エンタプライズ発信〜メールマガジン【№70】 2017. 2
「幸福を感じている人は長生きをする」とは昔からよく言われます。これまでにこの意識についての研究は、「幸せかどうか」という問いは最初に一度行われるだけで、何年、何十年にもわたって持続的に幸福であるかについては調べられることはありませんでした。そこで注目されているのが、『英国医学雑誌(BMJ)』の2016年クリスマス特集号に掲載されたロンドン大学による研究結果です。それによると、50歳以上の9365名(平均年齢63歳)に対し、2002年、2004年、2006年の2年ごと3回にわたり、その時の人生を楽しんでいるかどうかを聞き取り調査し、その後2013年まで追跡。それまでに死亡した人の数を参照することで、回答が死亡率と関係しているかどうかを調べました。その詳細は割愛しますが2006年から6年間の追跡期間中に1310名が死亡。解析の結果、人生が楽しいと報告した回数が多いほど死亡率が低いものでした。「人生を楽しんでいる」と報告したことが0回だったグループと比べると、2回あったグループでは17%、3回あったグループでは24%、死亡率が低かったそうです。幸福感が持続すると死亡率が低くなるというメカニズムはリサーチバイアスを含味すると推論の域を出ませんが、また幸福感とは主観的なものである前提に立ったとしても「自分自身の幸せ」や楽しさを感じられる人が、充足の享受者ということなのだと思います。本研究では、50歳代以降に楽しく幸せな期間が長く続くことが、その後の死亡リスクの低下に関連していると思量しています。しかし中年になって急に人生が楽しくなる人もなかなかいないでしょうから、本研究が示唆するポイントは「持続」が前面にあり、若いうちから自分の好きなことを楽しむポジティブな生き方が、老後の人生の楽しさを決める、というものではないでしょうか。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて 〜チベット医学
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
Information
毎年、ホメオパシーの啓蒙活動を推進している日本ホメオパシー医学会では、多くの方にホメオパシーについて知っていただくために、オープンセミナーを開催していく。2017年は、まずはじめに春季企画として東京(3月)、静岡(4月)、兵庫(5月)地区からスタートさせる。
◇講義内容:ホメオパシーとは/ホメオパシーの薬とは/ホメオパシーの診察とは/
ホメオパシーの適応は/ホメオパシーは安全か
◇開催日:3月5日(日)13:00〜14:30 <参加無料>
◇講 師:板村論子(MD., Ph.D., MFHom)
◇会 場:AP浜松町 Gルーム(東京都港区芝公園2-4-1芝パークビルB館地下)
◇参加資格:医師、歯科医師、薬剤師
◇参加ご希望の方は日本ホメオパシー医学会事務局宛E-mailで「参加希望」とお送り下さい。
info@jpsh.jp(URL:http://www.jpsh.jp)
連載vol.28
エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究
<小社編集部編>
《 Extra issue 》 〜エピローグ〜(最終回)
従来の科学的見解やエネルギー理論に対する誤解の歴史に鑑みれば、筆者の提示した内容を批判する向きもあろう。しかし科学と補完療法が対話の道を探り始めたことによって新しい時代が始まろうとしていることは、まぎれもない事実である。この対話の中心となるのがエネルギーなのだ、これまで別々の道を歩んできた両者の研究事績からエネルギーに関する多数の情報が得られた今、2つの分野を分ける根拠とされていた理屈はもはや通じなくなった。このような展開の原動力になったのは、従来医学の研究・診療・教育には取り入れられなかった有効な民間療法を、学問的に詳しく検証するべきだと主張した世論である。
本書において、すべてを書きつくすことはむろんできない。それはどの研究も「現在進行中」であるからだ。生命の謎を解くカギ、つまり新たな理論は毎日生まれている。研究者たちが図書館を訪れるたびに、同僚と会話をするたびに、あるいは学生から質問を受けるたびに新たな概念が表出することがあるからだ。
