エンタプライズ発信〜メールマガジン【№33】2014. 1
昨年暮れにどうも声がかすれると思い、通いの内科医師に訴えたところ、「逆流性食道炎かな、喉に痛み・違和感を覚えることはないですか」と言われました。特にそのような症状はないので喘息からくる一因かということで薬を処方されました。この逆流性食道炎は消火器疾患の第1位になっていると言います。同炎症は胃と食道との間で弁の役割をはたしている噴門が開きやすくなることで、胃から食道へ胃酸が逆流。食道粘膜が炎症をおこし、胸やけや胃もたれなどの不快な症状を引き起こす病気です。そして最近では便秘による逆流性食道炎が増えています。便秘になると余分な便が場所をとるため、そのぶん腹圧が上昇し胃が圧迫されることで胃酸の逆流が起こりやすくなります。便秘は食生活の多様化と野菜繊維不足に陥りやすい現代人の一大特徴。ここにも警鐘を鳴らす必要がありそうです。現在、逆流性食道炎の治療に使われている薬は根本的に治療することができないのが通説です。便秘はさておき、長かった正月休みに延々と飲みすぎた諸氏は、今も胃もたれなどがあったらすぐに消化器科の受診を。
★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン=新連載
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。=新連載
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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【TOPIC】
◆日本統合医療学会東京大会が開催される◆
第17回「日本統合医療学会」がさる12月21日〜22日の両日、日本赤十字看護大学(東京都渋谷区)において「持続可能な社会における医療〜エコ・ヘルケアの実現」をテーマに開催された。相補代替医療の各分科会やシンポジウムのほか、一般オープンの市民公開講座では福聚寺住職、芥川賞作家の玄侑宗久氏が「生への希望と統合医療-福島に必要なもの」と題し講演、また統合医療女性の会が市民公開講座を開講、乳がん治療および中年期女性の健康視点について、山内英子氏および香山リカ氏と対談を行い好評を得た。第18回学会は日本アロマセラピー学会との共同開催で横浜市にて行われる予定。
2014 新連載
カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン
〜 Chiropractic Guideline-Safety 〜
<一般社団法人日本カイロプラクターズ協会>
はじめに
カイロプラクティックは人の健康に関わる業務である。世界を見渡せば、国あるいは州でカイロプラクティックが法制化され、公的あるいは民間医療保険が適用でき、施術者であるカイロプラクターが一部の医学的な診断を行うことが認められているなど、ヘルスケアとして社会的に認められている。わが国でもカイロプラクティックが法律によって規制され、施術者の質が担保されることで国民のヘルスケアに寄与することが望まれるが、いまだ実現には至っていない。
法制化されていないカイロプラクティックがわが国に存在できているには、「施術によって人の健康に害を及ぼす恐れがある業務は処罰の対象になる」という1960年1月に最高裁判所が下した判決に抵触しない範囲において、その業務が黙認されているからである。この判決からわかるように、わが国のカイロプラクティックが存在を維持するためには、「施術によって人の健康に害を及ぼす恐れ」が少ないこと、すなわちカイロプラクティックの安全性の維持・確保が必須条件となる。
しかし現実には、東京都内の保健所、医療機関および利用者生活相談センターに対する代替医療・代替療法の相談・苦情の調査や、国民センターによる「手技による医業類似行為の危害」報告に見られるように、カイロプラクティックにともなう患者の被害報告が少なからずあり、社会的に問題となっている。こうした背景には、カイロプラクティックと称して施術する者の教育背景に大きな隔たりがあることや、施術者間でのカイロプラクティック自体への認識の不一致といった現状があると思われる。
わが国のカイロプラクティックには、さらなる安全性の向上が求められている。その解決策として最も有用なのは、初学者への「教育」であり、カイロプラクティック施術者への「再教育」である。すなわち、カイロプラクティックを臨床実践するためには、質の高い教育機関においてカイロプラクティック教育を修め、十分な手技訓練を行い、手技の適応と禁忌および合併症の判断に関わる基礎・臨床医学教育を受けることが必要である。そしてそれは、わが国のカイロプラクティック教育を世界的な水準まで高めることに他ならない。
カイロプラクティック・ケアを受ける利用者の安全性を確保するため、カイロプラクティックとその施術者の適正化の指針として、ここにカイロプラクティックの安全性に関するガイドラインを提案する。(以下次号へ続く)
★新・連載エッセイ☆
“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
ペンが持てない…その原因は神経学的な「誤作動」だった!
