エンタプライズ発信〜メールマガジン【№74】 2017. 6
ここ10年と言ってよいと思うのですが、多くの企業が組織の多様性を主眼にダイバーシティ(diversity)の推進を掲げています。一般にダイバーシティと言うと人種や性別に焦点が当てられがちですが、国籍、宗教、障害、性的指向、年齢などを包括して、個人・集団の間で違いを生み出す良方向の可能性を指向しています。「一人ひとりは違う存在」というあたりまえの前提にたって、それぞれの違いを受け入れあって組織の強みにしていこう、という成長戦略と言えます。このダイバーシティを考える上で、最近企業の対応が急速に進んできているのが、働くLGBTへの対応です。LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとった言葉ですが、性的マイノリティーの総称としてポジティブに使われている言葉です。LGBTは広告代理店・電通の調査で人口の7.6%で存在するという報告があります。これは13人に1人という多い割合です。LGBTの人が働きやすい職場は、1人のスタッフとして尊重されて、かつ能力をフルに発揮できる環境です。そんな職場の自由な風通しの良い雰囲気こそが、企業が目指すダイバーシティのもつ意味合いだと思います。しかし、まだ社会的に誤解や不理解が払拭できないのが現実です。抜本的な問題として、教育界においてLGBTの生徒特有の脆弱性に着目した効果的ないじめ防止策を策定していない、加えてニーズに対応する教員研修などをしっかり行っておらず、政府はLGBTを扱うことを任意とするのではなく、教育の標準化・義務化をする段階へと進むべきところにきていると注視されています。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】新連載/老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【4】伝統医学をシルクロードに求めて 〜チベット医学
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S
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①
老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)
人は120歳まで生きられる
[安保]:日本人の100歳以上の高齢者が6万人を超えました。団塊世代が100歳を超える2050年ごろには68万人に達すると言われています。
[太田]:江戸時代から100歳を超えるほど長生きする人はいたのですが、それはやはり特別なことでした。現代は100歳を超えるくらいは簡単になってきて、105歳を超えられるかが一つの壁になってきました。
[安保]:生物学的な人間の寿命は120歳と言われています。世界中の長寿記録を調べても、実際そのあたりに落ち着きそうです。日本人の平均寿命は年々伸びていますが、120歳という寿命の区切りはおそらく未来においてもさほど変化はないでしょう。
[太田]:寿命がさらに伸びる可能性についての議論はいろいろありますが、正直よくわかっていません。でも120歳が150歳くらいまで伸びるということは、突然変異とかが起こらないかぎり考えにくいですね。
[安保]:ここまで長寿人口がふえたことは喜ばしいかぎりですが、超高齢社会を迎えた日本において、幸福に長生きできるかを考えた場合、疑問や不安が生じない人はいないと思います。100歳まで生きていけるとしても、特にやることがない、楽しみがないと思う人がいるかもしれません。社会不安や経済問題だってあるかもしれません。
それでも人間はうまく生きれば120歳までいける。太田先生が105歳の壁と言いましたが、少し前までは100歳が高い壁でした。そう考えると110歳、115歳、120歳の壁と言い出す時代はすぐそこまで来ています。
[太田]:そうですね。何歳であっても病気にならず元気に人生を楽しめる気持ちを持つことがすごく大切だと思います。この対談は、そのための作戦会議のようなものです。
大きい動物ほど長生きする?
