エンタプライズ発信〜メールマガジン【№87】 2018. 7

今やあまり説明を要しないほど周知度が高くなったアニサキス(症)。厚生労働省の統計によると、2007年は6件だった報告件数は2016年に20倍以上の124件に増え、食中毒の原因物質としてはノロウイルスとカンピロバクター菌に次いで3番目に多いということです。ここ10年ほどの急増は、2013年からアニサキスによる食中毒が届け出対象にリスト化されたのが一因のようです。しかし一方では、国立感染症研究所が約33万人の診療報酬明細書(レセプト)で推計したところ、アニサキス症と類推される年間発生数は約7000件に上る(2005年〜2011年の年平均)という報告があることから、厚生労働省の数字は氷山の一角との指摘もあります。感染源となっている魚介類は我が国の近海で漁獲されるものでも160種を超え、この中でもサバ(しめ鯖を含む)が最も重要な感染源と考えられています。そのほかアジやイワシ、イカ、また最近ではサンマが感染源になることはご存知のことでしょう。回避への対策は、魚介類の生食をしない、あるいは加熱後に食すること(60℃で1分以上)が確実な感染予防の方法となります。また冷凍処理(-20℃,24時間以上)によりアニサキス幼虫は感染性を失うので、冷凍ものを解凍後に生食することは感染予防に有効だと言います。なお醤油、わさび、酢がアニサキス症の予防に有効ではないかと期待されてきましたが、料理で使う程度の量や濃度、処理の時間では虫体は死なないそうです。そして刺身を食べる機会があれば、細かく砕くようによく噛むことを推奨するそうです。また正露丸がアニサキスに効くと風聞が伝わりましたが、アニサキスによる「痛み」に正露丸が効いたというもので、治療薬として有用という話ではありません。アニサキスという異物が消化管に入ってくるとそれを排除しようと消化管が動きますが、その動きを正露丸が整えるので一時的に痛みが和らぐという機序が医学的見解ということでした。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S

Information 1

第14回直立歯科医学研究大会開催予告 9/22-23

咬合バランスとヒト直立バランスの因果関係に着目し、上部頭蓋や下顎骨などの動きを歯科とヒト構造を統合し病理および検査・治療法を啓発しつづける日本直立歯科医学研究会の年次学術大会が札幌市で開催される。概要は以下のとおり。

  • 日時:9月22日(土)14:00〜18:30  *19:00〜懇親会
       23日(日) 9:30〜15:30
  • 会場:札幌市教育文化会館 4階講堂
  • 主催:日本直立歯科医学研究会
  • テーマ:「バランスよくまっすぐに立つ」がキーワード
         〜犬歯誘導の弊害とABCコンタクトの意味〜
  • お問合せ:http://douken.kenkyuukai.jp/event

Information 2

WFC世界大会が東京開催で決定。2021年

日本カイロプラクターズ協会(JAC)が日本代表団体として所属している世界カイロプラクティック連合(WFC)の「2021年世界大会」が東京で開催することが正式に決定しました。前回の開催は1997年ですから24年ぶりとなります。「観光庁・日本政府観光局・東京都・東京観光財団、業界団体、協賛企業など多くの関係者から誘致活動へ協力をいただいた結果」と同協会の竹谷内啓介会長が所信を述べました。詳細は本メールマガジンでも順次報告していきます。

Information 3

オープンセミナー 「ホメオパシーを知ろう!」 鹿児島

ホメオパシーの啓蒙活動を推進している日本ホメオパシー医学会では、多くの方にホメオパシーについて知っていただくために、オープンセミナーを開催している。7月は鹿児島市内にて行われる。 参加費無料。

  • 講義内容 :ホメオパシーとは/ホメオパシーの薬とは/ホメオパシーの診察とは/ホメオパシーの適応は/ホメオパシーは安全か
  • 開催日:7月22日(日)14:00〜16:00 <参加無料>
  • 講 師:板村論子氏(MD., Ph.D., MFHom)
  • 会 場:宝山ホール第6会議室(鹿児島県文化センター 鹿児島市山下町5-3 TEL:099-223-4221)
  • 参加資格:医師、歯科医師、薬剤師
  • 参加ご希望の方は日本ホメオパシー医学会事務局宛E-mailで 「参加希望」とお送り下さい。
    info@jpsh.jp(URL:http://www.jpsh.jp
★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

