エンタプライズ発信〜メールマガジン【№37】2014. 5

自宅からほど近い名店寿司(小田急線沿線)の立ち食い店があるというのでGWの合間に行ってみました。ちまたでは「立ち食いブーム」の到来か? ステーキ、イタリアン、フレンチetcの立ち食いレストランがオープンし、人気店の前にはけっこうな行列ができているようです。味や評判はさておき、立った姿勢での食事は、座った姿勢に比べて消化や吸収が良くなると考えられています。海外の研究でも、食事のさいの良い態様は1位「立った姿勢」、2位「椅子に座った姿勢」、3位「しゃがんだ姿勢」というのがあります。立った姿勢なら、大腿部〜腹部を圧迫して血の流れが悪くなることはなく、胃をはじめとする臓器への血液供給量が維持されるとしています。胃の血流量は胃粘液の量に直結しているので消化を助けるのです。余談では、メタボ解消にも寄与すると…。人気店では順番がくるまで立っている時間が長くかかります。そうです、人間はただ立っているだけでも座っている時より20%以上多くエネルギーを使うからです。待ったからと言ってそこで食べ過ぎては本末転倒ですが、この立ち食い形式は安い、旨いとあって、懐と胃袋には心地よい風が吹き込んでくるかのようです。

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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【TOPICS】

『アクティベータ・メソッド』の主著者・保井D.C.が新著書を出版!(再報)

小社刊『アクティベータ・メソッド』の主著者であり、メールマガジン連載筆者の保井志之D.C.が、自身が推し進めている心身条件反射療法(PCRT)の入門書となる『体の不調は脳がつくり、脳が治す〜治る人と治らない人の違いは、脳と体の「学習記憶」にある〜』(ベルブックス刊)を出版した。心身条件反射療法(PCRT)とは、誤作動をきたした心-脳・神経系-生体との関係性(心身相関)を、条件反射作用に基づいて検査し、精神面(ソフト)と肉体面(ハード)との適応系統(生命エネルギーネットワーク)を再構築し改善する生体エネルギー療法。治療ではアクティベータ・メソッドで神経および筋トーンを賦活化させるなど、統合医療に欠かすことのできない現代治療として今後の臨床に活用される期待が高まっている。機械論から心身一元論への論理的臨床的転回を可能にする秀逸の書。
◆四六判、250頁、定価:1,404円


■ 連載 5 ■

カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン

〜 Chiropractic Guideline-Safety 〜
<一般社団法人日本カイロプラクターズ協会>


安全性に関与する重要な要因(つづき)

◆ WHOガイドライン記載の絶対禁忌と相対禁忌の一部 ◆

<相対禁忌>
・進行性のすべり症
・関節可動性亢進と関節の不安定性
・代謝障害により弱化した骨
・椎間板炎や椎間板ヘルニア
・抗凝固療法や血液疾患などによる出血
・骨粗鬆症
………

本ガイドラインでは、脊椎マニピュレーションの禁忌症について2点ほど独自の補足説明を加えたい。1つは、禁忌症リストがすべてを網羅しているわけではない、という事実である。禁忌症すべてを網羅した疾患リストを作成することが不可能であることは常識的に明らかであり、そういう意味ではカイロプラクティックの禁忌症は個別に判断されるべきものである。その判断に必要なのが医学的知識であることは言うまでもない。
もう1つは、脊椎マニピュレーションの絶対禁忌となる疾患を有する患者でも、禁忌疾患の病態や症状に直接的に悪影響を及ぼす恐れのない部位に対しては脊椎マニピュレーションを行うことができる、という事実である。禁忌となる「疾患」に対する施術は禁忌でも、禁忌疾患を有する「患者」に対しては必ずしも禁忌ではない、とも言える。
このことは例を挙げれば理解しやすい。たとえば、WHOガイドラインで脊椎マニピュレーションの絶対禁忌に挙げられている上部頚椎のアーノルド・キアリ奇形を有する患者の場合、病理学的な異常が存在する頚椎部に対して脊椎マニピュレーションを行うのは禁忌であるが、病理学的な異常がないと評価された胸椎や腰椎に見出されたサブラクセーションに対して施術することは可能となる。
こうした実状を理解するためには、脊椎マニピュレーションは疾患自体を直接治療するものではなく、触診を中心としたカイロプラクティック特有の検査法から得られた身体所見に対する治療法であるという認識が改めて必要となる。

