エンタプライズ発信〜 メールマガジン【№23】2013. 2

3月から5月にかけて、PM2.5と呼ばれる有害微粒子が中国方面から大量に飛んでくる予想が報道されています。そうでなくても花粉症に毎年悩まされる人が多くなっているのに、黄砂よりも劣悪な有害物質だというので、喘息、COPD、不整脈などの疾患を持っている人は要注意です。花粉がこれと結びつくとより威力を増すという声もあります。また、北回り(北朝鮮経由)の風に乗るのならそれほどでもないが、西回りだと北京の工業地帯の汚染大気を取り込んで日本に来るため(特に西日本)、黄砂とのダブルパンチになると警告する科学者もいます。社会活動をしている限りこれから逃れることはできませんが、外出時のマスクは当然とはいえ見落としがちなのが室内です。最近の住宅は気密性が高いゆえ換気システムが多く導入されています。知らず知らずに循環換気扇を回していると結局は吸い込んでしまうことになります。なるほど、中国や韓国から高性能の日本製空気清浄機を買い求めに来る理由がわかろうというものです。

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★

【1】WHO 『健康の社会的決定要因 確かな事実の探求』第2版
【2】意識に基づくエネルギー療法 “ BodyTalk ”
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療
【6】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【7】N・E・W・S
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<<< 連 載 ⑬>>>
【REVIEW】

WHO 『健康の社会的決定要因確かな事実の探求』第2版

<訳:WHO健康都市研究協力センター・日本健康都市学会・健康都市推進会議>


9. 食 品

世界の市場は食糧の供給に大きく関わっているため、健康的な食品の確保は政治的問題である。

【現 状】
良質で十分な食糧の供給は、健康とよい生活を推進する上で重要である。食糧不足や食事の偏りは、栄養不良や栄養失調の原因になる。過剰摂取(栄養不良の一つ)は、心血管系疾患、糖尿病、がん、眼科の変性疾患、肥満、虫歯を引き起こす。食糧不足と食糧過剰とは表裏一体の関係にある。健康的で栄養のある食品の確保とその価格は、公衆衛生の重要な問題である。良質で安価な食糧が手に入れられるということは、健康教育以上に、食事の内容の良し悪しという観点から重要と言える。
経済成長や住環境・衛生面の改善により、病気の内容は伝染病から、心臓病、脳卒中、がんなどの慢性疾患へと移り変わった。また特に西ヨーロッパ地域では、食生活がエネルギーの多い脂肪や糖質の過剰摂取へと変化し、栄養学的遷移をもたらし、その結果、肥満が増加した。同時に、肥満は裕福者層よりも貧困者層に多くなった。国際的な食糧の取引は、いま大きなビジネスになっている。関税及び貿易に関する一般協定(GATT)やEU共通農業政策(Common Agricultural Policy of the European Union)のどちらも、世界の食
糧供給を市場の力に任せる立場を取っている。国際食品規格(Codex Alimentarius)のような国際的な委員会は食品の質と安全基準を定めているが、公衆衛生の代表者が充分にいない上、食品産業の利益が優先されている。一方、地域での食糧生産はより継続的で、消費者がたやすく入手でき、地域経済を支えるものとなりうる。
社会的・経済的状況により、食事の質は左右され、健康の不平等が生じる。社会の階層間における食事内容の格差は、主な栄養を何から摂っているかに起因する。多くの国では、貧困者層は新鮮な食料品の代わりに安い加工食品を食べる傾向にある。脂質の過剰摂取は、社会階級に関係なく見られる。若年者世帯、高齢者世帯、失業者などの低所得者は、良質な食事を摂ることが大変困難である。
慢性疾患予防のためには、新鮮な野菜、くだもの、豆類(マメ科の植物)の摂取を心がけ、でんぷん質や動物性脂肪や精製された糖質や塩分を控えることが目標となる。専門家による多くの委員会でも、このような食生活を推奨している。