頑固な人はアルツハイマーに注意

[安保] 老化によってエネルギーの維持がむずかしくなると脳神経細胞も壊れやすくなりますね。
[太田] 神経細胞は急激なエネルギー低下により破壊されやすい。心理的なショックなどによってアルツハイマーになることは多いですね。
[安保] 家族に不幸があったときなど心理的なストレスの影響は大きいことが想像できますね。
[太田] 頑固な性格の人もアルツハイマーになりやすい傾向があります。頑固な人は一つの思考回路を押し通そうとするでしょ。頭も柔軟に使った方が保健にはいいということです。

生真面目さも病気の元

[安保] 頑固と似たのが生真面目ですね。パーキンソン病も神経細胞の減少が問題となりますが、パーキンソン病になりやすい職業は、教員、警察官、公務員が上位を占めます。規律が厳しくてほかの考え方が許されにくい環境で生きていると、一つの思考回路の中で緊張状態が続きます。交感神経の緊張が続くストレスで疲弊してしまうのでしょうね。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経難病でもストレスを減らして低体温の状態を避ければ進行を遅らせることができます。
[太田] 神経細胞が増えなくても新しい回路を増やすことはできます。ある神経細胞が死んだら、ほかの神経同士を結び付けるんです。少ない神経を使って新しい神経回路をつくろうというリハビリテーションの発想です。
新たな神経回路をつくるためには、ゆったりした気持ちで頭も柔軟にして、ストレスをためないことが大切です。音楽を聴いたり、楽しく体を動かすことは頭の体操にもなります。
[安保] 「これしかない」とか「許せない」とかいう気持ちが強い人ほど病気になりやすいですね。例えば遺産相続で兄弟が争って裁判を起こしたりするでしょう。訴訟で争い始めたら判決が出る前にほとんどの人が病気になってしまいますね。親の財産が転がり込んだら、争わず相手にあげてしまった方が長生きしますよ。(笑い)

姿勢を正すだけでもミトコンドリアは増える

[太田] 私は社交ダンスをするのですが、ミトコンドリアを増やせる要素に姿勢があるんです。
[安保] あ、なるほど、社交ダンスは皆さん背筋を伸ばして姿勢よく踊りますね。背筋を意識して使うということですか。
[太田] そのとおりです。社交ダンスでは背筋や太ももの筋肉をよく使います。姿勢を維持するための赤筋にはミトコンドリアが多い、ということです。
[安保] 私も自己流の体操をいろいろ考えてやっているのですが、身体全体を揺さぶるような動きも、赤筋を鍛えるのに効果的ではないかと思います。
[太田] 先生得意の一輪車も、背筋を伸ばしたほうがいいわけですね。
[安保] たしかに猫背では倒れてしまう。
[太田] 社交ダンスの場合、1曲がだいたい2-3分のことが多いから、運動量的にもちょうどいいのですよ。
[安保] 短時間に集中して背筋を使うことで、程良い負荷がかかるというわけですね。


連載vol.45

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

◇会話のダンス

前述の「ジャズの科学」はないかもしれないが、会話中の動きの調和なら研究テーマに取り上げた科学者がいる。ボストン大学医学部のウィリアム・コンドンである。コンドンが研究に用いたのは、会話をしている2人の人間を撮影したフィルムだった。彼は1つの単語の1つの音に関連する動きを調べたのである。例えば「ask (尋ねる)」という単語の発音にはおよそ5分の1秒 かかるが、1秒を48コマのフィルムに撮影すると、この単語を4つの部分に分けることができる。すると単語の最初の「ae」の発音には3/48秒、「E」の音には2/48秒、「S」の音に3/48秒、「K」の音に2/48秒、それぞれかかっていることがわかった。

最初の「ae」の音を発音するとき、話し手の頭はわずかに左上へ傾き、目は静止したまま、口は閉じた状態から前へ突き出し、そして4本の指が曲がり始める。次に右肩がやや内側に回る…。このように単語の各音には特徴のある一連の運動が伴うことがわかった。つまり言葉の音のリズムに合わせて、体が踊っているのである。
コンドンはまた1年半をかけて4秒半の会話を詳しく分析した。のべ10万回再生したところでフィルムが擦り切れたため、もう1本のコピーを取り出してそれを見た。同じフィルムの130本のコピーを何百万回と見て分析を繰り返した結果、コンドンは次のように結論に至ったのである。

――話し手と聞き手はそれぞれ、体のいろいろな部位を少しずつ動かすことによって調和のとれた「ダンス」を踊っている。1つの単語の1つの音には一連の運動が伴い、聞き手の動きは話し手の言葉に寸分の狂いもなく同調している。そして話し手と聞き手の動きには、一見してわかるような時間的ずれは認められなかった。(コンドン 1975) ――