先日、右手でペンを持つことができないとのことで20代の青年が来院された。お父様から電話で依頼され、最初は一般的に多い「書痙」なのだろうと予測していた。しかし、来院されて問診しながら検査をしていると、通常の書痙のタイプとは異なる特殊な症状であることが分かった。
大学病院でもすでに検査を行っており、整形外科では画像診断を受け、神経内科も受診されたとのこと。通常の指の筋力検査では正常に機能するが、いざペンを持とうとすると握るための指や手首の筋力が弱く力がほとんど入らない。ペンで書こうとするとペンが滑り落ちる恐怖もあるとのことで、右手ではほとんど書けない状態。
このような症状が3年前から継続しており、それ以来、左手で書いているとのこと。しかし、最近では左手で書くのにも支障がでてきており、だんだんと悪くなってきているということで、このまま経過するとますます悪化するのではないかという深刻さが伝わってきた。
当院で治療を始めてから5回目には明らかな改善が現われ、8回目、9回目の施術日には異常反応は検出されず本人も自信が持てている様子がうかがえた。受験も控えており、とても大切な時期に差しかかっていたので3年ぶりにまともに書くことができたことは本当によかったと思う。
なぜ、このような症状が改善したのか? それはまず最初に、患者さんとの信頼関係を築けたこと。次に治療法が合っていたからである。当院で施している心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)は、肉体の構造や機能を改善させる療法ではなく、精神療法でもない。心と身体の関係性による「誤作動」を調整する治療法である。まだ世間では知られていないが、第三の医療といっても過言ではないと考えている。
心身医療は以前から医療の分野で研究され続けているが、心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)では、身体に影響を及ぼしているメンタル面を変えることを治療目的とするのではなく、心と身体の関係性によって生じる神経学的な誤作動を調整することを主な治療目的としている。その誤作動を調整することで、結果として肉体面の症状やメンタル面の症状が改善されるといった効果が現われてくる。最近では長年の研究によって施術がシンプル化され、患者さんも受けやすくより効果を感じていただけるようになってきている。
次号から、上記のような心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)が適応すると思われる症例を交えながら“こころ”と“からだ”の連関性について記述し、読者諸兄の臨床に寄与できればと願っている。
《 連載15 》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
耆婆(ぎば)に擬せられた河口慧海(つづき)
チベットは「医用植物の土地」とか「薬材の国」とか呼ばれた国である。薬研(やげん)を用いて、これらの薬材を粉にしてもらうために、慧海は天和堂に1、2泊することもあった。こうして買い求めた薬の効果はかなり大きかったようだ。特にチベットでは死病とされていた水腫病の患者に与えると、10人のうち6、7人が治ったという。それがまた評判になり、セライ・ウムチ(セラの医者、河口慧海の通称)は耆婆(ぎば)のようだという噂が、ラサから200km以上も離れたシガツェにまで広まった。
