エンタプライズ発信〜メールマガジン【№68】 2016. 12

高齢ドライバーによる事故が相次いでいます。岩手県立大学の元田良孝名誉教授(交通工学)らは平成20年、盛岡市に住む65歳以上の高齢ドライバー約1千人を対象に、安全意識などについてアンケートをとっています。その中で「安全運転に自信はありますか」の問いかけに対し、全体の55.4%が「ある」と回答。これを年齢層で区切ると、自信ありと答えたのは、60歳代・53%、70歳代・56%、80歳代以上・63%、と老いれば老いるほど、自らの運転に自信を持つという傾向があるという結果が出たのです。社会の高齢化に伴い、高齢ドライバーは今後も増えるのは自明です。警察庁のまとめによると、65歳以上の運転免許保有者数は過去10年間で約730万人増えて、昨年末時点では約1710万人だそうです。認知症が原因とみられる高齢者の事故も続発しており、国は対策強化を急いでいます。自動ブレーキ機能や衝突警報を備えた車はすでに実用化されていますが、急ピッチで研究・開発を進めているのが「完全自動運転車」。ハンドルやブレーキ、アクセルを運転手が操作しなくても安全に走行することができる、衛星利用測位システム(GPS)を利用し、目的地まで安全に走行するシステムです。こうした必要に押された新技術がクルマ社会の“救世主”になることを願うばかりです。私事ですが、現在90歳の老父がいますが、86歳で運転免許を返納しました。しかしここに至るまでの家族の説諭は並大抵のものではありませんでした。恨み言を返されたりして家族も苦悩しました。戦後を生きる父にとってクルマはいつまでも憧憬の対象であり、生活の一部だったのです。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて 〜チベット医学
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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Information -1-

日本統合医療学会(第20回)を仙台で開催 12/23-25

ことし第20回目を迎える日本統合医療学会は12月23日(金)〜25日(日)にわたって「統合医療に科学に光を日本から」をテーマに宮城県仙台市・東北大学医学部 星陵キャンパスにおいて開催する。大会長は山家智之氏(東北大学加齢医学研究所 非臨床試験推進センター長)。「食と健康」に関するするセッション、カイロプラクティックやホメオパシー、統合医療に関するセッション、サプリメントのシンポジウム、音楽療法のセッション、認知機能とヨーガ、多分野連携、アロマに関するシンポジウムのほか、女性の会から市民公開講座などが開かれる。

大会概要

Information -2-

日本統合医療学会で市民公開講座を開催

一般社団法人日本統合医療学会 統合医療女性の会では、「子どもの心の問題とそのケア」と題し、座長・板村論子氏、演者・渡邊久子氏に講演をお願いし、対談では渡邊氏と川嶋みどり氏が、「震災後の子どもたちの心のケア」をテーマに行います。入場は無料です。
日時:12月25日(日)午後2時30分〜
会場:東北大学医学部 星陵キャンパス星陵会館オーディトリアム
参加費:無料

Information -3-

再販 『男女対照 生体の構造とデザイン』 好評発売中 〜エンタプライズ

小社は2006年刊の同書の販売権を再取得し、10月17日、再販売を始めました。人体を医学的見地からのみではなく、生きて考える社会的存在としての人間(ヒト)を維持している体内の構造と様々な連接プロセスの一環を、CGスケルトン技術を巧みに生かしてカラー図解化しました。ヒトの解剖をイメージとして意識描写へと高めることのできる秀逸の書。

