エンタプライズ発信〜メールマガジン【№61】 2016. 5

5月とはいえ昼間は初夏並みの気候が続いています。朝夕の温度と較差があり体温調整もたやすくはありません。編集子が中高生のころ(昭和時代)、体育の授業や部活の間は水を飲ませてもらえませんでした。日射病(いまは総じて熱中症)で多くの犠牲者を出した後、その悪しき習わしは改められ、今度は脱水を起こさないように水分補給が奨励されるという真逆な説がここ25年常識とされています。しかし簡単なように見えて、この水分補給には大きな落とし穴が。暑いからといってガブ飲みしていると水中毒になり、命を落とす危険を孕んでいるからです。腎臓の限界を超えて水分をとると、水分が尿で体外に出ていかなくなる。すると血中の塩分濃度が薄くなり、低ナトリウム血症に陥ります。これが水中毒の正体で、軽度でも意識障害を引き起こします。重度だと脳の一部が溶け、死に至るケースもあるそうです。ガブガブ飲むのではなく、コップ1杯程度の水を少しずつ飲むように心がけ、成人男性なら食事で摂取する水分以外に、1日に2リットルまでなら飲料で摂取しても問題ないと言われています。他方、尿意をもよおしたら我慢は禁物です。できるだけ早く排泄することは、水中毒を未然に防ぐことにつながります。また、よく冷えた水が喉ごしにはいいのですが、冷たい物を飲むと体は「体温が下がった」と勘違いし、汗をかかなくなります。結果、体内の温度調整ができなくなり、熱中症になりやすい状態になってしまう可能性があります。理想の水温は5〜15℃。冷蔵庫から取り出してコップに注いだ頃合いがその温度です。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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◎連載vol.19

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>

《 Extra issue 》


エネルギーサークル(つづき)

参加メンバー全員の心臓の基本的なリズムが同調化するまでに至ることは、ありえないわけではないがあまり期待できない。そこで前項で紹介したマクラティらの研究に基づき、心電図の高周波成分を同調化させるような方法を考案した。
それにはまず、これまでの人生の中で一番うれしかった瞬間を思い描いてもらい、再びベル呼吸を数回繰り返す。このプロセスは、マクラティらが報告したような心電図の高周波成分の同調化をはじめとする内的コヒーレンスを誘導するためのものである。

その次は、両手のリズムの同調化を感じとる動作に入る。参加者には、目を開けて、両手を体側に沿っておろし、勢いよく振ったあと、こすり合わせるように指示する。その後、左右の手を向かい合わせて、もう少しで触れるというところまで接近させる。そこから両手を遠ざけたり近づけたりする動作を繰り返し、エネルギーが感じられるかどうかを確かめる。エネルギーの感覚は、磁石のように感じられることもあれば、熱として感じられることもある。

エネルギー感覚を向上させるには、「マイクロ・ムーヴメント」というトレーニングが役に立つ。これは非常に長い時間をかけて1つの動作をするというトレーニングである。たとえば、離した両手を1週間かけて合わせるといった練習をする。このトレーニングによって、実際に手を動かさなくても、手の動きを感じとることができるようになる。前項で述べた脳波と運動の関係でいうと、実際の運動を促す運動ポテンシャルを発生させずに、準備脳波とフィードバック脳波を発生させられるようになるのだ。

ワークショップの締めくくりは、参加者全員が立って、たとえば左へ真横を向き、前の人の背中にもう少しで指先が触れるという位置で人の輪をつくり、各人が両手を前にかざす。そして目を閉じ、ベル呼吸を何回か行う。手に感じられるエネルギーは参加者の輪を反時計回りに流れていくことになる。
この時点で、マッサージ台を参加者の輪の中に持ち込む。身体的または精神的障害のある人、あるいはエネルギーサークルの効果を信じていない人を募って仰臥位で台に寝かせる。したがって、その周りに人の輪ができている。次に輪の先頭の人を適当に決め、その人を先頭に数珠つなぎのように台に寝ている仮患者の頭部側に近づき、先頭者は両手を両側頭部に手を置くかまたはかざし、次に最後尾の人は寝ている仮患者の足に両手を置くかかざす。
この態勢で、再びベル呼吸を数回繰り返すと、寝ている人を含めて、全員にエネルギーが流れる。エネルギー療法を行うのであれば、この時点でセラピストが寝ている人を治療するとよい。(次号につづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ㉙☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


