エンタプライズ発信〜メールマガジン【№36】2014. 4
4月に入り暖かくなったので何年かぶりに友人たちとテニスに興じました。球技にはかれこれ少しは自信があるので、久しぶりながらでも俊敏にフットワークを使っているつもりでしたが前後の動きに足がついてこない。フェイントでネット際にボールが落ちたのを拾おうと駆け込んでみたもののバランスを崩して前つんのめりでラケットを握ったままヘッドスライディング状態に。「いける」の意識とはあにはからんや足腰は鈍重にも反応しきれていないのに唖然としました。こんなことでは怪我や筋骨格のトラブルは必至です。ちゃんとしたウォームアップにはラジオ体操が良いことを思い出しました。私たちがよく知っているラジオ体操第一は、どの年代でもできるように考案された内容で、リズムに合わせて身体全体の筋肉や関節をバランスよく動かすように構成されています。伸びの動作を行うエクササイズでは筋肉の緊張をほぐし、またゆっくりと大きく関節を動かす動作が随所にあるため、ふだん使わない筋肉までまんべんなく動かすことができ、筋肉の柔軟性を向上させるダイナミックストレッチとして取り組むことができるそうです。そういえば、筋肉が衰えて伸縮能力が低下し、固まってくることから生じる朝方の「こむらがえり」も頻発する編集子。どうやら運動不足は深刻なようです。
★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【TOPICS】
『アクティベータ・メソッド』の主著者・保井D.C.が新著書を出版!
小社刊『アクティベータ・メソッド』の主著者であり、メールマガジン連載筆者の保井志之D.C.が、自身が推し進めている心身条件反射療法(PCRT)の入門書となる『体の不調は脳がつくり、脳が治す〜治る人と治らない人の違いは、脳と体の「学習記憶」にある〜』(ベルブックス刊)を出版した。心身条件反射療法(PCRT)とは、誤作動をきたした心-脳・神経系-生体との関係性(心身相関)を、条件反射作用に基づいて検査し、精神面(ソフト)と肉体面(ハード)との適応系統(生命エネルギーネットワーク)を再構築し改善する生体エネルギー療法。治療ではアクティベータ・メソッドで神経および筋トーンを賦活化させるなど、統合医療に欠かすことのできない現代治療として今後の臨床に活用される期待が高まっている。機械論から心身一元論への論理的臨床的転回を可能にする秀逸の書。◆四六判、250頁、定価:1,404円=ご注文はamazon www.amazon.co.jp/ またはブックサービス
www.bookservice.jp/ から。
■ 連載 4
カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン
〜 Chiropractic Guideline-Safety 〜
<一般社団法人日本カイロプラクターズ協会>
安全性に関与する重要な要因
カイロプラクティックの臨床業務において、安全性に深く関わる重要な要因が2つある。1つは、脊椎マニピュレーションの適応と禁忌を判断する能力である。それは、医療機関への受診が遅延することに伴う病状の悪化を回避するため、必要に応じて専門医への受診を促したり紹介する判断能力も含まれる。もう1つは、脊椎マニピュレーションの手技を安全に実施する能力である。無知ゆえに危険な手順で手技を実施すれば、安全性は決して担保されない。十分な技術訓練を修めた者が行う脊椎マニピュレーションは基本的には安全性は高い。
しかし臨床の現場では、安全性に関わる上記の2つの要因がクリアーされていてもなお発生しうる問題もある。それは合併症である。そこで、カイロプラクティックの安全性に深く関与する要因である適応症、禁忌症、および合併症について、以下に解説する。
1)適応症
適応症を挙げるとすれば、腰痛や頚部痛、むち打ち症、肩こり、背部痛、疲労感などの主に神経筋骨格由来の症状である。そのほかにもカイロプラクティックの見かたに基づいて検査・治療を行うことで、経験的にしばしば改善が認められる諸症状も適応と言える。カイロプラクティックにおける施術は、疾患自体あるいはその原因に対する直接的な治療ではないことをあらためて強調しておく。触診を中心としたカイロプラクティック特有の検査法から得られた身体所見に対する治療であって、結果的に症状の軽減や健康の改善が得られると考えられている。
