エンタプライズ発信〜メールマガジン【№30】2013. 10

時節はすっかり秋だというのに連日30℃前後の気温が続いています。とはいえ夜半は空気も涼しくなって寝つきが良くなった御仁も多いのでは。この寝つきですが、睡眠の悩みをもつ人の中には、少なからず足と首に原因があるようです。現代人は足指が地面に接地する度合いが少ない浮足が多くなっています。足指が浮くと踵を多く地面に打ちつけて歩くことになり、着地時の衝撃は通常の3〜5倍大きくなる上に、身体全体のバランスが崩れ、これが続くと首の歪みや変形が起こるというのです。首には自律神経が集中していることから、昼のダメージにより交感神経が優位に立ったまま、体がリラックス状態にならず眠れない…というストーリーです。思い当たる人は足の指を使って正しく歩く訓練をどうぞ。3本指のテーピング靴下などで足裏のバランスを整えることが大切です。足裏のアーチをサポートするようになっていて、足の指が開いて踏ん張りやすくなり、体のバランスも整います。指が浮いた悪い歩き方を、足の指を使った正しい歩き方に変えることにより首が安定化するので副交感神経優位への変換が早く行えるそうです。秋は夜長です。寝すぎないようにご留意ほど。

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★

【1】伝統医学をシルクロードに求めて
【2】カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【3】根拠に基づく腰痛の原因と治療
【4】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【5】N・E・W・S
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◆日本統合医療学会2013東京大会が12月に開催◆

今年で17回目を迎える日本統合医療学会。今年は「持続可能な社会における医療〜エコ・ヘルケアの実現」をテーマに新たな健康指標を創造する。期日は12月21日(土)〜22日(日)、日本赤十字看護大学(東京都渋谷区広尾)において開催される。前日(20日)には市民公開講座を催す(演者:玄侑宗久氏=福聚寺住職、芥川賞作家=演題:生への希望と統合医療-福島に必要な医療[予定])。詳細は http://www.imj2013.com/outline.html


《 連載12 》

伝統医学をシルクロードに求めて

       池上正治(作家・翻訳家)


[ 加藤清也氏(ラマ僧修験者)に聞く =つづき]

日本人の医者として噂が広まる

こっちへ来てしばらくすると、日本から坊さんが来た、つまり日本の医者が来たともう皆が知っているんです。葛根廟のラマたちはもちろん、周辺の俗人たちの間にも知れ渡っているんですね。そりゃもう蒙古人の早耳と言ったら大変なもんですね。そんなわけで、ラマ医学の名手のバトー・ウムチと“にわか医者”の私とがですね、約600人の僧侶と周囲の住民たちの病気を分担して治すことになったわけなんです。
多かった病気ですか、それは眼病、皮膚病、胃腸病といったところですね。それに遊牧生活ですから、打撲や骨折などもずいぶんありましたね。胃腸の病気はですね、私はもう千振(せんぶり)の一本やりでした。苦い薬ですがね、この千振は胃腸薬としてもってこいです。良薬は口に苦しですよ、本当に。
10歳くらいの少年を診たことがありました。仰向けにして両足を曲げさせ、腸を指先で軽く押すと顔をしかめて、痛い、と言うんです。胃は何ともなかったようですから、大腸の炎症と診断して、千振も3日分だけ紙に包んで渡しました。1回目はその場で水で服ませました。この3日分でだいたい全快しましたね。
中国人の女の子でしたけど、10歳くらいだったでしょうか、鍋の中に落っこちたというて、全身の3分の2の火傷です。しかも緊急措置のつもりだったんですかね、全身に牛の糞を塗りつけてあるんです。もう虫の息でした。その子のお父さんがですね、もう涙ながらにもし治るものなら…と言うんですが、バトー・ウムチのほうはもうお手上げです。そこで私は大至急お湯を沸かせて、ぬるま湯の中に女の子を入れると、ベロベロと牛の糞をはいでいきました。もう私が夢中ですよ。相手が子どもですからね。同時に弟子に言いつけて、20センチ角くらいに切ったフランネル(厚い毛織物)にホウ酸軟膏をベットリ塗って全身に貼り付けていったんです。そうして寺の事務所に寝かせたんです。その後何回か薬を取り替えていると、どうですか、これぐらい薬が効くものか、と私は思いました。皮がどんどん張ってくるんですね。約半月後には家に帰してやりました。