エネルギー医学の目、心身相関医療の目、脳科学の目

最近、「患者教育手法」が治療効果を引き出すうえで必修条件になるということをつくづく感じる。特に心身条件反射療法(PCRT)のように、通常医療とは異なる考え方で治療を提供する場合、多くの患者が一般常識的な「西洋医学の目」で診てもらうことを期待しており、最初は不思議な治療と思われる傾向が強い。また、施術者も「西洋医学の目」で診る知識や検査技術を訓練することで、患者さんからの信頼を得ようとする傾向があるだろう。それも大切な信頼関係になるかもしれない。
その一方で、西洋医学的に基づく一般常識的な知識が、自然治癒力を妨げていることも少なくはない。例えば、身体の構造面や機能面ばかりに目を向けて、「心と身体の関係性」には目を向けようとしない。あるいは身体の不調は、身体の構造や機能異常だけにあるという思い込みが強い場合、その「信念体系」は自然治癒力の妨げになることがある。

例えば、先日来院した中学生女子の場合、病院で腰椎分離症と診断を受け、3か月間ほどコルセットを着用していたそうだ。腰痛は約1年半前から、肩関節の痛みは5か月前からあり、頻繁に痛みを繰り返しているとのこと。週に5日バドミントンの練習を行っており、特定の動きができなくなっているらしい。
初回の施術では、肉体面の機能異常障害を脊柱中心にアクティベータで調整した後、さらにメンタル面との関係性による誤作動記憶の調整を行った。特に「恐れ」に関するキーワードは、肉体面に影響を及ぼしていた様子。症状が改善されないことによって、バドミントンの試合に負け、さらには練習が楽しくなくなり、最終的にはバドミントンを辞めることになるのではないかという未来へのネガティブな空想が関係していた。

2回目、8日後の来院日、初診時の症状はかなり改善されていたが、腰に違和感があるとのこと。PCRTの検査をしてみると「意味記憶」の誤作動が関係していた。脊椎分離症との診断を受け、無意識的に動きを制限していたようだ。「意味記憶」とはどのような影響を及ぼすのかという本質を分かりやすく説明して調整を行った。
その後、2回の来院を経て、腰痛や関節痛はほとんど良好とのことで喜んでいただいている。もしも、このような「意味記憶」による誤作動記憶の調整をしていなければ、恐らく腰痛の慢性化は継続していただろう。施術によって肉体面のバランスをしっかりと調整しても、無意識の脳は、繰り返し慢性症状を引き起こさせていただろう。

このように、慢性症状を本質的に改善させるためには「意味記憶」や「エピソード記憶」に関係する誤作動記憶の調整はとてもパワフルだと感じる。ただし、このような治療法はほとんど一般には知られていないので、「西洋医学の目」で診てもらうことを期待している患者にはあまり効果が引き出されないかもしれない。
PCRTの「誤作動記憶を調整する」という治療法の意図や理屈をある程度納得していただけているかどうかは、治療効果を引き出すための前提条件になるだろう。PCRTの治療法の説明、いわゆる「患者教育」は、患者との信頼関係を築いて治療効果を引き出すためにはとても大切な要因になるだろう。PCRTを希望される患者には「エネルギー医学の目」「心身相関医療の目」「脳科学の目」で診ているということをしっかりと理解していただけるように努めたい。


《連載43》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


6. 日本編 〜杉山和一小伝〜

<小伝3>(つづき)