男女対照 生体の構造とデザイン
B4変型、264頁、フルカラー、定価:9,072円(税込)
URL:http://eppub.jp/archives/2658

◎連載vol.26

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


《 Extra issue 》 〜エピローグ〜

何百年にもわたる科学史において、「生命力」や「治癒力」という概念はいつも痛烈な論争を引き起こしてきた。この論争の中でさまざまな学説が生まれてきたが、いずれの説も混乱と矛盾と敵対心、そして恐怖心の表れだったのだ。人間の生理や生命が外界の目に見えない力や宇宙の現象に左右されるという考え方は、多くの人々にとって受け入れがたい不快な概念だったのである。
 …人間にとって、未知のものとの接触ほど恐ろしいものはない。人間は迫りくるものに目を凝らし、少なくともそれが何の仲間であるかを理解できるまで、識別しようとするのである。…
電磁波の応用が進めば、将来の医学は限りなく発展することだろう。そのためには過去の定説や固定観念、そして目に見えない力に対する恐怖心を克服しなければならない。したがって、いつ新しい医学の時代が到来するかは、私たち一人ひとりにかかっているのである。自分自身と向き合い、これまでの知識からエネルギーというものをどのように理解し、受け入れ、扱ってきたかを見直せるかどうかがカギなのだ。コンピュータチップを流れる目に見えない電流によって複雑な仕事を処理し、リモコンから放出される目に見えない電波によってテレビの機能を調節する現代人であれば、人間の体を制御・統括しているのが目に見えないエネルギーであると聞かされても、さほど恐怖を感じないであろう。

話を転じ、1990年代のはじめ、ノーベル賞受賞者であるフランシス・クリックが意識の科学について公然と論じたことがある。クリックは、意識の研究に尻込みするのは愚かしいことだと指摘した。クリックによると、精神的現象は大量のニューロンの興奮によって起きるという。つまり実験によって真偽を確かめることの可能な、意識に関する論理的仮説を導くことができるはずだというのだ。この主張には、ロジャーペンローズやジェラルド・エーデルマンといった優秀な科学者たちが同意し、意識の科学に関する著書や論文が登場しはじめたのである。

筆者自身は、意識のすべてがニューロン活動によって生まれるというクリックの説を肯定することはできない。意識に関する研究は、身体的要素とエネルギー的要素の両方を考慮に入れないかぎり真の発展を遂げることはないだろう。たとえばチャールマンという研究者は、一般に「心」と呼ばれるものを、脳に由来する神経磁場であるとして理論を展開している。わかりやすく言うと、思い思いの周波数で共鳴するニューロンの集団がモザイク状に存在するとき、そこから生じる微弱な場も共鳴を起こす。それぞれの場が互いに共鳴しあえば、やがて全体が合体して一つの神経磁気波をつくりだし、物理学的には磁気をまったく妨げない脳の組織を通り抜けてしまうのである。共鳴によって一つになった磁気波から見れば、脳の組織はガラスのように「透明な」存在なのである。(次号につづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ㊱☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


疾病利得」にも対応できる治療者を目指して(前編)

有名なフロイト博士やユング博士と並ぶ精神医学・心理学界の巨人の1人、アルフレッド・アドラー博士は以下のようにコメントを述べています。
「敗北を避けるために、時に人は自ら病気になる。
『病気でなければできたのに……』
そう言い訳して安全地帯へ逃げ込み、ラクをするのだ」
さらに、「人は人生の敗北を避けるために、あらゆるものを利用する」 とも述べています。これを心理学では「疾病利得」といいます。

病気で苦しんでいるのになんてことを言うんだ! そんな話は聞きたくもない! と憤慨する人がいるかもしれません。特に保険診療ではなく、自分のお金と時間を使ってくる自由診療の患者さんにとっては、あり得ないテーマだと思われがちです。しかし、一般的に心理的要因が影響を及ぼすことが知られている「うつ病」、「パニック障害」、「機能性胃腸症」以外にも様々な慢性症状の背後には「疾病利得」が関係していることがあります。

当の患者さん自身は、そのようなことは意識する由もなく、病気を治すことに一生懸命で、「病気さえ治れば・・・ができる」という思いの人がほとんどです。「その病気には「疾病利得」が関係しているかもしれません」などと治療者に言われたりすると、信頼関係が悪くなることが予測されます。なぜならば、「疾病利得」に関する一般的な印象が、「ずるい」、「甘えている」などのネガティブな要素を含んでいるからです。
この「疾病利得」が関係する症状で厄介なのは、本人が偽っているわけでもなく、実際に身体に障害を引き起こしているというところです。「疾病利得」が関係していなければ治る症状も、この「疾病利得」が背後にあるから症状がぶり返してしまうのです。この「疾病利得」は、緊急事態でない症状も多々ありますが、時には命さえも脅かす症状を引き起こしてしまうのです。

