エンタプライズ発信〜メールマガジン【№54】2015. 10
秋の深まりが紅葉の南下とともに訪れています。関東でもシャワーではなく浴槽の湯に浸からないと安寧を得られないほど冷涼感を覚える時節となりました。寒い日に暖かい湯に浸かっていると、至福感とともにウトウトしてしまうことがよくあります。このウトウト感ではなく、一瞬気を失っていたようだとか意識を失いそうになった、という経験を持ちの方。特に、浴槽から立ち上がった瞬間にこの症状が出ることが多いという場合、この状態は脳に十分な血液が達せず、意識を失いかけているという極めて危険な状態です。これを起立性低血圧あるいは一般的には脳貧血と呼んでいます。体が温まっているときは末梢血管が拡張し、体全体の血液抵抗が落ちています。そのようなときに急に立ち上がると、心臓の機能が正常な人でも、血液が下肢に集まってしまい、脳まで十分に血液が届かなくなるためです。この予防法としては、長く浸かりすぎないことです。長く浸かることで汗をかいて脱水状態になる、同時に体が温まって末梢血管が開く、これが脳貧血を引き起こす主な要因と言います。次に急に立ち上がったりせず、浴槽を支えにしてゆっくり行動することが大事です。もしフラッとして目の前が真っ暗になったりしたときの対処法は、とにかくしゃがむことです。しゃがむことによって下肢が圧迫され、脳に行く血液が増加します。仮に意識を失って倒れたとしても、その方が打撲などの軽い症状で済むことが多いと言います。編集子は2年ほど前に叔母を浴槽内での急変によりあの世に見送ることになりました。74歳で軽い認知症がありましたが、意識喪失に伴う事故という診断でした。家庭風呂は密室ですので、老人のいる家ではこまめに様子を見ることも肝要だと思います。
★☆★━━━━━━━■CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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【 News 】
『ソーラーボディ(the Solar Body)』 一指 李承憲・著
体温と呼吸に着目し開発されたソーラーボディ5.5.5運動法は、「皿まわし」「つま先たたき」「脳波振動」の3つのトレーニングから成り、1つのトレーニングを5分ずつ合計15分行う。この簡単な体操を続けることで自然治癒力が高まる健康法として注目されているエクササイズを紹介。とくに頭を左右に揺らす脳波振動は、ストレスで硬くなった肩や首の筋肉をほぐし、脳への血流が改善されることで脳波が安定し、ストレスが解消され、脳と体が健康的なエネルギーで満たされていくと好評を得ている。
A5判、約200頁、定価:1,500円+税
【 Information -1-】
「第14回JACシンポジウム」 開催の案内
◆テーマ:統合医療を科学する〜西洋医学の見方・カイロプラクティックの見方〜
◆開催日時:11月1日(日)10時〜17時15分 /11月2日(月)9時30分〜 16時
◆開催会場:愛知県産業労働センター ウインクあいち 12階
(名古屋市中村区名駅4−4−38)
◆講演1:「手技による脊椎と四肢アジャストメントの統合的アプローチ」
【講師】リカルド・藤川(マドリッドカレッジ・オブ・カイロプラクティック学長=敬称略)
◆講演2:「先制医療・統合医療へのパラダイムシフト」〜先手必勝の積極的な予防医療は我が国の健康寿命延伸〜
【講師】福沢嘉孝(愛知医科大学病院 先制・統合医療包括センター教授=敬称略)
◆主催: 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)
◆参加費 :会員:28,000円 一般:35,000円(いずれもパーティー代および2日目昼食込)
◆お問合せ: 03-3578-9390 E-mail : info@jac-chiro.org
【 Information -2-】
「日本ホメオパシー医学会 一般向けセミナー」
日本ではあまり知られていないホメオパシーだが、200年以上続いている相補・代替・伝統医療のひとつ。ヨーロッパの多くの国々で医療として普及し、健康保険制度に取り入れられている国もある。日本ではホメオパシーは始まったばかりといえる。ホメオパシーとは一体どのような治療なのか、本当にホメオパシーは効くのか、安全な治療なのか…。日本ホメオパシー医学会では、一人でも多くの方にホメオパシーについて知っていただくために、一般向けのセミナーを企画している。