【提 言】
地方や国の政府機関、国際機関、NGO、食品産業は以下の点を確立すべきである。

・安価で栄養価の高い新鮮な食糧をすべての人々、とりわけ最貧困層に供給するシステムに公衆衛生の観点を導入させること。
・消費者を含めた全関係者の参加を得て、すべての食品安全基準の意思決定が民主的で透明性が高く、説明責任が明らかなものにすること。
・天然資源や自然環境を守る、持続的な農業や食糧生産の支援。
・食品と栄養、調理方法、作物の栽培、さらには食事の準備やともに食卓を囲むことの社会的価値に関する知識を特に学校教育を通して育成し、健康的な暮らしのための食文化を強化すること。
・食品、食事、健康に関する情報を、特に子供向けに活用できるようにすること。
・科学的な根拠に基づいた食品成分表と食生活指針を利用し、食品と栄養に関する政策を推進すること。
  (次号につづく)


◆◆◆ ⑩ ◆◆◆

『意識に基づくエネルギー療法 “ BodyTalk ”』

…… 今 田  泰 (IJBA東日本支部支部長)……


今回は動物のためのボディートークである「アニマルボディートーク」について解説する。
ボディートークは人間だけでなく、動物にも応用して実践することができる。動物は私たちの生活に欠かせない存在になっている。そんな私たちのパートナーに対してボディートークを実践する方法を学ぶのが、このアニマルボディートークである。ボディートークシステムのボディートーク基礎(旧モジュール1&2)および意識の原理(旧モジュール3)で学んだテクニックを用い、主に犬と猫を対象とすることになるが、犬、猫にとどまらず、どんな動物に対しても簡単に応用することができる。

・アニマルボディートークの内容

ここでは動物(主に犬と猫)に対してボディートークをどう適応させるかはもちろんであるが、それ以前に種の基本的な分類や特性、基礎解剖学・生理学、カーミングシグナルなどの行動学、集団意識の基礎知識を踏まえることになる。また動物を扱う上での環境設定や安全な扱い方なども重要な要素であり、これらを実習を交えながら学んでいく。
実際の動物への施術は代理人(主に飼い主や世話をしている人)を使って、近距離から行うことになる。近距離とは施術の間、動物は見えるところにいて筋力テストやタップは代理人に行うという意味である。ボディートークがエネルギー療法であることがこれを可能にしており、施術が有効かどうかは施術者のフォーカスの強さにかかっている。十分にフォーカスが高いレベルの施術であれば、近距離でも直接的に施術しているのと同じくらいの効果が期待できる。
またこれは動物にとっても利点がある。動物は施術によって起こる変化を統合するために体を動かしたがるため、その自由を妨げないで済むのである。

・アニマルボディートークの利点

アニマルボディートークを使えば、動物の健康にあらゆるレベル(肉体、心、感情、行動、エネルギー、精神)で焦点を当てることができる。また施術を通じて飼い主と動物との間のつながりが再確認できるだけでなく、いかに動物たちが飼い主や家族のことを考えているかを知ることにもなる。動物に働きかけることが実は自分の人間的成長の機会にもなっているのである。

・アニマルボディートークの応用

アニマルボディートークは獣医師の治療の代替ではなく、薬物治療、手術、寄生虫のコントロールやワクチン接種などの代替でもない。むしろ従来の方法では解消することができなかった感情や行動の問題のような状態に焦点を当てることによって、動物の健康のための他の方法を補う、補完的な手法として使うことができるのである。(次号へつづく)


《 連載5 》

伝統医学をシルクロードに求めて

       池上正治(作家・翻訳家)


櫓に隠して密輸入した朝鮮人参(つづき)

江戸時代の中期に入ると、朝鮮人参の価格は高騰し、品質は低下した。その主な原因は、生産地の朝鮮自体で減産をきたしていたことである。元禄の初期には、ほとんど輸入されなくなってしまった。このため対馬藩(宗氏)を通じて朝鮮と交渉し、1721年(享保6年)に朝鮮人参の生根3本を1728年(同13年)には朝鮮人参の種10粒を取り寄せて、人工栽培に成功した。これが御種人参(おたねにんじん)である。現在、朝鮮(開城、錦山)、中国(吉林省)、ロシア、日本(長野、福島)などで朝鮮人参が栽培されている。

