エンタプライズ発信〜メールマガジン【№29】2013. 9
今年の夏も高温、豪雨、竜巻など異常と感じるほどの災害が続きました。南の沖縄の海域では8月上旬の平均海面水温が30.3℃を記録、これが続くとサンゴが白くなって死滅する「白化現象」が広い範囲で起きる恐れがあると気象庁が伝えました。サンゴは、光合成を行う褐虫藻(かっちゅうそう)を共生させて栄養を得ているそうです。ところが水温が30℃を超えると、褐虫藻が抜け出し、サンゴ本体の白い骨格だけ残る白化現象が生じてきます。サンゴ礁は多くの生物を育んでいることはご承知のとおりです。死滅すると生態系に大きな打撃を与えることは想像できます。碧く美しい沖縄周辺の海から、あのエメラルドグリーンが消えてしまうことは観光資源的にも大打撃。温暖化は北上しています。国際社会や国家的規模はいうまでもなく、温室効果ガスの削減や太陽光発電、資源の再利用の促進等は市民レベルでも喫緊の課題になっています。
★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★
【1】伝統医学をシルクロードに求めて
【2】カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【3】根拠に基づく腰痛の原因と治療
【4】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【5】N・E・W・S
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【Topics】
◆アクティベータメソッド・セミナーが開催される◆
アクティベータ・ネットワーク・ジャパン(ANJ)は8月25日から2日間にわたってベーシック/インターミディエイトセミナーを開催した。アクティベータ治療は、神経系の働きの悪い箇所を分析し、脊椎を中心として筋骨格系の関節部位や筋に対しアクティベータ器で適切な振動刺激を与え、人体の神経エネルギーを調整することで症状の軽減や消失などを図ることができる。近年のアメリカではよく用いられるテクニックだ。
会場となった東京・浜松町の味覚糖ビルには柔整師、鍼灸師、カイロプラクターをはじめ多数の参加者を得て、座学および実技演習を行い、多岐にわたる技術修得に余念なく取り組んだ。次回は10/13(日)-14(月・祝)の予定で大阪市において開かれることになっており、ベーシック課程参加者を募っている。 http://activator.blogdehp.ne.jp/
【Topics】
◆LED 赤色・赤外線光による加療◆
LEDによる赤色光と赤外線光は、太陽光が持つ細胞の光化学反応をもたらすことが知られている。自律神経測定器販売を手がける陽春堂は、陽子共鳴理論に基づく光セラピー/赤色・赤外線LED健康機器「B.E.A.T. Light Rent;ビートライトレント」(独Wismerll社)を新たにラインナップし、販売に力を入れている。本機により赤色・赤外線光を照射することでリラックス、バイタリティの向上が図られ、免疫力や血液・リンパ管の循環、細胞の代謝に寄与するとしている。編集子はある会合で長歴年の頚部痛にビートライトレントを受療したところ、疼痛スケールで10→5くらいまで軽快した。改めて古来より太陽光が治療手段に用いられることの有用性を感じることができた。陽春堂: http://yousyundo.com/SHOP/71253/list.html
《 連載11 》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
[ 加藤清也氏(ラマ僧修験者)に聞く =つづき]
朝5時、プロの音で始まる勤業
