エンタプライズ発信〜メールマガジン【№19】2012.10

錦秋の時節を迎え、紅葉、コスモス、温泉と心和むシーンがふえてきますが、温泉ブームは今はどうなっているのか。編集子はここ数年、旅先の宿では入湯しても、わざわざ温泉目的で出かけて行くことはなくなりました。でも日帰り温泉が今でも温泉ブームの主流なのだそうです。それも端的に分けると、温泉やその風情を愉しむ従来派と、入浴後の食事とスパを目的とする女性志向のゴージャス派だとか。前者と後者ではだいぶ予算も違いそうです。これまでは風呂上りには整体マッサージがすぐ隣にあって、特に男性諸氏が疲労回復のために活用していましたが、長引く不況で予算節減、温泉あとのマッサージも控える向きが多くなっています。先日東京で開かれたIMF(国際通貨基金)年次総会では、日本の経済を立て直すには女性が活躍できる職域を拡大し消費を促すことが中長期の課題だと緊急レポートしました。女性の社会進出が一段と拡充されると、温泉ブームも女性主体のゴージャス派が牽引していくことになるのでしょうね。これまでの正統である整体マッサージの先生方、われら男性客を回帰させるようさらなるサービスの創意工夫をお願いいたします。

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★

【1】新連載・伝統医学をシルクロードに求めて (池上正治)
【2】新連載・根拠に基づく腰痛の原因と治療(長谷川淳史)
【3】WHO 『健康の社会的決定要因 確かな事実の探求』 第2版
【4】意識に基づくエネルギー療法 “ BodyTalk ”
【5】カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【6】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【7】N・E・W・S
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【Information】

◆“タオ人間医学”講座のご案内◆

弊社刊の『タオ人間医学』(謝明徳・原著)の出版を記念して、訳者であり、ヒーリング・タオをライフワークとしている鎌崎拓洋氏を講師に、タオ人間医学のエッセンスを読み解くという企画です。本書には広範なタオのヒーリングが紹介されています。時間の許す限り紐解いていく予定です。
お申込み・お問合わせはアルカノン・セミナーズ( http://www.arcanumseminars.com/wordpress/tao-kamasaki/)まで。

受講日:11月11日(日)
受講時間:14:00〜17:00(休憩あり)
受講料金:なし
講師:鎌崎拓洋
場所:アルカノン・セミナーズ教室 (東京都渋谷区渋谷3-10-14 長崎堂ビル7F… 渋谷駅徒歩約5分)
参加条件:『タオ人間医学』(産学社エンタプライズ刊)をご持参の方
※アルカノン・セミナーズ受付窓口でも販売しています。※DVD受講あり


【Topics】
◆日本構造医学会が第17回学術会議を開催◆

10月7日、日本構造医学会は京都・同志社大学寒梅館において第17回学術会議を開催、全国から200名を超す会員が出席し、構造医学臨床症例7演題の発表を中心に質疑ほかが展開された。
冒頭、今年の学会長・筧健史氏は「本学会が創設されて17年。混沌の社会状況と同じく医療分野でも原点に回帰する動きがある。真の意味で人を診ることのできる医療人になることで構造医学が発展していくと思う」と挨拶。全演題の終了後には吉田勧持理事長が「職人の世界では習熟した第1級の技能者は5%だと言われるが、同一視の誤謬という言葉があって、ある会に属しているだけで自分には優れた能力があると錯覚してしまう傾向がある。そこで大きな過失が生まれないように標準化が策定され、凡夫でもついていけるような構図になっている。構造医学では個体であるヒトや多様化する疾病に対応し毎日の鍛錬を積み重ねることに意義がある。最終的には患者が評価してくれる」と語った。来年は関東地区で開催予定。


【Topics】
◆心身条件反射療法(PCRT)アドバンス1を開催◆

9月30日から2日間にわたって心身条件反射療法(PCRT)セミナー(Advance1)が開催された。
心-脳・神経系-生体との関係性(心身相関)を、条件反射作用に基づいて検査し、肉体面(ハード)と精神面(ソフト)との適応系統(生命エネルギーネットワーク)を適正化するのが心身条件反射療法である。
本講座では、興奮と抑制のメカニズムの座学のあと、5-6名のチーム態勢でハード面からソフト面への施術移行の見計らいと実践、症例デモンストレーションでは1)交通事故トラウマ、2)スポーツ障害、3)心因性視力障害という卑近な例で実技をとりおこなった。後半では、セルフイメージの検査要領、自己療法(心身のリハビリ)の指導〜実技が行われ、講義「無意識へのアプローチ」「五感から入るのか、感性から入るのか」が口演された。PCRT;Advance2は12月16日-17日、日赤本社で開催される。


