エンタプライズ発信〜メールマガジン【№22】2013. 1

14日に降り積もった雪は東京の道路を混乱させました。前日の親族の結婚式のあと宿泊したホテルから車で帰路についたころはまだ緩やかな雪だったのが、やがてボタン雪に。降るわ降るわで、片側2車線の国道246号の走行車線にはスリップしたまま停止した車が4台、5台とふえていく。接触事故も発生し大渋滞です。編集子もノーマルタイヤでしたから、轍(わだち)をたよりにそろりそろりと動かしながら、自宅へ着いたのは出発から9時間後でした。通常は1時間半ほどの行程なので、とんでもない労苦になりました。遠方からの参列者も、飛行機が休航に陥り、最悪の人は空港のロビーで仮泊。近郊のホテルはあっという間に埋まったそうです。都会の交通網は雪害に弱いことが指摘されていますが、首都高速をはじめ、都内の幹線道路は3.11大震災のときもそうでしたが、想定外の自然災害にはとてもインフラが追いついていきません。直下型の大地震が喧伝される中、なにをかいわんやです。余談ながら、この大雪の14日(祝日)にも同じホテルでは披露宴が何件か入っていました。自分たちも大変な思いをしましたが、一生に一度の華燭の典が出席者もまばらな宴になったかと想像すると複雑な気持ちでいっぱいです。

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★

【1】WHO 『健康の社会的決定要因 確かな事実の探求』 第2版
【2】意識に基づくエネルギー療法 “ BodyTalk ”
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療
【6】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【7】N・E・W・S
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<<<連 載 ⑫ >>>
【REVIEW】

WHO 『健康の社会的決定要因 確かな事実の探求』第2版

<訳:WHO健康都市研究協力センター・日本健康都市学会・健康都市推進会議>


8. 薬物依存

アルコール・薬物・たばこを習慣とし、健康を害してしまうのは個人の責任ではあるものの、常用に至るにはさまざまな社会的環境も影響している。

【現 状】
薬物乱用は、社会的挫折の結果として現れ、さらに健康面での不平等を一層顕著にさせる要因となる。薬物は、一時的には現在の逆境やストレスを忘れさせてくれるが、事態を悪化させるだけである。
アルコール依存症、不法薬物の使用や喫煙は、すべて社会的・経済的に不利な状況と密接に関わっている。例えば、中央および東ヨーロッパの過渡期にある社会では、この10年間は社会的激動の時期であり、その結果、アルコールと関係した死(事故、暴力、中毒、傷害、自殺)が急増した。他の国においても、アルコール依存と暴力が関係する死亡は切り離せない関係にある。
なにげないことが、思いがけない結末を迎えることがある。人々は過酷な経済的現実や社会的状況を忘れるためにアルコールの助けを借りる。ところが、アルコール依存症は社会の流動性を鈍化させる。皮肉なことに、人々はほんの一時現実から逃避したいという目的を離れ、自分を依存へと追い込んだ要因を、アルコールによってますます手に負えないものにしていくのである。
たばこについても同じことが言える。貧しい住宅事情、低賃金、孤立した親、失業、ホームレスといった社会的喪失と喫煙率の高さおよび禁煙率の低さは表裏一体である。喫煙は貧しい人々にとって大きな経済的負担であり、病気や早死の重大な原因となる。しかもニコチンではストレスからの真の解放は得られないし、気力を向上させることはできないのである。
飲酒、喫煙、不法薬物の使用は、主要な多国籍企業や犯罪組織による精力的な売買や宣伝により助長されており、これらは若い世代の使用を食い止めようとする政策に大きな障害となっている。特にたばこについては、若い世代がひそかに入手してしまうのを見逃してしまうことが、価格調整を講ずることでたばこの消費を抑えようとする政府の対策の妨げとなっている。

【提 言】
・合法、違法のいずれにしても、薬物依存の問題に取り組むにあたっては、すでに依存に陥った人々を救うことだけでなく、問題の根ざす社会的喪失の仕組みに対策を講ずることが必要である。
・価格調整をしたり、ライセンス制にすることで政策的に流通を規制したり、害にならない使用法を教えたり、若い世代の乱用を防ぐための健康教育を広めたり、依存患者に効果的な治療をすることが求められる。
・薬物乱用を生じさせる社会的要因がそのままの状態では、これらのどの対策も意味を持たない。すべての責任を個人に負わせるのは妥当ではない。それは犠牲者となった者を責めることであって、薬物乱用を生み出す社会の複雑にからんだ要因に立ち向かうことにはならない。したがって、効果的な薬物乱用対策は、広範な社会的・経済的施策に裏打ちされていなければならない。
(次号につづく)