草原のかなたへの葬送

昭和12年に入寂された第六世諾諺呼図克図(ノウヤンホトクト)は活仏(ゲゲン)でしたから、とにかくミイラになったわけです。このときにですね、私は後にも先にも唯一人の外国人として、ミイラにするお手伝いができたわけなんです。
一般の俗人はですね、死後は焼くか埋めるかのどちらかです。火葬はと言うと、相当の財産家ということになりますから、やはり土葬のほうが多いですね。火葬の場合でも、その骨を家に安置したり、祀ったりということはしません。その場に埋(い)けて、風化するに任せるんですね。
一般には、蒙古には棺に入れるという慣習はありません。大興安嶺を越えた烏珠穆泌(ウジムチン)のほうにはですね、少し変わった葬送のやり方があったそうです。それは、死体を二輪車に乗せたまま、縛ったりはしないで、二輪車を馬に引かせ、草原のかなたへと全速力で疾走するんです。死体は自然に落ちてしまうわけですが、御者は絶対に振り向いてはいけません。不思議な葬式があるものだと思いましたね。(次号につづく)


<<連載 第30話>>

カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト

       保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


原因追求型のスタンス(つづき)

その矛盾は、
1)MRIでの検査は明らかに医学的に椎間板ヘルニアで、ならば通常の椎間孔に比べると形態学的に狭いはずであるが、無症状の人がいるということが統計的に報告されている。
2)椎間板ヘルニアの患者のほとんどが保存療法で改善する。その改善理由は椎間板のヘルニア自体が引っ込んだわけでもなく、構造学的に椎間孔が広がったわけでもない。
3)変形性関節症によって椎間孔が狭くなっても、その形態学的な異常所見が必ずしも症状に結びつかない。
4)すべり症や分離症の患者でも無症状のケースは多く、たとえ腰痛があっても保存療法で改善され、すべり症や分離症における構造的位置が改善したから治るわけではない。
5)機械論的な神経圧迫説では、神経根が圧迫されると末梢神経が圧迫され運動機能が低下するという見解であるが、腕の付け根や足の付け根をゴムで縛ってレジスタンストレーニングを行う加圧トレーニング法では、神経生理学的作用によって筋力が増すという報告もあり、高齢者の筋力アップ、リハビリにも応用されている。圧迫の程度や時間的要因にもよるようだが、神経圧迫=運動機能低下と一概に結びつけるには矛盾が多い。
6)臨床上、治療の直後に腰痛や頚部痛が改善される理由のほとんどは、ハード面の肉体内でのエネルギーバランスの改善、すなわち神経生理学上のバランス改善によるものであり、さらに本質的には、ハード面とソフト面の関係性である様々なストレス因子との調和によるもので、構造学的な神経根圧迫が解放されたからという根拠に結びつけるには無理がある。

最近の文献からうかがえることは、馬尾症候群のような神経根を狭窄させるほどの椎間板ヘルニアでない限り、ヘルニアや骨棘などを含む変形性関節症などの構造学的な変形のほとんどは無害であり、構造変形=症状、圧迫=症状にはかなりの矛盾があるという事実が明らかになってきているということである。
筆者のファミリーカイロプラクティックの臨床の現場において、多くの患者が整形外科にて椎間板ヘルニア、変形性関節症、すべり症、分離症などの診断を受けて、そのような構造上の問題が原因であるとされ、痛みが強ければ安静、スポーツ選手で運動痛があれば運動制限、肥満体で膝の痛みがあれば減量や運動療法などのアドバイスを受けて来院する。しかしながら、当院にて改善するそれらの症状のほとんどは、そのような機械論的な原因ではないことがわかる。その証拠に、たとえ西洋医学的に診て原因とされる構造上の形態学的異常が存在したとしてもほとんどの症例において改善し、当院での治療体験を通じて、患者の多くは構造学的な異常が症状の原因ではなかったことを改めて認識する。(次号につづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(4)