やがてその評判はダライ・ラマの耳まで達した。ダライ・ラマは別に病気ではなかったが、河口慧海を謁見すると「お前はセラにいて、貧苦の僧侶の病人を救ってくれるそうだが、実にけっこうなことだ。長くセラにとどまって、僧侶や俗人の病気を治してください」とチベット語で話した。慧海は中国人と偽ってはいたものの、中国語はあまりできなかったが、ダライ・ラマの方は中国語に不自由しなかった。もしも中国語で話しかけられたら、「日本人であることを明かし、日本人の勇気を示す」覚悟であったという。幸いなことに会話はチベット語で行われた。ダライ・ラマはまた、中国の仏教や僧侶のことについて質問し、慧海の答に満足して「相当の官」に用いることを約束した。ところが、この名声のために思いがけない事態が起こってしまった。
ラサの銀座通りにあたるパルコルをぶらついていた慧海は、ある雑貨屋の店先で良質の石鹸を見つけた。当時のラサの目抜き通りには、チベットの日用品や食品に混ざって、日本製のマッチも大量に売られていたという。石鹸の値段を聞いた慧海の顔を、店の主人が不思議そうに見て、「あなたは私を知っているでしょう」と語りかけてきた。彼の名前はツァ・ロンバと言った。3年前、慧海はダージリンに滞在し、チベット語を学びながら、インドからラサに至るコースを狙っていた。そのころ慧海は彼と知り合い、奥さんの胃けいれんを治してやったことがあった。ツァ・ロンバ夫妻は「セラ寺の耆婆」の正体を知って驚きながらも、「もし私たちがこのことを他言するならば、死んでもいい。どうか殺してください」と誓いを立てた。
しかし、いつしか真実が露見し、慧海は2か月あまり滞在したラサを去り、ダージリンに向けて強行軍を開始した。これに先立ち、帰国のための荷造りや託送を、危険を承知で快く引き受け、尽力してくれたのは天和堂の主人であった。それから1か月後、河口慧海は無事ダージリンに到着したが、ラサでは彼の関係した大臣らが逮捕され、セラ大学も閉鎖されてしまった。(次号につづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(7)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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ここからAHCPR(アメリカ医療政策研究局)の『成人の急性腰痛診療ガイドライン』が勧告している急性腰痛の治療について、【患者への情報】-【薬物療法】-【保存療法】-【外科手術】に分けてエビデンスレベル(科学的根拠の確証度)を明記して紹介していきます。さて、治療に入ります。世界初の腰痛診療ガイドラインはどんな治療法を推奨しているのでしょう。
【患者への情報】
(1) 速やかに回復する、効果的な改善策、無理のない生活様式、再発の予防法、レッドフラッグがなければ検査は不要、症状が長引く場合の検査法と治療法の有効性と危険性など、患者に正確な情報を与える(確証度B)。……確証度Bの強い勧告なのに賞味期限の過ぎたデタラメな情報ばかりで、患者に正確な情報を与えることすら満足にできないのが日本の現状です。このままだと腰痛患者は増えることがあっても減ることはないでしょう。
(2) 急性腰痛の治療においては、職場での腰痛教室(古典的な腰部の解剖学・姿勢・日常生活に関する教育)は臨床現場で行なう患者教育の助けになる(確証度C)。
(3) 職場以外での腰痛教室の有効性はまだ証明されていない(確証度C)。……この当時の腰痛教室は従来の腰痛概念に基づいたものですから確証度Cという評価なのです。現在では新たな腰痛概念に基づく患者教育が重要とされています。
(4) 急性腰痛にとっては長期間の安静臥床(安静に寝ている)よりも、痛みの許す範囲内で徐々に日常生活に戻る方が効果的である(確証度B)。
