エンタプライズ発信〜メールマガジン【№89】 2018. 9

国立がん研究センターは「2011年にがんと診断された患者の3年後の生存率」の調査結果を発表しました。それまでは5年生存率が公表されてきましたが、より迅速に情報を提供するため、今回初めて3年生存率を示したのです。3年の主意は、新しい治療方法や薬の効果を、5年を待たずに把握できるようになり、がん対策に活用できることが期待されるというものです。ところで、がんの治療というと、手術、抗がん剤、放射線治療が頭に浮かびます。しかし今、重要視されているのがロコモティブシンドローム(ロコモと略することも)です。2007年に日本整形外科学会が要支援・要介護となるリスクを高め、寿命を縮めるおそれがあると提唱しました。がんの治療適応は主として動けるレベルで決まります。したがって、がんであっても動けることが重要であると言います。運動器の専門家が関わり、装具治療や手術、リハビリテーションや薬物療法を行い、痛みの軽減や機能回復を行う必要が問われているのです。がんで余命数カ月と診断された患者でも、例えば移動能力を取り戻すことはQOLを一変させます。また骨転移などで体が痛くて寝返りも打てなかった人が、座って口から食事をできるようになる、自分の足で歩いて好きなところへ行けるようになることがあると言います。ロコモ対策に必要なのは「下半身強化」であることは医師の方針に共通します。転倒予防はもちろん、お尻や太ももの大きな筋肉を鍛えることで基礎代謝が増え、痩せやすい体にもなります。高齢社会を迎えている日本では、平均寿命は80歳以上に達し、運動器の障害によって日常生活に支援や介護が必要となる人が増加しています。平均寿命が延びれば延びるほど、運動器の健康を長く保ち続ける必要があり、国民一人一人が運動器の健康維持に対して関心を向け、ロコモを予防するための運動習慣の奨励が求められています。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S

Information 1

第9回 日本カイロプラクティック科学学会学術大会開催の案内

日本カイロプラクティック科学学会はカイロプラクティックを医療(ヘルスケア)として科学的側面から検証し、安全性と有効性のエビデンス(科学的)評価を行うカイロプラクティック専門研究会です。今年、臨床カイロプラクティック学会が日本カイロプラクティック科学学会(JSCS)へ名称変更し、千葉の幕張メッセ国際会議場にてスポーツとカイロプラクティックをテーマに開催します。大会の概要は以下のとおり。

  • 日時:11月11 日(日)10時00分〜17時00分、
           12日(月)9時30分〜16時00分
  • テーマ:「スポーツとカイロプラクティック」
  • 会場:幕張メッセ国際会議場 102 & 103 (千葉市美浜区中瀬 2-1)
  • 招待講演:マーティン カマラ Martin Camara DC
         (フィリピンオリンピック委員会医療部長)
  • 主催:日本カイロプラクティック科学学会、一般社団法人日本カイロプラクターズ協会
  • 問合せ:大会事務局:電話 03-3578-9390 E-mail : rcg2018@jac-chiro.org

Information 2

第14回 直立歯科医学研究大会開催の案内 9/22-23 (続報)

咬合バランスとヒト直立バランスの因果関係に着目し、上部頭蓋や下顎骨などの動きを歯科とヒト構造を統合し病理および検査・治療法を啓発しつづける日本直立歯科医学研究会の年次学術大会が札幌市で開催される。概要は以下のとおり。

  • 日時:9月22日(土)14:00〜18:30  *19:00〜懇親会
       23日(日) 9:30〜15:30
  • 会場:札幌市教育文化会館 4階講堂
  • 主催:日本直立歯科医学研究会
  • テーマ:「バランスよくまっすぐに立つ」がキーワード
         〜犬歯誘導の弊害とABCコンタクトの意味〜
  • お問合せ:http://douken.kenkyuukai.jp/event

Information 3

「世界のキクチ」菊地臣一先生が講演—12/8 TMSジャパン主催 (続報)