話し手と聞き手が初対面であってもこのような同調化が起きる。一般に聞き手の動きは話し手ほど大きくなく、2人の動きが異なる場合もある。聞き手は話し手に対して反応しているのではなく、2人は一体化しているのである。驚くべき光景は、会話が一時中断したときの静寂の時間に認められた。話し手が話し始めようとする1/48秒間に、聞き手が一連の運動を始めたのである。
この研究は、いくつもの興味深い問題を提起している。例えば、言葉の始めと終わりは、単語の音の始めと終わりと比べて、いつ「認識」されるのかという問題だ。この問題に「時間」が関与していることは明らかである。ある言葉が聞こえてきて、それを聞きとったときに言葉を理解した、と私たちは思っているが、コンドンの研究によると、私たちは実際に聞くよりも前に、言葉を「感じとって」いることになる。(つづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』)


連載エッセイ 55☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


「脳の疲れ」を取る大切なポイント

ここ数年前から「マインドフルネス」というタイトルの書籍が日本でも増えてきました。マインドフルネスの定義は語る人によって多少異なりますが、「今この瞬間」の自分の体験に注意を向けて、現実をあるがままに受け入れることです。昔からある「瞑想」と似ていますが、マインドフルネスで特徴的なのは、宗教性を排除し、誰にでもシンプルに実践できるようにしているところです。しかも、脳科学的に効果が実証されているところに注目が集まっています。
特記できるのは、マインドフルネスを習慣的に継続していれば、脳の働きのみならず、脳の構造そのものが大きく変わっていくということです。そのような脳の変化を「可塑性」といいますが、十数年前より、人間の脳は何歳になっても使い方次第で変化が生じるということが明らかになってきています。
「瞑想」と聞くと、多くの人は「無心になる」「雑念を取り払う」といったことが思い浮かぶのではないでしょうか。マインドフルネスというのは、「意識を無にする」「何も考えないようにする」のとは真逆のことになります。つまり、意識を無にするのではなく、最大限に意識を向けることで脳が休まるのです。脳の休め方にはコツがあります。

*コツ1:今、ここに意識を向ける
「今、ここに意識を向ける」ということは、過去でもなく、未来でもなく、今そのものに意識を向けるということです。もしも、過去や未来に関する雑念が浮かんできた場合、その事実に「気づき」、「今の呼吸」に意識を戻します。

*コツ2:いい・悪いの判断はしない
もしも、過去や未来に関する雑念が浮かんできた場合、そこにいい・悪いの判断は入れないで、ただその事実を認識して、ゆっくりと「今の呼吸」に意識を戻します。

脳科学の研究では、脳の疲れは「過去や未来」に関する雑念や妄想から生じてくることがわかっています。身体や心を休めるために、多くの人は仕事のストレスから解放されて、自宅でゆっくりと過ごした方が肉体的にも精神的にも健康的だと考えがちです。しかし、休んだはずなのに逆に疲れを感じたり、体調不良を起こしてしまったという経験はないでしょうか。それは、休んでいるつもりでも脳は過去のことを引きずったり、未来の雑念を考えて判断し、脳が疲れてしまうからです。
マインドフルネスの目的は、過去や未来から生じるストレスから解放されることです。「今ここ」に意識を向けるということが大切で、こうでなければならないという細かな「ルール」に縛られることはありません。マインドフルネスには認知行動療法を応用して心の不調を改善する手法もあります。それは当院で行なっている心身条件反射療法のアプローチにとても似ています。そのポイントは以下の項目です。

1. ストレスに関係する善し悪しの判断を保留する
2. ストレスに関係する「信念」や「価値観」の由来を探る
3. ストレスに関係する「異なる前提」を考える
4. ストレスに関係する事実に慣れる
5. ストレスを広い領域や長い時系列で考える

脳を休息させるこれらの手法は、脳科学的にも最先端のアプローチとして紹介されています。脳の疲れは「過去や未来」に関する妄想や、善し悪しの「判断グセ」が多大な影響を及ぼしているという事実をしっかりと理解していただければ、さらに心と身体の健康が維持できると思います。

◆連載7◆

『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く

孫 維良(東京中医学研究所所長)

手のどこを使うかで圧の差が生じる(つづき)

このように手のどの部分を使うかによって、ツボや患部にかかる圧力と刺激の量が微妙に違い、それに伴ってひとりあんまの効果は微妙に変わってきます。しかも刺激の量は所要時間によっても左右されます。同じツボを刺激しても時間が足りないと効果は薄くなるものです。ですから適応する時間どおりに刺激し、もし時間に余裕があったら時間を増やしてください。時間が倍増することで効果が同等程度期待できるのです。

