エンタプライズ発信〜メールマガジン【№72】 2017. 4
わが国における1年間の自殺者数は2003年の約34,000人をピークに減少傾向ですが(2016年:約22,000人)、60歳以上の自殺者数はほぼ横ばいで推移しています。つまり総数との比較では増えていることになります。その動機は健康問題です。痛ましい事件が最近ありました。神奈川県川崎市の京急電鉄・八丁畷駅前の踏切内で、52歳の男性銀行員が自殺願望の男性(77歳)を救助しようとして2人とも電車にはねられて死亡した事故です。思い出したのは2013年10月に神奈川県横浜市のJR横浜線・中山駅近傍の踏切内で、付近に住む女性会社員(40歳)が、やはり踏切内にいた自殺願望の男性老人(74歳)を助けようと電車にひかれて死亡した事故です(老人は重症)。これら事故では救出に動いた人たちの勇気を称えつつも、死の淵に立つに至った高齢者の心の影が気になります。悩みをもつ高齢者の半数は自分の健康状態について悪い評価を下しがちで、病気をストレスに感じ「楽になりたい」「元の体に戻らないなら死んだ方がましだ」といった言動が目立つと報告されています。さらに、家族への精神的負担も挙げられ、家族に「長く生きすぎた」「迷惑をかけたくない」ともらす例も多いそうです。また自殺行動の動機の約1割は、配偶者や子ども、兄弟などの近親者の病気や死によるものです。喪失感が理由で、希死願望が高まると言われています。近年、「男性の孤立化」が社会問題となっています。報道でも見られるように諸事情により一人暮らしの高齢男性が増えているのです。軌を一にして、孤独から生じるうつ病対策も急務です。厚生労働省は、うつ病の認知療法・認知行動療法ワークショップの実施を、精神医療に従事した経験のある医師等を対象に喚起していますが、まだ手探りの状況のようです。今日社会の憂うべき事象だと考えます。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて 〜チベット医学
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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Information 1
小社では現在、新春割引セール(20%OFF)を行っています。手技療法全般、ヒーリング・タオ、ホメオパシー、臨床DVDなど、多岐にわたってのテキストフェアです。フェアは5月7日(月)まで開催します。高額本などこの機会にお安く購入できる機会になります(一部対象外あり)。小社HPにてご参照ください。http://eppub.jp/
Information 2
毎年、ホメオパシーの啓蒙活動を推進している日本ホメオパシー医学会では、多くの方にホメオパシーについて知っていただくために、オープンセミナーを開催していく。5月は兵庫県神戸市内にて行われる。 参加費無料。
◇講義内容 :ホメオパシーとは/ホメオパシーの薬とは/ホメオパシーの診察とは/ホメオパシーの適応は/ホメオパシーは安全か
◇開催日 :5月27日(土)14:00〜15:30 <参加無料>
◇講 師 :板村論子(MD., Ph.D., MFHom)
◇会 場:神戸市医師会館会議室(兵庫県神戸市中央区橘通4-1-20 TEL:078-351-1410)
◇参加資格:医師、歯科医師、薬剤師
◇参加ご希望の方は日本ホメオパシー医学会事務局宛E-mailで「参加希望」とお送り下さい。
info@jpsh.jp(URL:http://www.jpsh.jp)
連載vol.30
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
「時を得た」 先駆者(つづき)
このメカニズムは自然淘汰の賜物の1つだろう。つまり命を維持するのに適したあらゆる情報伝達方法の中から、もっとも優れたメカニズムが残ったということだ。きわめて拡散の速い気体で、しかもすぐに分解される物質が媒介なら、急に酸素の需要が増えたときにも、逆に通常の需要量に戻ったときも、同じように速やかな反応が可能になる。NO(一酸化窒素)は不安定なので10秒もすれば自然に分解するため、不要になって通常の状態に戻るときにも、酸素などを介した反応系を必要としないのである。
驚いたことに、NOに関する研究は100年間も解けなかった謎が解明されるきっかけともなった。その謎とは、狭心症の発作に対するニトログリセリンの作用機序である。ニトログリセリンから発生するNOガスが冠動脈を弛緩させ、心筋への血流が回復することにより、狭心症の発作から救われることがわかったのである。
