エンタプライズ発信〜メールマガジン【№83】 2018. 3
マラソン競走のベストシーズンは冬場と言いますが、先ごろ設楽悠太選手が東京マラソンで2時間6分12秒で走り抜け、日本記録を16年ぶりに塗り替えました。やはり冬のマラソンです。このほか福岡国際マラソン(12月)、奈良マラソン(12月)、勝田全国マラソン (茨城、1月)、 大阪国際女子マラソン(1月)、別府大分毎日マラソン(2月)など、大きな大会はいずれも冬に行われています。2012年に「フルマラソンの記録に影響する環境要因」というテーマの学術論文が発表されました。研究対象になっている人数はなんと約180万人ですから、かなり大規模な調査です。研究結果は、最も影響が大きい環境要因は気温であるという結論となっています。この論文では10℃以下(6℃〜8℃)が最もパフォーマンスが向上すると記されています。走行中に体から出る熱を、冷たい空気が冷却してくれる10℃以下が良いということなのでしょう。国内の有名なマラソンレースはテレビ中継などの要素から正午あたりのスタートが多いのですが、東京マラソンは9時10分です。約3時間の時間差があります。今回の大会では10時の気温は6.0℃、14時の気温は7.5℃であったというので、レースを通して最適気温に恵まれたのですね。ただ一顧してみると、天候、風などの気象条件も記録に左右する要因ですし、自分の調子の具合もあるでしょうから、狙おうと思って記録が出るとはかぎらない。この辺が勝負や記録更新の妙と言えるでしょうか。しかし忘れてはならないのは、マラソン大会に出場して走ることは記録狙いだけではないと思います。たとえば暑い時期の大会(北海道マラソンほか)に出て、地域特有の風光明媚な自然を味わいながらランニング仲間と一緒に走るのも、また一興ではないでしょうか。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【4】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【5】伝統医学をシルクロードに求めて 〜くらしのなかの中医学〜
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S
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Information
初めての中国は1967年夏。それから半世紀、50年余が経過した。この間、訪中した回数は300回を越え、大陸にある32の省市区と台湾、その全てに足跡を印した。そうした体験を回顧しつつ、現在や未来の日中関係も考えてみたい。
- 開催日:3月17日(土)14時から(懇親会17時から)
- 場 所:国際善隣会館5階 会議室(東京都港区新橋1-5-5)
- 聴講費:500円
- 問合せ:080-5373-7055 [e-mail]
〈池上正治氏〉 著訳書に『気で読む中国思想』『龍の百科』『仙境の地・青城山』『天山山脈薬草紀行』『体系 中国老人医学』など計70余冊。本メールマガジンでもコラムを収
載中。
⑩
老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)
運動や食事は年齢によって変えるもの(つづき)
[安保]もちろん動物もミトコンドリア系と解糖系の二つのエネルギー回路を使い分けているけれど、人間より偏りがありますね。
[太田]それぞれの動物が自然環境に適応して生き延びるために備わった偏りが、エネルギーの使い方を規定しています。その点、人間は二つのエネルギー回路をうまく使い分けることができます。
[安保]人間の場合は成長過程や年齢によってエネルギーの使い方に偏りがあり、歳をとることで変化していきます。その違いをよく理解しておくと、健康に生きるためのヒントがつかめるのではないかな。
[太田]そのとおりだと思います。運動の仕方も食事の摂り方も、年齢によって変えていった方がエネルギーを効率よく作って活用できます。
体は冷やすことも必要
[安保]人間の細胞で、ミトコンドリア系と解糖系の違いを最もよく表しているのが、卵子と精子の違いだと思います。成熟した一つの卵子にはミトコンドリアが10万個も集まっています。卵子は断トツでミトコンドリアが多い細胞ですよね。