徳川家康は天下を統一するとまもなく、これまでの慣例を尊重し、当道座に次のような特権を認可した。
1. 当道座の自治を認め、裁判権を与える。
2. 検校などの盲官とその売官を認め、売官金は売主の所得とする。運上金の徴収と、それを座頭以下の盲人に配当することを認める。
3. 2で得た金による金貸業を黙認し、返済金の先取権を認める。
4. 全国の盲人を当道座に加入させ、京都の職検校と江戸の総検校とに統括させる。
5. 盲人には一切の税金を免除する。

などである。要するに、血縁的地縁的共同体の生産から疎外された盲人たちの、強固な仲間組織としての当道座があり、そのヒエラルヒーの頂点に検校は位地していた。検校の住宅の前では、勾当以下の者が馬や駕籠に乗ったまま通り過ぎることは許されなかった。当道座中の者が路上で出会った場合は、下位の者は上位の者に対して、笠を取り、木履(くつ)を脱ぎ、二度礼をする、などという規定も「当道座の自治」の中には含まれていたのである。この階級、身分序列を維持するために、服装の意匠や色にも細部にわたる規定があったことはいうまでもない。
検校は紫衣を着ていた。「むらさきの雲気座頭のやねに立つ」という川柳は、盲人の検校昇進への執念を、たくみに詠んだものである。
前に触れたような特権を与えられた当道座は、内部では検校同士の地位争奪が強まり、外部からは利殖の対象として狙われるようになったのは当然である。晴眼者(目明きのこと)の町人が一夜にして検校になった話、吉原の遊女を1000両で身請けした検校の話なども伝わっている。勝海舟の祖父にあたる男谷検校の場合も、買官によるものだったという。

こうして中世以来、平曲(へいきょく)などの上演と伝授を中心として結合してきた芸能座としての当道座は変質し、盲官の売買と配当が中心的機能となり、いわば“配当座”へと変転したことになる。この特権的階級制度に対しては、封建支配者の中にも有力な批判が存在していた。水戸黄門として知られる家康の孫、光圀は「瞽者(こしゃ)の検校、勾当は、みな其同類の中の階級にて……崇敬する事あるべからず」と検校などの特権を露骨に批判している。八代将軍・吉宗は、享保の改革の一環として江戸総検校の廃止を断行した(1736年)。
1871年(明治4年)、太政官布告「盲人ノ官職自今被廃候事」により、600年来の歴史を持つ盲人制度は廃止されることになる。(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(36)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■臨床的特徴の中には、慢性疼痛および活動障害のリスクファクターとなっているものが数多く存在する。心理社会的因子は、医学的症状および徴候よりも慢性化にとって重要なリスクファクターである。http://amzn.to/Hk8veA
……腰痛は何としても急性期の段階で解決しなければなりません。もし患部の生物学的損傷だと考えていたら、イエローフラッグ(心理社会的危険因子)を見逃してしまい、腰痛を慢性化させるだけでなく再発率も高めてしまいます。それを回避するためには、腰痛疾患(坐骨神経痛を含む)を「生物・心理・社会的疼痛症候群」として治療する必要があります。

■「迅速な回復のために良好な予後に関する正確な情報を提供」「軽い運動は有害でないことを再確認」「日常の活動を維持するような現実的指導」「仕事に復帰するような現実的指導」。http://amzn.to/Hk8veA
……急性腰痛(ぎっくり腰)の初期管理は、トリアージと患者に正確な情報を提供することがきわめて重要です。ところが今の日本では画像検査に依存するだけならまだしも、患者には時代遅れの不正確な情報しか提供していません。こうした不適切な医療の犠牲になるのは患者なのです。

■重度の腰痛と活動障害は数日〜数週間で顕著に改善するが、軽度の症状は長期間持続することがあり、数か月におよぶ場合も少なくない。http://amzn.to/Hk8veA
……急性腰痛(ぎっくり腰)は慢性化することがあるけれども、その多くは数日から数週間以内に改善するものだと考えてください。基本的には予後良好な自己限定性疾患です。