たとえば、エンディングを書いているこの間にも、オランダの研究グループが、人間の指に磁場を作用させると、組織に含まれる水、蛋白質および有機化合物が磁石のような性質をつくりだすことを報告した(反磁性と呼ばれる)。この効果は静止した2本の指の間で磁石の動きが停止するほど強力だという。
皮肉な話かもしれないが、どれほど強力な「ノイズ」電磁波の中からでも重要なシグナルを抽出する生体組織の能力が証明される一方で、それと同じ機能を備えた高感度の受信機器が先端技術を駆使して開発されている。このような受信機器の多くは、巨額の費用を投じ、地球からできるだけ離れた空間へと送り出されている。太陽系の果てに送られた受信機器は、惑星間風をはじめとする天体現象を記録するために使われているのだ。
私たちは、なぜこの素晴らしい受信機器を生命の研究に使用しないのか、なぜすべての人間から放出されるあらゆる種類のエネルギーを調べようとしないのか。そのような研究こそが、必ずや医学の発展に限りなく貢献することだろう。(了)(出典『エネルギー医学の原理』小社刊)
※次号から本書の発展版である『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊)から関連要素を収載していきます。
★連載エッセイ ㊳☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
再学習記憶による「治る力」を信じて健康を保つ
もしも、多くの慢性疾患や難病が、「脳の誤作動記憶」から生じているとしたらどうでしょうか? 脳の誤作動記憶とは、心と脳と身体の関係性で創られる誤作動記憶の事です。病気の原因が「記憶」にあるとすれば、記憶を書き換えれば新しい脳の神経回路が創られて症状や病気が改善されるということになります。脳には可塑性といって、脳梗塞などで一部の脳が損傷されても、リハビリ運動などの機能回復訓練でその機能を補う新たな神経回路が創られいるとうことが医学的にも知られています。
脳梗塞などによって受けた機能障害は目で見ても分かるような症状ですが、医学的な検査では原因が分かりにくい慢性症状もたくさんあります。その多くの慢性症状が、無意識的な脳の誤作動記憶によって生じます。原因が「記憶」という脳の神経回路にある場合、肉体内の構造異常を見つける医学的検査では判断することはできません。また、症状や病気の原因を探索する際、多くの医療では、肉体内だけの構造異常や機能異常を探そうとして、身体と心の関係性にまで目を向けることはほとんどありません。
「心が関係する?」と聞くと、多くの人は心がいいとか悪いとかに意識が向けられます。しかし、心がいいとか悪いとかで病気や慢性症状を引き起こすわけではありません。症状に関係する心のほとんどが無意識的な心です。つまり慢性症状のほとんどは無意識的な様々な誤作動記憶によって生じると考えられます。さらに広い視座に立てば、意識と無意識との心がうまくつながらないことによって不調和が生じてしまうということです。
誤作動記憶とは、知らない間に身につけてしまった間違った身体の働きの『クセ』といういい方もできます。クセとは、脳と身体に習慣的に学習された記憶の結果もたらされる自動的な働きです。そのクセは自分の意志とは無関係に作動してしまい、意識的にはどうすることもできません。このような病気や症状を引き起こすクセを改善させるためには、意識ではなく、無意識に働きかける必要があります。
無意識的に生じている身体の働きの異常を改善させるためには、まずは無意識の誤作動に対する検査が必要です。その検査をするためには、「身体を使った検査」、すなわち、身体に『刺激』を加えて、身体がどのように『反応』するかを診る「生体反応検査法」がとても大切になります。この検査法がスムーズに進められると、治療効果も高まり、症状も段階的に改善されていきます。慢性症状はこのような無意識的な心身の学習記憶によってもたらされた結果であるという前提に立てば、再学習し、記憶すれば治るのが当たり前ということになります。
本来、治る力は平等に与えられています。自分自身の「治る力」、再学習記憶できる力を信じて健康を保つことに努めることが肝要と言えます。
《連載52》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
