エンタプライズ発信〜メールマガジン【№31】2013. 11
巷間で騒がれている食品やメニューの偽装には一消費者として呆れ返ります。中でも最たるものは牛脂を注入加工した牛ステーキを霜降りや和牛として高額料金を取っていたこと。編集子は初老の身なのでひれ肉党ですが、サーロインだって食べたいときはあります。焼肉もカルビは好きです。この牛脂注入加工肉とやらは国内で年間8,000t(8,000,000kg)以上も生産されていて、ファミレスや安いステーキハウスに卸されてされているようです。実際、油脂を人工的に入れる方がおいしいと感じる人の方が多いという声も聞きます。とどのつまり、悪いのは加工肉をブランドと偽って高額な値段で客に出し、暴利をむさぼっていた飲食店です。喉もと過ぎれば忘れるのが日本人の悪いところ。肉だけではなくネギトロ用のマグロすり身も同様の処置がなされているものも多くあります。一般の食品市場でも、見た目が良くて安い商品には、消費者自らが厳しい観察眼を持つ必要があります。
★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★
【1】伝統医学をシルクロードに求めて
【2】カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【3】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【4】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【5】N・E・W・S
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆日本構造医学会が第18回学術会議を開催◆
10月13日、日本構造医学会(熊本市)は東京・学士会館において第18回学術会議を開催、全国から250名ちかくの会員が出席し、生活環境場(医療・科学技術・教育ほか)における構成体(構造)の本質を探究する論題が多数発表され活発な質疑が行なわれた。
学会長挨拶では歯科医師の新藤勝之氏が「医療に携わる者は視野を広げる必要がある。本会の情報を資材に人と交わることでさらに社会に還元していきたい」と述べた。発表では演題7、ポスタープレゼン1が披露され、質疑応答が各々活発に行われた。吉田勧持理事長の総括では「ヒト科としての問題点に真摯な取り組みが見られ、その気づきが練られてきている。専門の窓を広げるにはリベラルアーツの精神が必要。追究の目を養うことを期待している」と締めくくった。
◆日本統合医療学会2013東京大会が12月に開催◆(再案内)
今年で17回目を迎える日本統合医療学会。今年は「持続可能な社会における医療〜エコ・ヘルケアの実現」をテーマに新たな健康指標を創造する。期日は12月21日(土)〜22日(日)、日本赤十字看護大学(東京都渋谷区広尾)において開催される。前日(20日)には市民公開講座を催す(演者:玄侑宗久氏=福聚寺住職、芥川賞作家=演題:生への希望と統合医療-福島に必要な医療[予定])。詳細はhttp://www.imj2013.com/outline.html
《 連載13 》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
■3. チベット編〜古代医学の宝庫
仏教をもたらした二人の女性
チベット《東を中国本土、西をパミール高原、南をヒマラヤ山脈、北を崑崙山脈にそれぞれ囲まれた高原》の平均標高は約3000メートル、面積は約123万平方キロ(日本の約4倍)である。黄河や揚子江はいうまでもなく、メコン川、インダス川もこの高原に源を発している。現在は中国チベット自治区であり、人口は274万。その大部分(93%)がチベット族であり、残りは漢族、メンバ族などである。
7世紀前半、ラサを中心とした地域を支配していた吐蕃(とばん)王家にソンツェン・ガムポが現れて領土を拡大し、やがて諸族を併合してチベットの統一を完成させた。また伝説によれば、このソンツェン王は中国の皇族の女性(唐の文成公主)とネパールの王女(ブリクティ)とを妃に迎えた。二人の女性はともに仏教徒であり、その結果、王はボン教から仏教に改宗したという。それが本当かどうかわからないが、この伝説はチベット文明にとって、二つの強力な源泉のあったことを象徴している。すなわち、一方は中国であり、他方はネパールを経由したインドの影響力である。ソンツェン王は長安へもインドへも多くの留学生を送った。そのなかのトンミサンボータらが梵字に模してチベット文字を作ったことは有名である。