《 新連載 》

伝統医学をシルクロードに求めて

       池上正治(作家・翻訳家)


小さな島国に住む日本人の悲しさだろうか。壮大な山脈や果てしもない草原などには心底から感動してしまう。月の砂漠を行く王子さまの歌は、われらの心の奥深くまで感動させてしまう。シルクロードは日本人にとって永遠のロマンであろう。
西域といわれる場所に、中国人がその気で踏み入ったのは今から約2000年前の漢代のことである。武帝の命を受けた張騫(ちょうけん)がその先駆である。武帝には北方の強敵、匈奴に対する軍事的な意図があったが、結果は予想以上のものをもたらした。
よく千里を走る名馬はともかく、宝石類や楽器、ガラス器、ぶどう、ごま、ざくろなど、中国人の知らなかったものがどんどん流入してきた。東から西へ行ったものの代表は中国の絹である。それは同じ重さの金と交換された。古代ローマの皇帝や貴族たちはあらそって買い求めたという。アジアとヨーロッパを結ぶシルクロードは、人を、物を、技術を、文化を交流させた。
わが国の奈良の正倉院は、そうした東西交流史の「博物館」である。各種の文化財は、その歴史性、多様性など、世界に類例をみないものである。ことに「御物」とされる薬物の種類とその解説は、現代人を仰天させてしまう内容である。日本人はあまり創造は得意ではないが、部分的な改良や保存にかけては世界ナンバーワンと言えそうだ。
この連載では、交易路としてのシルクロードを軸に、沿線各国や地域の間にあった医学や薬物の交流を追ってみる。

■1■. 朝 鮮 編

朝鮮人参とマンドラゴラ

朝鮮人参の原産地は、朝鮮・中国にある白頭山(ペクトウサン;中国では長白山という)の密林である。白頭山頂は円錐形をなし、そこには紺碧の水をたたえる神秘の湖、天池がある。その水は北に流れて豆満江となり、南に流れて鴨緑江となる。山頂は1年の半分は雪をいただき、ゆるやかな山麓にはエゾマツやカラマツ、ヒノキなどの茫漠たる密林が広がる。その密林に原生していた朝鮮人参は、やがて朝鮮半島全域、中国東北部、沿海州へと生息区域を広めていく。
成熟した人参は、茎、葉、花、果実、根を持つ。茎の長さは約60センチ。長い柄の先に輪生する葉がなかなかおもしろい。周辺にギザギザのある卵形の葉は、最初の年に3枚だけつく。2年目からは5枚に増え、その後はいくら経っても葉の枚数は増えない。花は淡緑色の小さな五弁花で、夏、茎のいただきにいくつも咲く。その姿は、花傘を広げたように美しい。
花がおわって結ぶ果実は、南天の実のように赤い。果実の中にある種子は、栽植に用いるだけでなく薬剤にもなる。根は丸く、長く、枝根やひげ根もはえる。人工栽培の場合、6年目(長さ10-20センチ、太さ2-3センチ)に収穫する。この根が、百薬の王といわれる朝鮮人参である。(次号につづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 -世界発信より-  (新連載)

   長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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世界の腰痛診療ガイドラインがエビデンスに基づき患者教育を推奨すると発表した論文を中心に、各国の医療情報を日々集約し開発を進めている「TMSジャパン・メソッド」。代表の長谷川淳史氏の厚意により、時々刻々と遷移する腰痛治療に関する世界の情報をお届けしていきます。ソースの詳細は英文です。SNSはもちろんブログやサイトに、引用先のURLごとコピー&ペーストしていただいてもかまいません。

【最新の腰痛に関する情報一覧】

■職場における腰痛予防に関する31件の比較試験を分析した体系的レビューによると、運動は腰痛による欠勤、医療費、発症率を減少させ、従業員の腰痛予防に有効であることが判明すると同時に、集学的介入には疼痛軽減効果が確認された。 http://1.usa.gov/savytC

■腰痛予防に関する体系的レビューの結果、柔軟体操、ウイリアム体操、マッケンジー法などの運動療法には筋力・持久力・柔軟性向上以上の利点があり、動作や活動に対する自信、損傷に対する恐怖心、疼痛の捉え方を変化させる可能性あり。 http://1.usa.gov/vi52lt

