エンタプライズ発信〜メールマガジン【№100】 2019. 8
いくら酷暑の夏でも冷たい飲み物をとりすぎるとお腹を冷やします。外出先では電車もバスも自家用車もけっこう冷えていることが多いです。お腹の調子が悪くなるとトイレが必要になることも…。都市部の公衆トイレはおおよそ洗浄機付き便座です。「自宅以外のトイレで洗浄機能を使うか」どうかなのですが、雑誌による統計では「できるだけ使わないようにしている」「絶対に使わない」が約49%でした。不特定多数の人が使う便座ですから、衛生面を考えるとさもありなんです。ところで海外での洗浄機付き便座の普及はどうなのでしょうか。ほとんどの国のレストラン、ショッピングモール、スーパー、ホテルや遊園地などでは見ることはできません。普及しない理由のひとつは水質です。硬水である国や地域ではコップやポット、シャワーヘッドの孔に石灰がこびりつき固まってしまうので、洗浄機のノズル孔もやがて詰まってしまい機能しません。また水回りのあるユニット形式が多いので便器そばには電源がないのがふつうです。そのほか日本の100V電源は世界で一番電圧が低く、世界の主流220〜230Vでは感電に対して危険意識が高いようです。もちろん水の出るノズルの先が不潔だと考える国民性も反映しています。日本の都市部ではいたるところにある洗浄機付きトイレですが、今は携帯用おしり洗浄器(手動式or電動式)など便利なものもあります。どうしても公衆では…、と心配な人は家族ぐるみで自己防衛を考えてみましょう。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S
Information 1
咬合バランスとヒト直立バランスの因果関係に着目し、上部頭蓋や下顎骨などの動きを歯科とヒト構造を統合し病理および検査・治療法を啓発しつづける日本直立歯科医学研究会の年次学術大会が東京で開催される。概要は以下のとおり。
- 日時:9月28日(土)13:00〜17:40 ・29日(日) 9:30〜15:00
- 会場:東京工業大学 大岡山キャンパス
(東京都目黒区大岡山2丁目12-1) - 主催:日本直立歯科医学研究会
- テーマ:バランスよくまっすぐ立つために下顎平衡機能の理解を深めていくこと、それが未来の歯科医療への扉
- 詳細は、http://douken.kenkyuukai.jp/about/
Information 2
EPIC(エビデンスに基づく患者中心 の医療専門職連携)が国際的なカイロプラクティック業界で重視されてきていることから、今年はエビデンス(科学的根拠)に基づく臨床をテーマに開催します。
- 会期:11月3日(日)10 時〜17時、11月4日(月)9時30分〜16時
- 会場:昭和女子大学 オーロラホール(東京都世田谷区太子堂1-7-57)
- テーマ 「エビデンスに基づく臨床を目指して」
- 主催:日本カイロプラクティック科学学会
- 事前参加申し込みの締切り:10月1日(火)
- 詳細は、https://www.chiropractic.or.jp/congress/
㉗
老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)
白血球はマクロファージから進化した
[太田] 安保先生の免疫学は、白血球や自律神経などの研究から疾患の成り立ちや生命現象を読み解くという学問ですが、生物の進化という生命全体の流れの中で一つ一つの現象を捉えていくという姿勢は、我々のミトコンドリア研究と通じるものがあると感じています。
[安保] ミトコンドリアの祖先は20億年も前に地球上に増え始めた酸素からエネルギーを取り出し始めたわけですが、白血球の祖先と言えば単細胞生物時代の生き残りであるマクロファージという免疫細胞でしょうね。