このチベット仏教-ラマ教を抜きにしてチベットの歴史を語ることはできない。なにしろ1959年の「民主改革」直前まで、男子人口の2割(全人口の1割)を僧侶が占めていたからである。政府の要職には僧、俗2人の役人があてられ、そのうち僧の役人が優先する制度であった。農奴主でもある6名の大臣(カロン)によって構成される内閣(カシヤ)の布告も、ダライ・ラマの印璽(いんじ)がなければ、その効力を発揮することはできなかったからである。医学も例外ではなかった。チベット医学は僧院の保護を受け、どんな小さなラマ寺院でも、解剖生理図、図書館、薬局を備えた医学研究の施設を持っていたという。ダライ・ラマの在所であるポタラ宮には、アジアの各地から集められた6000種類にものぼる薬草や薬石が保存されていた。最近の報道によれば、チベットの調合薬は300種類以上になり、その年間生産量は35トンに達したという。
耆婆(ぎば)に擬せられた河口慧海
1900年(明治33年)3月16日未明、ラサに程近い湖畔にたたずむ一人の旅人があった。足元の湖水には、赤や黄、あるいは白い水鳥がゆうゆうと行きかっている。そして素晴らしい声を放ちながらツルが群舞していた。青々とした湖上にはもうろうとした山脈が映じ、そのあいだからは弦月が上がりかけていた……この光景に見とれる人こそ、日本人としてラサに最初の足跡を残した河口慧海(えかい)である。彼は4年の歳月をかけ、神戸‐カルカッタ‐カトマンズ-ダウラギリ峰を踏破し、さらにマサナロワル湖を迂回してから東に一転し、ようやく目的地を目の前にしていた。(次号につづく)
<<連載 第31話>>
カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
原因追求型のスタンス(つづき)
ファミリーカイロプラクティックでの治療方針は、原因さえわかればほとんどの症状は改善するというスタンスであり、機械論的な構造が変われば症状は改善するというものではない。治療によって構造に変化があり、それに伴って症状が改善したとしても、その構造の変化はあくまでも結果であり原因ではないと考える。このような原因追求型の治療を施していく中から、本質的な原因はどこにあるのか、カイロプラクティックアジャストメントがなぜ効果があるのかが見えてくる。
患者と治療家との本質的関係
本場の米国で開業しているカイロプラクターは法律で守られているということもあり、ひととおりのプロトクル内で業務を行う。ドクターという立場上、西洋医学的に診た病気を見逃さないことに重点が置かれており、有機論的な原因追求まで行っているドクターは少ないだろう。
カイロプラクティック大学の同級生から聞いた話だが、米国の同級生のカイロクラクティッククリニックを見学したとき、肩の痛い患者が治療に来たとのこと。その患者は腕を動かすのも痛いのに、カイロプラクターは肩の痛みの原因の検査を行うどころか、肩に関しては何も行わず、患者も肩の治療をしてほしいというそぶりもせずに、当たり前のように脊椎だけの矯正を行いその日の治療は終了した。そしてそのカイロプラクターは、自分はサブラクセイションを基軸にした業務を貫いていると豪語したらしい。
おそらくこのカイロプラクターは、頑なにサブラクセイションの圧迫説を信じているのだろう。そして患者も圧迫説の信者になっている様子が窺える。保険が適用されているとはいえ、そのような業務でよく患者が来てくれるものだと思う。
ファミリーカイロプラクティックでは、肩の痛みなどは、原因を徹底的に追求すれば、石灰沈着などの炎症症状が強くない限り、その痛みはその場で軽減あるいは消失するのが当たり前であって、そのため、そのように認識している患者は、症状の改善度が悪かったり、ほかの部位に症状があるときは、「先生、このあたりにまだ違和感がありますが…」などと残っている症状を訴える。筆者は、症状があるにもかかわらずその患部に対して何も触れないなどのカイロプラクティック業務で患者が治療に来るのも考えられないし、ドクター自身もそのような業務でやりがいがあるのか疑いたくなる。(次号につづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(5)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****
【画像検査】(つづき)