■医学的管理は患者の臨床経過と転帰に大きな影響をおよぼす。初期管理には以下のものが挙げられる。「徹底した病歴聴取と簡単な理学検査」「重篤な脊椎病変のレッドフラッグがないことを再確認(ラベリングの回避)」。http://amzn.to/Hk8veA
……新たな腰痛概念に基づく医療では、レッドフラッグ(生物学的危険因子)が認められなければ、患者を不安にさせるようなレッテル貼り(病名・診断名)を避けるべきだとしています。

■「迅速な回復のために良好な予後に関する正確な情報を提供」「軽い運動は有害でないことを再確認」「日常の活動を維持するような現実的指導」「仕事に復帰するような現実的指導」。http://amzn.to/Hk8veA
……急性腰痛(ぎっくり腰)の初期管理は、トリアージと患者に正確な情報を提供することがきわめて重要です。ところが今の日本では画像検査に依存するだけならまだしも、患者には時代遅れの不正確な情報しか提供していません。こうした不適切な医療の犠牲になるのは患者なのです。

■適切な情報とアドバイスによって、患者の不安を軽減し、ケアに対する満足度を向上させることができる。http://amzn.to/Hk8veA
……不適切な情報とアドバイスで患者の不安をあおり、治療満足度を低下させる治療はもうやめましょう。まずは迷信や神話ではなく、根拠に基づく正確な情報を入手してください。ただしネットを使って日本語で検索してもヒットしません。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (61)

根本 良一(療動研究所主宰)

【 連動操体法の応用編 】


5. 腹痛、胃が痛い

腹痛は、「このあたりが…」というだけで、どこが痛いということを特定しにくい。同様に内臓痛と腹筋痛とを区別することもむずかしいが、一般的に内臓痛と体性痛とは次のように区別されている。
①内臓痛は痛みがどこになるかはっきりしないのに対し、体性痛は痛い部分が病変部である。
②内臓痛は正中線上にあるのがほとんどだが、体性痛は場所を選ばない。どこにでも痛みが出る。
③内臓痛は一般に疝痛様の痛みだが、体性痛は持続する痛みが多い。
④内臓痛は腹壁筋が硬く感じる様子はないが、体性痛は硬くなることが多い。「筋性防御」と言われるものである。

操体法で解消できるのは、腹筋痛などの体性痛に限られている。腹部の表層部(皮膚および皮下脂肪は別)は外腹斜筋、腹直筋、内部は胃、腸、腎臓、肝臓などの周辺に痛みがある。痛みの種類にもよるが、特別の場合を除き、外腹斜筋、腹直が緊張していることが多いので、腹痛を感じたなら、まず次の点をチェックしておきたい。
・肩や背中にコリがあるか、脇から胸にかけて肋骨に沿った圧痛があるか。
・腹筋が縦にコリコリ硬くなっているか。
・恥骨の上縁側方に触れると、痛いくらいの硬結があるか(腹直筋下部)。
これらがあれば、腹筋の緊張を緩解する。こうした異常の起こる原因は、次のようなことが指摘できる。

1)姿勢
腰を丸くしたり、姿勢が偏っていて背部の筋が疲れると胸部から腹部が硬くなる。
2)走る
走ると腹部が痛むことが多い。腸、脾臓などの血液循環不良、外腹斜筋が運歩のさい交互に緊張するための筋過労などによる。
3)冷える
冷えるとまず腰背部が冷たくなり、次に腹部が冷たくなり、腹筋が緊張して腹が痛みだす。さらには腸まで冷えて下痢をしたりする。
4)心労
心配したり気を遣うと、上胸背部が緊張する。そして胸部、腹部へと緊張が波及していく。


