エンタプライズ発信〜メールマガジン【№50】2015. 6

夏になると気になるのが体臭。来訪する患者さんの中にも時折います。ある化粧品会社のリサーチ(25〜54歳の働く男女183名を対象)によると、ニオイで一番辟易するのは男女とも「汗臭」だと答えています。ではこの嫌われるニオイを抑えるには、身体のどの部分を念入りに洗えばいいのでしょうか? 大きく3つあると言います。①脇…日常生活のなかでも腕はよく動かすパーツのひとつ。石鹸をよく泡立てて丁寧に洗う。②後頭部・首の後ろ…マッサージをするように時間をかけて洗い、すすぐときは十分に流す。耳の後ろが臭うという説も。③足指の間…足は1日に約コップ1杯分の汗をかく場所。足の指1本1本を丁寧に洗浄する。手指と同様に衛生を保つ。ということでニオイの原因を防ぐためには、適切な場所を殺菌・洗浄・消臭することが大切です。臨床家自身が臭うときがあるかもしれません。特に午後の診療前にはニオイチェックが必要ですね。ちなみに同リサーチでは「加齢臭を許せるか」の質問については、男性の94.6%、女性の86.8%が「許せる」と回答しています。「まったく許せない」と答えた人は0%。加齢臭が原因で怒らせてしまうことはないようです。ホッと胸を撫でおろす編集子。

★☆★━━━━━━━■CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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◎連載vol.8

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


《 直流コントロール・システム 》(つづき)

神経周囲系と生体マトリックスの半導体的性質に関するベッカーの研究は、臨床的にさまざまな意味を持つ。ベッカーが示した研究結果によると、ニューロンの活動を実際にコントロールしているのは神経周囲系だが、ニューロンは神経周囲系の活動に関与していないことがわかる。神経周囲系が関係する重要な現象は多数あり、以下はその例である。
◆脳波に対する地磁気の影響。動物の活動のうち、進路方向の決定や精神状態に影響される行動、反応時間、生体リズムなどは地磁気の影響を受ける。
◆催眠状態や麻酔状態。直流電流によって前頭-後頭の電気ベクトルを人工的に逆転させると浅い麻酔状態に陥る。
◆成長と再生。
◆外傷修復。神経周囲系は、外傷部位から派生する外傷電位をゆっくりと伝える。外傷後の全身的な反応や、外傷治癒を促す反応の調整・統括には、外傷電位が関わっている。

《 行動の前に生じるパルス:想像力と意志のメカニズム 》

脳波や脳磁波は、行動よりも「前に」行動状態に入る。この「運動連鎖」については世界各国で盛んに研究が行われており、初期の研究から4種類の電気的成分が発見された。そしてその後の研究により、先の電気的成分に対応する磁気成分が発見され、それらはスクイド磁気計測器で検出できることが示された。
運動連鎖は、まず脳波や脳磁波の変化から始まり、アナログ直流式の神経周囲系を介して全身へと伝達される。
再び人体をサイバー・ネットワークにたとえるならば、一連のシグナルが順番に発生して伝わるというシステムは合理的である。つまり、まず活動準備を指示するシグナルが送られ、次に活動を実行せよというシグナルが送られる。そして最後は、活動終了を報告するシグナルが返送されるというシステムだ。例えば、右手の人差し指を曲げるという運動・動作をするためには、いくつかの段階で認識機能が働いていることがわかる。私たちは、動作が必要であること、動作をしていること、そして動作が終わったことを、そのつど認識しているのである。

この運動連鎖という重要な現象を、トレーニングに生かそうとする研究が行われている。スポーツ、ダンス、演劇、音楽、戦闘、そしてヒーリングにおけるイメージ・トレーニングである。これらの活動に携わる選手、俳優、奏者、セラピストおよび患者たちは、実際に体を動かさなくても「頭の中で」イメージを描いてトレーニングすることにより優れた効果が得られることがある。ただしこの効果を説明するメカニズムはまだ明らかになっていない。(つづく)