(5) 4日以上の安静臥床は筋力低下を招くために急性腰痛の治療として推奨できない(確証度B)。……これは急性腰痛(ぎっきり腰)にとって一番重要な点です。結果的な安静は仕方ないとしても、治療としての安静臥床は間違いなく回復を遅らせます。「腰痛には安静が第一」という時代遅れの迷信をネット上から排除しなければなりません。
(6) 急性腰痛に安静臥床(安静に寝ている)の必要はない。ただし、主に下肢痛を訴える患者で初期症状が強い場合は、2〜4日間の安静臥床を選択肢として選ぶことができる(確証度B)。……繰り返します。急性腰痛(ぎっくり腰)に安静臥床は禁忌です。安静臥床が腰痛に効果があるという研究はこの地球上にひとつもありません。
(次号につづく)
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (33)
根本 良一(療動研究所主宰)
7.鼠 径 部 〜股関節前部の屈曲線中央部
鼠径部という部分は“小心者”のネズミが広場を堂々と歩かず、物陰に沿ってコソコソと歩く、そのような“ネズミ道”に見立てたらしい。この部に位置する鼠径靭帯に、肋間神経下部の外腹斜筋膜が付着するという状況で、股関節痛、腰痛に関する事項について述べる。
◆1-鼠径部の操体法
①外腹斜筋下部からの影響を解消してから行なうと効率が良い。
②椅子に掛けて、緊張側の踵を上げ、膝頭を逆足の脛中央に届くくらいに内側へ倒すよう声をかける。「この足は踵を上げて、膝を向こうのスネのここ(中央部を示す)へ付くくらいに倒します」と誘導する。
③片手で鼠径部の圧痛点を探り、痛みが消えたら「そのままで約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力します。そのままゆっくり3呼級おいて……戻ります」
◆2-鼠径部の自療操体法
椅子に掛けて行う。
①片手の前腕を同側の膝に載せて、その手は逆足(操作足)の膝へかける。
②他方の手は、大腿上部、腸骨下線(鼠径部)を触診する。
③足首のアキレス腱端へかける(あとで踵を上げるとき足首を底屈するので、ここを押さえると足の攣れ防止になる)。
④他方の足、つまり操作する足は、腓腹部を上げ、膝を逆足の脛に付けるくらいまで寄せる。
⑤片手で①の足首へ軽く抵抗をかける。
⑥そのままで約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力する。そのままゆっくり2呼級おいて戻る。
◆コラム◆ 〜肋間神経経由の筋群との出会い〜
人類の長い直立生活で形成された“抗重力筋”を独特に発達させて、より正しい姿勢を生活に取り込んでいる私どもは、
1)大腰筋に関わる脊柱起立筋、背部からの肋間神経の影響を腹部の外腹斜筋、腹直筋が大切な筋群である。
2)大腰筋については前に述べたが、胸郭、腹部を取り巻く強大な筋をよい状態に保つにはどうしたらよいか?
3)これら腹部の筋は、姿勢の悪い人、腰痛、肩こりのある人のほとんどが硬くなっている。
肋間神経系の神経支配を受ける筋であることから、局所を揉んでも、押しても、ストレッチしても解決できない。それならどうしたらよいか、という課題が提起された。
ここで問題にされる外腹斜筋各部、腹直筋を支配する神経は、背部で脊髄神経から分岐し、肋骨に沿って走行し、腹部の筋へ入る。腹筋が緊張するのは、背部の緊張が肋間神経を刺激し、肋間神経の支配を受ける胸部、腹部の筋が硬くなるからではないだろうか。これは推測の域を出ない。どうしたらいいか。
脊髄神経から肋間神経の分岐点に肋椎関節があり、この関節運動軸を“うまく”動かしたらどうだろう?