2)禁忌症
脊椎マニピュレーションの禁忌症は、手技を行うことによって患者に直接的な害が及ぶ可能性のある疾患や病態である。WHOガイドラインには、以下に示す脊椎マニピュレーションの絶対禁忌症と相対禁忌症に該当する疾患や病態が挙げられている。WHO基準カイロプラクターは、こうした禁忌症を有する患者への施術を回避できるよう教育されている。
◆ WHOガイドライン記載の絶対禁忌と相対禁忌の一部 ◆
<絶対禁忌>
・リウマチ性関節炎、血清反応陰性脊椎関節症、無機質脱落(demineralization)、亜脱臼または脱臼に伴う靭帯不安定性
・骨折と脱臼、急性骨折、治癒後の骨折による靭帯断裂や不安定性、椎骨の脱臼
・環軸関節の不安定性、歯突起形成不全、不安定な歯突起骨などの異常
・活動性若年性虚血壊死
・悪性骨腫瘍(脊髄腫瘍、髄膜腫、脊髄あるいは脊柱間内の血腫)
・動脈瘤性骨嚢胞、巨細胞腫、骨芽細胞腫あるいは類骨骨腫のような進行性型の良性腫瘍
・骨と関節の感染症(骨髄炎、敗血症性椎間板炎、脊椎結核のような急性感染)
・急性脊髄障害の徴候と症状、頭蓋内高血圧、髄膜炎の徴候と症状、あるいは急性馬尾症候群
・進行性の神経学的欠損の徴候を伴う明確な椎間板ヘルニア
・上部頚椎の扁平頭蓋底、上部頚椎のアーノルド・キアリ奇形
・筋肉や軟部組織の腫瘍性疾患
・ケルニッヒ徴候あるいはレールミッテ徴候陽性
・脊髄空洞症
・脊髄正中離開
(次号では相対禁忌ほかを記します)
★連載エッセイ ④ ☆
“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
症状のぶり返しには原因がある。
腰痛やアレルギー症状などで、いったん改善したのにぶり返すことがある。慢性腰痛や肩こりなどの筋骨格系の症状などは、特に治療直後に改善する人が多い一方で、次の来院日に症状がぶり返したという患者さんも少なくはない。治療直後には症状が改善したけれども、そのあと症状をぶり返す人と、ぶり返さない人との違いは何だろうか?
ひとつには、治療が足りなかった、治療に何かが欠けていたと考える患者さんもいるかもしれない。あるいは元に戻ったのだから単純に治療効果がなかったと考える患者さんもいるだろう。治療回数を重ねるごとに段々と改善していたのに、ある時、元のような症状がぶり返したときに、悪化したと感じる患者さんもいるかもしれない。
治療直後に痛みの軽減、消失、筋緊張の緩和、バランス異常が改善するということは、施術によって自然治癒力が正常に働くようになったということである。それが元の状態にぶり返すということは、自然治癒力をブロックするパターンの学習記憶状態に戻ったということでもある。心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)ではそのように考えて、そのパターンを追跡して本質的な症状の改善を目指す。
ではどのようにそのぶり返しのパターンを追跡すればよいだろうか? まずは、患者さんの治療後の経過を詳しく問診する。症状をぶり返す期間のパターンも様々で、治療院を出てからすぐにぶり返す人もいれば、数か月から数年でぶり返す人もいるだろう。もしも、24時間以内にぶり返したら、基本的な生活のパターンに分けて、そのパターンをイメージしてもらいどのパターンで「緊張パターン」が生じているかを検査する。
例えば、自宅にいる時のイメージで「緊張パターン」を示す場合、職場にいる時のイメージで「緊張パターン」を示す場合など、特定の場面で「緊張パターン」がぶり返されることが多い。場面のイメージで身体が「緊張パターン」を示すということは、脳が誤作動を学習記憶しているということでもあるので、その誤作動が生じないようにそのパターンのイメージで施術を行う。そうすると、その場面で症状がぶり返さないようになる。
このように症状をぶり返したパターンが分かることで、本質的な症状改善の治療ができ、その治療によって、身体がその環境に適応できる体質へと変化して、適応力が高まり、ぶり返しにくくなるといえる。しかしながら、人間は常に環境の変化にさらされており、その変化に伴って、メンタル面も常に変化している。別の原因パターンで同じ症状を繰り返す場合もあるだろうし、もしかすると、それ以来その症状に悩むことはなくなるかもしれない。