ところで、ニトログリセリンからダイナマイトを発明したノーベル賞の創始者、アルフレッド・ノーベルには皮肉な逸話がある。ノーベルが心臓病を患ったとき、主治医は彼にニトログリセリンを処方したが、ノーベルはその処方を拒否した。ニトログリセリンの服用により頭痛が起きることを知っていたからである。そしてある手紙に次のように書いている。「今度は私が主治医からニトログリセリンを飲めと言われるとは、なんという皮肉だろう」。
NOの役割の発見は、生理学や医学に数々の進歩をもたらした。たとえば勃起不全の治療薬クエン酸シルデナフィル(バイアグラ)は、NOの研究から生まれた薬の一つである。また迅速に情報を伝えるNOは、人間の一生における重要な瞬間、すなわち受精、出産、脳の成長、そして心臓の拍動といった場面で、なくてはならない役割を果たしている。NOの作用は素早く、1拍の心拍で発生するNOの波が血管の平滑筋を弛緩させる。血管系が心拍による圧力の変動に耐えられるのはそのためだ。
ヘモグロビンは、生体組織に酸素を運搬および供給すると同時に、NOも運搬して組織中へと放出する。また感染部位や消化管でもNOが大切な働きをする。細菌や寄生虫と闘う白血球は、大量のNOをつくりだすことによって敵を殺すのである。亜硝酸化合物が肉類の防腐剤として使用されるのは、NOに殺菌作用があるからだ。さらに、ホタルの発光もNOの働きによるものなど、例を挙げればきりがない。
ともあれ重要なのは、「自然はとうの昔からNOの役割を知っていた」ということだ。進化過程の、早い段階でこのしくみが出来あがったということは、神経系をもたない海綿のような下等生物でさえ、NOをシグナル物質として使用していることからもわかる。(つづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊))
連載エッセイ ㊶☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
一流アスリートのコメントに変化が……
最近、スポーツのメンタルトレーニングやコーチングなどの手法がだんだんと広く浸透してきているのか、スポーツ選手のコメントに変化が表れているように感じます。昨年のリオ・オリンピックの重量挙げ競技で銅メダルを獲得した三宅宏実選手が試合後のコメントで、インタビュアーが「最後はどのような心境で競技に臨んだのですか」と質問すると、三宅選手が「2回目は失敗しているので、あとは天に任せるだけで…」と語っていたのが印象的でした。大会前に腰痛が悪化したとのことで、おそらく最後は開き直って「無心」で挑戦したのでしょう。
オリンピック選手ともなれば、国レベルの期待や世界からの注目度から生じるプレッシャーは、計り知れないものがあるでしょうし、「オリンピックには魔物がいる」と体操で金メダルを獲得した内村航平選手が話していたそうですが、のちに「魔物は自分自身で創りだしている」ということが分かったらしく、後輩の白井健三選手にアドバイスしていたと言います。
通常、ミスするはずのない場面でミスをしてしまうと、「何かにやられた」と思いがちになり、「魔物」などのせいにしたくなりますが、実は自分の無意識が引き起こしているのです。魔物というのは、私なりに表現すると「無意識の誤作動」なのですが、この誤作動が生じる傾向は、深い心理面に関係するようです。私の心身相関に関連する臨床経験でも多くのスポーツ選手が、本来の実力が発揮できなくなるような誤作動記憶のパターンが浮き彫りにされることがあります。
選手それぞれに異なる誤作動記憶の背景がありますが、多くの傾向として、優勝して自分がチャンピオンの立場になると、「守り」に入ってしまう傾向があるようです。守りと対照的になるのが「挑戦者」の精神です。試合のパフォーマンスをサポートさせていただいている選手には、次の対戦相手やパフォーマンスを想像してもらい、心身相関的に「誤作動記憶」がないかどうかを検査します。自分の置かれた立場や地位を守るような気持ちで試合に臨むイメージをすると誤作動反応が示され、挑戦者の気持ちで試合に臨むイメージをすると、誤作動反応はなくなる傾向があります。
多くの選手は勝つために試合をしているので、「絶対に勝つ!」という意気込みで試合に臨むわけですが、絶対に勝つという意識は身体機能に誤作動を生じさせやすくなる傾向があります。それよりも、「普段の練習どおり」という思いで試合に臨むと、本来の実力が発揮され、理想的なパフォーマンスができる選手が多いようです。