◆◆◆ ⑨ ◆◆◆

『意識に基づくエネルギー療法 “ BodyTalk ” 』

…… 今 田    泰 (IJBA東日本支部 支部長)……


これまでの5回にわたってBodyTalkの包括性について述べてきた。今回はBodyTalkの導入・入門編であるBodyTalk Accessのプログラムについて解説したい。

<< BodyTalkのエッセンスを抽出した簡易版>>

BodyTalkはこれまで述べてきたようにホリスティックな手法である。ただし習得には理論とテクニックの両面にわたって、集中的な講義と訓練を受けることが必要になる。したがってBodyTalkのエッセンスを抽出し、もっと短期間で子供でも習得でき、セルフケアとしても利用可能なプログラムを作ることとなり2005年に開発されたのがBodyTalk Accessである。

・BodyTalk Accessの内容

BodyTalk AccessはBodyTalkの数多くの技法の中から習得しやすく、かつ健康全般に効果が期待できる5つのテクニックを取り上げ、わずか10分でできる内容としてパッケージ化したものである。
1つ目のテクニック「大脳皮質」は、5つのテクニックの中で最も重要なものである。心身の状態は何らかのレベルで脳に反映されており、したがって脳にアプローチすることで心身全体のより良いバランスが得られ、体の痛みを取り去るだけでなく、心理的なストレス対策としての効果も期待できる。
2つ目は「切り換え」である。これは電気のブレーカーに相当するものがストレスへの安全装置として人間にもあるという考え方に基づく。このテクニックはストレスによりダウンしているスイッチを入れ直すことと、ブレーカーが切れるレベルが正常値に安定していない場合、本来の正常値に戻す役割を持つ。
3つ目は「水和」と呼ぶ、細胞レベルでの水のバランスをとるテクニックである。浮腫や乾燥、リンパの詰まりといった問題だけでなく、肩こりや関節痛の解消につながることもある。言うまでもなく、水は体の重要な構成要素であり、このバランスをとることで全般的な健康レベルの向上が期待できる。
4つ目の「体化学」はウィルスやバクテリア、寄生虫、真菌類、毒素のような、体に侵入し有害になりうる因子に焦点を当てる。また、アレルギーや不耐症といった形での、物質に対する体の過剰反応にも適用される。
5つ目は「相互部位」である。体には相互関係になっている部位があり、それぞれがお互いの情報を共有している。この連携を取り戻し、姿勢や筋骨格系、ひいては経絡のバランスを取り戻す目的を持つ。

最後に「大脳皮質」と「相互部位」の組み合わせで行う「ファーストエイド」がある。これは怪我などの緊急事態に非常に有用なテクニックで、外傷の早期治癒促進のみならず、ぎっくり腰、寝違えなどの急性痛に劇的な効果を発揮することがあり、そのほか慢性痛の緩和にも役に立つ。筆者が体験したものだけでも枚挙にいとまがない。

・BodyTalk Accessの利点

筆者が強調したいのは、これらすべてのテクニックにおいて道具が不要であり、他の手法との親和性も高いことである。治療家の皆様にもすぐにプラスαのテクニックとして導入していただけることであろう。
BodyTalk Accessは東京では毎月、そのほか北海道や大阪をはじめ、地方都市でも開催されている1日完結のクラスであり、本稿の読者には受講を強くお勧めしたい。
(次号へつづく)


《 連載4 》

伝統医学をシルクロードに求めて

       池上正治(作家・翻訳家)