[安保]:人の寿命が120歳という根拠を示そうとすれば、なかなか複雑ですね。
[太田]:わかりやすい理論として代謝速度を基準にしたものがあります。250年ほど前にビュフォンという博物学者が考えた「生命活動代謝速度理論」は、哺乳類が生涯使えるエネルギー(カロリー量)は決まっていて、それを使い切ると寿命が訪れるという考えです。
この理論では小さい動物は短命で、大きい動物ほど寿命が長くなります。なぜなら体重に較べて体表面積が大きい動物ほど、体温を保つためにエネルギー消費量が大きくなり、短時間にエネルギーを使い果たしてしまうから寿命が短くなるというわけです。
[安保]:重さあたりの表面積は、大きい動物ほど小さくなるね。表面積が少ないほど体温が逃げにくくなるから、エネルギーを効率的に使えるぶん長生きできるということですね。
[太田]:『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)を書いた本川達雄先生も、動物のサイズを基準に考えています。
[安保]:「生命活動代謝速度理論」は考え方としてはけっこういい線いってますよ。だいたい当たっているけど、すべての動物に当てはめようとすると無理がある。目安にはなるかなという視点で捉えればいい理論ですね。(次号へつづく)
(出所:『安保流×太田流 老いない人の健康術』産学社刊2016)
連載vol.31
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
「時期尚早」だった先駆者(つづき)
しかし、彼の時代には感染症という概念が存在していない。そこでゼンメルワイスは自分の発見を証明するために簡単な実験を行うことにした。片方の病棟では助産師に手洗いを励行させ、他方の病棟の産婦人科医は手を洗わない従前のままにしておいたのである。1年間の観察を続けた結果、手洗い励行の病棟では産褥熱による死者が1000分の1に減少したことがわかった。
ところが嘆かわしいことに、この実験は何の役にも立たなかった。手洗いを励行するだけで?と疑った医師たちによって却下されたのである。ゼンメルワイスはよからぬ中傷を受け、精神的ショックが原因で自殺を遂げている。(ガリソン、1929)
一般に私たちは既知の事実に安心を感じ、それに執着することが多く、新しいアイデアや異なった考え方にはしばしば違和感を覚える。しかし先駆者たちが知恵と努力を振り絞って新しい事実を見い出すことがなければ、科学や医学など、現代の様々な分野に応用されている知識の大半は、私たちの手には入らなかっただろう。世の人々が新しいアイデアに反発せず、快く受け入れることができるなら、科学や医学はこれまでよりずっと速いテンポで発展するかもしれない。
道を開くエネルギー医学
エネルギー医学は、昔からその存在そのものが先駆者的役割を担ってきた。前著『エネルギー医学の原理』で述べた「エネルギーというテーマが長年にわたって学会からタブー視され、そのために医学の進歩が遅れたのだが、もはやエネルギーを敬遠する必要はなくなった」という結論に至った大きい理由の一つは、技術の進歩により生体内やその周囲のエネルギーの測定が可能になったことである。つまり太古から癒しの手段として用いられながらも、いわゆる「霊能者」にしか感知できなかったために、学者たちから存在を疑われてきた「生命エネルギー」を科学的に証明できるようになったのだ。
エネルギーを中心においてみると、役に立つ情報が山のようにある。その中には生命や健康や疾病をエネルギー論的に解釈したものや、エネルギーそのものに関する情報なども多数あり、他の分野と同様に、医学研究においてもエネルギーが重要なテーマとなりうることがわかる。したがってエネルギーというテーマに異論を唱えて時間を無駄にするよりも、現在多くの場面で私たちが直面している問題の解決に取り組む方が効率的だと言える。(つづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊))
連載エッセイ ㊷☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
後鼻漏症候群の改善にみる「意味記憶」のパターン
腰痛で通院されていた患者さんが、以前から悩まされていた後鼻漏の治療も始めて、5回ほどの施術でほぼ改善した。後鼻漏の症状は数年前から発症し、鼻炎の薬も対症療法的に常用していたらしい。後鼻漏の治療は、腰痛治療のついでにという感じだったが、最初の後鼻漏の治療で「治るかも…」と思えたのだろう。その後、後鼻漏の施術を継続するごとに症状が段階的に改善していった。
