エンタプライズ発信〜メールマガジン【№79】 2017. 11
帯状疱疹後神経痛をご存知ですか。その前駆症状として、帯状疱疹の発症率が50歳を過ぎから急激に高くなるということは? およそ80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になり、またそのうち2割の人は帯状疱疹後神経痛が残るとされています。日本人成人の9割以上が、水痘・帯状疱疹ウィルスを体内に持っている状態だと言われており、そのためにほとんどの人が帯状疱疹になる可能性があると言えます。この神経節に潜むウィルスは、体の免疫力がしっかりとしている時はおとなしくしているのですが、体調不良が続いたり、ストレス、老化が顕著な状態になると数を増やし暴れだします。好発部位は、肋間神経の走行に沿って胸部腹部側位、三叉神経第1枝(顔面のまゆ毛の上)領域が主です。この帯状疱疹治療が遅れたり、充分でないと、皮膚の症状が綺麗に治っても痛みが残ることがあり、これが帯状疱疹後神経痛です。“電気が走るようだ”、“焼けるような痛み” とか、“ピリピリする痛み”などと表現されます。困ったことにこの疼痛が数か月から数年以上にわたって続くことが多く、QOLはズタズタになると言う人もいます。幸い50歳以上の人に予防ワクチンの接種が可能になりました。帯状疱疹の罹患率が50%以下に減り、また帯状疱疹後神経痛が1/3程度に減ると言いますので、中年を過ぎた人には皮膚科に相談することをお勧めします。編集子の元同僚(74歳)や妹の夫(67歳)が帯状疱疹後神経痛に陥り、数年から数か月にわたって日々苦闘しているのを目の当たりにしているので、自らも他山の石として「転ばぬ先の杖」に臨む必要がありそうです。帯状疱疹、侮るなかれ。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【4】伝統医学をシルクロードに求めて 〜くらしのなかの中医学〜
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*
*
Topics
「下顎平衡機能から見るヘルスプロモーション」をテーマに、日本直立歯科医学研究会は10月14日‐15日の2日間にわたって研究大会を開催した。東京大学福武ホールを会場に全国から多数の会員が参加、ヒト直立および下顎の平衡機能と歯科疾患要因に着目し咬合干渉不全が引き起こす身体の捻りに諸病の原因があることを言及、直立歯科医学の介入の必要性を各演者が多角的に唱えた。また東京工業大学の研究チームによる顎・身体傾斜測定技術を用いた「下顎のスイング現象」が工学的に検証され、研究会が主導する咬合調整法の科学化へ向けて一歩前進した。
Topics
アクティベータ・ネットワーク・ジャパン(ANJ)は10月15日から2日間にわたって今年最後となる基礎編/臨床編セミナーを開催した。アクティベータ・メソッドは、神経系の働きの悪い箇所を分析し、脊椎を中心として筋骨格系の関節部位や筋に対しアクティベータ器で適切な振動刺激を与え、人体の神経エネルギーを調整することで自然治癒力などを高める作用をもつ。会場となった東京・浜松町の味覚糖ビルにはカイロプラクター、柔整師、鍼灸師をはじめ多数の参加者を得て、座学および実技演習を行い、多岐にわたる技術修得に余念なく取り組んだ。来年は2月4日-5日の予定で大阪市において第1回目が開かれることになっている。
BOOK Review
孫 維 良(東京中医学研究所所長)著
気の滞りを解消すると健康になれると中国医学では言います。その方法でよく知られているのがツボ治療です。しかしそれを有効にするのは「ツボを正確に刺激する」ことが肝要。とはいえ一般人には目安程度しかわかりません。そこで著者は「腕もみ」健康を考案し、ツボと経絡をまとめて刺激することを開発しました。経絡の奥にツボがあるという位置関係を利用したのです。ツボに届く刺激なら、気が流れている経絡そのものをほぐすことができるし、ツボもほぐすことができる。腕もみ健康法は手当てするのは腕のほうがたやすく、また腕もみが胃腸に有効性が高いからです。本書では1日1回1分の自療法で胃腸不良や諸病、不定愁訴を改善していく腕もみエッセンスを図解しながら指南していきます。1日1回、自動運動で健康維持・メンテナンスの実践を患者教育する際にも役立つ1冊です。