「疾病利得」が関係する慢性症状の傾向として、ある程度の通院期間の間に共通する傾向が見えてきます。
・肉体的な原因や治らない医学的な理由(身体の異常)には興味を示し、本質的な心理的な原因や理由(心の関係性)には興味を示さない傾向。
・複数の症状を抱えており、改善している症状があるにもかかわらず、改善されていない症状に注意を払う傾向。
・しばらく通院して改善されてきた徴候が増えてきたときに症状がぶり返す傾向。

「疾病利得」が単にいいとか悪いとではなく、その背後にはそれなりの意味や「成長の種」が隠されているのだと私は思います。また、人間であれば、多かれ少なかれ誰もが無意識的に経験している心身相関のプロセスだと思います。
「疾病利得」を客観的に判断できる治療者はごく僅かかもしれません。また、「疾病利得」の背後にある潜在的な感情や信念に関してアプローチできる治療者もごく少数でしょう。PCRTの治療者の場合、熟練してくると、「疾病利得」の関係性が見えてくるようになり、患者にそのことを知ってもらうべきか否かに悩まされることもあるかもしれません。(後編へつづく)


《連載50》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)

(前号よりつづく)
「観世音菩薩に無上正等覚者無量光(阿弥陀仏)がおっしゃった。『有雪国チベットと呼ばれる王国に、世尊釈迦牟尼は御足を踏み入れられなかった。御言葉の光も行きわたっていないし、御心の加持も及んでいないこの国を、観音菩薩よ、あなたが教化なさるはずであるから、まず人をふやし、そのあとで、ものと法とを与えてまとめ、そのうえで彼らの心を(仏教を信ずるように)仕上げなさい』と。そこで聖観自在は無量光仏の仰せに従い、ポタラ(普陀落)山の山頂の多宝からなる館にお出かけになって、有雪国チベットの教化を待つ者たちを見そなわしたもうた……」
「聖観音が仰せになられた『岩の精女と夫婦になりなさい。お前の子孫がふえて、最後に人間になって仏教の支持者になるであろう』と。そこで、かの猿は聖観自在のお言葉どおりに精女と夫婦になったので、六族の生まれ変わった六子を生んだ……」
「聖観自在は、かの猿に宝と五穀を授け、『お前の子孫はこれらをもって食物としなさい。お前の子孫が人間になったとき、結局は宝の金銀などによって生計をたて、宝の鉱脈は折々に見つかるようになるであろう』と仰せになったのであった……」(『ソンツェン・ガムポ伝』(マニ・カンブム)より)

チベットの始祖伝説が「仏教徒の策略に乗せられた結果」であるかどうかは別にして、この説話の成立は、古代のチベットとインドの関係の一端を物語るものであろう。チベット人の友人が語ってくれた一言を、ある種の暗示として深く記憶している。それは「チベットとインドの関係は古代の日本と中国の関係に似ているかもしれない」というものである。

