エンタプライズ発信〜メールマガジン【№21】2012.12
死後天に召し上げられて蛇つかい座となり、神の一員に加わったとされるギリシア神話の名医アスクレピオスが持ったと伝えられる杖には、1匹の蛇がからまっています。蛇が、健康・不老・長寿・不死などを象徴しているのもそのためです。蛇と杖のシンボルは、代表的なものではWHO(世界保健機関)のロゴマークにデザインされ、世界の多くの国でも救急のシンボルに採用していて、わが国の日本医師会も使用しています。また、蛇は脱皮をすることから「復活と再生」を連想させ、餌を食べなくても長く生きることができるので「神の使い」とも言われています。明くる年は西暦2013年・平成25年、干支は巳。「巳」という字は、胎児の形を表した象形文字で、蛇が冬眠から覚めて地上にはい出す姿を表しているとも言われ、「起こる、始まる、定まる」の意味があります。本メルマガ読者諸兄は今年もいくつかの課題を残されたかと思います。来年は古来より息災延命、金運向上の守り神として崇められている蛇の年ということで、迷信とはいえ新たな気概のもと、皆さまには恩恵多き1年のスタートを切られますことを切に願っています。1年間のご購読ありがとうございました。
★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★
【1】WHO 『健康の社会的決定要因 確かな事実の探求』 第2版
【2】意識に基づくエネルギー療法 “ BodyTalk ”
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療
【6】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【7】N・E・W・S
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【Topics】
◆PCRT研究会アドバンス2が開かれる◆
12月16日‐17日にわたって、PCRT(心身条件反射療法)研究会アドバンス2 (今年最後のトラック)が、東京・日赤本社会議室で開催された。これまでのベーシック1・2、アドバンス1を発展させ、より深度に自然治癒力に働きかけ、ヒトのもつ恒常性(ホメオスタシス)を生かすべく治療家の果たせる役割は何なのかを問う実践形式で講座は進められた。神経系システムへの第一次刺激で改善されないときの対応策としてチャクラをとおしてエネルギーブロックを鑑別する方法を今回紹介するなど、めまいや耳鳴り、アレルギー症状、婦人科領域などへの臨床適応の解説および実技実習が行われた。
<<<連 載 ⑪ >>>
【REVIEW】
WHO 『健康の社会的決定要因 確かな事実の探求』第2版
<訳:WHO健康都市研究協力センター・日本健康都市学会・健康都市推進会議>
7. 社会支援
友情、良好な人間の社会的関係、確立された支援ネットワークにより、家庭・職場・地域社会における健康が推進される。
【現 状】
社会的支援システムと良い人間関係は、人々の健康保持に大きく貢献する。社会的に支えられていると感じることが、生きていく上での精神的、現実的な励みとなる。社会のコミュニケーションネットワークの一員となり、お互いに義務を負うことで人々は自分が関心を持たれている、他者から愛されている、評価されている、大切に思われていることを実感する。このようなことは健康を保持していくことに大いに役に立つ。互助的な人間関係は、健康的な行動様式の確立も促す。
支援といっても個人を対象としたものと、社会を対象としたものがある。社会的孤立や排除は、当事者の死を早める率を高くし、心臓発作後の生存率を一段と低くする。他者からの社会的・精神的な支えを期待できない場合、人々の健康状態は悪化し、鬱病となったり、妊娠時の合併症発生率が上昇したり、慢性疾患の悪化といった状況が現れやすい。そしてたとえ緊密な人間関係でも、それが好ましくなければ、人々を精神的にも肉体的にも不健全な状況へと追い込んでいく。
人々が受ける精神的あるいは実質的な社会的支援の量は、社会的・経済的な立場によって変わってくる。貧困は、人々を社会から排除させ、孤立させる。