(8)重篤な疾患を示唆するレッドフラッグがある場合を除き、腰痛発症後1ヶ月以内のCT、MRI、ミエログラフィー、CT-ミエログラフィーは推奨しない。発症1ヶ月後に重篤な疾患の鑑別や手術を検討する場合には容認(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……レッドフラッグがない腰痛患者に対して、コストがかかる上にリスクを伴う画像検査はするなという強い勧告です。
(9)腰椎外科手術の既往歴のある急性腰痛患者において、腰椎外科手術による瘢痕組織と椎間板ヘルニアを鑑別するための画像検査にはMRIを用いる(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……腰痛疾患の画像検査は放射線被曝のないMRIが望ましいのですが、コストパフォーマンス(費用対効果)がイマイチです。
(10)ミエログラフィーとCT-ミエログラフィーは侵襲的な検査であり、合併症のリスクを増大させることから、外科手術を前提とした特別な状況に限って行われるべき画像検査である(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……日本ではまだ行なわれているようですけど、腰痛診療ガイドラインが新しくなればなるほどミエログラフィー(脊髄造影)は避けるべきと勧告しています。
(11)CTとMRIのスライス幅は0.5cm以下で椎体終板に平行。MRIの磁界強度は0.5T以下。ミエログラフィーとCT-ミエログラフィーは水溶性造影剤。これらの画像検査の調書は放射線科医の報告を基に作成する(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……これはテクニカルなことなので特にコメントはありません。
(12)骨スキャンはレッドフラッグが認められる急性腰痛患者の評価に推奨するが、妊娠中は禁忌である(確証度C)。
……レッドフラッグがなければ画像検査は無意味なのは分かりますが、サーモグラフィーが役立たないというのは意外ですね。
(13)サーモグラフィーは急性腰痛患者の評価に推奨できない(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……レッドフラッグがなければ画像検査は無意味なのは分かりますが、サーモグラフィーが役立たないというのは意外ですね。
(14)椎間板造影(ディスコグラフィー)は侵襲的な検査である上にその解釈も曖昧なため、急性腰痛患者には推奨できない。他の非侵襲的検査(CT・MRI)を行うことで、椎間板造影による合併症は回避可能である(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……そうはいっても、CTだってかなり侵襲的(身体を傷つけること)なのですけどね。
(次号につづく)
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (31)
根本 良一(療動研究所主宰)
6. 脇の前後の筋 (つづき)
前号の方法に準じて、大胸筋については、
①両足先で踏ん張り、踵を浮かせて、膝を大胸筋の緊張側から逆方に倒し、
②片手で両大腿中央部へ、上になる腿を主に誘導をかける。
③別の片手で、両踵へ底側から抵抗をかける。
④両腕を組み、広背筋と同様の誘導と操作をする。
この両操作での相違点は、
1)誘導をかける第1位置:脛部か大腿部
2)誘導をかける第2位置:踵の上部からか底側からか、
ということになる。ここで言えるのは、微妙な相違で「誘導が変わると連動先が変わる」ことである。
◆1-大胸筋の操作法 (脇の前側)
上胸部の手指でつかめる筋であるが、胸部の異常感に関しては内科的な問題もあるし、大胸筋だけでなく、斜角筋の一部、肋間筋の上部など紛らわしいところでもある。そのため、それぞれ動作分析をしてみないとわかりにくいことがある。
①腕を前から上げると痛い場合は、三角筋か大腰筋の異常。これで痛みがないなら次へ。
②首の前部、前横が重苦しく、圧痛があるなら斜角筋の緊張。これがなければ次を診ていく。
③背部が重苦しく、大きく呼吸をすると胸が圧迫される。脇下の肋骨間を指頭で圧迫すると痛みがある。これは背部が緊張しているための、肋間神経の昂進によることが多い。
a)仰臥位で行う大胸筋の操作法
・誘導語
1)「ここへ仰向けで寝てください。両膝を立てます」
2)術者は受者の太腿と向き合う位置に座り、両腿へ(上になる方を主に)手をかけて抵抗をかける。
3)「両腕を組んでください。膝をこちら(大胸筋の緊張していない方)へ倒してください」