■椎間板変性疾患というレッテルは科学的根拠のある診断名ではない。椎間板に異常があってもほとんどの患者は手術をしなくても回復するため、手術は優先順位の低い選択肢と考えて保存療法で症状が改善しないごく一部の患者に限定すべき。 http://1.usa.gov/sJxrHg

■慢性筋骨格系の疼痛・うつ病・不安障害の間には強い関連がある。精神疾患の併存は過去3ヶ月の活動障害日数と関連し、疼痛のみでは18.1日、疼痛+不安障害は32.2日、疼痛+うつ病は38日、疼痛+うつ病+不安障害は42.6日。 http://1.usa.gov/vndBSW

■慢性筋骨格系疼痛にうつ病と不安障害が併存する患者は疼痛の重症度が最も高い。一部の医師は疼痛の治療によってうつ病や不安障害も改善すると信じているが、もし医師が疼痛の治療だけに集中すれば誤診と過少治療に繋がる可能性がある。 http://1.usa.gov/vndBSW

■WHOの心理的問題に関するデータを用いて14ヶ国の患者25,916名を分析した結果、プライマリケアを訪れるうつ病患者の約70%は身体症状を主訴として受診しており、最も一般的な症状は疼痛に関連するものであることが判明。 http://1.usa.gov/vztifY

■農業従事者1,221名と非従事者1,130名を対象にした前向きコホート研究では、腰への負担が大きいほど腰痛発症率が低下。腰痛の原因は「摩耗・損傷モデル」では説明不可能。腰の健康を保ちたいなら肉体労働を恐れてはならない。 http://1.usa.gov/uk4Nk9


<<<連 載 ⑨ >>>
【REVIEW】

WHO 『健康の社会的決定要因 確かな事実の探求』第2版

<訳:WHO健康都市研究協力センター・日本健康都市学会・健康都市推進会議>


■ 5. 労 働

職場でのストレスは疾病のリスクを高める。仕事に対してコントロールができる人ほど、健康状態が良好である。

【現 状】
就労していることは、仕事を持たない状態よりも概ね健康には良い。しかし職場の社会的組織、経営方針、職場での社会的人間関係といったこと全てが健康に関わってくる。仕事上のストレスが健康状態を大きく左右し、病気による欠勤や早死にの重要な原因になり、健康の社会的格差にも関わってくることが明らかになっている。
ヨーロッパでの職場に関する研究では、人が自分の技術を使う機会に恵まれない時や意志決定の場で低い権限しか持ち得ないときに健康上の問題が起きるとしている。仕事上の裁量の自由と決定権(コントロール度)が低いと、特に腰痛、病気による欠勤、心血管系疾患の増加を引き起こす。これらの危険性は個人の性格的特徴とは無関係であることが分かっており、つまるところ、職場環境との関連性が指摘されている。
研究機関は仕事の要求度の役割についても研究を進めている。要求度とコントロール度は互いに影響し合い、要求度が高くコントロール度の低い仕事には特別なリスクが伴う。職場内の社会的支援によって、人々を守ることができる可能性も示唆されている。
さらに、仕事上の努力に見合わない低い報酬は、循環器系への危険性と関連が深い。報酬の形態には賃金や昇進、自分に対する満足感などがあるが、現在の労働市場における変化は雇用機会の構造を変え、人々がふさわしい報酬を得るのを難しくするだろう。
これらは、仕事における心理社会的環境が健康の重要な決定要因であり、健康の社会的格差の要因となっていることを示している。

【提 言】
・職場での健康と生産性の関係は、一方が良くなれば他方が悪くなるというものではない。良好な労働環境が健康な労働力を生み、生産性を向上させ、さらに、一層生産性の高い、健康的な職場へと変わっていく。このような効果的な循環を確立することが可能である。
・意志決定の場にそれなりに関与することは、社内のあらゆる層の従業員に有益である。従って労働環境の構築や改善に働き手が関わる仕組みが必要である。結果、従業員が仕事を進めるにあたり、様々な事柄を自ら調整できる機会を得ることになる。
・有用なマネジメントは全ての従業員にとって相応の報酬を保証するものである。賃金や昇進、自分に対する満足感という形態を取る。
・身体的な負担を減らすため、職場の環境は人間工学的に適切なものでなければならない。
・法律によるコントロールと検査の権限(チェック機能)を持つ効果的な職場基盤の整備が必要なのと同様に、職場での健康維持管理のために、精神的な問題の早期発見や適切な関わり合いを持つ訓練を受けた者が職場に配置されるような健康に関するサービスも必要である。(次号につづく)


