エンタプライズ発信〜メールマガジン【№53】2015. 9

手技療法・徒手療法における重要な治療領域は脊柱・骨盤です。毎年10月16日は「世界脊椎デー」(World Spine Day)であることをご存知でしたか。世界脊椎デーは「運動器の10年(BJD:Bone and Joint Decade)」が定め、世界カイロプラクティック連合(WFC)が中心となり啓蒙および普及を目指しています。そもそも運動器の10年(BJD)とは、国連と世界保健機関(WHO)の呼びかけにより60か国以上の政府により支援されている、運動器障害(筋骨格系疾患)を予防し健康を目指す世界的な運動です。年毎に筋骨格系に関わるテーマを決めその研究過程や取り組みなどを啓発し提案します。今年は「職場での姿勢に気をつけよう」(Your Back at Work)をテーマに、腰痛と姿勢にフォーカスします。昨年は「背筋を伸ばして身体を動かそう」(Straighten Up and Move)でした。腰痛の一要因に姿勢があることは患者さんも知っていますので、患者教育の一環として世界規模のムーブメントがあることを知らせるのも情報提供として功を奏すかもしれません。なお日本では、日本カイロプラクターズ協会(JAC)が中心となり、世界脊椎デーの活動を行っています。
http://www.jac-chiro.org/worldspineday.html

★☆★━━━━━━━■CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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【 Information -1-】

「第11回 直立歯科医学研究会大会」のご案内(最終)

◆テーマ:ヒト直立から見た歯科医学〜頭頸部の機能障害はヒトの立つ仕組みに起因する〜
◆開催日時:9月20日(日)13:00〜18:40(19:00より懇親会)
      9月21日(祝)09:30〜16:00
◆開催会場:東京医科歯科大学 鈴木章夫記念講堂(東京都文京区湯島1-5-45)
◆主な講演:臼井五郎(顎口腔臨床センター代表)、伊藤学而(鹿児島大学名誉教授)、吉田勧持(日本構造医学研究所所長)=敬称略
◆参加費用:2日間・一般当日(医師および歯科医師33,000円、その他16,000円)
=詳細は下の研究会または弊社HP案内にて
◆主催:動的平衡・顎口腔医学研究会 http://douken.kenkyuukai.jp/
<タイムテーブルおよび発表演題ならびに演者略歴>


【 Information -2-】

「第14回JACシンポジウム」開催の案内

◆テーマ:統合医療を科学する〜西洋医学の見方・カイロプラクティックの見方〜
◆開催日時:11月1日(日)10時〜17時15分 /11月2日(月)9時30分〜 16時
◆開催会場:愛知県産業労働センター ウインクあいち 12階
     (名古屋市中村区名駅4−4−38)
◆講演1:「手技による脊椎と四肢アジャストメントの統合的アプローチ」
      【講師】リカルド・藤川(マドリッドカレッジ・オブ・カイロプラクティック学長=敬称略)
◆講演2:「先制医療・統合医療へのパラダイムシフト」〜先手必勝の積極的な予防医療は我が国の健康寿命延伸〜
      【講師】福沢嘉孝(愛知医科大学病院 先制・統合医療包括センター教授=敬称略)
◆主催: 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)
◆参加費 :会員:28,000円 一般:35,000円(いずれもパーティー代および2日目昼食込)
◆お問合せ: 03-3578-9390 E-mail : info@jac-chiro.org


【 Information -3-】

「日本ホメオパシー医学会 一般向けセミナー」

日本ではあまり知られていないホメオパシーですが、200年以上続いている相補・代替・伝統医療のひとつです。ヨーロッパの多くの国々で医療として普及し、健康保険制度に取り入れられている国もあります。日本ではホメオパシーは始まったばかりです。ホメオパシーとは一体どのような治療なのか、本当にホメオパシーは効くのか、安全な治療なのか…。日本ホメオパシー医学会では、一人でも多くの方にホメオパシーについて知っていただくために、一般向けのセミナーを企画しました。(10月:石川県、11月:広島県、同:東京都で開催予定)

◆講義内容 :ホメオパシーとは/ホメオパシーの薬とは/ホメオパシーの診察とは/ホメオパシーの適応は/ホメオパシーは安全か
◆開催日 :10月3日(土)14:00〜15:30(受付13:30より)
◆講 師 :板村論子(MD., Ph.D., MFHom)
◆会 場:石川県白山市 /医療法人社団 新くりにっく <参加無料>
◆参加ご希望の方は日本ホメオパシー医学会事務局宛E-mailで「参加希望」とお送り下さい。info@jpsh.jp(URL:http://www.jpsh.jp


◎連載vol.11

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


循環系、筋骨格系およびそのほかの器官の二元性(つづき)

