エンタプライズ発信〜メールマガジン【№73】 2017. 5
日本は今後「多死社会」に突入します。高齢化社会が訪れ、さらに団塊世代が段階的に他界していく構図があるからです。ところが社会インフラである火葬場は逓減しています。1988年には全国に1900以上あった火葬場が、現在は1500ほどまで減っているのです。今後死者数は増えるのに、荼毘に付す火葬場は減る一方。足りないのなら増やすしかないのですが、街のイメージの悪化を危惧する声に加え、不動産価格が1割〜2割も減少するという噂があるようです。弥縫策として縁起が悪いと言われ葬儀や火葬を敬遠してきた友引に行う行政も出てきています。混んでいるので必然的に葬儀や火葬の日取りは先送り的になります。通夜までに9日かかったというケースがあるほどです。編集子の妻の母が10日未明に逝去しました。16日通夜、17日が告別式でした。死去から斎場にたどりつくまで6日半かかったことになります。この間、自宅で大量のドライアイスを毎日交換しながら亡骸を保存しました。しかし長く安置していると〝化粧〟した顔相が変わってくるなど違った苦悩が生じるのも事実です。テレビでは葬式まで故人を安置しておく「遺体ホテル」というビジネスが紹介されていました。火葬場が増えないのなら遺体を安置しておく場所を増やそうという発想です。そこでは葬儀も執り行うということですが、仮安置所を増やすという発想は間違っていないと思います。近年では葬送の仕方が散骨や樹木葬、宇宙葬まで多様化していますが、つまるところ、火葬を終えないとままなりません。各地域の行政も手を拱いているわけではないでしょうが、一筋縄ではいきそうにない今日的お葬式事情が横たわっています。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて 〜チベット医学
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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Information
毎年、ホメオパシーの啓蒙活動を推進している日本ホメオパシー医学会では、多くの方にホメオパシーについて知っていただくために、オープンセミナーを開催していく。5月は兵庫県神戸市内にて行われる。 参加費無料。
◇講義内容 :ホメオパシーとは/ホメオパシーの薬とは/ホメオパシーの診察とは/ホメオパシーの適応は/ホメオパシーは安全か
◇開催日 :5月27日(土)14:00〜15:30 <参加無料>
◇講 師 :板村論子(MD., Ph.D., MFHom)
◇会 場:神戸市医師会館会議室(兵庫県神戸市中央区橘通4-1-20 TEL:078-351-1410)
◇参加資格:医師、歯科医師、薬剤師
◇参加ご希望の方は日本ホメオパシー医学会事務局宛E-mailで「参加希望」とお送り下さい。
info@jpsh.jp(URL:http://www.jpsh.jp)
連載vol.31
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
その他の情報伝達系
細胞間のコミュニケーションにNOが果たす役割が解明されたことによって、根本的な問題が浮かび上がってきた。つまり生体にはNO以外にいくつかの情報伝達系が存在するのかという問題である。
体内のシグナルを伝えるシステムとして、私たちが真っ先に考えつくのは神経系だろう。神経科学の研究者たちは、何十年という時間をかけて、神経系の驚くほど高度な仕組みを明らかにしてきた。しかし筋肉に酸素や栄養素を供給する細動脈と筋肉との間には、両者をつなぐ神経はない。だからこそNOが発見されるまで謎は解けなかったのだ。
次によく知られている情報伝達系は、体内のあらゆる細胞に調節ホルモンを送り届ける循環系である。そして第3のしくみが、体の内外を問わず、どこに「侵入者」が入っても移動して敵と戦う免疫系だ。これらのシステム(神経系・内分泌系・免疫系)同士の相互作用は、それだけで興味深い研究分野となり、そこから「精神神経免疫学」という重要な学問分野が新しく誕生した。