「社会的なつながり」は、人間の社会的関係の質と、コミュニティもしくはより広範囲の社会において信頼関係があること、お互いに義務を負うこと、お互いを尊重すること—と定義され、このつながりがあることで、人々は守られ同時に健康も保持できる。
公平さを欠くことは社会的関係を蝕む。所得格差の大きい社会ほど社会的つながりが希薄になりやすく、凶悪犯罪が多くなる。相互援助が進んでいると人々の健康は守られ、反対に社会関係の崩壊はさらに格差を増長することもあり、信頼感を希薄にし、暴力行為を増加させる。ある調査によると、地域社会において社会的なつながりが密接な時には心臓の冠状動脈疾患が少なかったが、つながりが希薄になると心臓疾患の疾病率が上昇したという。
【提 言】
実験によると、良好な人間の社会的関係があることはストレスによる肉体的負担を軽減する。また介入研究によると、社会的支援があれば、患者が様々な異なる状況から回復する率は高くなり、不安定な妊婦でもより良い妊娠・出産の経過をたどることができる。
・社会的・経済的な格差を縮小し社会的排除を減らすことで、社会的なきずなを深め、健康の水準を高める。
・学校、職場、より広範囲の地域社会における社会環境を改善することは、人々が日常生活のより多くの場面で自らの価値を認識し、自分が大切にされていることを感じるきっかけとなるであろう。こうしたことは、さらに人々の健康状態を良い方向へと向かわせ、特に精神面での健全化に大きく貢献するであろう。
・地域社会で会合や社会的な活動をもてる場を設けるようにすることで、精神面での健全化が図られるだろう。
・個人として、また社会人として生活していく中で、社会的に劣っている、あるいは価値が低いという考え方は避けなければならない。そうすることは、社会的な分断と言えるためである。
(次号につづく)
◆◆◆ ⑧ ◆◆◆
『意識に基づくエネルギー療法 “ BodyTalk ”』
…… 今 田 泰 (IJBA東日本支部 支部長)……
前回は「心身の大宇宙」(旧称モジュール6)について述べた。今回は「マトリックス力学」(旧称モジュール9)について解説していく。マトリックスとは、固定概念(信念システム)や様々な記憶の結びつき、意識の集合体から成るエネルギー体である。そしてこのエネルギー体自身が生存しようとするために、触手を持ち、宿主から栄養分を吸い取る。したがってこの存在が心身のバランスを崩す要因になり得る。
<< 様々なマトリックス >>
このマトリックスは概念的なものであり、実体として目に見えるわけではない。そこでこれを考える上で、次のような具体例を挙げることとする。
ひとつは、自らをこういう人間だと思い込むことによる思考や行動の制限がそれである。典型的な例は「A型の血液型を持つ人間は几帳面で控えめである」という固定概念である。これが本来のパーソナリティーを覆い、思考や行動を定型化させてしまう。
また「〇〇とはこうあるべき」といった思い込みもマトリックスになり得る。「社会人とはこうあるべき」、「男とはこうあるべき」といった固定概念が時として本人を苦しめているケースもあるであろう。
これらは当然自分自身の思い込みだけによるものでなく、他人から、もしくは社会全般からの影響によるものもある。
BodyTalkの施術において、こういった場合はそのマトリックスを本人から切り離すことになる。
しかし時によってはある状況をうまく切り抜けるために必要な、仮面としてのマトリックスもある。例えば新しい土地に引っ越してきて、そこでうまくやっていくために一時的に特定の行動様式を身につけることなどがそれである。
それが必要な場合には、その状況をしのぐために敢えてマトリックスを付加することもある。
<< 複合体マトリックス >>
また、やや色合いが違う、複合体マトリックスも存在する。複合体マトリックスは、ある集団における個人間のエネルギー関係のバランスと考えるとわかりやすい。家族や会社も人間の集団であり、それに属する個人にとって集団のエネルギー関係は健康の重要なファクターになり得る。よってBodyTalkの施術において家族間の人間関係のバランスを調整したり、あるチームに入団した野球選手が、そのチーム内でなじむための調整を行うということになり、これが集団の中での人間関係の調和をもたらすことにつながる。