[太田] リンパ球や顆粒球など白血球にはさまざまな種類があって役割分担されていますが、これらはマクロファージから進化してきたのですか。
[安保] はい。体内に異物が入ってきたらそれを食べて処理するというのがマクロファージの基本的な働きです。脊椎動物のころから白血球の進化が起こるわけですが、これはマクロファージから顆粒球、リンパ球へという進化です。つまりマクロファージの貪食能(異物を直接食べる機能)を進化させたのが顆粒球、異物認識と接着能力を高めたのがリンパ球です。
[太田] それまでのマクロファージの仕事を分担してより専門性を高めたわけですね。顆粒球は細菌などの大きめの異物を直接食べる仕事、リンパ球はもっと小さなウイルスや消化酵素で分断された異種タンパクなどを捕まえて殺す仕事みたいな感じでしょうか。
古くから存在する機能のほうが万能である
[安保] そんな感じでしょうね。それで、仕事の引き継ぎを終えたマクロファージが引退するかと言うと、そうでもない。
[太田] 「抗原提示」の仕事が残っていますからね。抗体をつくる指令を出すのはリンパ球のヘルパーT細胞ですが、その指示を出す仕事をしているわけですね。
[安保] 面白いことに、マクロファージをすべて取り除いてしまうと免疫反応は起こりません。リンパ球は指示をもらわないと、抗原を認識することができないんですよ。
[太田] 白血球の中でマクロファージが占める割合はたしか5%程度です。数が少ないだけにその役割は重役クラスというところでしょうか。もともとマクロファージは顆粒球とリンパ球の役割を兼ね備えた存在だし…。
[安保] 自律神経との関係にもその違いは現れています。顆粒球はアドレナリンの受容体をもち、興奮状態など交感神経優位の状態で働きますが、リンパ球はアセチルコリンの受容体をもっていて、リラックスした副交感神経優位の状態で働きます。マクロファージの場合は、アドレナリンとアセチルコリンの受容体を併せもっていて、自律神経がどちら側に傾いても働くんですね。
[太田] 古くから存在する機能のほうがオールマイティであるというのはよくある話ですね。進化したものは特化された専門職的な機能となります。物事が高度化して複雑になるということから考えれば当然のことですが、そのような歴史を経てきたことが忘れられて、高度化した機能のみしか見えなくなるのは問題です。
連載vol.58
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
生体における結晶半導体
セント・ジョージの仮説が非常に重要なのは、「結晶格子のように、多数の原子が密接しながら規則正しく配列する」という表現が、全身のあらゆる構成要素にくまなく広がる生体マトリックスにそのまま当てはまるからである。生体マトリックスの結晶性は、その要素である結合組織や細胞骨格および核の分子そのものがきわめて規則正しい配列をもつことに由来する。
結合組織とその成分である細胞骨格や核基質は「あたかも」結晶のようにふるまうことから、「準結晶」とも呼ばれている。規則正しい分子配列は強い張力や柔軟性、そして連続性をもたらし、こののち述べる「創発的な反応」を可能にする。
結合組織に含まれるコラーゲンは非常に融通の利く分子で、弾力のある蛋白質エラスチンや種々のグラウンドサブスタンスと混ざり合うことによって、さまざまな物理学的および電気的性質をもった組織を作り出す。例えば表層筋膜、筋筋膜、骨を覆う筋膜、神経、血管、骨、腱、靭帯、臓器を包む被膜、関節、軟骨、そして線維性の隔膜は、すべてコラーゲンからできている。
物理学には、規則正しい配列をもった系を専門に研究する分野がある。この分野は「固相物理学」と呼ばれ、固体の物理学的性質と、結晶のように規則正しく並んだ原子や分子が生み出す特性を研究する。固相物理学から生まれた理論や測定法は、生物学を含めたいろいろな学問分野の研究に役立っていることを知っておいていただきたい。