日本人は朝鮮人参が好き

751年(天平勝宝3)から8年の歳月をかけて建立された正倉院の薬物の中にも人参がある。光明皇后が薬物を献納したときの願文によれば、人参は324斤2両とあり、それ以外の薬物と比べると2ケタほど多い。すでに奈良時代前期に薬材として用いられていた人参は、朝鮮あるいは渤海国からの使節の贈り物であり、遣唐使や留学生たちが唐から持ち帰ったものだという。
古来、朝鮮では銀が珍宝された。銀器や銀細工、銀指輪などの銀製品が、ほかの国々での金製品のように大切にされた。中国と同じく、朝鮮は銀本位の国であった。
室町幕府を訪れた朝鮮の使節団も、つねに多くの人参を携えてきた。この「国交贈品」に対し、日本からの「国交回礼品」の主なものは銀であった。当時の日本には豊富な銀があり、銀閣寺なども建立されたほどだった。
江戸時代、新将軍が立つたびに朝鮮から使節が訪れた。対馬〜瀬戸内〜京都〜江戸のあいだを、5-8か月かけて往復したこの「人参道中」は、街道の人々の心に朝鮮人参を強く印象づけた。
「朝鮮通信使の一行は正副使以下400人にのぼる豪勢さで、街道すじの賑わいといい警護といい、朝廷から幕府におもむく勅使の場合よりも大げさだった、という。……朝鮮通信使の将軍への贈り物は、つねに人参が筆頭を占めていた。さながら人参道中でもある。通信使の行装が豪勢であればあるほど、幕府の饗応が華麗であればあるほど、それはとりもなおさず、彼らの持ってくる特効薬にんじんの宣伝になるのであった。元禄時代に入ると、日本中をあげて、完全に人参のとりこになった。にんじんを売る店が、買い手に品切れを伝えると、どうしても売ってくれないのであればこの店頭で自殺してやるぞと、やいばをのどに突きたてて、ようやく売ってもらったというような事件までおこってくるのである」(日本人参史)

櫓に隠して密輸入した朝鮮人参

需要と供給のバランスが崩れれば、高値をよぶのは経済法則である。幕府の鎖国政策にもかかわらず、朝鮮人参の密貿易は跡をたたなかった。民俗学者の宮本常一さんは次のように語っている。
「当時、朝鮮との密貿易の対象となったものは何かというと、朝鮮人参なんです。朝鮮人参は、ほんのわずかな品物でもすごく高く売れる。密貿易にはまことに都合のよいものだった。古文書を読むと、密貿易が発覚して捕まった人たちの記録が、もう無数に出てくるんです。どうやって朝鮮人参を日本に運んだかというと、たとえば船の櫓の中に隠す。櫓には水切りの部分と腕木の部分とがありますが、その二つが合わさるところに穴をあけて、朝鮮人参を隠しておく。……そのうちに幕府の鎖国政策がさらに進んで、密貿易の取締りがきびしくなってくる。対馬でも、密貿易をやる連中はけしからんということになり、実はかたっぱしから打首や、はりつけにしたんです。そのはりつけになった人たちの塚が今でも残っている。処刑場ではりつけにして、首を切り、切った首は厳原の城下に持っていき、さらし首にする。……はりつけにする十字架、あれをべら棒というんだそうです。ベラボーメという言葉はそこから出た」。(次号につづく)


<<連載>>

カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト <第22話>

       保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


機械論的医療と生命論的医療

医療を大きく分類するとすれば、機械論的医療と生命論的医療に分けられるだろう。機械論的医療とは、デカルトやニュートンの思想を受け継いだ生命医学モデルに立脚している。すなわち「身体は機械であり、病気はその機械が故障した結果であり、医者の職務は壊れた機械の修繕であるという考え方」である。
一方、生命論的医療とは、いわゆる補完代替医療といわれている自然治癒力を引き出すための療法のことで、それらの医療には東洋医学の漢方、鍼灸、マッサージ、アロマテラピー、ホメオパシー、そしてカイロプラクティックなどのアインシュタイン的エネルギー論に通じる医療であるといえよう。
しかしながら、カイロプラクティックや東洋医学などでも、先に病名や症候名ありきで、西洋医学の概念に基づいて機械論的に病名に応じて治療方針を決め、施術法だけは補完的な手法を用いる場合も少なくないようだ。
たとえば、西洋医学のように症状や検査結果に応じて病気を分類して、その文類名に応じてカイロプラクティックの矯正や鍼灸の施術ポイントを決定するやり方などは、機械論的な分類型治療法であり、本当の原因は何であれ、病名や症候名が決定されると矯正刺激はほぼお決まりのポイントになる。本来は、何が原因なのかを徹底的に分析し、その原因自体をターゲットに施術を行使しなければならないはずであるが、教科書的に対症療法で施術をしてしまう傾向がある。
カイロプラクティックはサブラクセイションをターゲットに施術を行うが、そのサブラクセイションを機械論的構造の位置異常として捉えるのか、それとも有機論的に神経生理学的機能異常、すなわちエネルギー的異常として捉えるのかで、検査指標のレベルのターゲットが大きく異なる。