◆◆◆ ⑥ ◆◆◆

『意識に基づくエネルギー療法 “ BodyTalk ”』

…… 今 田  泰 (IJBA東日本支部 支部長)……


前回は「意識」について学ぶ「意識の原理」(旧称モジュール3)について解説した。今回は「生体力学」(旧称モジュール4/7)について解説していく。

<< 生体力学>>

ここで学ぶ内容は「エネルギーシステムとしての身体」である。身体のエネルギーシステムと肉体的な機能をいかに統合させていくか、そしてスポーツ医学や筋骨格系の疾病についても重点的に取り上げる。

・様々な手法の融合

「生体力学」には古今東西の様々な療法の概念が含まれている。保護エネルギーである「衛気」の役割と、その機能のバランスをとる方法や陰陽、五行の考察などは中医学に基づく。
この五行から発展して経絡と筋との関連性やその関係から生じやすい筋への感情エネルギーの蓄積(すなわち「水」の要素の筋である大腰筋に「水」の要素の感情である恐れが蓄積しやすい)、慢性関節痛への対処としての「リハビリ」テクニック、「体の心理学」とも言える体の各部位の病的な思考や感情の詳細な研究、感情や思考の処理をする横隔膜の役割と「感情の解放」のテクニックなどはここ数十年で開発されてきた種々のセラピーからの発展形と思われる。
「体ヴィヴァックス」のテクニックは基本的にはある部位と他の部位の位置関係の調整であるが、BodyTalkにおいては対象部位を心身複合体全体へ再適応させるという意味合いを持つ。
またスポーツ医学に関連して、急性および慢性のスポーツ外傷に対してBodyTalkを使用する際の具体的なガイドラインを学習するとともに、ある目的のもとに、運動選手が特定のイベントで最大の成果が出せるよう調整を行う方法も学ぶ。例えば1週間後に控えている試合でベストパフォーマンスが発揮できるようにセッションを行うといったことが可能になり、筆者も数名のアスリートやバレエダンサーのセッションで劇的な効果を実感している。この方法はアスリートの力強いサポートとなるであろう。

このように各療法の叡智と臨床的経験を融合させ、さらに新たな形に昇華させたものが「生体力学」のクラスであり、このことよって、お互いを補完しうる包括性を持つのである。(次号へつづく)


<<連載>>

カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト<第19話>

       保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


カイロプラクティック矯正の
誤った認識や先入観(つづき)

実際の脱臼や肘内障などの亜脱臼は、そのかすかな整復音が脱臼整復の目安にもなるが、脊椎矯正のキャビテーションによる矯正音は、実際の脱臼整復とは質が異なる。しかし、カイロプラクティック矯正はそのようなボキッという音や手法的パフォーマンスが先行するため、そのような先入観をもっている患者にとって、治療器具による矯正はものたりない。平たくいえば、ボキッという音が鳴る矯正のパフォーマンスがなければ、矯正された感じがしないということである。
しかし、このボキッと音を鳴らす矯正法と、治療器による矯正法を力学的に検証すると、矯正ターゲットである脊椎にかかる振動は、治療器による振動に比べて静的であることが示されている。
医学雑誌『SPINE』(Oct. 2001; 26:2105-2110)に掲載された研究論文によると、結論的に素手による直接的な矯正力の多くは、対象とするターゲットではなく、他の組織にその力が分散されていたとの報告である。この研究では、特定された胸椎に加わる局所力を測定したところ、力の合計は238ニュートンであったが、実際の矯正ターゲットである胸椎の横突起にかかる力は5ニュートンで、全体のわずか2%にしか過ぎなかったとの結果が報告されている。
矯正面が大きければ大きいほど、目標とする力は分散されやすいということは、普通に考えれば当たり前のことであるが、体重をかける強い矯正は、力強く、効果的な矯正であるかのように惑わされやすい。