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■腰の新手術でミス、女性死亡…大腸傷つけられる

千葉県船橋市の船橋整形外科病院で今年1月、腰部の手術を受けた県内の50歳代の女性が誤って大腸を傷つけられ、3日後に敗血症で死亡していたことが、5月16日わかった。
脇腹に小さな穴を開けて医療器具を入れる新しい手術方法で、同病院では昨年10月に導入されたばかりだった。同病院は取材に対し、「死亡したのは手術中のミスが原因だった」と認めている。
同病院によると、女性は腰の神経が背骨に圧迫され、足がしびれるなどする腰部脊柱管狭窄症を患っており、同病院で1月14日に手術を受けた。この際、担当した男性医師が誤って医療器具で大腸の一部に穴を開けたとみられる。女性は同月16日、意識が低下したため別の病院に搬送されたが、翌17日に死亡した。
(5/17 朝日新聞)


NEWS ■ <がん患者> 復職5年。5割が勤務継続…大企業調査

がんと診断されて復職した大手企業会社員の約半数が5年後も継続して働いていることが東京女子医大の遠藤源樹助教の大規模調査でわかった。がん患者の長期の追跡実態調査は日本で初めてで、復職後の実態が判明した。中小企業ではがん患者本人や企業が仕事をあきらめる例が多いが、遠藤助教は「復職支援を充実させれば、がんを患ったベテランを切らずに戦力を維持できる。企業のためにもなることが示された」と話している。
4月26日に福島市で開かれた日本産業衛生学会で発表した。遠藤助教は、2000〜11年末までにがんと診断され治療後に復職した会社員1010人を追跡調査した。長期の休業期間など復職支援が充実した大企業に属する人が対象。その結果、復職日から5年後に51.1%が仕事を継続していた。女性では60.4%に及んだ。がんで休業した重症者が対象で、内視鏡手術など短期の治療を受けた人は含まれない。実際の5年後勤務継続率はさらに高い可能性がある。
勤務継続率はがんの種類で差が大きく、男性の肺がん(14.2%)▽男性の食道がん(28.7%)は低かったのに対し、前立腺など男性生殖器がん(73.3%)▽子宮など女性生殖器がん(67.8%)▽乳がん(63.4%)▽胃がん(女性63.1%、男性62.1%)は高かった。
復職後の勤務年数の中央値を見ると、女性の乳がん、生殖器がん、男性の生殖器がん、男女の胃がんは10年を超えていた。
ただ、調査対象は大企業が中心で、中小企業や派遣社員では身分保障期間が短く、離職も多いとみられる。厚生労働省研究班の04年のアンケート調査では勤労者の34%が依願退職か解雇されていた。遠藤助教は「がんだと復職が難しいというのは偏見で、十分な支援を行えば、長期に働ける。がんによる復職を法的に保障すべきだ」と話す。
(5/17 毎日新聞)


NEWS ■職場のがん検診、実態を初めて調査…厚労省

職場でのがん検診について、胃がん、肺がん、大腸がんの受診率は6〜7割と高い一方、精密検査の対象となった人では4割程度にとどまっていることが5月12日、厚生労働省の調査でわかった。職場のがん検診受診の実態調査は、今回が初めて。2014年度の実施状況について、健康保険組合を対象に調査を実施し、9割(1238組合)から回答を得た。
被保険者の部位別のがん検診受診率は、胃がん56.6%▽肺がん71.9%▽大腸がん60.8%▽乳がん34.7%▽子宮頸がん32.2%だった。胃がん、肺がん、大腸がんについては、市町村で実施する検診も含む、これまでの調査結果(4割程度)と比べると高かった。
一方、精密検査の受診率では、胃がん44.2%▽肺がん45.1%▽大腸がん45.2%で、6〜8割となっている既存の調査と比べていずれも低い傾向が見られた。
(5/12 毎日新聞)


NEWS ■がん死亡率に地域格差…国際医療福祉大学

がんの死亡率を全国に344ある2次医療圏で比較すると、最大で約40ポイントもの地域格差があることが、国際医療福祉大学の埴岡健一教授らの分析でわかった。
埴岡教授らは、2008〜12年の国のデータを利用し、医療圏ごとにどれだけがんで死亡するか、全国値を100として比を示す「標準化死亡比」を算出。これを死亡率として、全がんと肺、肝臓、胃、大腸のがんについて医療圏ごとの死亡率の高低が比較できるようにした。
全がんで死亡率が最も高かったのは、男性が青森県・津軽地域(弘前市など)、女性が北海道・釧路(釧路市など)で、それぞれ123.4、119.3だった。最も低かったのは、男性が長野県・飯伊(飯田市など)77.6、女性が沖縄県・八重山(石垣市など)76.3で、最大で43〜46ポイントの差がついた。
(5/10 読売新聞)