◆講義内容 :ホメオパシーとは/ホメオパシーの薬とは/ホメオパシーの診察とは/ホメオパシーの適応は/ホメオパシーは安全か
◆開催日 :11月7日(土)15:00〜16:30(受付14:30より)
◆講 師 :板村論子(MD., Ph.D., MFHom)
◆会 場:RCC文化センター(広島市中区)<参加無料>
◆参加ご希望の方は日本ホメオパシー医学会事務局宛E-mailで「参加希望」とお送り下さい。info@jpsh.jp(URL:http://www.jpsh.jp)
◎連載vol.12
エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究
<小社編集部編>
再 生(つづき)
トカゲを使ったベッカーの実験では、外傷部位の電気的環境を変化させることで脱分化が起きることが示された。要するにきわめて弱い電場を与えると、抑圧された遺伝子が活動を始めるというわけである。
では、人間はどうだろう。人間において組織の再生が起きるのは骨折したときに限られると近年まで考えられていた。ところが、骨の重篤な感染症に関する研究を行ったベッカーは、電気化学的方法によって細菌の感染を抑圧できるとともに、ヒトの線維芽細胞を脱分化させて大量の幼若細胞をつくり出せることを発見したのである。
この方法は、臨床試験によって瘢痕組織を形成させることなく皮膚および骨、軟部組織の治癒を促進することが確かめられた。ベッカーはこの治療法が「多重感染を起こして慢性化した外傷や、主要な軟部組織や骨の損失を伴う急性の外傷、あるいは電離放射線による火傷に対して有効である」と述べている。ベッカーが見い出したこの方法は、種々の癌細胞を脱分化させ、増殖を阻止することもわかっており、将来が非常に期待されるエネルギー療法である。
ベッカーによる臨床試験の優れた結果は、生体に関するエネルギー論が理論的にも実践的にも通用することを示している。そこでこのあとは生体エネルギーシステムを詳しく検証していくことにしよう。
全身に広がる線維組織のネットワーク
全身にくまなく広がる生体マトリックスという連続体は、生体のしくみや健康時と病態時におけるエネルギーの役割を知る上で鍵となる組織である。細胞の活動には、ホルモンや神経伝達物質が関与していることは言うまでもないが、細胞外基質も特有の重要な作用を及ぼしている。この事実がはっきりと示されたのは、in vitro の実験系で哺乳類の細胞にホルモンを作用
させて、正常な分化を促そうとした研究からである。
結論を言うと、この実験自体は失敗に終わった。しかし哺乳類の腺組織から採取した非細胞性の細胞外基質を加えて先と同じ細胞を採取したところ、分化が始まり、機能を果たせる組織が形成されたのである。
つまり、哺乳類の細胞の遺伝子発現を実際にコントロールしているのは、細胞外基質であるというわけだ。全身に存在する細胞外基質は、あらゆる細胞や分子をしっかりとつなぐ役割を果たしている。しかし、この強い絆のような細胞外基質の役割は、ほとんど認識されていない。(つづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)
★連載エッセイ ㉒☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
「ポジティブな感情」が及ぼす影響
長年バドミントンをしていた患者さん。最初は肩こりと親指の付け根の痛みを訴えて来院。検査をしてみると頸部を伸展すると痛みが強く、バドミントンの練習でも上を向くのがつらいとのこと。特に朝に痛みを感じるらしい。検査をして本人が訴えるよりもかなり良くない状態だという印象を受けた。また、病院や整骨院を受診されたが変化が感じられないとのことだった。
最初の2回の施術では、肉体面だけのバランス治療を行い、3回目の施術ではメンタル面との関係性を検査して施術を行った。特に朝に痛みを感じるということから、おそらく寝ている間に無意識に身体が緊張して朝痛いのだろうという経験的に推測した。
そこで身体の緊張を引き起こしているメンタル面に関連した誤作動のパターンを検査してみると「連帯感」と「喜び」という肯定的なストレスパターンが示されたので、関連する内容を患者さんにイメージしてもらいニューロパターンセラピーを施した。
それから4回目、5回目では経過が良く、5回目の施術日には、前回のバドミントンの試合でいいパフォーマンスができたとのご報告をいただいた。