[太田]ほかにミトコンドリアが多いのは筋肉(赤筋)、心臓、脳の神経細胞などですが、一つの細胞あたりでせいぜい数千個単位ほどでしょう。だから卵子は特別にミトコンドリアが多いですね。
一方の精子はミトコンドリアが非常に少ないです。100個くらいじゃないかな。でもこれは当たり前なんですね。精子が活発に分裂して増えるためには、低温と低酸素という環境が必要で、ミトコンドリアが多いと分裂抑制遺伝子が働いてしまうので、逆に不都合なわけです。
[安保]これが解糖系の世界ですよね。解糖系の細胞は温め過ぎてはいけない。だから精巣は体の外側に出て、常に低温に保たれています。
真冬に雪の中で男衆がフンドシ姿で行う祭りがありますが、あれは子孫繁栄を願ったものだろうけど、昔の人は体を冷やすことも必要だということを本能的に感じ取っていたのではないでしょうか。
[太田]人間の精巣が体内にあるとすれば、深部体温で38℃ぐらいに保たれます。これはミトコンドリアが活性化しやすい温度で、解糖系とは逆の世界です。ちなみに水の中に棲む魚類はもともと体温が低いので、オスの精巣とメスの卵巣は同じ場所にあります。自然はうまい具合にできていますね。
[安保]皮膚も細胞分裂が盛んで解糖系の世界だね。だから温めてばかりいると皮膚が弱くなる。私がこのことに気づいたのは、寒い冬の時期に湯たんぽをして寝ていたときのことです。夜中にふと目が覚めてしまったのですが、湯たんぽを置いてあった皮膚をぼんやりと眺めると、その部分がとても薄くなっていたんですね。
[太田]人体には解糖系のエネルギー活性でうまく機能する部分もあるということですね。筋肉で言えば瞬発力を発揮する白筋もそうです。
連載vol.41
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
外科もエネルギー医学
ところで外科医や心理療法士、あるいは内科医や家庭医はエネルギー論から何を学ぶことができるのであろうか。すべての医学がエネルギー医学であるとは、いったい何を意味しているのであろうか。例えば外科の治療法について考えてみよう。手術に使われるメスは、治療のために人体を切り開く道具として、エネルギー医学的に極めて重要な意味を持つ。メスの鋭い刃が組織を裂いていくとき、細胞や分子や原子のレベルで必ず何かが起きているはずだ。
切開という行為は外科医学と切り離せない関係にあるが、その物理学的およびエネルギー的原理や細胞生物学的意義についてはほとんど知られていない。切開についてより多くの知識が得られれば、メスのデザインにも改良をくわえることができる。近年では血管の多い組織からの出血を素早く止めたり、肺胞からの空気漏れを防ぐことができるようになった。最新の電気メスでは伝導溶液を介して伝わる高周波電流が組織を凝固させることが可能だ。
臨床医学は、広範な領域をカバーする「エネルギー学」の一部として存在している。例えば筆者が住む町の病院では、手術の前後にレイキ療法を行うことによって患者の不安を取り除き、患者に与えるショックの軽減に努めている。
レイキなどのエネルギー療法によって何かが起こるのなら、それを知りたいと思うのは医師として当然のことだろう。セラピストは、心休まる音楽を流しながら、患者のことだけを考え、気遣い、慰めているだけなのだろうか。それとも患者とセラピストの間に、生理学的変化をもたらす相互作用が起きているのだろうか。第一印象的にはそのような作用などありえないと思うかもしれないが、以下で少し検証してみよう。
エネルギーの象徴
種々のエネルギー療法に共通する手法の一つが、特定の概念のシンボル化である。例えば今記したレイキで用いられている「大光明」というイメージシンボルだ。これには免疫系の活性化をはじめ、さまざまな効果があると言われている。
理論的に考えると「紙に描かれたシンボルを見るだけでどうして生理学的作用が起きるのか」と反論したくなるだろう。しかし答はいたって簡単だ。増幅である。わずかな刺激が大きな作用をもたらすのだ。そのメカニズムを探ってみたい。(出典『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊))