NEWS ■日本人がメタボリック症候群になりやすい業種

日本人の会社員12万人の解析から、メタボリックシンドローム(MS)の有病率は業種間で大きく異なり、男性では「建設業」「運送業・郵便業」「学術研究、専門・技術」「協同組合」の4つの業種で、女性では「医療・介護」「協同組合」でMS有病率が高いことが、福島県立医科大学衛生学・予防医学講座の日高友郎氏らの検討でわかった。保健指導を行う際には、業務内容も考慮に入れた指導が求められるとしている。詳細は、「PLOS ONE」オンライン版に4月15日掲載された。
同氏らは、全国健康保険協会のデータベースを用いて、2012年に福島県内で健康診断を受診し、ウエスト周囲長、血圧、血糖、脂質、MSの判定に関するデータが得られた35〜75歳の会社員男女約12万人のデータを収集。質問票への回答から業種を判断し、北米産業分類システム(NAICS)に準じて、18の業種に分類した。
その結果、男性会社員では4人に1人がMSを保有していたが(有病率22.2%)、女性の有病率は4.4%にすぎなかった。男女を合わせた全体のMS有病率を業種別にみると、運送業・郵便業(25.7%)、建設業(21.0%)、鉱業・採石業(20.5%)が高く、医療・介護(8.7%)、公務(11.4%)、娯楽・飲食・宿泊業(12.1%)が低かった。
またMSの標準化有病比(Standardized Prevalence Ratio;SPR)を業種別に比較したところ、男性では「建設業」「運送業・郵便業」「学術研究、専門・技術」「協同組合」の4つの業種で高く、女性では「医療・介護」「協同組合」で高かった。なかでも「運送業・郵便業」の男性はMSに加えて、ウエスト周囲長の異常、高血圧、耐糖能異常、脂質異常症の有病率も高かった。
日高氏は「本研究は業種をクラスター化することにより、業種別の健康予測を可能としている。性別や業種に基づき、的を絞ったメタボリックシンドローム対策、保健指導ができるようになると期待される」とコメントしている。
(5/2 HealthDayNews)


NEWS ■慢性腰痛治療のゴールは「何ができるようになりたいか」

4月19日、塩野義製薬と日本イーライリリーがメディアセミナーを開催した。このなかで福島県立医科大学整形外科教授の紺野愼一氏は、「慢性腰痛における治療は、それによって何ができるようになりたいかを目標にするのが重要だ」と述べた。慢性腰痛に対して治療を進めていくうえで、何に留意すべきか紺野氏は大きく2つのポイントを挙げる。
1つ目は治療開始時にある。疼痛治療において、完全に痛みを取ることを最終目標とすると、患者も医療者もなかなかゴールにたどり着けない。「慢性腰痛によってどんなことができなくなったのか」を患者にヒアリングしたうえで、「治療によってどんなことができるようになりたいのか」を考え、それを両者の共通目標として治療を進めていくことが重要だという。目標はできるだけ具体的な内容で、「夫婦で30分程度の散歩ができるようになりたい」など、患者一人ひとりの思いに添うことが大事だ。
2つ目は治療体制にある。慢性腰痛は必ずしも“腰が悪い”わけではない。慢性腰痛保有者の約3分の1は心理社会的要因が少なからず関わっており、「多面的、集学的なアプローチが必要」という。紺野氏が臨床で実践しているのは月1回のリエゾンカンファレンスで、メンバーは整形外科に関連した医療スタッフのほか、精神科医や臨床心理士、精神科ソーシャルワーカーで構成する。カンファレンスでは、患者の成育歴に虐待がないかや、最近の仕事や家族に関する悩みなど、幅広くかつ詳細な情報が共有される。一見、症状とは関連がないように思われるが、こうした情報から患者の置かれている状況をひも解くことで、腰痛の真の原因が明らかになることがあるという。
これらの治療アプローチに共通するのは、医師と患者のコミュニケーションだ。紺野氏は、腰痛を訴える患者に対し、単純ではない痛みのメカニズムがあることを医師がきちんと説明し理解を得たうえで、患者の望むゴールを共に目指すには、綿密なコミュニケーションに裏付けられた互いの信頼感が何をおいても基本だと強調した。
(一部収載4/26 ケアネット)


