エンタプライズ発信〜メールマガジン【№106】 2020. 2

人ごみを避ける、不要不急の外出はしない方がよい、と不穏不安な社会生活を余儀なくされている昨今の日本です。マスクの使用は新型コロナウイルスには効果がないと言われても、インフルエンザの季節は保険みたいなもので毎日つける人もいるわけで、まして花粉の舞う時節になり、マスク売り切れ、は心理的に冷え込みます。今時困るのは、電車やバス内でくしゃみをすることが憚れることです。まして両手がふさがっているときにしゃみの出る気配を感じると困りものです。周りの人は予期せず、防ぎようもなく飛んでくる鼻汁なんてまっぴらごめんのいい迷惑でしょう。くしゃみが出そうなのを止めたかったら、鼻を両の指でしっかり塞げば良い、と言われています。そのほか息を止めて、鼻の下(上唇)をしっかりつねる。鼻の神経を支配する三叉神経から脳にストップの信号が出るからと言われています。こっそりとくしゃみをこらえたいなら、口腔内の上部に舌を押し付けてみるのも良いとも。上顎神経および三叉神経はそこにも通っていますので、助けにはなるでしょう。しかし解決策の一助にはなりますが、口を閉じて鼻をつまんでくしゃみに耐えるのは、頭の中に圧力をかけ、組織損傷を引き起こしてしまいかねません。また喉や鼻などの気道以外にも、気道と関係の深い耳や脳、脊髄にも圧がかかることになるので、あくまで緊急策ということで…。公衆の面前で気になるのは、くしゃみのほかに咳もあります。止めようにもなかなか喉頭のいがいがは消失しません。急場の咳止めにはツボの「天突」を強めに押すと有用と言われています。天突の場所は鎖骨と鎖骨の間にあります。鎖骨の裏側へ指を入れる感覚でやや強く押しつづけると、咳以外にも痰止めや喉の痛みに効くそうです。ともあれ、困ったときの臨時ですので、いきなりやってもうまくはいかないかもしれませんが、車内の近傍の人から睨まれるのはイヤ、という人にはスマホにメモしておくことを勧めます。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く 〔最終回〕
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S

★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

【 総 括 編 】 『よく生きるとは、よく死ぬこと』

過剰医療の反省期へ

[太田] 点滴や胃ろうにも同じことが言えますね。消化する能力が弱くなってしまった人に、本人の意思に反して栄養を供給することはとても酷なことです。胃ろうに関しては3年前にやっと老年医学会が考慮を求めるコメントを出しましたね。
[安保] 胃ろうのような過剰医療に関して、このごろはやっと反省期に入ってきた気がしますね。胃ろうはやり過ぎだという空気が社会に出てきて、ホッとしたという感じですね。私が大学を卒業したころは胃ろうを作るという習慣はまだなかったんですよ。胃ろうが当たり前になったのは、その後20年くらいの話です。
[太田] 胃ろうが当たり前という時代がちょっと前までありました。医師から「胃ろうをしますか?」と確認を受けることもほとんどなかったような…。点滴で栄養補給できなくなったら次は胃ろう。胃ろうを拒否したら何を言われるかわからないという空気が漂っていました。
[安保] そういう時代がしばらく続きましたね。
[太田] だから「胃ろうをしないで」と言うには社会的コンセンサスが必要なんです。私も母親に関して胃ろうをするかどうか決断を迫られたことがあります。そのときは断ったのですが、胃ろうができないということは薬も使えないということなので、胃ろうを断った3日後に亡くなってしまいました。自分ではその方がいいと思って決めたのですが、いざ本人が亡くなってしまうと、自分が殺してしまったような妙な気分になりました。