リオで4連覇を逃した吉田沙保里選手の試合直後のコメントから察するに、「……で申し訳ないです」、あるいは「日本選手の主将として金メダルを取らないといけないところだったのに、ごめんなさい」というようなコメントは、多くのプレッシャーを背負って臨んだことが伺えます。もしも「普段の練習どおりに」という思いだけで戦っていたら本来の実力が発揮できていたのかもしれません。それは単なる勝手な予測にしか過ぎないですし、相手がいる競技ですので、相手の実力が上回っていたのかもしれません。
「勝っても負けても、今まで練習してきたとおりに全力が出せる」と、心の底から思えることができればいいのかもしれませんが、無意識の心はそれほど簡単ではないようです。
選手によっては「周りからの声援が大きいほど実力が出せる」という傾向の人もいますが、本番での無意識の誤作動記憶のパターンがあるかどうかは、事前に検査をすれば分かります。孫子の兵法に「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とあります。敵の実力やメンタル面も含めた現状をしっかりと把握し、自分自身の実力や深いメンタル面も良くわきまえて戦えば、勝ち続けることができるということです。
昔から武道においても「無心」になることが重要視されています。スポーツ選手が勝利したとき、「無心で走りました!」「何も考えていなかったです!」などという「無心」であったであろうコメントを聴くことがあります。おそらくそれは「ゾーン」か「フロー」といった状態の時のことで、そのときに多くの選手はピークパフォーマンス、すなわち最高のパフォーマンスが発揮できるのだと言われています。
スポーツ選手をサポートする治療者として、単に肉体面だけでなく、このような隠れたメンタル面のケアができるかどうかはとても重要な役割になると思います。多くの治療者がもっと本質的なところに興味をもっていただき、活躍する選手の縁の下の力持ちになってくれればと願います。
《連載54》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
「タンカ(二)は『人体の生理と病理』であるが、そこに描かれたトリ・ドーシャと色の関係について注目したい。巨大な1本の樹から2本の幹が分かれ、左手は生理であり、右手は病理である。樹根のあたりからうっすらと、黄、赤、青、緑の色の流れがあり、生理と病理の幹に入るや、明らかな彩色となる。生理の幹から最初に分かれるのは、ドーシャの枝である。
青いドーシャの葉は下にあり、ルン(ヴァータ)である。ルン・ドーシャの青い葉は5枚あり、それぞれに名前と役割がある。
ソグツィン・ルン……生命の維持
ゲンギュ・ルン……言語と意志を司どる
キャプチェ・ルン……表情と健康を司どる
メニャム・ルン……食物を分解、消化
トゥルセン・ルン……排泄と分解を司どる
いずれも青い葉の裏には、その役割を見事に表現した人物が描かれている。
次に、黄色のドーシャの葉は中間にあり、チーパ(ピッタ)である。ピッタの黄色い葉も5枚あり、やはりそれぞれに名前と役割がある。
ケード・ジェチュ……消化とエネルギー
チーパ・タンギュ……気色の維持
チーパ・ルプチェ……思惟、意識を司どる
チーパ・トンチェ……視覚を司どる
チーパ・ドクセル……皮膚を潤沢にする
いずれの葉にも、その役割にふさわしい人物が描かれている。
彩色のない、白い葉が上にあり、ベーケン(カパ)である。カパの白い葉も5様あり、それぞれに名前と役割がある。
ベーケン・トランチェ……水分の保持
ベーケン・ニェチェ……食物を細かくする
ベーケン・ニョンチェ……味覚を司どる
ベーケン・チンチェ……情緒を司どる
ベーケン・チョルチェ……関節を潤滑に
いずれの葉にも、1人の人物が描かれていて、その役割を如実に表現している……」
次の項では「根本タントラ」の一部を紹介する。(次号につづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(47)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
前号までのWAD(むち打ち関連障害)の診療ガイドラインはお役に立てたと思います。今号から再び腰痛関連に戻します。
■慢性腰痛(3ヶ月以上持続)患者63名を対象に腰部椎間関節の変形をCTで調べた結果、痛みを有する患者と無症状の患者との間に有意差が認められなかったことから、CTは腰部椎間関節症の診断法として役立たないことが判明。http://1.usa.gov/RxeS5a