《 連載18 》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
チベット医学は医学知識の博物館(つづき)
1979年春の新華社電(ラサ発)によれば、チベット医学の教典ともいうべき『拠悉』(4部からなる)の整理が進行中であるという。チベット自治区ラサ市チベット病院では、「カスを捨て、粋を取る」という方法で「祖国の民族医学、薬学を発展させる上で新たな貢献をすべく」作業を進めており、第1部、第2部については整理を終え、初稿もできあがっているという。
同書の記載によれば、チベットに最初のチベット医者が現れたのは紀元3世紀はじめであり、728年には、彼らの一部がチベットの医薬学に関する書物の編集・著作に着手した。20年以上をかけて彼らが活躍した地域は、五台山、チベット南部、シガツェ、康定などであり、そこでは医療を行うかたわら、民間にある予防法や治療の経験を広く収集した。こうして『拠悉』が完成したのは紀元753年である、とされている。同書は、字数約24万字、156章からなり、さらに79組、約1000枚の鮮明なカラーの付図(人体解剖図、薬物図、器具図、尿の診断図、脈拍の診断図、衛生・予防の6グループに分かれる)がある。カラー図はチベット独自の風格をもつタンカである。
こうして完成したチベット医学教典『拠悉』は、それからの1000年以上、同地域の疾病の予防と治療の指導書となるわけだが、すでにウィニントンの報告にもあるように、これをテキストとしたチベット医学を修了するためには15年もかかったという。またチベット医学は、青海や蒙古、甘粛、四川、雲南などの少数民族地区にも広く伝えられて、その生存と繁栄に大きな役割を果たした。新華社電は、チベット医学・薬学が「祖国医学の重要な構成要素になっていた」と論評している。
かつてチベットは、地理的に隔絶された地域であった。そしてその遠隔性ゆえにチベットはほかからの医学知識を積極的に取り入れ、蓄積したということができる。たとえば、針や灸が「漢方医学」の一部をそのまま受け継いだものであることは明らかである。また『拠悉』の脈診についての部分は、王叔和(おうしゅくか=紀元210-285? 漢代の名医)の書いた『脈経』からの借
り物である。チベット医学の特徴とも言える、おびただしい数の手術器具は漢方医学のそれの比ではない。この外科的要素が、インドの「偉大な医王・耆婆(ぎば)」の影響であることは言うまでもない。耆婆は釈迦の侍医であっただけでなく、チベット医学の強力な後援者でもあった。さらに言えば、インドはギリシャ、アラビアからの影響を大きく受けている。『拠悉』の一部の章が、インドのヴァグバーダ(6世紀の医学者)の章句と一致しているところから、P・ユアールは「王叔和とガレノスは、おそらくチベットで出会った」と仮説している。ガレノス(129?-199)はギリシャの解剖学者でヒポクラテスとともに古代ヨーロッパ医学での二大巨像とされている。ユアールの仮説は壮大である。
この古代世界の医学知識の集積ともいうべきチベット医学教典『拠悉』はその後、2種類の中国語と、巨巻の絵とき1冊が出版された。チベット語原本の詩的な味わいをとどめる『四部医典』(北京1983年)と、わかりやすい口語に訳しきった『四部医典』(上海1987年)である。難解なチベット医学を絵ときした『四部医典系列掛図』は、1986年、ラサのチベット人民出版社から刊行された。その日本語版が拙訳『四部医典タンカ全集』(平川出版社)である。(次号につづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(10)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****
薬物療法に続いて、手技療法家に必須の保存療法の最新情報をお届けします。
■【保存療法】
(1)脊椎マニピュレーション(カイロプラクティックなど)は神経根症状のない急性腰痛患者(ぎっくり腰)に対して、発症後1ヶ月以内に用いられれば症状が改善する可能性がある(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……脊椎マニピュレーションとは、症状緩和と機能改善を目的に梃子の原理を利用して脊柱に瞬発的外力を加える手技療法と定義。