老衰と肺炎は自然の摂理の範疇

[安保] 社会全体がそういう意識になってコンセンサスをとれるようにならないとなかなかむずかしい問題ですね。それから私は、胃ろうよりも壮絶な現場を見たことがあるんです。講演会で回った土地で見学した医療施設なのですが、100人ぐらいの寝たきりのお年寄りが、全員人工呼吸器をつけて死の訪れを待っていたんですね。救急医療で命を救うためなら人工呼吸器も許されるけど、この光景には唖然としてしまいました。
[太田] 完全に意識もない患者さんが、人工呼吸器で心臓を動かして呼吸をしているだけという状態ですか。
[安保] そうです。その施設では、ほかの病院がもてあました患者さんを引き受けていると言っていましたが、体育館のような大きな部屋に30床ほどの人工呼吸器とベッドが並んでいるのは異様な光景そのものでした。
[太田] 一度人工呼吸器を取り付けたら死ぬまで外すことはできないですよね。へたに取り外したら殺人罪で訴えられてしまいます。
[安保] 呼吸をしているだけで、意識も反応もない患者さんばかりだから、家族が見舞いに来ることもほとんどありません。そんな状態で15年間も放置されている人もいました。


連載vol.64

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

水中の情報伝達(つづき)

水溶液中の高分子上に等間隔で並ぶ帯電基があり、しかもその間隔がある数値の倍数であるとき、「フィードバック安定化」が起きる。水は、高分子の幾何学的構造を「刻み込んだ」構造を作り出すことによって、高分子を安定化させる。つまり分子の安定化には、高分子の幾何学的構造が水の動きに影響を与え、また水の働きが高分子の構造に作用するというフィードバックのメカニズムが関わっているということだ。
生体マトリックスは情報伝達のネットワークである。このマトリックスの周囲に規則正しく並んだ水分子は、陽子の流れを助けるサブシステムとしてネットワークの重要な一部を構成していることは周知しておくと良いであろう。

ミトコンドリア

動物の細胞内でエネルギー交換が行われている場所は、ミトコンドリアである。ミトコンドリアの中では糖を分解する代謝反応が起こり、糖に保存されたエネルギーを生体がいつでも利用できるように、アデノシン三リン酸(ATP)という身軽な分子に変換しているのである。大量のエネルギー変換を必要とする筋肉などの組織では、細胞が多数のミトコンドリアで満たされている。個々のミトコンドリア中では、高エネルギー状態の電子が分子から分子へと素早く移動している。実際には生体中のあらゆる組織で同様のエネルギー輸送が行われていると推測される。

エネルギーの流れ

西洋医学の立場からすると、生体マトリックス内のエネルギーの流れとは一体何なのかという疑問が生じることだろう。連続体に付随する水のネットワークや経絡を流れるエネルギーの正体は、何者なのか。このような疑問が生じるのは、筋収縮や他の生命活動に必要なエネルギーを作り出す代謝経路がすでに解明されているからである。ATPやクレアチンリン酸(CP)にはエネルギーレベルの高いリン酸結合があり、この結合が組織中で加水分解されると、保存されていたエネルギーが放出される。このエネルギーを利用して、アクチン線維とミオシン線維がピストン運動を行うことにより、細胞や生体全体のあらゆる運動が可能になる。

生体のエネルギー供給経路の解明は、たしかに現代生化学の偉大な業績の一つではあるが、筋肉におけるエネルギー供給の仕組みについては、広く認識されていないにせよ、いまだに根本的なところで解明されていない謎がある。筋収縮のメカニズムを調べている生化学者は、ATPとCPの加水分解という反応によって、筋収縮の際に発生するすべてのエネルギー(温度上昇)を説明しようとしてきた。しかし何年にもわたる研究の結果、リン酸結合の加水分解では、筋収縮に伴って発生するエネルギーの一部しか説明できないことがわかったのである。

このテーマに関する2つのレビューによると、さまざまな条件下で筋肉を収縮させる実験や何種類かの動物の筋収縮を調べた研究で、ATPやCP以外にもエネルギーを生成する仕組みがあることが確認されている。この未知のエネルギーは、測定や計算の誤りによるアーチファクトではなく、現代科学ではまだ説明できないエネルギー源が生体にはあることを示唆しているのだろう。(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊)


連載エッセイ 73☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


治療者の「志」(前編)

