エンタプライズ発信〜メールマガジン【№32】2013. 12
最新の調査によると、通勤に1時間かかる人は(通勤15分程度の人に比べ)日々のストレスが増し、通勤に時間を取られ運動する時間もない、また肥満や不眠症の人が多く、離婚率も高いとのこと。平たく言えば、通勤時間が長い人ほど幸福感を感じられず、疲労も溜まりやすく健康状態は良くないということか。特に、片道90分以上かかる人は、単に通勤が苦痛なだけでなく、長くなればなるほど睡眠時間やプライベートな時間が奪われることの一因になっているというから都会のサラリーマンにとっては悲痛な問題です。とはいえ、仕事や住む場所を変えることなく通勤時間を短縮するのは容易ではありません。在宅ワーカーにでもならない限り解決しがたい問題でもあります。仕事にストレスを感じていたり、疲労が抜けないと感じている人は通勤時間が適切なのかどうかを見直してみることをこの機会におすすめしたいところですが、時期は師走。忘年会や会食など多事多端なときにそんな思いに馳せる余裕はなさそうですね。
★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★
【1】伝統医学をシルクロードに求めて
【2】カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【3】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【4】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【5】N・E・W・S
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【TOPICS】
◆12月21日、日本統合医療学会2013東京大会開催◆(最終案内)
今年で17回目を迎える日本統合医療学会。今年は「持続可能な社会における医療〜エコ・ヘルケアの実現」をテーマに新たな健康指標を創造する。期日は12月21日(土)〜22日(日)、日本赤十字看護大学(東京都渋谷区広尾)において開催される。前日(20日)には市民公開講座を催す(演者:玄侑宗久氏=福聚寺住職、芥川賞作家=演題:生への希望と統合医療-福島に必要なもの[予定])。詳細は http://www.imj2013.com/outline.html
【TOPICS】
◆日本統合医療学会2013東京大会で「統合医療女性の会」が市民公開講座◆
ことし日本統合医療学会に発足した統合医療女性の会が催す市民公開講座。学会開催の一環として下記の講演と対談が行われる。入場無料。
開催日:2013年12月20日(金)
場 所:日本赤十字看護大学 広尾ホール(東京都渋谷区広尾)
参加費は無料、事前受付は不要。
・講演「乳がん治療のリアル」 16:00〜16:40
司会:渥美英子(統合医療女性の会 代表)
演者:山内英子(聖路加国際病院 乳腺外科 ブレストセンター 部長・ブレストセンター長)
・対談「中年期女性のクライシス」 16:50〜17:40
司会:小山 悠子(医療法人社団明悠会 サンデンタルクリニック理事長)
演者:香山 リカ(立教大学 現代心理学部 教授、精神科医、作家)
演者:板村 論子(医療法人帯津三敬会 帯津三敬塾クリニック 院長)
【TOPICS】
◆TMSジャパン会員限定スペシャルセミナーを開催◆
腰痛治療の概念を変えるムーブメントを展開するTMSジャパン長谷川淳史氏の定例セミナーのアグレッシブ版。定員36名:全3回の1回目の受付を開始。(2月14日締切り)
【対 象】TMSジャパン会員
【日 時】2014年2月16日(日) 13:00〜17:00
【会 場】東京都西新宿1-9-18 永和ビルB1会議室C(新宿駅西口より徒歩1分)
【受講料】8千円
http://www.tms-japan.org/seminar.html
【TOPICS】
◆PCRT研究会中級ver.2セミナーが開かれる◆