四六判・190頁・定価1,100円+税・プレジデント社刊
⑥
老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)
瞬発力の解糖系、持久力のミトコンドリア系(つづき)
[太田] 水着で締め付けられた体は血流が滞るから酸素が少なくなります。解糖系は酸素なしでエネルギーを作るから、短距離アスリートほど解糖系のエネルギーを活用しやすいということになります。
[安保] 逆に長距離走だったら競技中も酸素をしっかり取り込む必要があり、持久力が問われます。こちらはミトコンドリア系のエネルギー活用ですね。
[太田] ミトコンドリアが作っているのはエネルギーそのものではなく。ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれるエネルギー放出物質です。エネルギー源となるブドウ糖1分子から解糖系の場合は2個、ミトコンドリアは36個のATPを作り出すことができます。
ミトコンドリアは解糖系の18倍ものエネルギーを作ることができるのですが、酸素を使ってATPを作る経路が少々複雑なため、解糖系でエネルギーを作るよりも時間がかかってしまいます。エネルギーをゆっくり量産するので、持久力の必要な競技に向いているわけです。
[安保] 加圧トレーニングと言って、体を締め付けて血流を抑制して筋力を鍛えるトレーニング方法があります。これは高速水着と同じで、解糖系の瞬発力を利用した方法です。解糖系とミトコンドリア系という2つのエネルギー生産系の理解が、スポーツ医学とパフォーマンスの発展にも貢献していくことも考えられますね。
歳をとると転びやすくなるのはなぜ?
[太田] 瞬発力と持久力の話では、筋肉の白筋(速筋)と赤筋(遅筋)の違いも面白いですね。白筋よりも赤筋のほうがミトコンドリアは多いのですが、歳をとると白筋のほうから先に衰えてきます。白筋が落ちてくると瞬発力が鈍るから、お年寄りはちょっとしたことでつまずいたりするでしょ。
[安保] 歳をとるとどうしても瞬発力が衰えてきますね。若いころは瞬発力で強引に乗り越えることができても、だんだんそれができなくなってきます。年齢的には瞬発力よりもミトコンドリアの持続的なエネルギーの使い方が体になじんでくる時期です。
[太田] それでも転んで骨を折ったりしたら大変だから、衰えを感じたら少しずつ鍛えておくのがいいですね。
[安保] 次の項では赤筋と霜降り和牛の話をしたいと思います。
連載vol.37
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
人間の能力
身体能力の向上という新しい分野は、医学よりはるかに先を進んでいる。記録の達成や新しい技の完成などを目標にしている人々が、自己の内なる能力を最大限発揮できる手段を追い求めているからだ。本書はそのような人々が新しい可能性を切り開き、新しいアイディアを見つけるのにも役立つことだろう。
本書の目的は、能力向上をめざす人に新しい治療法やトレーニング法を指し示すことではない。それらの情報を得たいのなら、優れた本や学校やトレーニングジムなどいくつもある。ここで示唆するのは、あらゆる人間の営みに関係する生体コミュニケーションシステムについてである。自分自身や治療の場で出会う人々に何が起きているのかと強く疑問を感じている患者や、主義主張に関係なく、すべての治療者のために私は本書を書き上げた。そして説明のつかない驚異的な現象を時折経験し、その現象を科学で説明できるなら、極限状態では何が起きるのかをぜひ知りたいというすべてのパフォーマーのためにここに書いたのである。
謎解き
これまで説明のつかない謎とされてきた数々の発見から共通項を探し出し、それらを検証することで新しいエネルギー医学を論じることが目的あることを改めて記しておきたいと思う。この謎とされてきた発見のなかには、「自然治癒」に関するものもあれば、能力の限界に挑むスポーツアスリートやアーティストの経験、武道、さまざまな精神修行などから生まれたもの、そして科学そのものの発見もある。これらの現象は研究対象としても重要だが、謎を解き明かすための大切な鍵であるに違いない。