一方、ネパール国の女王であったブリクティは、ソンツェン・ガンポに輿入れしたあと、ぺルサというチベット名で呼ばれた。彼女はラモチェ(小昭寺)を建てた文成公主に対抗して、チョカン(トゥルナン、大昭寺)を建てた、とチベットの伝承にある。ブクリティ妃がソンツェン王の追善のために作製したとされる十一面観音像は、明らかにネパール系の仏像である。その後の歴史的な推移の中で変動があり、現在の大昭寺にある釈迦牟尼像は文成公主が唐から将来したもの、小昭寺にある釈迦牟尼像はブリクティ王女がネパールから将来したものである。いずれの像も、チベット仏教徒にとっては最もありがたい大切な仏様とされており、遠く青海やモンゴルからも信者たちが一生涯の願いとして参詣に来るのである。
チベットの年代記によれば、ソンツェン大王は外国の医学を導入することに熱心であった。まず手始めに現在の青海省一帯にあたる吐谷渾(とよくこん)を支配下に治め(638年)、医療をはじめとする多くのことを吐谷渾から学んだ。伝承によれば、ソンツェンの曽祖父にあたるドニェン・デル王の王子は盲目であったが、吐谷渾の医師に治療してもらったという。大王がさらに北進して唐と国交を開き、唐に迫って皇女を迎えたことはすでに述べた。
年代記の記載で非常に興味深いことは、国際医学シンポジウムと呼ぶべきものがチベットで開催されていることである。サムエ寺で開かれたという会議には、インドからバーラドヴァジャ、中国からはヘンウェン・ハンデ、イラン(サラセン)からはガレノスが外国代表として出席したという。それぞれの国や地域の、各流儀の医学について議論が行われ、最後には3人の合作になる医学書が編纂されたというが、7章からなるその医学書は今日では伝わっていない。また最終的には、ガレノスが王の侍医に任じられ、チベット人の学生を集めて広く医学を伝えたという。
吐蕃の北にある唐、南のインド、西のサラセンの代表がどのような人物であったかは、現在残されている資料では特定できない。唐の代表であるヘンウェン・ハンデは、しいて漢字を当てはめれば軒轅黄帝である。これは中華の始祖ともいうべき黄帝のことで、伝説上の人物である。サラセンの代表であるガレノスは、奇しくも古代ギリシャを代表する医学者の一人で、解剖学の祖とされ、アウレリウス帝の侍医となったガレノスと同名である。
こうした強引ともいえる符号は、実在の人物の名前であるというよりは彼の代表する地域性と解するべきである。唐代に至って完成の域に達した中国の医学、イランに残されていたギリシャ系のアラビア医学(ユナニ)、最も身近にあるインドのアーユルヴェーダという世界の三大伝統医学が、7世紀のチベットにおいて一堂に会したということは、特筆に値する史実である。(つづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(45)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛、むち打ち症に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■【外科手術】グレード1と2に外科手術の適応はない。外科手術は一部のグレード3、すなわち保存療法に反応しない持続的な腕の痛みか、急速に進行する神経麻痺があるWAD(むち打ち関連障害:whiplash-associated disorders)患者に限定され
るべきである。http://1.usa.gov/LYNegq
……ここでWADのグレードを復習しておきましょう。【グレード1】頚部痛・凝り・圧痛のみで理学所見に異常なし。【グレード2】頚部の症状に加えて筋骨格系所見(可動域制限・圧痛点など)あり。【グレード3】頚部の症状に加えて神経学的所見(深部腱反射の低下や消失・筋力低下・知覚障害など)あり。【グレード4】頚部の症状に加えて骨折か脱臼あり。
■【ステロイド注射】1)WAD患者に関節内ステロイド注射は推奨できない。2)硬膜外ステロイド注射はグレード1と2に行なわれるべきでないが、グレード3で1ヶ月以上持続する神経症状には有効かもしれない。http://1.usa.gov/LYNegq
……かもしれないという表現が目につくと思いますが、むち打ち症に関するRCT(ランダム化比較試験)はほとんど行なわれておらず、エビデンスが圧倒的に不足しているからなのです。
■3)トリガーポイントへのステロイド注射の繰り返しによる有害な副作用が報告されているため、RCTによってWADに対する有効性が証明されない限り、トリガーポイントへのステロイド注射は行なうべきでない。http://1.usa.gov/LYNegq