4)「両腕は前へ出し、両肩が浮くようにして、こちら(大胸筋の緊張していない方)へ向けます」……肩がつくと補助動作としての肩のまわしがしにくい。
5)「力まずにそのままで約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力します。すぐに戻らず、3呼級おいて戻ります。この静かな時間が昂進している交感神経の静まるときです。大切な時間です」
b)自療操体法
仰向けに寝て、足、腰の動き、膝を倒す動きから始める。
・姿 勢
両腿の間に枕などをはさみ、大胸筋緊張側の膝を上に、両膝を逆方に倒し、下の足甲を反らせて、上の足の踵へからみつけて抵抗をかける。両腕は軽く組んで、胸の前に固定し、膝の動きを補助するように、膝の動く逆方へ向ける(補助動作)。自分でするので、気持ちよさ、動きが十分かを体感しながら、次のように無理なく行う。
・実 施
1)大腿部に枕などをはさむ。この枕を上の脚で押し付け、下になる足は特に誘導をせず、足甲を上の足の踵へ足底から巻きつけるようにかける。
2)踵が上がり、膝が下を向き、上の足が伸びるのを下の足が支える。大胸筋(小胸筋を含む)の緊張のない方へ両膝を倒す。
3)このとき両肩は、両腕を前へ出し、背を丸くして転がりやすくし、膝の向く逆方へ軽く捻る。すなわち補助動作になる。上げる(+5)、下げる(-5)という気持ちで、首も無理に動かさず、
4)十分動いたら、そのままで約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力する。
5)そのまま3呼級くらいおいて、大胸筋を触診、確認し、2‐3回行う。
(次号につづく)
*** N *** E *** W *** S ***
NEWS ■飲める女性は注意! 脳卒中のリスクが倍増する
女性には気がかりな研究結果が公表された。「女性の大量飲酒は脳卒中発症の危険性を高める」と、国立がん研究センターと大阪大学などの合同研究チームが明らかにした。
米国の権威ある予防医学の医学誌「Preventive Medicine」に掲載されたこの研究(JPHC研究)は、新潟や沖縄など、国内9地域の女性約4万7千人を、1990年から2009年まで追跡調査したものだ。
追跡期間中に1864人の女性が脳卒中を発症した。飲酒との関連を調べた結果、「1日にビール大瓶2本以上、日本酒なら2合以上」の大量飲酒をする女性は、「ときどき」飲酒する女性に比べて、脳出血を発症する危険性が2.85倍、脳梗塞では2.03倍、脳卒中全体では2.3倍高かった。
男性を対象にした調査は9年前に同研究チームが報告しており、「1日にビール大瓶3本以上、日本酒なら3合以上飲む」の大量飲酒をする人は、「ときどき飲む」人より約1.6倍脳卒中になりやすいことがわかっている。女性のほうが少ない飲酒量にもかかわらず、脳卒中のリスクが高いとの結果になった。
研究をとりまとめた大阪大学医学系研究科公衆衛生学教授の磯博康氏は、「この調査は生活習慣病に関する世界でも最大級の追跡調査で、とくに女性を対象とした大規模な調査は、欧米でも限られています。大量飲酒は乳がんの危険性を高めることもすでにわかっていますので、男性だけでなく、女性も節度ある飲酒を心がけてほしい」と呼びかける。
脳卒中治療に詳しい東京都済生会中央病院院長(神経内科医)の高木誠医師も、この研究を評価する。「女性が社会で活躍するようになり、飲酒をする機会が増えました。ストレス社会であることもあり、女性の飲酒量自体も増えています。これまではただ『お酒は控えめに』と言っていたところを、これからは『1日1合程度まで』と、具体的に数字を出しながら指導することができます」。
高木医師によると、アルコールは血圧の上昇をもたらし、脳卒中、とくに脳出血の危険性を高めるという。「今回の調査ではさらに、高血圧でない人でも飲酒で脳卒中の危険性が高まるとわかりました」。
年末に向け、酒席が増える。飲酒はほどほどにしておくにこしたことはない。(週刊朝日 11月8日号)
NEWS ■見逃される関節症性乾癬。痛みや腫れ
皮膚表面が赤く盛り上がり、乾燥した角質がふけのようにポロポロとはがれ落ちる炎症性の皮膚疾患「乾癬」には、症状によっていくつかのタイプがある。このうち重症型の関節症性乾癬は関節の痛みや腫れを伴い、進行すると関節が破壊されて不可逆的な変形を起こす。関節を守るには早期治療が必要だが、診断が遅れて破壊が進んでしまう患者が多いという。
乾癬の原因は明らかでないが、体質や感染症、薬剤、ストレスなどの要因が複雑に絡み、免疫の異常が引き金となって発症するとみられている。