11月10日‐11日にわたって、PCRT(心身条件反射療法)研究会中級ver.2セミナーが、東京・日赤本社会議室で開催された。初日の講座後はワークショップが開かれ(希望者)、神経反射検査法のほか臨床的なアプローチの仕方を症例別治療のデモを踏まえながら指導が行われた。講座の実技・実習面ではハード面からソフト面への施術移行の機微や感情チャートの切り替えのノウハウ、感情チャートと五感パターンの応用などについての取り組みがなされ、臨床応用への実の伴う内容で進行した。12月8日‐9日には上級講座が開かれる。
《 連載14 》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
耆婆(ぎば)に擬せられた河口慧海(つづき)
当時、チベットは鎖国状態にあった。かつてはフランシス派やジェスイット派のヨーロッパ人宣教師がラサで布教を行い、インドからの交易使節も自由に出入国させていたチベットが、外国人を警戒するようになったのは19世紀後半になってからである。折りしも帝国主義的な中央アジア探検が盛んになっていた。なかでもイギリスはインド人に地理測量の訓練を施したあと、変装させチベットに潜入させていた。これに対しチベット側では、公道はいうまでもなく細々とした間道にまで武装兵士を配備し、潜入者の警戒にあたったという。
多くの著名な探検家たちが「神秘の都ラサ」に接近しようとしたが、いずれも失敗に終わっていた。ロシアのプルジェワルスキー、イギリスのウィリアム・ギル、アメリカのロック・ヒルなどは、チベット入りはしたものの、ラサに近づくことができなかった。さすがのヘディンでさえ二度も失敗している。
中国人僧侶になりすました河口慧海(えかい)は、「漢訳の経典に疑問を感じ、その是非を確かめ」ようと、ラサ三大寺のひとつセラ大学の入学試験を受けた。それには筆記、口頭、経典暗唱の3科目があったが、「問題も案外やさしかったので私は幸い合格した」という。大学には14-15歳の子どもから40‐50歳にもなる学問僧がおり、河口慧海は34歳であった。こうして本格的な勉強が開始された。
ある日のこと、若い2人の僧侶が喧嘩をしているうちに、片方が二の腕をはずした。これを治してやったことから、非常に立派な医者であるという噂が広まってしまった。当時のチベット人は「接骨法を知らなかった」と慧海は述べている。また彼が、貧しい人からは礼金を取らなかったことも、その評判に拍車をかけたにちがいない。「チベットでは病気になると神下(かみおろし)の所へ行く人が多いが、私の評判が高くなると、その神下たちが患者を私のところに回してくるようになり、ついには多くの高官や高僧が訪れるようになった」という。
頼まれるままに病人を治すためには、どうしても薬が必要になる。この薬を買うために慧海は天和堂という薬屋に通った。主人の李之楫(りししゅう)は雲南省の出身の中国人であった。ここで慧海はチベット医学の特徴について鋭い観察をしている。「チベットでは薬はみな粉にして用いる。シナ人のように切って煎じて飲むことはしない。魚や鑛石類も薬用にする」というものである。(次号につづく)
<<連載 第32話=最終回>>
カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
患者と治療家との本質的関係(つづき)
しかしながら、カイロプラクティック大学のクリニック時代を振り返ってみても、患者の症状が改善するまで徹底的に原因を追求するなどの検査や治療は行っていなかったし、そのようなクリニックドクターに遭遇はしなかったので、それが普通なのかもしれない。だがわれわれの業務は、目の前にいる患者の苦痛をできるだけ軽減し、健康へと導くお手伝いをさせていただいているのであり、その一人ひとりの患者が苦痛から解放されるときの喜びや感動がなければ、なんのためのカイロプラクター、あるいは治療家なのかわからなくなるのではなかろうか。カイロプラクターはこうあるべき、このように考えるべき…という何々“べき”論が先行して、本来考えなければならない患者のニーズは二の次になっていないだろうか?