原因をいかに分析していくか

サブラクセイションのレベルを肉体内の結果として捉え、その指標のレベルを原因から結果へと段階的に分けてみる。まずは生体内にエネルギー的異常が発生し、病的条件反射とともに神経的異常が生じる。ここまでの段階は有機的なエネルギー異常を示す。神経的機能異常が生じれば、そこに分布する筋肉系に緊張が生じ、その筋肉系に関連する関節の位置異常や動きに異常が現れ、結果的に姿勢的な構造異常を生じさせる。
このような法則的プロセスにおいて、機械論的思考のカイロプラクターは、結果的な姿勢異常(X線分析を含む)、構造的位置異常、筋緊張による動きの異常を指標にしてアジャストメントのターゲットを分析する。
一方、有機論的思考のカイロプラクターは、そのような結果を生じさせる生体内の原因を指標にするため、生体内の神経反射作用を利用して、下肢長検査や筋力検査などの各種生体検査を行い、神経生理学的な異常、すなわち生体エネルギー異常の分析を行うだろう。 (次号につづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 -世界発信より- 2012.12-2013.1

   長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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世界の腰痛診療ガイドラインがエビデンスに基づき患者教育を推奨すると発表した論文を中心に、各国の医療情報を日々集約し開発を進めている「TMSジャパン」。代表の長谷川淳史氏の厚意により、時々刻々と遷移する腰痛治療に関する世界の情報をお届けする。ソースの詳細は英文。SNSはもちろんブログやサイトに、引用先のURLごとコピー&ペーストして可。

【最新の腰痛に関する情報一覧】
★★★=複数の許容できる科学的研究の大半においてほぼ一貫している事実。
★★=1つの許容できる科学的研究による事実、または複数の許容できる科学的研究による限定的な事実。
★=許容できる科学的研究の基準を満たさない事実。

■ギプスジャケットが急性腰痛や坐骨神経痛に有効だというエビデンスはなく、脊椎のこわばり、筋肉の衰弱、ギプスによるただれ、呼吸器系の合併症を誘発することがあり、心理社会的影響も大きい(★)。

■耐え難い腰痛を訴える椎間板に起因する腰痛患者は、手術を受けなくても3年後には68%が改善し、労災補償患者でさえ80%が改善していた。改善率が68%を超えられないのであれば、ある治療法を椎間板変性腰痛に実施すべきでない。 http://1.usa.gov/LPB9IN

■硬膜外ステロイド注射は坐骨神経痛患者の費用対効果の高い治療法とされてきたが、腰椎や仙骨への硬膜外ステロイド注射に関する二重盲検比較試験はなく、坐骨神経痛に対して有効性を示す根拠がないためオーストラリアでは使用制限を検討。 http://1.usa.gov/Kyps98

■WAD(むち打ち関連障害)には、頚部痛・頚部緊張・頭痛・肩の痛み・腕の痛みや麻痺・感覚異常・疲労倦怠感・嚥下困難・視覚障害・聴覚障害・めまい・耳鳴り・睡眠障害・情緒不安定・記憶喪失・顎関節疾患などが含まれている。 http://1.usa.gov/LYNegq

■硬膜外ブロック注射は侵襲的的であり、稀に重篤な合併症を引き起こす危険性がある(★★)。椎間関節ブロック注射は侵襲的的ではあるものの、重篤な合併症を引き起こす危険性はきわめて低い(★★)。

■椎間関節ブロック注射は慢性腰痛の疼痛にも活動障害にも有効でないというエビデンスがあり、注射薬剤の種類だけでなく注射部位も臨床転帰を改善させない。急性腰痛に対する椎間関節ブロック注射の有効性に関するエビデンスはない(★)。

■「スウェーデン式腰痛教室」(修正版)による集団教育は、職業的背景によっては有効な場合がある(★★)。職業的背景を考慮しない腰痛教室の有効性はまだ実証されていない(★)。 http://1.usa.gov/LtCyjV http://1.usa.gov/Kk6Bgl

