エンタプライズ発信〜メールマガジン【№39】2014. 7
いまや高齢化という人口動勢は避けることができません。同時に加齢による「便失禁」は男性にとっても女性にとっても顔をしかめたくなる現象です。便失禁に悩む人は全国に約500万人いると言われています。若い人は排便を我慢できずにトイレにたどり着く前に便を漏らしてしまう切迫性便失禁が多く、他方老人性は知らないうちに漏れている漏出性便失禁が大多数のようです。こちらは加齢による肛門括約筋の衰え、肛門の感覚や直腸の便意の感覚の低下などが考えられます。これまでにその予防として生活習慣(水分や刺激物などの調整)、骨盤底筋体操、バイオフィードバック療法、薬物治療が行われていますが、仙骨の神経を電気で刺激する「仙骨神経刺激療法」が4月から保険適用になり便失禁の改善へ道が開かれました。同療法は、体外からの電気刺激を一定期間行って、心臓ペースメーカーのような装置を殿部に埋め込み、2-3週間入院し治療を継続します。臨床試験では治療開始後6カ月で、1週間の便失禁の回数が半分以下に減少した患者が約8割いたと言うことです。ただ手術費が高いため高額療養費制度を使うことになりそうです。下のことなので恥ずかしがる患者が多いですが、問診や関連障害として聞き出しに努め、患者の生活の質の向上に寄与することで総合診断の信頼と期待が高まるかもしれません。
★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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<TOPIC>
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【開催地】東京:東京ビッグサイト
東京都江東区有明3-2-1
【入場料】1,000円
■ 連載 7
カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン
〜 Chiropractic Guideline-Safety 〜
<一般社団法人日本カイロプラクターズ協会>
わが国のカイロプラクティック教育
1)施術者の教育背景の現状
2008年の電話帳をもとにした調査結果によると、カイロプラクティックとして登録している治療院数は約12,500件あることから、施術者数はおよそ2万人前後にのぼると推定される。これらの施術者の教育背景は、大きく分けてWHOガイドラインの教育基準を満たした教育を修了した者とそうでない者の2つに分けられる。
ⅰ)WHOガイドラインの教育基準を満たした教育を修了した者
前述のようにカイロプラクターと称するにはWHOガイドラインの教育基準を満たした教育を修了していることが前提となる。カイロプラクターにはさらに2つの教育背景があり、1つは世界カイロプラクティック連合が推奨するカイロプラクティック教育機関において、WHOガイドラインが示す4年制以上のフルプログラム教育を修了した者である。具体的な例を挙げれば、欧米などでカイロプラクティックの大学教育を履修して帰国した者と、わが国のWHOガイドラインの教育基準を満たしたフルプログラムの教育機関を修了した者である。
もう1つは、WHOガイドラインが示す限定的なカイロプラクティック教育プログラムを修了した者である。このプログラムは、世界カイロプラクティック連合に加盟しているわが国唯一の代表団体である一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(Japanese Association of Chiropractors:JAC)の承認のもとで行われたもので、WHOガイドラインの教育基準を満たさない短期養成校を卒業後3年以上の臨床経験を経ていることを前提に、WHOガイドラインに準じた教育へレベルアップするための期限付き経過措置プログラムである。