◆連載3◆
『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く
孫 維良(東京中医学研究所所長)
前号に記したように気と気の対話ができないと治療効果がないので、筆者はあんま法とは呼ばずに、あんま気功法と呼ぶようにしているのです。また最近はブームに乗って、気功という言葉が独り歩きしてしまったため、あんま法と(養生)気功法は別々の療法だと誤解されているのですが、実はそうではありません。あんまの方法と気功の方法は理論において同根であり、歴史的に見てもあんまと気功は同じ根から咲いた二つの花なのです(気功を指す行気という古い名称が同時にあんまや鍼による治療を意味していたことを思い出していただければわかると思います)。
気は人間が生きていくうえで欠かせない生命エネルギーです。昔の中国の医学書で、人間の命はすべて気に依存しているのだと記してあるほど重要なエネルギーです。けれどもそれは人間の体内にだけ存在するエネルギーではなく、われわれ人間を取り巻く自然、それも動物だけでなく、樹木も花も、すべて命あるものに存在するエネルギーであることはご承知のとおりです。
人間の生命エネルギーである気は、それが何から人間に与えられているかという起源の違いによって2種類に大別されます。一つは人間が生まれた瞬間に両親から受け継いだ気で、これを先天の気と言います。この気は先天的なものであるだけにその後の人生において減ることはありますが、増える可能性はありません(歳をとるにつれ先天の気が残り少なくなり、生命力が衰えてきた状態を老化現象と言います)。
一方、人間は日々豊かな自然の恵みを受けて生きています。新鮮な空気を吸い、水を飲み、たくさんの海の幸、山の幸を食べてエネルギーを補給しています。この人間が日々の生活の中で補給しているエネルギー、空気、水、食料から新たに得たエネルギーを後天の気と言います。後天の気はその人の心がけしだいで増やすこともできる気です。
そして先天の気は主に腎に蓄えられると考えられているため、腎を「先天の本」と言い、人間が飲んだ水分と食べた食物は主に脾の働きによって消化・吸収され、吸収された栄養分はやはり脾の働きによって全身に運ばれていくと考えられているため、脾のことを「後天の本」と呼んでいます。
後天の気はさらに3種類に分けられます。自然の空気から生まれた清気、飲食物のエキスから生まれた穀気、その両者が結合してできた宗気の3種類です。
このように、父母から受け継いだ先天の気に3種類の後天の気が合流して一つのものとなり、人間の体内を駆け巡っています。もちろん無秩序に駆け巡っているのではなく、一定の法則のもとに、定められたコースを巡っているのです。(つづく)
連載エッセイ 51☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
素直さ」で健康を創る
「素直さ」は人間の成長においてとても大切である、と一流の人の賢人たちは説いています。理屈や言い訳をせずに素直に修行に励む子は吸収が早く伸びていく。問題に直面しても、素直にものを見ていくことで解決の糸口が見えてくる。
1000年以上もの昔、設計図や重機などがない時代にどうして東大寺や薬師寺などのような洗練された建造物が建てられたのでしょうか? 宮大工棟梁、西岡常一氏の内弟子の経験をもつ小川三夫氏は、「おそらく奈良時代の工人たちは何も心がとらわれることなく、素直に物事を捉えることで、あれだけの知恵を生み出したのでしょう。それを再建しようと思えば、やはり自分を無にして昔の工人に心を合わせることが大事です。そうすると『つくってやろう』というのではなく、『自然に作り上げていく』という感覚が分かってくる。私はこれまでの人生の中で、この素直さということをとても大事にしてきました」と述べています。
治療者が、「治してやろう」という心で患者さんに接するよりも、「患者さんと一緒に二人三脚で自然治癒力を引き出そう」というスタンスでアプローチした方が、治療効果も高くなる傾向があります。患者さんたちは治療者に治してもらうという感覚がごく自然なのかもしれません。しかし、「治す力」というものは本来患者さん自身がもっているものなので、治療者はその「治す力」を引き出す調整をさせていただいているのです。