小社とゆかりの深い元国際腰椎学会会長にして前福島県立医科大学理事長兼学長の菊地臣一先生が、本メールマガジンのコラムニスト・長谷川淳史先生が主宰するTMSジャパンに招かれ講演することになりました。テーマは「EBMが明らかにしたNBMの重要性―腰痛診療を通じて―」で、直接キクチイズムを学びたい方、また世界の頂点を極めた脊椎外科医から薫陶を受けたい方は絶好の機会です。なお、満席に達した場合はその時点で締め切られます。

  • 【講 師】 菊地臣一MD(福島県立医科大学常任顧問兼ふくしま国際医療科学センター常勤参与)
  • 【日 時】 12月16日(日) 14:00〜16:00を予定(13:30開場)
  • 【会 場】 TKP品川カンファレンスセンター4F バンケットルーム4D
         東京都港区高輪3‐16‐33 京急第10ビル
         (品川駅高輪口より徒歩1分 MAP
  • 【受講料】 一般=12,000円 TMSジャパン会員=10,000円
          学生・介護職・シングルマザー=10,000円
          ペア割(2名様)=20,000円
          ※早割=各1,000円引き(10月16日締切)
  • 【最終締切】 12月9日(ただし定員になり次第終了)
  • 【詳 細】 TMSジャパン
  • 【お申し込み】 「12月の特別講演会」と明記の上、メールフォームからどうぞ。
★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

空腹を感じるとミトコンドリアが増える(つづき)

[安保] 私の友人で1日1000キロカロリー未満で元気な人がいます。60代で霞を食べて生きる仙人のような世界に突入したわけです。不食で弁護士活動を続ける秋山佳胤さんも有名ですね。ごく少数ですが、世界中に似たような人が存在します。
100歳近くになると自然に少食になっていきますが、これは解糖系からミトコンドリア系へのシフトが極端に進んだケースなのでしょうね。エネルギー消費の効率が良くなり、慌てず穏やかな仙人的生活に近づいていきます。これを若いうちに実現しようとすると、最初はだれでも苦しむ時期があるようです。
[太田] 仙人からほど遠い一般的な人間にとって、カロリー制限はなかなか大変なわけですが、最近の研究ではカロリー制限しなくても空腹を感じるだけでミトコンドリアが増えることがわかってきました。
[安保] 空腹感から体がもっとエネルギーを作ろうとしてミトコンドリアを増やすわけですね。それだったら簡単だ。たまに一食抜いてみるとか、プチ断食でも効果がありそうだね。

早食い・大食いは老化を早める

[太田] 食べないことでミトコンドリアが増えて長寿につながるという話をしてきましたが、逆に食べ過ぎや早食いは老化を速めます。食べること自体が非常にエネルギーを使うことなんですね。食べると胃や腸に消化酵素が分泌されますが、早食いや大食いで急激な消化が必要になると、消化酵素の分泌量が一気に増えて多大なエネルギーを消費します。
[安保] 急激な消化活動によって活性酸素が出ますよね。
[太田] 急激に運動したときと同じくらい活性酸素が出ます。運動も食事もエネルギーを作り出すためには欠かせないものですが、やり方を間違えると活性酸素が出て老化の原因となります。
[安保] 運動も食事も急激に始めないことが重要ですね。運動の場合は徐々にウオームアップして、食事はゆっくり楽しみながらがいいね。
[太田] 運動を終了するときも徐々にクールダウンするのが理想的です。とにかく急に始める・やめるというのが良くないです。特に早食いは糖尿病の原因にもなります。早食いするとインスリン分泌が間に合わずに血糖値が上がってしまうとよく言われますが、それだけではありません。活性酸素がインスリン分泌細胞を破壊してしまうのです。
[安保] 現代のストレス社会では、急激な運動よりも早食い・大食いの方が切実な問題ですね。


連載vol.47

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

野球とアーチェリー

作家として著名なマイケル・マーフィーの著書には、野球のキャッチャーだったティム・マッカーバーの「心は人がその存在を意識さえしなければ、偉大な技をやってのける」という言葉が引用されている。また、最後の4割バッターとして知られるテッド・ウイリアムズは、その著書『The science of hitting(バッティングの科学)』のなかで、あらゆ
るスポーツのうち最もむずかしいのは、野球でヒットを打つことだと書いている。(以下を参照)