また、科学的に説明しにくい現象や曖昧な現象などについて、すなわち直感や意識下の正体とは何か、意識とは何者か、トラウマやその記憶がどのようにして細胞や組織に刻まれるのか、スポーツなどのパフォーマンスの世界において練習、負傷からの回復、コーディネーション、「目覚め」などにはいったい何が関与しているのか、これらの疑問に答えるために、生体コミュニケーションや生体エネルギーに関する最近の研究を検証していきたい。
まずはじめに、人体は何兆個という数の細胞で構成されており、これらの細胞が協力しあうことによってヒトの生命が維持されている。細胞同士が何種類もの通信手段を使って情報を交換しあっているからこそ生命は成り立っているのだ。
従来、細胞の通信手段については、ホルモン、神経伝達物質、成長因子などの化学物質が中心的役割を果たしていると考えられてきた。神経系における電気的シグナルもよく知られているとはいえ、光、音、磁気、電子といった通信手段の役割については、その存在や重要性が認められながらもあまり研究が進んでいない。科学者たちがこれらの物理学的メカニズムを敬遠してきたからであるが、そのために種々のエネルギーを活用した治療法がなかなか臨床応用されなかったのである。(つづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊))
連載エッセイ ㊼☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
車に乗ると必ず腰が痛くなる → その原因は「意味記憶」
ある患者さんが、仕事で使う車に乗ると腰が必ず痛くなるという。来院された際に、腰痛に関係する理学的な検査をしても陽性反応が示されない。しかし、その仕事用の車に乗って腰痛がある状況を想像してみると、生体反応検査では陽性反応が示される。
ということは、腰痛を引き起こす「誤作動記憶」があるということが疑われる。PCRT(心身条件反射療法) の検査チャートを使って検査を進めていくと、大脳皮質系の「意味記憶」で反応が示された。患者さんに、
「この反応は、思い込みによる影響なのですが、ご自分なりに考えている腰痛を引き起こす原因や理由で、何か思い当たることはありませんか」
と、質問してみたところ、
· 「その車のシートが傾いているから、骨盤が歪む……」
· 「オートマチック車は、右足しか使わないから、骨盤が歪む……」
· 「車の運転で腰を動かさないから、腰に良くない……」
というような腰痛につながる 「意味記憶」 が陽性反応として示された。それらの意味づけを、
「人間の身体はそもそも左右不均等が自然で、多少の傾きや偏りには対応できる能力が備わっている」
という新たな意味づけで調整を行うと、それ以来、車に乗った際の腰痛はすっかり改善した。
車のシートが傾いている、あるいは片方の足しか使わないからなどの偏りは、多くの医療従事者でさえもが腰痛の原因にしそうな意味づけであろう。その前提として、人間の身体は左右均等でなければならないという根拠のない理由がある。
私は、これを機械論の弊害だと常々語り続けてきた。機械論的な理由づけはあたかも正論かのように聞こえるので、厄介な面が多々ある。本症例のような機械論による健康被害はほんの一部であるが、このように本質を伝え続けることが大切だと思う。
《連載61》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
日本ではあまり観ない映画を中国では実によく観た。家族ぐるみで天津にいた2年間(1981-83)、大学では仲間が活動(フォトン)と称して映画や芝居、ハイキングに連れて行ってくれた。この映画を観る習慣はすっかり身についたらしく、今でも一人でぶらりと電影(映画)館に入ることがある。北京では前門大街、天津では和平路の界隈に大小の電影館がある。2‐3時間をつぶすには最良の方法だ。