……トリガーポイント注射の危険性を示す報告はあっても、有効性を示す研究は見つかっていないからです。
■4)髄腔内へのステロイド注射は重大な危険を伴うため、どのグレードであってもWAD患者に対して行なうべきでない。http://1.usa.gov/LYNegq
……これもトリガーポイント注射と同じです。危険性を示す報告はあっても、有効性を示す研究はひとつもないからです。
■【無菌水注射】トリガーポイントへの無菌水皮下注射は、通常生活への復帰を目指した活動性を促す補助手段としてグレード2のWAD患者に用いることができる。http://1.usa.gov/LYNegq
……さらなる追試は必要なものの、RCT(ランダム化比較試験)でトリガーポイントへの無菌水皮下注射にわずかな有効性が確認されています。ですから日常生活を続ける指導の元で行なわれれば、選択肢のひとつとして許容できるということになります。
■【薬物療法】1)グレード1のWAD患者にはいかなる薬物も処方してはならない。2)短期間であればグレード2と3のWAD患者に非麻薬系の鎮痛剤とNSAIDを処方できるが、3週間を超えてはならず、副作用に注意する必要がある。http://1.usa.gov/LYNegq
……むち打ち症で首が痛いんだから鎮痛剤ぐらいは処方していいだろうと考えがちですが、頚部痛・凝り・圧痛だけで理学所見に異常のないグレード1に処方してはいけないのです。薬に頼らなくても日にち薬がちゃんと治してくれます。
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (70)
根本 良一(療動研究所主宰)
【 連動操体法の応用編 】
[6] 手・腕の異常
3)テニス肘
c) プレー後の姿勢、休憩時の姿勢
ひと休みしようとして寛ぐつもりで腰を落として背を丸くする姿勢は、実は腰に歪みをかける悪い体勢になっている。腰に歪みがかかると、背、頚に連動して頚髄神経の影響を受ける部位である肩腕に異常が出る。特にグリップなどで酷使される肘に異常が出ることから、テニス肘と言われる。肘に異常の出ている人は腰にも異常が生じていることが多い。
以上の点に気をつけて、足、腰から操作すれば容易に解消できる。おおむね患者は走り回って足が疲れているから、次の3つのアプローチをお勧めする。
・「足指まわし」をする。どの指がまわして気持ち良いかをみて、丁寧に施術を行う。
・「中足骨まわし」をする。体重を支え移動する動作のときが一番疲労がたまるから、どの指が疲れているか? これが解消できれば足から身体がラクになる。
・腓腹部の緊張をとる操作を行う。足がラクになり、走るのがラク、またラケットを握るときの足からの連動を起動させる力がより強化される。
[7] 首・肩に関わる障害
1) 首が痛くてまわらない、背中まで痛い
肩こり、背中の痛み、四十肩・五十肩、首の痛み、寝返りがつらいなど、足腰や手足に関わる障害は日常生活で重要な部分である。1) 首が痛くてまわらない、背中まで痛い
首への影響は、背部から後頚部への流れが大きく、これには2つの流れがある。さらに腹直筋下部から首へ、そして脇下の広背筋から肩こり、すなわち僧帽筋の緊張が強くなることもある。
a) 内腿の下側(膝屈筋側)から背中へ首へという流れで一番多い例である。
b) うつ伏せで踵の動きから、仙棘筋を経由して後頚部の板状筋までが硬くなる。
c) 仰向けで足先の内転+背屈から腹直筋下部を緩めると、後頚部への胸鎖乳突筋が弛緩し、首の動きがラクになる。
d) 広背筋の操作をする。仰向けに寝て脇下の後部(広背筋)が硬いと、肩の僧帽筋が硬くなり(肩こり)、首の動きが悪くなるのでこれをラクにする。
N E W S
世界保健機関(WHO)は2月9日、2015年に全世界でがんにより約880万人が亡くなり、大半はがん医療の不十分な中・低所得国に集中していると発表した。死者数減少のためには、がんの早期診断の普及が重要だとした。早期診断による治療効果は、乳がん、子宮頸がん、大腸がんで顕著だとしている。WHOは、がん患者の医療費や労働できないことによる経済的損失は全世界でこの10年で推計1兆1600億ドル(約131兆円)に上ると分析。また、世界で毎年1400万人以上ががんと診断されていると指摘、このペースが続けば30年までに2100万人を超えると予想している。(2/10 共同通信)