全体の約90%を占めるのは尋常性乾癬。これに対し関節症性は2012年時点で7.4%と少ないが、この数字は年々増加傾向にある。
「患者さんが増えたのではなく、尋常性の中に隠れていた人が発掘されたのだと思います。本来は乾癬患者の20〜30%に関節症状が起こると考えられています」と、東京逓信病院皮膚科の江藤隆史部長は解説する。
多くの患者は皮膚症状の出現から数年遅れて関節炎を発症する。関節破壊が進むとリウマチのように変形し、日常生活に大きな支障が生じる。
ネット調査会社が9月に乾癬患者206人を対象に行ったアンケートでは、90.8%が「乾癬と関節症状は関係ないと思う」、89.8%が「皮膚科医から関節症状の説明を受けたことはない」と答えた。患者の知識不足や医師の不十分な情報提供が相まって、診断の遅れにつながるらしい。
近年乾癬治療に用いられている「生物学的製剤」と呼ばれる薬は関節破壊の進行も抑える。江藤さんは「関節に痛みや腫れが現れたら、すぐに皮膚科医に相談してほしい」と呼び掛けている。(共同通信 11/5)
NEWS ■宣伝表示にガイドライン案 健康食品で消費者庁公表
誇大な効果をうたった健康食品の宣伝表示に苦情が相次いでいるとして、消費者庁は11月1日、問題となる具体例を盛り込んだ表示のガイドライン案をホームページで公表した。12月1日までパブリックコメント(意見公募)を実施した上で取りまとめる。
「医者に行かなくてもがんがよくなる」と宣伝したり、特定保健用食品(特保)ではないのに「毎日飲むだけで動脈硬化が改善」とうたったりするケースを列挙。有効とする成分が十分含まれていない場合や、「行政機関が認証した」と架空の認証を記載することも問題とした。
内閣府の消費者委員会がことし1月、厚生労働省が2003年に定めた健康増進法に基づく表示ガイドラインを分かりやすく改善するよう求めており、景品表示法の適用例を追加して作成した。(共同通信 11/5)
NEWS ■カイロプラクティックに関する調査を実施—全国健康生活普及会
日本最大250支部、約35,000人のカイロプラクターが会員となっている全国健康生活普及会は、カイロプラクティックの効果を調べるために、マーケティング調査会社に委託し、全国のカイロプラクティックで施術を受けた方、3721人にアンケート調査し、その結果を公表した。
【カイロプラクティックに関する調査結果】
1.施術を受けた方の男女比、年齢比
男性 22.6%、女性 77.4%。女性が8割近くを占めています(回答数 3721人)。年齢別で多いのは、40代(22.8%)、30代(20.6%)、50代(19.5%)、60代(15.7%)、20代(11.0%)、70代(7.8%)(回答数 3719人)。20代から70代ま
で、幅広い年齢層の方が施術を受けています。
2.質問「カイロプラクティックはアメリカで国家資格の医療として認められていることを知っていますか?」
知っている 35.8%、 少しは知っている 25.2%、知らなかった 38.8%。カイロプラクティックはアメリカでは国家資格ですが、そのことを6割強の方が知っていました。(回答数 3715人)
3.質問「カイロプラクティックを受けようと思ったきっかけ(症状)は何ですか?」(複数回答可)
1位 腰痛 59.7%、2位 肩こり 54.3%、3位 頭痛 19.8%、4位 ひざ痛 15.6%、5位その他 29.4%。これは男女での違いがかなりあります。女性の場合、1位肩こり 59.3
%、2位 腰痛 57.2%、3位 頭痛 22.6%、4位 ひざ痛 15.9%。男性の場合 1位腰痛
68.6%、2位 肩こり 37.2%、3位 ひざ痛 14.5%、4位 頭痛 10.3%。
4.質問「実際にカイロプラクティックを受けてみて、その効果の実感はどのぐらいですか?」
①非常に効果を感じた 77.7%、②少し効果を感じた 20.9%、③効果があったかどうかわからない 1.4%。実に98.6%の人が、何らかの効果を感じていることがわかります。
5.上記の回答で、①および②と回答した方に質問。「どのような効果がありましたか?」
①体が楽になった 73.3%、②痛みが軽くなった 50.0%、③癒し効果があった・気持ち良かった 35.9%、④痛みが消えた 22.5%。
6.質問「あなたは、身体の改善・健康維持・予防などの目的で、施術院の先生から健康関連商品を購入し、使用していますか?」
①購入し使用している 85.9% ②これから購入する予定 3.4% ③していない 10.6%