神経や血管と同じように、全身の骨もまた骨膜という結合組織に覆われている。骨には体を支えるというはっきりした役割があり、一方の骨膜には骨形成をコントロールするという役割がある。つまり骨折のあとに新しい骨が形成されるのは、骨膜の働きがあるからだ。また骨には多数の血管が行き渡っているので、骨膜組織と血管周囲組織には密接なつながりがある。

さらに筋も、筋周膜・筋内膜・筋外膜という互いにつながりあった複雑な結合組織に覆われており、これらの結合組織が収束して腱をつくりあげている。一般に知られているように、筋を包む結合組織には筋の張力を伝える役割があり、また全身の形態をつくりあげる組織であると同時に、体内コミュニケーションの媒体でもあると考えられている。さらに傷ついた筋を再生または修復したり、必要な動きに筋を適応させたりすることも、この結合組織の機能である。そして筋には非常に多くの神経と血管が含まれているので、これらの「周囲」組織は、筋組織と絡み合った状態で存在しているのである。

再生と修復における周囲組織の役割

二元性をもつ器官の例からわかるように、神経、血管、骨および筋といった組織には、一般に知られるそれぞれの機能があり、それらの器官を維持する周囲の結合組織には別の機能がある。

生体の主たる器官には、各々の組織を覆う「周囲」組織があり、それらを総称して「周囲組織」と呼んでいる。それぞれの周囲組織には、少数だが重要な役割をもつ活動的な細胞が含まれている。つまり線維芽細胞、神経芽細胞、筋芽細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞といった発生に関わる細胞である。これらの細胞は細胞外基質つくりだし、そして常につくり変えており、外傷修復において不可欠な機能を果たしているのである。

再 生

再生とは、失われたまたは傷ついた組織が再び形成されるという意味である。よく知られているように、トカゲには四肢、眼球、腸管および脊髄を再生する能力があり、心臓の半分、あるいは脳の1/3を失っても、それらを復元することができる。この再生能力は、損傷部位に存在する線維芽細胞などの成熟した芽細胞が、すべて脱分化することによってもたらされる。つまり芽細胞が未熟な状態に戻って、どのような細胞にでも分化できる能力を回復することにより、発生段階と同じプロセスを再現することができるのだ。(つづく)

(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ㉑☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


薬物依存の治療

50代前半の女性の患者さんが、薬物依存の傾向があるので改善したいとの希望。薬物はデパスという抗不安薬である。不安感に襲われるとその薬物でその場をしのいでいた経験が長く続いているとのこと。最近その頻度が多くなり、薬物から解放されたいとこのことだった。
検査を行ってみると、隠れた原因パターンは過去のお母さまとの関係性が絡んでいた。その背後にある信念などの「心の構造」を明確にしながら、脳に学習されていた「誤作動記憶」の陽性反応を施術した。

その後の来院で、薬物依存の治療の後、すごく気分が楽になり、週末も心地よく過ごせたのとのご報告をいただいたが、トイレなどの狭い空間や、高速道路の運転などで、気持ちは大丈夫だが、何かいつもとは違う妙な感覚があるとのこと。
検査をしてみると、感情や信念、価値観などの大脳辺縁系関連の誤作動反応はでない。その代わりに、エピソード記憶(大脳皮質系関連)の誤作動反応がでた。つまり、脳の中で記憶された症状、すなわち、脳で創り出される違和感の「誤作動記憶」だった。

依存症の治療は、ご本人のコミットメント(本当にやめたいという覚悟)が50%以上なければ、治療効果を引き出すのが難しくなる。言葉ではやめたいといっても、心の奥ではやめたくない自分がいたりする場合が大半を占める。やめたいと思いつつも、やめたくない自分もどこかにいるということを認めながら、やめたい自分が50%以上優っている場合は、治療効果がすぐに引き出せる。
今回ご紹介した患者さんは、別の症状で治療を受けており、信頼関係のレベルが高かったので治療効果がすぐに引き出せたようだ。本症例は「大脳辺縁系」と「大脳皮質系」の両方に絡んだ症例であった。


《連載35》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


5. インド編 〜古代医学の最高峰〜

医学史の資料としての仏教経典(つづき)

ところで、「三蔵」とは仏教の経典を総称した「三つの筐(かご)」ということであり、具体的には「経蔵」「律蔵」「論蔵」のことである。経蔵はブッダ(釈迦)の説いた教えを集めたもの、論蔵はブッダの教説を哲学的に発展させ体系化したものである。律蔵は教団の規律、比丘(びく)[僧]や比丘尼(びくに)[尼僧]の日常生活の規定などを集めたものであり、その中には医薬学についての記載があって、インド医学史の貴重な資料となっている。次に、完全なチベット語訳が現存しており、サンスクリット原文もかなり発見されている『根本説一切有部昆奈耶薬事』から、ブッダや長老たちの医学知識と治療方法を見てみよう。