身体に聴いて、誤作動の反応を引き出し、「治す力」をブロックしているところを調整していく。不思議と思われる「生体の反応」も素直に受け入れてくださる患者さんは治りも早いという傾向があるようですが、通常医療の理屈で疑問を抱く患者さんにとっては、その反応が腑に落ちない。すると自然治癒力も引き出されにくくなり、治りも遅くなる傾向があるようです。
素直な人に共通するのは、うまくいかないのは自分のせいで、周りのせいにはしないという傾向があります。ノーベル賞を受賞した山中伸弥氏は、「うまくいったときはおかげさま。うまくいかなかったときは身から出た錆」を信条にしてきたと言います。また、松下幸之助氏も「僕はな、物事がうまくいったときにはいつも皆のおかげだと考えた。うまくいかなかったときはすべて自分に原因があると思っとった」と言っていたそうです。
人は生きていく上で、様々な困難や壁に遭遇することがあります。そのとき、自責にするのか、他責にするのかで、その人の人生は大きく左右されるのではないでしょうか。健康問題に関してもそう思います。特に原因不明の慢性症状などは、基本的には自分自身の生活習慣や心の習慣が症状の原因に関係することが多いのですが、改善しにくい人は単に身体だけの問題にしたり、他者や周りに原因の矛先を向けたりする傾向があります。
他者や周りが作った原因だから、自分には変えられないと思い込む。もしも、自分にも原因の一部があると思うことができれば、そこから原因を変えることができますが、自分には全く非がないと思い込んでいるから他者次第、医者や治療者次第となり、自らの自然治癒力も変化しにくくなる傾向が生じます。
少しでも「病気や症状は自らが創ったものである」という前提に立てば、自分自身を省みて、変えるべきところを変えれば、病気や症状の流れも変わりやすくなります。
「過去と他人は変えられない。しかし、今ここから始まる未来と自分は変えられる」 エリック・バーンより。
《連載65》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
「あなたへの土産です。名前は何と言いましたか、甘酸っぱいやつで、台湾の友達は紹興酒に入れるとおいしくなると言っていましたが…」
ある小さな集まりで、ドクターB・Hから名指しでお土産をいただき恐縮してしまう。ピーカンの半分ほどの赤いラベルの貼られた缶には、黒字で「海将軍、高雄市四維二路三五七号」と印刷されている。上品なデザインである。
缶切りを必要としないpull up式の缶詰で、LIFT RING PULL UP AND BACKと英語で説明がある。そのとおりにするとカシャと缶のふたが切れて、中からは話梅(ホワ・メイ)が出てきた。白い粉をふいた上等な話梅である。
この小さな集まりは、インド伝統医学であるアーユルヴェーダを研究するものである。ただそのメンバーが多彩であるため、話題はしばしばアーユルヴェーダを飛び越えて予想もしないところへと逢着する。この会の代表であるドクターB・Hの台湾土産から、今回もまた「脱線」となりそうな気配である。
「その話梅とは何ですか?」
この会のメンバーは好奇心が強く、いい加減な解説では承知しない。しばらく考えた後、話梅の話をひとくさりすることになった。
話梅はその名のように、梅を材料として作るもので、製造の現場を見たことはないが、青梅を煙でいぶし、それに甘味料を加えて出来上がり、となる。
ホワ・メイという名は、文字どおりそれをお茶うけとして話しながらいただくことから話梅と呼ばれるようになった、という。日本では梅干しをお茶うけとして出す地方もあるが、この梅干しの味は、中国人には絶対に評判が悪い。
この話梅であるが、最近日本にも輸入され始めたが使われている甘味料が日本ではなじまないとかの理由で輸入がストップになった経緯がある。
話梅を材料とした食品や飲料もある。その味をキャンディに仕込んだ話梅糖(ホワ・メイ・タン)や夏の必需品である酸梅糖(スワン・メイ・タン)がある。酸梅糖は話梅と氷砂糖から作る上品な清涼飲料である。
これくらいの話でどうにか皆さんは満足してくれたようだった。話梅を入れた紹興酒は、実は初めて口にするが、たしかにコクが増して美味であるようだ。通は…などと意地を張らずに、お薦めは素直に試してみるものである。
