エンタプライズ発信〜メールマガジン【№107】 2020. 3

パンデミック(新型コロナウイルス感染禍)のさなかに3.11東日本大震災から9年の歳月が経ちました。3.11クラスの大地震がこの世紀の災厄のときに突如発生したら、日本国内はさながら驚天動地の混乱を生むことになるでしょう。そのような身震いのする危難を個人レベルで考えたときに、水や食料、現金、電池など備蓄の必要性やライフライン回復までの待機など緊急に対応する最低限の意識は持っていますが、同時にトイレ問題について向き合う必要があることを知りました。人間の生理現象であるトイレ(排便)を長く我慢することはできません。ふだんの生活とまったく異なる状況になってしまうと、人間は緊張感などからトイレなどの生理現象の発生が通常よりも多くなるのが特徴です。言うまでもなく多くの家は水洗トイレのため、地域が断水・停電してしまうと利用できません。また近くの避難所で仮設トイレを十分用意できるまでには、数日を要するのは想像に難くありません。そこで話題になっているのは簡易トイレです。これには水を必要としません(袋式・凝固・消臭)。災害発生時に備えてどれくらいの量を用意すればよいのかわからないという人も多いでしょう。一般的な計算方法としては、1人あたりのトイレの回数を平均の1日7回として計算してみます(大便2回、小便5回)。大震災が発生した場合にライフラインの復旧や救援物資が届くまでの日数は、地域によりますがおよそ1週間とされています。4人家族で避難生活の日数を7日間と想定してみましょう。毎回排泄するごとに交換する場合には、家族4人が1日7回で7日間を想定して196枚が必要になります。幸い、そう嵩むものではないので準備しておくに越したことはありません。排便を我慢することは相当な苦痛です。家族の心理状態を平穏に保つ意味でも、必需品という意識が求められると思います。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S

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★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

【 総 括 編 】 老衰と肺炎は自然の摂理の範疇(つづき)

[安保] 医療費が大変な額になりますが、保険診療だからこんなことができるというか、こんな事態が起こってしまうんですね。人工呼吸器などはとても個人のみで負担できる額ではないですから。
[太田] ここ数年はその反省が出てきたと思いますが、社会全体で取り組まないと変えることができない問題ですね。
[安保] 病気をせずに長生きできた人間の死に方には2通りあると思います。最後は老衰か、免疫力が働かなくなって肺炎を起こす。この2つを悪いことだと思わずに受け入れることが大切だと思います。肺炎を起こすことを悪いと言ってしまうと、いま話したような過剰医療の世界に向かってしまいます。
老衰や肺炎でこの世を去るのは、自然の摂理の範疇だと思うのです。その部分に医療があまり手を出さないでほしいですね。そして自分の最後を自分でしっかり選択できる時代になってほしいものです。

人は何のために長生きするのか

[太田] そのためにも、健康に長く生きることの意義を知ることはとても大切だと思っています。
[安保] 人は何のために長生きするのでしょうね?
[太田] 人間は縄文の大昔から延々と、似たようなことを繰り返して文化を作り上げてきたんだと思います。新しい発明というのはたまにあるんだけれども、何か一つ新しいものが生まれると、みんなでそれを真似しつづけるんですね。
[安保] たしかに縄文式土器が発明されたら、みんなが似たような模様の焼き物を何千年も作りつづけているね。みんなで真似をして、いろんなところに伝わっていく。
[太田] 伝わっていくのは地理的な横の広がりがあり、世代という時間軸のつながりとしても伝わっていきます。
[安保] 次世代への伝承ですね。伝えるためには、知恵をもった人ができるだけたくさんいたほうがいいですね。
[太田] しかも50年から100年に1回くらいは天変地異も起こります。天変地異のような困難を乗り切るには、1人でもその災害を経験した人が存在して、次世代に危険を知らせなくてはならないですよね。
[安保] 長老が知恵をもっていれば、その部族は生き延びれるわけだ…。人類がこれまで残してきた壮大な文化を振り返れば、1世代や2世代の工夫ではとても発達させることはできないものです。そう考えると、よくここまで伝えてくることができたなと感心します。伝えるためには経験が必要だから、長く生きるほど多くのことを確実に伝えることができますね。
[太田] 人間は生物の中では相当な長寿です。生物の寿命は体の大きさでだいたい決まってしまうことは前にも話しましたが、人間よりも体が巨大なゾウの寿命はせいぜい80年だし、人間と99%DNAが同じであるチンパンジーは長く生きても50年ちょっとです。
人間はこれらの動物に比べて抗酸化能力が高いこと、遺伝子修復能力が優れていることが知られています。だけどここまで寿命に差があると、それだけでは説明ができないのではないか、何か他のバイアスがかかっているのではないかと思います。
[安保] そう考えると、人間が伝えてきた知恵も関係していそうだね。
[太田] そうですよね。知恵の伝承は、ほかの動物にはない能力ですよね。これだけの寿命を種族として獲得できたので、知恵をしっかり伝え続けることが可能になり、生き延びてこられたのかもしれません。脳がいくら発達しても、寿命が短いと知識を伝える時間が少ないのであまり役に立たないですね。
[安保] 知識や情報を継承し生かしていくためには、やはり長生きした方が勝ちですね。これまでの人類の歴史を振り返ると、長生きする人がいなかったら文化はこれほど進まなかっただろうし、へたをしたら滅亡していたかもしれません。