ラマ僧の生活ですか、それは朝5時から始まるんです。その時間になるとプロという大きなホラ貝のような貝を屋上でプォープォーと吹き鳴らすんです。それを合図に、法衣(タクマー)を着たラマ僧たちが僧房を出て梵通寺に向かいます。法衣は木綿製です。表は赤黒、裏は真紅のなかなか綺麗なものです。そして左の肩には帽子(マラガー)をかついで山門をくぐります。この帽子は梵通寺の入り口を通るときだけかぶるんです。寺の中に入れば、すぐまたぬいでしまいます。ほぼ全員が揃ったところで経典が配られます。もちろんチベット語で書かれたものです。こうして朝の勤業が始まるわけです。そうですね、30分くらいでしょう。あまり長くはありません。もう毎日のことですから。
それが終わるとお茶が出ます。スーテー茶ですが、中国の山西省の山茶を使うんですよ。この山茶を薬研(やげん)でおろして煮出すんです。茶殻を除ったあと牛乳とバターを入れ、最後に岩塩で味をととのえて飲みます。そうですね、お茶のスープと言った方がわかりやすいかもしれませんね。このスーテー茶を蒙古人は日常欠かさずガブガブ飲んでいるんです、木椀で。それはなぜかというと、あの乾燥地帯でしょ、お茶からビタミンCを摂っているわけなんですね。
日没とともに終わる自然の一日
朝食はですね。施主のあるときは寺でいただきます。塩茹での羊の肉と、穀類はモンゴルバタという黍(きび)です。炊くのではなく焼いてあるんです。砂で焼いてから、ふるいにかけて砂を除ってですね、皮を剥いで残ったものがモンゴルバタです。これにはウルチとモチの区別があるんです。モンゴルバタを少し大きめの木椀に入れ、スーテー茶を差してもらいます。このときには4-5杯は飲みます。そうこうするうちにモンゴルバタもふやけてきますから、それを舌でもってきれいに洗うとともに食べてしまうのです。箸もありますが、全部、舌です。私なんか、今でもつい舌でなめてしまうんですよ。
それで夕食は、だいたい3時ごろです。僧侶も俗人も昼食はなく二食です。もっとも、早くから農耕をするようになったハラチン族は別ですが、本旗(ほんき)人の場合は二食なんです。そして日没とともに休むんです。ええ、中にはバターの灯で勉強している者もいました。でも明るくはないんですよ。皿にバターを入れ、棉をひねった芯を真ん中に立てただけのものです。私もやってみたんですがね、あんまり暗いものだから、ローソク、石油ランプと使っていったんですが、そうしたらみんなが見に来るんですよ。時計も私しかもっていませんから珍しがるんですよ。
時間に追いまくられている現代人の生活からは想像もつかないでしょうね。なにしろ朝はプロの音(ね)で始まり、日没とともに一日が終わるという、自然そのものの生活だったんですから。(次号につづく)
<<連載 第29話>>
カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
ヒトは非線形で非平衡系である(前号よりつづき)
ヒトの脳は、常に外の世界を認識し適応し変化していく系(複雑適応系)である。非平衡を一言でいえば、動的で、ダイナミックであるということになる。このような非線形で非平衡系な生命体を、線形で平衡系的分析法によって評価し、アジャストメントを行うところに大きな矛盾が発生する。特にカイロプラクティックで注目する神経系の本質は非線形であり、電気刺激による神経細胞の大きく歪んだ独特の波形が、非線形性の強さを物語っている。
このような非線形で非平衡系の安定化を図るためにリズムという概念、すなわち「振動」という概念を知る必要がある。振動とは機械的にブルブル震える場合に限らず、目に見えないリズムであっても振動という言葉が使われ、波長や周波数という言葉でも表現されている。一般的に「あの人とは波長が合わない」などという表現はよく耳にするが、実際に過敏な人は、誰か知らない人が横に座っただけでも波長が合わなければコリ感などの緊張を自覚する。そこにはリズムの「ズレ」が生じているのであり、病的な条件反射を引き起こしているのである。
原因追求型のスタンス