WHOガイドラインの教育を満たした教育を修了したカイロプラクターの正確な数を把握するのは困難であるが、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)=後述=のリストによれば現在約800名である。カイロプラクティックと称する施術者が約2万人とされるなかで、「カイロプラクター」と名乗れる者はごく少数であることが分かる。
ⅱ)WHOガイドラインの教育基準をクリアしていない者
WHO教育基準をクリアしていない者の教育背景は多様である。数日から数週間のテクニックセミナーや講習会で学んだだけの者、1‐2年の定時制の短期養成校へ通ってから開業する者などである。短期間での修学を謳い文句にしている教育機関も存在し、夜間教育や通信教育、短いものでは3ヶ月の短期集中コースや合宿による10日間のコースすら行われている。このような状況では教育が実技に偏重し、基礎医学や臨床医学に関する教育がほとんど行われていないのは明らかである。仮に実技の教育のみであったとしても、このような短期間では安全性と危険性に十分配慮した技術を修得できるはずはなく、学問としてのカイロプラクティックを学ぶことも不可能である。
このカテゴリーに分類される施術者については、世界的に見れば、彼らが提供するケアは安全性が担保された正規なカイロプラクティックではなく、したがってその施術者をカイロプラクターと呼ぶのは不適切である。それが、本ガイドラインで彼らをカイロプラクティック類似施術者と呼ぶ所以である。カイロプラクティック施術に伴う患者被害の多くは、こうしたカイロプラクティック類似施術者によるものであることは想像に難くない。
(つづく)
★連載エッセイ ⑦ ☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
身体のふらつき、浮遊感の一症例
マッサージを受けた2〜3日後に身体のふらつき感や浮遊感を発症し、脳神経外科を受診したが症状があまり改善しないため、次に耳鼻科や内科、別の脳神経外科、鍼灸院、整骨院、整形外科を受診した後に当院に来院された。
病院では自律神経失調症と言われ漢方薬を処方され、鍼灸院では鍼とマッサージを20〜30回程度受け、接骨院では第4、第5頸椎のズレと言われ矯正を受けたとのこと。矯正を受けた後、首をあまり動かさないように指導を受けたらしい。
当院ではニューロパターンセラピー(心身条件反射療法;PCRT)で行う眼球運動検査を行ったところ、三半規管の機能異常であることが明らかだった。アクティベータ療法でハード面の調整を行った後、浮遊感の原因となる心身相関の誤作動を診るソフト面の検査を行った。原因となるパターンには、否定的な感情と肯定的な感情が絡んでいた。
アクティベータ療法とニューロパターンセラピーの治療回数を重ねるごとに、症状がだんだんと改善されていくのを患者さん自身が実感されていた。特に職場での立場は本人にとっては深刻だった様子。上司に相談して、職場をしばらく離れる選択肢もあったようだが、治療を継続していくことでその不安は徐々に少なくなってきた。
8回ほどの治療で歩行時の浮遊感はほぼ解消されてきた。当院に来られるまでには病院や治療院を転々として、症状が改善されずにとても不安を抱えていたという。この症状を発症したことがきっかけで計画していいた旅行も取りやめにしていたとのこと。先日、その旅行にも行くことができたと喜ばれていた。
今回のケースでは病院や治療院で症状を改善するために神経学的な検査や構造学的な検査を行ってきた。しかし、本質的な原因が分からず症状の改善には至らなかったようだ。問診での経過を聞く限りでは、構造的に何か異常があるのでないかと感じるが、問題は目には見えない神経的な誤作動であり、その誤作動はメンタル的な感情と密接に関係していたということである。
「対症療法」ではなく「原因療法」を施すためには心と身体は切り離せない!