3)合併症
脊椎マニピュレーションに伴う合併症は、大きく分けて一般的反応と有害反応の2つが知られている。一般反応とは施術後に軽度な不快症状を患者が感じることであり、脊椎マニピュレーション後に局所の不快感、頭痛、疲労感などの不快症状を患者が感じる反応で、それらの症状は発症後24時間以内に消失し、日常生活に高度の支障をきたすほどのものではないことが多い。
有害反応は、発生頻度は少ないながらも、より顕著な不快症状や一時的または永久的な障害が生じるような反応で、頚椎マニピュレーションによる脳血管障害の発生がその代表例である。その発生頻度の報告にはばらつきがあるが、頚椎マニピュレーション40-50万回に1回、385万回に1回、米国RAND研究所の報告によれば頚椎脳底部の合併症は100万回に1.46回などとしている。これらの報告は、適切な病態評価をもとに頚椎マニピュレーションの適否の判断を行い、適切な治療を行えば、重篤な合併症の危険性はわずかであることを示している。また最近では、カイロプラクティック治療によって椎骨脳底動脈に関連する脳卒中の発生リスクが増すエビデンスはない、という報告も見られる。
腰椎マニピュレーションによる重篤な合併症の発生も報告されている。代表例は骨粗鬆症に伴う骨折、馬尾の圧迫症状、血栓に由来する血管性の病態などであるが、発生率はきわめて少ない。米国RAND研究所のShekelleらの報告によれば、腰椎マニピュレーションによる馬尾障害の発生率は施術1億回に1回と非常に少ない。
カイロプラクティック・ケアで合併症の発生をゼロにするのは不可能であるが、ゼロに近づける努力をすることは可能である。そのために必要なのが医学的知識であり、安全に配慮した手技を実践することである。(つづく)


★連載エッセイ ⑤ ☆

“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う

保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


心因性運動失調について(症例)

【はじめに】
心因性運動失調に絡んだ症状が、心身条件反射療法(以下PCRT)を併用した施術で早期に改善したのでその経過を報告してみたい。64歳男性が、両手の震え、首や肩の重だるさ、ならびに浮遊感や股関節痛を訴えて来院。問診ではその症状は5〜6年前より発症し、症状の悪化により両手の震えで茶碗を持つこともできずに、日常生活にも支障をきたしているという。病院での画像診断では頸椎の変形を指摘され、3日ほど通院したが変化がなかったとのこと。
いくつかの愁訴の中で、特に両手の震えは日常生活に支障をきたしており、深刻な問題であった。ハード面(肉体)の施術には神経関節機能障害改善を目的としたアクティベータ・メソッド(AM)を用いた。メンタル面に関連したソフト面(心身相関)の施術にはPCRTを用いた。
PCRTでは、症状に関連するエネルギーブロック(EB)を特定し、その関連パターンの学習記憶による誤作動を調整することが主な施術目的になる。術前と術後の評価の客観性を高めるためにも、患者の主観やPCRT独自の検査法に限らず、医学分野でも使われる神経学的機能検査の評価も行った。

【検 査】
まずは、主な愁訴である「両手の震えがどこから生じているのか」に注目した。医学的に運動失調を引き起こす神経中枢系障害には部位別に、大脳性、小脳性、前庭性、脊髄性があり、振戦を引き起こす病態にはパーキンソン病、甲状腺機能亢進症、肝性脳症、本態性振戦、小脳性疾患、心因性、中毒性・薬剤性、生理学的振戦(疲労・緊張性)、ジストニアに伴う振戦などがある。振戦を動作やタイミングで分類すると、安静時振戦、姿勢時振戦、本態性振戦、動作時振戦、企図振戦がある。
問診から推測できたのは企図振戦であり、病院で医学的検査を受けていることから構造学的な原因ではないことがうかがえた。小脳性運動失調の疑いがあり、脊椎性運動失調との鑑別でロンベルグ試験を行ったが陰性で閉眼の影響はなかった。歩行では若干のよろめき歩行がみられた。そのほか指-指試験、指-鼻試験、手回内-回外試験、踵-膝試験では左側ですべて陽性反応が示された。患者自身も左側の動作に抵抗を感じていた。
それ以外にPCRTの効果判定に使う神経学的検査法として、ハッカ油による臭覚刺激とペンライトによる視覚刺激、メトロノームによる聴覚刺激、眼球運動によるその他の脳神経刺激などを加えて神経反射検査を行い、右側の聴覚刺激と右側眼球運動によって陽性反応が示された。(つづく)