珍重され、かつ忌諱されるマンドラゴラ

地中海一帯、とくにギリシャや小アジアにマンドラゴラ(英語ではMandrake)という植物がある。マンドラゴラは無茎の宿根草で、葉は大きく卵形をしている。春に紫色の花をつける。その地下茎は多肉肥厚で、2‐3本に分岐することがあり、人形に似る。このマンドラゴラにまつわる伝説は多い。一方ではチャーム剤として珍重され、もう一方では死刑囚の種子であると忌諱されてきた。
旧約聖書『創世記』の30章に言う。
「十四、茲(ここ)に麦刈の日にルベン出(いで)ゆきて野にて恋茄(こいなす)を獲(え)これを母レアの許にもちきたりければラケル、レアにいひけるは請ふ我に汝の恋茄をあたへよ。十五、レア彼にいひけるは汝のわが夫を奪(とり)しは微(ちいさ)き事ならんや然るに汝またわが子の恋茄をも奪(とら)んとするやラケルいふ然(され)ば汝の子の恋茄のために夫是夜(おっとこのよ)汝と寝(いぬ)べし。十六、晩(くれ)におよびてヤコブ野より来りければレア之をいでむかへて言けるは我誠にわが子の恋茄をもて汝を雇ひたれば汝我の所にいらざるべからず。ヤコブ即ち其夜彼といねたり。十七、神レアに聴(きき)たまひければ彼妊(はら)みて第五の子をヤコブに(うめ」り」
ここに登場する「恋茄」がマンドラゴラのことである。登場人物の関係は、夫ヤコブ、妻レア、レアの連子ルベン、レアの妹ラケルである。
古代ギリシャの吟遊詩人ホメロスの作ったといわれる長篇叙事詩「オデッセウス」のなかでも、魔女キルケはチャーム剤としてマンドラゴラを常用している。(次号につづく)


<<連載>>

カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト <第23話>

       保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


原因をいかに分析していくか(つづき)

カイロプラクティックの治療において最初に強調されやすいのは、派手にみえるテクニックや矯正時に生じる矯正音(キャビテーション)ではなかろうか。筆者は学生のとき、その手際のよい熟練されたテクニックを見てすばらしい技術だと感じたが、自分がそのようなテクニックを実際に修得してみると、それほどむずかしい技術ではないことがわかる。たとえその技術で患者に技術的好印象を与えても、肝心な愁訴の原因が改善されていなければ、本質的な症状が改善されないことが見えてくる。
大切なのは、どのように矯正するかよりも、原因をいかに分析できるかということである。臨床現場の患者の症状改善反応度をみれば、矯正音が鳴るか鳴らないかは、ほとんど意味がないことがわかる。

アジャストメントの効果を検証する

アジャストメントという生体外からの物理刺激の本質は何か? どのようなアジャストメントで効果があるかを検証するためには、直後に症状が改善されているかどうかの評価が重要になる。筆者のファミリーカイロプラクティックでは、施術後すぐに症状の改善度の評価を行い、その施術法の末端刺激となるアジャストメントが効果的なものなのかどうかの検証を毎回実施している。患者が症状を訴えている場合、その改善度の幅は様々だが、ほとんど何も改善しないという患者に遭遇することはいまでは珍しい。臨床経験の積み重ねによって、効果あるアジャストメントとは何か、なぜ効果があるのかないのかも見えてくる。
カイロプラクティックでいうところのアジャストメントとは、生体外からの物理的刺激である。手による直接的なテクニックであれ、アクティベータ器のような道具で補助するテクニックであれ、その本質は「振動」であるといえよう。
特定の周波数に共鳴することのできる「振動」刺激であれば、生体内ではイオンの変化や波動などの変化、そして神経系の電気的変化などにおけるエネルギー変換が生じる。それにより、筋骨格系のバランスが改善され、結果的に姿勢などの構造的位置変化も生じ、様々な症状が改善される。それを理解することで、ほかの補完的医療などがなぜ効果があるのかの共通点が見えてくる。(次号につづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 -世界発信より- 2013. 1- 2

   長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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世界の腰痛診療ガイドラインがエビデンスに基づき患者教育を推奨すると発表した論文を中心に、各国の医療情報を日々集約し開発を進めている「TMSジャパン」。代表の長谷川淳史氏の厚意により、時々刻々と遷移する腰痛治療に関する世界の情報をお届けする。ソースの詳細は英文。SNSはもちろんブログやサイトに、引用先のURLごとコピー&ペーストして可。