■急性腰痛に対する経口また静脈内コルヒチンの有効性を示すエビデンスは限られているか矛盾したエビデンスしか存在せず、重篤な副作用の危険性が報告されている(★)。

■腰痛や坐骨神経痛に対して牽引を用いた安静臥床は無効だというエビデンスがあり、特に安静臥床には関節のこわばり、筋肉の衰弱、骨密度の低下、床ずれ、血栓塞栓症といった合併症を引き起こす危険性がある(★★)。 http://1.usa.gov/Jxsprd

■全身麻酔下における脊椎マニピュレーションが有効だというエビデンスはなく、重篤な神経障害を誘発するリスクが増大する(★)。 http://1.usa.gov/LF3JIJ


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (22)

       根本 良一(療動研究所主宰)


2. 腓腹部(ふくらはぎ)〜内腿部 <つづき>
3)-2 内腿部上側からの操作<つづき>

②内腿部上側からの自療操作法

a)椅子にかけて、内腿部上側1/3くらいの位置を、腿に直角に指腹で触れて、上側が硬いほうの足を、あるいは腓腹部をつまんで硬いほうがあればその足を選ぶ。
b)選んだ足は、足先で踏ん張り、踵を上げ、前へ。その踵へ別の足の足先(母指根)を載せる。下の足は動かすほう、上の足は抵抗をかけ誘導するほうになる。
c)上述した足の膝頭へ、逆方の手を上からかけ、その肘あたりへ同側の手をかけて肩をまわして軽く押す(上がる踵へかけて、押す足を補助することになる)。
d)下の足の踵を上げたら、踵を前にまわす。「下の足先の向くほう」へ肩をまわし(補助動作)、足が充分に動いたら、そのままで約3秒間連動させて間をおき、フーッと息を吐きながら脱力させる。
……………
※ b)において、上げた踵へ足を載せて抵抗をかけるとき、踵からアキレス腱の一部にかかるくらいに載せると腓腹筋が攣(つ)れることはない。足首底屈の動作に注意して行う。

◆ コラム ◆
〜内腿部の筋群〜

◎内腿部から首へ
約30年前、東京・板橋から今の朝霞市へ越してきて、ほかの療法から操作法へ全面切り替えたころのことである。「首が痛い」という患者が来た。駅前の商店街の若旦那であった。腰も少し痛いという。
操作法の原則どおり、痛くないほうへ動き、あれこれラクな動きを探してみた。だが1回目は腰の痛みは消えたが、首の痛みがなかなか取れない。
次の2回目では関連していると思われる各部位を触診した。首の周りだけでなく、腰〜脚まで診ていると、どうしたことか内腿部に硬いところがある。コリコリとしていてつかむと痛いという。これは内転筋だから、膝を外転させる動きをさせてみようと考えた。
触診しながら、コリコリの軟らかくなるほうへあれこれ動かしていると、なんと首の動きがラクになった。いろいろ動かしてみても問題がないという。どの動きが良かったのか? これでは問題解決になったとはいえな
い。
今度は学校の先生が腰痛で来院した。腰だけでなく、首も痛い。黒板も上半分が使えなくて困っているという。前件のことがあり、内心「しめた」と思ったが、「それはお困りでしょう、よく診てみましょう」と操作にかかった。(次号につづく)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■自殺者3万人切る。前年比9%減–警察庁まとめ


昨年の自殺者数は2万7766人で、1997年以来15年ぶりに3万人を切ったことが1月17日、警察庁の統計(速報値)で分かった。前年より2885人(9.4%)減少した。年間の自殺者数は、警察庁が統計を取り始めた78年から97年までは2万〜2万5千人台で推移していたが、98年に初めて3万人を超え、高止まりの状態が続いていた。
統計によると、男性が1万9216人(1739人減)、女性が8550人(1146人減)。男性の自殺者が2万人を下回ったのも15年ぶり。
都道府県別では東京が2760人と最多で、大阪が1720人、神奈川が1624人と続いた。最も少なかったのは鳥取の130人で、徳島が164人、島根が168人の順だった。(共同通信社1/17)