一方、体内のコミュニケーションをエネルギー的に説明しようとする研究は、生体防御システムを明らかにするうえで重要であるにもかかわらず、偏見のために遅々として進んでいない。エネルギーフィールドは、10秒で消え去る拡散性の気体よりも、さらに素早く情報を伝達できる天然の媒体である。ある種のエネルギーは光と同じ速さで伝わり、また瞬間的に伝わるエネルギーもある。このように有効な伝達手段を、自然が「奥の手」として使わないはずがない。そこで現代の医学研究の中では比較的目新しくとも、その存在を証明する根拠は多数あるいくつかの情報伝達系について、この後の項で解説していく。
「時期尚早」だった先駆者
幸運な先駆者いたこととは対照的に、新発見を認めてもらうために、もがき苦しんだ先駆者もいる。その典型が、19世紀半ばのウィーンの医師ゼンメルワイスの発見である。ゼンメルワイスは、手洗いによって患者を「目に見えない力」、つまり細菌から守ることができるという、当時の医学を根底から覆すような発見をしたのである。
分娩に立ち会う前には手を洗うことをゼンメルワイスが産婦人科医たちに提案したとき、誰もがばかげた考えだと反発した。彼は目に見えない新しい要素が治療の場に存在することを発見していたのである。今で言う感染症の発見だった。(つづく)
(出典『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊))
連載エッセイ ㊷☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
「頑張る」と「努力する」の違いを知って、パフォーマンスを向上させる
私たちは日ごろ誰かに「頑張ってね」と声をかけたり、自分に「努力しなければ」と言い聞かせたりします。似たようなニュアンスですが、両者には大きな違いがあるあります。
一般的に試合前には、「頑張って〜」と応援しますが「努力して〜」とは言いません。頑張ることや努力することは美徳かのように言われがちですが、前号でも記しましたが、スポーツや武道の試合結果を振り返り、頑張りすぎて本来の力が発揮できなかったというアスリートの話はよくあります。しかし、努力しすぎて本来の力が発揮できなかったという話はほとんど耳にしません。「頑張る」と「努力する」は、どのような違いがあるのでしょうか?
例えばスポーツに例えると、努力して結果を出すということは、長期的にコツコツとトレーニングを繰り返し行うことで自然に結果が伴うということです。1日努力したからといってすぐに結果が出るわけではありません。トレーニングをコツコツと長期的に積み重ねることで、無意識的に脳に学習され、それに伴って身体能力が上がってくるわけです。
その一方で、頑張って結果を出すということは、短期的に、今の自分の力を発揮するということです。意識的に脳を活動させようとするわけです。つまり、頭で考えて身体を動かそうとします。「火事場の馬鹿力」という諺がありますが、その場合は、単に意識的に頑張るという以上に無意識的な筋肉の働きが作動して、普段の頑張り以上の力が発揮できるようです。
先日、バドミントンの選手が準決勝で敗れた原因を分析すると、頭(意識)で戦略を考えすぎて、本来の力が発揮できなかった可能性があるということがわかりました。アスリートが「ピークパフォーマンス」、あるいは「ゾーン」といった精神状態でプレーしている試合を振り返った場合、そのようなアスリートたちは頭(意識)で考えてプレーしているでしょうか? いいえ、多くの選手は無我夢中でプレーしているのではないでしょうか。
最高のパフォーマンスを発揮したプレーヤーは、試合に集中して、自分自身に対してああしろ、こうしろなどと意識的に指示を出したり、どうしたら相手に勝てるかなどと頭で考えてプレーしていないでしょう。恐らく今まで努力してきた練習や試合の経験が脳に蓄積され、プログラム化されたとおりに「無意識」が身体を自然に動かしてくれるといった感じではないでしょうか。
無意識だからといって何も考えていないわけではないでしょう。「雑念がない」という言葉の方が適切かもしれません。いつもの練習どおりに、あるいはそれ以上に相手への意識が高まっているかもしれないし、シャトルやコートに意識が集中しているかもしれません。どこへ動き、どこへ打つかは、今まで培った練習の成果や経験で脳にプログラム化されているはずです。脳に蓄積されたプログラムを信じて、あとはそれに委ねるだけです。
