エンタプライズ発信〜メールマガジン【№8】2011.10

アメリカで「Occupy Wall Street;ウォール街を占拠しろ」のスローガンのもと、若者を中心としたデモがニューヨークで始まりました。この「経済格差に反対する運動」は西海岸まで広がり、わずか3週間で全米100を超える町に飛び火しました。ニューヨークでの参加者は1万人を超えたといいます。運動が拡大した背景には長引く不況や、9パーセントにのぼる高い失業率があります。「銀行がこの国をダメにし、我々の仕事を奪っている」「金融街など人口のわずか1%の人たちが世界を仕切っていて、99%の人々が苦しんでいるのはおかしい」というのが不満の主な理由です。インターネットを使って呼応しているようですが、日本も不況の只中で、どこで火種が破裂してもおかしくない経済情勢です。とくに3.11大震災以降の市場経済は混乱をきたしています。日本でも格差意識は増長しており、第二のアメリカにならなければよいのですが…。政治は局面にのみ囚われず、次代の核となる若者の働き場所を創造するべきです。若年層(15-24歳)の「失業率1割」時代はすぐそこまで来ている危機的状況なのですから。

★☆★━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★
【1】カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【2】補完・代替医療の真贋を斬る!
【3】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【4】NEWS
【5】ご案内『タオ性科学・女性編』と『タオ人間医学』が契約へ。『エネルギー医学の原理』が再販売へ
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<<連載>>

カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト<第8話>

保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


実践ある中にこそ生きてくる「哲学」

アクティベータの分析治療は、他のカイロプラクティック治療と同じように、神経エネルギーを妨害するサブラクセイションを解放させて、先天的知力を最大限に充実させることにある。これはハード面の調整であり、本質的病気の原因である、心の問題や食品、毒、習慣的姿勢などへの整合性、統合性を診るソフト面への分析治療には関与しない。そこまで踏み込んだ分かりやすい説明が他にあるかどうかは定かでないが、上記のシステム思考は、机上の空論ではなく、臨床現場と結びつく実戦に役立つ概念である。
D.D.パーマーがこのような概念で臨床を行なっていたかどうかも定かでないが、この概念は臨床現場での診療に矛盾を感じさせないことは確かである。
多くのカイロプラクターは、学問上でD.D.パーマーの哲学として先天的知力(Innate Intelligence)と宇宙的知力(Universal Intelligence)の概念をある程度学ぶが、それが密接に臨床現場と結びついているかどうかは、はなはだ疑問である。筆者も開業当初から先天的知力と宇宙的知力の概念を理解して矯正治療を施していたわけではない。カイロプラクティックの本質的治療ともいえるアクティベータ・メソッドを通じ、臨床現場でサブラクセイションを徹底的に追求し、患者を観察することによって、D.D.パーマーが語る哲学が浸透してきたように感じる。また、カイロプラクティックのパイオニアたちが語るカイロプラクティックの本質、カイロプラクターとしてのアイデンティティが明確になってきたようにも思える。
カイロプラクティックの発祥の地であるパーマーカイロプラクティック大学は、哲学の授業に費やす時間が、他のカイロプラクティック大学に比べると多いといわれている。筆者が在学していたころのカイロプラクティック哲学の講義を振り返ってみると、英語のハンディも加えてほとんど理解していなかったように思う。しかし、いま教科書を読み返すと、なるほどとうなずけることが多い。やはり、臨床現場での経験は大きく、アクティベータ・メソッドという、無駄のないカイロプラクティックの本質的業務を可能にするテクニックとの出合いの影響は大きい。
(次号へつづく)