連載vol.65

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

エネルギーの流れ(つづき)

生体エネルギーに関する理解を今後さらに深めるためには、結合組織や細胞骨格の固相生化学的特性やプロティシティ(細胞から発生した陽子が流れる現象。ミトコンドリアに関連する)について調べる必要があるだろう。筋収縮に用いられるエネルギーの一部が、結合組織と細胞骨格全体の協力作用から生じていると解釈しても矛盾はないはずだ。またプロティシティもエネルギー系に何らかの貢献をしている可能がある。

西洋医学や現代科学の専門家は、鍼療法とともに発展してきた武道の達人たちを観察して、彼らが生み出すエネルギー現象にしばしば驚嘆させられる。人間のエネルギーに関する伝統的知識は、昔から自己防御や戦闘、あるいは癒しに利用されてきた。現実に、武道の達人技のメカニズムには、敵から逃れるための「原始的な」仕組みが関与しているらしい。原始的というのは、原生動物を含めたあらゆる生物にこの仕組みが備わっているからだ。
気功、ヨガ、瞑想、禅といった伝統的修行法や武道の実践者を対象とした日本での研究では、術者の手の平から強力な磁気パルスが放出されていることがわかった。この磁気パルスは約8万回のコイル2本と高感度の増幅器を組み合わせた磁力計で検出することができ、およそ1ミリガウスの強さを持つ。人間の一般的な生体磁気はマイクロガウスのレベルなので、修業を積んだ人の磁気はその約1000倍の強さということになる。

この実験を行った瀬戸らは、強力な生体磁気の発生源を突き止めるまでには至らなかった。しかし同じ人たちを対象として、磁気と同時に電気が発生しているかどうかを調べたところ、磁気に対応するような電気は検出されなかった。したがって瀬戸らは、生体磁気が組織中を流れる電流から誘導されたものではないと結論づけている。
瀬戸らの研究は、伝統的なヒーリング法と現代科学を結びつけたという意味で非常に重要である。コイルを用いた簡単な磁力計で、いわゆる「気」が検出されたということは、実体のわからなかった気のエネルギーの正体が、少なくとも一部は生体磁気であることを示している。また古くから知られている「癒しのエネルギー」を比較的感度の低い磁力計で測定できたことから、修業を積んだ人たちが強いエネルギーを放出していることがわかった。すなわち、スクイドなどの高価な装置を用いなくても、生体エネルギーの研究をつづけることは可能なのだ。
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊)


連載エッセイ 73☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


治療者の「志」(後編)

経営の神様といわれたピーター・ドラッカーの著書の中で語られている有名な寓話として、「3人の石切り工」の話があります。旅人がある町を通りかかると、3人の石切り工が働いていました。そこで、「あなたは何のためにこの仕事をしているのですか?」と1人目の石切り工に尋ねました。すると「生活のために働いている」と答えました。次に2人目の石切り工に尋ねました。すると「最高の石切りの仕事をしている」と答えました。最後に3人目の石切り工に尋ねました。すると「教会を建てている」と答えたという寓話です。この話は様々な職種のリーダーたちに語り継がれています。