NEWS ■20年後には65歳以上の4人に1人が認知症―富山大学

富山県では、高齢者の6人に1人とされる認知症患者が、20年後には4人に1人にまで増加する可能性があり、また、脳血管障害に加えて、糖尿病が認知症の重大なリスク因子とする調査結果を、富山大学地域連携推進機構地域医療・保健支援部門の研究グループが報告した。研究を率いた関根道和氏らは「認知症では根本的な治療薬が開発されていないため、早期発見・早期対応とともに予防が重要だ」とし、糖尿病対策や認知症健診などの保健医療体制の構築が急務であると訴えている。
研究の調査対象は、同県の65歳以上の高齢者の0.5%を無作為に抽出し、同意の得られた1303人。認知症の有無は、第1次調査で改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を用いて認知症の疑い例を抽出し、第2次調査で精神科医が面接を行って判定した。
その結果、富山県の65歳以上の高齢者における認知症の有病率は、1985年度の4.7%から2014年度には15.7%へと上昇し、認知症患者は約5万人(高齢者の6人に1人)と推定された。認知症の将来予測を行ったところ、認知症患者は20年後の2035年には8.7万人(同27.4%)となり、高齢者の4人に1人が認知症である可能性が示された。
また、研究グループは、2014年度調査の結果を用いて「認知症あり」と判断された140人と「認知症なし」と判断された1077人を対象に、認知症の有無と生活習慣(飲酒、喫煙)、糖尿病や高血圧、脳卒中などの既往歴との関連を検討した。その結果、糖尿病の既往があると認知症を発症するリスクは約2倍であることがわかった。脳卒中の既往がある場合は、男女ともに認知症リスクは約3倍であり、また、男性はパーキンソン病の既往があると認知症リスクは5倍を超えることが明らかにされた。研究グループは、なかでも糖尿病の認知症に対するリスクについて言及し、糖尿病があると脳内にβアミロイドが蓄積しやすいことが、これらの関連に影響を及ぼしているとの見方を示している。
(4/25 HealthDayNews)


NEWS ■アルコールや加工肉で胃がんリスクが上昇

アルコール、加工肉(ハムやベーコンなど)、過体重はいずれも胃がんリスクを高める可能性があり、さらにこれらの「飲み過ぎ」「食べ過ぎ」「太り過ぎ」が進むにつれてリスクは上昇していくとの報告が、米国がん研究機関(AICR)および世界がん研究基金(WCRF)から発表された。
今回のレビューでは、胃がんと食事、身体活動、体重について、入手できる全ての科学的データを組み合わせて分析した。解析には胃がん患者7万7,000人を含む成人1750万人を対象とした研究89報が含まれた。さらに、2種類の胃がん(食道に近い胃上部のがんと胃下部のがん)に各リスク因子が及ぼす影響も検討した。
その結果、米国の胃がん患者の約7人に1人は、もし1日の飲酒量を3杯未満に抑え、加工肉を食べず、健康体重を維持していれば、発症を避けられた可能性があると結論づけられた。これは毎年約4,000例の胃がん発症に相当する。
AICRのAlice Bender氏は、「これらの関連性に強いエビデンスを示した報告は今回が初めて。がんリスクを低減するためにできることがあり、日々の選択で違いが生まれる」と話す。今回の報告のポイントは以下の通り。
・1日の飲酒量が3杯以上になると胃がんリスクが上昇する。
・1日の加工肉摂取量が50g(ホットドッグ1本またはボローニャソーセージ2枚相当)増えるごとに、胃下部がんのリスクが18%上昇する。
・BMIが5増加するごとに、胃上部がんのリスクが23%上昇する。
(4/20 HealthDayNews)


NEWS ■小児期の牛乳アレルギーで骨が弱くなる?