……これは椎間関節ブロック注射に関する研究で判明した事実ですけど、AHCPR(米国医療政策研究局)が発表した『成人の急性腰痛診療ガイドライン』でも指摘されているように、椎間関節症候群など存在しないのです。このまま幻を追いかけ回していると、患者が増えることはあっても減ることはないでしょう。
■高性能の画像診断の普及によって1990年代から脊柱管狭窄症が増加したが、100名の脊柱管狭窄症患者(平均年齢59歳)の臨床症状と画像所見(単純X線撮影・脊髄造影・CT)を比較した結果、両者間に関連性は見出せなかった。http://1.usa.gov/RxEUW4
……脊柱管狭窄症の画像所見は臨床症状と関連性のないことが明らかとなったわけですが、興味深いのは、両側性の症状を訴えたのは42%に過ぎないのに、画像所見では患者の89%が両側性の狭窄変化が認められた点です。画像検査が増えるに従って今後も新たな病名と患者が増えていくことでしょう。となれば必然的に手術件数も増えることになります。
■慢性疼痛患者558名を対象に痛みと天候との関係について調査した結果、寒い地方の住人だからといって疼痛レベルも疼痛頻度も高いわけではなく、天候が疼痛に影響を与える事実は見出せなかった。それは単なる思い込みに過ぎない。http://1.usa.gov/PTDMx5
……気温が低く湿度の高い地域に住む慢性疼痛患者は、温暖な気候の地域に住む患者より症状が多いと考えられてきましたが、この迷信を打ち砕く研究が登場したことになります。
■プライマリケア医・整形外科医・カイロプラクターを受診した急性腰痛患者を比較した結果、回復率には差がないことが判明。治療費はプライマリケア医が最も安く、満足度はカイロプラクターが最も高く、整形外科医は治療費と満足度の両面に問題あり。http://1.usa.gov/RBOsze
……不都合な真実。安い治療費で、優れた治療成績が得られ、患者の満足度が高いという3つの条件を兼ね備えた腰痛治療の専門家はいません。カイロプラクターはX線検査の回数が多過ぎるし、プライマリケア医(家庭医)は365ドルしかからないのに対し、整形外科医やカイロプラクターは800ドルもかかりました。同じ治療成績なら安いほうを選ぶでしょう。
■アスリートにとって腰部椎間板ヘルニアは震え上がるような病気だが長期的予後は驚くほど良好。坐骨神経痛は自然治癒する可能性がきわめて高く、保存療法を行なった患者の38%が1ヶ月以内に回復し、52%が2ヶ月後までに回復する。http://1.usa.gov/Q4de6P
……馬尾症候群などの進行性麻痺で緊急手術が必要となるアスリートはごく稀であり、アスリートの大多数は保存療法によって着実に回復し、その後、少しずつ厳しいトレーニングを再開できます。
■アスリートが早期復帰を望むと正常な臨床判断ができなくなる。椎間板手術に与えられたチャンスは最初の1回だけ。手術を繰り返すたびにさらに悪化するため、椎間板切除術の適応に少しでも疑わしい点があれば手術を行なうべきではない。http://1.usa.gov/Q4lmUF
……手術を行なった患者と保存療法の患者の4年後の成績に差はないことから、手術は坐骨神経痛の長期的予後に影響をおよぼさないことが判明しています。しかし手術に適した患者を選択できれば下肢痛をより早く解消できる可能性はあります。
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (72)
根本 良一(療動研究所主宰)
【 連動操体法の応用編 】
[7] 首・肩に関わる障害
b) 足指基部の操体法(つづき)
・連動操体法は自力であることから、主動作+補助動作を自力で行う屈診の場合とは逆方、日常動作の逆方向を選んで行う。これが主動作の方向である。操作は前号に記した補助動作を加えて行われる。
腕を、前から上げる、横から上げる、後ろのまわすなどのとき、各々違った足指から、足指の角度が45°、60°あるいは30°などとなる。
足指基部からの操体法ははじめとりつきにくいが、馴れると広範な部位に適用できる。実践してみると、連動操体法の、いや造物主(ぞうぶつしゅ)の深い配慮を汲み取ってもらえると思う。
[8] 頭痛、頭が重い
頭痛とはいえ、足からの影響の場合、腹筋から後頚部へ影響する場合、さらに腹直筋下部から前頚部、そして胸鎖乳突筋への影響など、いろいろな連鎖が身体のバランスを崩す。
以下に述べることは、高血圧、脳の障害、風邪、その他の内科疾患がない場合には有効である。
