エンタプライズ発信〜メールマガジン【№92】 2018. 12

このメールマガジンのNEWSでも何度か紹介しましたが(86号・88号・本号)、世界中で座りすぎの健康リスクの研究(座位行動研究)が急速に進んでいます。日本では就労者のおよそ4分の3が主としてデスクワークに従事しているとされ、1日に座っている総時間は約7時間で、世界20か国のデータと比較して最長です。オーストラリアの研究報告では、平日1日に座っている時間が4時間未満の人に比べて、4〜8時間、8〜11時間、11時間以上と、長い人ほど総死亡率のリスクが約11%ずつ高くなることが分かりました。さらに座位時間が長くなるほど、心血管疾患で死亡するリスクが約18%ずつ高まるという結果も出ています。ご承知のように、座って脚の筋肉がほとんど動かない間、「第二の心臓」と言われる腓腹筋の活動はほとんど停止状態に陥っています。言い換えれば、下半身に下りた血液を心臓に押し戻すポンプの働きが減衰して、全身に酸素や栄養を送る血流が滞っているわけです。また座っている時間が長く、体を動かさない人は、ウエスト周囲径が大きく、HDL(善玉)コレステロールの数値が低く、中性脂肪が高いなどの脂質異常が多い傾向にあるとのデータもあります。このリスクを防ぐために、1時間に1度は最低でも2〜5分立つことが推奨されています。立ったり歩いたりすると脚の筋肉が収縮し、筋肉の細胞内では血液中から糖や中性脂肪が取り込まれ、エネルギーとして消費される代謝が盛んに行われることになります。テレビの健康番組でよく紹介される膝裏のばしはハムストリングスと腓腹筋ほかのストレッチになりますから、全身の新陳代謝に効を奏することになるのではないでしょうか。今後も、さまざまな技術が進歩するにつれて生活環境や仕事環境の機械化・自動化は加速し、私たちの身体活動は著しく省力化していくと想像できます。足腰はヒトのカナメです。時は師走。患者さんには年末年始はテレビの前に鎮座せず、億劫がらないで身体を動きまわすよう進言するのもいいですね。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S

Topics 1

日本構造医学会が第23回学術会議を開催

11月23日、日本構造医学会(熊本市)は大阪大学中ノ島センターにおいて第23回学術会議を開催、全国から多くの会員が出席し、ヒトの全体像を理解するアプローチとして構造医学の原理を探究する論題が多数発表され活発な質疑が行われた。
学会長挨拶では松村圭一郎氏が「構造医学の持つポテンシャルの大きさを自己実現の糧として心技体知を駆使してより一層の社会貢献を目指そう」と述べた。一般論文では演目8題が発表され、質疑応答が各々活発に行われた。また最終講座では好評の座長カンファレンスが行われ、総括では吉田勧持理事長より「技術先行ではなく評価考察を十分に行い、加えて追跡データの蓄積と分析が一段と学問性を高めていく」と医療者としての資質をより向上させることを希求した。

★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

活性酸素が増えるから運動はダメ?

[太田] 「活性酸素は老化や病気の原因になるから、活性酸素を減らせば健康になる」という考え方は正しいです。するとこんなふうに言い出す人も出てきます。「ミトコンドリアが活性化して酸素からエネルギーを作り出すときに活性酸素が生まれるわけだから、ミトコンドリアを活性化させる運動自体が体に良くない」のでは、と。
[安保] 運動しなければエネルギーもそれほど必要なくなります。エネルギー消費を極力抑えることができるから、省エネ型の人生だね(笑)。それは冗談として、実際には適度な運動をする人の方が寿命は長いから、そんな単純な話ではないですよね。
[太田] 鶴は千年、亀は万年と昔から言いますが、亀はゆっくり動くし冬眠もするので消費エネルギーを極力抑えた省エネ型の一生なんですね。
[安保] 亀は冗談抜きで省エネゆえに長寿なんだ。実際どのくらい寿命はあるんですか。
[太田] さすがに万年とはいきませんが、飼育下で150年くらい生きていた記録があるようです。
[安保] 鳥は高体温で空を飛びまわるから消費エネルギーは亀の比ではないでしょうね。こちらは大量消費型の長寿ですね。
[太田] 動物の寿命は体のサイズである程度決まってしまいます。一般的に大きい方が寿命は長く、小さいほど短い。鳥は動物の中ではサイズが小さい方で、飼育された小鳥だと10-20年と言われています。同じくらいのハムスターの寿命が3年ほどだから、サイズの割には長寿です。ちなみに鶴はもっと寿命が長くて、50-80年と言われています。