以上、過去5回にわたってBodyTalkの包括性について解説してきた。これだけ幅広く様々な要素をチャート上で規定しているので、抜け漏れが無く様々な状況に対応できるのである。
(次号へつづく)
《 連載3 》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
集団で山人参を採取に行く(つづき)
入山の約1週間前から、1日数回、清浄な水で身体を洗い潔める。入山の日時は極秘であり、妻子にも教えない。行き先についてもリーダーだけが知っていた。出発前夜は、村の守護神を祀る社(やしろ)に全員が集まり、道中の安全と収穫の多からんことを祈る。供物には焼酎に鶏、米飯、川魚などを用いる。
最後にリーダーは起立して祭文を朗読し、団員は平伏する。祭文に言う。
「……何某等何人が供物を携帯し、これより入山いたします。公明なる山神様はよく召し上がられて、私たちが夜中に悪い夢ではなく良い夢を見るよう賜れよ…」
出発後の道中は絶対に話しをしてはならず、無言の行を守る。そのいでたちはといえば、紙よりを編んだ漆塗りの帽子、軽装の着物、木の杖、人参を掘る木の棒(人参は鉄を忌むという)、背嚢などである。途中、女性に出会ったり、女性が前を横切ることを非常に忌む。もし女性に会ったならば、これから入山するところである旨を告げる。これを聞いた女性は道のかたわらに避けて、入山しようとする者に背中を向けて立ち止まる。このときリーダーがその女性に裳(ちま)の一片を要求すれば、女性は裾を少し切り取って与える。一行はそれを持って目的地へ向かう。入山した日には、仮小屋の近くにある神堂に供物をあげ、祭文を朗読する。これは下山のときも同じである。
人参を発見したら大声をあげる
入山の第2日目。一同はリーダーの指示にしたがって四方に分散し、生い茂った樹木をかき分けて人参を探し求める。団員たちは時々大きな声で合図を出し、相互の安全を確認しながら進む。また帰路の標識として、木の枝を折り、木の皮を剝いでおく。
幸運にも人参を発見した者は「芳草あった、芳草あった」と大声で連呼する。やがて全員が現場に集まる。リーダーは発見者には周囲をさらに探すように指示し、残りの者は人参にまわりに座らせる。その理由は、人参には集団的分散性があり、1本の人参があればさらに数本ある可能性が強いからである。最後にリーダーの指示により、一同は周囲の雑木を伐り、人参を中心として約半坪の地面を掘る。1本のひげ根も切らないように細心の注意を払って掘り出された朝鮮人参は、地面に密生している苔で包み、そのうえから樹皮で包んで、発見者の背嚢に入れられる。
山人参の採取業者の一行には、特定の隠語=山言葉があり、出発してから帰還するまでは、必ず山言葉を用いた。たとえば、人参のことはインサムと言うべきところを、山言葉ではプリシリと言った。
(次号につづく)
<<連載>>
カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト <第21話>
保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
生体のコントロール中枢である
神経系を評価基準とする(つづき)
D.D.Palmerが語っているカイロプラクティック哲学や生命の原理原則を考えても、生体のコントロール中枢である神経系を基準にすべきであり、素手による矯正であれ、治療器具による矯正であれ、大切な矯正のポイントは神経系を活性化させることができる矯正であるかどうかであり、神経系が活性化され、異常な神経反射反応が改善されたかどうかをカイロプラクティック矯正完了の目安にするべきなのである。たとえ関節の動きが改善され、またレントゲン所見で正しい位置とされる椎骨の位置に落ち着いて改善されたとしても、それは神経系が正常に働いているための結果であるという原則を忘れてはならない。
カイロプラクティックのカイロは「手」という意味だから、カイロプラクティックは素手で矯正しなければならないと、深い意味もなく単純に述べるカイロプラクターもいるが、カイロプラクティックの矯正目的である神経系の活性化による異常神経反射の改善ができる刺激であれば、素手であろうが、治療器具を使おうがそれはカイロプラクティックの矯正目標を完了したことにつながるのである。
