エンタプライズ発信〜メールマガジン【№62】 2016. 6

携帯電話によるSNSやインターネットの閲覧は広がりを続け、それに伴いトイレの滞在時間が確実に延びていると指摘する声が医療界にあります。英国の衛生用品会社が2000人を対象とした調査では、およそ3人に2人がスマホやタブレット端末を自宅内外のトイレに持ち込むことが普通だと伝えました(男性約70%、女性約57%)。外へ出ると公衆トイレは不特定多数の人が利用するわけですから、予期せぬ大腸菌やインフルエンザを手指に付着させたまま、その後飲食をしたり、会社や自宅へ持ち帰ったりすることになります。しかも滞在時間が長くなることにより感染率は上がってくる可能性が高くなります。同時に便座に座っている時間が長くなることから、いぼ痔や切れ痔の「痔主」に近づくことはまぬがれないと警鐘を鳴らす肛門科医もいます。痔は本来、便秘と下痢の慢性的なくり返しや、いきみの日常化がもたらす疾患です。ところがトイレでスマホを使っていると、知らず知らずのうちに滞在時間を引き延ばすことになり、これが肛門付近の充血を招き、その結果、痔を誘発してしまうというのです。痔疾が増えているという疫学調査はいまのところないようですが、近い将来、デジタル機器による「新・生活習慣病」なるものが惹起するかもしれません。専門医によれば、痔の基本的予防策は「便座で5分以上粘らない」「トイレは便意・尿意を催した場合のみとする」と言いますから、この忠言を守り、家庭内でも外でもトイレ内では携帯電話には触らない、基本的に持ち込まないことを意識するのが保健衛生上の賢い対策となりそうです。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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【TOPIC】

『構造医学 事始〜歩きと冷やしの診療奮戦記』 を重版、発売へ

「構造医学」創始の地・熊本で、吉田勧持先生の薫陶のもと開業した診療所でのエピソードや構造医学への思いを綴った『水前寺診療所診療録』(「季刊構造医学」に連載)を収録。
産学社エンタプライズ刊。四六判、320頁、定価2,160円


◎連載vol.20h4 class=”mmzh4″>エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>

《 Extra issue 》


エネルギーサークル(つづき)

エネルギーサークルでは、予想もしなかった素晴らしい結果を何度も経験している。関節痛などの疾患をもった人の多くは、患部にぬくもりを感じた後、症状が軽くなったという。深く眠っていた精神的トラウマがいつの間にか消えたという人もいる。ある女性は、補聴器をつけなくても音が聞こえるようになった、あるいは単に両手のエネルギーを感じとれるようになったというだけの人もいる。そしてセラピストは、患者のエネルギーをよく感じることができるので治療がしやすいと言っている。

エネルギーサークルは、生物学と多様な治療法における偉大な発見を同時に確かめる『実験』だ。あらゆる発見を1つの仮説にまとめるとするなら、生体マトリックスを養い、病気や痛みの部分に欠けている要素は情報だということになる。生体は、体の隅々まで情報を伝えるためにあらゆる形態のエネルギーを利用しているのだろう。全身に伝わったエネルギーは、指の先から放出されることもあるだろう。その瞬間、人間は、さまざまな生体エネルギーの入り混じった流れを感じとるのである。純粋な形態のエネルギーを人間に与えることができるのは、ほかの人間だけだが、そのエネルギーに含まれた情報によって、修復機能の活動が促されるのである。この反応とともに生じる副反応は、必ず生体に良い影響をもたらし、場合によっては目覚ましい効果をもたらしている。

Extra issue 〜エピローグ〜

科学史から読み取れる1つの教訓は、「専門家間の同意」というものは刻々と変化するということである。

◇数十年前には生体の周囲にエネルギー場があるという仮説や、生物同士の間では重要なエネルギーの相互作用が起きているという仮説は、科学的に信用できないとされてきた。
◇自然について詳しいナチュラリストたちが、地磁気や天体の周期が植物の生育や動物の行動に影響を及ぼしていると繰り返し主張していたにもかかわらず、一部の科学者を除いてはまったく不合理な説とみなされていた。
◇自然または人工的エネルギーによるヒーリングというと、科学者からはブードゥー教や空中浮遊、UFOなどと同じカテゴリーだとみなされていた。
◇電化製品や電子機器などから発生する電磁気の人体に対する危険性が取りざたされたとき、多くの専門家たちはそのような電磁波は微弱なので生体には影響しないと主張した。