(次号につづく)
*** N *** E *** W *** S ***
NEWS ■<初診料> 120円上げへ 再診料は30円増 厚労省検討
厚生労働省は1月7日、医療機関に支払われる診療報酬の改定で、初めて治療を受ける際にかかる初診料(現行2700円)を4月から120円引き上げ、2820円とする方向で調整に入った。2度目以降の再診料(同690円)は30円増の720円とすることを検討している。いずれも消費増税に伴う医療機関のコスト増を補填するものだ。8日の厚労相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)の分科会で議論する。
初・再診料は幅広い患者が負担する医療費で、影響が大きい。厚労省案が実現した場合、自己負担割合が3割の人で、初診料は36円、再診料は9円、それぞれ支払いが増える。ただ、日本医師会など「診療側」には初・再診料への一層の上乗せを求める声がある一方、保険料を負担する健康保険組合など「支払い側」は再診料の30円増に難色を示しており、金額が増減する可能性は残っている。
14年度の診療報酬改定は総額で差し引き0.1%増とすることで決着した。保険診療は非課税で、医療機関は薬や医療機器の仕入れにかかった消費税を患者に転嫁できないため、財務、厚労両省は消費税対応分として診療報酬を1.36%増額し、初・再診料などを上積みすることで合意していた。(毎日新聞 1/8)
NEWS ■介護福祉士国試、「実技」廃止へ-–総問題数の増加も
厚生労働省は、介護福祉士国家試験の実技試験について、2017年度から廃止する方針を固めた。介護福祉士の資格などに関する制度改正に伴う変更で、15年度以降の国試では、医療的ケアに関する問題を追加し、総問題数を増やすことも決めた。(医療介護CBニュース 1/7)
NEWS ■スマホ中毒が首の痛み引き起こす –「ストレートネック」急増
スマートフォン(スマホ)の普及で手軽にインターネットに接続できるようになり、気づけば画面を見ているという人はいるだろう。だが、長時間の使用が体の部位に影響を及ぼす可能性が指摘されている。代表的なのが首の疾患「ストレートネック」と呼ばれる症状になり、首や頭の痛み、ひどい肩こりを引き起こす原因になるという。
これまではパソコンが、首や肩に負担をかける「犯人」と言われてきた。実際にデスクワークで長時間、パソコンの前に座ったままというのはストレートネックにつながる姿勢だ。スマホの登場で、通勤電車や食事中といったこれまでパソコンから離れていた時間さえも前かがみになって画面をのぞきこむ習慣が増えてしまった。
医療専門紙の記者に聞くと、ストレートネックや、それが引き金となって起きる頸椎ヘルニアは、加齢と生活習慣が影響するケースが多いという。スマホが世に登場して数年しかたっておらず、その使用がストレートネックの直接の原因だとする学術的な証明は今のところないそうだが、毎日何時間もスマホの画面を見ていること自体が生活習慣のひとつとなっている現状では、スマホも新たな要因として加わったと言えそうだ。(J-CASTニュース 12/30 一部)
NEWS ■男性ホルモン多いと免疫弱い? インフル予防接種で
代表的な男性ホルモン「テストステロン」の血中濃度が高い男性は、インフルエンザの予防接種ワクチンに対する免疫反応が弱い可能性があると、米スタンフォード大の研究チームが12月29日までに米科学アカデミー紀要電子版に発表した。テストステロンは骨格や筋肉を発達させ、ひげや体毛を濃くするほか、攻撃的な気持ちにさせるなどの作用がある。
一般に若い男性は女性に比べ、細菌やウイルスに感染しやすい。研究チームによると、人類の進化過程では男性の方が狩猟や争いなどで負傷しやすく、病原体に過剰な免疫反応を起こすとかえって危険なため、弱めに調節されている可能性があるという。
研究チームはA型のH1N1亜型とH3N2亜型、B型のインフルエンザ予防接種を受けた20〜80代の男性34人、女性53人を調査。抗体を作るなどの免疫反応を調べたところ、H3N2亜型とB型は男性の方が弱かった。テストステロンの濃度が高い男性ほど免疫反応が弱く、この抑制作用には脂質の代謝を担う遺伝子群が関与していることが分かった。(時事通信 12/29)