素手でなければカイロプラクティック矯正でないという根拠、深い理由があるのであれば教えていただきたいが、おそらくそのような深い根拠はないであろう。カイロプラクティックの創始者であるD.D.Palmerは、1910年以降「脊椎を矯正しようと試みて、ゴム製のハンマー(打振板)を使った。これは阻害されている神経を解放するという唯一の目的で使われていたのである(略)」と伝えられている。
また、米国ナチュロパシーの父であり、ジャーナル『Naturopath』の発行者でもあるBenedict Lust, MD.,ND.,DCは、「Benko Hand Concussion Set」の広告を出したのであるが、1924年の広告には「……脊柱への振動が、無薬療法の補助手段としてはもっとも効果的なものの一つであることを、経験のある治療家たちならきっと確信する……」と明言している。
カイロ=素手などという単純なパラダイムやブランドネームのカイロプラクティックにとらわれないで、臨床の現場で徹底して効果的アジャストメントを追求すればするほど、カイロプラクティック矯正の本質が見えてくるのではなかろうか。結論的に素手であろうが、治療器具であろうが、カイロプラクティック矯正目的である神経系が活性化され、異常神経反射ループが改善されれば、治療効果があるはずである。素手による矯正も治療器具のよる矯正も治療効果がある場合は、本質的なところで何かが共通しているはずである、その本質に的を絞るとやはり、神経系を活性化させるための物理的神経刺激、すなわち「振動」というキーワードが浮かび上がってくる。
次回はこの「振動」について、さらに踏み込んで述べてみたい。
(次号につづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 -世界発信より- 2012.11-12
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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世界の腰痛診療ガイドラインがエビデンスに基づき患者教育を推奨すると発表した論文を中心に、各国の医療情報を日々集約し開発を進めている「TMSジャパン」。代表の長谷川淳史氏の厚意により、時々刻々と遷移する腰痛治療に関する世界の情報をお届けする。ソースの詳細は英文。SNSはもちろんブログやサイトに、引用先のURLごとコピー&ペーストして可。
【最新の腰痛に関する情報一覧】
★★★=複数の許容できる科学的研究の大半においてほぼ一貫している事実。
★★=1つの許容できる科学的研究による事実、または複数の許容できる科学的研究による限定的な事実。
★=許容できる科学的研究の基準を満たさない事実。
■熟練した術者によるマニピュレーションで症状が悪化するリスクはきわめて低いが、稀に重篤な神経障害が生じる危険性があるため、重度または進行性の神経障害のある患者にマニピュレーションは実施すべきでない(★★)。
■これまで得られているエビデンスの中には体操とリハビリテーションが慢性腰痛患者の疼痛と機能障害を改善することを示すものもある(★★)。発症後6週目から体操とリハビリテーションを開始することの妥当性にはエビデンスがある(★)。
■牽引は腰痛や神経根症状に対して効果はない(★★★)。TENS(経皮的神経電気刺激:低周波治療器)が急性腰痛患者に有効だというエビデンスはない(★★)。
■腰部コルセットやサポートベルトが急性腰痛の治療に有効だというエビデンスはない(★)。慢性腰痛に対するトリガーポイント注射の有効性は不明確であり、特に急性腰痛に関するエビデンスはほとんどない(★)。
■急性あるいは亜急性腰痛に対する脊椎マニピュレーションは、他の治療法に比べて短期間で疼痛および活動障害の改善、ならびに患者の満足度という点でより高い効果が得られる(★★★)。
■大半の患者は時に腰痛が再発する(★★★)。しかし再発は普通に見られる正常なことであり、腰部に再度損傷を受けたり、症状が悪化していることを意味するものではない(★)。