《 連載21 》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
“一に結核、二に結核…” (つづき)
1963年暮れ、2年間の医療奉仕を終えた岩村夫妻は日本に帰り、1年余の準備期間のあと、1965年10月、再びネパールへと出発した。今度は約3年の任期である。
* * * * *
—-みなさんからお預かりした大切なBCGも、3日遅れて30日に無事カトマンズ飛行場に着荷。われわれの身の回り品はまだ着きませんが、まずまずホッとしました。インド・パキスタン紛争以来、航空便すらも、カルカッタ‐カトマンズ間が2週間から20日もかかるそうですから、BCGがこんなに早く着いたのは、まさに奇跡というべきです。(65年10月)——
—-家族の健康管理が、決めたとおり、こちらのアイディアどおりになかなか運ばないのがネパールの一般家庭の実状であることは、もう痛いほど知らせれております。無知? 無関心? いやそれ以前に、子どもの
ことなどかまっておれない忙しさ? では何のための忙しさか。貧しさ? それだけではない、個人の努力ではどうにもならぬ政治の貧困どころではない。政治不在、およそ庶民の生活に政治なるものが光を投げかけたことは未だかつてない、有史以来、自然のままに放置された生活の塵、社会の芥の蓄積、その中に埋もれたのが、私どもが関わりをもつネパールの人たちの生活、健康の実態です。……こういうところで医療奉仕、医療伝道とは一体どう行われるべきなのか。プレームを返すか否かは、忘れかけていた原則論を私にひきすえます。白紙にかえって祈ります。だが神様はこういうとき即答を与えてはくださいません(66年2月)——
—-午後6時、ワングラ村着。宿を探しあぐねていたら、一人のバイディア氏(インド古来の医術を修めた術師)がふいと現われ、一宿一飯の仁義を申し出てくれる。アユルヘディクと呼ばれる彼らの医術は、遠く5000年前に心臓手術に成功している。今日でも寿命を2倍に延ばす術を施すことができる。ただし10万ルピー(約500万円=当時)の費用を要するなど、興味津々の話が尽きない。
未明、小鳥の大合唱で目を覚ます。ヒマラヤがばら色に輝いて、1日が幕開きとなる。寿命が延びきったようなさわやかさ。バイディア氏が別れを惜しんで峠まで見送ってくれる、2時間の山道を。(66年11月)——
(つづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(13)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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【外科手術】(つづき)
(3)キモパパイン注入療法は椎間板ヘルニアに対する治療法として受容可能だが、標準的椎間板切除術や顕微鏡下椎間板切除術より有効ではない。キモパパインによるアナフィラキシーショックはアレルギー検査で回避できる(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……プロゴルファーの岡本綾子選手が行なったことで知られるキモパパイン注入療法ですが、アナフィラキシーショックなどの重篤な合併症があるため日本では認可されていません。
(4)椎間板ヘルニアに対する経皮的椎間板摘出術はキモパパイン注入療法より有効ではない。経皮的椎間板摘出術を含む新しい手術方法は比較試験によってその有効性が証明されるまで推奨できない(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……どんな場合でもそうですが、必ずしも新しい治療法が有効とは限りません。ランダム化比較試験を繰り返すことで初めてその有効性が証明されるのです。
(5)神経根症状のない急性腰痛(ぎっくり腰)患者で、レッドフラッグ(危険信号)がなければ椎間板ヘルニアを疑って外科手術を検討する必要はない(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO #kenkou
……神経根症状の有無にかかわらず、レッドフラッグのない急性腰痛に手術の適応などあるはずがありません。
(6)脊柱管狭窄のある高齢者であっても、日常生活に支障がなければ保存療法による管理が可能であり、症状が現れてから3ヶ月間は外科手術を考えるべきではない(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO #kenkou