――野球でヒットを打つのが一番むずかしいと私が言えば、誰もが疑い、時には口論になることさえある。ではヒットを打つことよりむずかしいのは何だろうか。バッティング以上に才能と身体能力と集中力が要求されるスポーツ技術とは何か。バッティングには強靭な肉体と高い技術が要求されるが、1打がヒットになるための確定要素は少なく、変動要素ばかりである。今では3割の打率をあげることすら容易ではないが、10回打席に立っても7割はアウトになることがわかっていたら、どれほど苛立ちを感じるだろう。こんなスポーツがほかにあるだろうか。
もしプロのアメリカンフットボールの試合で、クオーターバックのジョー・モンタナやダン・マリーノが10回のパスを投げて3回しか成功しなければすでに解雇を告げられていただろう。またプロバスケット選手のラリー・バードやマジック・ジョンソンが10回シュートして3回しか入らなければ、コーチは彼らをチームから追い出していただろう。――(ウイリアムズ、1986)

そのウイリアムズが指摘するヒットのコツは少々期待はずれに思えるかもしれない。
・バッティングの良し悪しは半分以上頭で決まる。
・自然体でいること。自分のスタイルで打つこと。レフティ・オドゥールの言葉どおり、「何をするにせよ、他人の意見に動かされるな」、自分だけのスタ入りを守り抜くこと。
・的確な判断力、つまりピッチャーを十分に研究すること。
・いいボールが来るまで待て、新しい球種には手を出すな。
・動作は機敏に。ボールがピッチャーの手を離れてからバッターが打つか見送るかを決めるまでの時間は5分の2秒ほどしかない。したがって打つと決めたらすぐにバットを振り切れ。
・腰の動きを使うこと。腰を入れてバットを振ることが、強い打球につながる。
・推理せよ。考えよ。やるべき練習をこなせ。ピッチャーを研究し、そして打席に立ったら予想せよ、どんな球が来るのかを推理するのだ。

また10代の天才アーチェリー選手デニス・パーカーもウイリアムズと同じようなことを言っている。彼女がある試合で、アメリカの女子アーチェリー選手として初めて1300点のスコアを出したときのことだ。

――私には何が起きたかわからなかった。何かに集中していたわけではない。自分が矢を射っているという感じではなく、矢が勝手に飛んでいくように感じられた。あのときのことを思い出して、あの瞬間に戻ろうとするのだが、思い出そうとすればするほどわからなくなる。まるで世界の始まりがどんな様子だったのかを考えているみたいに…――(シャインバーグの著書から引用)

(出典『エネルギー療法と潜在能力』小社刊)


連載エッセイ 57☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


<心因性斜視> 本質的な原因療法

30代女性が斜視の症状を訴えて来院。子供に多く見られる心因性斜視は当院でも施術を行っているが、大人で斜視を訴えて来院されるのは珍しい。この患者さんは5ヶ月前にも斜視の症状で来院されており、2回の施術で一度完治した。今回再発したようだ。来院時には斜視の症状はみられないが、前回と同様に自宅でご主人と話している際に「目の向きがおかしいよ」と指摘されたという。
PRT(生体反応検査)を行うと、右斜め下と左斜め下の眼球の動きで陽性反応が示された。左右の眼球の動きでは陽性反応が示されないことから、上斜筋の機能低下が疑われる。神経学的には第IV脳神経の滑車神経の機能に問題があることが分かる。もしも、神経学的機能の側面だけを扱うのであれば、滑車神経を活性化させる刺激やリハビリを指示するかもしれない。滑車神経の機能が低下して斜視になっているのだから、その脳神経の機能を高めれば改善されるだろうというもっともらしい理屈になる。さらに専門用語を使って学術的に述べると、なるほどと思いがちになる。

しかしながら、その滑車神経の機能異常は、結果であって原因ではない。原因があるから機能異常が生じるのである。その機能異常は滑車神経の神経経路に沿った腫瘍などによる構造異常に関連があるかもしれない。その場合は西洋医学的な処置が必要になるだろう。もしも、構造的には問題がなく心因性であれば、どの程度その原因パターン(誤作動)が記憶化されているかによる。
一時的な記憶であれば、機能異常を生じさせている神経系を活性化させることで早期に回復するだろう。もしくは何もしなくても自然に回復するかもしれない。しかし、心因性の誤作動記憶の神経回路がしっかり構築されていると、自然の回復は難しい場合がある。いずれにせよ、大元の原因療法が早期の回復につながることはいうまでもない。