■患者の約10%は1年後も症状の一部が持続しているが、その大半は通常の活動を何とか維持できる。通常の活動に復帰した患者は、活動を制限している患者より健康になったと感じ、鎮痛剤の使用が減少し、苦痛が少なくなる(★★)。
■腰痛は通常加齢に伴って増加することはなく、50〜60歳以降はわずかに頻度が低下する。しかし慢性腰痛を有する高齢者は症状がより持続的になり、活動制限が多くなることがある(★★)。
■定期的に処方されたNSAIDは非特異的腰痛を効果的に軽減する(★★★)。異なるNSAIDは非特異的腰痛の軽減に同様の有効性を示す(★★★)。NSAIDの神経根性疼痛に対する軽減効果は比較的弱い(★★)。
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (21)
根本 良一(療動研究所主宰)
2. 腓腹部(ふくらはぎ)〜内腿部 <つづき>
3)-1 内腿部下側からの操作<つづき>
【Memo】〜背から胸が苦しい〜
肩がひどくこっているようで、胸も苦しいから内臓の病気かと思い内科で受診した。熱はないし、検査しても異常はない。頸腕障害ではないかと整形外科へ回された。ここで検査しても異常はない。原因がわからないのにここで治療をしても意味がないということで当院で引き受けた。
(1)肩から背が苦しい:内腿部下側から肩背部へ、
(2)肩背部から肋間神経が刺戟され胸部が痛い。落ち着いてみれば体の外側の痛みである。
(3)内腿部下側の操作に対応する逆側の内腿部上側の操作でラクになった。
このような例は多くあるが、はじめに内科受診は正解だと思われる。内科の問題は、腰、足、背、胸、肩、頭と全身的な異常を呈することがあり、局所の処理では解消できないことが多い。
寝違いやムチ打ち症などで首が動かない、背部が苦しいというときは、ほとんどがこの内腿部からの影響であり、背中の広背筋→僧帽筋という連動で起こる。
3)-2 内腿部上側からの操作
椅子にかけて、内腿部のピンと張っている筋の上側の操作である。
この部分の緊張は、
・直接ではなくて、殿部の仙腸関節にかかる梨状筋を硬くし、坐骨神経を刺戟し、その一部、脛骨神経を刺戟することで同側の足のふくらはぎ(腓腹部)を硬くする。
・もう一つは、内腿部の屈筋側との相関から、逆側の屈筋側が緊張すると内腿部の伸筋が弛緩するという関係にある。
①椅子にかけた操作法
受者は椅子にかける。操者は内腿部の上部がコリコリ硬い方の足元へ、内側から90°の位置で向かい、正座して、
a) 腓腹部の硬い方の足を選び、受者の足の外側に座り、受者から遠い膝へ(できないときは高さ10cmほどの台へ)足を載せる。足の操作を自らの正中線上でできるように配慮する。
b)載せた足へは、足首の後ろから手をまわし、母指球をかかとの内側へかける。その手はアキレス腱端へかかるようにする。これは圧診の一種で、底屈時の筋膜の張力を抑え、腓腹部が攣(つ)れるのを防止するためである。
※底屈するときは、腱端を押さえたとき、押さえないときの、腓腹部の硬さを比較してみる。
【誘導語】
a)「この足先を膝に置き、踵を上げてください。踵を支えていますが気にせず踵を前に出してください」(主動作)。このとき、受者の足と操者の足が90°になるくらいがよい(膝の悪い人に優しい)。
b)「踵を引きつけ、腰を引き、逆の肩を足先の向くほうへ軽くまわします」(補助動作)。足を載せた膝は、腰を振るようにして載せた足先のほうへ転がし、膝の屈曲を促す。
c)「充分に足首がまわり、膝を引き、肩がまわったら、そのままで約3秒間連動させてフーッと息を吐きながら脱力します」。かけた手はそのまま添えておき、
d)「このままで3呼吸、間をおいて……戻ります」
以上を、2〜3回行う。(次号につづく)
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NEWS ■神経質で潔癖な人は健康
神経質で潔癖であることが健康に良い可能性がある――こんな研究結果が、性格特性などの心理社会的要因が健康に及ぼす影響を調べた米ロチェスター大学メディカルセンターのNicholas Turiano氏らから報告された。研究論文は、「Brain, Behavior,and Immunity」オンライン版に掲載された。
