「時間の影響を受けない原始的な認識能力」「宇宙の意識」「光明」といった古代仏教の概念が、科学的な理論によって裏づけられつつある。古代の経典を現代語に翻訳したのはハーバード・ギュンターだが、経典に記された人間の知覚・行動についての概念はどの時代にも強い影響力を持ち、最近では2000年に出版されたキムラの著書『Think Kosmically Act Globally(宇宙規模で考え地球規模で行動せよ)』にその影響が現れている。
メタノーマルなヒーリング
患者とセラピストが向き合うヒーリングの場でも、ゾーンが起きることがある。この場合のゾーンとは、患者とセラピストが不可能なことは何もないと思えるほど深い結びつきを感じる瞬間である。このような瞬間が両者を変えるきっかけになることも多い。ではなぜこのメタノーマルな現象が起きるのだろうか。しかし今の科学では、この現象を確認したり追跡したりすることはむずかしい。
(出典『エネルギー療法と潜在能力』小社刊)
連載エッセイ 58☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
患者への「質問力」 〜隠れたニーズを読み解く洞察力〜
私たち医療従事者の多くは、身体的にもメンタル的にも何らかの問題を抱えている患者を対象に医療サービスを行っている。患者のニーズに応じて的確な質問をして、患者のニーズに応える使命がある。「患者」といっても幅が広い。「患者」とは健康上の問題のため、医師や専門の医療関係者の治療や助言を受け、医療サービスの対価を払う立場にある人である。心理療法やカウンセリングなどでは、患者ではなく「クライエント」という場合が多い。どちらも問題を抱えた人であるが、肉体面の問題を抱えた人は患者、メンタル面の問題を抱えた患者をクライエントと表現する場合が多い。
他方、特に身体的にもメンタル的にも問題はないが、さらに理想の目標を達成したい、あるいはスポーツなどで、さらに自分のパフォーマンスを向上したいという意識レベルの高いクライエントのニーズも最近では増えてきているようだ。患者やクライエントのニーズ別に大きく分類すると、「身体的問題」「心身相関的問題」「メンタル的問題」「ゴール達成のためのコーチング」というように分類されるだろう。そして、それぞれのニーズに応じて質問の幅や質が異なる。
治療者にとって肝心なのは、患者が本当に求めているのは何かという深い「洞察力」である。単に「腰が痛い」「肩コリが治らない」という患者の愁訴の背後には様々な問題が隠れていることが多い。それは慢性的であればあるほど複雑に関係している。何が関係しているかというと、単に身体的な関係性ではない。例えば腰痛の問題であれば、主に構造面、関節・筋肉面、そして、神経系の機能面に分類されると考えるだろう。
もしも、椎間板ヘルニアや変形などの構造的な問題が見つかると、そこを痛みの原因にしてしまう傾向にある。構造的な問題があるのであれば、構造を修復させる外科的手術が必要だろう。しかし多くの場合、構造的な問題が慢性痛の原因であることは少ない。むしろ神経学的な働きやメンタル面が関係していることが多い。メンタル面といっても、表には現れない潜在的な心の影響で、痛みの背後に隠れている。そのような痛みの背後にある隠れたニーズに対する質問は単純ではない。それは患者自身も気づいていない無意識の領域なので、様々な角度からの質問によって、だんだんとその背後にある患者のニーズが浮き彫りにされてくるのである。
例えば、同じような症状を半年から数年抱えている患者さんで、その症状を治すことが生きがいのようになってしまっている人もいる。症状を治すことがゴールになると、その症状が治ってしまうと、心に空白が生まれてしまう。では、別のゴールを提案して空白を満たせばいいのではと考えるかもしれない。しかし、患者さんに症状を治す以外の別のゴールを提案しても簡単にはいかない。そこには複雑な心理的な要因が絡んでおり、そこから抜け出すためにはさらに深いアプローチが必要で、その奥深いパターンを知るためには症状に背後にある隠れたニーズに応えることのできる質問が必要になる。
本項の巨細については随時紹介していきたい。
◆連載10◆