【最新の腰痛に関する情報一覧】

■ケベック特別調査委員会は、WAD(むち打ち関連障害:whiplash-associated disorders)において以下の3つの検査について勧告を出している。 http://1.usa.gov/LYNegq

■【単純X線撮影】1)グレード2および3の患者は、頚椎の単純X線撮影が必要で前後像・側面像・開口像を撮影すべきである。2)また7個の全頚椎とC7-T1の椎間板スペースが撮影されていなければならない。 http://1.usa.gov/LYNegq

■【画像検査】1)グレード1および2の患者に断層撮影・CTスキャン・MRI・ミエログラフィー・椎間板造影・シンチグラフィー・血管造影の適応はない。2)画像検査はグレード3の患者に専門家か外科医の判断で実施されるべき。 http://1.usa.gov/LYNegq

■【特別な検査】1)SSEP(誘発電位)はグレード3の患者に専門家か外科医の判断で実施されるべき。2)EMG(筋電図)や神経ブロックはグレード2および3の患者に専門家か外科医の判断で実施されるべき。 http://1.usa.gov/LYNegq

■同じくケベック特別調査委員会はWAD(むち打ち関連障害)治療法として次の15について勧告を出している。すなわち「頚椎カラー」「安静」「頚椎枕」「マニピュレーション」 http://1.usa.gov/LYNegq    「モビリゼーション」「運動」「姿勢のアドバイス」「スプレー&ストレッチ」「牽引」「物理療法」「外科手術」「ステロイド注射」「無菌水注射」「薬物療法」「その他の治療」である。 http://1.usa.gov/LYNegq うち、6つを以下に紹介。

■【頚椎カラー】頚椎カラーの有効性はRCTで証明されていないため、グレード1の患者に頚椎カラーを処方してはならない。たとえグレード2や3の患者に処方したとしても、回復が遅れるので72時間(3日間)を越えてはならない。 http://1.usa.gov/LYNegq

■【頚椎枕】頚椎枕(サービカルピロー)の有効性はRCTで証明されていないため、WAD(むち打ち関連障害)に頚椎枕を処方してはならない。
http://1.usa.gov/LYNegq

■【マニピュレーション】長期間にわたる治療は正当化されないが、短期間ならWADの治療に脊椎マニピュレーションを用いることができる。ただしこのテクニックを行なうのは有資格者に制限すべきである。 http://1.usa.gov/LYNegq

■【モビリゼーション】限られたエビデンスからモビリゼーション(瞬間的に外力を加えることなく可動制限がある関節の可動域を無理なく徐々に広げて行く他動的ストレッチ)はWAD(むち打ち関連障害)の治療として用いることができる。 http://1.usa.gov/LYNegq

■【運動】限られたエビデンスからROM(関節可動域)運動はただちに実行されるべきである。痛みが激しい時は休み休み行なう必要があり、症状の悪化がみられた場合は臨床的判断が重要である。 http://1.usa.gov/LYNegq

■【姿勢のアドバイス】限られたエビデンスからWADにおける姿勢に関するアドバイスは他の活動的な治療法の併用療法として処方することができる。ただし具体的にどのようなアドバイスが有効かについては不明。 http://1.usa.gov/LYNegq


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (23)

       根本 良一(療動研究所主宰)


◆コラム◆ 〜内腿部の筋群〜

◎内腿部から首へ (つづき)
1)腰痛については、大腰筋の操作をし、腹部の筋の操作をしてすぐ解消できた。
2)次に首の痛みは内腿部からきているのかと思い触診すると、膝関節屈筋側が硬い。
3)そこで気がついた。これは内転筋だから、外転させてみよう。膝頭へ抵抗をかけてみる。次に外上側から手をかけると、膝が外、上へ動き、内転筋下部が弛緩する。
これで首が上へ向けるようになって大変よろこばれた。このあと夏休みに、ノートを持って操体法の勉強に来たほどである。