1)仙棘筋(中仙骨稜側方)から
腰仙部から脊柱起立筋〜後頚部まで緊張すると、頭が重い、痛いなどの愁訴が顕れる。熱がなく、肩がこるという場合はフィンガースケールを見ながら行うとよい。(つづく)
N E W S
春先に中国大陸から飛来する黄砂。洗濯物や車などを汚すだけでなく、気管支まで入り込み、花粉症やぜんそくなどのアレルギー症状を悪化させることが分かってきた。呼吸器にアレルギーがある人は気象情報に注意し、黄砂の飛来があった日には外出を控えるなどの対策を取りたい。
「以前から、黄砂が多く飛んだ日にぜんそくの子どもが発作を起こしやすいなど、関連を指摘する声があった。最近の研究で、アレルギー症状への影響が明らかになりつつあります」と富山大医学部の足立雄一教授(小児科)は話す。
黄砂はゴビ砂漠やタクラマカン砂漠などの砂が強風で巻き上げられ、上空の偏西風に乗って日本まで飛んでくる。毎年2月下旬〜5月に発生することが多く、日本では関西以西を中心に全国各地で年に30日ほど観測される。粒子が小さいほど遠くまで飛び、日本に飛んでくる黄砂は直径4マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度と、気管支にまで入り込みやすいサイズが多くなる。
足立教授が京都大学と共同で実施した調査では、2005〜09年の2-4月、富山県内の8つの基幹病院にぜんそく発作で入院した1-15歳の子ども620人を調べたところ、黄砂が観測されてから1週間以内は、通常の日より入院するリスクが約1.8倍に上昇することが明らかになった。さらに小学生の男の子が発作を起こしやすいことも分かった。足立教授は「外で遊ぶ時間が多い男の子の方が、黄砂の影響が出やすいのではないか」と推測する。
2大学に鳥取大学が加わった調査では、11年10月〜13年5月に富山、鳥取県と京都府の妊婦3327人を調べたところ、スギ花粉に対する抗体を持っているグループは、スギ花粉が飛んでいる状況で、さらに黄砂の飛来量が多くなるほど、目や呼吸器のアレルギー症状が悪化していた。黄砂が、スギ花粉によるアレルギー症状を一層強くしたと考えられるという。
黄砂がアレルギー症状に影響を及ぼすメカニズムはまだはっきりしていないが、飛来の途中で付いた大気汚染物質やカビが影響している可能性がある。予防するには、黄砂が飛散する日はなるべく外出を控え、外出する場合はマスクを着けるなど、生活の中で黄砂を吸い込まないよう心掛けたい。足立教授は「すべての人が黄砂を避ける必要はないが、アレルギー症状がある人は、黄砂の飛来情報を調べ、避けるようにすると、症状を軽減できるだろう」と助言する。(4/18 中日新聞)
高齢者に多くの種類の薬が処方され、副作用で体調が悪化するケースが少なくないことから、厚生労働省は薬の処方を適正化するためのガイドラインを策定する方針を固めた。医療ビッグデータを活用して全国規模で実態を分析し、副作用を招きやすい危ない薬の飲み合わせなどを調べる。
高齢者は薬を分解する機能が低下しており副作用が出やすい。複数の持病を抱えることが多く、薬の種類が増えがちだ。高齢者が6種類以上の薬を併用すると一層副作用が出やすくなり、転倒などを招く恐れが高まるというデータがある。医療機関からは副作用が原因で入院した高齢患者の報告が相次いでいるが、実態は明らかではない。
厚労省は検討会で薬の専門家らから意見を聞き、問題点を整理。その後、患者が医療機関でどんな治療を受けたのかが分かる診療報酬明細書のデータベースの情報や医薬品医療機器総合機構に寄せられた副作用報告などを分析し、薬が増えた際に起きやすい副作用や、危ない薬の飲み合わせなどについて調べる。関連経費は2018年度予算の概算要求に盛り込む方針。
指針の策定は分析結果なども踏まえ、18年度末をめどに目指す。持病が多い高齢者は複数の医師から薬の処方を受け、結果的に多くの薬を服用しているケースも多い。そのため医師、薬剤師が、服薬状況を共有して薬の処方を減らす体制作りも進める。
高齢者の薬の副作用は、ふらつき、転倒による骨折、意識障害など、心身に大きなダメージを与えるものも少なくない。過去には、日本老年医学会が2015年に「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を改訂し、慎重な投与が求められる薬のリストをまとめ注意を促している。厚生労働省も昨年度の診療報酬改定で、不必要な薬を減らすことを促す仕組みを導入したが、効果は十分上がっているとはいえない現状だ。