『海囚』(ハイチウ)を観たのは天津でのこと。西欧の列強が中国への侵略を開始した19世紀、華南を舞台にした作品で、中国版の〝奴隷船〟ともいうべき内容だった。帝国主義の考案する人集めというものは大同小異である。『海囚』では、夜道で待ち伏せをし、こん棒で叩いて気絶させ、麻袋をかぶせて運んでいく。こうして暴力的に集められた労工(ラオコン)の行く先はオーストラリアなどであったことを当時の歴史は教えている。日本軍が旧満州でやった〝ウサギ狩り〟も同様で、北海道や秋田などに送られた。
『海囚』の冒頭では、海辺の小さな村に一人の若者が打ち上げられる。それを発見した娘さんが、彼にまだかすかな息のあることを知ると、一瞬とまどったあと、自分の右手の親指の爪をギューッと若者の鼻の下、人中に押しつけた。
それは中国人にとっては何でもない、ごく常識的な救急の方法だったという。だが『針灸学』(刊々堂)という大冊を友人とともに訳し終え中国の医学に関心を持ちだした者にとっては、十分すぎるほど印象的なシーンだった。息をふき返した若者は驚くべきことに、精神に異常をきたしていたが、娘さんの献身により回復する。その契機は、火災現場を見たことであった。
それは彼の原体験である船火事とオーバーラップさせ、回想によってストーリーを展開して、作品を巧みにドラマティックなものにしていた。(編集部注:本作の一部は1998年刊の著書にみる社会現象の一通念であり、今日の北朝鮮問題とは同一ではないことをお断りいたします)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(54)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****
腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■病欠している慢性腰痛患者195名を対象に、軽めの集学的治療プログラム群・徹底的な集学的治療プログラム群・標準的治療群に割り付けたランダム化比較試験によると、軽めの集学的治療プログラム群がもっとも有効だった。http://goo.gl/tiAQaX
……この研究では徹底的な集学的治療プログラム(1日6時間、週5日のペースで行動療法・患者教育・PTによる運動療法)より、軽めの集学的治療プログラム(PTとナースによる1時間の運動療法・心理学者による恐怖回避行動に関する1時間の講習)のほうが職場復帰に効果があったわけですが、それは男性のみで残念ながら女性にはまったく効果がみられませんでした。女性に対してはさらに疾病行動・家庭環境・職場環境・仕事の満足度といった心理社会的因子への介入が必要と考えられます。
■腰痛疾患の治療法として実施されている脊椎固定術には科学的根拠がなく、患者の大多数は症状が軽減されない。多くの脊椎外科医は固定術のリスクとベネフィットを把握しておらず、その効果を評価することさえ渋っている。http://goo.gl/f6mzFy
……この記事の中でGroopman博士は、脊椎治療学界の欠点を以下のように指摘しています。(1)脊椎専門医は慢性腰痛の85%について疼痛発生源を見抜くことができない。(2)脊椎治療学界は意見の相違によって分断された競合するフランチャイズの世界である。(3)脊椎固定術を支持する経験的裏付けは乏しい。(4)時には金銭的な問題が診断法や治療法の選択に大きな影響をおよぼす。(5)脊椎外科医の急増と外科技術の普及が手術実施率を上昇させている。(6)弁護士と診断医の癒着が労災患者に対して不必要な手術を促している。(7)一部の専門家グループとインプラント製造業者がエビデンスに基づく研究を妨げている。
■剖検被験者44体(胎児〜88歳)の腰部椎間板から採取した180枚のスライス切片を顕微鏡的に分析したボルボ賞受賞研究によると、血液供給量が減少することで10代前半から椎間板の加齢性変化が始まっていることが判明。http://goo.gl/Qddz6W