機能評価チャートでは、筋骨格系のレベルが7、メンタル系のレベルが9で示される。PCRT(心身条件反射療法)のプロトコルに沿って検査を進めていくと、大脳辺縁系領域で、感情の「恐れ」に関係している事柄が2つあり、ご本人曰くこの2つの恐れは関連性があるという。3つ目に「利己心」の反応が示された。利己心というと一般的には自分勝手な…というイメージがあるかもしれないが、これは誰にでもある心の側面で、意味合いとしては幅が広い。この反応が示された際には「守ろうとしている何かがありませんか?」「おそらく大切にしようとしている心の面だと思いますが…」と質問する。すると大抵の患者さんは思いつくことが多い。

PCRTで調整後の機能評価では、メンタル系レベルが9から1、筋骨格系レベルは7から1まで改善した。原因となっていた心的内容は、以前と同じかどうか尋ねたところ、以前とは異なっていたという。一度、早期に改善しているので、今回も早期の改善が期待できると思う。心的因子が原因であれば、遠回りをせずにその原因に正面から対処する療法が早期の回復につながるだろう。けれども、身体的症状の原因が心理的側面にも関係性があるということに否定的な患者さんもいるので、そこに寄り添うのに工夫と忍耐が必要になる。

◆連載9◆

『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く

孫 維良(東京中医学研究所所長)

「痛みをやわらげる、ひとりあんま気功・実践編2」
*胃がもたれる

胃がもたれるとすぐに胃潰瘍や胃アトニーではないかと心配する人がいますが、単に食べ過ぎたときにもよく胃がもたれます。そんなときいつの間にか手で鳩尾(みぞおち)を撫でていたという経験はないでしょうか。誰でもそんな経験があると思いますが、これはヒトの体が本能的に行う手当てです。すなわち原始的なひとりあんまの一種なのです。
この鳩尾を手でさする方法をさらに合理的に発展させた療法が、これから紹介する胃もたれに即効性のあるあんま気功法です。

①まず楽な姿勢で浅く椅子に座り、肩の力を抜いてリラックスしましょう。そして軽く目を閉じ、両手の平をこすり合わせて、手に気を集め、手を温かくします。
②手が温かくなったら、両手の平を上に向けて、小指の側面を膻中(だんちゅう)というツボに当てます(膻中は左右の乳首をむすんだ線の中間にあります)。鼻からゆっくり息を吸いながら、膻中から弓形にひらいた肋骨の下の縁に沿って、小指の側面で脇腹へ向かって斜めに撫でおろしていきます。
手が脇腹に達したら、ここで手の平の向きを変え、脇腹に手の平をピタッとつけます。口からゆっくり息を吐きながら、手の平で腹部を軽く押し撫で、脇腹から臍の下まで斜めに撫でおろします。つまり鳩尾から脇腹、脇腹から臍の下と、両手でほぼ菱形を描いて撫でおろすわけです。
症状が軽くなるまでこの菱形を描く動作を繰り返してください。ただしあまり力を入れ過ぎないようにしてください。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(63)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■イラクとアフガニスタンで腰痛を発症した兵士1,410名を対象にした前向き研究によると、戦闘中に腰を負傷したのは5%だったにもかかわらず原隊復帰率はわずか13%にすぎず、身体的問題よりも心理・社会的問題が原因と考えられる。http://1.usa.gov/mylrz4
……つまり、腰痛の95%は戦闘中に発症したものではなく、87%が戦場に戻らなかったことから、兵士の腰痛は心理・社会的因子によるものだということです。

■イラクやアフガニスタンから離脱した米軍兵士34,006名を対象とした前向き研究によると、離脱原因は筋骨格系・結合組織疾患(24%)、戦闘による負傷(14%)、神経疾患(10%)などであり、ほとんどが原隊復帰しなかった。http://1.usa.gov/kkNruO
……人は極限状態に置かれると腰痛や関節痛などの筋骨格系・結合組織疾患を発症しやすくなるようです。東日本大震災の影響を心配しているのはこうした事実があるからで、1日も早く腰痛にまつわる迷信や神話を一掃したいものです。