しかしこれらのテーマに関する研究がいくつも行われた結果、まったく逆の結論に至ったのである。こうして従来の固定概念が覆されたのは、物理学、生物学および分子科学の専門家たちがお互いに協力しはじめたからだ。そして今では多くの科学者が、次のような共通見解を示している。(次号につづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ㉚☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


一般論に基づく、症状を創り出す信念

「骨が変形しているから痛い」「軟骨がすり減っているから痛い」。これは、多くの人々が信じている関節痛に関する一般論です。どこまで深く信じているかは人によって様々です。もしも、レントゲン検査、あるいはMRIなどの画像検査で骨や軟骨の変形が発見された場合、その変形が修正されない限り、関節痛が持病になると信じてしまいがちです。言い方を変えると、「画像診断の結果、関節痛が常にあるのが当たり前」という信念体系を持つことになります。
また「関節の変形は使い過ぎによる」という一般論から関節を使わないようにする一方で、「関節の筋肉を鍛えなければならない」という一般論から運動するという相矛盾した信念によって脳が混乱し、何を信じていいのか分からないとう方も少なくはないようです。

「関節の骨や軟骨がすり減って痛くなる」、一般の人にはとても分かりやすい機械論的な理論です。しかし、それをまともに信じてしまうと、誤作動を生じさせる意味づけの「記憶」として脳に定着し、痛み信号を脳で創ることになります。実際に関節変形が直接痛みの原因になっている場合もありますが、それがすべての原因ではありません。関節痛で特に注意が必要なのは「変形」ではなく「バランス」の問題です。

関節痛で特に注目しなければならないのは、筋肉の「オン」と「オフ」のバランスです。関節を支えている一つ一つの筋肉がちゃんと働いているかどうかも大切な要因ですが、その前に全体的に力を入れる筋肉(興奮系=オン)と力を抜く筋肉(抑制系=オフ)のバランスがとれているかどうかはとても重要です。
例えば、膝を伸ばす筋肉は太ももの前にある大腿四頭筋、膝を曲げる筋肉は太ももの後ろにある大腿二頭筋です。膝を伸ばすときは大腿四頭筋が「オン」になり、膝を曲げるときは大腿二頭筋が「オフ」になります。その逆で膝を曲げるときは大腿二頭筋が「オン」になり、大腿四頭筋が「オフ」になります。この「オン」と「オフ」の絶妙なバランスが崩れると、痛みや関節変形の原因になります。関節痛の多くは、「オフ」ができないこと、すなわち「力が抜けない」ことが主な原因なります。

ファミリーカイロでは、関節痛の患者さんの多くが、「オフ」(力を抜く)の検査で反応が示され、この検査で反応が示されなくなると、たとえ関節に変形が存在しても症状が改善される方がほとんどです。しかしながら「関節変形=痛み」という信念体系があると、関節部位からの痛み信号が消えても、脳で創られる痛み信号が存在し続けて、実際に痛みを感じます。その場合、痛みを創る信念体系から痛みを生じさせない健全な信念体系に上書きする治療を行うと、脳で創られる痛み信号が消えていきます。
もしも、無意識的に構築されやすい症状を創り出す信念体系があれば、自分の体や脳の柔軟性を信じられる健全な信念体系へと上書きしていきましょう。


《連載44》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


6. 日本編 〜杉山和一小伝〜

<小伝4>

5年にわたる努力の甲斐もなく、破門されてしまった杉山和一は悲嘆のどん底にあった。盲人の和一にとってあまりに毫針は細すぎたし、あまりに医書は難解であった。しかしこのまま郷里に帰ることも忍びがたい。東海道を行く和一に目からはとめどなく涙がこぼれ落ちた。品川の宿場を出て藤沢に近づいたころ、和一の心にふと江の島に祀られてある弁財天のことが浮かんだ。そうだ、ひとつ願をかけてみよう。この弁財天は学問の神様でもあると言うではないか。

もし和一の目が見えたとしたら、あたかも池に遊ぶ緑色をした亀のような、小さな島が相模湾に浮かんでいたであろう。潮の引くのも待ち切れず、膝まで海水につかりながら、すがるような気持ちで和一は江の島にたどりついた。それほど大きな島というわけではないが、椿の枝につかまり、松の木の根にすがり、ようやく上の宮(現在の中津宮)まで登りつくと、断食祈願をしたいと願い出た。旅の笠は破れ、衣も汚れていた。あるいは乞食法師とでも間違われたのであろうか、宮司の怒りに触れ、追い返されてしまった。泣き面に蜂とはこのことだ。やむなく、杖を頼りにいま来た坂を下り、ようやく下の宮(現在の辺津宮)で許可を得ることができた。