鳥型ミトコンドリアは高性能

[安保] 鶴は渡り鳥だからなおさら運動量は多い。それでも長寿なのはミトコンドリアの性能が抜群だからだよね。
[太田] 鳥型ミトコンドリアはエネルギーをたくさん作ることができ、しかもその製造過程で活性酸素をあまり発生させないんですね。
[安保] トップクラスのマラソンランナーも高性能のミトコンドリアをもっていると言いますね。
[太田] マラソンランナーのミトコンドリアは鳥型に近いです。42kmもの距離を2時間程度で走ってしまうわけだから、ミトコンドリアのエネルギー効率が優れているということですね。
[安保] 鳥のような高性能ミトコンドリアをもつ人もいるけど、人間の体は活性酸素を取り除く酵素も作り出すことができます。
[太田] SOD(スーパー・オキシド・ディスムターゼ)ですね。ほかの動物もSODをもっていますが、ヒトはとりわけSODを作り出す能力が高い。ヒトとチンパンジーではSODの量が倍近く違います。ヒトはほかの動物と比べて遺伝子の修復能力も高いと言われています。


連載vol.50

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

組織中の電子の動き

前号でも登場したアルバート・セント・ジョージ教授が1941年に発表した論文の中で興味深い1節がある。このレビューが現代科学と補完代替医療とが強く結びつくきっかけとなったのである。

—-多数の原子が、例えば結晶格子のように極めて狭い間隔で規則正しく排列すると、1個の価電子は1個または2個の原子のみに拘束された状態から解放されて、分子全体に属した状態になる。したがって大量の分子が集まってエネルギーの連続体を構成すると、エネルギーとりわけ励起状態の電子は、この連続体を伝って遠くまで移動できることになる。—-

この1節は、何年も前から多くの論文や講演の中で幾度となく引用されてきた。私はこれを読むたびに半世紀以上も前にこれを書いた教授の深い洞察力と発見の重要さを思い知らされてきた。私がなぜこのレビューにそれほど感動するのかというと、ヒトの体を構成するほとんどの組織が、「例えば結晶格子のように極めて狭い間隔で規則正しく排列する」分子でできているからだ。
この引用したレビューは、次のように書き換えることができるだろう。
「結晶の中では多数の原子や分子がぎゅうぎゅう詰めの状態で格子状に並んでいる。結晶をつなぎとめる役割の電子、つまり「価電子」は、1か所に固定されていないので移動可能な状態にある。したがって特定の原子や分子、あるいは結合に属するのではなく、その結晶系全体に属することになる。こうして多数の原子や分子が集まると、エネルギーの連続体が出来上がる。エネルギーは、励起状態の電子という形で結晶格子の中を自由に移動することができる」

コラーゲンと水

その後、私は縁あってマサチューセッツ州にあるセント・ジョージ教授の研究室で働くことになり、研究室ではコラーゲンという蛋白質を調べていた。コラーゲンは動物の体に最も多く含まれる蛋白質で、骨、腱、靭帯、軟骨、筋膜といった結合組織の主要な構成成分である。電子顕微鏡が開発されて以来、生物のいろいろな組織が観察されたおかげで、組織に含まれるコラーゲンは広く知られるようになり、また多くの研究の対象にもなった。

(出典『エネルギー療法と潜在能力』小社刊)