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(58)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
ここから『成人の急性腰痛診療ガイドライン』が勧告する急性腰痛の診断法について紹介させていただきます。
AHCPR(アメリカ医療政策研究局)が作成した『成人の急性腰痛診療ガイドライン』では、急性腰痛の診断法について【初期評価】【画像検査】【その他の検査】ごとにエビデンスレベル(科学的根拠の確証度)を明記して勧告を出している。http://1.usa.gov/uhlYSO
■【初期評価】(1)患者の年令、症状の内容とその期間、仕事や日常生活への影響、過去の治療に対する反応は、腰痛の治療にとって重要である(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……まずは患者さんの話をよく聴けという勧告です。病歴聴取(問診)はいつも大切ですね。これだけで画像検査以上の重要な情報が入手できます。
■【初期評価】(2)がんの既往歴、原因不明の体重減少、免疫抑制剤や静注薬物の使用、尿路感染症の既往歴、安静時の疼痛増強と発熱は、がんや感染の可能性を示唆するレッドフラッグ(危険信号)とする。これらは50歳以上の患者で重要(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……ここで初めてレッドフラッグの概念が明確にされたわけですが、これは画像検査ではなく病歴聴取(問診)で拾い出せます。
■【初期評価】(3)馬尾症候群の徴候である膀胱機能障害やサドル麻痺を伴う下肢の筋力低下は、重大な神経障害を示唆するレッドフラッグ(危険信号)とする(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……もちろん48時間以内に緊急手術が必要な馬尾症候群もレッドフラッグです。医療関係者の方はけっして馬尾症候群を見逃さないでください。
■【初期評価】(4)外傷の既往歴(若年成人の高所からの転落や交通事故、高齢者や骨粗鬆症患者における転倒や重量物の挙上)は、骨折の可能性を念頭に置く必要がある(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……いうまでもなく骨折も生物学的問題ですからレッドフラッグです。骨折を腰痛疾患と考える人はいないでしょうが、腰痛を訴える高齢者の問診は慎重に。ただし骨粗鬆症による圧迫骨折は、痛みが出る場合と出ない場合があります。
■【初期評価】(5)心理的・社会経済的問題などの非身体的因子は、腰痛の診断と治療を複雑にする可能性があるため、初期評価の段階で患者の心理的・社会経済的問題に注意を向けることが推奨される(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……確証度Cとはいえ、1994年の段階で心理社会的因子(のちのイエローフラッグ)に気づいていたということです。
N E W S
筋力は、高齢者のメンタルヘルスにおける修正可能な保護的要因である。性差のエビデンスにおいて、メンタルヘルスとその関連は限られている。アイルランド・リムリック大学のCillian P. McDowell氏らは、握力とうつ症状やうつ状態との横断的および将来的な関連について、性差の評価を行った。Experimental gerontology誌オンライン版の報告。
対象は、50歳以上の一般成人4,505例(女性:56.5%)。筋力の尺度として、ベースライン時に、手持ち式の握力計を用いて利き手の握力(kg)を測定した。対象者は、握力別に三分位に振り分けられた。ベースライン時と2年後のうつ症状は、疫学研究用うつ病尺度(CES-D:Center for Epidemiological Studies Depression Scale)で評価し、16点以上をうつ病例とした。主な結果は以下のとおり。
・うつ症状は、ベースライン時では女性において有意に高かった(p<0.001)。