始まっている生命論的思考への展開
カイロプラクティックの歴史を振り返ると、生命論から機械論へ、そして今また生命論的思考へとパラダイムシフトしているように感じる。いや、情報化社会における、本物が問われる今日において、機械論的思考では通用しきれない時代が到来したのだといったほうがよいかもしれない。
従来の科学は、還元主義的手法を基礎として構築されている。世界を単純な断片に切り刻むことを基本的な手法として用いてきた。これに対し、いま注目されているのは、統合論、全体論、非線形、非平衡論、開放系、自己組織化などの概念を背景にした複雑系の科学へと遷移してきている。この複雑系の科学は、われわれが目指す統合、融和、調和の生命論的思考のエネルギー治療の概念に密接に関わりをもつ学問なので、もう少し踏み込んで記述したかったが、本連載の終了ということで次の機会に譲ることにしたい。
最後に、有機論的な医療価値の創造・発展を切望する筆者が共感共鳴した意味深い箴言である、未来学者のアルビン・トフラーの言葉を紹介して稿を閉じたい。これはノーベル化学賞を受賞したイリヤ・プリコジンの著書『混沌からの秩序』のまえがきで述べられている。
「宇宙のある部分は機械のように働くであろうが、それは閉じた系であり、閉じた系は物理世界のほんの小さな部分を占めるに過ぎない、と著者(イリヤ・プリコジンを指す)は考えている。事実、われわれにとって興味ある現象の大部分は開いた系である。そこでは環境との間で、エネルギーや物質(さらに情報も加えてよいだろう)の交換が行われている。生物学的な系や社会学的な系は、たしかに開いている。したがってこれらの系を機械論的に理解しようという努力は失敗する運命にある」
《機械論的思考》 《生命論的思考》
還元論 統合論
部分論 全体論
閉鎖系 開放系
線形 非線形
平衡 非平衡
静的 動的
解剖病理学 神経生理学
位置移動 神経反射作用
(了)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(6)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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【画像検査】(つづき)
(15)腰部椎間板ヘルニアによる神経根障害が疑われる患者に対するCTディスコグラフィーは、合併症のリスクが増大するために他の画像検査(CT・MRI)以上には推奨できない(確証度C)。……要するに椎間板造影はやめろという勧告です。なのに日本ではまだ行なっている医療機関があるようです。
(16)鍼筋電図(EMG)とH反射は腰痛の有無に関わらず下肢症状が1ヶ月以上続く患者の神経機能障害の査定に有益と考えられる(確証度C)。
……鍼筋電図とH反射は下肢症状が神経根に由来するものなのか、あるいはニューロパシーの存在を確かめるには役立ちますが、発症後1ヶ月以内に行なうと誤診率が高くなります。電気生理学的検査というのはEMGやSEPs(脊髄誘発電位)を指します。
(17)理学検査で神経根症状の存在が明白なら電気生理学的検査は推奨しない(確証度C)。
(18)急性腰痛患者の評価に体表EMG(筋電図)とF波テストは推奨できない(確証度C)。
……推奨しないのというのでどうでもいいのですが、F波テストとは伝導速度検査法のことです。
(19)SEPs(脊髄誘発電位)は脊柱管狭窄症と脊髄ミエロパシーが疑われる場合の評価に有用と考えられる(確証度C)。……推奨しないのというのでどうでもいいのですが、F波テストとは伝導速度検査法のことです。
(20)心理的・社会的・経済的因子は腰痛発症と治療成績に大きな影響を与える(確証度D)。
(21)レッドフラッグがないのに日常生活が困難な場合、検査や治療を追加する前に非現実的な期待や心理社会的因子を検討する(確証度D)。……確証度Dですから、まだ手探り状態だったんでしょう。しかし1994年にはすでに腰痛疾患とイエローフラッグ(心理社会的因子)との関連に気づいていたわけです。
(次号につづく)
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (32)
根本 良一(療動研究所主宰)
◆2-広背筋の操作法(脇下の後ろ側)
広背筋は背部下方から起こり、抱きかかえるように上腕骨に延びる筋で、腕が上がりにくい、肩が痛い、肩こりなどのときにこの筋の緊張に注目する。