<ここまでの参考文献>
1.Kenneth R. Pelletier. Mind as Healer, Mind as Slayer. 1977. (邦訳:心が生かし、心が殺す 黒沼凱夫訳)
2.Fritjof Capra . The Tao of Physics. 1975. (邦訳:タオ自然学. 吉福伸逸.・田中三彦 島田裕巳.・中山直子訳)
3.Scott Haldeman Principles and Practice of Chiropractcic. (邦訳:カイロプラクティック総覧. 本間三郎・竹谷内宏明監訳)
4.Virgil V. Strang Essential Principles of Chiropractic Philosophy Palmer College of Chiropractic. Davenport..1984. (邦訳:エッセンシャル カイロプラクティック 哲学 増田 裕訳)
5.日本カイロプラクターズ協会. JACガイドブック. 2003-2004年度;9.
6.Boden SD et al. Abnormal magnetic-resonance scans of the lumbar spine in asymptomatic subjects. A prospective investigation, J Bone Joint Surg Am. 1990 Mar; 72(3):403-8.
7.Jensen M. C et al. Magnetic Resonance Imaging of the Lumbar Spine in People without Back Pain, The New England Journal of Medicine, 1994 Jul 14; Volume 331:69-73
8.保井志之. カイロプラクティック 統合医療の到来に向けての考察. 季刊マニピュレーション エンタプライズ. No. 69. 2003


補完・代替医療の真贋を斬る!【連載⑧】

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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■クワッカリーの安全性(続き)

国民生活センターが注意を呼びかけている販売手口・商法と、2002年〜2006年までに寄せられた過去5年間の相談件数(前号からの続き)

【8】クレ・サラ強要商法(7,042件)
売買契約の際に無理やりサラ金等から借金をさせたりクレジット契約を組ませたりする商法。

【9】原野商法(1,732件)
ほとんど無価値で将来の値上がりの見込みがほとんどない土地を、値上がりするかのように偽って売りつける商法。

【10】講習会商法(1,687件)
消費者宅以外の会場で講習会や講演会を開催し商品等を売りつける商法。

【11】サイドビジネス商法(128,117件)
「内職・副業(サイドビジネス)になる」「脱サラできる」等をセールストークに何らかの契約をさせる商法。

【12】士商法(6,503件)
「もうすぐ国家資格になる」「受講するだけで資格がとれる」など資格そのものに関する虚偽の説明でつって、講座や教材を契約させる商法。

【13】下取商法(3,882件)
下取りすることをうたって売りつける商法。

【14】実演商法(3,307件)
実演による販売方法に問題のあるもの。

【15】実験商法(7,070件)
化学実験めいたことをしてみせて、「当該商品を使わないと危険だ」等と不安をあおったり、当該商品がいかに効果的か等の化学的裏付があるように思わせて売りつける商法。

【16】就職商法(3,777件)
仕事やアルバイト等の求人・雇用をかたって人を募り、何らかの契約をさせる商法。

【17】体験談商法(2,787件)
使用・実行して効果・効能があったという体験者の体験談を広告宣伝に利用する商法。

【18】デート商法(8,451件)
主に異性間の感情を利用してデートを装って勧誘する商法。

【19】点検商法(59,830件)
「点検にきた」と言って来訪し、修理不能・危険な状態・期限が切れているなど事実と異なることを言って新品や別の商品・サービスを売りつける商法。

【20】電話勧誘販売(420,967件)
業者が消費者に電話をかけ、または特定のやり方で電話をかけさせ、その電話における勧誘により、郵便等で契約を締結する販売方法のこと。
(以下、次号へつづく)


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (9)

根本 良一(療動研究所主宰)


今号より連動操体法の実技に入っていきます。連動操体法の基本(主動作)は変わることはないけれども、「補助動作」をうまく使うことで、患者にやさしい、より効果的な操体法になることは前号までのお話でおおよそ理解できたと思います。
実技を進めるにあたって、連動の流れをつく主動作、補助動作を含めて、大きく動かす部位は、椅座位・仰臥位が主となります。立位は重心維持のため抗重力筋がはたらき、意図的な動きである“連動”が制約されることになるので、連動操体法ではあまり使いません。
また、身体の動きは単純なほどしやすいものなので操作部位のどことどこを組み合わせるかによって、相互に主動作・補助動作の関係で調和のとれた動き、すなわち“連動”を誘導することが肝要になります。このことが操作する側にも受ける側にも、やさしくて、より効果の上がる連動操体法となることを覚えておいてください。