『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く
孫 維良(東京中医学研究所所長)
ストレスが大きな原因となる病気、胃潰瘍・十二指腸潰瘍には心をリラックスさせ、精神を安静に導く「内養功」がとても効果的です。病院でもらった薬を飲むのと並行して、補助療法として規則的に続けると病気の回復がさらに早くなります。さっそく試してみましょう。
①まず腹部のベルトを緩め、シャツのボタンをはずし、胸襟を開き、心も体もリラックスします。ベッドか布団の上に横向きに寝て、下になった脚は自然に伸ばし、上になった脚は膝を少し曲げて下になった方の膝に重ねます。膝を約120度に曲げると効果的です。
また下になった腕は肘を曲げ、枕の上(顔の前)に置きます。上になった腕は自然に伸ばし、指を開き、腿の上に載せます。正しい姿勢であろうとするよりも、両腕と両脚から力を抜き、楽な姿勢にすることがより大切です。
②軽く目と口を閉じ、ゆっくり呼吸をします。まず鼻から大きく息を吸いながら、腹部を膨らませ、次に深く長く口から息を吐きながら、腹部をへこませ、息を吐ききったところでほんの一瞬息を止めます。つまり息を吸って吐いて止める呼吸法です。
息を吸うときには上顎に舌をつけ、「安静、安静」とか「リラックス、リラックス」とか「心をおおらかに」などとゆっくり心の中でつぶやきます。また息を吐くときには、上顎から下を離し、やはり同じ言葉をつぶやきます。息を止める瞬間も同じ言葉をつぶやいてください。
呼吸をしているときは軽く丹田に意識を集中させましょう。丹田は臍から親指の横幅で1.5本分ほど下までの範囲を言い、この丹田には、胃とつながる胃経という経絡や胃の機能と密接な関係のある脾経が通っているので、丹田を意識することで胃経と脾経における気の流れが良くなり、胃の機能を高め、胃潰瘍の症状を改善します、
こうして丹田に意識を集中し、心の中で気持ちを安らかにする言葉をつぶやきながら、ゆっくりと呼吸しましょう。最初のうちはあまり時間を気にせず、5分くらいを目安に疲れない程度で終了します。慣れるに従い、少しずつ時間を長くして、最終的には1回10分間以上続けるようにしてください。なお内養功は日常的に続けていると胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防にもつながります。
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(64)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した研究によると、両群間に変形性脊椎症、骨粗鬆症、椎体圧迫骨折などの異常検出率に差は認められなかった。したがって老化による解剖学的変化が腰痛の原因とは考えられないと結論。http://1.usa.gov/jb0ly3
……変形性脊椎症だろうと骨粗鬆症だろうと椎体圧迫骨折だろうと、症状もなく健康的に暮らせるということが明らかになっているのです。レントゲン写真のシミやシワを見せられて不安になる必要はありません。
■有痛性の骨粗鬆症椎体骨折患者を対象としたRCT(ランダム化比較試験)によると、骨セメントを注入する経皮的椎体形成術群(38例)と模擬手術群(40例)の術後成績に差は認められず、両群とも急速に痛みが軽減した。椎体形成術はプラシーボに勝てず。http://1.usa.gov/jPz9Pb
……骨粗鬆症による椎体圧迫骨折の中には痛みを訴える患者さんがいます。その治療法として骨セメント療法が脚光を浴びていますが、残念ながらその成績はプラシーボ効果だったことが証明されたわけです。
■有痛性の骨粗鬆症椎体骨折患者131名を対象としたRCT(ランダム化比較試験)によると、経皮的椎体形成術群と対照群(保存療法)を比較したところ、両群間の疼痛および活動障害に差は認められず、椎体形成術の適用を支持する結果は得られなかった。http://1.usa.gov/kvXvxo
……脊椎疾患では手術というドラマ、手術という儀式が絶大な効果を発揮することが多々あります。骨セメント療法もそのひとつだったわけですが、ランダム化比較試験によって保存療法と同じ効果しか得られないことが明らかになった今、はたして貴重な医療費を費やしてまで続ける価値があるでしょうか。健康保険料を支払っている国民一人ひとりが考えてみるべきだと思います。