(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ⑱☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


アレルギー性鼻炎の改善 (感情を絡めた治療)

小学3年生の女の子がお母様に連れられて来院。お母様によると、昨年の秋ごろから鼻炎がひどくなり耳鼻科を受診して投薬も受けたが悪化してきているとのこと。そして最近では夜に鼻が詰まって息苦しくなり、眠りにつくのに時間がかかっていること。また、前よりは改善しているが、アトピー性皮膚炎の症状も生まれてからずっと足の方にあるらしい。

初回の鼻炎の検査では「寒さ」という体感覚に、「恐れ」「避けたい」「喜び」などの感情が絡んでいた。恐れの感情は、夜の暗いところや物音などに関係していた。喜びの感情は学校での楽しいときのことだった。足のかゆみは「乾燥」や「季節の変わり目」の変化に過敏になっていた。
19日後、2回目の来院時のお母様の話によると、治療したその日から夜の鼻づまりが改善されすぐに眠れるようになったとのこと。再度検査をしてみると「喜び」という前回と同じキーワードに陽性反応が示された。今回は2回目なので具体的な質問をしてみた。喜びは友達と鬼ごっこをしているときに、追いかけて捕まえたときのうれしさで施術を行った。

「恐れ」の感情も前回と同じように夜に関しての恐れだった。質問してみると怖い夢の話がでてきた。その夢の内容を聞いてみると、お父さんが誰かに連れて行かれて、お店で扇風機を買わされている……???と、そこでお母さんに起こされて夢が終わったとのこと。おそらく潜在意識はその先を空想して恐れている可能性があるので、その先を質問すると、最終的にお父さんがどこか知らないところに連れて行かれて帰って来なくなるという空想が、もっとも恐れていることのようだった。その恐れの空想で施術を行った。

子供の鼻炎では、夜が怖いという潜在感情が絡んでいることが多いように感じる。泣くときには涙とともに鼻水も一緒にでてくるが、おそらく潜在意識のレベルでは夜が怖くて泣くときのスイッチが入り、鼻水がでるような誤作動を起こしているのだろう。また喜んで感動すると、涙もでるが鼻水もでる。喜びのときの「うれし涙」というのがあるように、「うれし鼻水」になっているのかもしれない。
いずれにしろ、感情を絡めた治療はパワフルである!!


《連載32 》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


5. インド編 〜古代医学の最高峰〜

生きつづけるアーユルヴェーダ

インドでは伝統的な医学と薬学を総称してアーユルヴェーダと呼ぶことはよく知られている。アーユルは「寿命」「生命」であり、ヴェーダはバラモン教の聖典の総称であって、本来の意味は「知識」である。したがってアーユルヴェーダとは「寿命についての知識」「生命科学」ということになる。
この五千年の歴史をもつといわれる伝承医学が、現在でもインドの総人口の8割にあたる約5億人の医療をまかなっており、これまでアーユルヴェーダを専攻するために設立された大学の数は約100校にものぼるという。

「ここでインドにおける伝統医学の現状に目を向けてみましょう。一つの学問体系の進歩とその有用性をはかるためには、適当に構成された教育と、よい設備を持った研究機関が第一の緊要事であることは一般に認められていることでしょう。しかし英国統治下のインドでは100年以上にもわたって近代西洋医学が唯一の基準的な医療体系として認められてきました。……
アーユルヴェーダが国家から特別の関心を向けられ、支持を得られたのは僅々インド独立以後の出来事であります。理論的なアプローチの点での評価のいかんは別としまして、アーユルヴェーダの実際的な価値、有用性は軽視することができません。なんとなれば、それは全人口のほぼ80%の医療を現実にまかなっているのであり、特に数千にわたる村落や小都市での需要を充たしているのでありまして、そこでは容易に入手しうるような安価な薬が、薬草とか伝統的化学薬の形でインドの大衆の健康維持に成功裡に使用されているのであります。
しかし現代医学の進歩と歩調を合わせるために、伝統医(ヴァイディア)は個人的にサンスクリット医学理論や伝統薬物の修練を受ける一方、体温計であるとか、聴診器であるとか、顕微鏡、エックス線、その他外科の進歩した方法などを教育されることになっています。
この目的のためにアーユルヴェーダの大学がつくられ、付属の大病院を備え、そこでは解剖も外科も学生たちに与えられ、伝統医薬が使用され、検討される。伝統医は一般医と平等に登録され、資格を与えられます……(『アーユルヴェーダ研究』1973)