ゆったりとしたリズムで腹式呼吸を

無意識にする呼吸では、息を吸うときに腹が膨らむ腹式呼吸の人もいれば、他方、胸が膨らむ胸式呼吸の人もいます。
調息における呼吸法は、腹式でも胸式でもどちらでもかまいません。自分にとって無理のない呼吸をすればよいのです。ただし、両方試してみてどちらも楽にできるのなら、なるべく腹式呼吸をしてください。腹式の方が丹田に気を集めやすいからです。
調息のやり方はむずかしく考える必要はありません。まず鼻から息を吸いながら、ゆっくり腹部を膨らませていきます。次に口から長く深く息を吐きながら、腹部をへこませていきます。この呼吸法をゆったりとした一定のリズムで繰り返しましょう。

日常的な時間への回帰・収功

本項で最後にお伝えするのは、あんま気功法を終了するにあたって軽い一連の動作をして気功をおさめる「収功」のことです。これはスポーツのあとにクールダウンをする必要があるように、あんま気功法を終えるときに必要な手続きです(すべてのあんま気功法に必要なわけではありません)。
あんま気功法はあわただしい日常的な時間からチャンネルを切り替えて、つかの間の安らかで静かな境地へと移行することです。都会のオアシスではありませんが、日常的な時間と環境の中で、いくぶん異質な時間を体験するのです。
ですからこの異質な時間から元の日常的な時間に戻るにはもう一度チャンネルを切り替える必要があります。その動作が収功と言えます。
では、収功の具体的なやり方を紹介しましょう。

①両手の指を熊手のように曲げ、額の生え際に当てます。髪をすくようにして、両手の10本の指で頭のてっぺんに向けて頭を押しなでていきます。天頂に達したらさらに両手で頭を押しなで、後頭部の生え際まで押しなでます。
②両手のひらを左右の頬に当て、小鼻の脇→眉間→額→こめかみ→口の端→小鼻の脇と、ゆっくり楕円を描いて2-3回、顔をさすります。
③両手を水をすくうときのような形にして、その形のまま、肩や腰、足(脚)などを軽くたたきます。
 なお収功を行う必要があるのは、長い時間をかけるあんま気功法と逆腹式呼吸など特殊な呼吸法を行うあんま気功法だけです。それ以外のあんま気功法に関しては適宜注釈を入れていきます。

ここまでのいくつかの注意事項

・調身の大事なポイントは体をリラックスさせることです。自宅で行うときはベルトを緩め、腕時計や眼鏡も外します。
・激しい運動のあと、セックスの直後は体内の気が減衰しているため行わない。
・怒りやイライラしているとき、ショックで動転している状態では調心ができません。効果に期待が持てません。
・食後1時間以内およびきわめて空腹時はあんま気功法は理想的ではありません。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(62)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****

腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■腰痛分野の研究はこの20年間で目覚しい進展がみられ、腰痛疾患の疫学や理解が進んだにもかかわらず、腰痛の臨床転帰や活動障害の予防に改善は認められない。集学的チーム医療が行なわれていないからだ。このままでは急速な進歩は見込めない。http://1.usa.gov/kLP8z6
……これは変化を怖れるという人間の本能的な心理も働いているのかもしれません。医療関係者はこの恐怖心を克服して、新しい腰痛概念を臨床現場に導入していただきたいと願うばかりです。

■「激しい」「突き刺ささる」「ヒリヒリする」等の言葉で頭を満たした場合、レーザー光による熱刺激に対する感受性が増大して疼痛感覚が増強される。痛みに関連した言葉と疼痛刺激が組み合わさるとプライミング効果で疼痛体験が雪だるま式に膨れ上がる。http://1.usa.gov/mFRvuz
……症状に注意を集中するのはよくありません。「多くの場合、その効果が無意識的である点、およびかなりの長期間(例えば1年間)にわたり効果が持続する点、記憶に障害を受けた者にも無意識的なプライミング効果は損なわれずにある(機能し続けている)点に、この現象の面白さがある」って怖いじゃないですか。http://bit.ly/13qgOQk

■坐骨神経痛に対する椎間板手術は、保存療法よりある程度の優位性を示すものの一過性でしかない。ノルウェーのRCT(ランダム化比較試験)では1〜4年間優位性が持続したが (http://1.usa.gov/lflO3P)、オラ
ンダのRCTでは1年未満だった(http://1.usa.gov/l8WVTV)。
……椎間板ヘルニア手術の短期成績は比較的よいのですが、長期成績はといえば保存療法と変わりません。それでも手術を選択しますか? 手術は世界各国の腰痛診療ガイドラインが勧告している
保存療法を試してからでも遅くないと思います。