連載エッセイ 60☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


患者への「質問力」 〜隠れたニーズを読み解く洞察力〜

過去の記憶が急性腰痛の原因

50代男性。腰痛と肩こりが主訴で来院。定期的に腰痛があるとのことで、左腰部、左股関節周辺、ならびに右肩関節周辺の機能障害。アクティベータ療法で調整すると、すぐに筋肉の働きも正常化して症状も改善する。しかし、次の来院日にはぶり返していた。3回継続的に施術を行なった。毎回、治療後は症状が軽減しているようだが、朝起きた時が悪いという。ハード面の施術だけ様子を見ていたが、寝ている際のイメージで誤作動記憶の反応が毎回示されたので、次回はソフト面の施術の提案をした方が良いだろうと考えていた。朝起きて症状がある場合は、寝ている間の無意識の誤作動を疑う。

4回目の来院時、ぎっくり腰(急性腰痛)のように悪いとのこと。寝ている状態でのイメージ検査でも陽性反応が示されるので、ハード面調整を行なった後にソフト面調整法を施行した。寝ている状態を目安に検査を進めていくと、いくつかのキーワードが示され、会社の人事異動に関することで、責任のある立場に関する事柄がストレスになっていた様子だった。おそらく脳は無意識にそのことを思い身体を緊張させたのだろう。調整後はかなり改善した。

その次の日の来院の際、前回の改善が維持されている様子。朝起きた際の腰痛も良かったとのことだった。機能検査ではかなり改善しているのに、痛みをかばっている様子があるので、おそらくエピソード記憶が関係しているのではと予測した。そして、検査では予想どおりエピソード記憶の陽性反応が示され、その誤作動記憶を調整。さらに検査をすすめると「恐れ」→「時系列」→「6ヶ月前」に反応を示す。「6ヶ月前に何か『恐れ』や『不安』などに関係することで、思い当たることがありますか」と尋ねると、ちょうどそのころに人事異動の辞令を受け、いくつかの恐れや不安などがあったとのことだった。

前回の施術で人事異動がストレスとして関係していたことは知っていた。しかし、6ヶ月前に初めて会社から人事異動の辞令を受けたことまでは知らなかった。でも、PCRTの検査では、ピンポイントで誤作動記憶の陽性反応にたどり着く。このようなピンポイントの誤作動記憶の検査結果で多くの患者さんは驚かれる。そして症状がその誤作動記憶の調整で改善するので、その記憶が影響を及ぼしていたということを認めざるを得ない。

施術者は淡々と検査を進めてはいるが、「ん〜なるほど!」と因果関係が明確になることが、内心とても面白い。「面白い」というと、つらい症状を抱えている患者さんに対して不謹慎かもしれないが、原因があっての結果なのだという繋がりが明確になることが、難問を解決したように面白い。このように人間の脳の記憶が、いかに慢性症状に影響を与えているのかということをもっと多くの人に知ってもらいたいと思う。

◆連載11◆

『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く

孫 維良(東京中医学研究所所長)

「痛みをやわらげる、ひとりあんま気功・実践編2」
下痢がひどい

中国医学では、下痢は脾と胃の気が不足し、脾と胃の機能が失調したことによって引き起こされます。また腎の気が不足し、腎の機能が弱まることによって引き起こされるケースもあります。
そこで下痢症状を治すひとりあんまは、脾と胃につながる経絡あるいは腎につながる経絡やツボを刺激して、気の流れをスムーズにすることによって改善を図っていきます。
①楽な姿勢で椅子に浅く座って、肩の力を抜いて、全身をリラックスさせます。目を閉じて、軽く臍を意識しながら、ゆっくり腹式呼吸を行います。そして新鮮な気が腹部に集まり、濁った気が脚を下って足の裏から出ていくイメージを思い描きます。
②右手の平を臍の上に当て、その上に左手を重ね、両手を時計回りにまわしながら、腹部をゆっくり撫でもみます。意識は軽く腹部に集中させ、あまり力は入れずに、柔らかくもむようにしましょう。30回ほどまわしたら、今度は逆時計回りにまわします(約30回)。
臍のまわりには、胃経、脾経、腎経などの経絡が通っているので、臍のまわりをもむだけで脾と胃、腎の気の流れを活発にできるのです。
③次に両手をこすり合わせ、手に気を集めます。手が温かくなったら両手の平を背骨の両側にまわし、腎兪というツボから大腸兪というツボまで、腰を上下に押しさすります。さすっている場所が温かくなるまで続けてください。
腎兪は第2腰椎の下のくぼみから親指の横幅で1.5本分ほど左右にあり、文字どおり腎の機能を強化するのに効果的なツボです。大腸兪は第4腰椎の下のくぼみから親指の横幅で1.5本分ほど横にあり、大腸の機能を整える作用があります。