■健常者41名を対象に腰部椎間板を5年間にわたってMRIで追跡調査した結果、物理的負荷(重量物の挙上や運搬・腰の回転や屈曲等)という従来の危険因子は椎間板変性とは無関係で、腰痛発症率はむしろ椎間板変性のある方が低かった。http://1.usa.gov/178sVnE
……重い物を持っても椎間板が潰れることはありませんし、椎間板が潰れている人は腰痛になりにくいという事実が確認されました。腰に負担がかかる動作を怖れる必要はありません。腰痛にまつわる迷信や神話は頭から消去しましょう。
■男性の一卵性双生児115組を対象にMRIで椎間板変性を促進させる危険因子を調査した結果、椎間板変性は仕事やレジャーによる身体的負担、車の運転、喫煙習慣といった物理的因子より、遺伝的因子の影響を強く受けていることが判明。http://1.usa.gov/kWg7Iw
……椎間板が潰れるかどうかは腰にかかる物理的負担より遺伝子の影響が強いとことが明らかになっています。国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した研究です。素人ならともかく腰痛患者をあつかう医療関係者が知らなかったではすみません。
■21〜80歳までの腰痛未経験者52名を対象にCATスキャンで腰部椎間板を分析した結果、年齢に関わらず35.4%に何らかの異常が検出され、40歳未満の19.5%に、40歳以上の26.9%に無症候性椎間板ヘルニアが確認。http://1.usa.gov/mBTclS
……レントゲンやMRIだけでなく、CATスキャン(CTと同じ)でも健康な人の中に椎間板の異常が見つかります。したがって椎間板変性や椎間板ヘルニアが痛みの原因とはいえません。
N E W S
歯周病が、軽度認知障害(MCI)・主観的認知低下(SCD)・アルツハイマー病(AD)のリスク増加の一因となるかどうかを検証するために、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJacob Holmer氏らが症例対照研究を実施した。その結果、辺縁性歯周炎と早期認知障害およびADとの関連が示唆された。Journal of Clinical Periodontology誌オンライン版10月5日号に掲載。
本研究は、スウェーデンで3年間にわたって実施された。カロリンスカ大学病院で連続した154例を登録し、3つの診断群(AD、MCI、SCD)をまとめて「症例」とした。年齢および性別がマッチした76人の認知的に健康な対照を、Swedish Population Registerを介して無作為にサンプリングした。すべての症例および対照は、臨床検査およびX線検査を受けた。潜在的な交絡因子を調整したロジスティック回帰モデルに基づいて統計解析を実施した。主な結果は以下のとおり。
・対照群より症例群で、口腔健康状態不良および辺縁歯槽骨喪失が多くみられた。
・症例群は、広範な辺縁歯槽骨喪失(オッズ比[OR]:5.81、95%信頼区間[CI]:1.14〜29.68)、深い歯周ポケットの増加(OR:8.43、95%CI:4.00〜17.76)、う蝕(OR:3.36、95%CI:1.20〜9.43)に関連していた。
(10/18 ケアネット)
アメリカの科学雑誌『Journal of the American Medical Association』が2011年に発表した「Gait Speed and Survival in Older Adult」という論文では、34,485人の65歳以上の大人を対象に、6〜21年間にわたって歩行スピードと寿命の関係を記録し、その間に亡くなった17,528人の「歩くスピードと寿命」の関係を調べています。
平均的な歩行スピードは1秒間に0.8mでしたが、1.0m以上歩く人の寿命は、他の平均的な歩行スピードの人たちよりも長いことが明らかになったというのです。さらに歩くという行為は、実はかなり複雑な行為で、神経系・筋肉・呼吸・循環系などのすべての働きを正常に組み合わせてこそ行えると言います。つまり歩くスピードが遅い場合、それは私たちの身体のどこかに異常が起こっていたり、非効率な身体の使い方をしているというサインになりうるのです。