機械論的な施術者は、機械的に関節がズレたり、機械的に神経が圧迫されることによって痛みをはじめとする様々な障害が生じるとしているが、神経が本当に機械的に圧迫されれば、知覚麻痺や運動麻痺が生じるのであり、痛みはほとんど生じないとされている。しかしながら、坐骨神経痛などの原因は、圧迫された坐骨神経、すなわち脊椎のサブラクセイションによるものだとして、腰椎を機械的に矯正して、椎間孔を広げ、圧迫を取り除こうという理屈だが、圧迫を取り除いたという証明はできるのであろうか。馬尾神経麻痺で膀胱障害を生じさせるような圧迫であれば、機械的・外科的な処置が必要である。しかしそれ以外のヘルニアのほとんどが保存療法で治っている。それはほんとうに椎骨のズレの矯正により椎間孔が広がり、圧迫が取り除かれたから改善したのであろうか。
医学雑誌の論文でも報告されているように、椎間板ヘルニア=痛みやその他の症状、とすぐに結びつけてしまうのには、様々な矛盾があることがわかってきている。カイロプラクティックの神経圧迫説は、神経出口となる椎間孔での機械的な圧迫によるものとされ、その圧迫を解放させること、つまり位置的に椎間孔を広げることでイネイトインテリジェンスがはたらき、様々な症状を回復させるという。その圧迫は、西洋医学で言われるところの直接的な圧迫ではないと主張するかもしれないが、実はこの節には様々な矛盾がある。(次号につづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(3)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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■ここから『成人の急性腰痛診療ガイドライン』が勧告する急性腰痛の診断法について紹介させていただきます。
AHCPR(アメリカ医療政策研究局)が作成した『成人の急性腰痛診療ガイドライン』では、急性腰痛の診断法について【初期評価】【画像検査】【その他の検査】ごとにエビデンスレベル(科学的根拠の確証度)を明記して勧告を出している。
【初期評価】
(1)患者の年令、症状の内容とその期間、仕事や日常生活への影響、過去の治療に対する反応は、腰痛の治療にとって重要である(確証度B)。……まずは患者さんの話をよく聴けという勧告です。病歴聴取(問診)はいつも大切ですね。これだけで画像検査以上の重要な情報が入手できます。
(2)がんの既往歴、原因不明の体重減少、免疫抑制剤や静注薬物の使用、尿路感染症の既往歴、安静時の疼痛増強と発熱は、がんや感染の可能性を示唆するレッドフラッグ(危険信号)とする。これらは50歳以上の患者で重要(確証度B)。……ここで初めてレッドフラッグの概念が明確にされたわけですが、これは画像検査ではなく病歴聴取(問診)で拾い出せます。
(3)馬尾症候群の徴候である膀胱機能障害やサドル麻痺を伴う下肢の筋力低下は、重大な神経障害を示唆するレッドフラッグ(危険信号)とする(確証度C)。……もちろん48時間以内に緊急手術が必要な馬尾症候群もレッドフラッグです。医療関係者の方はけっして馬尾症候群を見逃さないでください。
(4)外傷の既往歴(若年成人の高所からの転落や交通事故、高齢者や骨粗鬆症患者における転倒や重量物の挙上)は、骨折の可能性を念頭に置く必要がある(確証度C)。……いうまでもなく骨折も生物学的問題ですからレッドフラッグです。骨折を腰痛疾患と考える人はいないでしょうが腰痛を訴える高齢者の問診は慎重に。ただし骨粗鬆症による圧迫骨折は痛みが出る場合と出ない場合があります。
(5)心理的・社会経済的問題などの非身体的因子は、腰痛の診断と治療を複雑にする可能性があるため、初期評価の段階で患者の心理的・社会経済的問題に注意を向けることが推奨される(確証度C)。……確証度Cとはいえ、1994年の段階で心理社会的因子(後のイエローフラッグ)に気づいていたということです。
(6)疼痛図表(pain drawing)や可視疼痛計測表(visual analog scale)は病歴聴取に利用可能である(確証度C)。……痛みの評価も大事ですが頻繁に行なうと患部に注意を集中させてしまいますからご注意ください。痛みよりもできたことに注目させるのが認知行動療法です。