試合でベストなパフォーマンスを発揮するためには、頭(意識)で「頑張る」というよりも、今まで培った努力の成果を無意識に発揮させるということになるでしょう。試合の戦略、戦術も練習で努力して脳にできる限りプログラム化し、本番ではそれを無意識的に使うということになるでしょう。何をするという意識的な命令ではなく、それはあたかも「自然」に動いているという感じで最高のパフォーマンスに達するのだと思います。
試合中には、瞬間瞬間に様々な動きが要求されます。肉体のどこどこの部分にどのように動けと意識して考える余地は残されていません。いわんや、戦略を考える余地などないはずです。自分の努力の成果によって無意識に発揮できる自分自身を信頼して、無我の境地でプレーするのがベストなのです。
《連載55》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
このあと紹介することとなる『ギュー・シ』の「根本タントラ」第1章の冒頭部分には、同書の長いフルネームがある。その一部である「アシュターンガ(8部門)」こそは、アーユルヴェーダで言う古代インド医学の8つの科目である。すなわち、①身体の一般的病気、②小児の病気、③婦人の病気、④悪霊によって起こる障害、⑤武器などによる障害、⑥中毒による障害、⑦老衰による障害、⑧強精法(男女それぞれ)である。
①と⑥は現在の内科、②は小児科、③は婦人科、④は精神神経科、⑤は外科、⑦は老人科に相当することは論を待たないであろう。各科の詳細については『ギュー・シ』の第3部「秘訣タントラ」で論じられることになる。
<尿診について>
チベット医学の診断法の一つに尿診があり、それは大きな特徴となっている。『ギュー・シ』にしても「タンカ全集」にしても、尿診についての記述は詳細である。そのことと関連しているのだろうか、尿診はチベット医学のオリジナルであると一般に考えられている。だが『四部医典タンカ全集』のタンカ68「尿診」その5には驚くべきコメントが付されていた。
ジナミトラ祖師の尿診打卦全図/ジナミトラ尿診打卦細部図/ジナミトラ中心部の拡大図、というものである。しかも注釈として、「ジナミトラ祖師とは古代インドの著名な医僧であり、吐蕃王朝の時期、招かれてチベットにやってきた」とある。尿診という非常に優れた診断法の源泉が、少なくともその一部はアーユルヴェーダにあったのである。
自然やその現象を認識するキーワードを、チベットと中国で比較すると、次のようである。
チベット=地・水・火・風・天
中 国=木・火・土・金・水
この関係で、水・火・地(土)は対応するが、チベットの風と天、中国の木と金はそれぞれ別個の認識を示しているように思われる。この五行の対応関係とアーユルヴェーダとの比較、脈診についての比較、灸の源泉など、チベット医学はすでに述べたように、歴史的に多方面の古医学を吸収してきただけに、これからの研究に待つテーマが少なくないのである。(次号につづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(48)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■臨床医はアスリートの心理社会的因子を慎重に評価すべき。疼痛が患者にどのような心理的影響を与えているか、不自由を強いられることによる社会的・経済的・法的影響、病気か健康かによって何を得るかを理解しなければならない。http://1.usa.gov/Q5zcWR
……腰痛を主訴とする患者、局在の不明確な下肢痛を有する患者、膝下まで疼痛の拡散がみられない患者、画像所見と臨床症状が一致しない患者は椎間板切除術の適応となりません。椎間板ヘルニアが補償の対象となる業務上の障害によると信じている患者の手術成績は良くないことも覚えておきましょう。
■腰部脊柱管狭窄症による椎弓切除術を受けた患者88名を約10年間追跡調査した結果、75%が手術の結果に満足していたものの、23%が再手術を受け、33%が重度の腰痛を訴え、53%が2ブロック程度の距離も歩けないことが判明。http://1.usa.gov/Q5Iwdr
……腰部脊柱管狭窄症の手術成績は年月が経つにつれて悪化するということです。ちなみに20%の患者が大腿部・下腿部・足部に強い痛みを訴えていました。
■腰痛と坐骨神経痛に対する硬膜外ステロイド注射に関するRCT(ランダム化比較試験)の系統的レビューを実施した結果、硬膜外ステロイド注射の有効性を示す科学的根拠は見出せなかった。もし効果があるとしても短期間しか持続しない。http://1.usa.gov/RMS79z