   長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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■今号から画像検査に入ります。

【画像検査】
(1)最近の重度外傷(全年齢)・最近の軽度外傷(50歳以上)・長期のステロイド服用・骨粗鬆症・70歳以上というレッドフラッグがなければ、急性腰痛の検査として1ヶ月以内の単純X線撮影は推奨しない(確証度B)。……レッドフラッグ(危険信号)のない急性腰痛(ぎっくり腰)患者に画像検査を行うなという勧告です。わが国はルーチンワークのようにレントゲン写真を撮りますが、それは国民が当然の権利のように要求するのでやめられないという事情もあります。放射線被曝が好きな人以外はこうした考え方を改めましょう。

(2)最近の重度外傷(全年齢)・最近の軽度外傷(50歳以上)・長期のステロイド服用・骨粗鬆症・70歳以上というレッドフラッグがある場合、骨折を除外するために腰椎の単純X線撮影を推奨する(確証度C)。……レッドフラッグのない腰痛患者にレントゲン写真を撮る必要はないのです。しっかり頭に叩き込んでおきましょう。

(3)がんや感染症の既往・37.8℃以上の発熱・静注薬の乱用・長期のステロイド服用・安静臥床で悪化する腰痛・原因不明の体重減少が存在する場合、腫瘍と感染症の鑑別に単純X線検査にCBCとESRの併用が有効である(確証度C)。……CBC(血算=赤血球数・白血球数・血小板数・ヘモグロビン)とESR(赤沈=赤血球沈降速度)は、レントゲン撮影以上に重要な情報を与えてくれるのに、日本ではあまり行なわれていないようです。

(4)腫瘍や感染症を疑わせるレッドフラッグ(危険信号)が存在する場合、単純X線撮影で異常所見がなくても骨スキャン・CT・MRIが必要となる可能性がある(確証度C)。……腰痛疾患を診る場合はとにかくレッドフラッグを見逃すなということです。レントゲン写真より病歴聴取(問診)や理学検査(身体検査)の方がはるかに重要なのです。

(5)斜方向からの腰椎単純X線撮影を日常的に行うことは、放射線被曝の影響を考えると成人には推奨できない(確証度B)。……レントゲン写真の斜位像は脊椎分離症を確認するために撮るわけですが、成人の脊椎分離症と腰痛は無関係なので、意味のない放射線被曝は避けろという強い勧告です。

(6)馬尾症候群や進行性の筋力低下のある患者は緊急手術が必要となる可能性があるため、CT・MRI・ミエログラフィー・CT-ミエログラフィーの緊急検査を推奨する。緊急検査の実施は外科医と相談して決定すべき。(確証度C)。……馬尾症候群は24時間以内の緊急手術が必要ですが、確証度Cということでも分かるように、現在はミエログラフィーとCT-ミエログラフィーは推奨されません。

(7)脊椎腫瘍・感染・骨折・その他の占拠性病変の存在が強く疑われる場合は、CT・MRI・ミエログラフィー・CT-ミエログラフィーによる検査を実施することが推奨される(確証度C)。……ハイリスクでハイコストの画像検査は、レッドフラッグのある患者だけに許されるということです。
(次号につづく)


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (30)

       根本 良一(療動研究所主宰)


6. 脇の前後の筋

大胸筋、広背筋は腕を動かす筋であり、姿勢や肩、腕の動作障害を解消する場合の大切な部位である。ともに腕を下げる筋であることから、これが緊張していると、肩を上げる、腕を上げる動作に異常が出る。
大胸筋、広背筋は胸椎部から起こり、上腕骨につくから、肋間神経すなわち背部の肋椎関節運動軸の張力をコントロールすることでも解消できる。
大胸筋の操作は、大胸筋を緊張させる動きになるから苦しいように見えるが、局所の緊張部を操作するより、震源部からの連動調整を優先するものである。
この両者の操作は、関連部である足への「誘導が変われば連動先が変わる」好例である。