この一件以来、筆者はしばらく「膝の動き」で首を、という操作をしていたが、内腿部下側を触診しながら、足先から動かしたら?と足先を外転して背屈させてみたら、さらに効果があることがわかった。
その後もこれを続けていると、これは膝関節の屈筋でもあることから、膝関節の伸展をくわえるとさらに良いということがわかり、受者の操作足を操者の腿へ載せて、膝を転がし、「足首の外転+背屈+膝伸展」という構成になった。
この動きに「補助動作」として『上体を捻る(肩をまわす)』動きに加えて、現在の内腿部下側から頸背部へ連動させる「連動操体法」が完成したのである。この操体法は、寝違い、ムチ打ち症など、頸腕障害に役立っている。

◎内腿部から仙腸関節部〜下腿部へ
次は仙腸関節と下腿への関連を記してみたい。内腿部を触診してみると、内腿下部に対して「上側:膝関節伸筋側」にもいろいろな変化がある。この部位は、下側と拮抗することが多く、操作も逆になってくるので、前例と比較して思考の展開をすればよい。
1)足先の動き:足首を底屈して外転する(足指で踏ん張り、踵を前へ出す)。この順序を逆にすると、外転が不十分になる。足が攣(つ)れることのないよう、アキレス腱端を押さえて筋の張力をコントロールする。
2)膝関節の伸筋側だから、足先を操者(自身)の膝に載せて、膝を転がして屈曲動作を誘導する。
3)さらに、補助動作として、肩を動く足のほうへまわす。
このような総合した動きで、内腿部の筋に変化が生じる。そしてこの部位の緊張が解消すると、
4)仙腸関節部の梨状筋の緊張がなくなり、坐骨神経痛が好転する。
5)さらに坐骨神経から派生する脛骨神経の領域である腓腹部の緊張が解消されて、足の攣れが起こりにくくなるほか、踵〜足底部の痛みも解消される。
(次号につづく)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■仮設生活11万人—長期化で心身負担


東日本大震災による避難者の仮設住宅の入居者は11万1504人(2月4日現在、厚生労働省まとめ)。宮城県が4万9775人と最も多く、福島県3万2188人、岩手県2万9120人。経済的事情から住宅の再建が困難だったり、移転先の高台造成が遅れていたりするなどの理由で仮設住まいを続けている人も多い。
二重窓による防寒対策やバリアフリー設計が施されているとはいえ、長期間の狭小なプレハブ生活で入居者は心身ともに疲労している。宮城大が2012年7〜8月に宮城県東松島市の仮設住宅に住む約1500人を対象に行った調査では58%が不眠を訴えた。坂本真一郎教授(医療福祉)は「ストレスや運動不足が原因」と指摘する。(共同通信社  2/15)


NEWS ■睡眠不足が続くと情緒不安定に=脳機能低下、うつ病なども


1日に4時間半程度しか眠れない睡眠不足が5日間続くと、うつ病や統合失調症などの患者に似た脳機能の一部低下が生じ、情緒不安定になることが分かった。国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長や元村祐貴研究員らが健康な20代半ばの男性14人で実験し、米科学誌プロス・ワンに発表した。
三島部長は「睡眠不足は蓄積されてひどくなるが、眠気や倦怠感に比べて抑うつや不安などの情動的な不安定は自分で気づきにくい。週末の『寝だめ』では回復しきれない部分があると考えられ、注意が必要だ」と話している。
実験は1日約8時間睡眠を、週の平日分の5日間続けた後と、約4時間半を5日間続けた後で比較。モニターに男女の恐怖の表情や幸せな表情などの画像を示し、機能的磁気共鳴画像装置(MRI)で脳の血流の変化を調べた。その結果、睡眠不足の場合は恐怖の表情を見たときに、情動と記憶を担う「扁桃体」と呼ばれる脳の部位が過剰に活動し、「腹側前帯状皮質」による抑制が弱くなることが分かった。扁桃体の過剰な活動を抑えられない状態は、うつ病などの患者と似ていた。
扁桃体と腹側前帯状皮質のペアは脳の左右にあるが、特に左側で睡眠不足の影響が大きかった。左右の違いの理由は分からないという。(時事通信社 2/14)