ストレスが関節の慢性的な痛みなどに関わるということが、メディアでも取り上げられるようになってきた。しかし、ストレスというと一般的には「ネガティブな感情」だと思われがちだが、「喜び」や「意欲」といった肯定的な感情もストレス=刺激として身体に学習記憶され症状につながることも少なくはない。
将来は、「ポジティブな感情」も心身相関的に身体に影響を及ぼすということが当たり前に語られる時代が来るだろう。
自己ベストの更新! 未来への挑戦者
先日治療した水泳選手が、競技大会で自己ベストを更新して、個人種目とリレーで九州大会に出場できるようになったとの報告をいただいた。試合前での検査でも安定した状態だったので、おそらくいい結果が出るだろうと期待はしていたが、実際の競技では何が起きるか分からない。しかし競技ではパフォーマンスを何度もシミュレートして、誤作動の緊張を取り除き、ベストな状態が維持できた様子。想定以上の結果が出たことにとても自信が持てたようだ。
興味深かったのは、ある程度、九州大会に出場できるタイムが出せるようになると、本番で、そのタイムが維持できるようにと、「守り」に入る潜在意識がブレーキをかけていたことだった(結果は自己ベストが出て幸いだったが)。この「守り」に入るパターンは、潜在意識が生じさせる誤作動なのだが、スポーツ選手がある程度の成績を掴んだ時に陥りやすいワナでもある。この現象はスポーツ選手に限らず、様々な分野でも生じるワナで、知らず知らずのうちに自分の能力を制限してしまうようだ。例えば、組織の中である地位に就いたとき、その地位や立場を守ろうとする意識が潜在的に働いて、周りの人の動向ばかりが気になって、自分の更なる成長にブレーキをかけてしまうこともある。
長年、このような本質的な治療やパフォーマンス向上のお手伝いをさせていただいて感じることは、人は常に「挑戦者」としての立場を忘れないようにしなければ、自分で自分の能力にブレーキをかけてしまうということだ。
何かにチャレンジし続ける心は、人を成長させ、心を豊かにさせてくれる原動力になると思う。挑戦者であり続ける人は、さらに未来に向かって羽ばたき、輝き続けるだろう!
《連載36》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
5. インド編 〜古代医学の最高峰〜
—–世尊が舎衛城にある絵孤独(ぎつこどく)長者の園林である祇多林(いわゆる祇園精舎のこと)に逗留していたときのこと。1人の比丘が疥癬に罹ったというので医者のもとに赴き、「先生、私は疥癬に罹りました。薬を処方していただきたい」と言った。医者が、
「聖者よ、収斂剤を用いなさい。そうすればあなたは健康になりましょう」
と言うと比丘は答えた。
「先生、私はどうして愛欲を娯しむことができましょうか」
「比丘よ、あなたの薬はそれしかありません。そうでなければ、あなたは健康になることはできません」と。
その次第を比丘たちは世尊に申し上げた。……世尊が語った。
「収斂剤は5種ある。アームラカ果など前述のとおりである」
かの僧は収斂剤を処方して四肢に擦り込んだ。すると薬は一塊(ひとかたまり)になってしまった。世尊は、
「挽き砕くがよい」
と言った。比丘たちは湿らせて挽いた。すると団子になってしまった。世尊は、
「乾かしなさい」
と言った。彼らは日当たりのよい所で乾かした。すると薬は効力がなくなってしまった。世尊は語った。
「日当たりのよい所で乾かしてはならぬ」
そこで彼らは薬を陰で乾かすと、黴(かび)が生じた。世尊は言う。
「ときどき陰る、日の当たる場所で乾かすがよい」と。
比丘は収斂剤を四肢に塗って、すぐに沐浴をした。効力がなかった。そこで世尊が語った。
「手でよく擦り込むべきである。こうして収斂剤を塗ったあと沐浴すべきだ。そうすれば収斂の効き目があろう」
と。比丘の病気は収斂剤によって癒えた。(『アーユルヴェーダ研究』1973)
(つづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(29)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■腰痛のない大学生25名を対象に腰への負担に対する心理テストと性格特性の影響力を調べた結果、心理的ストレスは単独で腰痛の原因になり得るだけでなく、内向型と直感型の性格特性は心理的ストレスによって腰痛発症リスクが増大する。http://1.usa.gov/pD9Tsn
………イエローフラッグ(心理社会的因子)が腰痛の発症、慢性化、再発率に関与していることは科学的に証明されていまけど、もしかすると腰痛になりやすい性格というものがあるのかもしれません。今後の研究に期待したいところです。