アーユルヴェーダの大学があり、対等の資格が与えられていることは、中国の広大な農村で“はだしの医者”が養成されていることと同様、日本の医療の現状を考えるとき、注目に値することである。またこの伝統医(ヴァイディア)が、ネパールで14年間にわたって医療奉仕活動をしているクリスチャン・ドクター岩村昇氏の一命を、ヒマラヤの薬草から作った「緑色の液体」によって取り留めたことは、すでに述べたとおりである。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(25)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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情報元の長谷川淳史先生のリリースが格段に速いため、今号よりごく最近の情報にコマを進めお伝えしていきます。

■有痛性の骨粗鬆症椎体骨折患者131名を対象としたRCT(ランダム化比較試験)によると、経皮的椎体形成術群と対照群(保存療法)を比較したところ、両群間の疼痛および活動障害に差は認められず、椎体形成術の適用を支持する結果は得られなかった。http://1.usa.gov/kvXvxo
……脊椎疾患では手術というドラマ、手術という儀式が絶大な効果を発揮することが多々あります。骨セメント療法もそのひとつだったわけですが、ランダム化比較試験によって保存療法と同じ効果しか得られないことが明らかになった今、はたして貴重な医療費を費やしてまで続ける価値があるでしょうか。健康保険料を支払っている国民一人ひとりが考えてみるべきだと思います。

■健常者41名を対象に腰部椎間板を5年間にわたってMRIで追跡調査した結果、物理的負荷(重量物の挙上や運搬・腰の回転や屈曲等)という従来の危険因子は椎間板変性とは無関係で、腰痛発症率はむしろ椎間板変性のある方が低かった。http://1.usa.gov/178sVnE
……重い物を持っても椎間板が潰れることはありませんし、椎間板が潰れている人は腰痛になりにくいという事実が確認されました。腰に負担がかかる動作を怖れる必要はありません。腰痛にまつわる迷信や神話は頭から消去しましょう。

■男性の一卵性双生児115組を対象にMRIで椎間板変性を促進させる危険因子を調査した結果、椎間板変性は仕事やレジャーによる身体的負担、車の運転、喫煙習慣といった物理的因子より、遺伝的因子の影響を強く受けていることが判明。http://1.usa.gov/kWg7Iw
……椎間板が潰れるかどうかは腰にかかる物理的負担より遺伝子の影響が強いとことが明らかになっています。国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した研究です。素人ならともかく腰痛患者をあつかう医療関係者が知らなかったではすみません。

■21-80歳までの腰痛未経験者52名を対象にCATスキャンで腰部椎間板を分析した結果、年齢にかかわらず35.4%に何らかの異常が検出され、40歳未満の19.5%に、40歳以上の26.9%に無症候性椎間板ヘルニアが確認。http://1.usa.gov/mBTclS
……レントゲンやMRIだけでなく、CATスキャン(CTと同じ)でも健康な人の中に椎間板の異常が見つかります。したがって椎間板変性や椎間板ヘルニアが痛みの原因とはいえません。

■20-80歳までの腰痛未経験者67名を対象にMRIで腰部椎間板を分析した結果、21-36%に椎間板ヘルニアが、50-79%に椎間板膨隆が、34-93%に椎間板変性が確認されたことから、手術の選択は慎重にすべきと結論。http://1.usa.gov/knGWuH
……椎間板の異常≠痛み。∴椎間板の異常≠手術。