■議論の余地がない真実とされる信念、学説、慣行という腰痛分野における「聖域」を侵した双生児研究の業績は大きい。輝かしい賞を数多く受賞しているにもかかわらず、腰への物理的負荷が椎間板変性の危険因子だとする見方は変わらない。目を覚ませ。http://1.usa.gov/vUFBka
……姿勢によって椎間板にかかる圧力を測定したナケムソン(Nachemson)の有名な研究をサイトに掲載している人がいます。ナケムソンは後に椎間板にかかる圧力と腰痛は無関係だと断言していることも同時に伝えるべきです。それを怠っているということはすなわち、自分は勉強不足だと公言しているに等しい行為です。恥ずかしい話です。

■これまで職場での身体的負荷(重量物の取り扱い、不自然な姿勢での作業など)、自動車の振動、喫煙などが椎間板変性を加速すると考えられていたが、一卵性双生児を対象とした比較研究によって身体的負荷よりもむしろ遺伝子の影響が大きいことを発見。http://1.usa.gov/iPsKBC
……国際腰椎学会のボルボ賞を受賞した研究です。素人ならともかく専門家が知らないはずはありません。

■体重差のある(平均13Kg)一卵性双生児を対象にMRIで腰椎を比較した結果、体重が重い方が腰椎の骨密度が高く、椎間板の状態も良好だった。仕事やスポーツによる累積的かつ反復性の生体力学的負荷が椎間板にダメージを与えるわけではない。http://1.usa.gov/ldX4Zv
……仕事やスポーツを怖れてはいけません。腰への負担はむしろ腰痛を予防してくれます。

 N  E  W  S

NEWS■ 赤ワインの認知症リスクへの影響、男女で逆か!?

赤ワインの摂取頻度が高いと、男性ではアルツハイマー型認知症(AD)リスクが低下するが、女性では逆にリスクが上昇することが、スイス・チューリッヒ大学のKarina Fischer氏らの研究で示唆された。Nutrients誌6月号に掲載。
単一の“認知的健康”食品が認知機能低下を防げるかどうかのエビデンスは限られている。そこで著者らは、赤ワイン、白ワイン、コーヒー、緑茶、オリーブオイル、新鮮な魚、果物・野菜、赤身肉・ソーセージについて、単一食物摂取調査票で摂取頻度を評価し、AD発症および言語記憶の低下との関連を調査した。
対象は、German Study on Aging, Cognition and Dementia in Primary Care Patients(AgeCoDe)コホートの75歳以上の2,622人で、10年にわたって定期的にフォローした(418人がAD発症)。可能な効果修飾因子として性別およびアポリポ蛋白E4(APOE ε4)遺伝子型を考慮し、反復測定と生存分析の多変量補正ジョイントモデルを使用した。
その結果、赤ワインのみが摂取頻度が高いとAD発症率が低かった(HR:0.92、p=0.045)。興味深いことに、これは男性(HR:0.82、p<0.001)のみ当てはまり、女性では赤ワイン摂取頻度が高いとAD発症率が高く(HR:1.15、p=0.044)、白ワイン摂取頻度が高いと、時間とともに顕著に記憶が低下した(HR:-0.13、p=0.052)。本研究では、赤ワインにおいて男性のみADリスクが低下したが、それ以外の単一食品において認知機能低下に保護的であるというエビデンスは見いだせなかった。なお、女性は飲酒により有害な影響を受けやすい可能性が示唆された。(7/11 ケアネット)

NEWS ■糖尿病患者でパーキンソン病リスク上昇

2型糖尿病と診断された患者は、2型糖尿病のない患者と比べてその後にパーキンソン病を発症するリスクが高い可能性のあることが、英国の国民保健サービス(NHS)の大規模データを用いた研究で分かった。ただし、研究を率いた英ロンドン大学神経学研究所教授のThomas Warner氏は、2型糖尿病患者全体のうちパーキンソン病を発症する患者はわずかであり、結果には慎重な解釈が必要だとしている。「Neurology」6月13日オンライン版に掲載。
Warner氏らは、1999〜2011年のNHSの公的医療機関における全入院記録を収載したHospital Episode Statistics(HES)のデータを用いて、2型糖尿病の診断とその後のパーキンソン病の発症リスクとの関連を調べた。対象は、追跡期間中に新たに2型糖尿病と診断された患者201万7115人と捻挫や静脈瘤、虫垂切除術、股関節置換術といった糖尿病と関連しない理由で入院した患者617万3208人(対照群)とした。
その結果、2型糖尿病と診断された患者は、2型糖尿病のない患者と比べてその後にパーキンソン病を発症するリスクが1.32倍であることが分かった。また、網膜症や腎症、神経障害といった糖尿病合併症のある患者ではそのリスクは1.49倍になり、25〜44歳の若年患者ではさらに上昇して3.81倍に上ることも明らかになった。なお、今回の解析では糖尿病の薬物療法の内容や喫煙歴は考慮されなかった。(7/11 HealthDayNews)