生体のコントロール中枢である
神経系を評価基準とする

本来のカイロプラクティック徒手矯正の最終目標は、神経系の機能改善であるため、その目的が達成されたかどうかの指標は、神経学的反射作用を利用した検査でなければ、その判断は困難になるはずだ。しかし、科学的、客観的だといって、レントゲン写真で治療前と治療後を比較する場合が多い。
治療前と治療後の結果の位置関係や動きの改善の比較は、わかりやすい比較であるが、サブラクセイションを評価する上で、果たしてレントゲン分析やモーションパルペーションによって神経学的機能異常(サブラクセイション)が分析できるといえるのだろうか? カイロプラクティック矯正後の治療前、治療後の評価には、モーションパルペーションやレントゲン分析は役立つかもしれないが、カイロプラクティック矯正のターゲットにするための評価基準としてはあまりにも曖昧ではなかろうか?
そのような機械的な構造の検査法に熟練しても、生体の神経反射作用を利用した検査法でなければ、カイロプラクティック矯正がいつ必要なのか、いつ必要でないのかの検査が曖昧になるであろう。ましては、矯正音が鳴ったことが矯正完了の目安にはならないはずである。(次号につづく)


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (19)

       根本 良一(療動研究所主宰)


2.操作の基本:内腿部への動き

内腿部の股関節を動かす内転筋群や膝関節まで動かす半腱様筋、半膜様筋、大腿薄筋、縫工筋なども考え合わせた動きである。ただしこの場合は、特定の筋の動きではなく、いくつかの部分の動きからの連動による身体全体の変化であることから、末端からの動きに従って順に説明していく。

1) 足首の動きから
足首の動きは、①足先を内向きにする、②外向きにする、③反らす、④伸ばす、ことを行う。内腿部の筋を緩めるためには、②足先の外転(外向き)に限定される。さらに残る2種、すなわち③反らす、または④伸ばす、との組み合わせになる。
椅子のかけた姿勢で、足先の動きをより大きくし、よく連動させるために、
 a) 内腿部の下側を緩めるには、動きやすい順に足先の外転を優先し、足先の外転+背屈であり、踵をつけて(これが支点)、足先を小指側にまわし、そのまま反らす。
 b) 内腿部の上側を緩めるには、動きやすい順に足先の底屈を優先し、足先の底屈+外転になる。足先(前足底)をつけて(支点)、踵を下げ、踵を前へまわす。
 
2) 膝の動きから
内腿部下側は、膝関節の屈筋群(曲げる筋)なので、膝を伸展させる動作を加える。
内腿部上側は、膝関節の伸筋群(伸ばす筋)なので、膝を屈曲させる動作を加える。
膝関節の屈筋側、伸筋側は互いに拮抗関係(逆の作用をしバランスをとる関係)にあるから、片方だけの操作ではすぐに戻ってしまう。そのため両方を操作する方がよい。
内腿部の筋は、太ももを内に向ける「内転筋群」が主になるから、構成するそれぞれの筋の性格に従って、足首の動き、膝の動き、上体の動きに加えて、太ももの外転(膝を外に向ける動作)をさせると相乗効果が上がる。

3) 上体をまわす動きから
①肩の向く方の内腿部下側が緊張し、同時に内腿上側が緩む。
②肩の向く逆方の内腿部下側が弛緩し、同時に内腿上側が緊張する。
ここに出てくる3つの部分、すなわち、
 a) 足指の動き:外転(外へまわす):共通
 b) 膝の動き:屈・伸(曲げ伸ばし)、外転のみ共通
 c) 上体の動き:肩を捻る(回旋)、足先と同方、逆方
を併用すれば、より効果的な操作ができる。
足の外転軸(足先を小指の方へまわすときに踵-膝を結ぶ中心線)よりあまり遠くならない位置に手をかけ、気持ちよく動けるように配慮して行うと一層効果が大きくなる。 (次号につづく)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■男性型脱毛症「AGA」 飲み薬で効果


遺伝的に髪の毛が薄くなるAGA(男性型脱毛症)は、男性にとって深刻な悩みだ。そんなAGAに効果のある飲み薬が普及し、気軽に治療を受ける人が増えているという。
AGAは思春期以降、額や頭頂部の毛髪が細く薄くなり、抜け毛が進行する。発症年齢や進行の速さは個人差があるが、確実に進行することが特徴。日本人男性の約3人に1人がAGAとされる。
主な原因は、男性ホルモン「テストステロン」に「5α-還元酵素Ⅱ型」が作用し、別の男性ホルモン「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変換され、髪の成長を抑制するため。この酵素を阻害する内服薬「フィナステリド」が開発され1998年に米国で発売された。国内でも7年後の平成17年から医師の処方薬として流通している。
日本皮膚科学会は平成22年4月、AGAの治療薬について5段階で評価した初の診療指針を発表。塗り薬のミノキシジル(商品名リアップ)と飲み薬のフィナステリド(商品名プロペシア)を強く勧められる「A」と評価した。
ガイドライン作成に携わった大阪大大学院皮膚・毛髪再生医学寄附講座の板見智教授は「世界中の論文を集めて検証し、この2つはかなり推奨できることが分かった」と振り返る。
AGAと診断すると、まずフィナステリドを1カ月分処方する。服用は1日1回で、費用は1カ月分で約1万円。問題がなければ内服を続け、半数以上の人が半年から1年で効果を実感するという。(産経新聞10/16)