以前、セミナー後の懇親会で若い先生方とお話ししたときのことを思い出しました。その中に開業して1年目で経営的に苦労しているという先生がいました。私も経験がありますが、開業1年目はこの先どうなることかと不安がよぎることが多々ありました。私の場合、2年目、3年目と患者さんとのご縁と信頼関係で不安を乗り越えていくことができました。当時はインターネットの普及率が数パーセントの時代でしたので、現在のようにネットを通じて広告するというようなことはない時代でした。でも、開業してからの25年を振り返ると、広告ではなく、口コミによる信頼関係によって支えられたのだと思います。

あの苦しい時期をどのように乗り越えたのか、何が良かったのかは一言で答えることはできません。「運」が良かったから、あるいは「お陰様で」ということは言えると思います。でもその「運」をどのように創ってきたのかという観点で見れば、色々な要因があると思います。一つ言えることは、ハウツウ的なテクニックで患者さんが集まってきたのではないことははっきりと言えます。開業して間もない先生にとっては、何かいいきっかけやチャンスはないかと悶々としているのではないかと察しますが、コーチング的に言えば、答えはご本人が持っているのだと思います。

敢えて私の経験を振り返って見ると、なぜ、治療者【鍼灸師、柔道整復師、カイロプラクター(DC)】という職業を志したのか、そして、なぜ、カイロプラクティックの治療院を開業したのかという動機に邪な志がなかったかどうかだと思います。邪な志がまったくなかったのかと問われると、ないとは言い切れませんが、軸足としては高い志を目指していたと思います。私を支えてくれた父は、私の留学時代に長い手紙のやり取りの中で、人としての在り方を教えてくれていたように思います。また、整骨院修行時代でも、そこの院長が臨床家としての在り方や人としての義理や人情を教えてくれました。その教えには、どのように患者を集客するなどといった教えは一切ありませんでした。

さらに、治療院経営者としての在り方を学ぶために、患者さんから紹介していただいた経営人間学講座にも10年ほど参加し、中国の古典や帝王学などから解説された経営者としての在り方も学んできました。そこでもお金儲けの話などは一切ありませんでした。私が現在治療者として生かされているのは、運良く人としての在り方を教えてくれた何人かの恩師に巡り会えたお陰だと思っています。人間学だけでなく、治療に関係する学術的なことも継続的に学んできました。振り返ると「人間学」と「治療技術」を両輪のように熱心に学んだ時期は、患者さんも右肩上がりで増えてきていたと思います。

一昨年ごろより、社内でスタッフとともに「人間学」の勉強会を再開していますが、その勉強の深さに伴って、患者さんもだんだんと増えてきているのが分かります。なぜ「人間学」を学ぶことで患者数が増えるのか? 色々な要因があると思いますが、一つは、チームで同じテーマを話し合うことで、共通の理念、志が自然に生まれてくるのだと思います。人としての在り方を深く洞察して自分の言葉で語ることで自分を深く反省し、思考の枠組みの幅が広がってきます。その結果、自然に患者さんとのコミュニケーション力が変化して、マニュアル的に接するのではなく、心と心、魂と魂との触れ合いへと進化し、一人一人の患者さんのニーズを自然に察知できるようになるのだと思います。
人と人の触れ合いの質が高まると、必然的に来院してくださる患者さんの満足度も上がり、困ったことがあれば相談してくださり、知り合いに困っている人がいればご紹介してくださるのだと思います。治療者の基本は、治療技術も大切ですが、人としての在り方がそれ以上に大切で、常に磨きをかけていかなくては、治療者としての存在価値が上がらないのではないかと考えます。

連載…13

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

ヒーリング・プロセスにおけるお金とは

私たちはクライアントからセッション料金や対価をもらうことが、実際は彼らのヒーリング・プロセスの中で非常に重要であることを心に留めておかなくてはなりません。セッション料金をもらうことで彼らの私たちに対する、また私たちの彼らに対する責務を明確にしているのです。事前に私たちがどのような見返りを期待しているのか(金額など)をはっきりさせずにワークを行うと、クライアントは心穏やかではいられなくなります。