厚労省はまず実態解明を進め、科学的な根拠を基に危険な薬の組み合わせなどを医師や薬剤師に示し、対策を一層強化する考えだ。高齢者の健康を守るため、医療関係者も積極的な取り組みが求められる。(4/17 読売新聞)
日本人高齢者における、認知症発症に対する歯を失うことの影響を明らかにするため、九州大学の竹内研時氏らは、(福岡県)久山町研究において調査を行った。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2017年3月8日号の報告。
認知症でない日本人成人(60歳以上)1,566例を対象に、5年間追跡調査を行った(2007〜12年)。対象者をベースライン時の残存歯数により4群に分類した(20本以上、10〜19本、1〜9本、0本)。全ケースの認知症、アルツハイマー型認知症(AD)、脳血管性認知症(VaD)の発症に対する、歯を失うことによる影響のリスク推定値は、Cox比例ハザードモデルを用いて算出した。主な結果は以下のとおり。
・調査期間中における全ケースの認知症発症は180例(11.5%)、AD発症は127例(8.1%)、VaD発症は42例(2.7%)であった。
・潜在的な交絡因子で調整した後、残存歯数の減少に伴い、全ケースの認知症の多変量補正ハザード比が増加する傾向が示された(p for trend=0.04)。
・全ケースの認知症は、20本以上群と比較し、10〜19本群で1.62倍、1〜9本群で1.81倍、0本群で1.63倍であった。
・残存歯数とADリスクには逆相関が観察されたが(p for trend=0.08)、VaDリスクでは認められなかった(p for trend=0.20)。
著者らは「日本人において、歯を失うことは、全ケースの認知症およびADリスクの増加と関連している」としている。(4/10 ケアネット)
12歳未満の子どもは、好きなスポーツ競技1つのみに偏って練習することは避けたほうがよいという研究結果が報告された。1つの競技に特化することで怪我をするリスクが高まるからだという。
米エモリー大学整形外科・家庭医学准教授のNeeru Jayanthi氏らは、7〜18歳の若い運動選手1200人近くを対象に、スポーツ外傷のリスクを評価した。3年間のトレーニングスケジュールを追跡したところ、対象者の約40%が研究期間中に怪我をしていた。怪我をした選手は、平均年齢12歳未満で1つのスポーツ競技に特化しはじめており、高度に特化した選手の約3分の2は、繰り返し怪我を負っていた。怪我をしなかった選手では、1つの競技に特化しはじめた年齢は平均で12歳以降だった。研究期間中にスポーツ外傷を経験した選手は、経験しなかった選手に比べて、通年できる競技を行うか、団体競技を毎週行う、あるいは特定の競技に特化している傾向がみられた。
Jayanthi氏は、「若い選手はシーズンごとに別の競技にも参加し、年間で(連続しない)3カ月以上は競技を休むべきだ。競技により異なるが、専門的に取り組みはじめてもよい年齢を定めておくことで、若い選手のリスクを軽減できる可能性がある。子どもの場合、複数の競技を行い、1週間の練習時間は自分の年齢よりも少なくするようにしてほしい」とアドバイスしている。(4/6 HealthDay News)
肺がん・胃がん・大腸がんは、日本人男性におけるがん関連死亡原因のトップ3となっている。北里大学の江口尚氏らは、これらの3大がんによる死亡リスクが高い職業および産業を特定することが、健康に関する社会的マーカーを解明するための第一歩であると仮定し、調査を行った。
日本人男性(25〜64歳)における3大がんによる死亡リスクの職業および産業別の差異について、2010年の全国職業調査データおよび産業別死亡率データを用いて検討した(調査対象:2,697万4,828人)。また、調査対象のうち、従事者が最も多い「製造業」を対照分類とし、ポアソン回帰モデルを用いて年齢調整後の死亡率比を推定した。主な結果は以下のとおり。
<職業・産業別の死亡率>
・肺がんおよび大腸がんの死亡率は、職業別では「行政・管理」、産業別では「鉱業」の男性で最も高かった。
・胃がんの死亡率は、職業別では「農林水産業」、産業別では「鉱業」の男性で最も高かった。
・「失業者」の3大がんによる死亡率は、全職業・全産業の中で最も高かった。
<職業・産業別の相対死亡リスク>
・職業別の3大がんによる死亡の相対リスクは、「サービス業」「行政・管理」「農林水産業」「専門職・エンジニア」の男性で高かった。