この寓話を治療者として経験を交えて解説してみたいと思います。結論的に、開業25年を振り返り、私の中には3人の石切り工の要素が含まれていたと思います。開業当初はこのままで治療院が継続できるのか、生活のために他の職種につかなくてはならないのではないかという一抹の不安を抱えながら仕事をしていました。それから治療院が安定してくると、修行時代からの課題である最高の治療技術を身に付けたいと治療法の勉強や臨床研究に熱心に取り組みました。そして、自然療法の本質がある程度見えてくると、その治療法を広めて大きな組織(教会)を創って、多くの人に貢献したいと考えるようになりました。そして現在では、地域の方々に喜ばれ信頼される治療院経営およびさらに治療法を進化させ、治療者の先生方にその治療技術を広める活動を行なっています。

振り返ると、私の思考の多くが「なぜ…」ということが基本にあり、「どのように…」というのはあまり重要ではありませんでした。現在でもまだまだ臨床で研究し続けていますが、イレギュラーな現象があると常に「なぜ…」という思考が働きますし、経営に関しても「なぜ、治療院を経営しているのか」という原点になる問いかけは忘れないようにしています。治療法、経営、そして人としての在り方に関しての勉強はこれからも永遠に継続していきたいですし、さらに磨きをかけることで多くの人に喜ばれる自分になれることを信じています。

「どんな職業の人もその職業に死ぬ覚悟がないと本物になれない」という言葉があります。以前、私が主催するコーチングのトレーニングで、あるワークをしていた際、自分は今の仕事に命をかけているのだということを知ることができました。自分を客観的に観ることで、なるほどと思いました。命をかけるというと、何か悲壮感が漂うかもしれませんが、私にとって命をかけることのできる職業に巡り会えたことは何よりの喜びであり、これからの人生100年時代に向かってこの職業をさらに価値あるものに引き上げて、同志を増やし喜びの輪を広げていきたいと思います。

連載…13

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

料金の値上げについて

セッション料金について、どのくらいの頻度で、どれくらい額を上げるかは、施術者によってまちまちです。1年に1回の割合で5ドルほど値上げする人もいますし、テナント家賃ほかの諸経費が上がったときに値上げしたりします。より値上げをスムーズにするためには、少なくとも1-2か月前にはクライアントに知らせる必要があります。そうすれば彼らも高くなった金額を予知し、それに応じて自分の予算を考えてくれるでしょう。

セッション料金の値上げをどのように実行していくかについては、さまざまなバリエーションがあります。ある施術者は、新規クライアントに対しては新たな料金を適用するが、既存のクライアントには1-2か月は現行の料金でセッションを行っています。ほかの施術者は既存のクライアントには一切の料金の値上げは行いません。クライアントは一番初めのセッションで支払った額以上のお金を払わなくていいのです。
料金の値上げに関して、決まりきったやり方はありません。あなたやクライアントにとって公平で一貫して実行できればいいのです。また料金の値上げについて罪悪感を持つ必要はもちろんありません。

お金の取り扱いをもっと快適に行う

クライアントとお金のやり取りで苦労することはたまにあることです。キャンセルがそうですし、特別料金にして裏目に出たり、料金を高くし過ぎて客を減らすとか。
もっとスムーズにお金の取り扱いをできるようになる方法がいくつかあります。まず初めに、自分がお金に対してどのような考え方をもっているか確認してみましょう。ビジネスに関しては経験ある知識の豊富なメンターを持つことです。また信頼できる仲間たちとのグループミーティングの機会を持つことです。
マニュアル・セラピストの中にはコーチングを利用する人もいます。コーチングでは、ゴールを達成するためにはどのようなステップを進めばいいかを教えてくれます。またワークショップの中には、お金に対する考え方を改めるためのものがあります。

お金について良いバウンダリーを設けるということは、私たちのワークの中でとても重要なことです。クライアントも私たちも、お金に関するやり取りをはっきりすることによって得られる安心感や安定が必要なのです。お金について明確で潔白であるということは、キャリアの中で常に磨き上げておかなければならないスキルでありアートなのです。
(出所:『エデュケーティド・ハート』The EducatedHeart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(81)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■重度の腰痛と活動障害は数日〜数週間で顕著に改善するが、軽度の症状は長期間持続することがあり、数か月におよぶ場合も少なくない(★★★)。http://amzn.to/Hk8veA
……急性腰痛(ぎっくり腰)は慢性化することがあるけれども、その多くは数日から数週間以内に改善するものだと考えてください。基本的には予後良好な自己限定性疾患です。