NEWS ■混合診療の適用拡大、規制改革会議が検討


政府の規制改革会議(議長=岡素之・住友商事相談役)が成長戦略の具体策として検討する規制改革の「論点」全68項目が14日、明らかになった。
現在は「先進医療」の一部に限って認められている保険診療と保険外診療の併用(混合診療)の範囲拡大や、エネルギー確保のため、石炭火力発電所の新設要件の緩和などを検討テーマに掲げた。15日の第2回会合で事務局が提示する。同会議は、政府が6月をめどにまとめる新成長戦略への反映を目指し、早急に結論を得る方針だ。「論点」は、〈1〉健康・医療(12項目)、〈2〉エネルギー・環境(11項目)、〈3〉雇用(17項目)、〈4〉創業・産業の新陳代謝等(28項目)で構成。
混合診療の拡大は、保険適用との併用が認められている一部の「先進医療」の対象を拡大することで、患者の負担軽減を目指すものだ。先進的な医療技術の発展にもつながるとされている。(読売新聞 2/15)


NEWS ■誤ったマスク使用7割


マスクを日常的に使っている人の大半が、マスク着用がインフルエンザなどの感染症予防に有効だと考えている半面、7割の人は正しく使用できていないことが、製薬企業エーザイのインターネット調査で分かった。昨年11月、12歳以上の男女計310人に聞いた。
マスクが感染症予防に有効と答えた人は97%。しかし「鼻の部分を押さえ隙間がないように装着」「ウイルスが付着するフィルター部分は触らない」「マスクを外した後は手を洗う」などの正しい使い方ができている人は27%にとどまった。
また、使い捨てマスクは1日1枚の使用が目安なのに、2日以上同じマスクを使い続ける人が17%おり、特に50歳以上の男性では45%に上った(共同通信社  2/12)


NEWS ■がん患者から歯科医師への橋渡しが課題に


国立がん研究センター(国がん)がん対策情報センターは2月12日、医科歯科連携推進専門家パネル委員会を開催し、来年度から全国で実施する「がん患者の医科歯科連携事業」で、歯科医師向け講習会で使用するテキストの作成の詰めと、そのテキストの有効な利用法についての議論を行った。この中で複数の委員が、がん患者を、講習会を修了した歯科医師にどのように橋渡ししていくかが課題になるとの意見を出した。
国がんと日歯がこれまで行ってきた医科歯科連携事業では、▽手術前患者を対象とした口腔ケア▽がん化学療法治療前・頭頸部放射線患者の治療前、治療後の口腔ケア▽がん終末期患者の歯科治療・口腔ケアなどを修得するための講習会を開催し、その講習会を受講した歯科医師に修了書を発行。その修了者名簿をがん診療連携拠点病院(拠点病院)などに報告することで、がん治療を行った医師などが、がん患者向け口腔ケアの知識を持った歯科医師を患者に紹介するなどして、医科歯科連携につなげてきた。
来年度以降、この医科歯科連携事業では、同パネルが作成したテキストを使用して全国で講習会が開催されることになるが、地域の拠点病院などが講習会の修了者を把握し、がん患者を歯科医師に適切に誘導する仕組みづくりが求められている。同パネルの取りまとめ役を務める国がん中央病院の上野尚雄・歯科医長は、「医科歯科連携が進めば近い将来、歯科医師が受診者の舌がんなどの初期症状を見極め、早期発見などで重要な役割を果たすことも考えられる」と話している。(医療介護CBニュース 2/12)


NEWS ■診断書の発行料、病院間に最大10倍の格差


医療機関が独自の様式で患者に発行する「医療文書」のうち、簡単な診断書の発行料には病院や地域によって大きなばらつきがあることが、民間シンクタンク「医療経営情報研究所」の調べで分かった。簡単な診断書の発行料は関東や東北など東日本で高い傾向で、病院の間には最大で10倍以上の格差があった。
調査は昨年10月、同研究所の会員の中から任意抽出した1510病院を対象に実施し、421病院から有効回答を得た。
医療文書を作成・発行する際の料金は何を参考に決めているかを聞いた結果は、「同じ地域の病院」が71.9%と、全体の7割を超えた。一方、診断書などの「簡単なもの」を発行する際の料金を医療機関ごとに見ると、最高の1万1050円に対し、最低は1000円。全国平均は2361円で、2009年に実施した前回調査の2332円より高かった。
また、8ブロック(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州)ごとの平均額は関東の2962円が最高で、最低だった九州の1961円との間に約1000円の格差があった。関東のほか、北海道(2396円)と東北(2567円)で全国平均を上回った。
調査対象の医療文書は、医療機関が患者に発行する診断書や証明書、意見書など。これらの文書は種類が多様で、例えば診断書には、独自様式の「簡単なもの」以外に、検査数値や治療内容など詳細な内容を書き込む「複雑なもの」や、医療機関ではなく生命保険会社などの所定の様式で発行するものもある。
調査結果によると、保険会社の所定様式による発行料の全国平均は4841円で、前回と変わらなかった。ブロックごとの平均額は、最高が関東の5311円で、最低は近畿の4359円。医療機関ごとの料金は最高1万500円、最低1050円だった。(医療介護CBニュース 2/5)