■腰椎の変形が腰痛の原因でないことは半世紀以上も前から証明されてきた。最も古い対照試験は1953年に実施された腰痛患者100名と健常者100名の腰部X線写真を比較したもので、両群間の変形性脊椎症の検出率に差はなかった。http://1.usa.gov/lCMbXb
……レントゲン写真に映ったシミやシワは腰痛の原因ではありません。レッドフラッグ(危険信号)のない腰痛患者に対してルーチンに画像検査を行なうのは百害あって一利なし。もはや犯罪行為といっていいでしょう。国民はそれをしっかり頭に叩き込んでおくべきです。

■腰痛患者378名と健常者217名の腰部X線写真を比較した研究でも、両群間における変形性脊椎症の検出率に差はなく、加齢と共に増加する傾向が見られることから、変形は正常な老化現象にすぎず、腰痛の原因とは考えられないと結論。http://1.usa.gov/msMFAV
……変形性脊椎症はただのシミやシワと同じだということが証明されています。ですからまったく気にする必要はありません。このおかしなレッテル(病名)は早くなくせばいいのにと思います。レッテルを貼っても、悪くなることはあっても良くなることはありませんから。

■60歳の一般住民666名を対象に胸椎と腰椎のX線写真を分析した結果、腰痛経験者の58.7%に、未経験者の57.5%に変形性脊椎症が確認されたが、両群間の検出率に差はなかった。老化よる脊椎の変形は腰痛の原因ではない。http://1.usa.gov/kLY3o9
……まさか変形性脊椎症が腰痛の原因だと考えている医師はいないと思いますけど、念には念を入れてご忠告申し上げます。レッドフラッグ(危険信号)がなければ背骨の変形と腰痛はまったく無関係です。

■港湾労働就職希望者208名、急性腰痛を発症した港湾労働者207名、6ヶ月以上続いている慢性腰痛患者200名を対象に、腰部のX線写真の異常検出率を比較した結果、3群間の加齢による異常検出率に差は認められなかった。http://1.usa.gov/jVFqUC
……レントゲン写真で確認できる背骨の変形は腰痛とは無関係であると同時に、腰痛の原因は老化現象ではないということです。歳だから腰痛になるなんて根拠のないデタラメな話を信じてはいけません。

 N  E  W  S

NEWS■ 若者は長生きしたくない?「希望寿命」平均下回る

若者は「人生100年時代」を望まない? 敬老の日を前に、何歳まで生きたいかという「希望寿命」が20代では男女ともに80歳を切り、平均寿命を下回ったことが、メットライフ生命保険の調査で分かった。8割を超える人が、老後に不安を感じていることも分かった。
調査は6月、全国の20〜79歳の男女1万4100人に実施。長生き志向について、「あまりしたくない」(28.9%)を含め、「長生きしたくない」と答えたのは全体の41.2%だった。世代別では60〜70代(38.0%)が最も少なく、50代が47.7%で最多だった。
2017年の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.26歳。「何歳まで生きたいか」との問いに、20代の男性は78.1歳、女性は76.9歳と答え、世代別でも最も低かった。平均寿命を上回ったのは60〜70代の男性だけだった。また「老後に不安を感じる」人は81.7%。世代別では、40代の87.6%が最も高く、60〜70代の73.6%が最低だった。要因は「お金」が最も多く、20代の27.1%が年金を「全くもらえないと思う」と回答した。(9/16 時事通信)

NEWS■ 40歳代の半数が睡眠6時間未満…国民健康・栄養調査

40歳代の男女のおよそ半数が、1日の平均睡眠時間が6時間未満であることが、厚生労働省の調査でわかった。厚労省の国民健康・栄養調査によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満と答えた人は、男女とも40代が最も多く、男性が48.5%、女性が52.4%だった。仕事や家事の負担が、主な原因とみられている。
また、1日あたりのカロリー摂取量は、60歳代が男女とも最も多く、男性が2,218kcal、女性が1,794kcalだった。厚労省は、「今の60歳代は元々食事をよく取っていた世代で、若い世代はカロリー摂取の低い傾向が続いている」と分析している。(9/12 産経新聞)