■大半の患者は時に腰痛が再発する(★★★)。しかし再発は普通に見られる正常なことであり、腰部に再度損傷を受けたり、症状が悪化していることを意味するものではない(★)。http://amzn.to/Hk8veA
……これはとても重要なことです。腰痛は風邪と同じ自己限定疾患(ある一定の経過をたどって自然に終息する予後良好な疾患)ですから、再発する度に悪化していると考えるのは見当違いです。けっして腰痛を怖れてはいけません。

■患者の約10%は1年後も症状の一部が持続しているが、その大半は通常の活動を何とか維持できる。通常の活動に復帰した患者は、活動を制限している患者より健康になったと感じ、鎮痛剤の使用が減少し、苦痛が少なくなる(★★)。http://amznto/Hk8veA
……たとえ慢性腰痛であったとしてもどうにかこうにか動けますから、できるだけ普段どおりの生活に戻るように努めましょう。それが慢性腰痛の治癒を促してくれるのです。

■腰痛は通常加齢に伴って増加することはなく、50〜60歳以降はわずかに頻度が低下する。しかし慢性腰痛を有する高齢者は症状がより持続的になり、活動制限が多くなることがある(★★)。http://amzn.to/Hk8veA
……歳だから腰が痛くなるというのはまったくの迷信です。まずその時代遅れの考え方・先入観を頭の中から消去しなければなりません。さもなければノーシーボ(負の自己暗示)で腰痛発症率が上昇し、歳だから仕方がないと活動量が低下して慢性化する危険性があります。

■定期的に処方されたNSAIDは非特異的腰痛を効果的に軽減する(★★★)。異なるNSAIDは非特異的腰痛の軽減に同様の有効性を示す(★★★)。NSAIDの神経根性疼痛に対する軽減効果は比較的弱い(★★)。http://amzn.to/Hk8veA
……NSAIDとは非ステロイド系消炎鎮痛剤で、バファリン、エスタックイブ、ロキソニン、ボルタレンなどといった処方薬の他に薬局でも買える市販の鎮痛剤です。

■短期間(数日〜数週間)のうちに認知行動療法に基づいて段階的再活動化を実施した場合と、段階的再活動化を単独で実施した場合を比べると、疼痛と活動障害の回復速度に差はないが、慢性的な活動障害の発生率と失業率が低下する(★★★)。http://amzn.to/Hk8veA
……説明の仕方が悪いですね。認知行動療法に基づく段階的再活動化のほうがより有効だということです。

 N  E  W  S

NEWS ■ 厚労省、新型コロナ関連 「生活の不安や悩み」 相談窓口開設

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、厚生労働省は3月18日、生活の不安や悩みの相談を受け付ける専用窓口を、31日までの期間限定でインターネット上に開設した。
窓口はチャット形式で、匿名で利用できる。専用ホームページ(HP)に悩みを書き込むと、民間団体の相談員が返信する。内容は第三者に公開されないようになっている。1回の利用は1時間程度としている。小中高校の一斉休校で影響を受けた子どもたちの利用も想定しており、同省の担当者は「生活リズムが崩れたり、友だちと会えないことでストレスがたまったりしたら、ため込まずに相談してほしい」と呼びかけている。
受け付けは、平日は午後6時、土日・祝日は同2時からで、いずれも同9時半まで。詳しくは専用HP(https://lifelinksns.net/)へ。(3/18 毎日新聞)

NEWS ■ 「咳、移りません」 花粉症・ぜんそくバッジに注文殺到

花粉症によるくしゃみ、ぜんそくの咳が、新型コロナウイルスによるものと誤解されないようにするバッジが飛ぶように売れている。川崎市中原区のハンドメイド雑貨店「エピリリ」では注文が1日千件を超え、店を臨時休業するなどして発送作業に追われている。
エピリリで取り扱っているのは、ネットでも販売されている「ぜんそくマーク」と呼ばれるバッジ。店主で消しゴムはんこ作家の牧野美和さんも店で扱うことを決め、知人とともにデザインしてバッジに仕立てた。注文を受けてからの手作りで、「このセキうつりません」「花粉症です」といったメッセージが書かれ、キーホルダータイプもある。
もともと日に5、6個売れていた商品だが、新型コロナウイルスをめぐる電車内のせきのトラブルが報じられると、注文が日に約30個に急増。やがて千個を超え、生産を知人の工場に依頼することになった。(3/18 朝日新聞社)