■椎間板ヘルニアと診断された腰下肢痛患者46名と健常者46名をMRIで比較した結果、症状の有無は職業上の問題(心理的ストレス・集中力・満足度・失業)と心理社会的問題(不安・抑うつ・欲求不満・夫婦関係)の影響が大きい。http://1.usa.gov/q8PXfR
………健康な人でも76%に椎間板ヘルニアが見つかります。症状が出る人と出ない人との違いはイエローフラッグ(心理社会的因子)の有無にあるということが国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した研究で明らかにされました。
■腰部椎間板切除術を受けた患者45名の治療成績に影響を与える因子を分析した結果、職場復帰状況は画像所見や臨床症状とは無関係で、心理的因子(うつ)と職業上の心理社会的因子(職場での心理的ストレス)の影響が強いことを確認。http://1.usa.gov/osP4XY
………椎間板ヘルニアの手術成績を左右するのはイエローフラッグ(心理社会的因子)であることが再び証明されたことになります。画像所見や症状の強さが問題なのではありません。
■疼痛を5番目のバイタルサインとして日常的に数値化する方法をがんセンターで採用した結果、患者の満足度は向上したものの、オピオイドによる副作用が2倍以上に増加した。疼痛を最重要視するのは患者の生命を危険にさらすことになる。http://1.usa.gov/rpRyjj
………痛みだけに目を奪われていると患者を殺しかねないということです。
■疼痛を5番目のバイタルサインとして疼痛スケールで評価すると、薬の過剰投与に気づかないばかりか投与不足を過度に強調してしまう。このバランスの悪さが鎮静剤と麻薬のさらなる過剰投与を招き、患者の死亡や活動障害の原因となる。http://1.usa.gov/nRF75X
………これも痛みに注目しすぎると過剰診療を招いて患者の命を危険にさらすという論文です。疼痛を脈拍・体温・呼吸数・血圧に次ぐ5番目のバイタルサインとして日常的に評価してはいけないのです。
■小児期に体験した不幸な出来事(交通事故による入院・親の死亡・両親の離婚・親のアルコール依存・貧困家庭)が壮年期における広範囲な慢性疼痛の予測因子であることが判明。トラウマとなるような体験は慢性疼痛の発症と重症度に関連。http://1.usa.gov/nePOkk
………震災後の影響でもっとも心配なのがこれです。被災した子どもたちが万が一慢性疼痛を発症しても、速やかに解決できるような体制を今から整えておかなければなりません。どうか根拠に基づく情報の拡散にお力をお貸しください。
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (54)
根本 良一(療動研究所主宰)
【 連動操体法の応用編 】
2. 腰に関わる障害
3)椎間板ヘルニア
25歳・女性、看護師。看護・ケアの分野には職業病といわれるほど腰痛を持つ人が多い。特に長身のこの患者はほかの人より深く屈曲することが多く、腰痛の時にはより苦しい。なかなか良くならないので、神経ブロックをして我慢していた。近く結婚することになっており、このままでは困るから、逆算してあと1ヶ月を限度に手術を使用か悩んでいた。
動作分析をすると、直立状態から前・後屈がしにくい。脚が痛いという標準的な症状なので、まず大腰筋の操作をし、内腿部の操作および外腹斜筋の操作の中部・下部、そして鼠徑部の操作を行った。
もう少しかな、と椅子に掛けさせ、膝を上げてもらう。両方ともよく上がる。痛くてできなかった前・後屈の動作も難なくでき、脚の痛みもなくなった。
その後、疲れたときの“くるろぎ”の姿勢、家での姿勢、特に寝るときの姿勢などをチェックし、椅子に掛けてラクな方へ膝を出す、肩を補助する、すなわち外腹斜筋と大腰筋の「自療操体法」を、動き出す前の準備運動として行うことを指示し、その練習をして終了した。
後日電話があり、本人は良くなったが、婚約者も腰が悪いので診てほしいと言う。婚約者は遠方だというので「先日の自療操体法を教えてあげたら…」と話した。
それから1年半。結婚した彼女が職場の同僚(内科医)をつれてきた。「夫です」と名乗った。「お蔭様でそれ以降ぜんぜん痛みません。痛みの兆しが出たら、教えてもらった療法をそっとやってみると快適になります。姿勢って本当に大事なのですね」と語った。
(この症状のなぜ?)