結晶の重要性
1941年のセント・ジョージの論文には「密接する多数の原子が規則正しく配列した、結晶格子のような構造」をもつ分子のことが書かれていた。しかし結晶の性質は、構造を作っている原子の性質だけでは説明がつかない。例えば電子、陽子、フォノン、プラズモン、正孔、励起子、ソリトン、ポラロンなどはすべて結晶に含まれる成分であり、これらの粒子・素粒子が一体となって、結晶に特有の性質を生み出しているのである。ところが結晶構造が崩れて原子がばらばらの状態になると、結晶には存在していた種々の個性あふれる粒子・素粒子は姿を消すか、完全に消滅はしないまでもその性質は著しく変化する。ここで強調しておきたいのは、さまざまな成分が一体となって作りだす結晶の特性は、それぞれの成分を別々に研究しても予測できないということである。
これは極めて重要なポイントだ。結晶になって初めて現れる特性こそが、生命体と非生命体を分ける要因なのだ。またこの特性がうまく現れているときが「健康」な状態であり、これが十分に発揮されなくなったときが病気や障害と呼ばれる状態である。したがってスポーツや芸術で素晴らしいパフォーマンスを見せるには、結晶成分の微妙なバランスから生まれる協力効果が絶対に不可欠だ。治療の場にせよ、オリンピックの競技にせよ、優れた成果を挙げるには,生体の各部位が互いに相乗的に機能しなくてはならないのである。(出典『エネルギー療法と潜在能力』小社刊)
連載エッセイ 67☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
関節痛の施術の本質は何か?(前編)
例えば、可動域の広い肩関節や股関節に左右差がある場合、それは、器質的(構造的)なのでしょうか? それとも機能的なのでしょうか?
もしも、その原因が機能的なものであれば、多くの場合、関節の可動に伴って「痛み」などの症状を伴うことが多いようです。
もしも、その原因が器質的なものであれば、骨の変形や筋肉の拘縮などによる構造的な制限によって可動域は制限されますが「痛み」などの症状はほとんど伴いません。
代替医療の治療院に来院する患者さんの多くは、構造的な問題ではなく「機能的な問題」を抱えて来院してきます。もちろん患者さんは「機能異常を治してください」と言って来院するわけではなく、病院で治らなかったから来院する人がほとんどです。よって、私たち代替医療の治療者は、病院の医師のような診方ではなく、機能的な問題を分析できる知識や技術をもたなければなりません。
構造的な問題であれば病院で明らかになりますが、微妙な機能的な問題の特定は病院では明らかにならないことが普通です。我々の治療院に来院する多くの患者さんは、病院での検査では痛みに関連する原因が見つからないまま、痛み止めや消炎剤などの対症療法を受けて、症状が改善されずに来院します。
痛みをかばって、まともに歩行できないなどの機能異常は病院でも明らかですが、痛みを引き起こしている機能異常の特定までには至りません。病院で改善されない肩関節痛、膝関節痛、股関節痛の患者さんの多くは、機能異常から生じています。なぜ、そのように言い切れるのかというと、臨床現場で多くの関節痛の患者さんを治療させていただいて、控えめに言っても9割以上の患者さんが、治療後には症状の軽減、消失を体感されているからです。
多くの症例において、症状を伴う関節には必ずと言っていいほどマッスルテストにおいて機能異常が確認されます。施術によって機能異常が改善されると、多くの症状は軽減、消失します。症状の程度によっては炎症症状が強い場合、あるいは痛みの記憶が残りやすいなどで、施術後すぐに改善を感じられない患者さんも少なからずいますが、ほとんどの患者さんが改善を体感されます。
さて、施術では何をしているから機能異常が改善されるのでしょうか?