NEWS ■ファストフードと子どもの喘息や湿疹との「関連」


Guardianが「ファストフードや持ち帰り食品が子どもの喘息やアレルギーの急増に関連する」と報道した。他の多くの新聞同様、この記事は最近の長く続く医学的謎のひとつ-過去2-30年の間のアレルギーの急増は何が原因か-に光をあてようとした研究を報道している。研究者らは第二次世界大戦後の先進国での伝統的食生活の変化が一部関係あるのではという理論を検討した。
この研究は食生活と青年や子どもの三つのアレルギー関連疾患である喘息・湿疹・鼻炎の関連を調べた国際調査である。研究者らは週に3回以上ファストフードを食べることと重症の喘息・鼻炎・湿疹のリスク増加とが有意に関連することを見いだした。しかしながらこれらの関連は因果関係を証明するものではない。例えば社会経済状態などのような、食事とアレルギーリスクの両方に関連する共通要因がある可能性がある。根拠がどうであれ、あなたのこどもに野菜や果物を定期的食べさせるのは良いことである。(Behind the Headlines 1/15)


NEWS ■米国人の健康度は最下位–日本など17の先進国で


米国人がどの程度健康で長生きできるかを日本や欧州を含む17の先進国間で比較したところ、病気や事故による死亡率や平均余命など多くの指標で健康度が最も低かったとする報告書を、科学者組織の全米アカデミーが9日発表した。
日本人女性の出生時平均余命は17カ国中1位(85.98歳)、日本人男性は3位(79.20歳)だったが、米国人女性は16位(80.78歳)、米国人男性は17位(75.64歳)と短かった。
報告書はこうした結果について、医療制度の問題や高カロリーの食習慣に加え、銃犯罪や自動車依存といった社会的要因も大きいと指摘。他の先進国を参考にして早急に改善策を検討するよう求めている。
報告書は健康向上策に役立てるため国立衛生研究所(NIH)が作成を依頼。米国民1人当たりの医療費は日本や欧州各国、カナダ、オーストラリアに比べて高いが、50歳までに死亡する人の割合は男女とも米国が最も高かった。
肥満や糖尿病といった生活習慣病のほか、銃犯罪や交通事故、薬物被害や性感染症などによって若年層の健康が損なわれているのが背景。50歳以上まで生きた人の生活の質を落とす結果にもなっていると分析している。(共同通信社1/10)


NEWS ■過去20年で世界の死因は心疾患やCOPD、肺がんが主因に


1990〜2010年の20年間の世界の死因別死亡率の動向について、米国・Institute for
Health Metrics and EvaluationのRafael Lozano氏らが報告した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。
研究グループは、187ヵ国から入手可能な死因に関わるあらゆるデータ(人口動態、言語剖検、死亡率サーベイランス、国勢調査、各種サーベイ、病院統計、事件・事故統計、遺体安置・埋葬記録)を集め、1980〜2010年の年間死亡率を235の死因に基づき、年齢・性別に不確定区間(UI)値とともに算出し、死因別死亡率の推移を評価した。
その結果、2010年に世界で死亡した人は5,280万人であった。そのうち最大の統合死因別死亡率(感染症・母体性・新生児期・栄養的)は24.9%であったが、同値は1990年の34.1%(1,590万/4,650万人)と比べると大幅に減少していた。その減少に大きく寄与したのが、下痢性疾患(250万人→140万人)、下気道感染症(340万人→280万人)、新生児障害(310万人→220万人)、麻疹(63万人→13万人)、破傷風(27万人→6万人)の死亡率の低下であった。
2010年の主要な死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDSであった。(Lancet 12/15・22・29)


NEWS ■腰痛にストレス関与–整形外科学会が診療指針


日本整形外科学会と日本腰痛学会は30日までに、腰痛の発症や慢性化には心理的なストレスが関与しており、画像検査などでも原因が特定できない腰痛が大半を占めるとの診療ガイドライン(指針)をまとめた。
重篤な脊椎疾患の兆候がない限り、すべての患者に画像検査をする必要はないとしている。腰痛があればまずエックス線で骨や神経の異常がないか調べる現在の診療の在り方が変わりそうだ。
腰痛の診療指針によると、腰痛は発熱や胸部痛といった危険信号の有無などで(1)がんや外傷、感染などの重い脊椎疾患が疑われるもの、(2)まひやしびれ、筋力の低下など神経症状を伴うもの、(3)原因が特定できない非特異的腰痛―に分類することが重要とした。
非特異的腰痛は、ぎっくり腰やストレスが原因となっているものを含み、全体の85%を占めるとの研究があるという。非特異的腰痛は、職場での人間関係や仕事量の多さ、仕事上の不満、うつ状態など心理社会的要因が関与している強い証拠があると指摘、ストレスを軽減するためにものの考え方を変える認知行動療法などの精神医学療法が有効だとした。
また、安静は必ずしも有効ではなく、非特異的腰痛ならできるだけ普段の動きを維持した方が早い改善につながるという。発症から3カ月以上たった慢性腰痛には運動療法は効果があるとした。(共同通信社1/4)