……すでに硬膜外ブロック注射の保険適応を制限し始めている国や地方があります。医療従事者が自分の腰痛患者に行なう治療に関して、完全な支配権を握っている時代は終焉に向かっています。いつまでもエビデンスのない治療を続けているわけにはいきません。
■自動車保険制度のないリトアニアにおいて、過去3年間に追突事故に遭った202名と交通事故の経験のない202名を対象に、頚部痛・頭痛・腰痛・神経障害などの有無と頻度を詳細に比較した結果、両群間に有意差は認められなかった。http://1.usa.gov/RMVVaL
……むち打ち症は後遺症が怖いという話をよく耳にしますし、それが常識のように思われがちですが事実ではありません。追突事故によって長期にわたる障害など起こらないのです。むち打ち症による後遺症などただの迷信にすぎません。信じられない人は置いて行きます。
■平均年齢40歳の健常者60名を対象にMRIで胸椎を調べた結果、37%に明らかな椎間板ヘルニアが、53%に椎間板膨隆が、58%に線維輪断裂が、29%に脊髄の変形が認められた。無痛性胸椎ヘルニアはきわめて一般的な所見。http://1.usa.gov/RNhYhG
……ひと昔前までは画像検査で胸部椎間板ヘルニアが見つかると手術が行なわれていましたが、今では数多くの研究により無痛性胸部椎間板ヘルニアはよく見られるだけでなく、自然経過も安定していることが明らかになっています。筋骨格系疾患では画像所見と臨床症状は一致しないのです
■慢性リウマチ患者18名の疼痛や機能障害などと患者が住んでいる地域の気圧・気温・湿度を分析した結果、患者の症状と気象条件との間に関連性は認められなかった。これまで天候が関節痛に影響するという結果が得られた研究はない。http://1.usa.gov/RNYAB5
……これは「選択的関連付け」と呼ばれる現象です。すなわち、慢性関節炎の患者さんは、症状が悪化した時には天候の変化に気づくものの、症状が安定している間は天候を気にしないのです。症状が現れる時期は、痛みが和らいでいる時期よりも印象に残りやすいので、患者さんはその時に起こった偶然の出来事をよく覚えている可能性が高いというわけです。
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (73)
根本 良一(療動研究所主宰)
【 連動操体法の応用編 】
[8] 頭痛、頭が重い
2)足指をまわす
足は人類が二足歩行をする生活で一番重要な器官である。足指は立つときのバランスをとり、歩行の際は各方面への体重移動の起点になる。こうした負荷の蓄積で足指は疲れ、その歪みは全身に連動する。
この起点となる疲弊した足指を気持ち良い方へゆっくりまわしてみる。片方ずつ、両足を一緒に、ともに脚に補助具を当ててまわす。この動きは阻害されなければ、快いものであれば、遠くまで連動して、背から腰〜首、腹から胸〜首と上位まで伝わり、全身を癒してくれる。
3)中足骨をまわす
足裏は、中足骨の部分で大きさ順のような形のアーチをつくり、それを支える多くの筋、靭帯で成立している。この部位は直立、歩行などで大変疲れている。前項の足指まわしと同じように、この中足骨まわしをすると動きが全身に波及し、大変気持ちが良い。そしていろいろなストレスが解消される。
連動操体法では、足首近くの中足骨基部関節を片手で軽く押さえ、ほかの手で中足骨先端の中足指節関節を軽く押さえ、ゆっくり大きくまわす。
足指まわしと同じように、「逆側大腰筋の影響」から足指の動きが柔らかになるように、膝裏に枕などを挿入して、ラクに柔らかに気持ち良い方へまわせばよい。
(本連載は今回をもって終了いたします)
N E W S
兵庫県内の小中高・特別支援学校で2016年度に行われた歯科検診で、虫歯などが見つかり「要受診」とされた約3万5千人のうち、歯科の受診が確認できない児童・生徒が約2万3千人、65%に上ることが県保険医協会の調査で分かった。未治療の虫歯が10本以上あるなど「口腔崩壊」の子どもがいる学校の割合も35%に上った。同協会は「全体的に子どもの虫歯は減少傾向なのに二極化が進んでいる。背景に貧困などの厳しい社会状況がある」と指摘する。