NEWS ■入浴中の急死1万7千人—65歳以上


高齢者が自宅などで入浴中に意識障害を起こしておぼれたり、脳卒中や心筋梗塞を発症したりして急死するとされる「入浴関連死」が、全国で年間約1万7千人に上るとの推計を東京都健康長寿医療センター研究所が2日までにまとめた。
入浴中の急死は冬場に多発。温度差による血圧の急激な変化が原因と指摘されるが、実態はよく分かっていない。熱中症も原因の一つと言われており、厚生労働省は、具体的な発症要因を探り防止策につなげようと実態把握を進める方針だ。
同研究所は昨年10月、北海道や東北、関東、中部地方の23都道県にある440以上の消防本部全てを対象に、入浴中に心肺停止状態となって救急搬送された65歳以上の高齢者に関する調査票を郵送。378本部から回答があり、うち365本部で該当事例があった。
それによると、2011年中に、365本部で計4252人が搬送されていたことが判明。年代別では80歳以上が2438人と6割近くを占め、75〜79歳の921人が続いた。同研究所は、救命につながったケースはごく一部に限られるとみて、年齢分布を考慮するなどし、同様のケースによる全国の死者数を推計。一部の消防本部からは発見時に既に死亡していた「不搬送」事例も報告があり、これらも推計に反映させた。(共同通信社  2/4)


NEWS ■“総合診療医”、研修体制が課題に


総合診療医や家庭医などと呼ばれるジェネラリストの育成を目的とする一般社団法人Medical Studio主催のイベントが2月3日、東京都内で開かれ、ジェネラリストを育てる必要性や、増やすための課題が討論された。患者満足度の向上や医療費の効率化などのメリットが指摘された一方で、研修施設や指導医など、その研修体制が課題に挙がった。
討論では、鉄蕉会亀田ファミリークリニック館山の岡田唯男院長と、東京財団の三原岳研究員の2人が登壇。家庭医の立場から岡田氏が、社会保障政策研究者の立場から三原氏が、考えをそれぞれ語った。
岡田氏は、家庭医を育てるメリットを、▽患者の医療アクセスの改善、▽予防医療の推進、▽専門医への不必要・不適切な受診を減らす―などと整理。家庭医が多い地域では死亡率が下がり、患者満足度が高まるのに加え、医療費が低く抑えられるとのデータが海外の論文で数多く示されていると説明し、その必要性を強調した。増やすために必要なことには、患者に対する分かりやすさ、医学生への啓発、インセンティブの強化などを挙げた。
一方、三原氏は、来年度予算案で社会保障費が29兆円に上り、歳出の3分の1を占めることなどから、社会保障制度の持続性への懸念を表明。ジェネラリストに期待する役割として、▽疾患のリスクを丁寧に説明することで患者の不安が解消され、無駄な救急搬送が減る、▽高齢化で増加が予想される認知症患者へのケアで、多職種連携の中心的な役割を担える―などを挙げた上で、「予算の制約がある中で患者満足度を上げるには、プライマリ・ケアとその担い手となるジェネラリストが重要だ」と強調した。(医療介護CBニュース 2/4)