様々な「誤作動記憶」が関係していたが、改善していく過程で印象に残ったのは「意味記憶」による影響だった。意味記憶とは一般的にいわれている「思い込み」のことである。いわゆる信念体系=ビリーフ(belief)のことなのであるが、「原因と結果」に基づくビリーフが多く関係していた。
改善につながったいくつかの「意味記憶」のパターンを紹介してみよう。例えば、
・「ビールを飲むと身体が冷えるから、鼻水が出る」
・「寒くなって身体が冷えるから、鼻水が出る」
これらの意味づけは、飲み物や外からの影響を受けて自動的に身体が冷えるという思い込みである。
この意味づけで問題なのは、自分の身体の自動調整機能(ホメオスタシス)を信じていないことにある。これを、
・「冷たい飲みものを飲んでも自分自身の身体が自動的に温めてくれる」
という新たな意味づけ(思い込み)で切り替える調整を行なった。
・「今年は花粉の量が多いから」というニュースからの情報にも意味記憶の反応が示されていた。これを、
・「今年は治療で花粉症の薬を飲んでいないし、自分の体質が変わったので」
という、症状とは切り離した意味づけで調整を行なった。
これらの「意味記憶」以外にも大脳辺縁系レベルでのいくつかの「信念」が関係していたが、「治らないのが当たり前」から「治るのが当たり前」と患者さん自身が自覚されていた様子が印象的だった。
後鼻漏症候群に限らず、様々なアレルギー症状が長引くと、多くの患者に「意味記憶」の反応が関係していることが多い。そのような症状が改善されない思い込みを紐解くことで、本来の自然治癒力が発揮される。
《連載55》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
〜チベット医学のバイブル『ギュー・シ』
テルマ(埋蔵経)はチベットの秘話である。非常に価値のある経典などは、後世の衆生のために地中深くに埋められ、その価値にふさわしい人物によって再び掘り起こされる、というものである。チベット医学のバイブルである『ギュー・シ』(四部医典)は、ヴァイロチャナの協力を得て、ユトク・ニンマ・ユンテングンポによって集大成されたものであるが、それがタバ・グンテチェンによって地中から発掘されたのは11世紀になってからのことである。それは8世紀からの約300年間、伝説上の秘典とされたのだった。
『ギュー・シ』の創出は、チベットが多くのものをインドをはじめとする諸外国に学びながらも、独自の水準を示したものとして極めて重要である。その出自がテルマによって秘密のベールをかけられていることも、この間のチベット人の苦心と努力を表現したものであろう。ギューは「タントラ」、シは「四つ」の意味である。その構成と章立ては以下のようである。
「根本タントラ」 6章
「論説タントラ」 31章
「秘訣タントラ」 92章
「結尾タントラ」 27章
合計156章からなる『ギュー・シ』の冒頭部分を、中川和也氏の試訳から引用する(『アーユルヴェーダ研究』1989年版)。
「インド語にて『アムリタ・アシュターンガ・フリダヤ・ウパデーシャ・タントラ』と名づけ、チベット語にて『甘露の精粋である八部門の秘密教説の医典』と名づく。
世尊、如来、応具、正覚等である薬師瑠璃光王に帰依いたします。
慈悲のために赴くことをなされる世尊に、ただ名号を聞くことのみによって、生存の悪しき状態の苦から保護し、三毒の病を消除する薬師仏に、琉璃の光明に帰依いたします……」。
アムリタとは甘露のことであり、神仏や神仏に供える飲食物を指すこともあって、それは「不死」を意味する。アシュターンガについては後述するが、『ギュー・シ』に与えられた尊称が「甘露の精粋」であることに注目したい。(次号につづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(49)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■65歳以上の脊柱管狭窄症による手術件数は1979年〜1992年にかけて8倍に増加しており、地域によって5倍の差が生じている。手術成績に関する十分な情報がないまま生死にかかわる治療を選択せざるを得ない状況は好ましくない。http://1.usa.gov/S8iXZL