よく仕事がきついからと言うが、同じ仕事をしていても障害が出ない人もいるわけで、おそらく忙しいため疲れやくつろぐ姿勢が乱れて、悪い姿勢になっている場合が多い。そしてそれを引きづり悪い姿勢のまま「歪み」を残したまま仕事を継続するという悪循環が元凶と思われる。
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NEWS ■体力あるのは…男性は肥満、女性やせ形 スポーツ庁調査
成年男性では「やせ形」より「肥満」、成年女性では「肥満」より「やせ形」の人の方が体力は上-。スポーツ庁が10月11日日に公表した「平成26年度体力・運動能力調査」でこんな結果が明らかになった。今回初めて肥満度を示す指標「BMI」(低体重、普通体重、肥満)と体力テストの総合評価(5段階)、体力年齢との関係を調査した。
成年男性の体力テストの最高評価「A」の割合が最も高かったのは「普通体重」群の14.0%で、次いで「肥満」の8.6%、「低体重」の6.2%となった。成年女性では「普通体重」群の「A」の割合は11.6%。2番目は「低体重」の8.2%となり、「肥満」の6.8%を上回った。
体力年齢との関係では、成年男性で「体力年齢が実際の年齢よりも若い」割合が最も高いのが「普通体重」群の37.4%で、「肥満」の33.6%、「低体重」の19.0%と続いた。成年女性も「普通体重」群が35.1%とトップ。ただ、2番目は「低体重」の27.5%で、「肥満」の27.4%をやや上回った。(10/12 産経新聞)
NEWS ■医療費、初の40兆円超え—-13年度、7年連続増加
2013年度に使われた医療費は、前年度より8493億円(2.2%)多い40兆610億円で確定した。7年連続で増え、初めて40兆円を超えた。高齢化や医療技術の高度化を背景に、1人当たりの医療費も2.3%増えて31万4700円になった。厚生労働省が10月7日、公表した。今回公表されたのは国民医療費で、公的な医療保険と税金、患者の負担を合算したもの。健康診断や予防接種などは含まれない。
税金の負担が約4割を占める医療費の増加は、国の財政を圧迫する大きな要因だ。政府は団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年に保険と税金だけで54兆円になると推計。無駄を省いて医療費の伸びを抑制する重要性が一層増している。(10/8朝日新聞)
NEWS ■「貧乏ゆすり」は健康によい
足踏みをしたり、指でコツコツたたいたり、オフィスの椅子で座り位置をかえたり、多くの人は1日のどこかの時点でこうした動きをするが、これが実は健康によいことが、英リーズ大学食物科学・栄養学教授のJanet Cade氏らの研究で示唆された。
Cade氏らは、従来の研究で健康に悪いと判明している「長時間座ること」の問題について検討した。今回の研究の対象者は、35〜69歳の英国人女性約1万4,000人。予想どおり、長時間座っておりほとんど貧乏ゆすりをしない女性は、より活動的でそれほど座らない女性に比べて早期死亡のリスクが高かった。一方、たとえ長時間座っていても、中等度または非常に多く貧乏ゆすりをする女性では、早期死亡リスクは活動的な女性と同程度だと判明した。
今回の研究は、もじもじと動くことによるエネルギー消費が便益の直接原因であることは証明しておらず、さらなる研究が必要だという。ただし、共著者の1人は、「今回の結果は長時間座らないようにすることが最良だと裏付けているが、貧乏ゆすりでも十分な休憩になり、差が出ることがわかった」と話している。Cade氏らは「これまでの研究で、立ち上がって休憩すると健康リスクを低減できることが示されているが、座ったままもじもじと動くだけでも有益だと示した研究はこれが初めてだ」と同大学のニュースリリースで述べている。(10/6 HealthDay News)
NEWS ■介護事業者倒産が過去最多…報酬引き下げ影響か
信用調査会社の東京商工リサーチが9月30日、今年1〜8月の介護事業者の倒産が55件に上り、過去最多だった昨年の年間倒産件数(54件)を上回ったと発表した。4月から介護報酬が2.27%引き下げられたことや、景気回復による人手不足で人件費が上がっていることなどが影響しているとみられる。
従業員が5人未満の小規模事業者が37件で、前年同期比で倍増。また、2010年以降に設立された比較的新しい事業者が29件に上り、全体の半数を超えた。介護事業は、高齢化の進展で産業として成長が見込まれており、異業種などから安易に参入したものの、経営に行き詰まるケースが目立つという。同社では「介護報酬の引き下げの影響が本格的に表れるのは秋以降とみられ、今後、さらに倒産が増える可能性がある」としている。(10/1 読売新聞)
NEWS ■青年期の運動能力が高い人は血管疾患リスク低