彼らが見返りとして何かを払うという面だけでなく、彼らにとっても大切なもの(このばあいお金)を支払うことによって自分自身の中でバランスをとれるという面を考えても、クライアントからお金を受けとるということは、彼らが治癒していくうえで非常に本質的なことです。米国のJerome Frankは、さまざまな種類の医療者(西洋医学の医師、また代替医
療の医師・施術者、呪術師など)の意識について研究しました。同氏は、効果的な治療行為には、患者やクライアントは見返りとして何か彼らにとって価値あるものを与えなければならないと話しています。彼らはその行為において何らかの犠牲を払わなければならないからです。例えば私たちの土壌では、新しい生徒が練習できるようにと自分の時間とエネルギーを自発的に提供したり、同僚とトレードでセッションを行ったりすることもありますが、普通はセッションをする/受け取るときにはお金をもらい/支払いますよね。

また、治癒までの責務において自ら犠牲を払うという考え方は、決して強欲な振る舞いや不当な料金請求を正当化するものではありませんが、そういった概念をもつことで私たちが適正な金額をもらうことに戸惑いをもたないで済むことになるかもしれません。犠牲を払えば、クライアントはトリートメントの価値を心底感じられるでしょうし、より積極的に効果を期待するようになります。多くのマニュアル・セラピストは、割引料金でワークを受けているクライアントは正規の料金を支払ったクライアントほど効果を得られていないことを発見するでしょう。

料金に関して明確にしておくことは、安全なプロの環境を築いていくうえで必要です。それは施術者やクライアントにとっても有益なのです。お金を請求したり受け取ったりすることで、クライアントや施術者がワークの価値を十分に知ることができます。施術者にとってお金はクライアントの感謝の気持ちを目に見える形にしたものです。クライアントにとって、それは自分たちの福利にためにどのくらい自分が投資したかを知るためのものなのです。
(出所:『エデュケーティド・ハート』The EducatedHeart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )

◆連載 最終回◆

『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く

孫 維良(東京中医学研究所所長)

「自信を取り戻すひとりあんま気功」

・精力の減退を食い止める
中高年になると、しだいに各種の老化現象に見舞われるようになりますが、男性にとっては精力の減退がよく言われます。しかし歳だからしょうがないと諦めるのは気が早すぎます。たしかに若いころとは同じようにはいかないにしても、ある程度、精力の減退を食い止めることができるからです。
ただし多く広告の出ている強壮剤に頼り過ぎるのは感心できません。強壮剤には血圧が上がったりさまざまな副作用を伴うものがあるからです。やはり最良の方法は副作用の危険が少ないあんま気功法でしょう。中国医学の考え方によると、精力減退は大切な生命エネルギーである気が滞ったり、気が減少することによって引き起こされる症状です。そこで体内の気の流れを良くして、精力の減退を防ぐ「回春気功法」を紹介しましょう。
①まず肛門を収縮させる動作を伴った呼吸法を行います。
両足を肩幅と同じ幅に開いて立ち、両腕は自然に両腿につけます。気をつけの姿勢ですね。肩の力を抜いて、全身をリラックスさせましょう。そしてゆっくり深呼吸をします。それは鼻から吸うのではなく、鼻と口の両方から吸います。
なるべくたくさんの空気を吸い込んで、口からゆっくり吐き出します。息を吸うときには胸と腹を思いきり広げ、踵をちょっと持ち上げるようにするとたくさん空気が入ってきます。また吸うさいには肛門をきゅっと収縮させるようにして、吐き出すときに緩めます。これを16回繰り返し、その後1分ほど休憩します。
②立ったままで、全身の力を抜き、足の指先をちょっとだけ曲げましょう。そして膝を少し曲げたり伸ばしたり、膝の屈伸をしながら、全身を上下に細かく震わせます。このとき、全身の内臓、筋肉、関節などすべてが震えているイメージを描き、できるだけ細かく震わせるようにしてください。回数は1分間に120回が理想です。
③最後に肩をまわす運動です。上体をくねらせながら、右肩、左肩を交互に大きく円を描くようにまわします。両肩をそれぞれ16回まわしてください。