脇下の周辺は広背筋を主とするが、深部の大円筋、小円筋、棘下筋も関連して考えたい。それで次のように背部の動きから連動させるとうまく処置できる。
a)仰臥位で行う広背筋の操作法
・誘導語
1)「ここへ仰向けで寝てください。両膝を立てます」
2)両脛と向き合う位置から、両脛へ、上になる方を主に手をかけて抵抗をかける。
3)「両腕を組んでください。膝をこちら(広背筋の緊張していない方)へ倒してください)
4)「両腕は前へ出し、両肩が浮くようにして、こちら、広背筋の緊張していない方へ向けます」……肩がつくと補助動作としての肩のまわしがしにくい。
5)「力まずにそのままで約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力します。すぐに戻らず、3呼吸おいて戻ります。この静かな時間が昂進している交感神経の静まるときです。大切な時間です」
b)自療操体法
・姿 勢
基本的には前項と同じく緊張側の膝を倒し、両足首間に小さな枕などをはさみ、外踵の上と膝へ、後ろからまわした別の足で誘導をかける。
・実 施
1)仰向けに寝て両膝を立て、両足首に小さな枕などをはさむ。広背筋に緊張のない方の、下になる足を後ろからまわし、足首から踵へ足甲をからみつけるようにかける。
2)広背筋の緊張のない方へ両膝を倒す。このとき後ろからまわした足は、足甲を上の足の踵上部へ巻きつけるようにかけ、膝を伸ばして足首と上の膝へ軽くかける。上の踵が上がり(底屈動作を誘導)、膝が前下方へ出る。
3)このとき膝の向く方の両肩は、逆方へ少しまわす。これは補助動作になる。
4)十分動いたら、そのままで約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力する。
5)そのまま2呼吸くらいおいて、脇下の広背筋を触診、確認しながら2‐3回行う。
※この操作では、両足首(脛)間に小さな枕などがないと脚が攣れることがあるので留意を。
(次号につづく)
*** N *** E *** W *** S ***
NEWS ■「夫婦別寝」約4割。いびき、好みの室温違う
眠るときは別々の部屋という「夫婦別寝」が約4割に上ることが、住宅情報会社のアンケート調査でわかった。年代が上がるにつれて、その割合も上がっている。アンケートは、リクルート住まいカンパニー(東京)が今年8月、全国の30〜69歳の専業主婦を対象に、インターネットで行った。有効回答数は412人。
全体では、「同室で寝ている」が60%に対し、「別室」は38%だった。「別室」と答えた人を年代別に見ると、30代は27%、40代は39%に増加。50代は35%とやや減るものの、60代では50%に達した。
別室で就寝する理由について、「お互いのいびきがうるさい」(45歳)、「好みの室温設定に差があり、夏は寒くて一緒に眠れない」(41歳)などが挙がった。一方、同室の理由として、「結婚当初からの習慣」(66歳)、「別々に寝るのは寂しい。子どもを2人で見守りたい」(33歳)などの回答があった。
夫婦問題研究家の岡野あつこさんは「夫婦であっても個を大事にする考え方が広がり、いびきやクーラーの冷気を我慢するより、自分の睡眠を大切にする人が増えたのでは」と分析する。その上で、「別の部屋で寝ることは『夫婦の危機』ではない。新婚の頃は離れると不安かもしれないが、長い時間を一緒に過ごした2人なら、ある程度の距離感があったほうがうまくいくケースもある」と指摘している。(読売新聞
12/7)
NEWS ■35歳女性で「妊活」の予定がある人は52.8%
ドコモ・ヘルスケアはこのほど、35歳の女性を対象に「妊活にフォーカスした生活・健康実態」についての意識調査結果を公表した。調査は全国の35歳女性(既婚、未婚)300名を対象に、2013年10月にインターネットで実施した。
35歳の女性300名に今後 “妊活”をしようと考えているかどうかを聞いたところ、52.8%が「妊活の予定あり」と答えた。既婚者では「妊活の予定あり」が61.3%、未婚者では「妊活の予定あり」は43.9%となっている。
妊活意向のある人に、「2020年東京での五輪開催決定を受け、このオリンピックは自分の子供と一緒に観戦したいと思った」かどうかを尋ねると、「そう思う」は64.4%、「そう思わない」は35.6%という結果が出た。