(7)SLR(下肢伸展挙上)テストは若年成人の坐骨神経痛の評価に推奨されるが、脊柱管狭窄を有する高齢患者ではSLRが正常となる可能性がある(確証度B)。……下肢症状のない場合は省略してもかまいません。
(8)神経障害の有無の判定には、アキレス腱反射・膝蓋腱反射・母趾の背屈筋力テスト・知覚異常領域の確認といった神経学テストが推奨される(確証度B)。……この神経学テストで椎間板ヘルニアによる神経根症状の責任高位を推定するわけですが、ご存知のように椎間板ヘルニアがあれば必ず神経根症状があるとは限りません。
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (29)
根本 良一(療動研究所主宰)
5. 大腰筋の操作 〜 膝から腰骨を動かす
大腰筋の操体法(前号よりつづき)
【自療操体法】
・椅子にかけて:膝から腰を押し出す
受者は椅子にかけて身体を前傾させ、両肘を大腿部に載せ、腕組みをする。このさい首には力を入れないようにしてダラリと頭を下げ、顎が胸に付着するくらいにする。
①椅子の端に膝裏をかけ、気持ちよく引きつけられる方の膝を引き、載せた肘で軽く押し返す。逆方の膝が押し出されるので、載せた肘で軽く引きつける。このとき、両肩を押し出す膝の方へ向ける。(左肩を+5なら右肩-5というように)無理せずに動かすようにする(補助動作)。
②十分に動いたら、そのまま約3秒間連動させる間をおいて、フーッと息を吐きながら脱力する。上体は、全体としては捻らないで、腰を出すことで大腰筋が弛緩する。
③ゆっくり2呼吸、間をおいて、3回くらい行う。
※この一連の動きは、大腰筋の緊張側の膝を前へ出し、同時に逆方の腰を引く。
a.踵が上がり、腰〜膝が斜め前下へ動き(始動)、
b.逆方の腰骨(腸骨)および膝が後ろへ退がる。
c.一方の腸骨が出ると、他方の腸骨は退がる。
※腿へ載せた腕で、肩を膝と逆方へ、両膝の動きへ抵抗(補助動作)がかかるように行う。
・正座して行う(膝をV字型に開く)
首には力を入れないようにダラリと頭を下げ、顎が胸に付着するくらいにする。
①動作分析:両手を腿に置き、あるいはテーブルに置いて肩が動かないようにし、腰骨を左右に押し出し(膝を押し出すつもり)、どちらが楽かみる。例えば左膝を出すのが楽な場合、
②左膝頭へ左手をかけて、右手は右腿に置く。右腰を引きつける力で左腰(腸骨)および左膝を押し出し、
③十分に動いたら、すぐに動かずそのまま約3秒間連動させる間をおいて、フーッと息を吐きながら脱力する。ゆっくり3呼吸、間をおいて、3回くらい行う。
・仰向けに寝て行う:両膝を立てる
①膝を交互にひきつけて、気持ちよい方を選ぶ。
②選ばれた方の布団は、膝下を手で押さえ、軽く押し返す。
③逆の膝は気持ちよく押し出す。布団をかけた方がより効果的である。
④気持ちよく腰が動いたら、引き、押しの手に合わせ、両肩も前後に動かす。
⑤そのまま約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力する。
※このとき、肩を気持ちよく出すと、背部の「肋椎関節」が拡がり、外腹斜筋が弛緩するので動作が楽になる。
(次号につづく)
*** N *** E *** W *** S ***
NEWS ■「混合診療」特区申請へ 大阪府・市「先進医療を推進」
大阪府と大阪市は10日、保険診療と自由診療を組み合わせる「混合診療」を国家戦略特区の要求項目に盛り込むことを決めた。国家戦略特区は安倍内閣が成長戦略の目玉として自治体や民間から提案を募っており、府市は提出期限の11日、内閣官房に案を示す。
混合診療は安倍内閣が規制改革の主要課題に掲げている。松井一郎府知事は9日に菅義偉官房長官、10日に新藤義孝総務相と会談。「府市の提案が政府側に期待されている」(府幹部)と判断した。
府市案では大阪大との連携で免疫・再生医療の拠点づくりなどを目指す。その実現に向けた規制改革のメニューとして「先進医療の推進・具体化のための混合診療実施」と明記する。混合診療の対象となる疾病や医療機関の範囲を広げて先端医療を受けやすい環境をつくり、企業や研究機関を集める狙いだ。(朝日新聞 9/11)