NEWS ■膝や股関節の変形性関節症は早めの運動で改善

東京大学医学部付属病院22世紀医療センターによると、変形性関節症は、高齢者の要支援・要介護の原因疾患のそれぞれ1位と3位になっており、お年寄りの生活の質に直接関わる問題だ。特に変形性膝関節症は、国内患者数2400万人との推定もあり、膝の痛みを訴える高齢者の6〜7割がこれに該当すると見られている。
ただし、膝の変形性関節症は、痛みを感じる前に関節が曲げにくくなったり、逆に伸ばしにくくなったり自覚症状が表れるケースがほとんどだ。このため、手術が必要になる前に症状に気づけば、運動療法で改善を図ることもできる。
運動療法としては、1)膝関節を支える筋肉を鍛えて関節の負担を軽減する、2)血行を促進して関節液中の痛みを起こす物質を減少させる、3)運動による肥満改善で膝への負担を減らす――などの効果が期待できる。
代表的な運動には、膝を伸ばすための大腿四頭筋を鍛える「脚上げ体操」がある。イスに浅く腰掛け、片方の脚を伸ばしてゆっくり上げ、数秒静止後、ゆっくり下ろす――という運動だ。逆に、膝を曲げるための太もも裏の筋肉、ハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の総称)を鍛えることが必要な場合、うつぶせの姿勢から両脚をそろえたまま、かかとをお尻につけるように膝を曲げる「レッグカール運動」などが有効とされる。いずれにしても、それぞれの症状に応じた運動があるので、理学療法士などの指導のもとに行うことが必要だ。(7/6 毎日新聞)

NEWS ■生活習慣病とADL低下は認知症リスク因子の可能性

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などの研究グループが実施した大規模調査から、「風呂に入る」「洋服を着る」などの日常生活動作(ADL)に支障が出ることと、糖尿病やがんの既往、抑うつ、慢性的な痛み、聴力の損失は認知症のリスク因子である可能性のあることが分かった。「PLOS ONE」5月17日オンライン版に掲載。
2016年7月に日本医療研究開発機構(AMED)の支援により、NCNPなどは認知症の発症予防を目指したインターネット健常者登録システム(IROOP)の運用を開始した。認知症予防を目的に、公的機関が主導して40歳以上の健康な男女を対象に数万人規模のインターネット登録システムを運用するのは日本で初めて。研究グループは今回、IROOPの登録者を対象に、認知機能の低下と関連する因子について調べた。
対象は、2017年8月までに初回の全ての質問票に回答し、10単語記憶検査を完了した1,038人(平均年齢59.0±10.4歳、男性400人)と追跡時に行った質問票に回答し、2回目の10単語記憶検査を完了した353人(同60.2±10.0歳、男性139人)。質問票では健康状態全般や気分、QOL(生活の質)、睡眠習慣、食習慣、病歴、現在抱えている疾患などについて尋ね、10単語記憶検査から得られた記憶機能の指数(memory performance index;MPI)と関連する質問項目を調べた。
ステップワイズ重回帰分析の結果、「風呂に入る」「洋服を着る」「スケジュールを立てる」などのADLの支障度とそれに伴う気分の落ち込み、意欲の低下が認知機能の低下と関連する因子であることが分かった。さらに、糖尿病やがん、頭部外傷の既往、慢性的な痛み、聴力を失うことが認知症のリスク因子として浮かび上がった。これらの結果から、研究グループは「日常生活が難しくなると自宅に引きこもりがちになるため、社会活動への参加は認知症予防につながると考えられる。また、認知症にならないためには、糖尿病などの生活習慣病の予防が重要であることも示された」と結論づけている。(7/4 HealthDayNews)