それでは、詳しくは次号から収載することにして、ここでは次号からのテーマになる「足指をまわす」ことの意味のエッセンスを2つ述べておきます。
(1)足指の矯正は、身体の動きを支える一番動く関節である足指のつけ根、中足指節関節を中心とした足指の屈筋群、伸筋群、内転・外転筋群から連動する上部の調整を行う。
(2)中足骨から指根骨に関わる筋群を調整する足底中心部の操作、すなわち中足骨をまわすことによる効果。
(以下、つづく)


*** N  *** E  *** W  *** S  ***


NEWS ■コーヒーを飲む女性はうつ病になりにくい■


1日2杯以上コーヒーを飲む女性はうつになりにくいという。カフェイン抜きのコーヒーでは同じ効果が見られないので、コーヒーのカフェインが脳内化学物質を変える可能性があるという。
米国で50,000人以上の女性看護師についての研究でわかった。ハーバード大の研究チームが1996〜2006年の10年間に健康調査とコーヒー消費記録からつきとめた。この間に2,600人がうつ病を発症したが、コーヒーを飲まない人が多かった。1日2-3杯コーヒーを飲む人は週に1杯以下の人より15%リスクが低かった。1日4杯以上飲む人は20%リスクが低かった。
コーヒーを飲む人は自殺率が低いという研究もある。コーヒーは、ドーパミン産生を増加させるのと同様な効果を、アデノシンのような化学受容を阻害することで脳機能に影響を及ぼしている。
ただし、抑うつ気分の人はコーヒーを飲まないということが影響している可能性はある。また、うつの不眠をカフェインは悪化させる可能性もある。
出所: http://kurie.at.webry.info/201109/article_21.html


NEWS ■福島の医師、12%が自主退職…原発から避難?■


東京電力福島第一原発事故後、福島県内の24病院で常勤医師の12%に当たる125人が自主退職していたことが、県病院協会の調べでわかった。
原発事故からの避難などのためとみられ、看護師の退職者も5%に当たる407人(42病院)に上った。県内の病院では一部の診療科や夜間救急の休止などの影響が出ている。
調査は7月下旬、県内の医師らの勤務状況を調べるため、全139病院のうち、同協会に加盟する127病院を対象に実施。54病院から回答を得た。
主な市町村で、原発事故前の医師数に占める退職者の割合が高いのは、南相馬市の4病院で46%(13人、警戒区域の1病院1人を含む)、いわき市の5病院で23%(31人)、福島市の6病院で9%(41人)、郡山市の4病院で8%(25人)。
看護師では、南相馬市の4病院で16%(44人、警戒区域の1病院2人を含む)、いわき市の7病院で8%(113人)、福島市の9病院と郡山市の6病院は4%でそれぞれ68人、54人減少した。(9月28日   読売新聞)


NEWS ■多少の不衛生は健康によい■


米国疾病管理予防センター(CDC)によると、良好な衛生状態を保つことにより多数の生命が救われ、人々が感染症から守られてきた。しかし、あまりに清潔にこだわりすぎると、別の疾患に罹りやすくなるとの懸念が浮上してきている。
この「衛生仮説(hygiene hypothesis)」とは、細菌、ウイルス、寄生虫への曝露が減少すると、免疫システムが正常に反応する能力が損なわれるという考えである。英ロンドン大学(UCL)臨床微生物センター教授のGraham A.W. Rook氏によると、この衛生仮説は以下のような疾患の原因あるいは増悪因子として特定されているという:
・重症アレルギー反応
・炎症性腸疾患(IBD)、クローン病などの消化管障害
・1型糖尿病、多発性硬化症(MS)などの自己免疫疾患

Rook氏は「人類はその誕生直後から、さまざまな微生物とともに過ごしており、人体はそれに適応し、免疫システムの訓練手段とするようになった。進化の過程で、微生物は免疫システムの耐性を活性化させ、免疫システムがむやみやたらに抗原を攻撃することを抑制する役割を担うようになった」と説明する。
一方、衛生仮説を言い訳にして清潔さをおろそかにすると、赤痢やコレラの急増をもたらすとの懸念もある。
概していえば、良好な衛生状態を維持しつつ、衛生仮説の全貌が把握できるまで待つのが賢明であるという。Rook氏は「現在、細菌や寄生虫が免疫システム反応を節度あるものにさせる機序を解明するための大規模研究が進行中で、衛生維持の利点を保ちつつ、微生物環境のよい部分を取り入れる方法の解明が必要である」としている。