《 連載19 》

伝統医学をシルクロードに求めて

       池上正治(作家・翻訳家)


■3. ネパール編〜 ある「医学と福音」の14年

“雪の家”を背負った若い国

ヒマラヤとは、「雪」を意味するヒマ、「家」を意味するアラヤの二語からなるサンスクリット語である。この“雪の家”ヒマラヤの長さについては諸説がある。仮にブータン、シッキム、ネパール、中国、インド、パキスタン、アフガニスタンにまたがる範囲であると考えれば、その長さは約3000kmである。3000kmといえば鹿児島‐札幌を一往復する距離である。そこには8000m級14座、7000m級数百座の高峰がひしめき、6000m級に至っては正確に数えることが不可能とされている。
ヒマラヤ越えの記録としては、紀元前のアレキサンダー大王、玄奘三蔵(紀元7世紀)マルコ・ポーロ(13世紀)などがある。また仏教の原点を探るために河口慧海がネパールを経由してヒマラヤを越え、ラサに潜入したのは1900年のことであった。
さて、世界の屋根ともいうべき“雪の家”山脈を背負ったネパールを地図の上で見ることにしよう。ネパールの面積は約14万平方kmで、北海道の約2倍であり、緯度上では沖縄とほぼ同じ所に位置している。四季の変化はなく、雨季と乾季とが歴然としている。人口は約2900万で、そのうち約67万人が首都カトマンズのある盆地に住み、残りは山岳地帯に散在している。高い所では4000mあたりまでも村落が築かれている。

19世紀前半、ネパールが鎖国政策を敢行したのはチベットの場合と同じ理由からであった。すなわち、インドを基地とするイギリスの侵略はネパールにも及び、グルカ戦争(1814〜5)が勃発した。ジャングルや山岳に展開されるゲリラ戦の前に英印軍は惨敗したが、その後の事態を憂慮したネパールは鎖国に踏み切ったのであった。外国との交流を遮断することにより政治的独立は守られたが、それと引き換えに近代化が大幅に遅れたことも事実である。
1950年、王政復古の形をとってネパールは開国した。この「若い国」は各国からの援助競争の渦中にあるが、ヒンズー教(国教)の現人神でもあるビレンドラ国王(1998年当時)は「鉄と石油のない文化を作り出していくのがネパール人類史上の役割である」と語っている。

“一粒の麦”は現地での体験から始まる

欧米人がアジア、アフリカに進出して教会を作り、キリスト教病院(ミッション・ホスピタル)を運営してきた歴史は長い。その数は現存するだけでカトリック関係が約2000、プロテスタント関係が約1200にのぼる。しかしシュバイツァーが生涯を捧げたランバレネ病院が、当時の政府から「植民地時代のシンボル」と決めつけられ一時は同病院の存続が危ぶまれたように、キリスト教病院の多くは物心両面からむずかしい局面を迎えているという。(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(11)

   長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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前号に引き続いて、手技療法家に必須の保存療法の最新情報をお届けします。

■【保存療法】(つづき)

(10)急性腰痛に対する腰部コルセットとサポートベルトの有効性は証明されていない(確証度D)。
(11)腰部コルセットは荷役作業従事者の腰痛による欠勤日数を減少させる可能性がある(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……最新の腰痛診療ガイドラインでは、腰部コルセットもサポートベルトも腰痛の治療や予防に効果なしという勧告が出ています。

(12)急性腰痛患者(ぎっくり腰)の治療に牽引は推奨できない(確証度B)。
(13)急性腰痛患者の治療にバイオフィードバックは推奨できない(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……牽引が腰痛の緩和、活動障害の改善、入院日数の減少に有効だという証拠は存在しません。バイオフィードバックに効果がないのは意外です。