チベット世界の拡大と栄華

■チベットの黄金時代
7‐8世紀、チベットは空前の黄金期を迎える。それはナムリ・ソンツェン王(第32代)によって準備され、第33代のソンツェン・ガンポ大王によって完成されたものである。ナムリ王は遠征隊を率いて中国西部からインド北部、さらにはペルシャ方面にまで軍靴を響かせている。それを継いだソンツェン大王はチベット史上でも最大の帝国を築き、大量の留学生をインドと中国に派遣し、世界から広く人材を招いた。サムエ寺で国際医学シンポジウムが開催されたのもこの時期のことである。
現在、ラサのチョカン大聖殿(大昭寺)にあるソンツェン・ガンポ像を中心とした一群の人物像は、黄金時代のチベット世界を如実の表現したものである。ひときわ大きなソンツェン像を中央に、唐朝の文成公主、ネパールのブリクティ王女(チツン)、そのほかに3人のチベット人女性の像が居並ぶ。どの像も金の仏といった風情であるが、ソンツェン大王は内外の5人の妃嬪にかしずかれるようにして光り輝いている。また、ダライラマ活仏系譜図はチベットの絵画芸術の水準を示す逸品であり、その第二図では、光輪をもったソンツェン・ガンポを中央に、右に文成公主、左にブリクティ女王、右脇にはインド帰りのトンミ・サンボタなどが描かれている。(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(43)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛、むち打ち症に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■ケベック特別調査委員会は、むち打ち症の症状により以下のグレード付けを行っています。【グレード0】頚部の症状がなく理学所見も異常なし。【グレード1】頚部痛・凝り・圧痛のみで理学所見に異常なし。【グレード2】頚部の症状に加えて筋骨格系所見(可動域制限・圧痛点など)あり。【グレード3】頚部の症状に加えて神経学的所見(深部腱反射の低下や消失・筋力低下・知覚障害など)あり。【グレード4】頚部の症状に加えて骨折か脱臼あり。
なお、難聴・めまい・耳鳴り・頭痛・記憶喪失・嚥下困難・顎関節痛はすべてのグレードで生じる症状であり、グレード0はもちろんグレード4はすでにむち打ち症といえるものではないため、特別調査委員会はグレード1〜3を対象としています。

■ケベック特別調査委員会はWAD(むち打ち関連障害:whiplash-associated
disorders)治療法として、以下について勧告を出している。すなわち、「頚椎カラー」「安静」「頚椎枕」「マニピュレーション」「モビリゼーション」「運動」「姿勢のアドバイス」「スプレー&ストレッチ」「牽引」「物理療法」「外科手術」「ステロイド注射」「無菌水注射」「薬物療法」「その他の治療」に関する勧告をご紹介します。http://1.usa.gov/LYNegq

■【頚椎カラー】 頚椎カラーの有効性はRCT(ランダム化比較試験)で証明されていないため、グレード1の患者に頚椎カラーを処方してはならない。たとえグレード2や3の患者に処方したとしても、回復が遅れるので72時間(3日間)を越えてはならない。http://1.usa.gov/LYNegq

■【安静】安静の有効性はRCTで証明されていないため、グレード1の患者に安静を処方してはならない。回復が遅れるのでグレード2や3の患者に4日以上の安静を処方してはならない。むしろ普段通りの生活を送るよう勇気づけること。http://1.usa.gov/LYNegq
……腰痛疾患同様これもむち打ち症にまつわる迷信のひとつです。安静が有効であるという研究はこの地球上に存在しません。日本にはびこる古い考え方を根拠のある事実に置き換えなければ、最善の治療ができないばかりか回復を遅らせてしまいます。一日も早くそれに気づくことを切に願っています。

■【頚椎枕】頚椎枕(サービカルピロー)の有効性はRCTで証明されていないため、WADに頚椎枕を処方してはならない。http://1.usa.gov/LYNegq
……多種多様なサービカルピローが市販されていますけど、こと「むち打ち症」に関しては使用するべからずという勧告です。高価な壺や掛け軸を買ってもむち打ち症は治らないということですね。

■【マニピュレーション】長期間にわたる治療は正当化されないが、短期間ならWADの治療に脊椎マニピュレーションを用いることができる。ただしこのテクニックを行なうのは有資格者に制限すべきである。http://1.usa.gov/LYNegq
……限られたエビデンスながらも、カイロプラクティックのような脊椎マニピュレーションが推奨されています。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (68)

根本 良一(療動研究所主宰)