NEWS■ 介護福祉士、養成学校への入学が最少…留学生は倍増

介護現場で指導的役割を担う介護福祉士を養成する学校への今年度の入学者数が過去最低を更新する一方、外国人留学生が倍増し、全体の約6分の1を占めることが、日本介護福祉士養成施設協会(東京)の調査でわかった。
同協会が介護福祉士の養成課程がある全国の大学や専門学校など365校について調査、集計した。今年度の入学者数は6856人と5年連続で減少し、定員に対する割合(定員充足率)は44.2%にとどまった。
年々増加中の外国人留学生は前年度の約2倍の1142人に急増し、入学者全体の16.7%を占めた。出身国も20か国からと多様化し、ベトナムが542人で最も多く、中国(167人)、ネパール(95人)が続いた。一方、日本人の入学者数の減少には歯止めがかかっていない。東洋大の高野龍昭准教授(高齢者福祉)は、「専門性の高い介護人材の確保という視点からも重要な資格。さらなる処遇改善やイメージアップの取り組みが必要だ」と話している。(9/12 読売新聞)

NEWS■ 男性の喫煙率、初めて3割切る…20歳代が減少幅大

厚生労働省が9月11日に公表した2017年の国民健康・栄養調査で、男性の喫煙率が初めて3割を切り29.4%となったことがわかった。女性は7.2%。全体では17.7%で、いずれも調査が始まった1986年以降、過去最低となった。
調査は昨年11月、20歳以上の男女約6600人を対象に実施。「たばこを毎日吸っている」「時々吸う日がある」と答えた人の割合を算出した。男性の年代別では、30歳代が39.7%と最も高く、40歳代39.6%、50歳代33.4%が続いた。女性は40歳代が12.3%、50歳代9.8%、30歳代8.5%だった。86年当時の喫煙率は、男性59.7%、女性8.6%。世代別で最も減少幅が大きかったのは男性の20歳代で、86年の67.2%から26.6%に下がった。(9/12朝日新聞)

NEWS■ 女性の関節リウマチに小児期の受動喫煙が関連か

喫煙は女性の関節リウマチの発症リスクを高めるが、その発症には子どものころに受動喫煙に曝露された経験の有無も重要であることが、新たな研究で示唆された。これまで自己免疫疾患である関節リウマチの発症には、複数の遺伝要因と環境要因が関与すると考えられていたが、今回の研究で小児期の受動喫煙もリスク因子の一つであることが明らかになった。詳細は「Rheumatology」オンライン版に掲載された。
この研究は、ギュスタブ・ルシー研究所(フランス)のMarie-Christine Boutron-Ruault氏らによるもの。フランスの中年期の女性7万1248人を対象に20年以上にわたり追跡し、小児期の受動喫煙や成長後の喫煙歴と関節リウマチの発症リスクとの関連を調べた。追跡期間中に371人の女性が関節リウマチと診断されていた。
その結果、これまでの研究報告と同様に、喫煙歴のある女性は関節リウマチの発症リスクが高いことが分かった。喫煙歴のある女性は、そうでない女性に比べて小児期に受動喫煙に曝露されていなくても関節リウマチの発症リスクは38%高く、受動喫煙に曝露されているとそのリスクは67%高かった。これは喫煙歴のない女性でも同様にみられた。小児期に受動喫煙に曝露されていた女性は、曝露されていなかった女性に比べて関節リウマチの発症リスクは43%高かった。しかし、この結果についても統計学的な有意差は得られなかったことから、Boutron-Ruault氏らは、今回はこれらの関連が示されたに過ぎず、因果関係は明らかにされていない点を強調している。(9/7 TMSnet=一部)