・将来モデルは、年齢、性別、腹囲、社会階級、喫煙、健康状態で調整した。
・男性におけるうつ病発症オッズは、三分位の中位で32.9%減少し(p=0.21)、上位で9.9%減少したが(p=0.74)、それぞれ有意な関連ではなかった。
・女性におけるうつ病発症オッズは、三分位の中位で28.5%減少し(p=0.13)、有意な差は認められなかったが、上位では43.4%の有意な減少が認められた(p=0.01)。
・全サンプルにおけるうつ病発症オッズは、三分位の中位で31.5%減少し(p=0.04)、上位で34.1%減少しており(p=0.02)、それぞれ有意な関連が認められた。
・性別と握力の相互の影響は、統計学的に有意ではなかった(p=0.25)。
著者らは「高齢者において、握力とうつ病との逆相関が認められた。この関連は、男性よりも女性において強かった」としている。(3/14 CareNet)
余暇身体活動(LTPA)と死亡リスクの関連を評価する研究は、ほとんど欧州系の健康人で実施されている。今回、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのYing Liu氏らが東アジアの健康人および慢性疾患患者のコホートで調査を実施し、アジアの中高齢者において、定期的なLTPAが健康状態にかかわらず死亡率低下と関連していることが示唆された。International journal of epidemiology誌オンライン版に掲載。
本研究では、アジアコホートコンソーシアムに含まれる9件の前向きコホートに参加した東アジアの46万7,729人でプール解析を行い、LTPAと全死因および原因別死亡率の関連を調べた。年齢、性別、教育、婚姻状況、喫煙状況の調整後、Cox比例ハザード回帰を用いてLTPAに関連するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。主な結果は以下のとおり。
・平均追跡期間の13.6年に、6万5,858人の死亡が確認された。
・LTPAが1時間/週未満の人と比較したところ、LTPA量と全死因および原因別死亡率との間に逆相関が認められた(傾向のp<0.001)。
・逆相関は、心血管疾患による死亡、がん以外による死亡で強かった。
・LTPAと全死因死亡率との逆相関については、重度でしばしば生命を脅かす疾患である、がん、脳卒中、冠動脈疾患の患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.81、95%CI:0.73〜0.89)と、糖尿病や高血圧などのその他慢性疾患患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.86、95%CI:0.80〜0.93)で認められた。
・性別、BMI、喫煙状況による明らかな修飾効果は確認されなかった。
(3/14 CareNet)
高齢期の歯の損失は、認知症の発症率を高める可能性があることが示唆されている。韓国・SMG-SNU Boramae Medical CenterのBumjo Oh氏らは、高齢期の歯の残存数と認知症発
症との関連について、現在のエビデンスからシステマティックレビューを行った。BMC geriatrics誌の報告。
2017年3月25日までに公表された文献を、複数の科学的論文データベースより、関連パラメータを用いて検索を行った。高齢期における認知症発症と歯の残存数に関して報告された複数のコホート研究における観察期間の範囲は2.4〜32年であった。高齢期における歯の残存数の多さと認知症リスク低下が関連しているかについて、ランダム効果のプールされたオッズ比[OR]と95%信頼区間[CI]を推定した。異質性は、I2を用いて測定した。GRADEシステムを用いて、全体的なエビデンスの質を評価した。主な結果は以下のとおり。
・文献検索では、最初に419報の論文が抽出され、最終的には11件の研究(試験開始時年齢:52〜75歳、2万8,894例)が分析に含まれた。
・歯の残存数が多い群では、少ない群と比較し、認知症リスクの約50%低下と関連が認められた(OR:0.483、95%CI:0.315〜0.740、p<0.001、I2:92.421%)。