……脊柱管狭窄症に対する手術と保存療法のランダム化比較試験は存在しませんが、その症状は時間の経過に伴いまったく変わらないか、徐々に悪化するか、徐々に改善するかのいずれかです。
(7)脊柱管狭窄症患者に対する外科手術の決定は、単に画像検査の結果に頼るのではなく、持続的な間欠性跛行、活動障害、その他の神経学的所見を考慮して行なわれるべきである(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……脊柱管狭窄症は減圧椎弓切除術によって下肢痛と歩行能力の改善が見込めるものの、その効果は時間の経過とともに失われる傾向にあります。http://bit.ly/wA7u6v
以上、1994年にアメリカ医療政策研究局(AHCPR)が発表した『成人の急性腰痛診療ガイドライン』からの概要を終了します。■次号からHOT情報を連載収載していきます。ご期待ください。
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (39)
根本 良一(療動研究所主宰)
【 連動操体法の応用編 】
1.足首、腓腹部の異常
足は直立歩行動物である人間が、大地に接する唯一の器官であることから、ちょっと扱いを誤ると身体全体に影響が出てくる。それは意識しないうちに現れるいろいろな愁訴であり、未病のうちに処理しておかないと、厄介な問題になることがある。
1)足の異常
歩行の問題、立ち居の動作がしにくい、という日常の問題について例を挙げてみたい。
①アスリートの腓腹部
②歩くときに足底が痛い
③高齢のため歩きが遅い
④歩くとき足元がふらつく
足の運びが悪い人が多い。運歩が小刻みになり、チョコチョコ歩く。その場合、足指から足底部、そして腓腹部まで硬くなっているので、立つ、歩くとき、杖の補助があったほうが安全である。しかしそれでは消極的なので、
①足指をまわして、足底、腓腹部を軟らかにする。
②内腿から腓腹部を緩める操作を行う。
③足底の筋群が疲れているから、「中足骨まわし」も行うと良い。
④共通していることは、腰の筋(大腰筋)が不調なので、大腰筋の操作も行う。
⑤股関節の大腿直筋、そして中・小殿筋の操作もすると良い。
⑥膝の屈伸をゆっくり2‐3回行っても良いが、無理をしないこと。
腓腹部、足底の筋が硬いのは、体重を支えて行う“歩行”に重要な支障をきたす。やはり腰との関わりが大切だが、とくに内腿伸筋部から殿筋-腓腹部-足底-足指という連動が重要である。(つづく)
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NEWS ■入院患者の食費260円→460円 来年度にも値上げ
厚生労働省は7月7日、一般病床などの入院患者が医療機関に支払う食事代について、1食あたり原則260円の自己負担額を460円に引き上げる案を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)医療保険部会に示した。公的医療保険の給付費抑制が狙いで、来年度にも導入する構えだ。
現在、入院中の食費は1食640円。一般病床や精神病床に入院する患者と、長期治療施設「療養病床」に入る65歳未満の患者は、このうち食材費分の260円だけを負担し、残りは「入院時食事療養費」として公的医療保険でまかなわれている。給付額は年間約4800億円。
厚労省は、在宅患者らとの公平性を確保すべきだという観点も踏まえ、これらの患者の負担増を検討。全額自己負担にするのは世論の反発が大きいと判断し、食材費に加えて調理費分を患者負担として1食あたり460円とする案をまとめた。療養病床に入る65歳以上の患者の食費自己負担額に合わせた格好だ。
ただ、低所得者に関しては、自己負担額260円を210円に軽減する住民税非課税世帯向けの現行措置を存続させる。(7/8 産経新聞)
NEWS ■高齢糖尿病患者、3割うつ …重いほど合併症多く
高齢の糖尿病患者の3割にうつ症状があり、症状が重いほど合併症も多い傾向にあるという調査結果を、東京女子医大糖尿病センターの石沢香野助教らがまとめた。