……画像診断技術の進歩・外科的技術の変化・高齢化・有病率の上昇が手術件数を増加させたと考えられていますけど、外科医はこのあたりで立ち止まって、手術が患者のメリットになるかどうかを考えてみるべきでしょう。
■腰部脊柱管狭窄に対する選択的除圧術と脊椎固定術を受けた患者114名を分析した結果、65歳以上の42%に栄養不良が認められ、術後感染率が85%と高率だったことから、栄養不良は脊椎手術による術後合併症の危険因子である。http://1.usa.gov/R4q3Sz
……一般に栄養不良に関連する因子(貧困・低い教育レベル・精神医学的問題・アルコール依存・薬物依存)は、同時に腰痛に関連する因子でもあります。栄養不良を招くような因子を持つ患者に対する手術は慎重でなければなりません。
■椎間板ヘルニアと坐骨神経痛には炎症反応を引き起こすホスホリパーゼA2(PLA2)が関与していると考えられていたが、椎間板ヘルニアもしくは椎間板変性と正常な椎間板との間にPLA2値の差は認められなかった。http://1.usa.gov/S8KUR9
……椎間板ヘルニアや坐骨神経痛に炎症が関与しているという仮説には疑問があるということです。椎間板ヘルニアや神経根症状の発生は非常に複雑なプロセスであり、単独の物質に焦点を合わせるべきでないことを示唆しています。
■航空機組み立て工場に勤務する男性269名を対象に、職業性腰痛の予測因子を1年間にわたって追跡調査した結果、労災補償歴と腰痛再発による労災補償請求とが相関することが判明。腰痛は人間工学的問題とは無関係である可能性を示唆。http://1.usa.gov/R6YGav
……人間工学的介入によって腰への負担を減らして腰痛を予防しようという試みが行なわれていますけど、それで腰痛が予防できるというエビデンス(科学的証拠)はありません。
■ボーイング社の航空機関連従業員3020名を対象に、職業性腰痛の予測因子を4年間にわたって追跡調査した結果、仕事に対する不満と経済的問題(生活困窮)が腰痛発症による労災補償請求と関連。非物理的因子が関与している可能性。http://1.usa.gov/OORV9j
……非常に費用のかかる脊椎関連の就労障害を食い止めるためには政府が職場環境の改善命令を出すべきという専門家の主張もありましたが、エビデンスは(科学的証拠)は腰への負担を軽減することで腰痛を予防できるという説を支持していません。
■老人専門病院のナースを対象に運動プログラムの腰痛予防効果を調査したRCT(ランダム化比較試験)によると、13ヶ月後の腰痛による欠勤日数はトレーニング群で28日、対照群で155日だった。運動には腰痛を予防する効果がある。http://1.usa.gov/OOV5d3
……この論文では腰痛による看護師の欠勤を減らすために運動を強く勧めていますけど、腰痛はけっして職業病ではありません。この点は誤解のないようにお願いします。身体に負荷のかかる職業ほど腰痛発症率が低いのです。
N E W S
昨年1年間に認知症の行方不明者として全国の警察に届け出があった人は前年から3224人増え、1万5432人に上ったことが6月15日、警察庁のまとめで分かった。2012年の統計開始以降、4年連続で最多を更新した。
警察庁によると、昨年のうちに所在が確認されたのは、それ以前に行方不明になっていた分を含め1万5314人。第三者からの通報などを含め警察活動で発見されたのは9756人、自力で帰宅したり家族が発見したりしたのは4950人。発見時に死亡していたのは471人だった。
届け出の受理当日に所在が確認されたのは7割以上の1万1095人。見つかった人の98.4%に当たる1万5069人は1週間以内だった。(6/15 時事通信)
歩く人のためにエスカレーターの片側を空ける習慣を見直してもらおうと、東京都理学療法士協会が6月18日、都内の鉄道駅でPR活動をする。「片側空け」は、事故防止や混雑緩和などの観点から鉄道会社や業界団体が自粛を呼びかけているが、同会が強調するのは「体が不自由で、歩く側の手すりベルトにつかまりたい」という患者や障害者の存在。2020年東京五輪・パラリンピックまでに「歩く人ゼロ」を目指すという。
脊髄の病気で両手につえを持つ埼玉県和光市の会社員の女性(46)は毎日、通勤で都営大江戸線の赤羽橋駅を使う。一番緊張するのが地上までに2カ所あるエスカレーター。階段にして約100歳段、4〜5階に相当する長さがある。エレベーターは向かう方と逆の位置にあり、長い距離を歩かねばならない。