……椎間板変性(椎間板が潰れる)といえば老化現象によって生じる中年以降の問題だと信じられてきましたが、中年どころか未成年の10代前半から始まっていることが明らかになりました。要するに椎間板をいくら眺めても20歳の椎間板か80歳の椎間板か見分けがつかないということです。もちろん椎間板変性と腰痛疾患は無関係です。
■健康者60名を対象に知的処理を要する肉体労働の腰部におよぼす影響をEMG(筋電図)で調べたボルボ賞受賞研究によって、職業上の心理社会的ストレスが腰部に過剰な圧力をかけ、体幹筋のバランスを崩すことが判明した。http://goo.gl/IMKcbB
……腰への負担が腰痛を引き起こすことを証明した研究ではありませんが、腰痛疾患を抱えている労働者は極端な作業速度や強い精神的ストレスを避けるべきでしょう。職業上の心理社会的ストレスは腰痛患者の症状を悪化させる恐れがあるからです。職場復帰する際には患者の努力だけでなく、雇用主の配慮もある程度必要だというわけです。これがブルーフラッグとブラックフラッグです。
N E W S
男性の44%は自宅のトイレで座って排尿する――。NPO法人日本トイレ研究所が11月10日、「いい(11月)トイレ(10日)の日」に合わせてアンケート結果を発表した。尿が飛び散らないよう配慮する「座って派」と「立って派」(55%)が拮抗している実態が明らかになった。
トイレ研は1980年代から子どものトイレ環境の改善や、災害用トイレの普及に取り組む。今回は10月、20〜69歳の全国の男性515人にウェブ上で排尿の実態や悩みを聞いた。「座って派」の内訳では、家族に言われたのでという人の割合は、自分の意思とする人の4分の1以下。自発的な人が多かった。(11/10 朝日新聞)
2016年度の一般病院の医療・介護に関する損益差額を収益額で割った「損益差額率」はマイナス4.2%で、赤字幅が過去3番目の大きさになったことが11月8日、医療経済実態調査の結果で分かった。結果によると、16年度の1施設当たりの損益差額率は、一般病院(精神科病院と特定機能病院、歯科大学病院、こども病院を除いた病院)の全体がマイナス4.2%(前年度比0.5ポイント減)で、調査を始めた1967年度以降、2007年度のマイナス5.6%、08年度のマイナス4.4%に次ぐ赤字幅となった。一般病院のうち、国立病院機構や国立大学法人などの「国立」はマイナス1.9%(同0.6ポイント減)、都道府県・市町村立や地方独立行政法人立病院といった「公立」はマイナス13.7%(同0.9ポイント減)だった一方、民間の「医療法人」はプラス1.8%(同0.3ポイント減)となった。
入院診療収益がない一般診療所の16年度の損益差額率はプラス14.8%(前年度比0.1ポイント減)で、このうち、「個人」はプラス31.8%(同0.4ポイント増)、「医療法人」はプラス6.0%(同0.5ポイント減)だった。(11/8 CBnews)
山形大学医学部は11月6日、根本的な治療法が確立されていない神経変性疾患パーキンソン病について、ミドノリン(midnolin)という遺伝子の欠損が病因の一つと推定されることが分かったと発表した。同学部は発症メカニズムを分子的に解明し、治療のための薬の開発に結び付けたいとしている。
パーキンソン病は脳の神経伝達物質ドーパミンを出す神経細胞が減り、手足の震えや体のこわばりなどが起こる難病。およそ1000人に1人の割合で発症するとされる。同学部の説明では、発症の約1割が遺伝性(家族性)で、大多数の約9割は孤発性(非遺伝性)による。遺伝性では約20種類の原因遺伝子が既に判明しているという。
同学部は、病気発症の遺伝的要素と生活習慣の関係を解明するコホート研究に協力した高畠町内の健常者100人と、県内の孤発性患者86人から血液サンプルの提供を受け、遺伝子解析を行った。その結果、孤発性患者(86人)の10.5%(9人)にミドノリンの欠損の異常が認められたが、健常者(100人)にはミドノリンの異常が認められなかった。欠損がみられた患者9人のうち女性は8人、男性は1人だった。
こうした分子疫学的な結果から、ミドノリンがパーキンソン病の関連遺伝子であることが判明。研究を進めた小原准教授は「10.5%は非常に大きな数値」と説明した。