(14)トリガーポイント注射の有効性は証明されておらず、侵襲的なために急性腰痛の治療に推奨できない(確証度C)。
(15)靭帯や硬結部への注射の有効性は証明されておらず、侵襲的なために急性腰痛の治療に推奨できない(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……最新の腰痛診療ガイドラインの勧告も同じです。トリガーポイントや軟部組織への注射の有効性は未だに認められていません。

(16)椎間関節ブロック有効性は証明されておらず、侵襲的なために急性腰痛の治療に推奨できない(確証度C)。
(17)硬膜外ブロックは侵襲的なために、神経根症状を伴わない急性腰痛の治療に推奨できない(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……そもそも椎間関節症(椎間関節症候群)という病名自体にコンセンサスがありません。最新の腰痛診療ガイドラインでも急性腰痛に対する硬膜外ブロックは否定的です。

(18)硬膜外ブロックは保存療法で神経根症状の改善が見られない場合、手術を避けるための緩和療法として用いることができる(確証度C)。
(19)鍼治療や乾性穿刺は急性腰痛患者(ぎっくり腰)の治療として推奨できない(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……硬膜外ブロックの急性腰痛および神経根症状に対する有効性は確認できませんでしたが、委員会の総合的判断によって手術を避ける選択肢として認められました。鍼治療と乾性穿刺(ドライニードル)に関しては急性腰痛を対象とした臨床試験が存在しませんでした。
(つづく)


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (37)

       根本 良一(療動研究所主宰)


8.腕の動きから 〜背部から胸部・腹部への連動
◆3- 胸部から腹部への操体法(つづき)

3. 手首を交叉して
①腕を前へ伸ばし、手首を交叉して掌を合わせる。
②左右どちらを上にしたら気持ちよいか? 気持ちよい方を選び五指を組む。
③上の手を内旋(手動作)し、母指球で下の手首を押す。
④両腕を上下して、背部が気持ちよい角度を選ぶ。
※気持ちよい部位からの神経支配を受けると、胸部、腹部が弛緩する。
※腕の動きにより伸展されると、背部の筋が弛緩される。

この操作は「脱力後の快い間」を確保するために、椅子にかけて背もたれするか、仰向けに寝て行うとよい。
まとめると、
・胸背部(肋間神経痛、胸部の痛み、乳腺症)へは →  前下方へ
・胸背部(腹直筋上部)へは →  真ん前よりやや下方へ
・胸背部(外腹斜筋中央部) →  前上方へ、肩の上の方へ
・下胸背部(外腹斜筋下部) →  肩の最上方、耳の方へ

腹部は、触診してどの位置に緊張があるかを確かめるようにする。その位置はどの胸椎から発して、どの肋骨に沿って走行するかを、指腹で肋骨間をなぞり確かめ、肘の向きを決める。細身の人、胸の薄い人では肋骨の下垂角が変わるから、操作の角度を決めるためにその走行角に注意を払う。
(この項、了)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■働き手「70歳まで」……人口減対策で提言案


政府の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)の有識者会議「選択する未来」委員会が、人口減と超高齢化への対策をまとめた提言案が明らかになった。70歳までを働く人と位置づけるほか、出産・子育て関連の給付など支援額を倍増させる。高齢者と女性の活躍を後押しすると同時に出生率の引き上げを図り、50年後の2060年代に1億人程度の人口を維持することを目指す。
同委の三村明夫会長(日本商工会議所会頭)が「2020年及び半世紀後を展望した日本経済への提言」を5月半ばに諮問会議に提出する。政府は、6月にまとめる「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)」に反映させる。
日本の人口は、2060年に現在の約3分の2の約8700万人に減り、約4割が65歳以上になると推計されている。これを踏まえ、提言は「年齢・性別にかかわらず働く意欲のある人が能力を発揮できる」制度が必要とした。(読売新聞 5/6)