右手の方が自由が利くので、できれば右のベルトにつかまりたい。しかし、首都圏の暗黙のルールは「止まって乗る人は左側」。これに従って、乗り降りの訓練時から左のベルトを使うようにしてきた。荷物がぶつかってヒヤリとしたり、右手のつえが蹴飛ばされないかと気をもんだりして「右に乗った方が安心できる」という。
支援に乗り出したのが、リハビリの専門職らが集まる都理学療法士協会。6月18日に学術大会が開かれるのに合わせ、会場に最寄りの練馬駅(西武線、大江戸線)周辺で、エスカレーターの歩行禁止を呼び掛けるチラシ配布やシール投票をする。スタッフがエスカレーターで右側に止まって乗り、一般の乗客に「右側歩き」を考え直してもらう実演も予定している。交通事故や脳卒中の後遺症などでも、こうした片半身の障害が残りやすいという。
昇降機メーカーで作る日本エレベーター協会によると、2013〜14年にエスカレーターの事故は1475件起き、うち7割が転倒。年齢では60歳以上が約6割を占める。同協会の16年度の利用者アンケートでは、57%が「エスカレーターで人やかばんとぶつかり、危険を感じたことがある」としつつ、84%は「自分も歩いてしまうことがある」と答えていた。
公益財団法人「交通エコロジー・モビリティ財団」でバリアフリーを担当する松原淳・企画調査課長は「子どもや視覚障害者は介添え者が横に立った方がいいケースもある。片側を歩くのは転倒事故にもつながり、問題点が多い」と指摘する。(6/14 毎日新聞)
厚生労働省は6月14日、人口10万人当たりの年間死亡者数を示す2015年の「年齢調整死亡率」を発表した。国民の健康水準の指標として5年ごとに集計されており、男性は2010年の前回調査より58ポイント減って486人、女性も同20ポイント減の255人で、いずれも過去最低を更新した。
年齢調整死亡率は、年齢構成の異なる都道府県間で、住民の死亡状況を比較できるように調整した数値で、健康福祉行政に活用されている。女性の方が平均寿命が長いことなどから、男性の死亡率の方が高い。
死因別では、がん、心疾患、脳血管疾患の3大死因の死亡率が、男女ともに前回を下回った。都道府県別で見ると、全国最低は長野県で男性は434.1人、女性は227.7人。全国最高は青森県で、男性は585.6人、女性は288.4人だった。長野の全国最低は、男性が6回連続、女性が2回連続。一方、青森は前回も男女の死亡率が全国最高で、同省は、「塩辛い食べ物が多い食習慣などが影響しているのではないか」としている。(6/14 読売新聞)
認知症の1次予防において、成人期の身体活動の長期的変化の影響はこれまで検討されていなかった。東北大学の遠又靖丈氏らは、中年期以降の歩行時間の変化と高齢者の認知症との関連について検討を行った。Age and ageing誌オンライン版2017年5月5日号の報告。
大崎市在住の65歳以上で、障害のない日本人6909例を対象にコホート研究を行った。1994年と2006年に自己報告アンケートを用いて、1日当たりの歩行時間を個別に評価した(0.5時間未満、0.5〜1時間、1時間以上)。この2時点における3つのカテゴリを基に、対象者は歩行時間の変化に応じて9群に分類された。認知症に関するデータは、対象者を5.7年間追跡調査(2007年4月〜2012年11月)した公的な長期介護保険(LTCI)データベースより検索した。認知症の多変量調整後のハザード比(HR)を推定するため、Coxモデルを用いた。主な結果は以下のとおり。
・5.7年間の認知症発症率は、9.2%であった。
・歩行時間が最も短い群(1994年と2006年の2時点ともに0.5時間未満)と比較して、最も長い群(2時点ともに1時間以上)は認知症発症リスクが有意に低く、多変量調整後のHRは0.72(95%CI:0.53〜0.97)であった。
著者らは「これらの結果は、中年期以降の高レベルな身体活動を維持することが、高齢期における認知症予防のための重要な戦略であることを示唆している」としている。(6/5 CareNet)
80歳で自分の歯が80本以上ある人の割合が推計で51.2%に上ることが、厚生労働省の2016年歯科疾患実態調査で分かった。前回11年調査の40.2%から11ポイント上昇し、これまでで最高となった。厚労省の担当者は「歯や口の中を清潔に保つ口腔ケアに対する意識が高まっているためではないか」と分析している。