また、腹を冷やして下痢になった場合は、足三里というツボを押すと効果的です。足三里は膝を60度くらい曲げ、手指を伸ばして親指を膝の皿の上に置いたとき、ちょうど中指の先が当たるところにあります。胃経に属していて、昔から胃腸病によく効くツボとして知られています。この足三里を、ツボに意識を集中しながら、はじめは軽く押し、少しずつ力を加えていきます。ツボの周囲に鈍い痛みやだるさを感じるまで続けてください。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(66)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■慢性腰痛患者148名を対象に、30分間の理学療法群、1時間のマシンエクササイズ群、1時間の軽いエアロビクス群の3群に割り付けて6ヶ月間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、3群間の治療成績に差は認められなかった。

http://1.usa.gov/pIbRGU

……これは3群とも効果がなかったというのではなく、効果が同じならよりコストのかからない方法を選びましょうという論文です。繰り返しますが慢性腰痛には運動療法が必要不可欠です。

■腰痛と頚部痛患者256名を対象に、標準的治療群、脊椎療法群、理学療法群、シャム群に割り付けて1年間追跡したRCTでは、標準的治療群とシャム群が最も成績が悪く、脊椎療法群は理学療法群よりわずかに優れていた。http://1.usa.gov/kfFvV6
……最も成績の悪い標準的治療とは鎮痛剤・姿勢に関するアドバイス・腰痛体操・安静臥床で、理学療法とは運動・マッサージ・物理療法(ホットパック・低周波治療・超音波・短波ジアテルミー)です。

■慢性腰痛患者66名を対象に、筋電図バイオフィードバック群、シャム(見せかけのバイオフィードバック)群、無治療群に割り付けて効果を実験直後と3ヵ月後に比較した結果、どの時点においても3群間に差は認められなかった。http://1.usa.gov/qGMSer
……慢性腰痛にはバイオフィードバックが効くと思っていたのですけど残念です。

■慢性疼痛に対する鍼治療の有効性に関する51件のRCTを吟味した結果、鍼治療の効果はきわめて疑わしいと結論。鍼治療の有効性を主張するにはさらなる臨床試験が必要。いずれにしろ物理療法の有効性は科学的に証明されていない。http://t.co/rN78mjH
……この論文から20年経過した現在、慢性腰痛に対する鍼治療のRCTが次々と行なわれ、慢性腰痛には鍼治療が有効という結果が出ています。ただし他の物理療法はほぼ全滅。

■腰痛患者144名と健常者138名を対象に骨盤の歪みを厳密に測定して腰痛との関連を調べた結果、どのような臨床的意義においても骨盤の非対称性と腰痛は関連していないことが判明。骨盤の歪みが腰痛の原因というのは迷信に過ぎない。http://t.co/iEvQzim
……受け入れがたい医療関係者も多いでしょうが、この結果に異を唱えたければ同じ研究をやってみることです。自然界に左右対称は存在しません。ある信念に固執して事実から目をそらすことを確証バイアスといいます。

■18〜40歳までの急性腰痛患者を対象に4週間追跡したRCTによると、モビリゼーション群とマニピュレーション群の改善率は4週間後には差がなくなるものの、マニピュレーション群は最初の1週間で急速に改善することが判明。http://t.co/xSdw3w4
……モビリゼーションに効果がないというのではなく、マニピュレーションのほうが早く回復するということです。