また「妊活について、どのように考えますか」と尋ねると、「しっかり自己管理できていると気持ちよく生活できる」(89.7%)、「妊活するなら楽しんでやるべきだ」(86.5%)、「妊活をするなら体調管理も含めて計画的に進めるべきだ」(84.6%)の3項目で、「そう思う」と「ややそう思う」の合計が高かった。
妊娠・出産意向のある女性に「やらなければと思っているが、取り組めていないこと」を聞くと、「基礎体温を測る」(37.0%)、「定期的な婦人科検診を行う」(34.7%)、「規則正しい生活をするようにする」(31.0%)の順で高い結果が出た。
「現在行っている対策」を尋ねると、1位は「体を冷やさないようにする」(47.2%)で、後には「規則正しい生活をするようにする」(41.7%)、「定期的な婦人科検診を行う」(36.1%)が続いている。(マイナビミュース 12/6)
NEWS ■バナナで花粉症改善の可能性。くしゃみの症状緩和
筑波大の谷中昭典教授らの研究グループは11月29日、バナナを食べるとスギ花粉による一部のアレルギー症状の抑制につながることが、ヒトでの臨床試験でわかったと発表した。花粉症そのものを改善させるという結論には至らなかったが、くしゃみの症状は緩和されるという。
花粉症の治療は、一時的に症状を緩和させる医薬品が主流だが、眠気や口の渇きなどの副作用も指摘されている。一方で、食品による症状の予防を目指す研究については、効果などに不明な点が多く、予防法の確立までには至っていない。
研究グループは、ポリフェノールなどの抗酸化物質や、免疫調整作用を持つオイゲノールなどの香料が含まれるバナナに着目。マウスを使った実験で、アレルギー反応を抑制できることがわかった。このため、ヒトにも効果があるとみて、今年2〜3月に試験を実施した。
20歳以上で自覚症状の軽い患者26人にバナナを1日200グラム(2本)、8週間摂取させる試験では、食べなかった患者26人と比べて、くしゃみの症状が緩和されることがわかった。また、年齢や花粉症の重症度などで分類した試験では、35歳以下の患者にアレルギー症状の悪化を抑え、思考力の低下や憂鬱感などを防ぐ結果が得られた。
谷中教授は「バナナに含まれる豊富なビタミンB6が脳内のセロトニン合成を促進させ、自覚症状の感受性を弱めたのでは」と仮説を立てている。
今後はアレルギー症状抑制メカニズムの解明とともに、より効果的な摂取方法などについて検討していく予定。(産経新聞 11/29)
NEWS ■「眼」は心臓障害の窓
眼または腎臓の血管の損傷から、心房細動のリスクが高い人を特定できる可能性が、新たな研究で示唆された。心房細動は高齢者によくみられる障害で、脳卒中リスクを増大させるほか、一部の患者では心臓関連の胸痛や心不全の引き金になることもあるという。
米ダラスで開催された米国心臓協会(AHA)年次学術集会で発表された今回の研究は、米ジョンズ・ホプキンス大学(ボルティモア)の研究グループが、1万人強の中年期の集団を平均14年近く追跡したもので、微小血管変性(眼または腎臓の小血管の障害)と心房細動の有無に関連がみられることがわかった。
例えば、微小血管障害のない人では1,000人につき約6人が心房細動を発症するのに対し、網膜の小血管に微小出血または毛細血管瘤のある人では1,000人につき9人が心房細動を発症する。腎臓の血管損傷の徴候がみられる人では1,000人につき約17人となり、眼と腎臓のいずれにも血管損傷がある場合は、1,000人につき24人まで増えた。このような血管損傷と心房細動リスクの高さに関連がみられる理由は解明されていないと、研究グループは述べている。
米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク)のNeil Sanghvi氏は、「微小血管障害の増悪が心房細動の潜在的な引き金の1つである可能性が示唆される。微小血管障害を抑制または予防する治療によって心房細動の発症率を低減できる可能性がある」と述べている。米ブルックリン病院センター(ニューヨーク)のKenneth Ong氏は、「眼や腎臓の血管の損傷は、心臓をはじめとする他の身体部位における同様の所見を反映するものと考えられる」と指摘する。(ヘルスデイジャパン 11/28)
NEWS ■医師や看護師が結核。患者と接触事例が多数
結核を発病した医師や看護師らが長期間にわたって患者と接触していたケースが全国で相次いでいる。感染しただけでは他人にうつらず、感染者全員が発病するわけではないが、発病の危険性が高いとされる感染者のうち約4割が医療職というデータも。免疫力が低下した患者への二次感染の危険性もあるだけに、専門家は「長引く呼吸器症状がある場合は結核の可能性を考え、早めに専門機関で受診を」と呼びかけている。