20本以上の歯がある人の割合は、75〜79歳で前回比8.5ポイント増の56.1%、80〜84歳で15.3ポイント増の44.2%で、この結果から、80歳で51.2%と推計した。85歳以上では8.7ポイント増の25.7%だった。また1日2回以上、歯を磨く人の割合(1歳以上)は、前回比3.5ポイント増の77.0%に達した。(6/5 読売新聞)
厚生労働省の『平成26年度 国民医療費の概況/患者調査の概況』によると、歯肉炎や歯周病の患者数は約331万人(男性約137万人、女性約194万人)、歯周病の有病率は20代が約7割、30〜50代が約8割、60代は約9割にのぼる。
最近、歯周病を放置すれば約300種類もの歯周病の原因菌が産出する「酪酸」が、アルツハイマー病の発症リスクを高めるとする研究が発表された。日本大学歯学部の落合邦康特任教授(口腔細菌学)らの研究チームは、歯周病とアルツハイマー病の関連性をラットによる実験によって確認し、福岡市で開かれた日本歯周病学会で発表した(5月27日)。歯周病とアルツハイマー病の関連性を調べた研究は少なくないが、動物の体中で検証した研究は国内初。
研究チームは、「酪酸」が動物の脳にどのような影響を与えるのかを調べるために、健康なラット3匹の歯肉に酪酸を注射。6時間後に、記憶を司る海馬、ホルモンの分泌に関わる松果体と下垂体、さまざまな高度な活動を司る大脳、運動機能を調整する小脳が受けた酸化ストレスを分析した。その結果、「酪酸」を注射したラットは通常のラットに比べ、鉄分子(ヘム)、過酸化水素、遊離脂肪酸の濃度が全ての部位で平均35〜83%も上昇していた。
特に海馬での上昇率が最も高く、ヘムは平均79%、過酸化水素は平均83%、遊離脂肪酸は平均81%、アポトーシス(細胞死)を誘導するタンパク質分解酵素のカスパーゼは平均87%も濃度が上昇。さらに、アルツハイマー病の患者の脳神経細胞内で物質輸送に関わるタンパク質の「タウ」の量が平均42%も増加していた。
落合特任教授によれば、歯周病患者の歯周ポケットからは健常人の10〜20倍もの酪酸が検出されることから、歯周病巣の酪酸が長期間にわたって脳内に取り込まれると、アルツハイマー病を引き起こす一因になるので、早めに治療をすべきだと指摘している。(6/4 ヘルスプレス)
肥満高齢者に対し食事による減量プログラムと運動療法を行う際、有酸素運動と筋力トレーニングを併せて実施することで、有酸素運動または筋力トレーニングのみを実施する場合に比べ、半年後の身体機能はより大幅に向上することが示された。米国・ベイラー医科大学のDennis T. Villareal氏らが、160例の高齢者を対象に行った無作為化比較試験で明らかにしたもので、NEJM誌5月18日号で発表した。研究グループは肥満高齢者160例を対象に、減量によるフレイルからの回復や筋量・骨量の減少予防に資する、より効果的な運動の種類について検証した。
被験者を無作為に4群に分け、うち3群は減量プログラムとともにそれぞれ1)有酸素運動、2)筋力トレーニング、3)有酸素運動と筋力トレーニングを併用した。4)対照群には減量プログラムも運動療法も行わなかった。
主要評価項目は、ベースラインから6ヵ月後の、身体機能テスト(Physical Performance Test:0〜36点で、高いほど身体機能が良好)の点数の変化とした。副次的評価項目は、その他のフレイルに関する指標、骨密度、身体機能の変化などとした。被験者のうち試験を完了したのは141例(88%)だった。
結果、身体機能テストのスコア変化は、1)有酸素運動群が14%(29.3から33.2点に)増加、2)筋トレ群が14%(28.8から32.7点に)増加だったのに対し、3)有酸素運動+筋トレ群は21%(27.9から33.4点に)増加と、より大幅に上昇した(それぞれボンフェローニ補正後、p=0.01、p=0.02)。また、すべての運動群は対照群と比べ、同点数が大幅に増加した(いずれもp<0.001)。
最大酸素消費量は、3)有酸素運動+筋トレ群(17%増)と1)有酸素運動群(18%増)が、2)筋トレ群(8%増)より大幅に増加した(いずれもp<0.001)。筋力については、3)有酸素運動+筋トレ群(18%増)と2)筋トレ群(19%増)が、1)有酸素運動群(4%増)より大幅に増加した(いずれもp<0.001)。体重は、すべての運動群で9%減少したのに対し、4)対照群では有意な変化は認められなかった。