調査は17年3月、医師や歯科医師らでつくる同協会が初めて実施。県内の1409校を対象に行い、19%に当たる274校(11万415人分)から回答があった。大阪府や長野県などでも各保険医協会が同様の調査を行ったが、似たような傾向があるという。受診が確認できなかったのは、小学校が46%、中学校で64%、高校は84%と年齢を経て高くなり、特別支援学校は62%だった。
口腔崩壊の児童・生徒がいる場合、家庭状況について尋ねた(複数回答)ところ、一人親家庭が37%で最も多く、保護者の健康への理解不足(33%)、経済的困難(32%)などが目立った。口腔崩壊は調査で計346人おり、同協会は「単純計算で県内に1500〜2千人程度と推定できる」としている。(5/18 毎日新聞)
うつ病治療は進歩しているにもかかわらず、3分の1のうつ病患者は、従来の抗うつ薬では対応できていない。副作用の少ない、より効果的な治療が求められている。ドイツ・フライブルク大学のJohannes Naumann氏らは、うつ病性障害を有する成人において温熱浴がうつ症状を軽減するかを検討した。BMC complementary and alternative medicine誌2017年3月28日号の報告。
ランダム化2アームプラセボ対照8週間のパイロット試験として実施した。ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)17項目版のスコア18点以上の中等度のうつ病であった安定したうつ病性障害(ICD-10:F32、F33)の外来患者を対象に、週2回の温熱浴(40℃)群またはグリーンライトによる偽介入群に無作為に割り付け、4週間介入を行った後、さらに4週間フォローアップを行った。主要アウトカム指標は、ベースライン(T0)から2週間時点(T1)までのHAM-D総スコアの変化量とした。主な結果は以下のとおり。
・対象患者36例は、温熱浴群17例、偽介入群19例に無作為に割り付けられた。
・intention-to-treat分析では、T1における温熱浴群(温熱浴4回実施後)は、偽介入群と比較し、HAM-D総スコア3.14点の有意な差が認められた(p=0.037)。
著者らは「本パイロット試験で、温熱浴がうつ病患者において一般的に有用であることが示唆された」としている。
(5/17 CareNet)
JPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)において、日本人の食事パターンと全死因、がん、心血管疾患による死亡との関連を調査した結果、健康的な食事パターンと欧米化された食事パターンでは、全死因および心血管疾患の死亡リスクが低いことが示唆された。欧米化された食事パターンでの結果はこれまでの報告と矛盾するが、研究グループでは塩の摂取が少ないことや飽和脂肪酸の高摂取による寄与の可能性を考察している。PLOS ONE誌2017年4月26日号に掲載。
対象は、JPHC研究の2次調査(1995〜98年)に参加し、重大な疾患の既往歴のない45〜74歳の男性3万6737人と女性4万4983人。食事パターンは、食事摂取頻度調査票によって確認された134品目の食品および飲料の摂取量から抽出した。また、2次調査から2012年までの死亡のハザード比は、cox比例ハザード回帰分析を用いて推定した。主な結果は以下のとおり。
・健康的な食事パターン(野菜、果物、大豆製品、いも類、海藻類、きのこ類、魚の摂取量が多い)は、塩の摂取が多いにもかかわらず、全死因および心血管疾患による死亡の低下と有意に関連していた。
・健康的な食事パターンスコアの最低四分位に対する、最高四分位での死亡の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は、全死因死亡が0.82(0.77〜0.86)、心血管疾患による死亡が0.72(0.64〜0.79)であった(どちらも、傾向のp<0.001)。
・欧米化された食事パターン(肉類、加工肉、パン、乳製品、コーヒー、紅茶、ソフトドリンク、ドレッシング、ソース、マヨネーズの摂取量が多いが、塩の摂取量が少ない)も、全死因、がん、心臓血管疾患による死亡リスクと逆相関していた。
・伝統的な日本の食事パターン(ご飯、みそ汁、漬け物、魚介類、果物などの摂取量が多い)は、これらのリスクと関連していなかった。
(5/11 ケアネット)
膝関節から「ポン」「カチッ」「パチッ」などの音がする場合、近い将来、関節炎になる場合があるという研究結果が、米ベイラー医科大学(ヒューストン)助教授のGrace Lo氏らにより報告された。