(後編へつづく)
円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
バウンダリーと言葉の力
私たちはクライアントと単なる言葉以上のやり取りをしています。私たちの発言を通して、私たちのプロとしての姿勢や価値観がクライアントに伝えられ、またセッションの役割と意思などについてやり取り(それは非言語的な場合もあります)が常に行われています。私たちがクライアントに言った言葉は、次の2つの大きな影響力によって本来よりも重みをもって彼らに伝わります。
・転 移
クライアントは私たちに対して実際よりも大きく、力強く映りますし、外部で見知らぬ状態で会ったとき以上の賞賛の気持ちと敬意を払っています。もしくは必要以上に身を固くし、用心深くなっているかもしれません。クライアントがこの心理的不均衡に反応する過程を転移と呼びます。肯定的転移と否定的転移があります。
・変容意識
セッション中、クライアントはふだんよりも無防備で心を開いていて、より私たちの言葉は彼らの心の深い部分まで伝わる状態です。
これら2つの事柄による影響のため、クライアントは私たちの言ったことに敏感に反応してしまうかもしれません。例えば私たちはそんなつもりはないのに、クライアントは誰かを批判しているかのように話を聞いていたりします。もし私たちがネガティブだったり、非難がましいニュアンスの発言をすると、クライアントの気持ちをくじいてしまうかもしれません。そんなクライアントの反応について例を挙げてみます。
≪二度とあのセラピストのところへは行かない! 彼のせいで自分が太っていて魅力がないように感じてしまったの。そう、彼が私の胃の近くをワークしているときにこう言ったわ。「あなたは肥満していることが及ぼす身体への悪影響についても、もちろん気づいているとは思うのだけどね…」≫
一方、思いやりの言葉は同様に強い影響を与えます。
≪僕のボディワーカーはこんなこと言ってくれたんです。「先週は大変だったようですね。私のセッションがあなたの助けになればいいんだけど…」僕は施術される前からリラックスしているのを感じました。≫
私たちの言葉は、彼らのハートに触れることもありますし、彼らを意気消沈させてしまうこともあるのです。(つづく)(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,Bodyworkers,and Movement Teachers. 2nd ed. 2006)
◆連載21◆
『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く
孫 維良(東京中医学研究所所長)
・乗り物酔いを予防する耳たぶあんま
耳にはツボと同じように、押したり揉んだりするだけで体にいろいろな作用をもたらす反応点と呼ばれる小さな点が密集しています。乗り物酔いを防ぐ効果がある反応点は、耳たぶの上端(耳の穴へと向かって陥没していく耳の穴の始まりと耳たぶのほぼ境目)にあります。
乗り物に乗り込む前に、この反応点を親指と人差し指で右耳の反応点をつかみ、左手の親指と人差し指で左耳の反応点をつかみ、同時につまみ揉んでください。30秒前後もみつづけましょう。
耳たぶあんま以外で効果的な方法は、臍の上に紙の絆創膏を貼ることです。酔って胸がムカムカするのは、上半身にばかり気が集まっているためで、臍に絆創膏を貼ると上に集まり過ぎている気が自然に臍の方に下りてきます。そのため乗り物酔いを予防することができるのです。
なお紙の絆創膏に米粒を置いて、臍の上に貼ると、米粒が適度の刺激になるためさらに効果が増します。ただし、絆創膏を長く貼っていると肌がかぶれる可能性があるので、乗り物から降りたらすぐにはがすようにしましょう。
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(74)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****
腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■レッドフラッグのない腰痛患者に対するルーチンな早期画像検査にメリットのないことは明らかだが、それを一人の患者に説明するのに30〜45分かかるために診療スケジュールが大混乱する。時は金なりが過剰な画像検査の最大の理由。http://1.usa.gov/rpcVg2
……だからこそ現時点で判明している正確な情報の拡散が必要なのです。ネットで国民を教育できれば説明の手間が省けます。あとは診療報酬の問題をクリアすれば患者にとって最善の腰痛医療が実現します。
■ガイドラインの勧告を無視した根拠のない不適切な診断と治療が急増している。慢性腰痛に対してメディケアが支出した医療費は、硬膜外ブロックが629%増、オピオイド投与が423%増、MRIが307%増、脊椎固定術が220%増。http://1.usa.gov/uvRl1n
……腰痛患者が増え続けているのは効果のない不適切な医療が行なわれているからです。そろそろ根拠に基づく適切な医療を始めませんか? それともこのまま腰痛患者を増やしますか?