気は人間が生きていくのに欠かせない生命エネルギーです。あんま気功によって健康を取り戻し、元気になった自分の姿を想像できたら、より大きな効果をもたらすことでしょう!
※本コラムは今回をもって終了いたします※


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(80)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■心理的・社会的・経済的因子は、慢性腰痛および活動障害において重要な意味を持っている。心理社会的因子は、治療とリハビリテーションに対する患者の反応に影響をおよぼす。http://amzn.to/Hk8veA http://1.usa.gov/I23gOD
……腰痛疾患は今やイエローフラッグ(心理社会的因子)を抜きに語れない時代になりました。いつまでも患部に目を奪われていると回復を遅らせることになります。一日も早く時代遅れの考え方を改めましょう。

■心理社会的因子はこれまで考えられていたより遥かに早い段階で重要な意味を持ってくる。http://1.usa.gov/HAlhGU http://1.usa.gov/HwO3ec http://1.usa.gov/IpOLGl http://1.usa.gov/Ir728U
……何度も繰り返します。1996年に発表された腰痛診療ガイドラインでこれだけイエローフラッグ(心理社会的因子)を重視するように勧告しているのです。教科書で習った時代遅れの考え方を一日も早くアップデートしなければ、結局は弱者である患者さんにしわ寄せがいきます。医療関係者は心して取り組んでください。加害者呼ばわりされないためにも、プロとして最低限の責任を果たしましょう。

■臨床的特徴の中には、慢性疼痛および活動障害のリスクファクターとなっているものが数多く存在する。心理社会的因子は、医学的症状および徴候よりも慢性化にとって重要なリスクファクターである。http://amzn.to/Hk8veA
……腰痛は何としても急性期の段階で解決しなければなりません。もし患部の生物学的損傷だと考えていたら、イエローフラッグ(心理社会的危険因子)を見逃してしまい、腰痛を慢性化させるだけでなく再発率も高めてしまいます。それを回避するためには、腰痛疾患(坐骨神経痛を含む)を「生物・心理・社会的疼痛症候群」として治療する必要があります。

■医学的管理は患者の臨床経過と転帰に大きな影響をおよぼす(★★)。初期管理には以下のものが挙げられる(★)。「徹底した病歴聴取と簡単な理学検査」「重篤な脊椎病変のレッドラッグがないことを再確認(ラベリングの回避)」。http://amzn.to/Hk8veA
……新たな腰痛概念に基づく医療では、レッドフラッグ(生物学的危険因子)が認められなければ、患者を不安にさせるようなレッテル貼り(病名・診断名)を避けるべきだとしています。

■「迅速な回復のために良好な予後に関する正確な情報を提供」「軽い運動は有害でないことを再確認」「日常の活動を維持するような現実的指導」「仕事に復帰するような現実的指導」。http://amzn.to/Hk8veA
……急性腰痛(ぎっくり腰)の初期管理は、トリアージと患者に正確な情報を提供することがきわめて重要です。ところが今の日本では画像検査に依存するだけならまだしも、患者には時代遅れの不正確な情報しか提供していません。こうした不適切な医療の犠牲になるのは患者なのです。

■適切な情報とアドバイスによって、患者の不安を軽減し、ケアに対する満足度を向上させることができる(★★)。http://amzn.to/Hk8veA
……不適切な情報とアドバイスで患者の不安をあおり、治療満足度を低下させる治療はもうやめましょう。まずは迷信や神話ではなく、根拠に基づく正確な情報を入手してください。ただしネットを使って日本語で検索してもヒットしません。