7.質問「あなたは、カイロプラクティックに美容効果を期待しますか?」
①実際に美容目的でカイロプラクティックを受けている 13.9%、②あればいいと期待する 74.4%、③まったく期待しない 11.6%、特に女性の場合、「あればいいと期待
する」が78.5%
このアンケート調査結果は全国健康生活普及会ホームページ(URL:http://www.zenkenkai.jp/)で見ることができる。
NEWS ■発症5年前の運動量が多いとRAがより軽症になる可能性
関節リウマチ(RA)患者を対象に、診断時から遡って5年前の運動状況を確認したところ、運動量が多い患者ほど診断時の疾患活動性が低く、より軽症であることが示された。10月26日から30日まで米国サンディエゴで開催されている米国リウマチ学会で、スウェーデンInstitute Of Environmental MedicineのMaria R. C. Sandberg氏らが発表した。
RAを対象としたスウェーデンの大規模ケースコントロール研究であるEIRAに登録しているRA患者617人を対象に、診断の5年前の運動実施状況を聞いた。
運動状況は、1群(家事などの身体活動を週に2時間未満)、2群(家事などの身体活動を週に2時間以上)、3群(30分以上のエクササイズを週に1〜2回)、4群(30分以上のエクササイズを週に3回)に分け、イラストで示した中から選択してもらった。
疾患活動性(DAS28)、医師による評価(5つのカテゴリー)評価、痛み(VAS)、QOL(HAQ)の4つについて、それぞれ中央値以上と診断されるオッズ比(OR)を求めたところ(1群=1.0)、いずれも運動量が多くなるほどオッズ比は低くなった(「医師による評価」のP for trend=0.02、他は全てP for trend<0.01)。
例えばDAS28は、2群のオッズ比が0.84(95%信頼区間〔95%CI〕:0.30-1.59)、3群が0.58(95%CI:0.30-1.12)、4群が0.41(95%CI:0.02-0.82)だった。
さらに、1群と2群を「規則的運動なし群」(n=329人)、3群と4群を「規則的運動群」(n=288人)の2群に分け、規則的運動なし群を1.0とした場合の規則的運動群のOR(中央値以上の診断)を求めた。
その結果、規則的運動群の各指標のオッズ比は、DAS28(≧5.3)が0.66(95%CI:0.39-0.82)、医師評価(>中等度)が0.62(95%CI:0.42-0.92)、VAS(>50mm)が0.67(95%CI:0.47-0.96)、HAO(1以上)が0.84(95%CI:0.58-1.23)となった。
Sandberg氏は、「RAと診断される前によく運動していた患者ほど、RAがより軽症と診断されることが示された。RA発症リスクの高い人には朗報で、日ごろから積極的に運動するように心がけることが重要と言えるだろう」と語った。(日経メディカル別冊
11/1)
NEWS ■アイコンタクトは医師と患者のつながりを強める
患者はアイコンタクトをして共感してくれる医師を好むことが、米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部内科・一般内科・老人病学助教授のEnid Montague氏らの研究で示唆された。
研究では、プライマリケア医と風邪の症状がある患者の初診時のビデオ110件を調べた。その結果、受診時間は平均3分38秒と短かった。患者は、診察時間が長く、握手したり、背中をなでたりするなど接触する医師のほうが共感してくれると考えていたが、3回以上の接触は「見せかけ」と考え、嫌気がさすようだった。
Montague氏は、「目標は将来、医師のアイコンタクトやその他の非言語的なコミュニケーションを適正に測定するシステムと技術を作ることだ。より多くのデータを収集すれば、患者と医師の間に信頼やつながりができるアイコンタクトの正確な量がわかるモデルを構築できる。それによって、医師が患者と意思疎通するのに役立つツールや技術につながる」という。
さらに、「アイコンタクトなど、単純なことが医療制度にも大きな影響を及ぼす可能性がある。患者は医師が共感していないと感じれば、治療を途中でやめるかもしれない。医師を変える患者が増えれば、医療費が大幅に増えることになる」とも述べている。(Journal of Participatory Medicine)
NEWS ■口腔ケアが、がん患者に効果