NEWS ■「歩行速度」意識すると認知症リスク低減

近年、歩行速度が認知症など健康寿命に関わることがわかってきた。東京都健康長寿医療センターなどの研究報告では、歩く速度が遅いほど介護を必要とするリスクが高まり、認知症のリスクも上がることが分かっている。一方、有酸素運動や筋肉トレーニングを行う高齢者は、脳の容積が増えて認知症のリスクも低減するなど、運動と健康寿命延伸の関わりは深い。
「歩行速度が速いことは、健康寿命を延ばします。高齢であっても、歩行速度を速くすることは可能です。少しだけ速く歩くことを意識すればいいのです」。こう話すのは、東京都健康長寿医療センター高齢者健康増進事業支援室の大渕修一研究部長。長年、健康寿命を延ばすためのさまざまな研究を行っている。
歩行速度といっても「自分は速いのか、遅いのかわからない」という人もいるだろう。厚労省の年代別の歩行速度の基準は、40代で120m/分、50〜60代は115m/分。それを簡単に知るために、大渕部長は民間企業が提供するスマートフォンの無料の歩行速度健康促進アプリ「チャミ」の開発に協力した。ダウンロードして自分の位置情報の影響をアプリに許可すると、歩行速度が自動で測定され、健康状態がチェックできる仕組みだ。
一昨年、大渕部長が支援して民間企業と北海道伊達市が行った共同研究では、60歳以上の約150人の住民に歩行速度健康促進アプリを使用してもらい、国民健康保険等の医療費の推移を調べた。すると、アプリ使用から3カ月後には医療費が下がり始め、年間に換算すると医療費を約1割下げるのではないかと推計されたという。(7/4 夕刊フジ=一部)

NEWS ■ガムを噛みながら歩くと運動効果がより高まる

ガムを噛みながら歩くと、噛まなかった場合と比べて心拍数が増え、エネルギー消費量が増加する可能性があることが、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授の宮下政司氏と濱田有香氏らの研究グループとロッテの共同研究で分かった。特に40歳以上の男性で高い運動効果が得られたという。「Journal of Physical Therapy Science」4月号に掲載された。
宮下氏らの共同研究グループは今回、交感神経活動や心拍数、エネルギー消費量を増加させることが以前より報告されているガムの咀嚼に着目。健康な男女を対象に、歩行中のガムの咀嚼が身体機能や生理機能に与える影響について検討した。
研究では、21〜69歳の健康な男女46人を対象に、安静に1時間過ごしてもらった後に(1)ガムを噛みながら、あるいは(2)ガムベースのみを除いたガムと同じ成分の粉末を摂取後に何も噛まない状態で、自分のペースでウオーキングを15分間行ってもらった。その際には心拍数と歩行距離、ケイデンス(ピッチ=歩数/時間)を計測し、歩行速度、歩数、歩幅、エネルギー消費量を算出した。
その結果、ウオーキング中の心拍数は、ガムを噛みながら歩行すると、噛まなかった場合と比べて有意に3%増加することが分かった。こうした心拍数の増加は男女ともに認められた(男性では2.1%増、女性では3.8%増)。特に40歳以上の男性でガムを噛みながら歩行すると歩行距離(3.5%増)と歩行速度(3.5%増)、歩数のほかエネルギー消費量が有意に2.5%増加した。
研究を率いた宮下氏によると、この結果について、ガムを噛むと心拍数が増大し、心拍リズムと運動リズムが同期する現象が生じて歩行距離や歩行速度、歩数といった身体機能が増大した可能性が考えられるという。また、こうした心拍と運動のテンポが同期する現象は若年者よりも高齢者で起こりやすいことが分かっており、高齢者の健康維持に歩行中の咀嚼運動を活用することが期待されるとしている。(7/2 HealthDayNews)

NEWS ■健康障害があっても運動するための秘訣――米専門家

米国心臓協会(AHA)は健康を維持するためには、中強度の運動を週に150分間行うことを推奨している。米クリーブランド・クリニックの運動生理学者であるChristopher Travers氏は、同病院のホームページで、こうした健康障害を抱える患者が運動を始める際の秘訣を紹介している。同氏によると、健康に問題があっても適切な運動は疾患管理に有用なツールになるという。まず、Travers氏は、糖尿病や心臓病などの慢性疾患の予防には早歩きやサイクリングなどの運動を週に150分間行うことを推奨している。健康的な食習慣も取り入れれば、糖尿病のリスクは3分の1程度に低減し、さらに善玉コレステロール(HDL-コレステロール)の値も上昇する。また、運動は減量につながるだけでなく、血圧や中性脂肪の値を低下させ、心臓病のリスク因子も管理できるという。
次に、慢性疾患患者が運動すると症状は改善され、薬の減量にもつながると、同氏は強調する。運動で筋肉がつくと楽に身体を動かせるようになり、精神的なストレスも軽減できるという。Travers氏は、慢性疾患患者が運動を始める際の秘訣として、(1)走らずに歩く、(2)軽い有酸素運動を選ぶ、(3)ゆっくりとした速度で始める、(4)エクササイズバンド(resistance band)を使う-の4つを挙げている。また、それぞれの慢性疾患患者が運動で得られるベネフィットは次のとおり。
・心臓病患者では、定期的な有酸素運動とインターバルトレーニング(間欠的運動)の効果は特に心臓で大きく、心血管系のフィットネスが増強される
・腰痛患者では、体幹トレーニングを行うと脊椎の周辺の筋肉が強化され、脊椎の支えが安定する
・関節炎患者では、運動すると関節を支える筋肉が強化され、身体を動かしやすくなる。同時に筋肉のこわばりも改善する
・糖尿病患者では、運動するとインスリンを効率的に利用できるようになり、血糖値が低下する
・喘息患者では、運動により発作のコントロールが楽になる
(6/29 HealthDayNews)