【 連動操体法の応用編 】

[6] 手・腕の異常
1)指の痛み、突き指

局所の痛い動作はせず、ほかのところからの快い連動で調整できるものに限定する。外傷や靭帯の損傷があれば、まずその治療を行う。
a)大腰筋の操作
椅子に掛けても仰臥でもよい。フィンガースケールで開指角を見て、操作後に指の開きを見る。大腰筋から頸髄神経への影響があれば、これも要点の一つとなる。
b)足指基部から見る
 ・補助動作および主動作の方向を読み取り、
 ・足指の屈診をして、左右のどの指、どの角度でよいか(指が開くか)を見る。
 ・この角度の「屈診」で指の異常が解消できれば足指の操体法を行う。
あるいは足指間に軟骨シリコンのクッションを挿入すると手指が開き、手指の異常感が解消することがある。しかしこれは一時的であるから、基本的には連動操体法を視野に入れる。
c)仙棘筋からの影響を見る
首に緊張があると、肩〜腕〜手〜指まで連動し、指の異常が解消される。これは伏臥位で左右の足の踵を内外に倒し、逆方の膝、腰の動きを補助動作として、内・外・左・右のどれでフィンガースケール値が良くなるかを見て、そのフォームで操体法を行うと手指の異常が解消できる。
d)内因性のもの
膠原病のような内科疾患は、専門医の治療を受ける必要があるが、悪い姿勢の影響が強い、歪体の影響が強い場合は連動操体法が有効である。
e)広背筋の操作から
広背筋から連動する肩腕への動きは、四十肩、五十肩の場合の流れで、前腕から手首の動き、手指の動きが改善されるケースがある。

 N  E  W  S

NEWS ■ノロウイルスの患者が11月中旬から急増

ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者が、11月中旬から急増している。近年では、最も流行した2012年とほぼ同じペースという。抵抗力の弱い子供やお年寄りは重症化する恐れもあり、厚生労働省が警戒を呼びかけている。国立感染症研究所によると、ノロウイルスは感染力が強く、1〜2日間の潜伏期間を経て嘔吐や下痢、発熱などの症状が出る。手洗いや嘔吐物の適切な処理などを徹底する必要がある。全国約3000の小児科から報告された患者数は、集計を終えた11月21〜27日の1週間で約4万人だった。医療機関1か所あたり12.85人で、06年以降の同時期と比べると、06年(19.82人)、12年(13.02人)に次いで多い。関西では、奈良県、兵庫県、大阪府が全国平均を上回った。
10月に流行入りして以降、大阪府豊中市では、こども園など2か所でそれぞれ100人以上が感染した。市によると、市保健所ができた12年度以降では最大規模の集団感染という。
市保健所は今月2日、市内の保育園や幼稚園の担当者を集めて研修会を開き、嘔吐物を処理する場合は飛沫になって飛び散っている可能性があるため、半径2メートルの範囲を次亜塩素酸ナトリウムを含む漂白剤で消毒するよう呼びかけた。また、ぞうきんなどはなるべく使い捨てにすることや、園児や職員らに手洗いを徹底させることも求めた。
園田学園女子大の山本恭子教授(感染免疫学)は「予防策として有効なのは手洗いの徹底。タオルを共用せず、ペーパータオルを使うことも効果的だ。感染した場合は、嘔吐や下痢で脱水症状を起こす危険もあり、速やかに医療機関で受診してほしい」と話す。(12/7 読売新聞)


NEWS ■アレルギー治療に病院連携 地域間格差埋める

厚生労働省は12月2日、アトピー性皮膚炎や花粉症などアレルギー疾患への対策の方向性を定めた基本指針案をまとめた。どこの地域に住んでいても適切な医療を受けられるよう、国や地域の拠点病院とかかりつけ医が連携する仕組みを整え、患者の生活の質向上を目指す。
学校などでの重症化や事故を防ぐため、教員の研修や適切な教育も求めた。アレルギー疾患に対する基本指針を国が策定するのは初めて。2日の厚労省の協議会で大筋了承された。本年度中に運用を始める。
日本はアレルギー患者が急増し、乳幼児から高齢者まで2人に1人が何らかのアレルギーを持つとされる。指針案は、アレルギーの診療は内科や皮膚科、小児科などにまたがる上、専門医のいる地域に偏りがあり、地域間格差が大きいと指摘。地域の病院や医師が情報を共有するなど連携し、専門的に対応できるようにする。具体的な連携の仕組みは今後検討する。学会の認定制度を活用し、医師や看護師、薬剤師らの知識を向上させる。
学校などでアレルギーの理解が得られず、つらい思いをする場合もあり、アレルギーの児童が他の児童と分け隔てなく学校生活を送るため、適切な教育も求めた。教職員らに研修の機会を設ける。(12/2 共同通信社)