こうして7日間の断食祈願が開始された。最初の1〜2日はこれまでの人生の一コマ一コマが入り乱れて脳裏をかすめた。志を立てて伊勢を出るとき、言葉少なに励ましてくれた母のこと。琢一師匠のもとでの苦しい修行。さらには目の見えたころの幼な友達の顔……。雑念のうねりは大きく、とても心を静めて弁財天に祈るどころではなかった。3〜4日経つとさすがに雑念は去った。そして空腹がせめ寄せてきた。口に入るものといえば塩と水だけなのだ。ここが我慢のしどころと膝にのせた手に力を入れ、丹田に力を込める。……いつしか全身が軽くなるのを覚えた。

あと1日の辛抱だ。盲人の聴覚は鋭い。和一の耳には、地響きに似た波の音、風に騒ぐ松の音が相変わらず聞こえている。満願の7日目。精神は安定を得ていた。昨日までの雑念と空腹との闘いが嘘のようである。造化(自然)と一体になり、無我の境地に達した。

8日目の早朝。ふらりと立ち上がった和一は、杖を頼りに下の宮を出た。萎えきった両足はなかなかいうことをきかない。ゆるりゆるりと坂を下る。その蝸牛にも似たおぼつかない歩みとは反対に、精神には深く秘めた充実感があった。
「さて、勾配がきつくなるのはここのあたりかな」と思ったときにはすでに遅かった。もんどりうって、急な坂を転げ落ちた和一は、途中の岩にこれでもかというほどぶちあたり、気を失ってしまった。(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(37)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■大半の患者は時に腰痛が再発する。しかし再発は普通に見られる正常なことであり、腰部に再度損傷を受けたり、症状が悪化していることを意味するものではない。http://amzn.to/Hk8veA
……これはとても重要なことです。腰痛は風邪と同じ自己限定疾患(ある一定の経過をたどって自然に終息する予後良好な疾患)ですから、再発する度に悪化していると考えるのは見当違いです。けっして腰痛を怖れてはいけません。

■患者の約10%は1年後も症状の一部が持続しているが、その大半は通常の活動を何とか維持できる。通常の活動に復帰した患者は、活動を制限している患者より健康になったと感じ、鎮痛剤の使用が減少し、苦痛が少なくなる。http://amzn.to/Hk8veA
……たとえ慢性腰痛であったとしてもどうにかこうにか動けますから、できるだけ普段どおりの生活に戻るように努めましょう。それが慢性腰痛の治癒を促してくれるのです。

■腰痛は通常、加齢に伴って増加することはなく、50〜60歳以降はわずかに頻度が低下する。しかし慢性腰痛を有する高齢者は症状がより持続的になり、活動制限が多くなることがある。http://amzn.to/Hk8veA
……歳だから腰が痛くなるというのはまったくの迷信です。まずその時代遅れの考え方・先入観を頭の中から消去しなければなりません。さもなければノーシーボ(負の自己暗示)で腰痛発症率が上昇し、歳だから仕方がないと活動量が低下して慢性化する危険性があります。

■定期的に処方されたNSAIDは非特異的腰痛を効果的に軽減する。異なるNSAIDは非特異的腰痛の軽減に同様の有効性を示す。NSAIDの神経根性疼痛に対する軽減効果は比較的弱い。http://amzn.to/Hk8veA
……NSAIDとは非ステロイド系消炎鎮痛剤で、バファリン、エスタックイブ、ロキソニン、ボルタレンなどといった処方薬の他に薬局でも買える市販の鎮痛剤です。

■定期的に処方されたパラセタモール(アセトアミノフェン)とパラセタモール+弱オピオイド(麻薬系鎮痛薬)の配合剤は腰痛を効果的に軽減するが、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)との有効性の比較結果は一貫していない。http://amzn.to/Hk8veA
……アセトアミノフェンとは風邪薬に含まれている鎮痛解熱剤で、比較的安全なので市販もされています。しかし肝障害を起こす危険があるのでアルコールと一緒に飲んではいけません。

■NSAIDは特に高用量や高齢者で重篤な有害事象を誘発する可能性があるが、イブプロフェン(NSAID)投与後にジクロフェナク(ボルタレン)を投与すると消化器系有害事象リスクが最も低下する。http://amzn.to/Hk8veA
……不思議ですねぇ。薬の組み合わせによって副作用を減らすことができるなんて。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (62)