■大手民間保険会社の2000年〜2004年までのデータを分析した結果、MRIとCT実施率は50%以上増加し、PETは400%も増加していたことが判明。費用のかかる高度な画像検査は診療ガイドラインに基づいて行なうべき。http://1.usa.gov/tT81mY
……わずか5年間でこれほど画像検査が必要な疾患が増えたというのでしょうか。厚生労働省も一度調べてみるべきです。不必要な画像検査を減らすだけで復興財源を捻出できるかもしれません。
■メディケア受給者を調査した結果、11年間で腰痛患者(132%増)の医療費は387%増加し、2年間でブロック注射の費用は59%、MRIとCTの費用は42%増加。レッドフラッグのない61%がMRIを受けていた。http://1.usa.gov/tWSnmN
……腰痛患者が増えるとそれに伴い医療費も高騰し続けます。日本ではレッドフラッグ(危険信号)のない患者のほぼ100%に画像検査が行なわれています。このままだと遅かれ早かれ健康保険制度は崩壊の危機に瀕するでしょう。
■306ヶ所の医療機関からメディケア受給者をランダムに抽出して分析した結果、CTとMRIの実施率は地域によって異なっており、画像検査実施率が最も高い地域は手術実施率も最も高いことが判明。画像検査の妥当性には疑問がある。http://1.usa.gov/u160QN
……腰椎の画像検査実施率が高いとそれに伴って手術実施率も医療費も高くなりますが、患者の臨床転帰は改善するどころかむしろ悪化する傾向にあります。
■職場における腰痛予防に関する31件の比較試験を分析した体系的レビューによると、運動は腰痛による欠勤、医療費、発症率を減少させ、従業員の腰痛予防に有効であることが判明すると同時に、集学的介入には疼痛軽減効果が確認された。http://1.usa.gov/savytC
……運動が腰痛予防に有効だという第一級のエビデンスが(科学的根拠)示されたわけですが、それと同時に腰痛の治療には単独ではなく複数のアプローチが必要だということも明らかになりました。
N E W S
労働災害を巡り、60歳以上の死傷者が増加している。厚生労働省によると、昨年は3万3246人で、この5年間で7500人近く増えた。その割合も全体の4分の1を占め、主にサービス業での転倒や腰痛などが増加傾向にある。人手不足が深刻化する中、体力の衰えた60歳以上の労働者が増えてきているためで、厚労省の有識者検討会は年内にも健康管理や業務上の配慮など必要な対応策をまとめた指針を策定する。
厚労省がまとめた2018年の労災発生状況によると、死傷者数は全体で12万7329人(うち死亡者は909人)。このうち60歳以上は前年比10.7%増の3万3246人で、26.1%を占めた。同じ年の全労働者に占める60歳以上の割合は17.2%(総務省調査)で、労災の発生はこれを大きく上回る。
就業構造の変化から、近年は労働者全体でみても小売業や社会福祉施設、飲食店など第3次産業での労災死傷者の発生が全体の半数を占めている。特に、転倒や腰痛が多く、70歳前後の労災発生率は30歳前後と比べ、男性は2倍、女性は5倍にもなる。
政府は「人生100年時代」を掲げ、希望者が70歳まで働けるよう雇用環境の整備を進めている。製造業や建設業などでは業界を挙げて労災防止の取り組みが進んでおり、鉄鋼大手・JFEスチールのように独自に従業員の体力測定をして転倒災害などを減らすことに成功しているケースもある。
一方、飲食店や福祉施設などサービス業での対策は遅れている。政府は6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で対策の推進を盛り込んだ。厚労省の検討会は今月、設備や労務管理などの面で企業が取るべき労災防止策について議論を始めた。(8/17 毎日新聞)
1日のスマホ使用時間が5時間以上だと、肥満のリスクが上昇するという。米国心臓病学会(ACC)ラテンアメリカ会議で発表された。今回の研究で対象となったのはシモン・ボリバル大学(コロンビア)の学生1060人。うち男性が360人(平均年齢20歳)、女性は700人(19歳)。研究者らはスマホの使用時間とBMIの関連に着目して検討を行った。