脇の前後の筋:意外なところでの取り組み

脇の前後の筋、前は大胸筋、後ろは広背筋で、スポーツマンや肉体労働者に発達していて男性的な上体をつくる。とくに広背筋と僧帽筋は、肩こりの場合に特徴的な緊張をして、肩こり症候群の代表とされる。
動かさないと肩がこる。動きすぎると肩が痛む。腕が上がりにくくなる。ともに上腕骨につく強大な筋だが、どこから連動させたらうまくいくかがわかにくい。
仰向けで、両膝を立てて左右の気持ちのよい方向へ膝を倒すと、腓腹部、足底部が攣れることがある。
1)下腿(脛)に枕をはさんで倒すと落ちてしまう。やはり困った。
2)落ちないように一方の足首に後ろからもう一方の足をかけ、足甲で足首へ巻きつけて下向きの支えをかける。脛の間にも枕をはさむと肩が軽くなったという。
3)触れてみると軟らかい。脇下の広背筋も軟らかい。
4)補助動作として、両肩を、膝を倒す逆方へ向けてみると、広背筋がさらに軟らかくなってくる。広背筋と僧帽筋の関係が把握できた。いろいろな人に実施してみた。
5)肩こりは軟らかになる。腕の上がらない人は、すーっと腕が上がる。
6)上腕の筋も軟らかくなる。小躍りするくらいうれしかった。
しばらく、この方法を続けた。

これを連動操体法へ導入すると、
①両足をそろえ、踵を浮かせて膝を操者の前方へ倒させ、
②両手を使い、片手で両脛へ、上の足を主に誘導をかけ、
③片手で上がる踵へ下・底側向きの誘導をかける。
④両腕を組んで、やや前へ両肘を出させ、(背が床に密着しないで転がれるよう)膝の倒れる逆方へ、両肩、首が一体となるように転がす。
⑤連動操体法の操作どおりに行う。—-という構成にしてみた。
(次号につづく)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■アニマルセラピーで入院患者のストレス軽減-初の試み


長期入院中の子どもたちのストレスを軽減するため、埼玉県立小児医療センターは10月10日から「アニマルセラピー」を始める。県内の県立病院では初めての試みで、月に一度、公益社団法人日本動物病院福祉協会から派遣されるセラピードッグが病棟を訪問する。
アニマルセラピーは、動物と触れ合うことで情緒的な安定やQOL、身体的機能の向上などを図る取り組み。日本動物病院福祉協会は1986年から、病院や高齢者施設、学校などで、獣医師やボランティアの飼い主と犬や猫などのペアが行うアニマルセラピーを主催している。
小児医療センターは、診療などによるストレスを減らそうと、長期入院患者を対象にアニマルセラピーを企画。10日は午後2時15分から午後3時まで、飼い主と犬のペア3-5組が、同センター病棟のプレイルームで子どもたちと触れ合うという。
11月以降も月に一度、同センター内でアニマルセラピーを実施する方針で、ストレスの軽減だけでなく、患者の精神的な健康の回復にもつなげたい考えだ。(医療介護CBニュース 10/7)


NEWS ■心の病…被災自治体職員、5か月で147人休職


東日本大震災後、岩手、宮城、福島3県の沿岸と東京電力福島第一原発事故で避難指示区域となった地域の計42市町村で、職員がうつ病など心の問題で休職するケースが相次いでおり、今年度も8月までの5か月で147人が1か月以上の長期休職をしていることが読売新聞の調査で分かった。
復興事業の本格化で自治体業務は拡大し、職員の負担は増しており、震災から2年半が過ぎても厳しい状況は続いている。
調査は、岩手県の12市町村、宮城県の15市町、福島県の15市町村が対象。11年4月から今年8月末まで、年度ごとに心の問題で長期休職した職員数を尋ねた。2011年度の長期休職者は286人、12年度は254人で震災前の10年度の177人を大きく上回った。
震災後2年半での県別の休職者数(延べ人数)は、宮城県が461人、福島県が180人、岩手県が46人。市町村別(同)では、仙台市が207人で最も多く、次いで福島県いわき市が101人、宮城県石巻市が90人だった。いわき市では、今年度の5か月間で20人が休職しており、10年度の23人に近い人数となっている。(読売新聞9/30)