NEWS ■50歳未満の喫煙者、心臓発作リスク8倍…英研究

50歳未満の喫煙者は、同年代の非喫煙者と比較して、心臓発作に見舞われるリスクが8倍高いとする研究論文が11月30日、発表された。研究チームによると、喫煙者と非喫煙者の心臓発作リスクの差異は年齢を重ねるとともに縮まり、50〜65歳には5倍、66歳以上では3倍に縮小するという。研究論文は学術誌「Heart」に掲載された。すべての喫煙者の心臓発作リスクは非喫煙者よりも高いが、これまで年齢層ごとのリスクの違いは明らかにされてこなかった。
これを解明するため、英イングランド北部シェフィールドにあるノーザン・ゼネラル病院サウスヨークシャー心臓センターのエバー・グレック氏率いる研究チームは、2009から2012年にかけてST上昇型心筋梗塞(STEMI)として知られる一般的な心臓発作で治療を受けた成人1727人のデータを検証した。調査対象の約半数は喫煙者で、残りは元喫煙者と一度も喫煙したことのない非喫煙者がおよそ半々だった。
研究の結果によると、喫煙者が心臓発作に見舞われていた時期は、元喫煙者や非喫煙者よりも平均で10年あまり早かったという。また、過去に冠動脈疾患を患った人の数は、喫煙者では非喫煙者の2倍に上った。研究論文によると、サウスヨークシャーの50歳未満の喫煙者は成人の27%だったが、50歳未満のST上昇型心筋梗塞の患者75%は喫煙者だった。データによると、全般的に見て喫煙者は元喫煙者や非喫煙者と比べて、STEMIを患う確率が3倍ほど高いことが分かったという。(12/1 時事通信)


NEWS ■10代女子のうつ10年で37%増【米国小児科学会】

この10年で大うつ病エピソードを経験した12-17歳女子の割合は37%増えたとの調査結果が明らかになった。米国小児科学会(AAP)が11月14日、Pediatrics誌の掲載論文を紹介した。
研究グループは、2005-14年のNational Surveys on Drug Use and Healthデータベースを利用し、12-17歳の青少年および18-25歳の若年成人のデータを調査。同期間における大うつ病エピソードの12カ月有病率比較したところ、青少年では8.7%から11.3%と37%増加。若年成人では8.8%から9.6%の増加が見られた。
うつの増加は青少年女子で著しく、近年、女子のうつが男子より増加しているとする過去の研究と一致する結果となった。研究グループはうつ有病率の性差の要因について、問題となる携帯電話の使用や抑うつにつながるスマホのテキストアプリなど危険因子への曝露がより大きいのではないかと考察している。
研究者は「うつを発症した青少年や若年成人が受診しないケースが増えており、患者へのアウトリーチの見直しが求められている。大学キャンパスや小児科、高校などでうつを発見し管理する努力を強化するべき」と結論づけている。(11/29 読売新聞)


NEWS ■子どもの習う「武道」と外傷リスク

安全のために、子どもは非接触型の武道のみを行うべきだという米国小児科学会(AAP)の報告が、「Pediatrics」オンライン版に11月28日掲載された。
米国では約650万人の子どもが総合格闘技や空手、テコンドー、柔道といった武道を習っている。これらの競技は健康や運動技能、情緒的発達を向上するが、外傷のリスクもある。
武道による外傷は打撲傷や捻挫が大半を占めるが、より深刻な傷害が起きることもある。たとえば総合格闘技の練習では、脳震盪、窒息、脊椎損傷、動脈破裂、その他の頭頸部外傷のリスクが高い。リスクの高い動作は、頭部の直接殴打、床への頭部の打ちつけの繰り返し、窒息させるような動作などである。外傷の発生率は、武道の種類によるが練習1000回あたり41〜133件。ソフトヘルメットなどの防具が脳震盪から身を守るという証拠はなく、安全だと勘違いする可能性もあるという。
報告では、接触を伴う格闘技大会や練習は心身が十分に成熟するまで待ってから実施するよう勧めている。最も懸念される武道は総合格闘技であり、子どもたちは総合格闘技を見過ぎるだけでも、真似をして怪我をする可能性があるという。(11/28 HealthDayNews]