 N  E  W  S

NEWS ■ 1日10000歩歩いても体重増加を防げない

歩数だけを増やしても、体重増加防止には役立たないようだ、という米国・ブリガムヤング大学ほかからの報告。この研究は、推奨される歩数である1日当たり10000歩以上歩いた場合(25%刻みで)、大学新入生の体重と脂肪の増加を最小限に抑えるかどうか評価することを目的としたという。
対象者は大学新入生92名。3群にランダムに分け(1日10000歩、12500歩、15000歩)、24週間の期間、エネルギー摂取量と体重・体組成をフォローした。対象者は研究前、平均約9600歩歩いた。研究終了まで、10000歩の群では平均11066歩数、12500歩の群では平均13638歩数、15000歩の群では平均14557歩歩いた。
結果は、体重は歩数増加の影響を受けなかったという。しかしながら、身体活動パターンに良い影響が認められた。この研究により、3群のうち座位時間が、12500歩と15000歩の両群で大幅に短縮された。15000歩群では、座位時間が1日77分も短縮されたという。
(2/17 CareNET)

NEWS ■日照時間短い冬のうつ病…人工光浴びて症状改善

うつ病患者の中には、日照時間が短い冬などに、気分が落ち込んだり日中に強い眠気が出たりする人がいる。「冬季うつ病」(季節性感情障害)と呼ばれ、強い人工光を浴びる治療を行うと、症状の改善が期待できる。
日光を浴びる機会が少ないと、セロトニンという神経伝達物質が減る。この物質には、気分を落ち着かせる働きがある。冬季うつ病の患者は、光を浴びる量に敏感で、症状が現れやすいという。患者は、冬の日照時間が短い地域に比較的多くみられる。そのほか、日照時間が少なくなる梅雨時や、外出する機会が少ない生活を送ると発症する場合がある。国内の医療機関を対象に行った研究では、成人のうち、冬季うつ病が疑われる人は約2%だと報告されている。
主な治療法として行われているのが、患者に強い人工光を浴びてもらう「光療法」だ。一般的な居室の照明の20〜50倍明るい光を出すスタンド式の装置を使い、朝起きてから30分ほど光を浴びる。1分間に5〜10秒ずつ、光源を見つめる。網膜の光を感じ取る細胞が刺激され、脳に伝わると、生活リズムが整う。セロトニンの生成も増えると考えられている。海外のある研究では、この治療を受けた冬季うつ病患者の約6割に改善効果がみられた。薬による治療と同等の効果があると報告されている。光療法は、冬季うつ病以外のうつ病患者の治療法としても有効とされている。海外で行われた複数の研究では、不眠などの改善がみられた。日本うつ病学会のうつ病の治療指針では、薬を使った治療と組み合わせることで効果が高まるとしている。
(2/17 読売新聞)

NEWS ■1日4杯のコーヒーで体脂肪が減少

もし、あなたの今の目標が「やせること」であるなら、コーヒーを飲むと良いかもしれない。コーヒー摂取によって体脂肪が減る可能性があるとする新たな研究が報告された。詳細は「American Journal of Clinical Nutrition」オンライン版に掲載された。
シンガポール国立大学のDerrick Alperet氏らは、35〜69歳の過体重の成人126人をランダムに2群に分け、1群は1日に4杯のカフェイン入りインスタントコーヒーを摂取する群(62人)、他の1群はプラセボを摂取する群(64人)として24週間介入。その結果、グルコースクランプ法で評価したインスリン感受性は群間差が見られなかった(P=0.53)。ところが意外なことに、24週間後の体脂肪量はコーヒー摂取群がプラセボ群よりも-3.7%有意に低い値だった(P=0.006)。この変化についてAlperet氏は、「脂肪の減少は食生活や運動などの、いわゆるライフスタイルが変更された影響によるものではないようだ」と述べている。同氏は、コーヒー摂取による体脂肪の減少は、カフェインが代謝プロセスを亢進させた結果と考えており、それによってコーヒーを摂取していない状態に比べてより多くのエネルギーが燃焼され、体脂肪の減少につながった可能性を考察している。
カフェイン入りコーヒーを1日4杯、長期間飲み続けることにリスクはないのだろうか。この点について同氏はリスクでないと考えている。このくらいの量はこれまでに報告されてきた研究の標準的な量であり、多くの報告から、米国では平均的に1日4杯、ヨーロッパでは平均1日7杯のコーヒーが摂取されていると見られるという。
論文をレビューした米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのLona Sandon 氏によると、「コーヒー、より具体的にいえばカフェインが食欲や体脂肪に何かしらの影響を及ぼす可能性は長年にわたり注目されている。しかし、体脂肪をどのように減らすのか、その正確なメカニズムについては今も議論が続けられている」という。
(2/11 HealthDayNews)