・産業別の3大がんによる死亡の相対リスクは、「鉱業」「電力・ガス」「水産業」「農業・林業」の男性で高かった。
<製造業を対照とした職業別の死亡率比>
・失業者:8.07〜11.40倍
・サービス業:2.96〜3.65倍
・行政・管理:2.42〜3.49倍
・農林水産業:2.11〜2.49倍
・専門職・エンジニア:1.99〜2.48倍
・建築・鉱業:1.35〜1.61倍
・営業:1.06〜1.29倍
・運輸・機械操作:1.05〜1.31倍
・事務:0.74〜0.87倍
・警備:0.61〜0.79倍
・運送・清掃・梱包:0.53〜0.64倍
(3/23 ケアネット)
ビタミンDサプリメントと特定の乳製品を併用することで、加齢による骨量減少を防げる可能性があると報告掲載された。米ハーバード大学関連機関のヘブライ・シニアライフ老化研究所の Shivani Sahni氏らが米マサチューセッツ大学とともに実施した研究。高齢者が牛乳、ヨーグルト、チーズを摂取していると、脊椎の骨塩密度が高く、股関節の骨量減少が少なかったが、この関連性はビタミンDサプリメントも摂取していた場合に限られたという。
米国立関節炎・筋骨格・皮膚疾患研究所(NIAMS)の資金援助を受けて実施された今回の研究では、フラミンガム研究の参加者を対象とした。この研究は、1948年に始まり、マサチューセッツ州フラミンガムの住民の健康と習慣を追跡した長期研究である。
Sahni氏らによれば、ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、骨の構築を助け、骨量減少を予防する。同氏は「今回の研究は牛乳以外の乳製品を検討していることから重要である。骨密度と乳製品の関連性は十分なビタミンD摂取に左右される。ただし、この結果を確認するにはさらに研究を重ねる必要がある」と述べている。
骨粗鬆症は50歳以上の米国人では推定1000万人に認められる。この疾患は、骨折、身体機能の低下、QOLの低下、さらには死亡のリスクを高める。米国立骨粗鬆症財団(NOF)によると、さらに4400万人の米国人では骨密度が低く、骨折リスクが高いという。(3/22
HealthDay News)
厚生労働省は3月21日、自殺対策に関する全国意識調査の結果を公表した。「本気で自殺したいと思ったことがある」と回答した割合は23.6%(前回23.4%)と横ばいで、「最近1年以内に自殺したいと思ったことがある」割合は全体の4.5%(同5.3%)とわずかに減った。
自殺者数は7年連続で減少しており、厚労省自殺対策推進室は「自殺を考えた人が行動を起こさないということ。電話相談などの予防対策が一定の効果を出しているのではないか」としている。調査は4〜5年おきに実施し、今回が3回目。昨年10月に全国の20歳以上の男女3000人を対象に行い、回収率は67.3%だった。
今後の自殺対策について複数回答で尋ねたところ、「児童生徒が自殺予防について学ぶ機会があった方が良い」と答えた割合が83.1%に上った。具体的に学ぶべき項目としては「周囲の人に助けを求めることが恥ずかしくないこと」が71.2%、「ストレスへの対処方法を知ること」が51.4%などだった。
自殺対策の内容を知っているかどうか尋ねた質問では、「こころの健康相談統一ダイヤル」が6.9%、「自殺対策基本法」が1.7%と低い数字が目立った。厚労省は「普及啓発活動をしっかりやっていきたい」としている。(3/21 時事通信)
保険を使ってあんまマッサージ指圧、はり・きゅうを受けた患者の窓口負担を原則1〜3割にする方針を厚生労働省が固めた。窓口で原則も強化して不正防止対策とする。2018年度中にも実施する予定。
厚労省が21日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の専門委員会で提案する。今は大企業の会社員らが入る健康保険組合の多くなどでは、患者が窓口で全額を払った後で保険請求し、適用が認められれば9〜7割分が還付される。この仕組みを変更し、窓口での支払い段階から保険負担分を差し引く。厚労省の出先機関などは施術所と契約を結び、指導監督や行政処分を行いやすくする。
あんまマッサージ指圧やはり・きゅうの事業者による不正請求は過去8年半で少なくとも計約9億5千万円あった。厚労省は行政の関与を強めることで不正防止策としたい考えだが、健康保険組合など医療保険側は不正が増えるとの懸念から反発している。(3/18 朝日新聞)
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