10月22日、滋賀医大病院で新生児の治療室に勤務する30代看護師が結核を発病していたことが分かった。発病から数カ月経過していた可能性もあり、同病院は看護師と接触した820人の検査を実施した。
結核は現在も年間2万人以上が発病し、うち約1割にあたる2千人が死亡。集団感染も年に40〜60件程度確認されている。結核研究所疫学情報センター(東京都)によると、平成24年に全国の保健所で新規登録された発病の可能性が高い感染者8771人のうち医療職は38.7%を占める。
滋賀医大病院の看護師の場合、咳などの症状が出始めた6月と9月にエックス線検査を受けたが異常は見つからず、最終的に結核と診断されたのは10月に入ってCT検査を受けてからだった。
このケースでは幸い二次感染は確認されなかったが、結核に対する免疫のない若い世代が増えていることから、大角医師は集団感染が発生しやすい状況にあると警鐘を鳴らす。「結核のことが念頭にあれば、ある程度感染拡大は防げるはず。咳などが長引いたら、早めに専門機関で受診してほしい」と話している。(毎日新聞 11/25)
NEWS ■テレビ長時間視聴は脳に悪影響。東北大
東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授(脳科学)らの研究グループは20日、子どもが長時間テレビを見て生活すると、脳の発達や言語能力に悪影響を及ぼすとの研究結果を発表した。200人超の追跡調査で脳への影響を明らかにし、論文が英国の神経科学雑誌に採択された。
調査は2008年7月〜09年4月、宮城県の5〜18歳を対象にテレビの視聴時間や家庭環境を調べ、脳画像の解析や知能テストを実施。3年後、そのうちの216人を追跡調査した。
視聴時間を「見ない」から「4時間以上」まで7段階に分けて分析した結果、テレビを長時間見た子どもの方が脳の成長が遅い傾向が出た。脳は神経細胞の接続を3歳ごろから減らすことで成長するが、その減少傾向が鈍かった。言語能力の発達に負の影響が出た一方、動作能力への支障は見られなかった。
これまでも論文などで、テレビの長時間視聴が読書力や注意力に影響すると指摘されており、04年には日本小児科学会が乳幼児のテレビ視聴について注意を呼び掛ける報告をまとめている。川島教授は「長時間の視聴には、より一層注意が必要。子育て中の世代に、生活習慣を考え直すきっかけにしてほしい」と話している。(共同通信社 11/21)
NEWS ■「音楽パズル」で認知症に備え、楽しみながら脳活性化
唱歌や童謡のメロディーを分割して記録した音の出るブロックを並べ替え、曲を完成させるまでの回数や時間でお年寄りらの認知機能を探る。そんな「音楽パズル」を東京の作曲家、佐野芳彦さんらが開発した。認知症の早期発見に欠かせない、継続的な観察への活用が期待される。
基礎になるのは、佐野さんが考案した組み合わせ自在な音楽の単位「サウンドセル」。2007年、医療分野での活用をめざす研究会を脳外科や内科の医師らと発足。研究を進め、音楽パズルが完成した。
研究会メンバーの早川富博医師が院長を務める足助病院(愛知県豊田市)で11年に行った実証実験では、高齢者18人が唱歌「ふるさと」の通常版と変奏版を各4分割したブロック8個を並べ替えた。達成結果は「かなひろいテスト」など従来の認知機能検査の結果とほぼ一致し、試行数や時間も認知機能との関連が確認できたという。(朝日新聞 11/17)
■精子の能力「35〜40歳で衰え」 独協医大が発表
男性の精子が持つ妊娠につながる能力は、35〜40歳を境に衰える可能性のあることが、独協医科大学越谷病院の研究でわかった。加齢による不妊の主因は、卵子の老化など女性側にあると考えられてきたが、男性の加齢も影響している疑いがある。11月15日の日本生殖医学会で発表した。
男性不妊の大半は原因不明だが、精子の数が少なかったり、正常に動く割合が低かったりすることが多い。精子の老化による影響はこれまで、あまり調べられてこなかった。
チームの慎 武さんらは、精子の能力をマウスの卵で調べた。人間の正常な精子をマウスの卵に入れて活性化させると、卵子の核の形が変化する。しかし、妊娠させる力の弱い精子では、この変化が起きない。(朝日新聞 11/15)
■次号のメールマガジンは2014年1月6日ごろです。お楽しみに。
[発行]産学社エンタプライズ