NEWS ■全年齢で注意! 熱中症の怖さ…死亡や後遺症も高率

2000〜16年に発表された熱中症関連文献のレビューによると、熱中症90例のうち、約2割が死亡、約2割が長期の神経学的後遺症を患っていたことが、オーストラリア・Royal Adelaide HospitalのEmily M. Lawton氏らによる調査で明らかになった。また、神経学的障害のある患者の7割以上が長期の小脳機能障害を有しており、小脳構造が熱に弱いことが示唆された。さらに、永久的神経学的障害を認めた症例の多くが若くて健康だったことから、著者らは「年齢や合併症に関係なく、熱中症の予防および治療に積極的な介入が必要である」と強調した。Emergency medicine Australasia誌オンライン版5月31日号の報告。
地球温暖化の影響で、気温が上昇している。暑さが熱中症などの有害な健康被害をもたらすことはよく知られているが、熱中症による長期的な影響についての報告は少ない。そのため、本研究では、2000〜16年に発表された熱中症関連の医学文献(症例報告)をOvid MedlineおよびEmbaseで検索し、熱中症の神経学的な転帰について調査した。主な結果は以下のとおり。
・関連性が高いと判断された論文が71件あり、90例について検討を行った。
・急性神経症状を呈した症例が100%、非神経学的症状を呈した症例が87.8%であった。
・44.4%が完全回復、23.3%が死亡、23.3%が長期の神経学的後遺症を患っていた。8.9%は長期のフォローアップができなかった。
・死亡および神経学的後遺症を有する患者の57.1%は、合併症がなかった。
・神経学的障害には、運動機能障害66.7%、認知障害9.5%、運動・認知障害19%、その他4.7%が含まれていた。
・神経学的障害のある患者の71.4%が長期の小脳機能障害を有していた。
・神経学的障害のある患者で転帰が判明している生存者のうち、永久的神経学的障害を認めたのは34.4%で、その多くは若くて健康な症例であった。
(6/25 ケアネット)

NEWS ■鍼灸の先人・杉山和一記念館…貴重な文献、治療所も併設

視覚障害者教育のパイオニアといわれる江戸時代のハリ師・杉山検校(1610〜94)。ゆかりの資料を集めた杉山和一記念館(東京都墨田区千歳1)ができて2年、鍼灸マッサージ師を志す学生らが足を運んでいる。
記念館は和一生誕400年を機に、公益財団法人・杉山検校遺徳顕彰会が『平成の鍼治講習所』として企画し、2016年4月できた。江島杉山神社の一角にあり、江戸期以降の文献約400冊や経穴人形(鍼灸のツボ、経絡を示す人体模型)、円鍼といった「刺さないハリ」など道具類約40点を保存・展示。鍼灸マッサージの「杉山鍼按治療所」も併設している。
3年に1度の同神社本祭りが行われた6月17日。長崎市から来た鍼灸専門学校1年の女性は、「前から記念館について聞いており、管鍼法の歴史を知りたくて」と資料に目をこらしていた。また、資料室と同じフロアにある治療所で鍼灸師の太田耕奨主任の経絡治療の手技を見学。「次は白衣持参で実習にどうぞ」と声を掛けられ喜んでいた。
鹿浜秋信常務理事は「ヨーロッパで盲人教育が始まったのは18世紀。それより100年ほど早く和一は鍼治講習所を開いている」と先見性を強調した。江島杉山神社の田部宮司は「鍼灸の国家試験前に、受験生が合格祈願のお守りを求めに来る」という。治療所は全盲、弱視、睛眼の計13人が当番制で施術し、金曜日休み。(7/11 福祉新聞)


次号のメールマガジンは8月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