根本 良一(療動研究所主宰)

【 連動操体法の応用編 】

6. 乳腺症、乳が出ない

乳房に「しこり」があって痛い。乳癌ではないかと心配になり、検査を受けてみたら異常がなかったとか、穿刺して細胞を取り、細胞診までしたら異常はなかったとかいうように、「痛い診断」でもホッとしたという例もある。このしこりは、数年から10数年に及ぶ人もあり、乳腺癌と言われているが、とくに炎症というものではない場合もある。

胸郭は、胸髄神経とくに肋間神経の支配領域で、両腕の動きから骨部の肋椎関節運動軸を調整すると永年保有していたしこりでも解消できる。乳腺には第4〜第6胸神経の外側皮枝、内側皮枝が分布しているので、骨部のどこかという位置を確かめるために、両腕を組んだまま患側の上腕の角度をいろいろ変えてみると、しこりの消えるところがある。その角度で両腕を組み、膝の動きを補助動作として背部から連動操体法を行う。

この操作では、例えば両肘を出す、肘〜上腕の角度を選ぶと肋椎関節が開き、乳房のしこりが解消し、いままで母乳が出なかったのがよく出るようになったというケースもある。母乳が出るのは生理的には異化作用で、ストレスが強かったり肥満が生じると止まってしまうことがある。母乳が止まると、異化作用が止まり、乳児に与えるべき栄養成分が母体に還元されるので太ってくると言われている。


*** N *** E *** W *** S ***


■「バースデー・ブルー」で自殺が1.5倍に:大阪大学

誕生日に自殺が増える「バースデー・ブルー」の仮説が日本人にも当てはまることを裏付ける統計結果が発表された。大阪大学の松林哲也氏と米国シラキュース大学の上田路子氏は、1974〜2014年に自殺や事故(交通事故、転落事故、溺死、窒息死など)により死亡した日本人207万3656人の死亡記録をポアソン回帰分析を用いて検討した。その結果、自殺や事故による死亡者数が他の日と比べて誕生日に多いことが明らかになった。Social Science & Medicine誌オンライン版に掲載。
主な結果は以下のとおり。
・自殺による死亡者数が、誕生日はそれ以外の日と比べて50%多かった。
・誕生日に死亡する人が増加する傾向は、性別、配偶者の有無、死亡時の年齢のサブグループに関係なくみられた。
・高齢者では、食事に出かけるなどの誕生日のお祝いに関連する特別な行動が事故死急増の一因になっていることが示された。対照的に、20代では誕生日の交通事故による死亡者数が著しく増加しており、報告者らによると、これは誕生日のお祝いでのドライブや飲酒に起因する可能性があるという。
(6/14 ケアネット)


NEWS ■痛風、お酒に強いほうがリスク高い? 遺伝子の変異影響

激しい関節痛を引き起こす痛風は、お酒に強い体質の人の方がリスクが高まるらしい。防衛医大などの研究チームが、飲酒時のアルコール分解で働く遺伝子が痛風の発症にかかわっていると発表した。この遺伝子の変異の有無が酒に強いか弱いかに関係し、発症リスクが異なってくるという。痛風は、過度の飲酒などで血中の尿酸値が高い状態が続くと発症する。中年以降の男性に多く、国内患者は約100万人、予備軍の「高尿酸血症」は約1千万人に上るとされる。
防衛医大の松尾洋孝講師と崎山真幸医官らは、東京と京都の医療機関に通う痛風患者の男性1048人と、痛風ではない男性1334人の遺伝子を解析。発症に関連する5つの遺伝子領域のうち未解明の1つを調べ、アルコール分解にかかわる酵素をつくる遺伝子ALDH2が影響していることを突き止めた。
この酵素はアルコールから分解されたアセトアルデヒドを酢酸に変える役割だが、ALDH2遺伝子に変異があるとうまく働かず、酒に弱くなる。変異がある人に比べ、変異がない人の痛風発症リスクは2.27倍になったという。
松尾さんは「痛風は遺伝子の影響も強く、遺伝子の個人差に応じた予防や医療の重要なモデルの一つとなる可能性がある。未成年の発症リスクも調べられる。今後もさらに研究を進めていきたい」と話している。
(6/11 朝日新聞)