がんと診断されてから5年後に生存している患者の割合(5年生存率)が50%を超えていることについて、7割強の人が知らないことが、内閣府の世論調査で分かった。調査では、約2人に1人が将来がんに罹る恐れがあることについて、7割近くの人が認識していないとの結果も示され、がんに対する理解が十分に広まっていない実情が浮き彫りとなった。
内閣府は昨年11月17日から27日にかけて、全国の18歳以上の男女3000人を対象に「がん対策に関する世論調査」を実施。1815人から有効回答を得た。調査では、がんに関する質問の中から知っていることを複数挙げてもらった。「がん全体の5年生存率は50%を超えている」ことについては、「知っている」と回答した人の割合は29.5%だった。また「日本で約2人に1人が、将来がんに罹ると推測されている」ことに関して、認識している人の割合は31.3%。さらに「日本では約3人に1人が、がんで死亡している」ことについての認知率は43.4%だった。
また、がんと診断された場合、治療を受ける病院を選ぶ際に重視する点を複数挙げてもらったところ、「専門的な治療を提供する機器や施設の有無」(60.2%)が最も多かった。次いで「医師や看護師の技術の優秀さ」(56.7%)、「自宅からの距離」(50.5%)、「受診にかかる経済的負担」(32.3%)などと続いた。
調査では、がん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」で聞きたいことも挙げてもらった(複数回答)。その結果、最も多かったのは「治療費・保険など経済面について」(75.4%)で、「がんの治療内容に関する一般的な情報」(74.3%)がこれに次ぎ、「他の専門的な医療機関の情報」(40.2%)、「退院後の生活など療養上の注意点」(39.5%)といった答えもあった。(2/2 CBnews)
軽〜中等度の飲酒は認知症を予防できるが、過度の飲酒はむしろリスクを増加させる可能性があると考えられている。しかし、これらの知見については研究方法がさまざまであることや標準的定義がないことから、解釈には慎重を要する。今回、中国海洋大学のWei Xu氏らが前向き試験のメタ解析で、アルコール摂取量と認知症リスクとの量-反応関係を検討したところ、1日当たりのアルコール摂取量が12.5g*以下であればリスク低下と関連し、6gで最もリスクが低く、38g以上ではリスクが高まる可能性を報告した。European journal of epidemiology誌に掲載(* アルコール12.5gの目安:ビール(5%)約310mL、日本酒(15%)約100mL、ワイン(14%)約110mL)。本研究では、電子データベースの系統的検索によって、参加者7万3330人とすべての認知症(All-Cause Dementia、以下ACD)4586症例を含む11研究、参加者5万2715人とアルツハイマー型認知症1267症例を含む5研究、参加者4万9535人と血管性認知症542例を含む4研究を特定した。リスクの推定はランダム効果モデルを用いて統合した。主な結果は以下のとおり。
・アルコール摂取量とACDリスクとの間に非線形の関係を認めた(p<0.05)。
・認知症リスク低下に関連するアルコール摂取量は最大12.5g/日までで、約6g/日でリスクが最も低くなった(RR≒0.9)。
・アルコール摂取量が23杯/週もしくは38g/日を上回ると、ACDリスクは上昇(約10%)するようであった。
・認知症に関するアルコールの影響は60歳未満でより大きい可能性があることが、サブグループ分析で示された。(1/30 ケアネット)
介護職場で中核的な役割を担う介護福祉士を養成する全国の大学や専門学校などで2016年度、定員に対する入学者の割合が約46%だったことがわかった。定員割れは、データのある06年度以降11年連続で、50%を割り込んだのは2度目。定員枠自体が減少傾向にあるなかでの入学者割合の低下には、重労働の割に賃金が低い処遇が影響しているとみられる。
調査は公益社団法人「日本介護福祉士養成施設協会」が毎年度、厚生労働相が指定する全ての介護福祉士養成施設に実施している。16年度の定員枠が約1万6700人(377校)だったのに対し、入学者数は06年度以降最低の約7700人だった。定員数や入学者数は減少傾向が続いている。06年度は定員が約2万6800人(409校)、入学者数が約1万9200人だった。これと比べ、16年度は定員で約1万100人、入学者で約1万1500人少ない。(1/30 読売新聞)