NEWS ■日本の国民病、腰痛は「心の病が原因」だった


腰痛は日本人の「国民病」だ。日本整形外科学会の調査によると、男性の57.1%、女性の51.1%が加療が必要な腰痛を経験している。だが、実はいまだに原因はよくわからず、真に有効な治療も確立されていない。
これまで腰痛の原因といえば「椎間板ヘルニア」がよく挙げられた。だが、腰痛治療の第一人者である整形外科医の菊地臣一・福島県立医科大学学長は、「ヘルニアがあっても必ずしも腰痛を起こすわけではない」と話す。
では、腰痛の「真犯人」はいったい何なのか。実は最近、腰痛は「心」と深い関係があることがわかってきた。菊地さんが続ける。
「腰痛はさまざまな要因が関係して起きる症状ですが、身体の構造的な問題だけでなく、心理的因子と社会的因子が深くかかわっていることがわかってきました。私のところには世界中から難治性の腰痛患者がやってきますが、その3割には何らかの精神医学的な偏りや過度な負担が見られます」。なんと、腰痛で深く悩んでいる患者には、「心の病」を抱えている人が多いというのだ。
ほかにも社会的要因としては、仕事や社会的な立場から発生する悩みやストレス、子どもの教育や夫婦間の問題など家庭環境による場合などもあるという。(参考記事=週刊朝日 2012.6月号)


NEWS ■夜泣きする赤ちゃんは寝かせたままに


1200人以上の乳児の保護者に調査したDevelopmental Psychologyの論文によると、多くの赤ちゃんは6か月くらいになると夜のあいだ寝るようになり、夜間に母親を起こすのは週に1回程度になる。しかしそうならない子もいる。66%の赤ちゃんは6か月で夜起きるのは週に1回程度になるが、33%は週に最大7回、夜に目が覚める。15か月では週に2回になり24か月では週に1回になる。夜目が覚める子の多くは男の子で扱いの難しい子である傾向がある。また母乳で育てられている割合が高い。
こういう子どもの母親は抑鬱で過敏である傾向にある。この結果は二つのことを示唆する。気むずかしさが遺伝または生まれつきの傾向を反映している可能性がある。18か月をすぎても睡眠に問題がある場合には専門家の助言を求めるべきであろう。もう一つは赤ちゃんが自分で寝ることを学習する必要があることで、夜、目覚めたときに赤ちゃんに構いすぎたり母乳を与えることで寝る習慣になっている場合には学習が妨げられる可能性がある。(Developmental Psychology 1/2)


NEWS ■清涼飲料で脳梗塞リスク増。女性で1.8倍–大阪大学


清涼飲料水をほぼ毎日飲む女性は、ほとんど飲まない女性に比べ、脳梗塞になる危険性が1.8倍高いとの研究結果を、磯博康・大阪大教授(公衆衛生学)らが12月26日発表した。甘味料が入った清涼飲料水を飲みすぎると、血糖やインスリンの濃度が上昇し、糖尿病になるなどして脳梗塞の危険が高まると考えられるという。
男性では危険性は上がらなかった。磯教授は「一般に女性は男性に比べ筋肉や運動の量が少なく、過剰摂取で血中の脂質が増えたり、血糖値が正常に戻りにくくなったりするようだ」と話している。
東京や沖縄など1都4県の40〜59歳の男女約4万人を、1990年から平均18年間追跡。うち1047人(女性は377人)が脳梗塞になった。
100%の果汁ジュースを除き、コーラ飲料など甘味料が添加されてカロリーのある飲み物250mlを、どれぐらいの頻度で飲むか聞いた。「ほとんど飲まない」「週に1〜2回」など頻度に応じて4グループに分けると、「ほぼ毎日飲む」と回答した女性のグループでは、ほとんど飲まないグループに比べ、脳梗塞の発症リスクが1.8倍高かった。出血性脳卒中や虚血性心疾患では、男女とも清涼飲料水と関連はなかった。(共同通信社12/26)


■次号のメールマガジンは2013年2月15日ごろです。お楽しみに。


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