NEWS ■介護ロボ導入、報酬加算へ。AI活用で市場創出

政府は6月10日、介護ロボットを導入することで介護職員の負担軽減やサービスの質向上を実現する介護施設に対し、介護報酬を加算する方針を明らかにした。ロボット市場拡大や職員不足対策につなげる狙い。介護現場にロボットを導入して得られる改善効果などをデータ化する実証実験を8月から開始。結果を基に具体的な加算割合などを算出し、平成30年度の介護報酬改定に盛り込む考えだ。
実証実験は厚生労働省と経済産業省が連携し、29年度までの実施を計画。同年度は実験規模を拡大してデータを採取し、介護報酬改定に向けた議論で活用する。実験では、全国の一部介護施設に介護ロボットを導入し、介護職員の仕事の効率化やサービスの質の向上にどの程度寄与するかをデータ化し、分析する。
現状、介護ロボットは1台数百万〜数千万円と高額なことなどを理由に施設への導入は進んでいない。経産省は今後、ロボットの価格が下がり、介護報酬の加算などの政策でロボットの施設への導入が進めば、「単純労働をロボットが、複雑な仕事を人間が行う分業化が始まる」と分析。その結果、「労働環境の改善や人手不足の緩和も図られる」と期待する。
政府が5月にまとめた新たな成長戦略では、ロボットや人工知能(AI)を積極的に活用する「第4次産業革命」で30兆円の市場を創出する目標を明記した。介護ロボットの市場規模については、26年の12億7千万円から32年に500億円への拡大を目指すとしている。
(6/11 産経新聞)


NEWS ■<対人恐怖症>「認知行動療法」プラスで8割改善

人前で話をしたり、人と関わったりすることに過度の不安や怖さを感じる対人恐怖症(社交不安症)について、抗うつ剤が効かない患者でも、医師と話をしながら自身の行動を考えていく「認知行動療法」を加えると8割以上が改善したとの研究結果を、宮崎大学や千葉大学の研究チームがまとめた。欧州の医学専門誌に論文が掲載された。
対人恐怖症の標準治療は抗うつ剤の服用だが、これで症状のよくならない患者が7割以上いる。宮崎大学の吉永尚紀講師(精神神経科学)らは、投薬治療が効かない患者42人を4カ月間、投薬のみと、投薬と週1回の認知行動療法に取り組むグループに分けて、症状の変化を調べた。その結果、症状が出た時の自らの動画を見ながら、患者が医師と一緒に原因や対処法を考える認知行動療法を受けたグループは、86%が改善し、半数近くは症状がほぼなくなった。投薬のみのグループの改善は10%にとどまった。
同療法は4月に保険適用され治療が受けやすくなった。ただし、適切な対応ができる専門家は全国に100人程度しかいない。吉永講師は「より多くの人が受けられるように専門家を育てることが課題」と指摘する。
(6/8 毎日新聞)


NEWS ■熊本地震で「地震酔い」相次ぐ……不安やストレスか

熊本県などの一連の地震の被災者から、揺れていなくてもふらつきやめまいを感じる「地震後めまい症候群」(地震酔い)の訴えが相次いでいる。専門家は車中泊や避難所暮らしなど、不自由な生活などによるストレスが発症を助長する可能性を指摘している。
人は耳の奥にある三半規管や目、手足などから外部の情報を脳に集め、体の平衡感覚を保つ。地震酔いの詳しい仕組みは分かっていないが、船から下りても揺られている感覚を覚える「下船病」と同様に、平衡感覚をつかさどる器官に揺れに伴う負荷がかかると機能が低下し、発症すると考えられている。
熊本県宇城市にある松橋耳鼻咽喉科・内科クリニックの松吉秀武院長(平衡医学)と熊本大学が、4月19日から約1カ月間、めまいで通院中と新規の患者計214人を調べた結果、108人(新患31人)が地震酔いと診断された。約8割が女性だった。
(6/2 朝日新聞)