 N  E  W  S

NEWS■ 「お経を聞くと悲しみが癒やされる」 免疫力向上—東北大学

お経を聞くと、喪失感による悲しみが癒やされる効果があるとする研究結果を、東北大の谷山洋三准教授(宗教学)らの研究チームが発表した。読経を通じて東日本大震災の被災者の心のケアに取り組む谷山さんは、「経験的にお経の効果は感じていたが、免疫力の向上やストレス軽減を実証的に確認したのは初めて」としている。
研究は、ペットを失った経験を持つ21〜72歳の男女36人を、僧侶の読経を20分間聞かせるグループと、何も聞かずに座ったままのグループに分けて実施。質問に答えると不安の大きさが数値化できる指標や、ストレスの大きさが分かる免疫物質の量を測定し、読経前と後の変化を比較した。
両グループとも、読経後に不安を示す数値が減少したが、お経を聞いたグループの減少幅は、聞かなかったグループの約3倍だった。免疫物質の量は、お経を聞いたグループが約1.5倍に増え、ストレスが減っていたのに対し、聞かなかったグループはほとんど変わらなかった。
研究は、同大の講義室にペットの遺影を持参してもらい、ペット葬の動画を約4分間見せた後に行った。読経以外の要素が影響しないように、線香やろうそく、お香は使っていない。(12/13 読売新聞)

NEWS■ たった2分の歩行でも健康に有益…米国のガイドライン

これまで米国の身体活動ガイドラインでは、運動は10分以上継続することが推奨されてきた。しかし米国心臓協会年次集会で発表された最新版のガイドラインでは、たった2分程度の歩行であっても運動することは健康に有益とする見解が示された。「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に掲載。
身体活動ガイドラインの初版は2008年に発行された。今回の改訂版でも科学的エビデンスに基づき、身体活動は短期的にも長期的にも健康に有益であることが示されている。そのポイントは以下のとおり。
・2分ほどの短時間の運動でも頭がすっきりして不安感が軽減するほか、よく眠れるようになり、血圧値や血糖値が改善するといった効果が得られる
・定期的な運動で脳の健康が向上し、8種類のがんの発症リスクが低減し、体重増加を抑えられる
・運動をすると変形性膝関節症や高血圧、2型糖尿病、不安や抑うつなどの慢性疾患が改善される
・運動するとさらに認知症や多発性硬化症、注意欠陥多動症(ADHD)、パーキンソン病などの患者の脳機能の改善にも役立つ

今回の改訂では、成人の週当たりの推奨運動量に変更はなく、成人だけでなく3〜5歳の子どもは成長と発育のため活動的であるべきで、6〜17歳になると中強度〜高強度の運動を毎日60分以上行うことが勧められている。さらに高齢者は有酸素運動と筋力トレーニングのほかにもバランストレーニングを行うことを推奨している。米フロリダ大学医学部循環器内科教授 Handberg氏は「慢性疾患がある患者であっても運動は必要だ。このガイドラインの対象とならない人はいない」と述べている。(12/7 CAREnet)