NEWS ■1.5万円の医学辞典をネット上で無料公開—日本医学会


日本医学会は「日本医学会医学用語辞典」(税込価格15,120円) をウェブ版で無料公開する。例えば「心筋梗塞」と検索すると、検索窓の下に「下壁心筋梗塞」や「急性心筋梗塞」など「心筋梗塞」が含まれる関連用語が一覧で表示される。その中から目当ての用語をクリックすると、日本語と英語の名称が表示される仕組み。
日英それぞれの代表的な用語の横には「★」のマークがつき、複数の表記を持つ医学用語を分かりやすく表示する工夫がされている。「日本語と英語との対応関係の詳細」も表示され、日本語と英語のそれぞれに対応する用語が一目で分かる。
加えて、最下部では「履歴」と「要望」のタブが設けられ、「履歴」では用語の属性や概念の変更などが、いつなされたかが分かるほか、「要望」への書き込みも可能だ。要望は同会医学用語管理委員にメールで転送され、必要に応じて管理委員が検討し修正や変更に生かすという。
同会がウェブ版の一般公開に踏み切ったのは、紙の辞典として最終版となった「日本医学会医学用語辞典英和改訂第3版」の在庫が少なくなったためだ。翻訳家や医学生、研修医などから「用語辞典を公開してほしい」といった要望もあり、辞典を編集した同会医学用語管理委員会が、一般公開の準備を進めていた。
同会は、他学会の用語辞典との連携も視野に入れているという。辞典によって知的財産の権利の所在が異なるなど調整のために課題は多いが、「相互に辞典を行き来できるプラットフォームとしての役割の構築も目指したい」としている。(医療介護CBニュース 5/1)


NEWS ■医療事故、最多の2708件報告……死亡216件


国立病院機構や大学病院など主な274医療機関で、2013年に起きた医療事故は2708件(うち死亡216件)で、過去最多となったことが日本医療機能評価機構の集計で分かった。
年間の統計を取り始めた05年の2.4倍に上る。評価機構は「事故情報を報告しなければ、再発は防げないという意識が育ってきた」と見るが、任意で参加する民間病院などからの報告件数は増えておらず、今後の課題となっている。
「患者様が死亡する医療事故が生じました。誠に申し訳ありませんでした」。4月18日午後、東京・霞が関の厚生労働省。国立国際医療研究センター病院(東京)の中村利孝院長が深々と頭を下げた。
足腰の痛みを訴えて入院した女性(78)が16日、脊髄の造影検査を受けた後に死亡。検査を担当した5年目の研修医が、脊髄への使用が禁じられている造影剤を誤って投与していた。病院は同日中に警察に届け出た上で、遺族の了解を得て、外部への公表を決めた。病院担当者は「ミスを隠蔽する時代ではない。公表は再発防止にもなる」と話す。(読売新聞 4/30)


NEWS ■たばこが原因のCOPD、7割の人が知らず……千葉県


9割以上の人が喫煙が非喫煙者の健康にも影響すると知っている一方、たばこの煙などに起因して発症するCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を知らない人が7割に上ることが、千葉県が行った生活習慣に関するアンケート調査で分かった。県は、今回の調査を基に、COPDの認知度を2022年度までに80%まで上げることを県の目標に決めた。
調査は、県内在住で15歳以上の人の中から無作為に選んだ3000人を対象に実施。2402人から回答を得た。調査項目は、「栄養・食生活」「たばこ」「歯」「がん」「健康に関する情報」などの12項目。この中で、喫煙が受動喫煙などで非喫煙者にも健康上の影響を生じさせることを知っているか聞くと「知っている」(79.2%)と「だいたい知っている」(13.7%)を合わせた割合は92.9%に上った。一方、たばこの煙などの有害物質に起因にして発症するCOPDについて、「内容を知っていた」と答えた人は26.7%にとどまり、「言葉は聞いたことがあるが内容は知らない」は21.0%、「知らない」は47.8%となった。たばこが健康に影響すると知りつつも、実際の疾患についての認知とは大きな隔たりがあることが浮き彫りとなった。
COPDは、主な症状として咳・痰・息切れなどがあり、徐々に呼吸障害が進行する疾患。その認知度調査は県内で初めて。県健康福祉部の担当者は「県民にCOPDを啓発する場を設けるなど周知していきたい」としている。
厚生労働省は、生活習慣病の発病・重症化の予防を目指す「健康日本21(第二次)」の中で、COPDの認知度を22年度までに80%まで上げることを目標に掲げている。千葉県は、今回の調査結果を基に県の目標を決めることにしていた。(医療介護CBニュース 4/30)