NEWS ■お酒の強い人、弱い人、疾患発症の違いが明らかに

“酒の強さ”とは何か。体内に入ったアルコールは、分解される過程で二日酔いの原因となる有害物質アセトアルデヒドに変わる。その後、2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)と呼ばれる酵素がアセトアルデヒドを分解し、無害な酢酸に変える。ALDH2の働きの強さが、酒の強さの一因となっている。
「飲酒習慣の有無にかかわらず遺伝的に酒に弱い人は肝臓に中性脂肪がたまりやすい」との研究成果を熊本大学の研究チームが5月に報告した。鬼木健太郎助教と猿渡淳二准教授らは、人間ドック受診者の調査で、食べ過ぎや運動不足が原因となり肝臓に中性脂肪がたまる「非アルコール性脂肪性肝疾患」の罹患率をALDH2に着目し解析。遺伝的に酒に弱い人は強い人に比べて罹患率が2倍高くなることを明らかにした。
またアルコールの摂取により胃液中で発生したアセトアルデヒドが胃がんのリスクを高めることが知られている。酒に弱い人はALDH2が働かず、飲酒後に胃のアセトアルデヒドの濃度が上昇するため、胃がんのリスクがますます高くなる。
こうした発がんリスクの低減について、東北大学の研究チームが研究成果を発表。アルコールが原因で起きる胃がんのリスクをアミノ酸の一種、L-システインの投与で減らせることを突き止めた。アルコールの分解によって発生するアセトアルデヒドにL-システインが結合して無毒化し、胃がんの発生を抑えることが分かった。
一方、酒が強いことでかかりやすい疾患も明らかになってきた。防衛医科大学校の研究チームは、ALDH2を作る遺伝子の個人差が痛風の発症に関わっていることを発見した(記述)。痛風患者と痛風でない人の遺伝子を解析した結果、ALDH2の活性が高く遺伝的に酒に強い人は、同活性が低く酒に弱い人に比べ痛風の発症リスクが2.3倍高くなることが分かった。
(5/31 ニュースイッチ)


NEWS ■呼吸不全死のリスクが高まる病歴とは

日本人の一般集団において、「男性」「脳卒中」「胃潰瘍」の病歴を持つことなどが呼吸不全死のリスクであることが、山形大学医学部内科学第一(循環・呼吸・腎臓内科学)講座の小林真紀氏らにより報告された。Scientific reports誌に掲載。
一般集団の呼吸不全死のリスク因子はまだ確立されていない。著者らは過去の研究で、1秒量(FEV1)の低下と全死因死亡および心血管疾患死亡との関連を示したが、FEV1は呼吸器疾患死亡に対する独立したリスク因子ではなく、呼吸器疾患死亡には肺機能以外にも別の要因が関わっていることが考えられた。本研究は、日本人の一般集団を対象に、呼吸不全によって死亡した個人の特性を探索することを目的とした。
対象は、2004〜06年の間に山形県東置賜郡高畠町で行われた地域の健康診断に参加した40歳以上の3253人である。アウトカムは2010年末までの死亡とし、Cox比例ハザードモデルを用いて呼吸不全による死亡者の特性を生存者および呼吸不全以外の疾患による死亡者と比較することにより、ハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を求めた。さらに、同定したリスク因子による呼吸不全死の予測モデルを作成し、C統計量を算出してその予測精度を評価した。臨床検査値は、ROC曲線を用いて最も感度および特異度の高くなるカットオフ値を検討し、モデルに投入したものとしている。
(5/31 ケアネット)


NEWS ■息で肺がん早期発見へ……英国臨床試験

息に含まれる微量な化学物質を分析することで早期の肺がんを検知する呼気分析装置が、今年から英国で第2相の臨床試験に入っている。ケンブリッジ大学工学部出身者らが創業したベンチャーの英アウルストーン・メディカル(Owlstone Medical)の「ルーシッド(LuCID)」で、これまでの分析装置に比べ小型で低コスト、操作が容易なのが特徴。ロイターによれば、2017年に一般医による診療所での利用開始を計画している。
肺がんの場合、がんが進行したステージ4の患者の生存率は5%なのに対し、初期段階のステージ1では75%あり、いかに早期に発見し、治療につなげるかが重要になっている。これまでにもがん細胞が作り出す揮発性有機化合物(VOCs)を患者の呼気から検出して診断する装置はあったが、高価なうえ、分析に時間がかかり操作が複雑だったという。
「肺がん指標検出」の頭文字から名前を付けたLuCIDでは、呼気に低濃度で含まれる数百種類の化学物質のうち、12種類のVOCsを肺がんのバイオマーカーとして採用。被験者の呼気に含まれるそれぞれのVOCの量を計測し、グラフ化できる。
英国では今年だけで4万4000人が肺がんと診断され、3万5000人以上が死亡すると見込まれている。肺がんだけで、英国の国民健康保険である国民保健サービス(NHS)の負担は25億ポンド(約4000億円)にも上る見通しだ。
LuCIDの臨床試験は、英国内の17の医療機関で最大3000人を対象に実施する。同社としては、肺がんを早期に発見することで2020年までに10000人の命を救い、2億4500万ポンドのNHS健康保険支出額削減をビジョンとして掲げている。
(5/29 ニュースイッチ)


■次号のメールマガジンは2016年7月10日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