NEWS ■ 「また歩きたい」を支えるジム。脊髄損傷者の機能回復

脊髄を損傷した人の運動機能回復に特化した九州初のトレーニングジムが3月20日、福岡市博多区にオープンする。開設するのは東京と大阪で同様のジムを運営する「J-Workout」(東京)。訓練は神経学や運動学を根拠にしたトレーニング理論に基づく。専用器具で全身に負荷を与え続け、まひ部分の筋肉を刺激して機能低下を抑止。損傷を免れた神経や筋肉を鍛えて身体能力を強化し、全体として運動機能の向上を図る。
東京と大阪の利用者は、下半身まひの人を中心に約500人。半年から数年間にわたって週1〜3回の訓練を継続した結果、約100人が距離の個人差はあるものの自力や補助具を使って歩けるようになった。車いすの状態から登山を成し遂げた人もいる。歩行に至ってなくても起立や寝返りが可能になり、衣服の着脱がしやすくなるなど生活の質向上につながっている。学生時代に運動中の事故で脊髄を損傷した伊佐さんも付き添いがあれば約7メートル歩けるまでになった。
代表の伊佐さんは「歩行を目指し成功体験を重ねるうちに趣味や進学、仕事に積極的になる人が目立つ。多くの人に訓練の効果を実感してもらいたい」と話す。(3/18 西日本新聞=部分)

NEWS ■健康の秘訣は良好な人間関係

支え合う相手がいること、特に結婚が健康に有益であることは、これまで数々の研究で示されてきた。2017年に「Journal of the American Heart Association」に発表された研究では、未婚の心疾患患者は、既婚の心疾患患者に比べ約4年後に心筋梗塞を起こすか、心血管疾患により死亡する率が52%高いことが示された。国立健康統計センター(NCHS)によると、既婚者の死亡率は、結婚経験のない人、離婚した人、配偶者と死別した人に比べて低いという。そのほか、恋人の写真を見るだけで、気分や痛みの制御に関わる脳の領域が活性化することや、パートナーのことを考えることが血糖値にプラスの影響を及ぼし、活力の上昇をもたらすことを報告する研究もある。
ハーバード成人発達研究を率いるRobert Waldinger氏は、良好な家庭内関係が、恐怖や怒りを感じたときに生じる闘争・逃走反応を和らげてくれるという仮説を述べている。「嫌なことがあった日でも、家に帰ってそのことを話せる相手がいれば、気持ちが軽くなっていくのを感じるだろう」と同氏は話す。手を握ったり抱きしめたりといったスキンシップもストレスホルモンを低減させることが、研究で明らかにされている。
同氏によると、必ずしも結婚や同居をしていなくても、必要なときに支えてくれる人がいると分かっていることが重要だという。根底に愛情があれば、言い争いが結婚の破綻につながることはない。「大切なのは相手との相性。人との関係において、頻繁な連絡や親密性を重視する人もいれば、そうしたことをさほど重視しない人もいる」と同氏は述べている。(3/13 HealthDay News=部分)

NEWS ■喫煙者の高い認知症リスク、禁煙3年で軽減

禁煙と認知症リスクの変化について米国のARIC研究の結果が報告されているが、今回、東北大学のYukai Lu氏らが、日本の前向き研究である大崎コホートにおける縦断的分析の結果
を報告した。本研究では、3年以上禁煙した場合、認知症発症リスクは非喫煙者と同じレベルまで低下することが示唆された。European Journal of Epidemiology誌オンライン版に掲載。
本研究の対象は65歳以上の日本人1万2489人で、5.7年間の追跡調査を実施した。2006年に喫煙状況およびその他の生活習慣の情報を質問票にて収集した。認知症発症に関するデータは、公的介護保険のデータベースから取得した。Cox比例ハザードモデルを使用し、認知症の多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)を推定した。主な結果は以下のとおり。
・6万1613人年の追跡調査の間に、認知症が1110例(8.9%)に発症した。
・現在喫煙者は非喫煙者に比べて認知症リスクが高かった(HR:1.46、95%CI:1.17〜1.80)。
・元喫煙者の認知症リスクは、禁煙2年以下では依然高かった(HR:1.39、95%CI:0.96〜2.01)が、禁煙3年以上では喫煙による認知症リスクの増加が軽減された。禁煙年数ごとの多変量HR(95%CI)は、禁煙3〜5年で1.03(0.70〜1.53)、6〜10年で1.04(0.74〜1.45)、11〜15年で1.19(0.84〜1.69)、15年以上で0.92(0.73〜1.15)だった。
(3/3 ケアネット)