この研究チームは「寿命が延びるのでなるべく速足で歩きなさい」という単純なものではなく、自然な結果として歩くスピードが速くなればそれは効果があるかもしれない、というもの。実際に歩くという行為には血圧を下げる、体重の維持、気分の向上、血液循環の促進など様々なポジティブな効果があるとされています。
歩くことは移動としての役割だけではなく、身体の健康状態を表すバロメーターとしても有効です。周りの人や自分の歩くスピードが遅くなってきた場合、それは何かしら身体に変化が起こっているかもしれません。(10/18 AllAbout)
国立がん研究センターは10月15日、魚をほとんど食べない人で大動脈疾患による死亡が増加することを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、国がん社会と健康研究センターの井上真奈美部長、筑波大学医学医療系の山岸良匡准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Clinical Nutrition」オンライン版に公開されている。
研究グループは、日本の8つの大規模コホート研究から36万人以上を統合したプール解析を行い、日本人における魚摂取頻度と大動脈疾患死亡リスクとの関連を分析した。コホートで使用している食習慣アンケート調査結果から、魚摂取頻度を、ほとんど食べない、月1〜2回、週1〜2回、週3〜4回、ほとんど毎日の5つの群に分けた。循環器疾患の主なリスク要因を統計学的に調整した上で、ほとんど食べない群に対する他の群の大動脈疾患死亡リスクを算出し、その後、全てのコホートの結果を統合した。
その結果、魚を週1〜2回食べる群と比べ、ほとんど食べない群では、大動脈解離で死亡するリスクが2.5(95%信頼区間1.1-5.5)倍、大動脈瘤で2.0(同0.9-2.1)倍、これらをあわせた大動脈疾患全体では1.9(同1.1-3.3)倍高くなった。一方、月に1〜2回食べる群では、魚を週1〜2回食べる群と比べて大動脈解離で死亡するリスクの上昇は見られなかったが、大動脈瘤で1.9(同0.9-4.0)倍とややリスクが上昇する傾向が見られた。また、週3〜4回食べる群、ほとんど毎日食べる群では、リスクの大きさは変わらなかったという。
今回の研究では、魚をほとんど食べないような非常に摂取頻度が少ない場合に、大動脈疾患で死亡するリスクが上がり、魚を摂取する機会が少なくとも月1〜2回あれば、大動脈疾患で死亡するリスクは高くならないことが判明した。このことから、魚の摂取が極端に少なくならないことが大動脈疾患死亡を予防するために重要だと考えられる。なお、魚の高摂取は心筋梗塞のリスクを低下させることがわかっているため、摂取が極端に少なくならないよう気をつけるだけでなく、より多く摂取していくことが循環器疾患予防につながると考えられる。(10/17 医療ニュース)
米国では慢性疼痛患者に対する鎮痛剤として処方されるオピオイド依存の問題が深刻化している。今回、新たな研究から、慢性的な腰痛を抱えている患者は、たとえプラセボ(偽薬)であっても薬を服用すると、標準的な鎮痛薬に相当する約30%の疼痛軽減効果を得られることが明らかになった。「Nature Communications」オンライン版に掲載された。
この研究は、米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部教授のA. Vania Apkarian氏らが行ったもの。同氏らは約60人の慢性腰痛患者を対象に、プラセボを服用する群と非オピオイド系の標準的な鎮痛薬を服用する群、さらに診察のみで何も治療しない群にランダムに割り付けて、8週間にわたり疼痛レベルを毎日評価した。プラセボまたは標準的な鎮痛薬を服用する群の患者には、どちらの治療であるのかは知らせなかった。