(2)進行性あるいは重大な神経学的欠損(知覚麻痺・筋力低下など)が認められる場合、脊椎マニピュレーションを行なう前に危険な神経学的問題を除外するために適切な診断評価が必要とされる(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……明確な根拠はないものの脊椎マニピュレーションによる重大な合併症の頻度はきわめて少ないと考えられています。
(3)神経根症状に対して脊椎マニピュレーションを推奨する十分な証拠はない(確証度C)。
(4)1ヶ月以上持続している神経根症状のない腰痛患者に対する脊椎マニピュレーションはおそらく安全だが効果は証明されていない(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……RCT(ランダム化比較試験)が不足していたためにこのような結論になっていますが、最新の腰痛診療ガイドラインではもう少し高く評価されています。
(5)脊椎マニピュレーションによる治療を1ヶ月間行なっても患者の症状や機能障害の改善が認められない場合は、脊椎マニピュレーションを中止して患者を再評価すべきである(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……発症後1ヶ月以内であれば脊椎マニピュレーションによって回復が早くなることを示唆するエビデンスがあるからです。
(6)急性腰痛(ぎっくり腰)に対する物理療法(温熱・寒冷・マッサージ・超音波・低出力レーザーなど)の費用対効果は十分に証明されていない。患者が家庭で患部を温めたり冷やしたりすることは選択肢のひとつとなり得る(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……この当時(1994年)に確認された研究では急性腰痛に対する物理療法はほぼ全滅ですが、最新の腰痛診療ガイドラインでは腰が抜けるほど驚くような結果が出ています。
(7)TENS(低周波治療器)は急性腰痛の治療に推奨しない(確証度C)。
(8)長時間立ち仕事をする急性腰痛患者にインソールは選択肢のひとつ(確証度C)。
(9)下肢長差が2cm以下ならシューリフトは推奨しない(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……TENS(経皮的電気刺激=低周波治療器)に効果がないのは周知の事実でしょうから説明するまでもありませんが、インソールで症状が緩和したのは44%だということを覚えておいてください。それから健康な人でも下肢長差が2cmというのはざらにあり、2cmの下肢長差と腰痛との間に関連はないことが確認されています。(次号につづく)
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (36)
根本 良一(療動研究所主宰)
8.腕の動きから 〜背部から胸部・腹部への連動(つづき)
◆2- 胸部から腹部への操体法
仰向けに寝る。座ってでもよいが、寝た方が首と背中の力が抜けるのでよい。脱力後のリラックスを確保するためである。また腰部を安定させ補助動作を送るために足の置き方も工夫する。
1)仰向けに寝て行う
①両膝を立て、踏ん張れる状態で行う。仰向けに寝て、胸部、腹部に緊張のある方の腕(肘あたり)を他方の手で押さえる。
②押さえられた腕は、上から胸前へ手首を内にひねりながら差し込む。肘を上げて、腹部の硬さが消える肘の角度を決める。
・胸部は水平方向よりやや下方へ
・腹直筋は水平方向へ(胸部の肋骨間を指先でなぞり、痛点が消える角度)
・外腹斜筋中央部は肩上の方へ
・外腹斜筋下部はもう少し上、上限まで上げる
③肘を横へ張り出すと、さらに背が広がる。肋椎関節運動軸がよく開くからである。
④そのまま背へ向け息をいっぱい吸い込み、約3秒おいて、フーッと息を吐きながら脱力する。ゆっくり2呼吸間をおいて3回行う。
※上体を左右にひねって動きにくい方であっても、肘を前方に押し出し、背部の肋椎関節運動軸が拡がると、肋間神経→外腹斜筋という連動で上体のひねりが楽になる。
2)椅子に掛け、腕を組んで行う
正座してでもかまわない。
①動かす逆方の手で、腹部の筋(左右の外腹斜筋、腹直筋)を触診する。
②緊張側の手で①の腕(肘のあたり)を押さえ、前腕を内旋(手首を内にひねる)しながら、腹筋のゆるむ肘の角度を決める。