2012年から、外来の糖尿病患者約1万人を追跡調査。同年にアンケートに答えた65歳以上の高齢患者4365人を分析し、患者の30.6%に当たる1334人にうつ症状があった。うつ症状がない人、軽症のうつ、中等度以上のうつと3段階に分け、合併症との関連を調べたところ、うつ症状が重い人ほど、視力低下や神経障害によるしびれ・痛み、自律神経障害が多くなる傾向にあった。また、過去1年間の入院回数も多くなっていた。
調査責任者の内潟安子・糖尿病センター長によると、老化による身体機能の低下と共に、うつが原因で運動量などが減り、血糖の値が悪くなって合併症を起こすパターンと、合併症の影響や不安からうつ症状が出るパターンの双方向からの影響があるとみられる。(7/5 読売新聞)
NEWS ■脳卒中から5年、自殺や事故の死亡リスク10倍
脳卒中の発症後5年以内に自殺や交通事故などで死亡するリスクは、発症していない人に比べ、10倍高いことが国立がん研究センターなどの調査で分かった。
うつ状態になったり、体に障害が残ったりするのが原因と考えられる。海外の研究で、脳卒中の発症後1年以内はうつ病のリスクが高まることが知られているが、自殺、事故死に関する調査は初めて。
研究グループは、岩手、長野、沖縄県など全国9か所に住む40〜69歳の約9万3000人を平均17年にわたり追跡調査した。そのうち脳卒中を発症した約4800人を調べた。その結果、発症後5年以内に17人が自殺し、34人が交通事故や転落などで死亡していた。脳卒中になっていない人に比べると、自殺、事故で死亡するリスクは10倍高かった。脳卒中発症の5年後以降では、自殺、事故死ともリスクは変わらなかった。
データを分析した国立精神・神経医療研究センターの山内貴史研究員は「リハビリで障害を減らすとともに、患者の心のケアが大切だ」と話している。(7/3 読売新聞)
NEWS ■一流科学誌も対応苦慮…STAP論文の不正
STAP細胞論文の問題で、論文の撤回を7月2日に発表した英科学誌ネイチャーは、論文の審査体制を見直す方針を明らかにした。世界で最も権威のあると言われる同誌でも、不正を完全に排除するのは困難で、対応に苦慮している。
STAP論文で見つかった画像の改ざんや捏造についてネイチャーは、掲載前に同じ分野の研究者がチェックする「査読」で見抜くことはできなかったと結論づけた。一方、画像の操作の発見は「比較的簡単」とし、こうした画像のチェックの頻度を増やすことを検討しているという。「編集方針の改訂が済み次第、公表したい」としている。
科学誌の論文撤回は珍しいことではない。研究不正に詳しい愛知淑徳大学の山崎茂明教授が、米国立医学図書館が運営する生命科学系の論文データベースで1980〜2008年に撤回された論文1154本を調べたところ、ネイチャーは38本だった。米科学誌サイエンスの61本、米科学アカデミー紀要の43本に次いで多かった。(7/3 朝日新聞)
NEWS ■脱法ドラッグ、40万人使用か…厚労省研究班
幻覚や興奮など麻薬と似た作用がある「脱法ドラッグ」を使ったことがある人が全国で約40万人に上ると、厚生労働省研究班が初の全国調査で推計した。使ったことがあると答えた人の平均年齢は33.8歳で、ほかの違法薬物と比べて最も若かった。脱法ドラッグの乱用が若者に広がっている状況がうかがえる。
調査は、昨年10月に全国の15〜64歳の男女5千人を無作為に選び、59%から有効回答を得た。
脱法ドラッグを使ったことがあると答えた人は全体の0.4%(250人に1人に相当)で、全国で約39万9800人に上ると推計した。シンナー(1.9%)、大麻(1.1%)、覚醒剤(0.5%)に次いだ。これらの違法薬物を使ったことがあると答えたのは2.5%(40人に1人に相当)を占めた。脱法ドラッグを使ったことがある人の平均年齢は33.8歳。シンナー(43.8歳)、大麻(40.7歳)、覚醒剤(40.1歳)などに比べて最も若かった。(7/3 朝日新聞)
NEWS ■不眠症状「三重苦」が37%
寝付きが悪いと不眠症状を訴える人の47%は夜中に目覚める悩みも持っており、朝も早く目覚めてしまう「三重苦」の人も37%いるという調査結果を、大分大学の兼板佳孝教授(公衆衛生)がまとめた。徳島市で7月3日から開かれる日本睡眠学会で発表する。
調査は全国から無作為で抽出した20歳以上の4820人を対象に、不眠症状について面接調査を行い2614人から回答を得た。寝付きが悪いと入眠障害を訴えたのは9.8%。夜間覚醒は7.1%、早朝覚醒は6.7%だった。
入眠障害と夜間覚醒の二つを訴えたのは4.6%、入眠障害と夜間覚醒、早朝覚醒の三つすべてを訴える人も3.6%で、複数の症状を訴える人が多い実態が明らかになった。