NEWS ■曇りや雨続くと増加 鉄道自殺、予防に活用も


日照時間が少ない曇りや雨の日が連続した後に鉄道自殺や未遂が増加する傾向があることを、京都大と滋賀医大のチームが明らかにし、9月25日発表した。
チームは、自殺が増える日を予測して踏切や駅をパトロールしたり、光を浴びると症状が改善するうつ病治療用の高照度白色光などをホームや車両につけたりすることで、自殺予防に役立つ可能性があるとしている。
鉄道自殺が最も多い東京、神奈川、大阪の3都府県で、2002年からの5年間に、自殺や自殺未遂が理由で鉄道の運休や30分以上の遅れが発生した日の直前の日照時間を調べた。すると、曇りや雨の日が3日間連続した直後の日は、途中で晴れの日が1日以上あった場合に比べ、自殺や自殺未遂による運休や遅れが増える傾向があった。曇りや雨の日が7日間続いた直後の日で調べると、その傾向が強まった。当日の天気との関連は見られなかった。
滋賀医大の角谷寛特任教授は「当日の天気よりも、直前の数日間太陽光を浴びないことの方が、感情の落ち込みやうつ症状に影響を与えているのではないか」と話す。成果は海外の専門誌に発表した。(共同通信社 9/26)


NEWS ■がんによる損失、最大1.8兆円—厚労省研究班推計


がんにかかったことで、通院で会社を休んだり、仕事の生産性が落ちたりして、年間最大約1兆8千億円の労働損失が生まれている可能性が、厚生労働省研究班の研究でわかった。こうした推計は国内で初めて。働く意欲のある患者を支援する動きもあり、研究班は「対策を取ることで損失を減らせるかもしれない」と指摘する。
国立保健医療科学院の福田敬・上席主任研究官らは2011年度の国の統計をもとに、20〜69歳で働いている人ががんになった際の労働損失を推計。対象は最大40万人と見積もった。
入院や通院で会社を休んだ場合など治療による直接的な損失は約4500億円。うち女性の乳がんは約550億円と最も多かった。乳がんは40〜50代の働き盛りの年代で発症する人が多い上、術後も通院期間が長いことが理由として考えられる。
治療日以外の労働状況についても、一般の人と同じ程度に働けるかどうか、仕事を辞めていないかなどの間接的な労働損失を推計。仮に全員が辞めてしまった場合の損失は約1兆3800億円となり、治療による損失と合わせると最大1兆8千億円になる可能性があるとした。(朝日新聞 9/25)


NEWS ■朝に多い心筋梗塞–「睡眠時無呼吸症候群」が関係か


心筋梗塞が朝方に起きやすいのは、寝ている間に呼吸がたびたび止まる睡眠時無呼吸症候群が関係している疑いがあるとの研究結果を、長崎市立市民病院の中島寛・循環器内科部長が9月21日、熊本市で開かれている日本心臓病学会で発表した。
2006〜2011年に同病院で治療した心筋梗塞の患者に対し、発病から2週間後、睡眠時の呼吸や脳波などを測定。空気の通り道である気道が狭くなることで起きる閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断された216人と、診断されなかった72人について、6時間ごとの時間帯に心筋梗塞の発症率を調べた。
その結果、無呼吸症候群の人は、午前6時〜正午の発症率が38%と他の時間帯に比べて高く、「無呼吸」の程度が重い人の43%がこの時間帯に集中していた。無呼吸症候群でない人は、どの時間帯も25%前後と差がみられなかった。(読売新聞
9/22)