■椎間板ヘルニアと診断された強い腰下肢痛を訴える患者46名と、年齢、性別、職業などを一致させた健常者46名の腰部椎間板をMRIで比較した結果、健常者の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性が確認された。http://1.usa.gov/iN3oKG
……これも国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した有名な研究です。椎間板ヘルニアがあったり椎間板が潰れていたりしても腰下肢痛が出るとは限りません。症状の有無は心理社会的因子が関与していることが明らかになっているのです。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (50)

根本 良一(療動研究所主宰)


【 連動操体法の応用編 】

2. 腰に関わる障害

長時間立っていると痛い、つらい

以下に注目し治療を考察する。
1)立っていると、腰から背中の筋に緊張が起こる。
2)大腰筋から腿の前後の筋(大腿二頭筋、大腿四頭筋)および内腿部からの筋、殿部から腓腹部が緊張していると、腰が痛い、足が痛い、つらいということになる。
3)ふだんの立ち方にも問題あるにちがいない。
・足底の前後にわたる体重配分がうまくできているか、靴が適正かも重要。
・腰、脚の筋が硬くなっていないか。
・腹部の筋(腹直筋、外腹斜筋など)が緊張していると腰や背が丸くなり、全身に歪みが連動して立っていて負荷になりうる。

朝、起き上がるとき痛い、つらい

以下に注目し治療を考察する。
1)寝る姿勢が悪いことが多い。枕は首の弯曲が保たれること、また腰をサポートして弯曲を維持することを第一とし、
2)腰の緊張(大腰筋)がありことが最大の原因、
3)腹部の緊張(腹直筋、外腹斜筋)があると起き上がり、捻る動作が苦しい、しにくいということに関連してくる。
4)そこで起き上がる前に、手足を動かしたり、背伸びするように心がける。一気に起き上がることはないと思うので、
・横向きに身体を転がす:腹部の筋が硬い。
・まず手をついて、次に膝をついて立ち上がるよう努める。
股関節の筋が硬くなっていることもある。ここが硬いと腰が伸びきらず、腰が丸くなり、疲れが出やすくなることも注目するとよい。

長く歩くと痛い、きつい

歩くとき、ジョギングのように脚を交互に出すと腰(骨盤)も交互に前後に捻れた動きをする。上体は正面を向いたまま、これは両足で立っていて上体を左右に捻る動作と同じある。
腹部の外腹斜筋、内腹斜筋、そして股関節の大腰筋、大腿直筋、中・小殿筋などが疲れるので、歩きたくない、座りたい、となることが多い。そこで疲れたら次のチェックをする。
1)靴を選ぶ。足先の広さ、踵の高さをフィンガー・スケールを用いて点検し、靴の硬さもチェックする。
2)腹側部の筋では、外腹斜筋を自療操体で緩める。左右とも行う。両手を組んで背伸びし、左右気持ち良い方へ2-3回伸ばす。
3)股関節では、大腰筋、大腿直筋、中・小殿筋をやはり自療操体で行う。


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NEWS ■心臓マッサージだけでも蘇生効果「普及拡大を」―京大調査

心肺停止の患者に一般市民が蘇生を行う際、人工呼吸せずに心臓マッサージ(胸部圧迫)だけでも救命数が増えたとの調査を、京都大の石見拓教授(救急医学)らの研究チームがまとめた。
石見教授は「人工呼吸は心理的抵抗も強い。子どもが呼吸困難で心停止した場合など例外もあるが、胸部圧迫を行う人が増えれば、救命数を増やすことができる」と話している。
調査では、2005年1月から12年末までの消防庁の記録を使い、救急搬送前に心臓が止まった患者約81万6000人について、救急隊到着前に市民が行った蘇生法を分析。胸部圧迫と人工呼吸を約10万人、胸部圧迫のみを約25万人の市民が行い、搬送前にいずれかの蘇生法を受けた患者の社会復帰数(人口1000万人あたり推計値)は、8年間で9人から43.6人に改善した。
患者の社会復帰数を詳しく見ると、胸部圧迫のみの場合が0.6人、人工呼吸と共に行った場合は8.4人だったが、8年間でそれぞれ28.3人、15.3人に改善。胸部圧迫のみの方がより改善幅が大きかった。
心肺蘇生法は従来、胸部圧迫と人工呼吸を繰り返す方法が一般的だったが、近年、国際的に議論が活発化。医師や研究者らでつくる「日本蘇生協議会」(東京)などが策定した日本版の指針では「訓練を受けていない場合は胸部圧迫のみを行うべきだ」と明記している。(時事通信 6/13)