世尊(ブッダ)の教えた治療法

—-1人の比丘が風疾に罹り、身体が憔悴(しょうすい)した。彼は医者の元に赴き、「私は風疾になって身体が憔悴しきっています。薬を処方していただきたい」と言った。医者が、
「聖者よ、動物性脂肪をとりなさい。そうすればあなたは健康になりましょう」
と言うと、比丘は「先生、私はどうして人間を食うことができましょう」と返した。医者は語った。
「比丘よ、あなたの薬はそれしかありません。そうでなければ、あなたは健康になることはできません」と。
その次第を比丘たちは世尊(せそん:ブッダの尊称)に申し上げた。それに対し世尊が言った。
「もし医者が薬はそれしかないと言うのであれば、動物性脂肪を用いてよろしい」と。
しかし比丘たちはいかなる脂肪を用いていいか知らなかったので、彼らは先生に訊ねた。そうしたらば、
「尊い方々よ、あなたがたの師こそ一切を知る人です。あの方のところへ行って訊ねなさい」と答えた。
この次第を比丘たちは世尊に申し上げた。世尊が語った。
「5種類の動物性脂肪を用いて差し支えない。5種とは何か。魚の脂肪、鰐の脂肪、鮫の脂肪、熊の脂肪、猪の脂肪である。これら5種の動物性脂肪は、不適当なときに煑(に)られたり、不適当なときに搾られたり、不適当なときに捕獲されたり、不適当なときに入手したものであるときには、服用すべきではない。
適当なときに煑られたものでも、不適当なときに搾られたり、捕獲して入手したときには服用すべきではない。……適当なときに煑られ、搾られ、適当なときに入手した脂肪は、胡麻油の服用と同じく、7日ごとに服用すべきである」
と。そこで、かの僧は動物性脂肪を服用し、健康を回復した。(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(28)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■腰痛患者161名を時代遅れの小冊子群と新たな腰痛概念に基づく小冊子群に割り付けて1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、新たな小冊子群は動作恐怖が低下すると共に回復が早いことが判明。従来の考え方を改めるのは有効な治療法である。http://1.usa.gov/mP29eM
………腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■(1)キャンペーン群では腰痛患者の動作恐怖スコアが改善した。(2)キャンペーン群では腰痛による欠勤日数が減少した。(3)キャンペーン群の労災申請件数は15%減少した。http://1.usa.gov/mQ628O http://1.usa.gov/qTkwry
………腰痛に対する考え方を改めるだけで回復速度が上がり、腰痛の発症率が低下したということです。

■(4)キャンペーン群の医療費は20%減少した。すなわち、正しい情報提供だけで33億円を超える経費(労災補償費と医療費)を削減できたのである。日本でできないはずがない。http://1.usa.gov/mQ628O http://1.usa.gov/qTkwry
………指一本触れることなく腰痛患者を減らすと同時に医療費を削減させることは可能なのです。これも国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した論文です。専門家が知らないはずはありませんし、万が一知らないというのなら腰痛患者に手を出すべきではありません。

■患者に不安や恐怖を与えると間違いなく痛みが増幅する。このノーシーボ効果は想像以上に強力で、ヴードゥー死、タブー死、ノスタルジー死で証明されているように命に関わることさえある。http://1.usa.gov/nCm2wd http://amzn.to/pXA5WR
………ことに腰痛・肩こり・関節痛のような筋骨格系疾患は、どんな治療をするのかより患者が症状をどう捉えているかの方がはるかに重要です。慢性化している場合はこのあたりをチェックすべきです。

■椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を厳密に検討した結果、椎間板ヘルニアの手術成績は短期的に見れば良好だが長期的に見れば保存療法とほとんど変わりがなく、心理社会的因子の影響を強く受けていることが確認された。http://1.usa.gov/q1HPOA
………椎間板ヘルニアの手術成績は長期的にみれば保存療法と変わらないことを第一級のエビデンスが証明しているのです。「椎間板ヘルニア=手術」という思い込みを頭の中から消去しましょう。

■腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者84名を対象に、画像所見、理学所見、心理テスト(MMPI)と手術成績との関係を調べた結果、手術成績と最も関係が深かったのは、画像所見でも理学所見でもなく心理テストだったことが判明。http://1.usa.gov/qMXXcm
………椎間板ヘルニアの手術成績を左右するのは心理社会的因子(イエローフラッグ)とのこと。腰下肢痛―この未知なるもの。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (53)

根本 良一(療動研究所主宰)