NEWS ■ビールの苦味、認知症予防…蓄積たんぱく質除去

ビールやノンアルコール飲料に含まれるホップ由来の苦み成分に、アルツハイマー病の予防効果があることを、飲料大手のキリンと東京大学、学習院大学の共同研究チームが明らかにした。厚生労働省によると、認知症の人は国内に約462万人(2012年)おり、このうち約7割をアルツハイマー型が占めると推計される。加齢に伴い、脳内にたんぱく質の「アミロイドβ」が蓄積することが原因とされる。
キリンや東京大学の中山裕之教授らの実験で、ホップ由来の苦み成分である「イソα酸」に、脳内の免疫細胞である「ミクログリア」を活性化させ、アミロイドβを除去する作用がみられた。イソα酸を含むえさを食べたマウスは、そうでないマウスに比べ、アミロイドβが約5割減少し、認知機能も向上したという。(11/28 読売新聞)


NEWS ■マグロ過食に注意。妊婦から胎児へ影響 <メチル水銀>

マグロやメカジキなどメチル水銀を比較的多く含む魚介類を妊婦が食べ過ぎると、生まれた子の運動機能や知能の発達に悪影響が出るリスクが増すことが、東北大学チームの疫学調査で分かった。メチル水銀は水俣病の原因物質だが、一般的な食用に問題のない低濃度の汚染でも胎児の発達に影響する可能性があることが明らかになるのは、日本人対象の調査では初めて。
2002年から、魚をよく食べていると考えられる東北地方沿岸の母子約800組を継続的に調査。母親の出産時の毛髪に含まれるメチル水銀濃度を測定し、子に対しては1歳半と3歳半の時点で国際的によく用いられる検査で運動機能や知能の発達を調べ、両者の関係を分析した。
毛髪のメチル水銀濃度は低い人が1ppm以下だったのに対し、高い人は10ppmを超えていた。世界保健機関などは、水俣病のような神経障害を引き起こす下限値を50ppmとしている。
濃度が最高レベルの人たちの子は最低レベルに比べ、1歳半時点で実施した「ベイリー検査」という運動機能の発達の指標の点数が約5%低かった。乳幼児期の運動機能は将来の知能発達と関連があるとされる。3歳半時点の知能指数検査では男児のみ約10%の差があった。海外の研究で、男児の方が影響を受けやすいことが知られている。
国は05年、海外の研究を基に、妊婦に対しメチル水銀の1週間当たりの摂取許容量を体重1キロ当たり100万分の2グラムと決めた。厚生労働省はこれに基づき、クロマグロの摂取は週80グラム未満とするなどの目安を示している。今回の調査では食生活も尋ねており、約2割がこれを超えていたと考えられるという。(11/28 毎日新聞)


NEWS ■頭に電流、足首曲げやすく…リハビリ効果に期待

頭に弱い電気刺激を加えると足首を曲げやすくなることを、中京大学の荒牧勇教授と名古屋大学の水野貴正講師が実験で確かめたと、日本神経科学学会誌に発表した。リハビリなどの直前に行うことで効果アップが期待できるという。
実験では8人の頭頂とおでこに電極を付け、10分間、電流2ミリ・アンペアを流した。その直後、足首を動かして痛くて曲げられなくなるまで爪先を上げてもらい、足首の動く範囲を実験前と比べた。その結果、足首の曲がる角度は平均約3度大きくなった。
頭頂の下の脳の部位は、足の感覚や痛み、関節の動きを認識する場所と考えられており、電気刺激によって痛みを感じにくくなったとみられる。荒牧教授は、効果は1時間程度続くと推測しており、「関節の可動域が広がるので、けがや障害からの回復を目指したリハビリやストレッチの前に行うと有効だ」と話す。(11/21 読売新聞)


■1年間のご厚誼に感謝いたします。明けて2017年も読者大兄にとりまして幸多き1年となりますことを祈念しています。次号のメールマガジンは2017年1月10日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