NEWS ■1日1杯のワインがうつ病を予防


うつ病はアルコール摂取に関連しているといわれている。スペイン・ナバラ大学のAlfredo Gea氏らはアルコール摂取とうつ病との関係をプロスペクティブに評価した。
対象は、PREDIMEDトライアル(最大7年フォローアップ)の参加者のうちハイリスク群の男女5,505人(55〜80歳)。試験登録時、対象者にうつ病の有病および既往歴はなく、アルコール関連の問題もなかった。アルコール摂取量を評価するため、栄養士によって管理された137項目の食物摂取頻度調査票による調査を毎年実施した。うつ病発症の定義は、臨床診断により新規にうつ病と診断された場合、あるいは抗うつ薬の使用を開始した場合とした。分析にはCox回帰分析を用いた(2万3,655人年)。主な結果は以下のとおり。
・適度なアルコール摂取(5〜15g/日)は、うつ病発症の低いリスクと有意に関連していた(HR[95%CI]:0.72[0.53〜0.98] vs 禁酒群)。
・具体的には、1週間あたり2〜7杯のワイン摂取がうつ病発症の低リスクと有意に関係していた(HR[95%CI]:0.68[0.47〜0.98])。
・適度なワインの摂取はうつ病発症リスクの軽減につながるが、大量飲酒ではリスクが増加する傾向がある。(BMC medicine誌オンライン版8/30号)


NEWS ■100歳以上、5万4千人超—43年連続増。9割近く女性


厚生労働省は9月13日、全国の100歳以上の高齢者が昨年より3021人増え、過去最多の5万4397人に上ると発表した。敬老の日を前に毎年調査しており、前年比増は43年連続。人数は調査が始まった50年前の355倍となり、長寿社会の進展を映している。
住民基本台帳を基に、9月15日時点で100歳以上となる高齢者数を都道府県を通じて9月1日現在で集計した。男性は6791人、女性は4万7606人で、女性が87.5%を占めた。また2013年度に100歳になった人と、なる人を合わせると2万8169人で、これも過去最多だった。人口10万人当たりの100歳以上の人数は全国平均が42.7人。都道府県別では島根が82.5人と最多で、高知78.6人、山口71.7人が続いた。最も少ないのは埼玉で24.1人。次いで愛知27.7人、千葉29.9人の順。
厚労省によると、老人福祉法が制定され調査が始まった1963年には100歳以上の人は全国で153人だった。81年に初めて1000人を超え、98年に1万人、2007年に3万人、2012年に5万人を突破した。(共同通信社 9/13)


NEWS ■2012年度の医療費38兆円超—最高更新


厚生労働省は9月10日、2012年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費が概算で38兆4千億円に上り、10年連続で過去最高を更新したと発表した。前年度比6千億円増え、伸び率は1.7%。1人当たりの医療費は初めて30万円を突破した。
厚労省は、高齢者の増加や、高度医療の普及で治療費がかさんだのが要因と分析している。医療費抑制を図るため、価格の安い後発薬の使用促進や保健事業を通じた生活習慣病の予防などを進めてきたが、膨張に歯止めはかかっていない。
1人当たり医療費は前年度比1.9%増の30万1千円。年代別にみると70歳未満は2千円増の18万1千円で、70歳以上は千円減の80万4千円だった。(共同通信社 9/11)


NEWS ■高血圧者の半数は高血圧に気づいていない


世界中の多くの高血圧の人が、自分は高血圧であることに気づいていない――カナダ、マクマスター大学マイケルG・デグルート医学部内科教授のSalim Yusuf氏らの研究で発表された。
この状況は低所得国でも裕福な先進国でも同様で、高血圧をコントロールする薬剤があるにもかかわらず、適切な治療を受けていないという。Yusuf氏らは、さまざまな経済力の17カ国から、心疾患や脳卒中の既往がない、35〜70歳の成人15万4,000人のデータを抽出して検討した。
全被験者の血圧と薬剤使用状況をモニターし、年齢、性別、教育レベル、自分が高血圧であることの認知の有無、他のリスク因子に関する情報も収集した。その結果、高血圧者の46.5%しか疾患を認識していないことがわかった。また、症状を有効にコントロールしているのは高血圧を認識している患者の32.5%だった。
Yusuf氏は、「血圧をコントロールするのに十分な治療を受けているのは、治療を開始した患者の3分の1に過ぎない。これは低所得国が最も少ないが、高所得国、中所得国でも有意である。この結果は、高血圧患者の検出率を上げる体系的な取り組みが必要なことを示している」という。今回の研究は一部、複数の製薬会社からの制約のない助成を受けて実施された。(JAMA 9/3号)