NEWS ■ケアマネ試験の合格者数、過去最少
厚生労働省は、2013年10月13日に実施された第16回介護支援専門員実務研修受講試験の結果を発表した。14万4397人の受験者に対し、合格者は2万2322人で、これまでの試験で最も少なかった。また合格率は15.5%で、2011年度(15.3%)に次いで低かった。第1回試験からの累計の合格者数は59万6031人となった。
合格者の職種別では、介護福祉士が1万5645人で最多となり、全合格者の70.1%を占めた。次いで多かったのは相談援助業務従事者・介護等業務従事者(2606人)。以下は社会福祉士(2161人)、看護師、准看護師(1620人)、理学療法士(673人)、作業療法士(424人)、栄養士(管理栄養士を含む)(338人)、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師(316人)、精神保健福祉士(300人)、保健師(272人)などの順となった。(医療介護CBニュース 12/27)
NEWS ■関節リウマチ、新薬開発加速=関与遺伝子を多数発見
日本や欧米の関節リウマチ患者約3万人と健康な約7万人について遺伝子の個人差を調べたところ、発症に関与する遺伝子を含むDNA領域が新たに42カ所見つかった。理化学研究所や東京大、京都大、米ハーバード大などの国際研究チームが、大規模な解析成果を12月25日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
関節リウマチに関与する遺伝子領域はこれまで知られた領域と合わせ、計101領域が特定された。理研の岡田随象客員研究員は「最近は症状の進行を止めるだけでなく、改善する治療薬も出ているが、完治はできない。より効果的で副作用が少ない新薬候補を見つけられるようになる」と話している。
解析の結果、現在は乳がんなどの治療に使われている薬が関節リウマチにも効く可能性が判明した。この薬はがん細胞の分裂増殖を妨げる作用があるが、関節リウマチでは滑膜の細胞が異常増殖して骨や軟骨を壊しており、この増殖を妨げる効果も期待できるという。(時事通信 12/26)
NEWS ■放射線治療で100人に誤照射 東海大病院で07年以降
東海大病院(神奈川県伊勢原市)は12月25日、子宮頸がんなどの放射線治療で、患者約100人にがん以外の場所に誤って照射したと発表した。放射性物質を体内に入れて行う「小線源治療」で、放射性物質を入れる位置が約3センチずれていたという。外部委員も含めた調査委員会で原因を調べているが、位置の確認作業が不十分だった可能性を指摘する声もある。
誤照射があったのは07年5月から昨年11月までに子宮頸がんや子宮体がんの治療を受けた30〜89歳の女性。同病院は全患者に連絡し、個別に説明するとしている。
治療では、細い管を子宮内などに入れ、ワイヤで直径2ミリ未満の放射性物質を管の先端に移動させる。11月に治療機器の不具合があり点検したところ、放射性物質の位置のずれが判明した。膀胱などがん以外の場所に約12〜30シーベルト照射したり、がんへの照射が約1割減少したりした可能性があるという。(朝日新聞 12/25)
NEWS■長時間のゲーム、携帯→勉強効果打ち消し
東北大加齢医学研究所の川島隆太教授(脳科学)らのグループは12月18日、「ゲームやパソコン、携帯電話を使用する時間が長い生徒は、長時間勉強しても成績が悪化する」との調査結果を発表した。調査は中学生が対象。川島教授は「学習した効果がゲームなどで打ち消されている可能性を示す、衝撃的なデータ」と説明した。
数学では「30分未満しか勉強しないがゲームも全くしない」生徒の平均点が60点なのに対し、「2時間以上勉強するが、ゲームを3時間以上する」生徒の平均点は59点。勉強量に関係なく、ゲームなどの長時間使用が成績に悪影響を与えているという。1日1時間未満の使用では成績に悪影響がみられなかった。(産経新聞 12/19)
NEWS ■鈴鹿医科大、「世界初」の薬膳学会設立