青年期に運動能力や筋力が高い人は、いずれも低い人と比べて、血管疾患や不整脈に関する長期リスクが低いことが示された。ただし運動能力と不整脈リスクについての関連はU字型の相関がみられ、運動能力が高く血管疾患リスクが低くてもその健康ベネフィットが、不整脈リスクを上回ることはなかったという。スウェーデン・ウプサラ大学のKasper Andersen氏らが、同国1,100万人の青年について行ったコホート試験の結果、明らかにした。
研究グループは、1972年8月〜95年12月にかけて、徴兵義務に参加した1,100万人の男性について2010年末まで追跡した。運動能力・筋力と、血管疾患とそのサブグループ(虚血性心疾患、心不全、脳卒中、心血管疾患死)のリスク、また不整脈とそのサブグループ(心房細動や心房粗動、徐脈性不整脈、上室頻拍、心室不整脈、突然心臓死)のリスクとの関連について分析を行った。被験者の試験開始時点の年齢中央値は18.2歳で、追跡期間の中央値は26.3年だった。
最大運動能力は、自転車運動負荷試験の結果から推算した。筋力は、握力計を使った握力測定の結果とした。いずれも中央値を超えた人を、運動能力や筋力が高いと定義した。追跡期間中に発生した血管疾患イベントは2万6,088件、不整脈イベントは1万7,312件だった。
運動能力は、血管疾患・サブグループのリスクと逆相関の関連が認められた。また筋力は、血管疾患リスクと逆相関の関連が認められ、筋力の強さと心不全や心血管死リスク低下との関連が認められた。
運動能力と不整脈リスクにはU字型の相関が認められた。その内容をみてみると、心房細動とは直接の相関が、徐脈性不整脈とはU字型の相関が認められた。また、筋力が高いと不整脈リスクが低くなり、とくに徐脈性不整脈と心室性不整脈のリスクが低下した。(10/1 ケアネット)
NEWS ■退職は高齢者の健康を損ねる可能性が
仕事を続けている高齢者は、退職した人よりも健康であることが、新たな研究で示唆された。失業または退職した状態にあると、喫煙や肥満などの因子を考慮しても、健康状態が悪化するリスクが高いという。
米イリノイ大学シカゴ校公衆衛生学部のJay Olshansky氏は、「退職したから健康が損なわれた、あるいは仕事を続けているから健康でいられると断言できるわけではない。当然、健康でない人は仕事を辞めやすい傾向がある」と指摘する。それでも、働けるなら仕事を続けたほうがよいと話す。
米国疾病管理予防センター(CDC)が発行する「Preventing Chronic Disease」9月号に掲載された今回の研究では、米マイアミ大学のDiana Kachan氏率いる研究グループが、65歳以上の成人8万3,000人強を対象とする1997〜2011年の政府調査データを用いた。その結果、特に体力を要する仕事をしている人は健康低下のリスクが最も低かった。ブルーカラーの労働者は、慢性疾患や身体機能低下のリスクが特に低いことがわかった。
Kachan氏らはさらに、地位や賃金の低い仕事をする高齢者の場合、働くことにより社会的接触や収入を増やすことができ、総合的な健康保険の適用を受けられることも健康に有益であると指摘している。「仕事を続ける高齢者はさまざまな面で健康状態が優れる傾向があるが、身体機能に障害のある高齢者にもっと仕事の場を提供すれば、健康の改善につながる可能性がある」と研究グループは報告している。(9/24 HealthDay News)
NEWS ■夜のカフェインは体内時計を混乱させる
カフェインを就寝の数時間前に摂取すると、睡眠・覚醒などの生体リズムを設定する体内時計を乱し、日中に時差ぼけのような不調を生じうることが、米コロラド大学統合生理学部教授のKenneth Wright Jr.氏らの予備的研究で示唆された。
同氏らはカフェインの体内時計に及ぼす影響を解明するため、5人を対象として49日間の試験を行った。対象者らは通常の就寝時間の3時間前に、ダブルエスプレッソに相当する量のカフェインカプセル(身体の大きさに合わせて調整)またはプラセボカプセルのいずれかを摂取し、さらに明るい光または薄暗い光に曝露された。明るい光を浴びると、体内時計はリセットされ、就寝時間を遅らせたくなることがわかっている。その結果、カフェインは対象者の体内時計を40分遅らせた。この遅延の長さは、明るい光に3時間曝露された場合の約半分に相当した。
今回の研究結果は、カフェインが細胞内のシグナル伝達に影響を及ぼし、細胞の概日時計の“中枢部分”を混乱させることを示唆している。Wright氏は、「コーヒーをやめるか朝にしか飲まないようにすれば、早寝早起きができるだろう。カフェインには体内時計を調節する力があると思われるため、時差ぼけの治療に使える可能性がある」と述べている。「Science Translational Medicine」 9月16日号
NEWS ■アレルギー持ちのミドル層はがん死亡が低い?