NEWS ■人間の足はなぜアーチ形に進化したのか、新たな解明(1)

進化生物学者は100年以上にわたり、人間の足の精巧さに見とれてきた。人間が無理なく直立歩行できるのも、足がもつ特徴のおかげだ。最近の研究で、足の甲を形作る横方向のアーチがヒトの運動性に大きな役割を果たしていると判明、2月26日付で学術誌「ネイチャー」に論文が発表された。この発見により、足の進化について生体力学的な研究が進むだろうと専門家は言う。また、より高精度なロボットや義足の開発につながる可能性があるうえ、整形外科的な治療や、靴の設計の改良にも役立つかもしれない。
「足根骨横足弓」という足の甲の横アーチは、現生人類では、足の剛性の40%以上がこの横アーチによるものだという。また足の裏には「内側縦足弓」という土踏まずを形成する縦方向のアーチがあることはよく知られている。足の甲の横アーチは、この足の裏の縦アーチと連携し、人間特有の足の剛性を生み出している。そのおかげで、人間は倒れることなく体を前に蹴り出すことができる。
アーチと剛性の関係を理解するには、紙幣を使えば簡単だ。平らに置き、短辺を曲げて中央を盛り上げ、トンネルのような形にすると、横アーチが形成される。そのアーチの真ん中を指で押すと、抵抗や剛性があることがわかる。これと同様の原理がヒトの足にも働いている証拠を研究チームは探していた。ちなみに、カットされたピザの耳(弧)がU字形になるように丸めて持つと、先端が垂れ下がらずに食べやすくなるのも同じ理由だ。
そこで、2人の解剖用遺体から得られた足を使い、曲げ試験を行った。生体では、横アーチの役割だけを取り出して測定するのは非常に難しい。だが遺体の足なら、中足骨と呼ばれる長い骨の間にある弾性組織を取り除き、横アーチを平らにしてしまえば、足の剛性に対する横アーチの効果を直接測定できる。(この項(2)へつづく)

NEWS ■ 人間の足はなぜアーチ形に進化したのか、新たな解明(2)

次のステップは、人間の進化における横アーチの役割を理解することだった。そこで研究チームは、現生人類の足のアーチと絶滅したヒト族の化石を比較することで、人類の足の歴史を再構築する数理モデルを作り上げた。
すると推測どおり、横アーチの出現は、人類が二足歩行になるうえで重要な要素だったことがわかった。横アーチをもつヒト族は、現生人類が誕生する300万年以上前に出現した。その後、今から180万年前に縦アーチも加わった。この2つのアーチを併せもつことで、マラソンを走ったりジャンプしたりするのに必要な剛性が生み出された。
専門家は、横アーチの剛性を初めて定量化した今回の研究の価値を評価する。「横アーチの存在については昔から知られていたが、測定する方法がなかったのです。そのため横アーチが足の全体的な機能にどう影響するのか、わかっていませんでした」と、人間の足の進化を研究する米ニューヨーク州立大学バッファロー校の人類学者ニコラス・ホロウカ氏は話す。「人間の足の独特な形状が、特異な二足歩行を可能にする仕組みについて、この研究は我々の理解を大きく進展させるでしょう」
今回の研究は足の健康へも応用が期待できる。例えば、ロボットや義足の設計のほか、整形外科手術によって痛みが緩和する患者とそうでない患者がいる理由の解明などに役立つ。また将来は、靴職人が顧客の足をスキャンすることで、足の全体的な構造に基づき、一人ひとりに合わせた提案ができるようになるかもしれない。(2/29 ナショナル ジオグラフィック日本版)


次号のメールマガジンは2020年4月15日ごろの発行です。

(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