神経モデル細胞を使い、遺伝子を狙い通りに操作する「ゲノム編集」などでミドノリンを欠損させた場合、神経突起の伸展が抑制されたり、パーキンソン病の原因遺伝子Parkin(パーキン)の発現が減少する一方で、不良タンパク質の蓄積によって発症が進行したりする可能性も示唆された。嘉山参与は「将来的に創薬に結び付けばと思う。その第一歩の発表」と強調した。
ミドノリン:同学部の説明によると、体のさまざまな細胞になれる胚性幹細胞(ES細胞)から2000年に発見され、胎生期の中脳に多く発現する。知見の報告例が乏しく、詳しい役割や機能などは解明されていない。(11/7 山形新聞)
がん発症リスク因子としてのストレスについての報告は一貫していない。今回、1990〜94年に40〜69歳の10万1,708人を登録したJPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)のデータから、知覚されたストレスレベルが高いと男性のがん罹患率が増加する可能性が示唆された。Scientific Reports誌10月11日号に掲載。
ベースライン時に知覚されたストレスのレベルについて自己申告したものを収集し、5年間の追跡期間を通じてアップデートした。知覚されたストレスとがんリスクの間の関連について、既知の交絡因子すべてで調整したCox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。主な結果は以下のとおり。
・追跡期間(平均17.8年)中に、1万7,161例のがん症例を同定した。
・ベースライン時での知覚されたストレスのレベルとがん発症率との間に関連は認められなかった。しかし、知覚されたストレスの動的変化を考慮すると、ストレスレベルが低かった群と比較して、ストレスレベルが上昇した被験者ではがん全体の発症リスクがわずかに(4〜6%)増加することが、時変分析で認められた。
・知覚されたストレスレベルの長期分析により、常にストレスレベルが低かった被験者と比較して、常にストレスレベルが高かった被験者の過剰リスクは11%(95%信頼区間:1〜22%)であった。この関連は男性(20%の過剰リスク)に限定され、とくに、喫煙者、飲酒者、肥満者、がんの家族歴のない被験者で強かった。(11/2 tms-net)
欧州における補完代替医療の使用についてのヘルシンキ大学の研究。20ヶ国以上約4万人からデータを集めて4つのタイプの治療法の使用について検討した:伝統アジア(中国伝統薬、鍼、指圧)、代替医療(ホメオパシー、ハーブ)、手技(マッサージ、カイロプラクティック、オステオパシー、リフレクソロジー)、マインドボディセラピー(催眠療法、スピリチュアルヒーリング)。
調査対象の集団のうち約4人中1人が過去1年に補完代替療法を使ったことがある。最も多いのはマッサージ(12%)、ホメオパシー(6%)、オステオパシー(5%)、ハーブ(5%)。多くは1種類のみ。また主に補助的に使用あるいは普通の医薬品と一緒に使われていた。国により使用率は大きく異なりドイツでは40%、ハンガリーでは10%。違いの一部は保険でカバーされているかどうか不明。(11/1 tms-net)
「朝食を食べないことは心臓の不健康状態と関連がある可能性がある」と英国大手日刊紙Guardianは報道している。スペインの研究者は、朝食を定期的に食べない人は、プラークとして知られる脂肪性沈着物の増加のため動脈が硬化や肥厚を起こし、アテローム性動脈硬化症になる可能性が高いということを発見した。
アテローム性動脈硬化症は、たいてい最初は目立った症状はないが、悪化すると最終的には心臓発作や脳卒中のような命に関わる問題につながり得る。
研究者は、心疾患でないと思われる約4,000人の中高年の銀行員の朝食習慣と動脈の健康状態を調べた。朝食を食べなかった人は、少なくとも1日の1/5のカロリーである朝食(1日推奨摂取量が2500キロカロリーとされる成人男性の場合、500キロカロリー以上)を食べた人に比べて、プラークを有している可能性が高いことが判明した。