口内を清潔に保つ口腔ケアをがん患者らに行うことで、合併症を防いだり、入院日数が減ったりするなどの効果が見込まれるとの調査結果がまとまった。
調査チームを率いた信州大付属病院は県歯科医師会と連携し、在宅療養のがん患者が自宅近くの歯科医院などで口腔ケアを継続して受けられるような態勢づくりに乗り出す。
口腔ケアとは、虫歯を治したり、歯垢(しこう)を除去したりして口の中を清潔に保つこと。がん患者の場合、抗がん剤や放射線治療の副作用で口内が荒れやすい。口内を清潔に保たないと細菌が増え、細菌が血液に入る「菌血症」や肺炎などの合併症を引き起こしやすい。
調査チームは、信大付属病院のほか相沢病院(長野県松本市)、長野市民病院の歯科医らで構成。2011〜12年度に、3病院に入院するがん患者を対象に行った。
信大付属病院が食道がん患者に手術前から口腔ケアを実施したところ、しない場合と比べ、術後の絶食期間が18.8日から13日に、入院日数も32.8日から25日と約1週間短くなった。
相沢病院の調査では、術後の合併症発症率が、実施しない場合に比べ32.2%から4.3%に低下。長野市民病院の調査では、口内の粘膜炎が原因で化学療法をやめなければならない患者の割合が減った。
チームリーダーの信大医学部の栗田浩教授は「がん治療と並行して口腔ケアを行うと、回復が早まり、合併症のリスクも減らせるという貴重なデータを得られた」と話す。
県歯科医師会と信大付属病院は、同病院のほか県内七つの「がん診療連携拠点病院」でも口腔ケアの取り組みを広げていく方針。歯科医師会の笠原哲三歯科医師は「県内全域で口腔ケアの大切さについて意識を高め、患者のQOLの向上が図れれば」と期待している。(読売新聞 11/1)
NEWS ■大卒31%、3年以内に離職。医療・福祉でも高率に
厚生労働省は10月29日、学校を卒業して就職後3年以内に仕事を辞めた割合が、リーマン・ショック後の2010年3月の大学卒業者で31.0%になったと発表した。前年度の卒業者と比べて2.2ポイントの上昇。
厚労省は、この年の卒業生の就職活動では、大手企業が採用を抑制したため、中小企業や、職場環境が厳しく離職者が多い業種への就職が増えたことが要因とみている。いわゆる「ブラック企業」の増加も大卒者の早期離職の背景にありそうだ。
就職先の業種別では、宿泊業・飲食サービス業が51.0%、教育・学習支援業が48.9%、医療・福祉が37.7%など、サービス関連で平均を大きく上回る離職率になった。
早期離職すると職業経験を積みにくくなり正規社員への定着が難しくなるケースも多いことから、厚労省は就職活動中の企業情報の提供に加え、企業側にも新規採用者への教育の充実を促し、新卒者の職場定着を図る考え。(共同通信社 10/29)
NEWS ■がん「凍結療法」拡大に力。先進医療認定へ岡山大病院
岡山大学病院放射線科は患部に細い針を挿入し、がん細胞を壊す「凍結療法」の拡大に取り組んでいる。これまでに保険が適用される腎臓がんで64人(71腫瘍)に実施。近く骨転移がん患者を対象にした臨床研究に着手し、治療費の一部が保険適用となる「先進医療」の施設認定を目指す。
凍結療法は、特殊機器に装着した直径1.5ミリの針1〜5本をIVR-CT(コンピューター断層撮影装置)で確認しながら患部に挿入。特殊ガスを送って体内に直径数センチの氷玉を作り、零下40度まで冷却する作業を2回繰り返してがん細胞を壊す仕組み。外科手術より患者の身体的な負担が少なく、同大病院は2012年に腎がん治療として始めた。
適用拡大へ、5月、数年前に治療した肺がんがあばら骨付近の胸壁に再発した70代女性に実施。腎がん以外で初の症例だったが、直径2.5センチのがんが消え、治療前に訴えていた背中の痛みもなくなった。9月中旬には肝臓がんが骨盤の一部に転移した高齢女性に行い、「患部横に下肢を動かす神経があり、難しい症例だった」(担当医・郷原英夫講師)が、成功を収めた。
腎がん以外でも効果が見込めるとして、同大病院は骨転移がん患者約20人を対象に臨床研究を計画。実績を積み、先進医療の施設認定、その先の保険適用を目指す。放射線科の金澤右教授は「良性腫瘍や肺がんにも有効な治療法。一般の医療として普及させたい」とする。
腎がん凍結療法は1995年、国内の医師が世界で初めて実施し、欧米で普及している。国内では11年に保険適用になったが、他のがんは適用外。岡山大病院が行う腎がん以外の凍結療法は、費用の全額が自己負担の自由診療で行っている。(山陽新聞
10/9)
■次号のメールマガジンは2013年12月1日ごろです。お楽しみに。
[発行]産学社エンタプライズ