NEWS■ 女性は関節が弱点…リウマチは男性の3.3倍

中高年女性はコラーゲンが大好き。化粧品もサプリメントも「コラーゲン入り」とうたうだけで売り上げがアップするとか。外食産業も放ってはおかず、コラーゲンたっぷり鍋(ただの鶏鍋ですが…)などを盛んに売り出しています。
コラーゲンは皮膚や骨の主成分。靱帯や腱などもこれでできています。コラーゲンは漢字で書くと「膠(にかわ)」だという点にもっと注目してもいいでしょう。膠が自分の免疫に攻撃されて炎症を起こすのが「膠原病」だからです。
膠原病は症状などによって、さらにいくつかの病気に細分されています。最も有名なのが関節リウマチ。とりわけ中高年(40〜64歳)に多いことが知られています。中高年女性の患者数は、全国で約9万3000人(男性の3.3倍)。自己免疫が手足の指の関節に入り込み、コラーゲンを豊富に含む軟骨や結合組織を攻撃するのです。炎症が生じ、関節が次第に破壊され、変形していきます。激しい痛みや発熱なども伴います。
もうひとつ有名な病気が、全身性エリテマトーデス。20代から30代の女性に多い病気ですが、中高年女性も少なくなく、患者数は約1万5000人(男性の7.5倍)となっています。自己免疫が攻撃するのは、関節だけではありません。皮膚や内臓などがターゲットになることもあるため、症状は多彩です。有効な治療法が少ないので、難病指定を受けています。
膠原病に限らず、関節は中高年女性の大きな弱点になっているようです。とくに患者が多いのが「(変形性)関節症」で約16万2000人(男性の2.7倍)に達しています。膝などの軟骨がすり減ったり変形したりして動きが悪くなり、痛みも出てきます。太った女性に多いのも特徴です。
テレビCMなどでコラーゲンを飲めばよくなるなどと言っていますが、体重を落とすほうがもっと効果的かもしれません。(12/4 日刊ゲンダイ)

NEWS■ 「代替医療でがんは治癒する」 と4割が回答、米調査

エビデンスに反し、米国人の10人に4人が代替療法でがんは治癒すると考えていることが、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が実施した意識調査から明らかになった。調査は約4900人の18歳以上の成人を対象に7月から8月にかけて実施された。そのうち約1000人はがん患者または経験者だった。また、対象者にはがん患者を介護する家族も含まれた。
その結果、これまでの研究で標準治療を受けたがん患者と比べて代替療法のみを受けたがん患者では、がんによる死亡率が大幅に高いことが示されているにもかかわらず、回答者の39%が「酵素療法や酸素療法、食事療法、ビタミン剤やミネラル剤でがんは治癒する」と考えていることが分かった。
今回の調査では、高齢者よりも18〜53歳の若年層や中年層で代替医療の信頼度が高いことも分かった。しかし、代替療法のみを受けたがん患者の死亡率は外科手術や化学療法、免疫療法、ホルモン療法などの標準治療を受けたがん患者の約2.5倍であることが2017年8月に「Journal of the National Cancer Institute」に掲載された論文で報告されている。(12/1 TMSnet)

NEWS■ テニス肘の保存的治療の効果はどれも限定的?

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)には、ステロイドの局所注射や理学療法など手術以外のさまざまな保存的治療法がある。しかし、これらの効果はいずれも限定的で、プラセボの効果を大きく上回るものはない可能性があることが、米ハーバード大学医学大学院のAmin Mohamadi氏らによる研究で明らかになった。
米国でテニス肘と診断される患者は年間約20万人に上る。その治療には、手術以外にもステロイドの局所注射や理学療法、鍼治療、消炎鎮痛薬、ボツリヌス毒素の注射、超音波やレーザー治療など多くの保存的治療がある。
Mohamadi氏らは今回計2746人の成人男女が参加した36件のプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)を対象にメタ解析を実施した。これらのRCTでは手術を除いた11種類の治療法の有効性が検証された。治療開始から4週後、5週後から26週後、26週後以降における各種治療の疼痛と握力に対する有効性を検証した。
その結果、4週間以内の短期間では、ステロイドの局所注射だけがプラセボを上回る効果がわずかに認められたが、その後はプラセボとの有効性の差は消失していた。また握力の改善でプラセボよりも優れていたのはレーザー治療のみだった。一方、26週後以降にはプラセボを使用した患者の99%で疼痛はほとんど、あるいは完全に消失していた。(11/29 HealthDay News)