NEWS ■「ズンズン運動」起訴内容認める。乳児死亡事件

「ズンズン運動」と称する独自の施術で生後4カ月の男児を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われたNPO法人「子育て支援ひろばキッズスタディオン」(新潟県)=解散=の元理事長、姫川尚美被告の第2回公判が6月9日、大阪地裁で開かれ、姫川被告は起訴内容を認めた。4月の初公判では認否を留保していた。
検察側は冒頭陳述で「医学的な裏付けもなく、乳幼児をうつぶせにして首の周りをもむ施術を行っていた」と指摘。平成25年2月には新潟県の男児=当時(1)=が施術後に死亡したが、「その後も安全性を確認せず、危険な行為と認識した上で施術して死亡させた」と主張した。
起訴状によると、姫川被告は昨年6月、大阪市淀川区のNPO法人の事務所で、神戸市の男児に施術して死亡させたとされる。姫川被告は大阪府警の調べには容疑を否認していた。弁護側は遺族への賠償手続きを進めていることも明らかにした。(産経新聞 6/10)


NEWS ■仕事のストレスだけでは太りません—-英研究チーム解析

仕事のストレスが強いからといって、太るとは限らない。こんな研究成果を、英ロンドン大などの研究チームが大規模なデータ解析で明らかにした。仕事の負担を減らすだけで肥満対策になる、とはいかないようだ。6月4日、国際肥満ジャーナル電子版に掲載された。
求められるレベルは高いのに、裁量や自由度は小さい――。こうした仕事上のストレスは肥満を招き、心臓病や糖尿病のリスクになると思われてきたが、はっきりしていなかった。研究チームは、肥満や体重増加との関連を調べた5論文の疫学研究データを合わせて解析した。対象は日本人を含む約6万人分にあたる。この結果、仕事のストレスと肥満や体重増加の間には直接の関連性が見られなかった。仕事の負荷が減っても、肥満になる率は変わらなかったという。
研究チームは「ストレスで精神的な不調が生じても、食欲が増すことも減ることもありうるため」と推定。仕事のストレスだけでなく、ほかの要因も考慮して肥満対策に取り組む必要があると提案している。(朝日新聞 6/7)


NEWS ■30分の昼寝が2型糖尿病リスクを下げる可能性

昼寝時間の長さと2型糖尿病リスクがJカーブの関連を示すとのメタ解析の結果が、第58回日本糖尿病学会年次学術集会(5月21〜24日、下関市ほか)で報告された。昼寝時間30分付近でもっともリスクが低下していたという。
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科の山田朋英氏らは、1951〜2014年に出版された昼寝と2型糖尿病に関する研究を検索。6コホート研究の20万例を超えるデータを用量依存的に統合解析した。
夜間の睡眠時間、年齢、性別などを考慮した結果、1日60分未満の短い昼寝では、糖尿病リスクの有意な増加はなかったが、1日60分以上の長い昼寝をする人では糖尿病リスクが有意に上昇することがわかった(統合相対リスク比1.46、95%CI 1.23〜
1.74)。昼寝時間と2型糖尿病リスクには、30分付近で最もリスクが低くなるJ字型の関係が認められた。
山田氏は、「今回、睡眠の質については検討できなかったが、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が2型糖尿病リスクを高めるといわれており、OSAのある患者で昼寝時間が長くなっていたのではないか」と考察。短い昼寝の効用について検討する必要性を指摘している。(HealthDay News 6/4)


NEWS ■慢性腰痛に耳ツボ指圧は有効?