NEWS ■中年期の飲酒、女性は高齢期の健康状態が良好■


中年期に適量(moderate amounts)のアルコールを摂取している女性は、全く飲まない人に比べて高齢期の健康状態が心身ともに良好であることが、新しい研究で判明した。ただし、今回の研究は因果関係を裏付けるものではなく、また長期にわたる飲酒の代価についても検討されていない。
オンライン医学誌「PLoS Medicine」に9月6日掲載された今回の研究では、1980年代に中年(中央値58歳)であり、70歳以上まで生存した看護師1万3,894人の医療記録を検討。その結果、高齢期に健康状態の良好だった群のうち、全く飲酒をしない人は22%にとどまり、62%が1日約1杯(アルコール15g)、約10%が1〜2杯、3%が2〜3杯の飲酒をしていた。年齢や喫煙などの因子を調整後も、高齢期に健康な女性は中年期に飲酒している比率が高かった。
研究グループによると、習慣的に適量の酒を飲む方が、時折しか飲まないよりも有益であるようだという。別の専門家は、女性では1日2杯、男性では1日3杯を超える飲酒をすると健康に害があるとし、飲みすぎについて警告するとともに、今回の研究で対象とした女性は中年期に健康であった点を指摘。「疾患のある人や薬剤を使用している人は相互作用などに注意する必要がある」と述べている。


NEWS ■サマータイム後…寝不足から自律神経失調へ■


先の夏は、原子力発電所の事故による電力不足を考慮し、独自にサマータイムを導入する動きが広がった。
しかしサマータイムが生活リズムに与える影響は小さくなさそうだ。インターネット調査会社のマクロミルが6月、300人の会社員、公務員に行ったアンケートによると、サマータイム導入の前後で、午前5〜6時に起きる人が36%から56%に増加。午前0時よりも遅く眠る人が32%から22%に減った。マクロミルは「起床時間に比べると、就寝時間の変化が少ない」と分析する。
睡眠の重要性を訴える精神科医らでつくる「睡眠改善委員会」はサマータイムについて、「睡眠に悪影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らす。委員の杏林大医学部の古賀良彦教授=精神医学=は「日本ではあくまで職場単位の取り組み。周囲に別の時間の流れがあり、ダブルスタンダードを強いられた人が『かくれ不眠』になる恐れがある」と懸念する。
かくれ不眠とは、睡眠改善委員会が名づけた寝不足と不眠症の中間の状態。専門的な治療こそ必要ないが、軽度で短期的な不眠症状を抱えており、自律神経の働きが乱れて不眠症へ発展する危険性がある。「日本は睡眠時間の少ないことを美徳とする慣習がある」と古賀教授。サマータイムによって睡眠時間が減ったり、休日に「寝だめ」したりすることで体内時計が狂い、かくれ不眠につながると説明する。
サマータイムは9月末で終わり、以後は時計が1時間、後ろにずれる。古賀教授は「急激な環境の変化は、うつ病などの気分障害の発症につながる。時間を急に戻すのでなく、たとえば10分ずつ、ゆっくりと戻すような工夫が体に優しい」と話す。家族の協力を得て、家の時計を一度、サマータイムに合わせてから、徐々に体を慣らすことが大切だ。(9月5日   毎日新聞社、一部割愛)


◆◆ ご案内 ◆◆

謝明徳・原著『タオ性科学・女性編』と『タオ人間医学』が契約の途上ですが、前情報のように両書ともかなり改訂が入っていることがわかりました。現在、翻訳者と打ち合わせ中ですが、翻訳-再編集または新規編集に長い時間を要する模様です。さらにお待たせすることになりそうですが、詳細は追ってご案内いたしますのでご容赦ください。

◎オシュマン原著 『エネルギー医学の原理』の再販売を案内しましたが、契約書の交換が遅れております。10月末には刊行の見込みとしていましたが、11月-12月にまたがることもありえますので、ご了承ください。お詫び申し上げます。


■次号のメールマガジンは11月10日ごろです。お楽しみに。【編集人:北島憲二】


[発行]産学社エンタプライズ