「潔癖」の特徴は計画的で責任感があり、勤勉なこと。「神経質」は通常、気難しく、心配性かつ苦労性で、敵意や抑うつ、過度の飲酒や喫煙につながる。しかし、1,000人強を対象とした今回の研究では、中等度から高度の神経質と潔癖さを併せ持つ人のインターロイキン6(IL-6)レベルが最も低い傾向がみられた。
高レベルのIL-6は心疾患や脳卒中、喘息などの慢性疾患につながる炎症が存在することを示す。神経質で潔癖な人はBMIも低く、慢性疾患の診断を受けることが少なかった。Turiano氏は、「これらの人々は行動の結果を考える可能性が高く、そのためある程度の神経質と潔癖さが合わさると、危険な行動を抑止すると思われる。また、健康障害がある場合に治療しようとする可能性も高い」と述べている。(source:Brain,
Behavior,and Immunity」オンライン版 12/15)
NEWS ■女性の半数、出産して退職-―厚労省調査
2010年5月に第1子を出産したとされる女性の54.1%が、出産前後に仕事を辞めたことが13日、厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査結果」で分かった。このうちフルタイム勤務だった人の35.3%が「仕事を続けたかったが、育児との両立が難しい」を理由に挙げた。また、10.5%で「解雇、退職勧奨」が行われていた。
同年5月中に生まれた子供の家庭の生活環境を追跡して調べ、出生6カ月時点で第1回の集計をした。今後、1年ごとに集計する。01年生まれの子供で同様の調査をしており、比較して分析する。今回は調査用紙を配布した4万3767人のうち3万8554人が回答し、うち第1子とされるのは1万8132人。(時事通信社 12/13)
NEWS ■長時間の睡眠で痛みに強くなる
睡眠時間が長いと、健常な成人では日中の注意力が向上し、痛覚感受性が低下することが、米ヘンリーフォード病院のTimothy Roehrs氏の小規模研究でわった。研究論文は「Sleep」12月号に掲
載された。
研究では、軽度の睡眠不足があるボランティア18人が4晩にわたり、通常の睡眠時間、または一晩10時間の睡眠時間をとった。長時間睡眠群の睡眠時間は通常群に比べ一晩あたり平均1.8時間長かった。その結果、毎夜の睡眠時間が増加すると、日中の注意力が増大し、痛覚感受性が低下した。
長時間睡眠群の被験者では、指を熱源に当てていられる時間が25%長かった。この時間の増加は、被験者が以前参加した研究で、鎮痛薬のコデイン60mgを服用し、同じ痛覚感受性検査を受けた結果よりも大きかった。軽度睡眠不足の人の痛覚感受性が長時間睡眠により低下することが示されたのはこれが初めて。今回と以前の研究結果は、睡眠不足が痛覚感受性を高めることを示唆している。
Roehrs氏は、「今回の結果は、さまざまな慢性疼痛、または待機手術における十分な睡眠の重要性を示唆している。コデインを服用した場合に比べて疼痛感受性の低下が大きいことに驚いた」という。今回の研究は長時間の睡眠と痛覚感受性低下の関連性を明らかにしたが、因果関係は証明していない。(source:Sleep12月号 12/10)
NEWS ■来年度の医学部定員、50人増の9千人超--文科省
文部科学省は7日、来年度の医学部入学定員について、国公私立17大学で計50人の増員を認めるとの増員計画を発表した。医師不足の解消のため増加に転じた2008年度以降の累積で1416人増え、総定員は9041人になる見込み。文科省では、地域の医師不足を解消するため、1大学の定員の上限を125人から緩和するよう11月に省令を改正しており、東北地方を中心に5大学で125人超になる予定だ。
医学部定員の増員では、▽地域医療への従事を条件とする奨学金や選抜枠を設定した増員(地域枠)▽複数大学の連携で研究医を養成する拠点をつくるための増員(研究医枠)▽併設する歯学部定員を減らした分の医学部の増員(歯学部振替枠)―の3つの枠組みが認められている。