NEWS■ 飲み放題で大学生の飲酒量が2倍に増加

筑波大学は8月29日、大学生を対象とした飲食店における飲み放題に関する横断的調査の結果を発表した。この研究は、同大学医学医療系の吉本尚准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「The Tohoku Journal of Experimental Medicine」のオンライン版で公開された。アルコール過剰摂取は世界的な問題とされており、日本でも2013年に「アルコール健康障害対策基本法」が策定され、国の方針である「アルコール健康障害対策推進基本計画」が2016年に策定されている。
研究グループは、関東の31大学35学部の学生533人を対象に、飲食店における飲み放題に関する横断的調査を実施。飲み放題を利用したことがあると回答した学生511名(95.8%)を分析対象として、飲み放題の利用と大学生の飲酒量の差異を調べた。
その結果、飲酒量は、飲み放題ではない場合に比べて、飲み放題では男子学生1.8倍(48.2±29.5gに対する85.9±49.7g)、女子学生1.7倍(36.5±26.7gに対する63.7±39.3g)に増加していることが判明。また男子学生の39.8%、女子学生の30.3%が、飲み放題の場合にのみ、一時的多量飲酒(HED)という危険な飲酒をしていることが明らかになったという。
海外の研究からも、「all-you-can-drink(飲み放題)」が短時間での多量飲酒(ビンジ飲酒)のリスクを2.44倍高めたり、アルコール血中濃度と強く関連していることが判明している。また日本人の4〜5割はアルコールが飲めない、またはとても弱い体質であることから、学生が飲み放題利用時に通常より2倍近いアルコールを摂取している可能性があることは極めて危険であると考えられるとしている。(9/5 TMSnet=一部)

NEWS■ <粗悪学術誌>論文投稿、日本5000本超。業績水増しか

インターネット専用の学術誌の中で、質が十分に保証されていない粗悪な「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、こうした学術誌を多数発行する海外の出版社を調べたところ、日本から5000本超の論文が投稿されていた。九州大と東京大、大阪大、新潟大からは各100本以上を確認した。専門家は「研究者が業績の水増しに使っている恐れがある」と懸念する。
この出版社は、本社所在地を中国と自社サイトに表記。医学や化学、物理学、経済学など幅広い分野でオープンアクセス型の320誌以上を発行しており、米国の研究者が粗悪な学術誌を発行する世界の「ハゲタカ出版社」をまとめたリストに名を連ねている。
同社の学術誌の論文掲載数は03〜18年5月末で計約8万4000本。毎日新聞がハゲタカジャーナルに詳しい和田俊和・和歌山大教授(視覚情報処理)の協力を得て全論文を分析した結果、日本と関係する論文は5076本あり、筆頭著者が大学・研究機関に所属する論文は3972本あった。九大からが147本と最多で、東大132本▽阪大107本▽新潟大102本▽名古屋大99本▽日本大87本▽北海道大74本▽広島大73本▽京都大66本、と続いた。
分析では、特定の研究者が繰り返し投稿するケースが目立った。30回以上投稿した研究者もおり、意図的に選んだ可能性が高い。この問題に詳しい栗山正光・首都大東京教授(図書館情報学)は「有名大からの投稿が多いのは驚きだ。国際誌で成果を発表したという業績を積むため、意図的にハゲタカジャーナルを使う研究者が存在すると考えざるを得ない。氷山の一角かもしれない」と指摘する。(9/3 毎日新聞)

NEWS■ PT・OT養成、規則改正で総単位数を増加へ

厚生労働省は、理学療法士・作業療法士学校養成施設指定規則の一部を改正する省令案をまとめた。質の高い理学療法士や作業療法士を養成するための履修総単位数を増やし、エックス線画像などの読み方を習得できるようにする「医用画像の評価」を必修化する。2020年4月からの入学生に対し、一部を除き、新たな養成カリキュラムを適用する予定。
厚労省は「理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会」を17年6月に立ち上げ、履修の総単位数の改正や臨床実習の在り方、専任教員の要件などについて議論。同年12月に教育内容の改正を盛り込んだ報告書を取りまとめていた。厚労省は、この報告書に基づき、規則の一部を改正することを決めた。
省令案によると、カリキュラムの総単位数を現行の「93単位以上」から「101単位以上」に増やす。「理学療法管理学」「作業療法管理学」の科目を新設し、両科目で「医用画像の評価」「喀痰等の吸引」を必修とする。基礎分野でも「社会の理解」の科目を新たに設ける。専任教員の質を担保するため、教員の要件も改正する。PTやOTとして「5年以上業務に従事した者」としている要件に、指定する講習会を修了したことを追加する。(8/18 CBnews)


次号のメールマガジンは10月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