1月29日に実施する介護福祉士の国家試験の受験申込者数が前年度の半分の約8万人に激減していることがわかった。今年度から受験資格として実務者研修が義務付けられたのが要因とみられる。介護福祉士は国家資格で、介護職の中核的な役割を担うことが期待されている。社会福祉振興・試験センターによると昨年度は16万919人だったが、今年度は7万9113人。合格率は例年6割前後。
昨年度までは「3年以上の介護職としての実務経験」があればよかった。しかし、厚生労働省は「介護職の資質向上」を打ち出し、実務者研修を導入。たん吸引など医療的なケアも含めた研修の受講が義務付けられた。研修時間は、ヘルパー2級の資格がある人は320時間だが、無資格の場合は450時間。受講料も必要で、勤務先の施設などが出してくれなければ自己負担になる。一方で、資格を取得しても賃金アップは月5000〜1万円程度のケースが多いとされている。
淑徳大学の結城康博教授(社会保障)は、「450時間の研修は長すぎる。働きながらお金をかけて実務者研修を受けるのはハードルが高く、その割に国家資格を取得しても、それに見合う賃金体系になっていないのが要因の一つではないか」と話す。介護業界内にも、将来的に人手不足がさらに深刻化しかねないとの懸念がある。実務者研修は当初、2012年度実施予定だったが、介護の人材不足が深刻化しかねないなどとして2度にわたって延期され、研修時間も600時間から短縮された。(1/27 毎日新聞)
カフェインは心疾患のリスク因子につながる炎症の抑制にも役立つ可能性があることが米スタンフォード大学のDavid Furman氏らの研究で示唆され、論文が「Nature Medicine」オンライ
ン版に掲載された。
Furman氏らは成人100人超を対象とした調査で、過去10年間にわたり血液検体を採取し、病歴を精査。若齢者群と高齢者群の血液検体を比べ、高齢者でのほうが「活性化」する遺伝子を調べた。IL-1-βという強力な炎症性蛋白の産生に関わる2つの遺伝子クラスタに着目した結果、高齢者は一方または両方のクラスタの活性化が高い群と低い群に分けられた。
「高活性化」群では12人中9人、「低活性化」群では11人中1人のみに高血圧を認めた。高活性化群では動脈硬化の可能性も高く、血液検査ではIL-1-βと核酸代謝産物の値が高かった。低活性化群のほうがカフェイン入りコーヒーの摂取量が多かった。
高活性化群の血液にみられた核酸代謝産物を用いて免疫系細胞を培養したところ、炎症性遺伝子クラスタの1つでこの代謝産物が活性化し、IL-1-βが大量に生成された。これをマウスに注射すると、広範囲の炎症と高血圧が生じた。
次に、核酸代謝産物とカフェインの両方で免疫細胞を培養すると、カフェインがこれらの炎症誘発物質を阻害することが判明した。Furman氏は、「人体にはおそらく、慢性炎症やさまざまな疾患に寄与する経路が数多くあるが、われわれはその1つを特定した」と述べている。(1/16 HealthDayNews)
京都大学は1月11日、親世代に低用量ストレスを与えることで獲得されるホルミシス効果(ストレス耐性の上昇や寿命の延長)が、数世代にわたって子孫へと受け継がれることを発見したと発表した。同成果は英国の学術誌「Nature Communications」に掲載された。
生物学ではこれまで、後天的に獲得した形質は遺伝しないと考えられていたが、近年の研究では、高カロリー食で肥満になった父ラットの子供ラットは、通常食で育てても糖尿病の症状を示すといった、親が生育した環境によって子供の表現型が変化を受ける可能性が示唆されるような事象が報告されるようになっていた。
そこで研究グループは今回、親から子へと受け継がれる生存優位性に着目しつつ、獲得形質の継承メカニズムの解明に挑んだという。具体的には、モデル生物である線虫C.elegansを用いて、親世代において成虫になるまでの発生過程で低容量のさまざまなストレスを与えて育てると種々のストレス耐性が上昇すること、さらにその耐性上昇はストレスを与えずに育てた子世代や孫世代にも受け継がれること、ならびにストレスをオスの親のみに与えた場合でも、子孫に効果があることを発見した。さらに、こうした形質の継承メカニズムを解析したところ、生殖細胞のヒストン修飾因子と体細胞組織の転写因子とが組織間コミュニケーションをすることにより、親世代での獲得形質をエピジェネティック機構を介して次世代へ継承するというモデルが示されたという。