③肘を張り出すと、さらに背が広がり、肋椎関節運動軸がよく開く。
④張り出した肘を上げて、①での触診部が軟らかになる肘の角度を選ぶ。
⑤肘を前に出し、背部が開いたら、背へ向け息をいっぱい吸い込み、
⑥そのまま約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力する。ゆっくり2呼吸間をおいて3回ほど行う。
(次号につづく)
*** N *** E *** W *** S ***
NEWS ■健診基準値、厳しすぎる…健康な人でも上限超え
日本人間ドック学会と健康保険組合連合会は4日、極めて健康な人でも性別や年齢によって健診の検査結果は大きな幅があり、同学会が定め、実際に使われている基準値は厳しすぎるとの研究結果をまとめた。
同学会は2011年、人間ドックを受けた約150万人のうち、病気にかかっておらず、薬も飲んでいないなど、極めて健康な男女を約1万人選び、27項目の検査データを解析した。
その結果、例えば最大血圧は、解析したデータの上限は男女とも147で、学会が定めた基準値129を上回っていた。一方、中性脂肪は女性の場合、基準値(30〜149)の範囲に収まっていたが、男性は上限が大幅に上回り、男女差が見られた。また、悪玉と言われるLDLコレステロールや、糖尿病の診断に使われるヘモグロビンA1cは、男女とも上限値が基準値を上回った。いずれの項目も、男性では年齢による差はなかったが、女性は年齢が上がるにつれて数値も高くなった。
研究を行った慶応大の渡辺清明名誉教授は「今後も追跡調査を行い、健診の現場で使えるようにしたい」と話している。(読売新聞 4/5)
NEWS ■噛む力を鍛えて健康に。肩こり、腰痛、認知症…
歯並びが悪かったり、噛み合わせが悪かったりすることを不正咬合という。しっかり食べ物を噛むことができず、健康に影響が出る可能性がある。日本顎咬合学会の渡辺隆史理事長は「不正咬合だから必ず病気になるというわけではない。しかし噛み合わせは認知症や睡眠障害、姿勢の悪化、鬱などさまざまな症状と関わっていると考えられる。健康な生活を送るためには、噛む能力を保つことが大切です」と話す。
最近はファストフードや軟らかい食材の多用、食事の短時間化などで、正しい咀嚼ができにくい環境になりつつある。噛む能力の基本は2、3歳までに形成されるが、咀嚼のための基本的能力の低い子供も増えているという。噛むための筋肉やあごが発達しないと下あごが発達せず、噛み合わせがずれたり、歯並びが悪くなったりする。
ほおづえをつくと、あごの関節に負担がかかる。あごの形が非対称になり、噛み合わせがずれてしまうこともある。寝る際、うつぶせ寝は歯に負担がかかり、あごがゆがんでしまう。また、食事のときは水分と一緒に流し込まず、よく噛む▽歯応えのある食材を選ぶ▽左右両方の歯をバランスよく使う▽口に入れたものを飲み込んでから次のものを入れる-などに注意するといいという。
噛む力を確認するために渡辺理事長が勧めるのがシュガーレスガム。「虫歯があったり、歯の調子が悪かったりすると、噛んでいて嫌になるはず」。ガムを噛むことで1日の咀嚼回数が増えるため、お勧めだという。(産経新聞 3/26)
NEWS ■看護系学部が増加…「手に職」志向で志願者増
看護系の学部・学科を設置する大学が全国的に増えている。今春新設する16校を含めると226校で、全大学の3割に上る。文部科学省によると、看護師国家試験の受験資格が得られる学部や学科を持つ大学は1991年度には11校だったが、95年以降は毎年10校のペースで増え、20年で7倍以上になった。
今春の新設数は2006年度の17校に次いで多い。敦賀市立看護大(福井県)など3校が単科大学として新設され、奈良学園大(現奈良産業大、奈良県)など、これまで医療系学部がなかった大学も新規参入する。既存の学部・学科の定員を増やす大学もあり、今春の入学定員は前年より1675人増の1万9454人と94年度の11倍になる。同志社女子大(京都府)など十数校は来春の学部・学科の新設を計画中だ。
大手予備校・河合塾の調査によると、全国の私立大の看護系学部・学科の志願者は昨春、延べ7万3000人で、10年前の3.8倍に増えた。私大全体の志願者はほぼ横ばいで、看護系の急伸長ぶりが目立つ。(読売新聞 3/26)
NEWS ■カイロプラクティックの安全向上へ講座