日本人は外国人に比べて、寝付かれない時に寝酒に頼る人が多い。兼板教授らの以前の調査で、週1回以上寝酒を飲む人は男性48%、女性18%いた。しかし、寝酒は入眠を促す反面、睡眠の質を下げてしまう。兼板教授は「複数の不眠症状を訴える人が予想以上に多かった。寝酒に頼るのが原因かもしれない。夜間よく眠るには、昼間の運動などが効果的」と話す。(6/30 読売新聞)
NEWS ■心の病で労災申請 13年度、過去最多
仕事でうつ病などの精神疾患にかかり、2013年度に労災申請した人は、前年度比152人増の1409人と過去最多だったことが、厚生労働省の集計で分かった。労災認定されたのは436人。原因として、パワハラを含む「嫌がらせやいじめ」といった職場環境が要因となっているケースが目立った。労災認定された人は前年度より減ったが、公表を始めた01年度以降、2番目に多い。そのうち過労自殺(未遂を含む)は63人だった。
原因や引き金の出来事をみると「嫌がらせやいじめ」が前年度と同数で55人、「セクシュアルハラスメント」は28人、「上司とのトラブル」が17人。ほかにわいせつ行為など悪質なセクハラを受けた人も12人いた。職場環境の悪化が心の病の大きな原因になっている様子がうかがえる。
厚労省は「仕事が理由でストレスを感じている人が増えている。労働者側に精神疾患が労災認定の対象になるとの認識が広がったことも背景にある」と分析している。
申請を年齢別にみると30代が最多で、40代、20代と続いた。申請や認定の多い業種は介護、医療、運送業など。また13年度、脳・心臓疾患になり労災申請した人は前年度比58人減の784人と2年連続で減少した。認定は306人だった。(6/28 中日新聞)
NEWS■“青い”静脈、実は“灰色”…目の錯覚と確認
ヒトの腕などで青く見えている静脈の色が実際は灰色であることが、立命館大の北岡明佳教授の研究で分かった。肌の色に影響されて目が錯覚を起こしているのが原因で、正確に静脈注射する技術などに応用できるという。
人間の視覚には、同じ灰色でも、周囲を赤で囲むと青く、青で囲むと赤く錯覚する「色の対比」という現象がある。北岡教授は静脈を見る際にも同様の錯覚が強く起きている可能性があると推測した。
腕や脚を撮影し、画像処理ソフトで静脈の画像の色を調べたところ、実際は黄色がかった灰色だった。光の三原色である赤、緑、青の割合でも青がもっとも少なく、目の錯覚で青く見えることが確かめられた。腕の画像にモノクロ処理を加えると、灰色の静脈だけがくっきりと浮かび上がるため、静脈注射が苦手な看護師の補助などに活用が期待できるという。
北岡教授は「肌は黄色がかったオレンジのため、灰色の静脈が青に見えるのだろう。『青筋を立てる』という慣用句は、正確にいうと『灰筋を立てる』ということになる」と話している。(6/25 京都新聞)
NEWS ■広がるがん漢方…症状や副作用を緩和
がん診療に漢方薬を使う医師、病院は全国的にも増えている。国立がん研究センター研究所(東京都中央区)で、治療開発の分野長を務める上園保仁氏らのチームは、国内のがん治療病院などの緩和ケアに携わる医師に2010年、アンケートを実施。その結果によると、56.7%にあたる311人が回答し、「がん治療に漢方薬を使っている」という人が64%に達した。
使用する症状は、しびれ・感覚が鈍くなる、便秘、食欲不振・体重減少の順で、いずれも抗がん剤の代表的な副作用だ。使用されている漢方薬は、大建中湯(モルヒネ投与による便秘など)、牛車腎気丸(しびれ)、六君子湯(食欲不振)の順で多かった。
緩和ケアとは末期がんの治療に限らず、患者の状態を改善させ、生活の質を向上させる取り組みのこと。上園さんは「全身に作用する漢方薬は、がん治療の副作用や、痛み、衰弱を抑えることが期待できる」と話す。その効果を科学的に実証するため、10年にスタートした国の研究班の代表を務めている。
例えば膵臓がんの抗がん剤・ゲムシタビンを使用すると、食欲不振や体重減少という副作用が出る。これに対する六君子湯の効果を検証する臨床研究など、「漢方薬がなぜ効くのか、本当に効くのか?」を具体的に解明する研究だ。
上園さんは「漢方薬のエビデンスを医師に伝えるキャラバンを一昨年、全国各地で開催し、とても大きな反響があった。今後は薬剤師や看護師など、医療スタッフ向けの勉強会にもつなげていきたい」と話す。(6/17 中日新聞)
■次号のメールマガジンは8月1日ごろです。お楽しみに。
[発行]産学社エンタプライズ