NEWS ■ランナーに増える“疲労骨折” 無理して走ると逆効果


相変わらずのマラソンブーム。本来健康にいいはずのランニングだが、それには限度がある。無理して走り過ぎると、逆に健康を害することも…。
Aさん(47)は走歴5年のオヤジランナー。“にわか”も5年続くと立派な趣味だ。当初84キロもあった体重は、今では60キロ台前半で推移し、それに応じてタイムも徐々に短くなってきている。今年は奮発して暮れのホノルルマラソン参加を決めたAさん。夏から走り込み強化に努め、9月の総走行距離は220キロを超えた。
そんなAさんの左の足の甲に痛みが出た。症状は「走ると痛い」から「歩くと痛い」に進展し、1週間後には「何もしなくても痛い」に増悪。整形外科を受診しエックス線検査を受けたところ、足の中指の中ほど、甲のあたりの骨が“コブラの頭”のように膨らんでいるのが見えた。診断は「疲労骨折」だ。
東京・板橋区にある「常盤台らいおん整形外科」院長の小崎直人医師は「走らなければ…という強迫観念を背負い込むタイプに多く見られる」と警鐘を鳴らす。「エックス線で骨が膨らんで見えた時点でしっかり休養を取れば、1カ月程度の安静でランニング再開も可能ですが、無理して走り続けるとポキンと折れてしまい、こうなると2-3カ月は走れなくなります」
小崎医師は、走り過ぎだけでなく、ランニングフォームに問題があることも多いと指摘する。いずれにしてもホノルルマラソンまで2カ月を切っている。30万円近い旅行代金は払い込み済み。出場できるのか、あきらめなければならないのか…。彼のストレスは貯まるばかりだ。(夕刊フジ10/10)


NEWS ■うつ病、世界で3億5000万人=自殺者の過半数


世界保健機関(WHO)は9日、うつ病など精神疾患で苦しむ人が世界で3億5000万人を超えるとの推計を発表した。年間約100万人の自殺者のうち、過半数がうつ病の兆候を示していたとみられ、うつ病に苦しむ人に気付き、治療の支援を行う必要があると訴えている。
うつ病になれば激しい気分の落ち込みが長期間続き、仕事など日常生活に支障が出る。大人のおよそ5%がうつ病にかかるとされるなど、WHOは地域などに関係なく「世界的な現象」としている。
女性のおよそ5人に1人が産後うつを患うほか、アルコールや薬物中毒、経済状況、失業といった外部環境もうつ病を招く要因。治療薬、専門家によるカウンセリングといったケアが効果的だが、病気を自覚しないなど「必要な治療を受けている患者は半数にも満たない」という。(時事通信10/10)


NEWS ■「かかりつけ歯科医」を持つ人は17%


「歯と健康」と「体の健康」は関係があると思う人が9割以上いるにもかかわらず、「かかりつけ歯科医」を持っている人は17.4%にとどまることが、義歯ケア用品を販売するグラクソ・スミスクライン社の調査で分かった。
調査は、口腔ケアと体の健康に関する意識と歯科医院に通院する頻度の実態把握を目的に、9月18日から同19日までの2日間、インターネット上で行われた。全国の50歳以上の男女1032人から有効回答を得た。
同じ歯科医院に定期的に通うことで、36.8%が「改善されたと感じた」と回答。主な理由として「食事がおいしくなった」(48.8%)、「体の不調を感じなくなった」(26.7%)を挙げており、「かかりつけ歯科医」のおかげで、自身の健康状態が改善されたと考える人が多いことがうかがえる。
今回の調査結果について、日本義歯ケア学会の濱田泰三会長(東北大客員教授)は、「歯の健康に限らず全身の健康維持という観点からも、歯に何か異常を感じてから歯科医院に行くのではなく、定期的に通い、適切なケアやアドバイスを受けることが大切」と指摘。「かかりつけ歯科医」を持つことが、心身の健康維持や増進につながると強調した。(医療介護CBニュース 10/9)