カイロプラクティックの業界団体「日本カイロプラクターズ協会」は、施術による健康被害が発生しないよう、施術者に対する「安全教育プログラム」を4月から開講すると発表した。国民生活センターが2012年、カイロプラクティックや整体などの医業類似行為について被害相談が増加していると指摘し、対策を求めたことを受けた措置。
講座は、世界保健機関(WHO)の指針が求める安全教育を受けていない施術者が対象。3年間で必要単位を取得し、所定の試験に合格すると「カイロプラクター」として登録される。登録名簿は公開されるため、利用者は安全な施術者を選ぶための目安にできる。(共同通信社 3/25)
NEWS ■漢方学の権威語る「朝カレー生活ががんに効く」
「がんの嫌がる食事は、体を温めるスパイシーなメニュー。逆に不規則な食事や間食はがんが好きな習慣です」と語るのは、日本薬科大学学長の丁宗鐵氏。がんが「逃げ出す」食事法として丁氏が推奨するのが朝カレー生活だ。がん細胞は温かいところが苦手なので、予防には冷えた体を温める食事が必要とのことだ。
「人は体温が1度上がると代謝は1.6〜1.7倍になります。代謝を高め、痩せやすい体づくりにも朝カレーは最適です。市販のレトルトカレーは油分が気になるので、カレー粉を使ったもので作り置きするのがいいでしょう」(丁氏)。実践していくと、朝カレーで、スッキリ体を目覚めさせることができる。日中しっかり動けることでダイエット効果も加わり痩せやすい体に。なにより体を温めてくれるので、がんを寄せ付けない体作りの基礎になる。長続きのコツは、飽きないようバリエーションを増やすこと。
「味噌汁を作るプロセスで、最後に味噌ではなくカレーを入れてスープカレーにするのもいい。こうしたスパイシーで体の温まる食事を、1日1食は取るよう心がけてください。カレー以外にもスパイシーな食材は多く、わさび、しょうが、みょうが、からし、ししとうなどいろいろあるので工夫して取るようにしましょう。新陳代謝も高まり、体温も上がっていきます」(丁氏)(女性自身 3/20)
NEWS ■スタイルを気にしすぎる女性はうつに注意を
加齢に伴う体型の変化は、女性のボディイメージの認識に影響を与えるが、中年女性におけるボディイメージについてはほとんど知られていない。米国・ノースウェスタン大学のKathryn L Jackson氏らは、白人およびアフリカ系アメリカ人の中年女性を対象に、ボディイメージと抑うつ症状との関連を検討した。
対象者はシカゴのSWAN(the Study of Women’s Health Across the Nation)サイトより抽出した405人。ボディイメージはスタンカードの評価尺度を用い測定した。抑うつ症状の臨床的に有意なレベルは、CES-D(うつ病自己評価尺度)スコア16点以上と定義した。現状認知、理想的なボディイメージの認知、実際のサイズ、質問票で得られた体重の満足度や魅力の違いとCES-Dスコア16点以上との関連はロジスティック回帰分析を用い検討を行った。
主な結果は以下のとおり。
・63人(15.6%)は抑うつ症状が臨床的に有意なレベルであった
・ボディイメージに不満を持つ女性(オッズ比 1.91、p=0.04)または魅力的でないと感じている女性(オッズ比 7.74、p<0.01)ではCES-Dスコア16点以上の割合が高率で認められ
た
・人種間での有意な差は認められなかった
・本研究結果では、BMIによる交絡はみられなかった
・低いボディイメージを有する中年女性では、抑うつ症状が臨床的に有意なレベルである可能性が高いことが示唆された
(Archives of women’s mental health誌オンライン版 3/13)
NEWS ■睡眠指針、11年ぶり改定へ…勤労者には昼寝を推奨
厚生労働省は、心身の健康と密接に関わる眠りの質を向上させようと2003年に策定した「睡眠指針」を11年ぶりに改定する。近年の国内外の研究結果などを基に、同省検討会が今月下旬にも改定内容を取りまとめる予定で、中高生の就寝前の携帯電話使用が夜型の生活を促進するとして新たに注意を促す。
改定案は従来の指針をベースに、忙しくて寝不足の勤労者には昼寝を勧めるなど(1)若者、(2)勤労者、(3)高齢者の3グループそれぞれの特徴に応じ、良い眠りのためのアドバイスを盛り込んだ。