一方、除脂肪体重は、1)有酸素運動群では5%低下だったのに対し、3)有酸素運動+筋トレ群と2)筋トレ群ではそれぞれ3%低下、2%低下と、減少率はより小幅にとどまった(いずれもp<0.05)。股関節骨密度低下についても同様に、1)有酸素運動群が3%低下に対し、3)有酸素運動+筋トレ群と2)筋トレ群ではそれぞれ1%低下、0.5%低下にとどまった(いずれもp<0.05)。(6/1 CareNet)
余分な脂肪が付くと一部のがんリスクが上昇するが、その際は脂肪の量だけでなく脂肪の付く場所が重要であるという研究結果が、「British Journal of Cancer」オンライン版に4月25日に掲載された。
研究を率いた国際がん研究機関(IARC)のHeinz Freisling氏は、「今回の研究で、過剰な腹部脂肪はBMI(体格指数)と同じくらい、肥満関連のがんリスクを示す指標となることが判明した。今回の研究は、体型によるリスクに対する理解をさらに深めるものだ。生物学的な基盤による影響をより明確に示すためには、がんリスクを検討する際にBMI以外の因子についても調べることが重要だと考えられる」と話している。
今回の研究では、平均年齢62〜63歳の計4万3000人を前向きに追跡した7件の研究結果を分析した。中央値12年間の追跡期間中に、1600人超が肥満関連のがんと診断された。
分析の結果、腹囲(ウエスト周囲長)が1標準偏差(SD)増大するごとに肥満関連のがんリスクは13%上昇していた。同様に、臀囲(ヒップ周囲長)が増大すると9%上昇し、ウエスト・ヒップ比が大きくなると15%上昇していた。ただし、この結果は過剰な腹部脂肪ががんリスクを高めると証明するものではない。
過体重や肥満は、予防可能ながんの原因としては喫煙に次ぐ因子であり、大腸がん、乳がん、膵臓がんなど13種類のがんと関連している。がんの専門家である英Cancer Research UKのJulie Sharp氏は、「がんリスクを減らす方法について、人々に知らせることが重要である。健康体重の維持は、がんのリスク低減に利益をもたらす可能性があり、他にも多くの恩恵が得られる」と話している。(5/24 HealthDayNews)
ひとり暮らしで、食事もひとりでする「孤食」の多い高齢者は、うつ病になりやすいとの調査結果が明らかになりました。調査を行ったのは、東京大学の谷友香子研究員らの研究グループです。この調査によると、一緒に食事をする人がいる高齢者と比べ、ひとり暮らしで孤食の高齢者はうつ病になる可能性が女性で1.4倍、男性で2.7倍も高かったとのこと。
食事は社会的活動の場であり、単に栄養をとるだけではなく、精神的な健康を保つうえでも重要と言われています。特に、高齢者にとっての食事は人と交流する重要な役割を担っているとのこと。なのに、孤食になると、早食いになる、咀嚼回数が減る、メニューが偏る、楽しい時間ではなくなるなど、うつ病を誘発する要因が多くなるそうです。
うつ病の症状は人それぞれでしょうけれど、喜びの喪失、意欲の低下、思考力の低下が基本的な症状で、老人性うつ病は、これに原因不明の身体的症状(痛みや不調)を訴えるケースが多いとのこと。痛み・不調の原因探しにドクターショッピングに走ったりしたら、かかる医療費もバカにならないでしょう。何より、高齢期の生活を楽しめないのは、極めて残念なことです。
うつ病の原因は孤食だけではありませんが、原因のひとつになりえるわけですから、その原因は取り除くべきです。そのためには、現役時代から、高齢期の孤食を避ける努力をしましょう。これをすれば防げるという決定的な方法は思いつきませんが、日ごろから家族や仕事の同僚、友人・知人、近所の人と食事をする習慣を身につけておくことが必要だと思います。
なお、ひとり暮らしの親御さんがいらっしゃる人は、孤食にならないよう気をつけてあげましょう。親御さんがうつ病になったら心配で仕事に集中できなくなりすし、病院に連れて行ったりで時間の自由もなくなりますから。親御さんには、近隣の人たちと会食したり、地域の会食サービス・コミュニティレストランなどを利用して、孤食にならないようにしてもらいましょう。(5/22 AllAbout)
■次号のメールマガジンは2017年7月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