この研究では、朝食習慣と動脈の健康状態とが同時期に評価されたので、朝食を食べないことが直接、動脈の健康状態に影響していたかどうかはわからない。また、朝食を食べないことは、喫煙をすることが多かったりBMIが高くなったりするなど、他の行動においても不健康な傾向のある人々に共有されている習慣であるように強く思われた。
もし体重を減らそうとしている場合、朝食を食べないことは魅力的な選択肢に思えるかもしれないが、その日それ以降の時間に不健康なお菓子を食べたり、過食になったりするならば、それは逆効果である。(10/29 tms-net)
ファイザー社は、全国の慢性疼痛を抱える20代以上の男女約9,000人を対象にインターネット調査を実施した。調査の概要は次のとおり。
調査期間:2017年6月2日〜19日。調査対象:47都道府県8,924人。スクリーニング条件:(1)週2回以上の頻度で「痛み」が起こる、(2)3ヵ月以上「痛み」が続いている、(3)疼痛の11段階の痛みスケールで4以上の強さの痛み。方法:インターネットアンケート調査。その結果、
「痛みがあってもある程度、我慢するべきだと思っていますか」という質問では、「非常にそう思う」(10.5%)と「ややそう思う」(56.1%)を合わせると66.6%となり、「痛み」があっても我慢をすると考えている人が7割近くにのぼった(参考:2012年調査では合わせて74.3%)。
また、「痛いということを、簡単に他人に言うべきではないと思いますか」に対しては、「非常にそう思う」(9.7%)と「ややそう思う」(44.5%)が54.1%となり、依然として「痛み」を自分だけで抱えている人が半数以上を占める結果だった(参考:2012年調査では合わせて55.7%)。
次に、「長く続く痛みに対して、痛みが治ることを諦めていますか」では、「非常にそう思う」(19.9%)、「ややそう思う」(49.2%)で69.1%となり、約7割の回答者が痛みの治療を諦めていることが判明した。
続く質問、「あなたは『長く続く痛み』の治療のため、通院したことがありますか?」には32.8%が「いいえ」と回答し、3人に1人がそもそも医療機関に受診しない現実が明らかとなった。そして、「いいえ」と回答した人に「なぜ通院していないのですか」と質問したところ、複数回答で「通院するほどでもないと思ったから」(36.6%)、「通院しても治らない気がするから」(33.8%)、「通院する費用がかかるから」(31.9%)の順に多かった。
さらに、「あなたが、今まで(5年以内)に行ったことのある、『長く続く痛みに対する対処法』はどのようなものがありますか」への複数回答では、「病院・医院で処方された薬」(52.0%)、「(柔軟体操、マッサージ、患部の温冷などで)自己対処している」(32.6%)、「整体、鍼灸、接骨院、マッサージなどで治療を受けている」(27.3%)という順で多かった。(10/26 tms-net)
夜勤シフトの仕事で、肥満または過体重になるリスクが増加するようだ、という香港大学などからの研究報告。28件の研究について分析したところ、夜勤シフトの仕事は、肥満または過体重になるリスクが29%増加することと関連していた。この知見は、長期間にわたり長時間夜間勤務することがないように勤務スケジュールを変更すれば、肥満リスクを低下させるのに有効であることを示唆している。
分析では、夜勤の労働者は、他のタイプの肥満よりも腹部肥満を発症する頻度が高かった。常勤の夜間労働者は、交替制勤務者よりも高いリスクを示した。
「世界では、約7億人の労働者が交替制の勤務パターンに従事している。私たちの研究は、シフト労働者にみられる肥満や過体重の多くが、そのような勤務パターンがもつ性質に起因することを明らかにした」と主任研究者のラップ・チェ博士は語っている。「肥満は、乳がん、心血管疾患などのいくつかの有害な健康アウトカムと正の相関があることが明らかになっているので、今回得られた知見は重要である」。(10/23 tms-net )
■次号のメールマガジンは2017年12月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