・しかし、全体的なエビデンスの質は非常に低いと評価された。
著者らは「限られた科学的エビデンスではあるものの、現在のメタ解析では、高齢期において歯の残存数が多いほど、認知症発症リスクが低いこととの関連が示唆された」としている。(3/10 CareNet)
酒の飲み過ぎ(多量飲酒)はさまざまな疾患のリスクを高めることが知られているが、認知症にもなりやすくさせる可能性があるとの研究結果が「The Lancet Public Health」オンライン版に掲載された。フランスの認知症患者約110万人のデータを分析したところ、慢性的な多量飲酒が原因のアルコール使用障害が認知症、特に65歳未満で発症する若年性認知症の重要なリスク因子であることが明らかになったという。
この研究はトランスレーショナル・ヘルス・エコノミクス・ネットワーク(THEN、フランス)のM. Schwarzinger氏らが実施したもの。2008〜2013年にフランス都市部の病院に入院した患者のうち、認知症と診断された110万9,343人を対象に後ろ向きに解析した。その結果、慢性的な多量飲酒が原因とされるアルコール依存症や、アルコール依存症には至らないが飲酒による身体的あるいは精神的、社会的な問題がある「アルコール使用障害」があると、アルツハイマー型認知症を含む全ての型の認知症のリスクが男性で3.36倍、女性では3.34倍に高くなることが分かった。
また、解析対象者のうち5万7,353人は若年性認知症だったが、その56.6%(3万2,453人)にアルコール使用障害があり、多量飲酒は特に若年性認知症のリスク因子として重要であることも明らかになった。
Schwarzinger氏は「The Lancet」のプレスリリースで「認知症とアルコール使用障害との関連については引き続き検証する必要があるが、アルコールが脳の構造や機能に永続的なダメージを与えた結果ではないか」と考察。さらに、アルコール使用障害によってリスクが高まるとされている高血圧や糖尿病、脳卒中、心房細動、心不全は血管性認知症のリスクを上昇させる可能性もあること、多量飲酒者に多くみられる喫煙や抑うつ、低学歴も認知症のリスク因子であることを指摘している。(3/7 TMS-net)
厚生労働省は3月9日、健康上の問題がなく、日常生活が制限されることなく送れる期間を示す「健康寿命」について、2016年は男性72.14歳、女性74.79歳だったと発表した。前回調査の2013年と比べ、男性は0.95歳、女性は0.58歳延びた。男性のトップは山梨県の73.21歳で2013年に続き1位。女性は愛知県の76.32歳。
2016年の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳。健康寿命を超え日常生活に支障がある期間は、2013年より男性は0.18年、女性は0.05年短くなった。
都道府県別の順位では、第2位は男性が埼玉の73.10歳、女性が三重の76.30歳。最下位は男性が秋田の71.21歳、女性が広島の73.62歳だった。熊本県は地震の影響で調査は未実施。
健康寿命は3年ごとに算出され、今回は3回目。28万9470世帯約71万人を対象とした国民生活基礎調査を基に算出された。「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」などの質問の回答を基に推計した。
計3回の調査の平均では、男女ともに山梨県が第1位で、男性72.31歳、女性75.49歳。男性は2位が愛知、3位が静岡。女性は2位が静岡、3位が愛知だった。この3県では、健康に対する啓発活動が活発で、がん健診の受診率が高いことなどが要因として考えられるという。 (3/9 時事通信)
骨密度が低いことが脳動脈瘤と関係する可能性があることを示唆するデータが、韓国のグループによりJAMA Neuroに発表された。細胞外マトリックスの破綻は脳動脈瘤および骨の脆弱性と関係する。また、脳動脈瘤と骨粗鬆症は女性に多く、性ホルモンが影響している可能性がある。同グループは、骨密度と脳動脈瘤との関係を検討した。