その結果、研究開始から8週後には、プラセボを服用した群では、何も治療をしなかった群に比べて疼痛が大きく軽減し、治療に対する反応率も高いことが分かった。なお、この研究ではプラセボを服用する群と標準的な鎮痛薬を服用する群の比較は行っていないという。また、対象患者に脳MRI検査を実施して脳の構造を比較したところ、プラセボが奏効した患者では、皮質下辺縁系の情動脳領域が非対称性(右側が左側よりも大きい)であることや、大脳皮質感覚野が大きいなどの共通した特徴がみられることが分かった。さらに、心理検査によれば、自分の身体や感情の状態を意識的に捉えられ、開放的な性格である患者でプラセボが奏効する確率が高かった。
Apkarian氏は「プラセボの効果は予測できないとする考え方が一般的であるが、今回の研究結果はその考えを覆すものだ」と話す。今回の結果から、同氏は「一部の患者にはプラセボ治療に反応する資質が備わっており、プラセボであることが分かっていても治療効果が得られる可能性がある」と結論づけている。(9/12 HealthDayNews)
日中に眠気を感じる人は、アルツハイマー病を発症するリスクが高い可能性があることが、米ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院メンタルヘルス科准教授のAdam Spira氏らによる研究から示唆された。平均年齢60歳の男女123人を対象としたこの研究では、日中の眠気がある人では、眠気のない人に比べてアルツハイマー病に関与するとされるアミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積する確率が高いことが分かった。詳細は「Sleep」オンライン版に発表された。
この研究は、認知機能が正常な地域住民を対象に、日中の眠気や昼寝の習慣と平均で15年以上経過した時点の脳画像に基づく脳内のアミロイドβの蓄積との関連を検討したもの。対象は、米ボルチモアで実施された加齢に関するコホート研究の脳画像検査を用いたサブスタディに参加し、研究開始時に日中の眠気や昼寝の習慣について自己申告し、平均で15.7年後にPittsburgh Compound B(PiB)-PETによる脳画像検査を受けた男女123人。研究開始時の平均年齢は60.1歳で、24.4%に日中の眠気が、28.5%に昼寝の習慣があった。
解析の結果、日中に眠気がない群と比べて眠気がある群では脳画像検査で脳内にアミロイドβの蓄積が認められる確率が高いことが分かった(調整後オッズ比は2.75)。一方、昼寝の習慣については、交絡因子で調整後の解析でアミロイドβの蓄積との間に有意な関連は認められなかった。
Spira氏は「アルツハイマー病を予防するには食事や運動、脳トレーニングなどが重要な要素であることが知られているが、睡眠はこれまでそれほど注目されてこなかった。しかし、今後は、睡眠不足はアルツハイマー病のリスク因子であるというように見方が変わるかもしれない」と話している。(10/4 HealthDayNews)
成人の約40%が肥満とされる米国では、肥満対策は喫緊の課題とされている。コーネル大学教授のJohn Cawley氏らが実施した研究から、レストランのメニューにカロリーを表示す
ると、注文された料理のカロリーを全体的に抑えられる可能性があることが示された。詳細は全米経済研究所が発行する8月の報告書に掲載された。
米国では2010年に制定された医療保険制度改革法(ACA;通称オバマケア)により、20店舗以上を持つレストランチェーンなどの飲食業者に対し、メニューにカロリーを表示することが義務づけられた。
この研究は、大学構内にあるフルサービスのレストラン2店舗で実施された。夕食に訪れた客を対象に、カロリー表示のあるメニューあるいは表示のないメニューをランダムに渡し、5,500食を超える夕食のカロリーを比較した。参加者の約43%は男性で平均年齢は34歳、約3分の2が白人であった。
その結果、メニューにカロリーを表示すると、表示しなかった場合に比べて注文された夕食の総カロリーが約3%低下することが分かった。これは1食当たり45kcalの減少に相当するという。また、こうしたカロリーの減少は前菜と主菜によるもので、飲み物やデザートのカロリーにはカロリー表示の有無で差はみられないことも分かった。