NEWS■ 喫煙者は肥満度に関係なく死亡リスクが高い―厚生労働省

日本人男女の大規模データを解析したところ、死亡リスクが最も低いBMIは22.0〜24.9であることが、東北大学東北メディカル・メガバンク機構個別化予防・疫学分野教授の寳澤篤氏らの研究グループの検討で示唆された。これらの関連は年齢や喫煙習慣の有無による影響はみられなかったが、現在喫煙している人はたとえ理想体重であっても、喫煙歴のないどのBMI群の人よりも死亡リスクは高いことも明らかになった。「Journal of Epidemiology」に掲載された。
対象は、国内13件の前向きコホート研究の個人データを統合した、大規模なメタ解析研究であるEPOCH-JAPAN(Evidence for Cardiovascular Prevention From Observational Cohorts in Japan)に参加した40〜89歳の男女計17万9987人(平均年齢58.7歳、男性11万1705人、平均BMIは23.3)。1987〜1995年のベースラインから平均9.8年間追跡した。その結果、対象者全体の解析では、全死亡リスクとBMIとの間にはU字型の関係が認められ、BMIが21.0以下あるいは29.0以上の場合に全死亡リスクの有意な上昇がみられた。また、全死亡リスクはBMIが22.0〜24.9の場合に最も低いことも明らかになった。喫煙習慣がないなど特に健康な参加者でも同様の結果が認められた。さらに、BMIと全死亡リスクの関連に年齢や性、喫煙習慣の有無による影響はみられなかった。しかし、BMIが18.9未満または30.0以上で喫煙歴がない人に比べて、喫煙者は理想的なBMIでも死亡リスクは上回っていることも分かった。(11/26 HealthDay News)

NEWS■ 座位時間が長いほど糖尿病になりやすい―福岡・久山町研究

福岡県久山町の一般住民を対象とした疫学調査(久山町研究)から、加速度計を用いて客観的に評価した座位時間が長いほど糖尿病になりやすい可能性があることが分かった。これらの関連は運動量とは独立したものであったことから、研究を実施した九州大学大学院衛生・公衆衛生学教授の二宮利治氏らは、糖尿病の予防戦略では座位時間をいかに減らすかが重要な課題になるとしている。詳細は「Journal ofDiabetes Investigation」に掲載された。
これまでの研究では、座位時間は参加者の自己申告によるもので、客観的指標で評価した研究は限られていた。そこで、二宮氏らは今回、久山町研究のデータを用いて、加速度計で客観的に評価した座位時間と糖尿病有病率との関連を調べる横断研究を実施した。対象は、2012年に健診を受け、加速度計を7日間以上装着して身体活動量を評価した40〜79歳の地域住民1758人(平均年齢61歳、女性59%)。食習慣や肥満、インスリン抵抗性といった因子が座位時間と2型糖尿病の関連に及ぼす影響についても検討した。
解析の結果、高血圧や脂質異常症などの併存疾患や中強度から高強度運動、喫煙や飲酒の習慣といった生活習慣因子を考慮しても、座位時間が1日に6時間未満だった人に比べて、10時間以上だった人では糖尿病である確率が有意に高いことが分かった(オッズ比1.84、95%信頼区間1.02〜3.31、P=0.04)。これらの有意な関連は、全身性や中心性の肥満で調整した解析でもみられたが、食事の摂取エネルギー量やインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)で調整すると関連性は減弱した。(11/25 TMSnet)

NEWS■ マッサージロボ:人工知能で豊橋技科大とメーカー共同開発

豊橋技術科学大(豊橋市)は11月20日、医療機器メーカーと共同開発している人工知能(AI)を活用したマッサージロボットを報道陣に公開した。人からマッサージを受けているような感覚に近づけるため、指圧師の指先の動きをデータ化した制御システムを構築。AIで人の好みに合わせたマッサージもできるようにする。2021年ごろまでの実用化を目指す。
同大と健康器具製造・販売の「リッコー」(本社・東京)が共同開発しているのは、5本の指を備えたロボット。レールに沿って動き、内蔵したカメラで人の肩や腰の位置を把握し、マッサージを施す。同大機械工学系の田崎良佑・助教はこれまでにも4本指のマッサージロボットの制御システムを研究してきたが今回は5本指に増やし、親指の動きは指圧師の指先圧力の計測データを基に動作制御システムを構築した。田崎助教は「ロボットが人に寄り添い、熟練した人の手で施術を受けたような感覚でマッサージが受けられるようになれば」と話している。(11/22 毎日新聞)


次号のメールマガジンは2019年1月15日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)


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