NEWS ■12年度医療費、38.4兆円=10年連続で過去最高更新―厚労省
厚生労働省は10日、2012年度の医療費動向調査結果を発表した。医療保険と公費から支払われた概算医療費は、前年度比1.7%増の38兆4000億円となり、10年連続で過去最高を更新した。平均在院日数の減少で伸び率は前年度から縮まったものの、高齢化の進展と医療技術の高度化が全体を押し上げた。( 時事通信 9/10)
NEWS ■<震災関連死> 福島県内で直接死上回る 避難生活疲れで
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災者の死亡例のうち、福島県内自治体が「震災関連死」と認定した死者数が8月末現在で1539人に上り、地震や津波による直接死者数1599人(県災害対策本部調べ)に迫っていることが、毎日新聞の調査で分かった。少なくとも109人について申請中であることも判明。近く直接死を上回るのは確実だ。長引く避難生活で体調が悪化したり、自殺に追い込まれたりするケースがあり、原発事故被害の深刻さが裏付けられた。
関連死の審査会を設置しているか、または今年3月末までに関連死を認定したケースがある福島県内25市町村を調べた。復興庁が公表した3月末の関連死者1383人から5カ月で156人が新たに増えたことになる。
南相馬市が431人で最も多く、浪江町291人、富岡町190人の順だった。年代別では回答が得られた355人のうち、80歳代以上233人(65.6%)▽70歳代79人(22.3%)▽60歳代32人(9.0%)などで高齢者が多かった。
死因については多くの市町村が「今後の審査に影響する」と回答を避けた。復興庁による昨年3月末のデータを基にした県内734人の原因調査では「避難所などの生活疲労」33.7%▽「避難所などへの移動中の疲労」29.5%▽「病院の機能停止による既往症の悪化」14.5%など。自殺は9人だった。
宮城県では今年8月末現在で869人、岩手県は413人だった。関連死申請の相談を受けた経験がある馬奈木厳太郎弁護士は「原発事故による避難者数が多い上、将来の見通しも立たずにストレスがたまっている。今後も増える可能性がある」と指摘している。(毎日新聞 9/8)
NEWS ■<脳脊髄液減少症> 国際頭痛分類の基準変更
頭痛診断の世界的な解説書と位置づけられる「国際頭痛分類」が改定され、「脳脊髄液減少症」の診断基準が、対象となる患者が拡大される方向に変更されたことが分かった。国内で交通事故などの外傷によってどのくらい患者が発症するのかが注目されてきたが、診断基準の見直しは、事故の補償を巡る訴訟にも大きな影響を与えそうだ。
国際頭痛分類は、世界的な頭痛の研究者が作る「国際頭痛学会・頭痛分類委員会」が策定するさまざまな頭痛の診断基準。今回は、2004年に発表された第2版が改定され、第3版が策定された。
脳脊髄液減少症研究会世話人の美馬達夫医師によると、第3版の大きな特徴は▽頭を上げていると頭痛が悪化するまでにかかる時間を診断の条件としなかった▽第2版は「ブラッドパッチ」という治療法で、発症原因別に「72時間以内」や「7日以内」に頭痛が消えることを診断の条件にしていたが、第3版は、治療後に頭痛が消えるまでの期間を条件にしなかった--ことだ。
日本では「交通事故やスポーツの衝撃などで発症した減少症が見逃されてきた。第2版は患者を見逃す間違った基準だ」と批判されてきた。一方、交通事故の補償を巡って被害者と加害者側との間で訴訟が相次ぎ、判決は、第2版の基準に合致しないことなどを理由に、減少症の診断の多くを退けている。
厚生労働省研究班のメンバーでもある篠永正道・国際医療福祉大熱海病院教授は「第2版が、頭痛の悪化やブラッドパッチの効果に関して設けていた時間的な条件は、裁判でも研究班の議論でも、大きな重しになってきた。重しがとれたことで状況は一変すると思う」と話し、適正な診断が広がり救済される患者が増えることに期待を寄せる。(朝日新聞 9/5)