その結果、1日にスマホを5時間以上使用している人は、肥満のリスクが43%増加することが確認された。また、スマホの使用時間とBMIの間に有意な関連が認められた。さらに、1日5時間以上スマホを使用していた人は、使用時間が5時間未満の人に比べて、身体活動量が少なく、砂糖入り飲料、ファストフード、甘い物やスナック類の摂取量が多いという生活習慣が該当する確率が約2倍に上ることもわかった。
本研究論文の著者であるMirary Mantilla-Morron氏は、「スマホに費やす時間が長いと、座りがちになり体を動かす時間が減るため、早期死亡、糖尿病、心疾患、種々のがん、骨関節の不快症状、筋骨格症状などのリスクが増大する」と警鐘を鳴らす。またACC発行のニュースリリースの中で同氏は、「今回の研究成果は、心血管疾患の危険因子である肥満の主要原因の1つを明らかにするものである」とし、かつ「人々がテクノロジーの使用に費やす時間の増大、つまり長時間の携帯電話の使用が、肥満の発症に関連している」と具体的に述べている。(8/15 HealthDay News)
社員の健康を保つため、「睡眠」に着目する企業が増えている。社員の睡眠習慣改善や休憩中の昼寝の推奨に取り組む例が相次ぐほか、ITを活用して快適な眠りに導く「スリープテック」市場に商機を見いだそうとする企業も多い。寝苦しい夜が続く中、快眠への関心は熱を帯びている。
ロート製薬は7月から、社員40人を対象に睡眠習慣を3カ月で改善させる取り組みを試行している。マットレスの下にシート状の専用デバイスを敷き、寝つくまでの時間や深い眠りの時間を計測。睡眠の質を点数化し、課題や助言をスマートフォンで通知する。同社が昨年10月に行った調査では、社員の半数以上が睡眠に何らかの不満を抱え、6割が日中に強い眠気を感じると回答。「生産性向上や安全管理の面で睡眠は重要だ」として、社員に改善を促すことを決めた。
睡眠重視の企業が増えたのは、寝不足が心身に悪影響を及ぼす「睡眠負債」が取り沙汰された2017年前後だ。ダイドードリンコ(大阪市)は同年11月から、昼休みにコーヒーを飲み、15分程度昼寝をするよう勧めている。覚醒効果が15〜20分後に表れるカフェインの特性に注目し、すっきりと目覚めて仕事を再開できるという。
睡眠関連の事業に注力する企業も増えている。パナソニックは、人工知能(AI)を活用し、睡眠のリズムに合わせて温度や光を自動調整するエアコンや照明を「睡眠家電」として展開する。昨年3月には寝具大手の西川(東京)と連携し、快適な睡眠環境を実現するサービスを検討中だ。(8/14 時事通信)
夜間頻尿はさまざまな併存疾患と関連しているが、転倒や骨折への影響はわかっていない。今回、フィンランド・Paijat-Hame Central HospitalのJori S. Pesonen氏らが系統的レビューおよびメタ解析を行った結果、夜間頻尿により転倒リスクが約1.2倍、骨折リスクが約1.3倍に増加することが示唆された。The Journal of Urology誌に掲載。
本研究では、PubMed、Scopus、CINAHLなど、主要な泌尿器関連学会の抄録を2018年12月31日まで検索し、転倒および骨折の調整相対リスクについてランダム効果メタ解析を実施した。転倒および骨折の予後因子と原因となる因子としての夜間頻尿のエビデンスの質をGRADEアプローチにより評価した。主な結果は以下のとおり。
・5230件の潜在的な報告のうち、観察縦断研究9件が夜間頻尿と転倒または骨折との関連に関するデータであった(転倒4件、骨折4件、両方1件)。
・統合推定値によると、夜間頻尿と転倒の関連のリスク比は1.20(95%CI:1.05〜1.37、I2=51.7%、高齢者における年次リスク差7.5%)、夜間頻尿と骨折の関連のリスク比は1.32(95%CI:0.99〜1.76、I2=57.5%、年次リスク差1.2%)であった。
・サブグループ解析では、年齢、性別、経過観察時間、夜間頻尿の定義、バイアスリスクにより、影響に対する有意な変化は認められなかった。