牛乳アレルギーの小児は、他の食品アレルギーの小児に比べて、骨が弱い可能性があることがわかった。モントリオール大学(カナダ)准教授のGenevieve Mailhot氏らの研究で示唆され、論文は「Pediatrics」オンライン版に4月20日掲載された。
研究では、食物アレルギーのある思春期前の小児81人を調査した。対象児の平均年齢は約7歳で、52人に牛乳アレルギー、29人にそれ以外の食物アレルギーがあった。Mailhot氏らは、対象児の骨密度と血液中のビタミンD濃度を評価した(ビタミンDは骨の健康に欠かせないもの)。さらに、児のカルシウムとビタミンDの摂取量を記録した。
その結果、牛乳アレルギー群では6%に骨密度低下がみられたが、他のアレルギー群では骨密度低下は認められなかった。牛乳アレルギー群ではカルシウム摂取量も1日930mgと、他のアレルギー群の1,435mgに比べて少なかった。なお、カルシウムの1日推奨摂取量は1000mgとされている。ビタミンDの摂取量は、両群で推奨1日量の600IUを下回っていた。
なお、牛乳アレルギー群でカルシウムサプリメントを摂取している児は37%、ビタミンDサプリメントを摂取している児は44%に留まったが、摂取している児では平均摂取回数が週5回以上と、良好に服用されていた。
Mailhot氏は、「子どもが牛乳アレルギーの場合、大豆、アーモンド、カルシウム強化オレンジジュースなど、他のカルシウムが豊富な食品をとらせるようにしたい」と話している。ただし、今回の知見は牛乳アレルギーと骨密度低下の因果関係は示しておらず、また骨折を心配するほどの骨密度の差は認められなかったという。
(4/20 HealthDayNews)


NEWS ■やっぱり「良い睡眠は健康によい」

夜によく寝ると、風邪やその他の感染症を防げる可能性があるとする研究結果が「JAMA Internal Medicine」4月11日号にレターとして掲載された。
研究によると、一晩の睡眠時間が5時間以下の人は、睡眠時間がそれより長い人に比べて、過去1カ月以内に風邪を引いたオッズが28%高かった。その他の感染症の過去1カ月の罹患オッズは、睡眠時間が短い人のほうが7〜8時間睡眠の人よりも80%以上高かった。また、睡眠障害または睡眠の悩みがある人は、過去1カ月に風邪を引いたオッズが約30%高く、感染症全般のオッズは2倍以上だった。
本研究を実施した米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)心理学助教授のAric Prather氏らは、過去に、風邪ウイルスに曝露したときの感染リスクと睡眠時間の関連性を示している。その結果が現実世界でも裏づけられるかどうかを調べるために、同氏らは今回、2005〜2012年の大規模な全米健康栄養調査(NHANES)のデータを用いて、平均年齢46歳の男女2万3000人近くを評価した。対象者は睡眠時間、睡眠障害の有無に加えて、過去1カ月に風邪およびその他の感染症(インフルエンザ、肺炎、耳感染症など)に罹患したかどうかを報告した。
Prather氏は、「平均睡眠時間が5時間以下の人は、7〜8時間の人に比べて、風邪とその他の感染症のリスクがかなり高まった。睡眠不足が易感染性につながる理由は明らかになっていないが、睡眠不足だと、感染症と戦う白血球であるT細胞があまり機能しないことがわかっている」として、良い睡眠をとるためには、まずは毎日同じ時間に起きることから始め、寝室を涼しく、静かで暗くなるように整えることを勧めている。
(4/11 ケアネット)


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(編集人:北島憲二)


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