増員計画によると、地域枠で12大学の計39人、研究医枠で5大学の計9人、歯学部振替枠で1大学の2人の増員を認める。歯学部振替枠での増員を要望したのは岩手医科大だけで、地域枠と合わせて5人の増員を要望している。
大学別に見ると、東北大の10人が最多で、次いで岩手医科大、福島県立医科大、新潟大、信州大の各5人などの順。総定員は、東北大の135人が最多となり、このほか岩手医科大と福島県立医科大が共に130人、弘前大と新潟大が共に127人で、5大学が125人超となる見込みだ。(医療介護CBニュース 12/8)
NEWS ■「超高額」の私大医学部、値下げ合戦…負担軽く
私立大の医学部で学費を値下げする動きが広まっている。
国公立大に比べ、私大医学部は「超高額」だが、医師不足解消のため、近年医学部の定員は増えており、少しでも負担を軽くして優秀な学生を確保するのが狙いだ。
私大医学部のほとんどは、入学時に6年間の学費が決まる。現在、最も学費が安いのは順天堂大(東京都)。2008年度に6年間で880万円引き下げて2090万円としたところ、同年度の志願者は前年度の1.5倍に増えた。同大は今春、さらに10万円引き下げた。また、08年度に400万円引き下げた昭和大(同)は来春、さらに450万円安くし、2200万円にする。東邦大(同)も600万円、関西医科大(大阪府)も200万円引き下げる。(読売新聞11/30)
NEWS ■がん増加の可能性低い—-原発事故、WHO予測
東京電力福島第1原発事故による、周辺住民の健康への影響を検討している世界保健機関(WHO)の報告書素案が25日判明した。福島県浪江町と飯舘村の乳児が将来、がんや白血病などを発症する危険性が上昇するとのデータも得られたが、実際の発症数が統計学的にみて有意に増加する可能性は、乳児以外の子どもや大人を含めて低いとした。
素案が基にした被ばく線量推計は、付近住民が事故後4カ月間現地に住み続け、地元産の食品のみを食べたと仮定。ほとんどの住民は避難しており「線量は過大評価だ」との指摘もある。専門家の一人は「将来の危険性は大きめに見積もってあるととらえるべきだ」としている。
こうした指摘に対しWHOは「過小評価は避けなければならない」として、悪い条件が重なったケースを想定したと説明。実際の発症例はもっと少ないとの見方を示した上で、このような危険性評価も「子どもの健康状態を監視する上で有益な情報になる」としている。12月にも最終報告をまとめる。
素案では、WHOの別のチームによる住民の被ばく線量推計を基に、事故当時1歳と10歳、20歳の男女で、生涯と事故後15年間で乳がんや大腸がんなどの固形がんや甲状腺がん、白血病を発症する危険性を予測した。
危険性が顕著に増したのは、浪江町、飯舘村の1歳女児で、すべてのがんについて生涯での発症危険性が上昇した。1歳男児も白血病の危険性が増した。1歳女児が16歳までに甲状腺がんになる可能性は、同地域に加え、葛尾村や福島、南相馬両市などでも高まった。(共同通信社 11/26)
NEWS ■色鮮やかな野菜や果物が癌予防の鍵
米ダナ・ファーバー癌研究所(ボストン)のStacy Kennedy氏は、リンゴが咽喉癌、口腔癌、肺癌のほか、乳癌の予防にも有用である可能性を示す研究結果を報告した。リンゴにはケルセチンと呼ばれる栄養素が含まれており、癌を誘発するDNAの損傷から細胞を保護してくれる。「多くの栄養素が皮に含まれているので、生のまま皮ごと食べることが重要」と、同研究所のニュースリリースのなかで述べている。「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」というのは本当だ。
また、クランベリー、ビート、ニンジン、根菜の一種のパースニップなど、色鮮やかな野菜をたっぷり取ることも同氏は勧めており、「色素が鮮やかなほど抗癌作用のある栄養素も高い」と述べている。
ケール、ブロッコリー、キャベツ、芽キャベツなどの色の濃い葉野菜も重要で、これらの野菜を十分に食べている人は、肺癌、前立腺癌および胃癌になる確率が低い。「ケールは特に、インドールと呼ばれる植物性栄養素が豊富。インドールは肝臓の解毒作用を助け、癌の予防に有用である」と、同氏は説明する。また、ニンジン、サツマイモ、カボチャなど、橙色の野菜はいずれもカロテノイドと呼ばれる栄養素が豊富である。カロテノイドは大腸癌、前立腺癌、乳癌および肺癌の予防との関連が示されているという。