Cawle氏は、「多くの人はデザートが高カロリーであることは既に知っており、表示されたカロリーを見てもあまり影響を受けない。一方、前菜や主菜がこれほどまでに高カロリーであることには驚いて、カロリーを減らすために注文を変えたのではないか」と説明している。
さらに、カロリー表示のあるメニューを経験すると、こうした表示を支持する人の割合が10%増加していた。Cawle氏らの推計によると、このようなカロリーの削減により、3年間で体重を約0.5kg減らせると考えられるという。(10/4 HealthDayNews)
米国では、慢性的に続く疼痛が耐えがたく、自殺を選ぶ人も少なくないことが新たな研究で示唆された。研究の詳細は「Annals of Internal Medicine」オンライン版に掲載された。
米国では2500万人を超える成人が慢性的な痛みを抱えており、このうち1050万人は憂慮すべき痛みに毎日耐えているとされる。米国立傷害予防管理センター(NCIPC)のEmiko Petrosky氏らは今回、全米暴力死報告制度(National Violent Death Reporting System)に登録している米国18州で2003〜2014年に発生した12万3181件の自殺のデータを分析した。
その結果、自殺者の8.8%(1万789人)は慢性的な痛みを抱えていたことが明らかになった。これらの多くは腰痛やがん性疼痛、関節炎が占めていた。また、慢性疼痛を抱えている自殺者の割合は、2003年の7.4%から2014年には10.2%へと増加していた。
さらに、自殺者でも慢性疼痛のない人に比べて、慢性疼痛を伴う人では不安症やうつ病と診断される割合が高かった。慢性疼痛のある自殺者の半数以上(約54%)が拳銃自殺であり、オピオイドの過剰摂取による死亡も約16%に達していた。薬物検査の結果を入手できた自殺者では、慢性疼痛のある人はない人に比べて死亡時にオピオイドが検出される確率が大幅に高かった。
米ミシガン大学精神科のMark Ilgen氏は同誌の付随論評で、事態はもっと複雑だとの見方を示している。同氏は「今回の研究では、疼痛を訴えていた自殺者の3分の2以上が自殺への誘因として、痛みやそれによる長期にわたる苦痛を挙げていた」と指摘する。(9/27 HealthDayNews)
高齢者の転倒予防には、筋力トレーニングやエアロビクスよりも太極拳の方が優れている可能性があることが、約600人の高齢者を対象に行ったランダム化比較試験で明らかになった。詳細は「JAMA Internal Medicine」オンライン版に掲載された。
論文著者の一人で米ウィラメット大学運動・健康科学科教授のPeter Harmer氏によると、太極拳による転倒リスクの低減効果については長年、検討されてきた。研究チームは転倒予防に関連した8種類の基本的な動きに絞った簡略版を開発。米オレゴン州に在住し、転倒の既往があるなど転倒リスクが高い70歳以上の高齢者670人(平均年齢77.7歳、女性65%)を対象に、太極拳プログラムを行う群または筋力トレーニングとエアロビクスを組み合わせた従来の運動プログラムを行う群、ストレッチのみを行う対照群の3つの群にランダムに割り付けて比較検討した。それぞれ60分の運動クラスを週に2回、24週間続けてもらった。
その結果、6カ月後の転倒の発生率は、ストレッチのみを行う対照群に比べて、太極拳を行った群では58%低かったのに対し、従来の運動プログラムを行った群では40%低いことが分かった。また、太極拳を行った群では、従来の運動プログラムを行った群に比べて転倒の発生率は31%低いことも明らかになった。
太極拳ではあらゆる方向への動きが求められる。オレゴン健康科学大学看護学部教授のKerri Winters-Stone氏は「転倒の起こり方はさまざまで予測できない。太極拳では体を重心の外側へ移動させ、また引き戻す動きを行う。そのため、太極拳を経験している人は転びそうになると、その動きに逆らって素早くバランスをとり戻せるのではないか」と説明している。(9/27 HealthDayNews)
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