今回、発見した現象について研究グループでは、環境変化を経験した個体が子孫に対して適応力を授けるという、種の生存戦略の1つである可能性が考えられるとコメント。ストレス応答性のシグナル伝達経路は進化的によく保存されているため、線虫以外の生物においても重要な知見となると予想されるとしており、今後は、環境ストレスに応答してどのような遺伝子領域がエピジェネティックな制御を受けるのかについてゲノムワイドな解析を行うことで、より詳細な分子メカニズム解明を目指していきたいとしている。(1/15 マイナビRESIDENT)
国立成育医療研究センターは1月31日、子どもの睡眠時間と身長の伸びなどの関係を探ろうと、育児中に成長や生活状況を記録するスマートフォン向けのアプリで集めた大規模データを分析する研究を始めたと発表した。「寝る子は育つ」は本当かを科学的に解析することも狙う。
ITベンチャー企業が開発したアプリ「パパっと育児@赤ちゃん手帳」を利用する。これまでに17万人以上が育児のメモ代わりに使い、子どもの睡眠時間や排便の回数、身長や体重などの情報が蓄えられている。今後の研究が注目される。(2/1 産経新聞)
大阪府は1月25日、地方独立行政法人・大阪府立病院機構が3月に開院する「大阪国際がんセンター」で、笑いががんに及ぼす影響の実証研究を行うと発表した。吉本興業や松竹芸能の協力を得て、院内で患者向けに漫才や落語を上演し、「笑うこと」でがん患者にどのような変化が生じるかを調べる。
5月中旬から約4か月間、外来のがん患者らに被験者になってもらい、センター1階のホールで月2回程度、漫才や落語を見る前後で血液と唾液の検査を実施。患者にかかるストレスや免疫細胞の変化を調べる。笑いとがんに関する継続的な調査は珍しいという。同センターは、大阪市東成区の府立成人病センターを名称変更して、府庁の南隣に移転する。3月27日から外来診療を開始する。(1/26 読売新聞)
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歩行速度は、将来の認知症を予測する良い因子である。東京都健康長寿医療センター研究所の谷口優氏らは、日本人高齢者の歩行性能軌道パターンを特定し、歩行性能が認知症と関連しているかを検討した。Journal of the American Medical Directors Association誌の報告。
2002〜14年の日本における集団ベースフォローアップ観察プロスペクティブ研究として実施された。65〜90歳の認知症でない高齢者1,686人(平均年齢:71.2歳[SD:5.6]、女性比:56.3%)を対象に、2002年6月〜2014年7月まで毎年、老人保健調査を行った。追跡調査数の平均は3.9、総観察数は6,509件であった。歩行性能は、通常および最大速度での歩行速度と歩幅を測定することにより評価した。日本の公的介護保険制度のデータベースを調査したところ、2014年12月までに196人(11.6%)が認知症を発症していた。主な結果は以下のとおり。
・通常と最大速度での歩行速度と歩幅より高・中・低の3つの軌道パターンを特定した。これら歩行パターンは、男女間で同様に減少した。
・重要な交絡因子で調整したのち、通常ベースの歩行速度と歩幅の低パターン群における認知症発症率は、それぞれ3.46(95%CI:1.88〜6.40)、2.12(95%CI:1.29〜3.49)倍であった。
・最高速度ベースの歩行速度と歩幅の低パターン群における認知症発症率は、それぞれ2.05(95%CI:1.02〜4.14)、2.80(95%CI:1.48〜5.28)倍であった。
著者らは「歩行速度および歩幅の3つの主要パターンは、ベースラインのレベルにかかわらず年齢関連変動を示す傾向があった。歩行速度および歩幅の低パターン高齢者は認知症リスクが高いため、歩行能力改善のための介入が重要である」としている。(1/25 ケアネット)
■次号のメールマガジンは2017年3月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