中高生ら10代の若年世代に向けては「頻繁に夜更かしをすると体内時計がずれていく」として規則正しい生活の大切さを強調し、朝、目が覚めたら日光を浴びて体内時計をリセットするよう呼び掛け。スマートフォンの普及を踏まえ「寝床に就いた後に携帯電話を使ったり、ゲームをしたりして活動すると夜型化を招く」と警鐘を鳴らしている。
20代〜60代前半の勤労世代向けには「睡眠不足が長く続くと疲労回復は難しくなる。毎日、必要な睡眠時間を確保することが大切」とし、仕事中に眠気が生じる場合は20〜30分の昼寝が効果的とした。仕事のない週末に”寝だめ”をすることに関しては、別添資料で成人の実験結果を紹介し「決して無効ではないが、睡眠不足に伴う疲労の回復には不十分」とした。
60代後半以上の熟年世代に対しては、夜間に眠ることができる時間が加齢とともに短くなる点を指摘。「無理に長時間眠ろうと寝床にとどまることはかえって睡眠の質を低下させ、熟睡感が減る」とし、日中に適度に体を動かすなどメリハリのある生活を呼び掛けている。(共同通信社 3/10)
NEWS■高齢になるほど下肢の温冷疼痛感度が鈍化
中高齢者の疼痛感受性に対する年齢と人種の影響について、米国・フロリダ大学のJoseph
L. Riley氏らはさまざまな刺激方法を用いて検討を行った。その結果、中年者と高齢者では温熱刺激に対する反応に違いがみられ、加齢に伴い疼痛感受性の低下はとくに下肢で顕著であることを明らかにした。
研究グループは、侵害刺激への反応に対する年齢および人種の影響を検討するため、45〜76歳の非ヒスパニック系黒人53例、非ヒスパニック系白人138例を対象に、温熱、機械および寒冷刺激に対する反応を評価する感覚検査(3時間単回)を行った。
主な結果は以下のとおり。
・高齢者は中年者に比べ、温熱刺激に対して鈍く、とくに膝で著しいことが示唆された
・疼痛感受性には人種差がみられ、その差は高齢者においてより顕著であった
・全体的に、本試験の人種差に関するデータは、先行研究において報告されたデータと同様の結果を示した
・その中で新たな所見として、非ヒスパニック系黒人では、時間的加重ならびに温冷両刺激に対する感受性低下が、年齢とともに増大することが示唆された
・本研究により、加齢とともに疼痛感度は下肢で最も大きく低下することが明らかになった。また、より若い年代で観察されていた人種による違いは、本試験における中高年層でもみられることが明らかになった
(Journal of Pain誌3月号)
NEWS ■肩こりは頚椎X線で “みえる” のか
頚部症状とX線所見との関連についてはいまだ議論が続いているが、弘前大学整形外科の熊谷玄太郎氏らは地域住民762例を対象とした調査において、その関連を評価した。その結果、男女とも頚椎の矢状面アライメントは頚部症状と関連していないことが示されたが、女性においては頚椎の変性変化と頚部痛強度との関連が有意であったことを報告した。
研究グループは、弘前市岩木地区の住民を対象とした「岩木健康増進プロジェクト」の「プロジェクト健診」の一部として調査を行った。頚椎のX線撮影を行うとともに、頚部痛や肩こりの強度について視覚的アナログスケール(VAS)を用いて測定した。解析対象には、頚椎外傷や関節リウマチなどの既往歴を有する者は除いた。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象は、762例であった
・健診当日の肩こりの有病率は、男性より女性が有意に高かった
・健診当日のVAS評価による頚部痛および肩こり、ならびに12ヵ月前の肩こりの強度は、男女間で有意差は認められなかった
・12ヵ月前の頚部痛は、男性より女性で有意に強かった
・男性、女性いずれにおいても頸椎(C2〜C7)矢状面アライメントと頚部症状との間に関連はみられなかった。しかし女性では、年齢補正後に、健診当日ならびに12ヵ月前の変性指数と頚部痛強度(VAS)との間に有意な関連が認められた
・頚椎矢状面アライメントより直線型、前弯型、後弯型に分類すると、頚部痛および肩こりの有病率と強度について各グループ間で有意差はなかった
(Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版3月号)
-■次号のメールマガジンは5月1日ごろです。お楽しみに。
[発行]産学社エンタプライズ