・夜間頻尿のエビデンスの質の評価は、予後因子としては転倒は中程度、骨折は低く、転倒/骨折の原因としてはどちらも非常に低かった。
(8/14 ケアネット)
国立がん研究センターは、8月8日に「がん診療連携拠点病院等院内がん登録2012年3年生存率、2009年から10年5年生存率」を公表した。これは同センターが、全国のがん診療連携拠点病院などから収集した院内がん情報を用い、(1)2012年に診断された患者の3年を経過した生存率(2012年3年生存率集計)と、(2)2009年、2010年に診断された患者につき、治癒の目安とされる5年を経過した生存率(2009年から10年5年生存率集計)をまとめたもの。
全がんの3年実測生存率は67.2%(前回66.3%)、相対生存率は72.1%(前回71.3%)で、5年実測生存率は58.6%(前回58.5%)、相対生存率は66.1%(前回65.8%)であり、すべての指標で上昇していた。
全がん(対象者数568,005例)の5年生存率の実測生存率は58.6%で前回より0.1上昇、相対生存率は66.1%で0.3上昇し、性別では男性が58.2%、女性が41.3%とやや男性が高い割合だった。診断時の年齢は、男女ともに70歳代が最も多く、70代以上が約47%の割合だった。部位別の相対生存率は、胃71.6%、大腸72.9、乳房92.5、肝臓40.0、肺40.6、食道44.4、膵臓9.6、前立腺98.6、子宮頸部75.3、子宮体部82.1、膀胱69.5だった。
3年生存率集計について、全がん(対象者数467,775例)の実測生存率は67.2%で前回より0.9上昇、相対生存率は72.1%で0.8上昇した。部位別の相対生存率は、胃75.6%、大腸78.7、乳房95.2、肝臓54.6、肺50.8、食道53.6、膵臓16.9、前立腺99.2、子宮頸部79.6、子宮体部85.9、膀胱73.4、喉頭84.4、胆嚢33.4、腎85.6、腎盂尿管55.6だった。(8/9 ケアネット)
疼痛は日常生活動作の低下の主な原因となり、高齢者の認知症リスクを高める可能性がある。しかし疼痛と認知症に関する研究結果は一致していない。今回、山田恵子氏(大阪大学/順天堂大学/カナダ・McGill大学)らが、身体活動、心理社会的要因、膝痛/腰痛のメカニズムの違いを考慮し、膝痛/腰痛と認知症発症との関連を前向き研究(JAGES:Japan Gerontological Evaluation Study、日本老年学的評価研究)で検討した。その結果、65〜79歳で膝痛があると認知症リスクが高く、定期的な歩行習慣がない人ではリスクがさらに高まる恐れがあることが示唆された。また、80歳以上では腰痛が認知機能維持の指標となる可能性も示された。Scientific Reports誌に掲載。
本研究では、全国の30の地方自治体における、脳卒中、がん、外傷、うつ病、パーキンソン病、認知症の既往のない高齢者(65歳以上)1万4627人に、自記式質問票への記入を依頼し、その後3年間追跡調査を行った。Cox回帰モデルを使用して、認知症発症に対するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。年齢および定期的な歩行習慣の有無で層別分析を行った。主な結果は以下のとおり。
・65〜79歳では、膝痛あり・腰痛なしの人のほうが、膝痛も腰痛もない人よりも認知症リスクが高かった(HR:1.73、95%CI:1.11〜2.68)。
・80歳以上では、膝痛なし・腰痛ありの人のほうが、膝痛も腰痛もない人よりも認知症のリスクが低かった(HR:0.50、95%CI:0.31〜0.80)。
・膝痛があり定期的な歩行習慣がない人は、最も認知症リスクが高かった(HR:1.71、95%CI:1.26〜2.33)。
(8/7 ケアネット)
2018年の日本人の平均寿命は、女性が87.32歳、男性が81.25歳で、いずれも過去最高となった。女性が6年連続、男性が7年連続で過去最高を更新した。厚生労働省が7月30日に発表した「簡易生命表」で分かった。