中高年〜高齢者で花粉症を有する患者では、免疫機能に影響を及ぼし、特定の原因による死亡に対して保護的に作用する可能性が、東京大学の小西祥子氏らによって報告された。本研究は「こもいせコホート疫学研究」データを使用して、花粉症(アレルギー性鼻炎型)の罹患の有無が全死因死亡、原因別死亡を予測するかどうかを調査するために実施された。本コホートは群馬県の2エリアに住む40〜69歳の住民が1993年から登録された。
現在の研究は、2000年のフォローアップ研究から得られた花粉症の情報を基に行われた。死亡や転居の情報は、2008年12月までのフォローアップ期間を通して得られた。比例ハザードモデルで花粉症と死亡率との関係を調べた。主な結果は以下のとおり。
・2000年のフォローアップ研究において、コホート参加者の12%(8,796例中1,088例)が過去12ヵ月で花粉症の症状がみられた。
・7万6,186人年のフォローアップ中、全死因で748人が死亡した(外因性37人、心血管208人、呼吸器74人、悪性腫瘍329人)。
潜在的な交絡因子を調節した後、花粉症を有する患者では有意に全死因死亡の割合が低かった(ハザード比:0.57、95%CI:0.38〜0.87)。
・悪性腫瘍による死亡も同様の結果であった(ハザード比:0.48、95%CI:0.26〜0.92)。
(Clinical & Experimental Allergy誌オンライン版9月14日掲載)
NEWS ■冬の高齢者の血圧上昇、暖房の指導が有効
冬季の心血管疾患による死亡率増加の原因の1つに、寒冷曝露によって引き起こされる血圧上昇がある。寒冷曝露を減らすよう、医師が家庭での暖房使用を指導することは実現可能な選択肢であるが、有効性は不明である。奈良県立医科大学の佐伯圭吾氏らは、その有効性を調査するため、冬季にオープンラベル単純無作為化比較試験を実施した。その結果、暖房使用の指導により室内温度が有意に上昇し、高齢者の自由行動下血圧が有意に低下した。このことから、家庭の暖房に関する指導が冬季の心血管系疾患発症予防に短期的に有効であることが示唆された。
介入群の参加者には、予想される起床時刻の1時間前に、居間の暖房機器の設定温度を24℃にセットして起動することと、起床後2時間までは居間でできるだけ長く過ごすように要請した。自由行動下血圧、身体活動、起床後4時間までの室温について、ランダム切片のマルチレベル線形回帰モデルを用いて評価した。主な結果は以下のとおり。
・合計359人の適格な参加者(平均年齢±SD:71.6±6.6歳)を、対照群(n=173)と介入群(n=186)に無作為に割り付けた。
・年齢、性別、降圧薬、世帯収入、身体活動などの交絡因子を調整し評価したところ、介入により居間の温度は有意に上昇し(2.09℃、95%CI:1.28〜2.90)、収縮期血圧および拡張期血圧は有意に減少した(4.43/2.33mmHg、95%CI:0.97〜7.88/0.08〜4.58mmHg)。
(Journal of hypertension誌オンライン版9月12日号)
■次号のメールマガジンは11月10日ごろの発行です。お楽しみに。(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