NEWS ■寝酒は結局良薬に非ず


アルコールを飲むと寝つきがよく、最初はよく眠れるかもしれないが、後に睡眠が妨げられる――英ロンドン睡眠センターのIrshaad Ebrahim氏らの研究。Ebrahim氏らは、アルコールが睡眠に及ぼす影響に関する既知の科学的研究すべてをレビュー。同氏らは今回の研究を通じて、飲酒は睡眠を改善する印象を与えるに過ぎず、「睡眠補助薬」として使用すべきでないことを人々に理解してほしいとしている。
レビューの結果、アルコールを飲むと、入眠までの時間は短縮され、最初の眠りは深まるが、急速眼球運動(レム)睡眠は減少する。レム睡眠の減少は、集中力、運動スキル、記憶にとって有害となる可能性がある。
Ebrahim氏は、「1つの仮説は、アルコールはうつ病や不安症に使用される薬剤と同様に作用するということである。うつ病患者を対象とした研究から、未治療の患者で特に夜間早期にレム睡眠が過剰になり、抗うつ薬がレム睡眠を抑制することがわかっている。アルコールは抗うつ薬のように作用し、特に夜間の最初にレム睡眠を減らす。レム睡眠に対するアルコールの影響から、飲酒に伴う気分の高揚や不安軽減の説明がつく」と述べている。「Alcoholism: Clinical & Experimental Research 1/22」


NEWS ■プライマリ・ケアにおける脊椎MRI検査、その意義に疑問符


プライマリ・ケアで脊椎MRI検査の利用が増加しているが、MRI所見とその後の診療との関連についてはほとんど知られていない。カナダ・マックマスター大学のJohn J. You氏らは、プライマリ・ケアで脊椎MRI 検査を受けた患者のうち半数近くが手術評価のため整形外科または神経外科に紹介されるが、その大半は手術を受けていないことを、後ろ向き研究により明らかにした。「プライマリ・ケアにおけるMRI検査はその後の手術の要否を判別できておらず、脊椎の愁訴を有する患者を評価する代替法を検討すべきであることが示唆される」(Spine誌 1/1)
本研究の目的は、プライマリ・ケア医の指示による腰仙椎または頸椎MRI検査後の診療について調査することである。カナダ・オンタリオ州において脊椎MRI検査を受けた外来患者の医療記録と保険データベースを分析した。主な結果は以下のとおり。
・プライマリ・ケア医の指示で腰仙椎のMRI検査を受けた647例のうち、整形外科医もしくは神経外科医の診察を受けた患者は288例(44.5%)で、その後3年以内に手術を受けた患者は42例(6.5%)であった。
・同様に頸椎のMRI検査を受けた373例のうち、164例(44.0%)は整形外科医もしくは神経外科医の診察を受けたが、3年以内に手術を受けた患者はいなかった。
・腰仙椎のMRI検査で重度の椎間板ヘルニアまたは脊柱管狭窄症を認めた患者は、その後手術を受ける可能性が高かった。
・MRI検査で異常所見が認められた患者の多くは、手術を受けていなかった。一方で、MRI検査で異常所見がなければ、その後の手術の可能性が有意に低いということも示されなかった。(You JJ et al. Spine (Phila Pa 1976). 2013 Jan 1;38(1):51-59.)


NEWS ■禁煙、まだ間に合う? 40歳までなら余命正常化


【ワシントン共同】米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」電子版は24日、40歳前後までに禁煙に成功した人は、喫煙により縮んだ平均余命を、非喫煙者並みに取り戻せるとする米国やカナダの専門家による研究結果を掲載した。
喫煙者の平均余命は、喫煙したことがない人に比べて10年以上短くなるが、34歳以下で禁煙に成功した人は喫煙を続ける人より平均余命が10年長くなり、まったくたばこを吸ったことがない人とほとんど同じ生存確率を示したという。
禁煙に成功した年齢が35〜44歳の場合でも喫煙を続ける人より平均余命が9年長くなる。45〜54歳の場合でも6年、55〜64歳でも4年、平均余命を取り戻せるという。しかし、肺がんなどのリスクは禁煙後も長期間続くことになるため、分析に当たった専門家は米紙に「40歳までなら吸っても大丈夫」などと安心するべきではないとくぎを刺している。
調査は1997〜2004年に保健関係の面談調査を受けた米国の25歳以上の男女約20万人の喫煙歴や死因を分析した。(共同通信社  1/25)


■次号のメールマガジンは2013年3月15日ごろです。お楽しみに。


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