NEWS ■介護職の賃金、平均より約9万円低い


介護施設で働く人の賃金について労働組合が調べたところ、月額の平均で20万円余りと全産業の平均より9万円近く低いうえ、サービス残業をしていると答えた人が半数以上に上りました。組合は「このままでは人手不足がさらに深刻化する」と指摘しています。
この調査は労働組合の全労連が全国の介護施設で働く人を対象に調べたもので、6300人余りから回答を得ました。それによりますと去年10月の時点で正規職員の賃金の平均は月額で20万7795円と、すべての産業の平均(29万5700円)よりおよそ8万8000円低かったことが分かりました。また、サービス残業をしていると答えた人が61%に上り、月に10時間以上、サービス残業をしているという人も23%を占めました。さらに、去年3月までの1年間に有給休暇を取得できたか聞いたところ、21%の人が「全く取得できなかった」と答えたということです。
全労連の根本隆副議長は「賃金や労働条件が低いままでは離職者がますます増え、人手不足が深刻化する。国は介護報酬を引き上げるなど処遇改善を図っていくべきだ」と話しています。(NHK放送 4/23)


NEWS ■睡眠時無呼吸は骨の健康不良と関連


睡眠時無呼吸患者では、特に女性や高齢者の場合、骨粗鬆症リスクが高い可能性があることを示唆する研究結果が発表された。台湾、奇美医学センター(台南)のKai-Jen Tien氏らの研究。
睡眠時無呼吸は治療をせずに放置すると、心疾患や心臓発作、脳卒中のリスクが高まる可能性がある。Tien氏らは、2000年〜2008年に閉塞性睡眠時無呼吸と診断された台湾人1,337人の医療記録を分析し、同疾患のない2万655人と比較した。6年間にわたる追跡調査の結果、睡眠時無呼吸患者は骨粗鬆症と診断される可能性が2.7倍高かった。骨粗鬆症リスクは、睡眠時無呼吸の女性と高齢者で最も高かった。
Tien氏は、「閉塞性睡眠時無呼吸による睡眠の中断が続くと、骨格系など多くの体組織に有害となりうる。睡眠時無呼吸は定期的に身体の酸素を奪い、骨を脆弱にし、骨粗鬆症リスクを高める。骨粗鬆症は骨折、医療費の増加、生活の質(QOL)の低下につながり、死に至ることもある。閉塞性睡眠時無呼吸患者も医療従事者も、他の疾患を発症するリスクが高まることを認識しておくべきである」と述べている。(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismオンライン版 4/15)


NEWS ■孫と過ごせば脳の力が高まる


高齢女性は毎週少しの時間、孫の世話をしていると、頭脳を明晰に保てる可能性があることが、オーストラリア、メルボルン大学のKatherine Burn氏らの研究で示され、研究論文が掲載された。ただし、週5日以上の世話は知力に悪影響を及ぼす可能性があるという。
Burn氏らは、57〜68歳のオーストラリア人女性186人を対象に知力に関する3つの試験を行った。その結果、孫の世話を週1回している人は3つのうち2つの試験で最も成績が良かった。しかし、週5日以上世話をしている人は、記憶と精神的処理速度を評価する試験の成績が他よりも悪かった。
また、世話をする時間が長くなるほど、祖母は孫の要求が高まると感じることも判明した。つまり、この予想外の結果は気分が要因である可能性があるという。今回の研究は、高齢女性が孫の世話をする時間と頭脳の明晰さとの関連性を示したが、因果関係は証明していない。孫の世話をすることの影響を検討した研究はこれが初めて。
北米閉経学会(NAMS)のMargery Gass氏は、「孫の世話は閉経後の女性にとって重要であり、一般的な社会的役割でもあり、健康に及ぼす影響についてさらに解明する必要がある」と述べている。(Menopauseオンライン版 4/7)