NEWS ■穏やかな音楽で安全運転


運転中にストレスの多い状況になって腹が立つようなとき、穏やかな音楽にすばやく切り替えることで気分が落ち着き安全運転につながることが、オランダ、フィリップス研究所のMarjolein van der Zwaag氏らの研究でわかった。
音楽が気分や運転スタイルに影響する可能性があることはすでに知られており、ドライバーがアップビートの音楽を聴いているときの事故が多い。これは、音楽に気をとられているか、音楽を聴くことでスピードが上がることが原因と思われる。これに対して、ダウンビートの音楽は緊張を和らげ、安全運転につながるという。
ドライバーの気分を変えるのに、アップビートの曲からダウンビートの曲にすばやく切り替える場合と、徐々に切り替える場合のどちらが有効かを検討するため、van der Zwaag氏らは、ボランティアに異なるタイプの音楽を聴いてもらいながら、集中力を要する運転をシミュレートした。その結果、どちらの被験者も、最終的には同程度に落ち着いたが、すばやく切り替えた被験者のほうが早く気分が落ち着き、運転ミスが少なかった。
van der Zwaag氏らは、「この結果は、集中力を要する運転中にすばやく音楽を変えると、生理学的により落ち着き、運転能力が向上するため、安全かつ有効であることを示している。オフィスや病院にも応用できる」と述べている。(Ergonomics 9/1号)


NEWS ■定期的なエクササイズで成人の喘息症状が改善する


これまでに、喘息患者に対する定期的な運動の影響について検討した研究は少ないが、1週間の運動量が多いほど喘息の症状の発生が軽減することが示された。9月7日からバルセロナで開催された欧州呼吸器学会(ERS2013)で、フィンランドInstitute of Health Sciences、University of OuluのSirpa Heikkinen氏らが発表した。
対象は、「Espooコホート研究2010」から抽出された20〜27歳の若年喘息患者152人。喘息の症状の評価は、過去12カ月以内に起こった喘鳴、息切れ、咳、たんなどの症状の発生頻度に基づく喘息症状スコア(0〜12)で評価した。運動は、汗をうっすらとかく程度のエアロビック運動を実施した時間数(1週間当たり)で評価した。
運動時間数で四分位し、分位ごとに症状の発生の有無をみたところ、喘鳴、息切れなどの症状は、いずれも運動時間の最小分位(1時間未満/週)で多く、運動量が多くなるにつれて症状が減少する傾向が見られた。例えば「息切れ症状あり」は最小分位で39.0%に対し、最高分位(運動時間が5時間以上/週)では16.2%だった。「咳症状あり」は、最低分位で31.7%、最高分位では18.9%だった。
喘息症状スコアもやはり運動量が少ないほど高い(=重症)傾向が見られた。そこで、ポワソン回帰分析を行ったところ、喘息症状スコアは運動時間が1時間増えると0.44有意に減少した(β:-0.44、95%信頼区間:-0.71〜-0.43)。
Heikkinen氏は「若い世代の喘息症状は、規則的なエクササイズで有意に軽減することが示された。本研究は横断的研究ではあるが、怖がらずに適度な運動を続けるよう喘息患者に勧めることは、症状のコントロールにおいて有効ではないかと考える」と話した。(日経メディカル別冊 9/9号)


■次号のメールマガジンは2013年11月1日ごろです。お楽しみに。


[発行]産学社エンタプライズ