NEWS ■骨粗鬆症の予防・改善に小豆煮汁 近大農学部と井村屋
近畿大農学部と食品メーカーの井村屋は、小豆煮汁が骨粗鬆症の予防・改善に役立つことを共同研究で発見した。小豆煮汁に含まれる有効成分が、骨を作る働きを強めると同時に骨を壊す働きを弱める性質を持つことが判明したという。
人間の骨格は、骨芽細胞の働きによる「骨形成」(新しい骨を作ること)と、破骨細胞による「骨吸収」(古い骨を壊すこと)の絶妙なバランスで形成・維持されている。骨粗鬆症は加齢や栄養のアンバランスなどが原因で、骨吸収が骨形成を上回ることで発症する。
研究では、小豆煮汁に含まれるポリフェノール成分に、骨形成を活性化させ、骨吸収を抑制する働きがみられたという。研究成果は、8月29日から東京都日野市で開かれた「第60回日本食品科学工学会記念大会」で発表された。(産経新聞 8/28)
NEWS ■高齢患者紹介ビジネス横行
高齢者施設で暮らす患者をまとめて紹介してもらい、見返りに診療報酬の一部を紹介業者に支払う医師が増えている。訪問診療の報酬が外来より高いことに着目した「患者紹介ビジネス」に加担している形だ。法令の規制はなく、厚生労働省は「患者をカネで買うような行為は不適切」として規制の検討に乗り出した。
紹介業者は高齢者施設の患者を一挙に大量獲得し、訪問診療をする開業医に話を持ちかけることが多い。紹介料の相場は、患者1人あたり診療報酬(月約6万円)の2割だ。
兵庫県の診療所。毎週金曜日、午前の診察が終わると、待合室で製薬会社や医療機器メーカーの社員らが医師に次々と自社製品を売り込む。営業マンは、医師と患者をマッチングさせていると言った。高齢者施設で暮らす患者を紹介するから訪問診療してほしいと提案した。「収入(診療報酬)が入ったら、2割をコンサルタント料として頂きます。ウチは完全成功報酬制です」。さらに診療所のリストを見せ、「たくさんのお医者様にも契約して頂いています」と続けた。関西の医師50人ほどの名がある。訪問診療をしている医師をインターネットで調べて営業していると明かした。1時間粘ったが、医師は断った。(朝日新聞 8/24)
NEWS ■コーヒー4杯以上飲むと早死にする? 米研究チーム
2013年8月15日、医学専門誌「メイヨー・クリニック紀要」に掲載された。米ルイジアナ州ニューオーリンズの心臓専門医、カール・ラビー博士らが、20〜87歳の男女約4万人を16年間にわたって追跡調査し、55歳未満でコーヒーを1週間に28杯(1日平均4杯)以上飲む人は、飲まない人と比べて死亡率が男性で56%高く、女性では2倍に上ることが分かったという。
カップ1杯は約240ミリリットルの計算。適量の場合や55歳以上の年齢層では有意な差はみられなかった。
研究チームは「最近の研究では、コーヒーは効酸化作用がある食品のひとつで、炎症や認知機能にも良い効果があるということもわかっている。しかし、逆にカフェインがアドレナリンの分泌を促したり、インスリンの働きを抑制したり、あるいは血圧や、動脈硬化の要因と示唆されているホモシステインのレベルをあげたりすることにも留意するべきだ」とし、「とくに若い人はコーヒーの飲みすぎに気をつけたほうがいい」と警告している。
ただし、調査ではどのようなメカニズムがコーヒーと死を結びつけているのかはまだ判明していない。カフェインを減らせば結果に影響が出てくるのかどうかなど、不明瞭な点が多く残っている状態で、さらなる研究が必要という。
そのため、研究チームはコーヒーを大量に摂取する人は喫煙者である傾向があり、循環器に良い運動をしたがらないということも重要である、と論文中で指摘している。また、循環器系の病気による死亡率には、コーヒーとの関連がみられなかったという。(産経新聞 8/24)
NEWS ■統合失調症、薬出しすぎ–入院患者の4割、3種類以上
統合失調症で精神科に入院している患者の4割が、3種類以上の抗精神病薬を処方されていることが、国立精神・神経医療研究センターの研究でわかった。患者の診療報酬明細書(レセプト)から実態を分析した。複数の薬物による日本の治療は国際的にみても異例で、重い副作用や死亡のリスクを高める心配が指摘されている。