NEWS ■パーキンソン病…踊って改善

難病のパーキンソン病(PD)の患者が、ダンスで笑顔を取り戻している。音楽に合わせて体を動かすことで症状の緩和が期待でき、リハビリに取り入れる施設もある。福岡大学の研究者が、医学的な効果について調査を進めている。同市早良区に昨年7月に開設されたパーキンソン病患者の入所施設「PDハウス野芥」では週1回、リハビリの一環としてダンスを取り入れている。
入所者約30人のうち約20人が参加。ハワイアンでゆったりと体を動かした後、60年代のロックナンバーで盛り上げる。入所者の一人、マニシアさんは「ダンスをするとポジティブになれる。生活の質が上がる」と語る。施設の職員は「体を動かさないと、どうしても痛みが生じるようになる。ダンスが症状の発現を抑えている」と話す。福岡大学医学部の坪井義夫教授(脳神経内科)は、昨年7月から半年間ダンスを続けたこの施設の入所者を対象に、運動機能や認知機能、生活の質がどう変わったかを調査。ダンスをしていない患者と比較する研究を進めている。結果は学会に発表する予定だ。坪井教授は、「症状が進んだ人でも予想以上にダンスに参加できている。普通のリハビリ以上に症状の緩和につながっているのではないか」と分析している。
(2/5 読売新聞=一部)

NEWS ■緑茶をよく飲む人は長生きできる?

中国医学科学院のXinyan Wang氏らが10万人超の中国の成人を対象に実施した研究で、緑茶を週3回以上飲んでいた人では飲む習慣がない人に比べ、心筋梗塞や脳卒中になる率が低く、50歳の時点での余命も約1年長いことが明らかになったという。「European Journal of PreventiveCardiology」1月オンライン版に掲載された。
解析の対象となった10万902人は、研究開始時に心血管疾患やがんに罹患していなかった。研究チームは質問票を用いて、対象者の飲茶習慣のほか、生活習慣や病歴などに関する情報を集めるとともに、体重、血圧、コレステロール値を測定し、緑茶の摂取量と心血管疾患および全死亡リスクとの関連を調べた。
中央値で7.3年に及ぶ追跡期間中に、心筋梗塞や脳卒中などのASCVDイベントが3,683件生じた。緑茶を週3回以上飲む人は、まったく飲まない人や飲む回数が週に3回未満の人に比べ、心疾患や脳卒中の発症リスクが20%低く、致死的な心疾患や脳卒中による死亡リスクが22%低く、全死亡リスクが15%低かった。さらに、緑茶を週に3回以上飲む人では50歳の時点で、冠動脈心疾患や脳卒中を発症するまでの期間が1.41年長く、余命も1.26年長いことも明らかになった。
これらの結果を踏まえWang氏らは、「緑茶、紅茶、白茶はいずれも同じチャノキに由来するが、紅茶に比べると緑茶はフラボノイドと呼ばれる抗酸化物質の含有量が多い。また、実験では、緑茶抽出物が炎症を鎮め、血管および心臓の細胞の機能を向上させることも示されている」と説明している。
(2/5 TMS-net)