18年の平均寿命は前年と比べ、女性は0.05歳、男性は0.16歳延びた。男女ともに、がん、心疾患、脳血管疾患の「3大疾患」による死亡率が改善した影響だという。3大疾病で死亡する確率は男性50.06%、女性45.52%だった。厚労省が把握する50の国・地域の中で、日本人の平均寿命は女性が2位、男性が3位で、いずれも前年と同じ順位だった。厚労省の担当者は「医療水準や健康意識の向上などの成果とみられる。平均寿命はさらに延びる可能性がある」と話す。(7/30 朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は7月26日、電子たばこは「間違いなく有害」であり、規制すべきだと表明した。WHOは世界的な喫煙のまん延に関する最新の報告で、「ENDS(電子ニコチン送達システム)に関連するリスクの具体的な度合いについて、まだ確実な推計はなされていないが、間違いなく有害であり、規制の対象とすべきだ」と言明した。
さらに報告は、電子たばこには従来型たばこの禁煙補助効果があるとの主張の「証拠は不十分」だと指摘。「電子たばこが入手できる大半の国において、電子たばこ使用者の大部分が従来型たばこを並行して使い続ける。健康上のリスクや効果に対する有益な影響はほとんどない」とした。
たばこ大手は近年、新たな顧客を開拓するため電子たばこや加熱式たばこ製品を積極的に売り込んできた。各社はこうした新製品について、従来型たばこよりも格段に危険性が低く、一部の喫煙者については「より安全な」代替品への完全な切り替えを促せると主張している。しかしWHOは、たばこ業界が広める電子たばこに関する誤った情報は「現在の、現実の脅威」だと警告した。
電子たばこの使用に対する規制は世界的に広がっており、米サンフランシスコが先月、販売・製造を禁止したほか、世界の喫煙者の3分の1近くが住む中国も規制を計画している。(7/27 時事通信)
砂糖入り飲料の摂取が体重増加につながることは以前より知られている。しかし、炭酸飲料やスポーツドリンクといった砂糖入り飲料や、たとえ果汁100%のジュースでも、飲み続けると一部のがんの発症リスクが上昇する可能性があることが、新たな研究により示された。1日にコップ半分程度でも、毎日砂糖入り飲料を摂取すると、がん全体の発症リスクが18%増大したという。研究の詳細はBMJに掲載された。
この研究は、パリ大学(フランス)のMathilde Touvier氏らが、全国調査に参加した18歳以上のフランス人男女10万1257人(平均年齢42歳、79%が女性)を対象に行ったもの。参加者は3300種類の食品および飲料について、1日の摂取量をオンラインで報告。研究者らは、2009〜2018年まで最長9年にわたって追跡し、砂糖入り飲料(果汁100%ジュースも含む)とがんの発症リスクとの関連を調べた。
その結果、研究期間中にがんを発症したのは2193人だった。砂糖入り飲料の摂取量が1日当たり100mL増えるごとにがん全体の発症リスクは18%上昇し、乳がんでは22%上昇していた。果汁100%ジュースも同様に、がんと有意な関連を示し、がん全体の発症リスクは12%上昇していた。
なぜ砂糖入り飲料はがんと関連するのか。Touvier氏らは、今回の研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではないとした上で、「砂糖には、体脂肪の蓄積を促し、血糖値を上昇させ、炎症を亢進させる作用がある。これらはいずれもがんのリスク因子だ」と述べ、高カロリー飲料に含まれる砂糖ががんのリスクを増大させている可能性を示唆している。また、飲料に含まれる化学物質がリスク増大の一因となっている可能性があるともしている。(7/22 HealthDay News=一部)
■読者皆様のおかげをもちまして通算100号を印すことができました。心より感謝いたします。
■次号のメールマガジンは9月15日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