膝関節で音がすることが多いと訴える中高年者では、翌年に膝関節炎の症状が出現する可能性が高かったという。膝関節で「常に音がする」人では、そのうち11%に1年以内に膝関節炎の症状が発現したのに対し、「全くしない」人では4.5%に過ぎなかった。「時々する」「よくする」人では、約8%に翌年、膝関節炎の症状が発現した。
Lo氏は、「こうした軋轢音(crepitus)は多くの人にみられるが、症候性の膝関節炎を予測できるかどうかはこれまで不明であった。しかし本研究で、関節音は膝関節に何らかの問題があることを示唆する場合もあると示された」と話している。症候性の膝関節炎とは、X線画像上で軟骨の徴候がみられるだけでなく、それによって頻繁な痛みやこわばりを呈するものを指す。
「Arthritis Care & Research」オンライン版に5月4日掲載された今回の研究では、45〜79歳の約3500人を対象とした。対象者には高齢で膝関節炎リスクが高い人や、肥満や膝損傷の既往歴などのリスク因子を持つ人も含まれていた。そのため、今回の結果が、例えば35歳で運動時に膝が鳴るという人にも当てはまるのかは明らかではない。
(5/5 HealthDayNews)
花粉の季節に雨が降ると花粉が地面に落ちるため、アレルギー性喘息の症状は和らぐことが多い。しかし、米ジョージア大学地理学教授のAndrew Grundstein氏らの研究報告によると、雷雨の場合は必ずしもそうなるとは限らず、むしろ喘息の集団発生の引き金になる可能性があるという。
例えば、2016年にオーストラリアを襲った雷雨では、高濃度の牧草花粉が強風によって飛散し、雷雨喘息(thunderstorm asthma)の集団発生が起こった。それにより複数人が死亡し、大勢の人が呼吸障害のために医療機関を受診した。
今回の新たな研究によると、花粉の粒子は降雨と高湿度によって水分を含み、膨張して破裂する。この粒子は雷雨の電気的な活性の影響でさらに小さく砕かれ、強風によって嵐の進行方向に飛散する。こうした条件がいくつか重なると、喘息の集団発生につながる可能性がある。
研究共著者である同大学地理学・大気科学教授のMarshall Shepherd氏は、「われわれの方法論は雷雨喘息の集団発生を予測できるまでには至っていないが、公衆衛生当局にとっては、それぞれの嵐が危険かどうかを警戒するときの重要な判断材料の1つになると思われる」と話している。研究は、「Journal of Applied Meteorology and Climatology」オンライン版に5月3日掲載された。
(5/3 HealthDayNews)
最近の観察研究では、白米摂取と糖尿病リスクの間に正の相関関係が、また緑茶・コーヒー摂取と糖尿病リスクの間に保護的な関連が示唆されている。しかし、これらの飲食物の相互作用は検討されていない。今回、九州大学の平田明恵氏らが実施したわが国の高齢者における前向き研究において、米の摂取量と糖尿病リスクの正相関は女性でのみ認められ、その相関は緑茶を多く摂取することで抑制される可能性が報告された。Asia Pacific journal of clinical nutrition誌2017年5月号に掲載。
本研究のベースライン調査(2004〜07年)に参加した日本人の男女のうち、1万1717人(91%)が追跡調査(2010〜12年)に応じた。多重ロジスティック回帰分析を用いて、穀物食品(米、パン、麺など)、緑茶、コーヒーのそれぞれで摂取量別の糖尿病発症のオッズ比を算出し、さらに米摂取による糖尿病リスクの増加が緑茶とコーヒーの摂取でどう変化するかを調べた。主な結果は以下のとおり。
・糖尿病の新規発症が464例で確認された。
・女性のみ、米の摂取量と糖尿病発症の間に正相関が示され(傾向のp=0.008)、緑茶の摂取量と糖尿病発症の間に逆相関を示した(傾向のp=0.02)。
・コーヒーは男女共に糖尿病発症との関連が認められなかった。
・緑茶摂取量による層別解析で、緑茶を1日7杯以上摂取する女性では、米の摂取量と糖尿病発症の関連が消失した(相互作用のp=0.08)。
(5/2 CareNet)
高齢者では骨密度と筋肉量が徐々に低下するため、転倒して怪我をする可能性が高くなる。しかし、運動習慣を持てば自分の足で立ち続けることができる可能性があると、米ペンシルバニア州ハーシー医療センターのChristopher Sciamanna氏は提案している。