NEWS ■中学男子50m走、過去最高を記録


小中高生の体力や運動能力の回復傾向が顕著になったことが、10月8日の「体育の日」に合わせて文部科学省が公表した平成23年度体力・運動能力調査で分かった。特に中学男子の50m走の平均は過去最高を記録したが、体力のピークとされる昭和60年ごろの水準と比べると、ほとんどの年代や調査項目で低い状態にとどまった。スポーツの実施頻度が大きく影響することから、文科省では「運動習慣のない子供への支援が重要課題」としている。
調査は昨年5〜10月に6〜79歳の男女約6万6000人を対象に実施。子供の体力は昭和60年ごろをピークに低下が指摘されてきたが、平成19年度から向上傾向に。今回も小学生(11歳)、中学生(13歳)、高校生(16歳)では、50m走やボール投げなど「走・跳・投」の項目のうち、小学男子の立ち幅跳びを除く全項目で、横ばいか向上傾向がみられた。
50m走では、昭和60年度に7.35秒だった高校男子は平成10年度に7.51秒に落ちたが、今回は7.33秒。特に中学男子の平均記録は7.83秒で、記録を取り始めた昭和39年度以降、最高だった平成3年度の7.87秒を上回った。(産経新聞10/8)


NEWS ■緑内障患者の5人に1人が治療を中断


緑内障患者のうち、点眼治療を自己判断で中断した経験のある人が2割に上り、治療中断によるリスクが患者に適切に伝わっていない実態が、ファイザー社の患者調査から明らかになった。
調査は今年9月12日、900人の緑内障患者を対象にインターネット上で実施した。その結果、点眼治療の中断率は18.7%で、40歳代男性に限ると25.3%に上った。中断者の44.6%は1年以上治療しておらず、平均中断期間は4.5年だった。点眼治療を中断すると視野欠損が進行する恐れがあるが、中断者は治療継続者に比べてそうした疾患・治療への理解度が低く、中断によるリスクについて医療者から説明を受けていた割合も少なかった。
調査には、1071施設の医師1372人が参加。緑内障、高眼圧症と診断され、配合薬以外の点眼薬治療を受けており、担当医の判断で新たに配合薬が処方された患者を対象に、配合点眼薬の使用前、初回処方から4〜6週間後、6カ月後に服薬実態を調べた。(日経メディカル10/8)


NEWS ■最期の迎え方、患者が選択 初の導入へ


終末期に人工呼吸器や胃ろうなどの延命治療を希望するかどうか。高齢者医療の先端治療研究施設、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)は近く、患者が家族、医療関係者と話し合って最期の迎え方を決め、それに沿った治療内容やケアを行う仕組みを導入する。これまで「無駄な延命」を希望しない意思を事前に示す取り組みはあったが、対話を通じて治療内容や最期の迎え方まで決める取り組みは初めて。
年齢や病状の重さにかかわらず、すべての入院・通院患者の希望者を対象とする。計画によると、まず患者は、家族をまじえ、研修を受けた看護師らと面接し、治療の内容や予測される効果などの説明を受ける。その上で、最期の治療方針などを決め、電子カルテなどに記録する。
延命治療については、心肺蘇生法や人工呼吸器、胃ろうなどの人工栄養などを、希望するかどうか三つの選択肢から選んでもらう。本人が判断できなくなった時、決定をゆだねる家族などの代理人を決めておくこともできる。(朝日新聞デジタル
10/3)


NEWS ■10代の頃の睡眠不足で将来は心臓病に…


10代の頃の睡眠不足が将来の心疾患リスクの増大につながる可能性が、カナダ、トロント小児病院呼吸器専門医/睡眠医学部長のIndra Narang氏らが思春期の若者4,104人を対象に行った研究で浮か
び上がってきた。
研究論文では、被験者が平日は一晩平均7.9時間、週末は平均9.4時間眠っていることが判明。被験者の20%近くは平日の睡眠の質が低いと訴え、10%が週末の睡眠不足を報告した。また、被験者の約6%は、睡眠補助薬を使用していた。
睡眠障害は、揚げ物やソフトドリンク、菓子、カフェイン入りの飲料の摂取、運動不足、長時間に及ぶビデオゲームやコンピュータ、テレビの視聴といった因子に関連していた。また、睡眠障害スコアが高く、潜在的な心疾患の危険因子である高コレステロール値や高血圧、BMI、胴囲が大きいことと関連していた。(Canadian Medical Association Journalオンライン版10/1 )