慢性腰痛に対して耳指圧療法が有効であることが、米国・ピッツバーグ大学のChao
Hsing Yehらが行った無作為化比較試験で示された。耳指圧療法は非侵襲的であり患者自身による自己治療も可能で、慢性腰痛の治療として期待される。ただし今回の研究は、疼痛日誌に記録された疼痛スコアに基づいており、疼痛スコアは日々変動することから、著者は「他の治療パラメータを用いる研究デザインが必要」とも述べている。
対象は、慢性腰痛患者61例であった。耳指圧療法(APA)群と偽APA群に無作為に割り付け、外来にて週1回、4週間治療を行った。来院のたびに疼痛日誌を渡し、鎮痛薬の使用および疼痛強度を毎日記録してもらった。主な結果は以下のとおり。
・APA群において、初回APA後に最も重度の疼痛強度が30%減少した。
・その効果は持続的で、4週間のAPA終了時は疼痛強度が44%減少した。
・APAは、慢性疼痛に対して他の治療の臨床試験で示されている臨床的に意義のある改善を達成した。
・鎮痛薬の使用も、偽APA群に比較しAPA群で減少した。
(ケアネット)


NEWS ■本当だった!? 血液型による性格の違い

日本の健常人において、ABO式血液型の遺伝子型と性格特性には有意な関連が認められることが、弘前大学の土嶺章子氏らの研究により明らかになった。しかし、ABO式血液型の遺伝子型と持続性形質との間の関連が比較的弱い可能性があるため、本研究結果は注意して解釈するべきであるとのこと。
ABO式血液型と性格特性の関連について、科学的なコンセンサスは得られていない。しかし最近の研究で、ドーパミンβヒドロキシラーゼ(DBH)遺伝子はABO遺伝子と連鎖しているという仮説が立てられた。そこで著者らは、ABO遺伝子型と性格特性との関連を調査した。
対象は、気質性格検査(TCI:Temperament and Character Inventory)を受けた日本の健常人1,427人。各被験者のABO血液型は、TaqManアッセイを用いて、血液型を規定する遺伝子多型(rs8176719、rs8176746)を調べることにより決定した。 6つのABO遺伝子型あ
るいは4つのABO表現型と性格特性との関連は、年齢や性別で調整後、共分散の多変量解析(MANCOVA)を用いて評価した。主な結果は以下のとおり。
・多変量解析の結果、TCIスコアは、ABO遺伝子型群間で有意な差が認められた(F
[7、1393]=3.354、p=0.001)
・その後の単変量解析では、遺伝子型群間における持続性の平均スコアに有意な差が認められた(F=2.680、 partialη2=0.010、 p=0.020)
・4つのABO表現型に分割した場合も、表現型群間でTCIスコアに有意な差が認められた(F [7、1397]=2.529、 p=0.014)
・その後の単変量解析では、表現型群間における持続性の平均スコアに有意な差が認められた(F=2.952、 partialη2=0.006、p=0.032)
以上のことから、日本の健常人においては、ABO式血液型の遺伝子型と性格特性が有意に関連することが明らかになった。(ケアネット 6/2)