NEWS ■がん患者、20年で6割増も…中低所得国で顕著とWHO

世界保健機関(WHO)は「世界がんの日」の2月4日、今後20年間で世界のがん患者が6割増える可能性があるとして、特に増加が顕著になると予想される中低所得国での検診や治療体制の充実を訴える報告書を発表した。報告書によると、2018年にがん患者は世界で1810万人に上り、がんが原因で960万人が死亡。死者の内訳は肺がんが最も多く18.4%で、大腸がんの9.0%、胃がんの8.2%と続く。
がんは30〜69歳の年齢層で、感染症を除いた死因の約3割を占めている。2000〜15年にこの年齢層でのがんによる死亡率は、早期診断や治療が充実している高所得国では20%減らすことができたが、低所得国では5%減にとどまった。中低所得国では、今後20年間でがん患者が8割以上増加するとみられている。19年には高所得国の9割以上で、がん治療が公的医療で賄われているのに対し、低所得国では15%にとどまっている。
WHOは喫煙を控えることや、肝臓がんを防ぐためのB型肝炎ワクチンの接種も勧めている。また、早期発見に向け誰もが健康診断や治療を受けられる制度整備が必要と訴えている。
(2/4 共同通信)

NEWS ■ 30代の平均睡眠時間「6時間未満」は47%

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2018年)によると、ぐっすり眠れない日本人の多さに驚かざるを得ない。同調査では性別・年齢別に「1日の平均睡眠時間」(20歳以上)をまとめている。男性では30、40、50代が眠れぬ世代。まず30〜39歳では「5時間以上6時間未満」が33.4%、「5時間未満」も13.6%おり、合わせて47.0%が6時間未満。40〜49歳では同36.6%と9.1%で合計45.7%。50〜59歳でも同35.6%と11.0%で同46.6%。これらが平均睡眠時間“6時間未満”のグループで、3世代とも他の世代より頭ひとつ抜けていた。また女性では、50〜59歳代が1世代突出した眠れぬ世代。男性同様に「5時間以上6時間未満」が41.7%、「5時間未満」は12.3%もおり、合計54.0%が“6時間未満”だった。
厚労省は日本人の睡眠時間が短い理由として、働き方改革でも課題となった「労働時間の長さ」「通勤時間の長さ」を指摘している。なるほど、どちらも日本人サラリーマンの宿命と言っていい。加えて近年は「スマホのブルーライト」が睡眠時間減少の一因とする声も増えてきた。寝る直前までSNSのチェックやネット検索をしていると、安らかな入眠の妨げになるというわけだ。
100万人以上の睡眠習慣を10年間にわたり追究したアメリカのある調査では、1日当たりの睡眠時間が「6時間未満」のグループは、同「6時間以上8時間未満」のグループと比べて、死亡リスクが12%も高くなったという。同「8時間以上」のグループでは、同様に30%も高かった。寝足りないのもマズイが、寝過ぎはもっと危ないということか。
(1/31 日刊ゲンダイ)

NEWS ■日本人約3万人を調査。通勤スタイルを変えるとやせる

栄養科学と身体活動に関する国際的な専門誌の電子版に、通勤スタイルの変化と、身長・体重から算出される体格指数(BMI)の関連性を検討した研究論文が、昨年12月6日付で掲載されました。なお、体格指数は18.5〜25.0未満が普通体重とされ、25.0以上で肥満と定義されることが一般的です。
この研究では、30〜64歳の日本人2万9758人が対象となりました。被験者の健康診断記録から体格指数が算出され、5年間にわたる通勤スタイルの変化と、体格指数の変化の関連性が検討されています。通勤スタイルは、徒歩・自転車による通勤(活動的な通勤)、公共交通機関による通勤、車・バイクによる通勤(非活動的な通勤)の3つに分類されています。
5年間の体格指数の変化は、車・バイクによる通勤を継続していた人の0.19増加と比べて、徒歩・自転車もしくは公共交通機関による通勤から、車・バイクによる通勤に切り替えた人(非活動的になった人)では0.24増加と、より多く増加するという結果でした。他方で、車・バイクによる通勤から、徒歩・自転車もしくは公共交通機関による通勤に切り替えた人(活動的になった人)では0.1増加にとどまり、車・バイクによる通勤を継続していた人と比べても増加量が少ないことが示されました。この研究では活動的な通勤スタイルに切り替えることで、体格指数の減少が示唆されています。体重が気になる方は、通勤スタイルを少し変えてみるとよいかもしれません。
(1/21 日刊ゲンダイ)


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(編集人:北島憲二)


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