NEWS ■認知症 音楽で症状緩和 三重大で講座


音楽を通じて認知症の症状緩和を図る音楽療法室が三重大学に開設された。医学部内に音楽療法講座を設置するのは国立大としては東北大に続いて2例目。臨床データの不足などで医療としての確立はこれからだが、高齢者やその家族からは好評を得ている。
大学内に音楽療法室を置く利点は、療法士と医療従事者のチームが互いの知見を持ち寄り、患者に対して的確な治療ができることだ。療法は週1回1時間、体操などを行った後、カラオケや合唱などを行う。歌うのは、患者が10代後半から20代当時に流行した「見上げてごらん夜の星を」などだ。
完治はできなくても、緩和させたり、進行を遅らせたりする効果が期待される。また、家族からは「表情が柔らかになった」という声も出ているという。(毎日新聞社9/29)


NEWS ■和温療法、高度医療に 鹿児島大の心不全治療


厚生労働省の専門家会議は9月27日、医療用に特別に開発されたサウナを使って心機能を高める鹿児島大の「和温療法」を、慢性心不全治療の高度医療として認めることを決めた。未承認の機器を使うため費用はすべて患者負担だったが、11月にも、診察や検査、入院費など通常の診療と共通する部分には保険が適用される。
治療では(1)温度が低めの乾式サウナに15分間入って汗を流す、(2)サウナを出て30分間にわたり安静にする、(3)水分を補給する、の手順を繰り返す。体温が穏やかに上昇することで全身の血管がわずかに広がり、心臓の負担が軽くなる。国内では薬物を使わない心臓治療法として20年間で1000例以上の実績があるという。(共同通信社 9/28)


NEWS ■モヤモヤ病の専門外来 国立循環器センター


大阪府吹田市の国立循環器病研究センターは9月24日、脳内の細い血管が異常に増える難病「モヤモヤ病」の専門外来を設置すると発表した。開設は10月1日付で、診察日は毎週水曜日。センターによると、モヤモヤ病の専門外来設置は全国的にも珍しい。センターの中川原譲二・脳卒中統合イメージングセンター部長は「脳ドックでモヤモヤ病が見つかる例が増えており、患者の受け皿になるようにしたい。患者を長期的にフォローして社会的支援にもつなげたい」としている。
モヤモヤ病は、脳の太い動脈が細くなったり詰まったりしたために起きる。脳血管の造影検査をすると、増加した血管がもやもやと”煙”のように見えることから名付けられた。
子供から大人まで幅広い年代で発症し、国内の推定患者数は約7500人。日本人に多いが原因ははっきりせず、意識障害や脳出血が起き、重症の場合は死に至ることもある。モヤモヤ病がもとで記憶力が落ちたり、対人関係をうまく築けなくなったりする「高次脳機能障害」も問題となっているという。(共同通信9/25)


NEWS ■親の離婚で息子の脳卒中リスクが増大?


親の離婚と男児の将来の脳卒中リスクには強い関連がある—-そんな可能性を示唆する結果をまとめた研究論文が「International Journal of Stroke」9月号に掲載された。
カナダ、トロント大学のEsme Fuller-Thomson氏らの研究で、18歳になる前に親が離婚した男児は、離婚していない家庭で成長した場合よりもが成人になって脳卒中を発症する可能性が約3倍高いことが明らかになった。この高いリスクは、家庭内暴力や親の依存症など、その他の寄与因子によるものではなかったという。人種や収入、教育、喫煙などの成人の健康行動といった因子で調整しても、親の離婚は、男性の脳卒中リスクが約3倍高いことと関連していた。
なぜ親が離婚した男性の脳卒中リスクは高いか、その理由は不明だが、ストレスホルモンであるコルチゾール値と関係する可能性を示唆している。離婚した家庭でも女性の脳卒中リスクは増大しなかった。Fuller-Thomson氏は、「親の離婚というストレスに曝されると、それ以降の男児のストレスに対する反応が変わるという生物学的意味を持つ可能性がある」と述べている。(International Journal of Stroke 9/25)


■次号のメールマガジンは2012年11月15日ごろです。お楽しみに。


[発行]産学社エンタプライズ