三重県鈴鹿市の鈴鹿医療科学大学(豊田長康学長)は、東洋の伝統医学と西洋医学を融合させた薬膳に関する学術研究を推進するため、一般社団法人日本薬膳学会を設立したと発表した。設立は2013年11月28日付。同大では、中国の天津中医薬大と連携し、来年春から新たなカリキュラムを開始。修了者に認定試験を実施し、合格者を学会が「医療薬膳師」として認定する。鈴鹿医療科学大によると、薬膳に関する正式な学会は「世界初」という。
新カリキュラムは、同学部の医療栄養学科と鍼灸学科の学生が対象で、2014年4月からスタートする。同学会の支援を受け、管理栄養士や鍼灸師を目指す受講者に、東洋医学や栄養学など、それぞれの専門外の知識を習得してもらうことが目的だ。同大では「薬膳に関する学術研究を進めるため、まずは人材の育成から始めたい」としている。(医療介護CBニュース 12/16)
NEWS ■ひとり親家庭の子供は喘息になりやすい
母子家庭・父子家庭(以下、ひとり親家庭)の子供は両親のいる子供と比べて、喘息による救急外来や病院の再受診が多いことが、シンシナティ小児病院医療センターのTerri Moncrief氏らによって報告された。さらに、この主な要因として世帯所得の違いが根本にあることにも言及している。
本研究の目的は、ひとり親家庭の子供と小児喘息による健康管理施設の再受診状況との関係を明らかにし、この関係を説明する家族レベルでの心理社会的変数を検討することである。喘息または気管支拡張薬に反応を示す喘鳴により、健康管理施設を利用した1〜16歳の526例の子供と、その子供の介護者の結婚状況を前向きコホートにより分析した。本分析によると、ひとり親であることは1つのリスクカテゴリーとなることがわかった。
本研究のアウトカムは小児喘息による施設の再受診とした(救急外来または病院の再入院)。評価は4つの心理社会的変数(世帯所得、介護者が有する心理的苦痛のリスク、親に対する子供の比率、保育園の登園率やセカンドハウスの利用状況)で行った。
主な結果は以下のとおり。
・コホートに登録された子どもの40%が12ヵ月以内に喘息で救急外来や病院を再受診した。
・全介護者のうち59%はひとり親であった。
・ひとり親であることと、それぞれの心理社会的変数との間には有意な関連が認められた。
・低所得世帯や子供比率が高い世帯の子供は、高所得世帯や子供比率が低い世帯の子供と比べて、喘息による救急外来や病院の再受診が多かった(それぞれ、p<0.005)。
・ひとり親の子供は両親のいる子供と比べて、喘息による救急外来や病院の再受診が多かったが(オッズ比:1.44、95%信頼区間[CI]:1.00〜2.07、p<0.05)、所得により調整を行うと有意差は認められなかった。(The Journal of asthma誌オンライン版2013年12月10日)
NEWS ■少し歩くだけでもうつ病は予防できる
うつ病は有病率が高くQOLに影響を与えることから、うつ病の予防因子を特定するため多くの研究が求められている。カナダ・トロント大学のGeorge Mammen氏らは、運動がうつ病の発症を予防するかを前向き研究のメタアナリシスにより検討した。
身体活動とうつ病との関係を検討した縦断的研究を2012年12月までに各データベース(MEDLINE、Embase、PubMed、PsycINFO、SPORTDiscus,、Cochrane Database of Systematic Reviews)より検索を行った。抽出されたデータは、2012年7月から2013年2月の期間で分析された。研究の質は2名の独立したレビュアーが評価した。
主な結果は以下のとおり。
・検索結果より得られた6,363件のうち30件の研究が分析対象となった。
・このうち25件の研究で、ベースラインの身体活動とその後のうつ病リスクとの間に負の相関があることが示されていた。
・大半の研究は方法論的な質が高く、身体活動が将来のうつ病発症を予防することを示す結果であった。
・身体活動はどのようなレベルであれ(たとえ1週間当たり150分未満のウォーキングなど低いレベルであっても)、うつ病の予防に有効であると考えられる。
(American journal of preventive medicine誌2013年11月号)
■次号のメールマガジンは2月1日ごろです。お楽しみに。
[発行]産学社エンタプライズ