NEWS ■医療保険改革法が成立.国保を都道府県に移管

国民に広く負担を求める医療保険制度改革法が5月27日の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。赤字体質が続く国民健康保険(国保)の運営主体を平成30年度に市町村から都道府県に移し、規模を大きくして財政基盤を安定させるのが柱。75歳以上の後期高齢者医療制度を支えるため、大企業社員や公務員の負担を増やす「総報酬割」を29年度に全面的に導入する。
国保には自営業者に加え、所得の少ない年金生活者や非正規労働者らが加入している。保険料収入が少ない一方で、医療費が高く慢性的な赤字体質が続いている。このため、国は都道府県への移管とともに、29年度以降、毎年3400億円を国保に投入する。
その財源を確保するため、大企業の健康保険組合や公務員の共済組合の負担を増やす。具体的には後期高齢者の医療費を支える支援金の算定方式を変更し、今年度から所得に応じた「総報酬割」で算出する割合を広げ、29年度に全面導入する。この影響で大企業社員らの保険料は上がる見込みだ。
患者関連では、紹介状なしで大病院を受診した場合は、5千〜1万円の自己負担を求める。また入院時の食事代(現在260円)を、低所得者らを除き30年度から460円に値上げする。(読売新聞 5/28)


NEWS ■電子たばこ4銘柄に発がん性物質—厚労省が規制検討

香りや味のする溶液を電気式の器具で加熱し、蒸気を吸う「電子たばこ」の安全性を議論する厚生労働省の専門委員会が5月21日開かれ、国内で流通する9銘柄中4銘柄で、高い濃度の発がん性物質が検出されたとする調査結果が研究班から示された。「ニコチンを含まない」として販売されている溶液の約半数で、実際はニコチンが含まれていたことも報告された。
電子たばこをめぐってはニコチンを含まないとされる溶液に医薬品医療機器法(旧薬事法)上の国内販売規制はない。厚労省は発がん性物質への対策を含め、規制のあり方を検討する。
研究班は9銘柄の電子たばこで吸煙時に発生する物質を測定。このうち4銘柄で、発がん性物質「ホルムアルデヒド」が紙巻きたばこと同程度か、それ以上の値で検出された。値が小さい他の5銘柄を含め、リスク評価では「必ずしも健康被害が想定されるわけではない」としながらも「懸念あり」とした。一方、研究班が計103種類の溶液を調査した結果、48種類で微量のニコチン含有が確認された。
電子たばこは平成22年のたばこ税増税をきっかけに禁煙グッズの一つとしても注目されたが、委員からは「より高いニコチンを求めることにはつながらないのか」などの意見が出された。研究班が今年1〜2月に行ったインターネット調査(有効回答8240人)によると、電子たばこを「使用したことがある」と回答したのは6.6%だった。(産経新聞 5/22)


NEWS ■睡眠不足は痛みの感受性を高める

不眠症やその他の睡眠障害に悩んでいる人々は痛みに対する感受性が高まるようだ、というノルウェイ公衆衛生研究所からの研究報告。
痛みの耐性に対する影響は、明らかに不眠症と慢性疼痛の両方に悩む人々で最大であった。 研究チームは、進行中のノルウェイ人健康研究の参加者の10,412名の成人(平均
年齢58歳、54%が女性)を対象に検討を行った。参加者各々に標準的な疼痛感受性検査を実施した。これは氷水中に手を入れて何秒耐えられるかを測定するものである。
また不眠症など種々の睡眠障害の有無、睡眠時間、入眠時間が聞き取り調査され、これらのデータと痛覚の関連性が解析された。研究ではまた、睡眠障害と痛覚に影響する他の因子についても検討された。
全体で32%の参加者が106秒間の試験を最後まで氷水に手を浸けて耐えた。不眠症のない参加者は31%がより早い時間で手を上げたのに対して、不眠症のある参加者は42%と高かった。
痛みの感受性は、不眠症の頻度および重症度が高まるほど高まったという。不眠症のない人々と比較して、週1回の不眠を訴えた者では痛みの耐性が52%低下したが、月1回の不眠を訴えた者では24%の低下に留まった。
痛みの感受性はまた入眠時間の長さとも関係していたが、睡眠時間の長さとの関連はみられなかった。これらの関係は性年齢を調整後も有意であったという。(時事通信 5/18)


■次号のメールマガジンは7月10日ごろの発行です。お楽しみに。(編集人:北島憲二)


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