これまでも精神科の治療では「薬漬け」を指摘する声が根強くあったが、一部の医療機関などを対象にした研究が多かった。今回の研究では、2011年度から、全レセプトデータを提供する厚生労働省のデータベースの運用が始まったことから、精神科での詳しい薬物治療の実態の調査、分析ができるようになった。 (朝日デジタル 8/20)
NEWS ■日常的に炭酸飲料を飲む子どもは攻撃的なる:米大学調査
これまでイロリオでは炭酸飲料がもたらす弊害について度々言及してきたが、この度小さな子どもの心理にも悪影響をもたらす事実が発覚した。米コロンビア大学、バーモント大学、ハーバード大学公衆衛生学部の共同研究によると、炭酸飲料などのソフトドリンクの摂取が子どもの攻撃性を高め、注意力の不足や引きこもりを招くという。調査では、米国内の20の主要都市から選出した母子の同時出生集団データ、“Fragile Families and Child Wellbeing Study” から3,000人分の5歳児のデータを使用。母親には子どもの炭酸飲料の摂取量と、その子の行動チェックリストを埋めてもらったとか。調査を指揮したShakira Suglia氏によると1日の炭酸飲料の摂取量が増えるごとに、その子の攻撃性を示すスコアも増すことがわかったという。日常的に炭酸飲料を摂取している子どもほど攻撃的で引きこもりがち、注意力も欠如しているとか。社会経済的な地位や母親のうつ傾向、虐待、父親の逮捕歴などを考え併せても、炭酸飲料の摂取と子どもの攻撃性の関連性は疑いようがないとみられる。また1日に4本以上炭酸飲料を飲んでいる子どもは友達のおもちゃを壊したり、他人を傷つけたり、けんかをする確率が2倍に及んだとも。同論文は学術誌The Journal of Pediatrics.に掲載されている。
(イロリオ 8/20)
NEWS ■医療現場「香り」に注目–がん緩和ケアに活用も
医療の現場で「香り」ががん患者らに与える影響が注目されつつある。良い面・悪い面の両方あり、香りで患者の不安を和らげるアロマセラピーの取り組みが始まる一方、香りで頭痛などを訴える患者のため「におい対策」に乗り出した病院もある。
国立病院機構名古屋医療センターに、がんで入院中の40代の女性は約40種類の香りの精油の中から選んだバラの香りに包まれ、目を閉じる。看護師の竹内淳子さんが、女性の腕に薄めた精油を優しくすり込んでいった。
同センターは2011年、がんなどの病気の患者らを対象にアロマセラピーを導入した。緩和ケアに位置づけられ、保険診療の枠内だ。竹内さんは緩和ケアチームの看護師で、週1回、臨床アロマセラピストとして患者らをみる。
女性は「病院にいると季節感がないし、自分だけが重症じゃないかと思えてくる」と話す。好きな香りで自然と気持ちが前向きになるという。
アロマセラピーの導入を提案したのは、緩和ケアチームの看護師・松野英美さん。薬以外で患者の苦痛を和らげたいと考えた。
希望する患者の好みを時間をかけて聞き取り、時には香りの調合をせず、ベッド脇で話を聞くだけの時もある。「忙しい担当医や病棟の看護師に代わって患者と向き合えるツール。香りで生きている実感を持ってもらいたかった」という。
緩和ケアチームのリーダー竹川茂医師は「がん治療では、患者が『自分はこうしたい』と思う気持ちを持てるかが大事。それを支えたい」と話す。
約1700人の医療従事者でつくる「日本アロマセラピー学会」(事務局・東京都港区)によると、近年、精油の香りの作用についての研究が進み、医療現場でアロマセラピーへの関心が高まっている。学会は昨夏、初の国際会議を開き、秋に緩和ケアに焦点を当てた学術会議を予定する。
ただ、がん患者にとって香りは「両刃の剣」だ。免疫力が低下し、周囲のにおいにも敏感になるからだ。(朝日デジタル 8/20)
■次号のメールマガジンは2013年10月1日ごろです。お楽しみに。
[発行]産学社エンタプライズ