対象は、2004年12月〜15年11月に同国で健康診断の一環として頭部MRAと骨密度検査を受けた1万2,785例(女性7,242例、平均年齢54.8歳)。骨密度は腰椎、大腿骨頸部、全股関節で測定した。また、骨密度減少リスクが高い閉経後女性と50歳以上の男性(8,722例)を対象に二次解析を行った。
472例(3.7%)で脳動脈瘤が確認された。解析の結果、低骨密度は脳動脈瘤のリスクと関係していた。年齢、性、血管危険因子を補正した多変量ロジスティック回帰分析では、骨密度第1三分位群の第3三分位群に対するオッズ比は腰椎が1.30(95%CI 1.03〜1.64)、大腿骨頸部が1.30(同1.03〜1.64)、全股関節が1.27(同1.01〜1.60)であった。また、線形回帰モデルでは、腰椎骨密度の第1三分位群では第2、第3三分位群と比べ有意に脳動脈瘤が大きかった。二次解析では低骨密度と脳動脈瘤との関係はより顕著で、-1SDを下回るTスコア低値は脳動脈瘤の数の多さと相関していた。(3/9 メディカルトリビューン)
同居するカップルの一方が減量に励むと、その減量効果は痩せようとしていないパートナーにも波及する可能性のあることが「Obesity」オンライン版に報告された。同居する130組のカップルを対象に、一方に減量プログラムまたは体重の自己管理を6カ月間行ってもらったところ、特に減量していないパートナーの3分の1で体重が3%以上減少したことが分かった。対象としたカップルをWeight Watchers社の減量プログラムに参加する群(65組)または体重を自己管理する群(65組)にランダムに割り付けて、カップルのうち一方だけに減量を行ってもらい、6カ月間追跡した。参加基準は年齢を25〜70歳、BMIを減量する人は27〜40歳、減量しない同居パートナーは25歳以上とした。その結果、特に減量していないパートナーでも、3カ月後には減量プログラム群で-1.5±2.9kg、自己管理群で-1.1±3.3kg、6カ月後にはそれぞれ-2.2±4.2kg、-1.9±3.6kgの減量に成功した。こうしたパートナーの32%が6カ月後には3%以上の減量を達成していた。また、減量を行った参加者は3カ月後には減量プログラム群で-3.4±3.8kg、自己管理群で-2.0±3.2kg、6カ月後にはそれぞれ-4.3±5.1kg、-3.1±4.3kgの減量に成功した。研究を主導した米コネチカット大学行動科学教授で減量の専門家であるAmy Gorin氏は、「要するに個人の行動変容によって周囲の人々の行動も変化するということだ」と指摘しつつ、「専門家の指導を受けたり、地域ベースや民間のプログラムに参加する、体重を自分で管理するなど減量にはさまざまな方法があるが、このうちどれを選択したとしても健康的な行動変容は周囲の人々にもベネフィットをもたらすだろう」と述べている。(2/28 HealthDaynet)
世界71の国と地域のがん5年生存率を比較した結果を英ロンドン大学や、日本の国立がん研究センターなどの国際研究グループがまとめた。日本は肺がんと食道がんの生存率が最も高い一方、欧米と比べて血液がんでは低かった。成果は英医学誌ランセット(電子版)に掲載された。各国から集めた計322のがん登録のデータベースを分析。胃や肺、女性の乳房や子宮頸部、男性の前立腺、成人と14歳以下の小児それぞれの白血病やリンパ腫など計18のがん種について、2014年までの15年間に診断された約3751万件を対象とした。条件をそろえた上で、データの精度が一定以上の国について5年生存率を比べた。日本は大阪や宮城、広島など16府県の約183万件が対象。データの精度が低かった肝、膵、大人の脳腫瘍を除く15のがん種について各国と比べた。2010〜14年の推計5年生存率は、日本は肺がん32.9%、食道がん36.0%で最も高かった。胃がんは60.3%で、韓国の68.9%に次いで高かった。乳がんや子宮頸がんなども高い水準だった。一方、白血病やリンパ腫などの血液がんは欧米に比べて生存率が低い傾向だった。33.3%の日本の白血病(成人)に対し、フランスやスウェーデンは60%近い。(2/20 朝日新聞)
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