どの季節も、癌の予防によい食品を見つけるには色が鍵となるとKennedy氏は指摘し、「年間を通して野菜中心の食事を取るのが癌リスクを下げる有効な方法である」と述べている。(HealthDayNews 11/26)
NEWS ■読書やゲームで脳が元気に
読み書きやトランプ、ボードゲームは単なる娯楽を超えて、老化する脳を健康に保ってくれる—こんな研究結果が、米シカゴで開催された北米放射線学会(RSNA)年次学術集会で発表された。
米ラッシュ大学メディカルセンター/イリノイ工科大学(シカゴ)のKonstantinos
Arfanakis氏らによれば、この種の精神活動は高齢者の脳の構造的完全性の維持に役立つという。同氏らは、MRIを使って平均81歳の被験者152人の脳をスキャンし、精神活動が脳の白質に及ぼす影響を調べた。白質は脳全体に情報を送る神経線維からなっている。白質の一部の領域では頻繁な精神活動と構造的完全性に有意な関連性がみられた。
Arfanakis氏は、「新聞を読む、手紙を書く、図書館に行く、芝居を観る、チェスやチェッカーなどのゲームをすることはすべて、より健康な脳にするための簡単な活動である。今回の研究では、高齢者の精神活動と白質の構造的完全性との関連が明らかにされたが、因果関係は証明していない。それを調べるために被験者の追跡を続けたい」と述べている。(HealthDay News 11/25)
NEWS ■失業者は心臓発作のリスクが高い?
失業した1年目は特に心臓発作のリスクが増大することが、米デューク大学のMatthew
Dupre氏らの研究で示唆され、研究結果が「Archives of Internal Medicine」オンライン版に11月19日掲載された。また、度重なる失業に関連する心臓リスクは心血管リスク因子に匹敵し、これはすべての主要な人種および民族にも同等に当てはまるようだ。
Dupre氏らは、1992年から2010年まで2年毎に、米国の健康・退職者研究(HRS)の51〜75歳の被験者1万3,4510人に雇用状態に関するインタビューを行い、得られた回答を検討した。その結果、試験開始時に14%が失業しており、試験期間中、10人中約7人が1つ以上の仕事を経験していた。また、これは2008年の景気後退の始まりと重なっていた。
Dupre氏は、「心臓発作のリスクは失業回数が増えると増大した。自己退職は心臓の健康障害の増大と関連していなかった。複数回の失業による緊張は、慢性疾患や長期にわたる消極的な行動として心臓に負担をかける」と述べている。(source:Archives of
Internal Medicine 11/20)
NEWS ■腎機能が低いと精神機能も低い
腎機能低下は思考や記憶の低下につながることが、米テンプル大学公衆衛生学准教授のAdam Davey氏らが600人近くを対象に行った研究で明らかになり、研究結果が
「Nephrology, Dialysis and Transplantation」11月19日号に掲載された。
Davey氏らは5年間にわたり腎機能と知的技能の変化を検討した。その結果、この期間中、腎機能の低下が大きいほど全般的な知的能力、特に抽象推理と言語記憶の低下が大きかった。同氏は「脳と腎臓はいずれも心血管系の影響を受ける。どちらも血圧(高血圧)などに影響されるため、1つの臓器に変化があれば別の臓器にも変化が起きると考えるのは自然だ」という。
今回の結果は、慢性腎疾患の診断と管理の重要性を強調するもの。Davey氏は、「加齢に伴い、腎機能は自然に低下する傾向があるため、慢性腎疾患など腎機能に関わる問題がある場合、そのことをできるだけ早期に知る必要がある。これは、高血圧と同様、管理しなければならない。腎機能低下による知的技能の低下はさほど大きくないので、腎疾患治療の妨げにはならない」と述べている。(source:Nephrology, Dialysis and Transplantation 11/19)
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