NEWS■「健康な人」の血圧は147まで……人間ドック学会


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血圧やコレステロールなど学会基準や施設独自の基準が混在している人間ドックの健診項目で、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会は4月4日、受診者150万人を分析し、年齢差や男女差を踏まえた「健康な人」の検査値を示した。多くの検査項目では現行の基準値の範囲内だが、収縮期血圧は上限が147mgとなるなど数項目で基準値を上回り、基準の緩和につながる可能性がある。
日本人間ドック学会の専門委員会は、同学会認定施設で2011年に受診した約150万人から、がんや慢性の肝臓疾患、腎臓疾患などの経験がなく、高血圧や糖尿病などの治療薬を服用していないなどの条件で選んだ約34万人を抽出。そのうち、約1万人のデータを基に、いわゆる「健康な人」の標準的な検査値の範囲を求めた。
結果的に同学会の基準値と近い項目もあったが、収縮期血圧は129mg以下、拡張期は84mg以下とされた数値は、収縮期147mg以下、拡張期94mg以下となった。
高脂血症の指標とされる中性脂肪は、現行基準では血液100ml中30-149mgだが、男性は39-198mg、女性は32-134mgで男女差が大きかった。悪玉のLDLコレステロールの基準値は60-119mgの範囲だが、男性は30-80歳で72-178mg、女性は45-64歳で73-183mg、65-80歳で84-190mgなどと男女とも高めだった。(共同通信社 4/7)


NEWS ■高齢男性の睡眠の質が精神機能に関連


高齢男性では、睡眠の質が悪いと精神機能低下のリスクが高まることが、米カリフォルニア太平洋医療センター研究所(サンフランシスコ)のTerri Blackwell氏らの研究でわかった。
Blackwell氏らは、米国6地域の男性2,822人(平均76歳)を対象に、腕時計型のデバイスを用いて平均5晩にわたって睡眠データを収集した。被験者は意思決定、間違いの修正、問題解決、抽象的思考を評価する検査を受けた。
その結果、睡眠の質が低いと、実行機能が有意に低下するリスクが40〜50%高まった。これは5歳年を取るのと同等だったが、睡眠時間は精神機能には影響しなかった。Blackwell氏は、「将来の認知能力低下を予測するのは睡眠の量ではなく質だった。高齢者における精神障害発生率の増加と睡眠障害の高い有病率を考えれば、睡眠と認知力低下の関連性を調べることは重要だ」と述べている。
今回の研究は米国立心肺血液研究所(NHLBI)の資金提供を受けて実施された。高齢男性における質の悪い睡眠と精神機能低下の因果関係を示すのではなく、関連性を示したもの。質の悪い睡眠と精神機能低下を関連付ける機序は不明。(Sleep 4月号)


NEWS ■痛風薬が早期死亡リスク低減に関連


痛風の治療によく用いられる薬剤が、痛風患者の早期死亡リスクを低減する可能性があることが、米ボストン大学医学部のMaureen Dubreuil氏らの研究でわかった。
これまでの研究から、痛風と早期死亡リスクの間には関連が示されている。今回の研究では、最も広く利用される痛風治療薬のアロプリノールがそのリスクに及ぼす影響について検討した。研究の背景情報によると、アロプリノールを使用した患者には約260人に1人の割合で死に至る可能性のある反応が生じるため、処方に消極的な医師もいるという。
Dubreuil氏らは、英国でアロプリノールを処方された5,900人強の痛風患者のデータを調べ、同薬を処方されていない痛風患者の集団と比較した。その結果、アロプリノールを処方された患者は同薬を処方されていない患者に比べ、研究期間中の全原因死亡率が11%低く、全体ではアロプリノールの使用により痛風患者の死亡リスクが19%低減した。
Dubreuil氏は、「このリスク低減は1年目から現れ、その後の追跡期間を通して認められた」と述べている。この知見は、アロプリノールの使用により痛風を治療できるだけでなく、痛風患者を早期死亡から守れる可能性を示すものであると、同氏は付け加えている。さらに今回の結果から、生存率にみられるベネフィットが、稀に生じる重篤な副作用のリスクを上回ることが示唆されると報告されている。(Annals of the Rheumatic Diseasesオンライン版 3/24)


■次号のメールマガジンは6月1日ごろです。お楽しみに。


[発行]産学社エンタプライズ