米国では1日800件超の股関節骨折が生じており、その多くは転倒が原因だという。こうした外傷では、手術や理学療法、薬物療法などの治療が必要になり、高齢者では歩行や自立ができなくなることも多い。医療従事者が転倒の治療から予防へと目を転じることで、多くの高齢者がこの問題を回避できる可能性があると、同氏は主張している。
Sciamanna氏は同センターのニュースリリースで、「薬の服用によって骨を強化し、運動することで転倒しにくい体をつくることができる。これらの方法は同時に行うことも可能だ。高齢者でも、ウォーキングなどの有酸素運動は心臓を健康にし、筋力トレーニングは筋肉量を増やしてバランス改善に役立つ可能性がある」と話す。
筋力トレーニングはどこで行ってもよく、ジムに行ってウェイトマシンを使っても、自宅でレジスタンスバンドなどの器具を使っても構わない。重要なのは、さまざまな身体の部位に働きかける運動を行い、次第に負荷を増やすことだ。「筋力を上げるためには、トレーニングの負荷を増やしていくことが不可欠だ」と、同氏は述べている。
過去の研究によると、筋力トレーニングに参加する高齢者では、こうしたトレーニングをしない場合に比べて筋肉量が毎年3ポンド(約1.4kg)以上増える可能性がある。80代であっても、徐々に負荷を増やしながら筋力トレーニングを1年間行えば、筋力を2倍にできるという。
(5/1 CareNet)
1日断食して翌日は好きなものを食べるという食事法(ダイエット)の減量効果は、従来式の食事制限と同程度であることが新たな研究で示された。1年後の体重減少率は、1日おき断食ダイエットでは6.0%、従来のカロリー制限ダイエットでは5.3%であったという。研究を率いた米イリノイ大学シカゴ校運動・栄養学准教授のKrista Varady氏は、「1日おきにダイエットを休める方が継続しやすく、効果が高いのではないかと考えていたが、実際は差がないことが分かった」と述べている。
今回の研究では、代謝異常のない肥満者100人(18〜64歳)を対象として、1日おきに断食する群、従来式の食事制限をする群、全く食事制限をしない対照群の3群に無作為に割り付けた。1日おき断食では、断食日は摂取カロリーを25%に制限し、休息日には125%まで摂取してもよいこととした。従来式の食事制限では、毎日の摂取カロリーを75%に制限してもらった。最初の6カ月間は減量期、その後の6カ月間は体重維持期として、1年間にわたり対象者を追跡した。
その結果、従来式の食事制限群の方が、1日おき断食群に比べて、摂取カロリーの目標値を守れる比率が高かった。脱落率は1日おき断食群で38%、従来式の食事制限群で29%、対照群で26%であった。
1日おき断食群では、断食日の1日500kcalというカロリー制限を守ることが難しく、一方で休息日には許可された摂取量を下回る傾向があった。そのため、全体としては従来式の食事制限群と同程度の減量効果があったのではないかと、Varady氏は説明する。今回の研究は、「JAMA Internal Medicine」オンライン版に5月1日掲載された。
(5/1 HealthDayNews)
アルコール依存症などを飲酒量を減らして治療する「減酒外来」を国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)が今月設置した。従来の治療法は飲酒をやめる断酒だが、先進的な試みとして飲酒量を減らすことを主な目標とする。軽症者を含め多くの人に治療を始めてもらいたい考えだ。
アルコール依存症は大量のお酒を連日飲むことで発症しやすい。肝硬変や膵炎になる恐れがある。ただ治療の断酒は少量の酒も飲めないことへの抵抗感から、推計患者100万人余のうち治療を受ける人は数%にとどまる。
減酒外来では、飲酒量のほか、家庭内暴力など生活上の課題を医師が把握。患者の希望を聞いた上で、飲む量を減らす、飲まない休肝日を設けるといった目標を立てる。患者は実際に飲んだ量を記録するなどして、節度を持って飲む習慣を身に付けられるようにする。
(4/25 読売新聞)
■次号のメールマガジンは2017年6月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