【 連動操体法の応用編 】

2. 腰に関わる障害

寝返りがつらい、痛い

寝返りを打てないと寝ていてつらい。そこでこの項では、1)殿部痛、2)そのほかの複合障害、3)腰痛(椎間板ヘルニア)、4)椎間板ヘルニアの順でまとめてみたい。
寝返りするときは身体を捻る動作が主となるから、基本として、受者には腕を組んでもらい腹部の緊張をとると操作がラクにできる。そのさいに腕の角度を変えてどの角度でラクになるかを決める。また腰の中枢部で働く大腰筋および腹直筋にも注目すると良い。

1)殿部痛
23歳。女性、会社員。座っていて右殿部が痛い。咳やクシャミをすると痛く、膝も時々痛くなる。スポーツはやらない。そのため太り気味。
・パソコンやテレビは好き。体格は良いが腰を丸くしている。腰はあまり痛くないという。殿部痛は内腿部右の影響であることから、腓腹部の硬さをチェックする。
・椅子にかけて左右の膝を交互に上げると、右膝が上がりにくいし、高く上げると殿部が少し痛い。→大腰筋、大腿直筋、中・小殿筋を点検する。
・腰背部の右側、右大腿後部(大腿二頭筋)がコリコリと硬く、膝裏にも硬結があり、触れると跳び上がるほどである。→左大腰筋、内腿部から腓腹部へ。
さらに左腹側部(外腹斜筋中間部)も硬くなっているので、動作はどうかと訊くと、前屈しにくく、腿が硬いという。背部から肋間神経経由で外腹斜筋が緊張。
腸骨上縁は両方とも緊張しているが、そのほかは右だけが緊張している。腸骨上縁の緊張をとり、左大腰筋の処置をし、伏臥位で踵を内外に倒し、フィンガースケールが最大値になる腰仙部から腰背部の処理を行った。
伏臥位で左外腹斜筋中央部に腕の角度を合わせ、操体法さらに右外腹斜筋下部、右内腿部の操作を行うと、背部の痛みも消え、膝が軽くなった。

(この症状のなぜ?)
大腰筋の緊張から発したとしても、関連部まで歪みが連動していると、どれかが残っているうちは大腰筋の操作が完全にできていないことがある。右内腿部の操作が殿部へ影響することを知悉しておく必要がある。


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■がんの5年相対生存率64.3%……国立がんセンター

国立がん研究センターは9月14日、2007年にがんの治療を始めた患者延べ16万8514人について、5年後の生存率が同じ年齢、性別の一般集団に比べてどれだけかを示す「5年相対生存率」が64.3%だったと発表した。
全国のがん診療連携拠点病院のうち、患者の90%以上の生死を確認できたなどの条件を満たす177施設(46都道府県)の患者情報を集計した。対象患者数は全患者の約3割を占めている。都道府県別でも集計。胃がんの5年相対生存率は、全国平均71.2%に対し、福井(77.7%)や長野(77.6%)が高く、群馬(60.9%)や茨城(62.0%)が低いなど、地域差がみられた。生存率の低い地域は、患者の年齢が高いほか、早期発見率が低く手術ができていない傾向があった。(9/14 時事通信社)


NEWS ■100歳以上、6万人超える=女性が87%

敬老の日を前に厚生労働省は9月11日、全国の100歳以上の高齢者は9月15日時点で昨年より2748人増え、6万1568人に上ると発表した。45年連続で過去最多を更新し、初めて6万人の大台に達するという。
厚労省が住民基本台帳を基に集計。統計を取り始めた1963年は153人だったが、98年に1万人を突破。2007年に3万人、12年に5万人を超え、急速に高齢化が進んでいる。男女別では、女性が全体の87.3%を占めた。人口10万人当たりの100歳以上の人数は、島根県90.67人が最も多く、高知県85.37人、鹿児島県80.40人と続いた。最少は埼玉県28.68人。
今年度100歳を迎える男女も3万379人となり、初めて3万人を超えた。厚労省は対象者に銀杯を贈呈してきたが、経費節減を理由に来年度から銀メッキを施した合金製への変更を検討しており、純銀製の贈呈は最後になる。(9/11 時事通信社)


NEWS ■心理的なケアを行う国家資格「公認心理師」が誕生へ

カウンセリングや心理的なケアなどを行う「心理系の国家資格」が誕生する。9月9日の参議院本会議で、新たに「公認心理師」という国家資格を設ける法律が全会一致で可決・成立した。早ければ、平成30年から「公認心理師」の国家試験が始まる。
公認心理師とは、医療や教育の分野でカウンセリングなどを行う心理職。心理学の専門知識や技術を持つ人材を育成・確保し、国民の健康増進につなげる狙いだ。自民党や公明党などが今年7月、国家資格「公認心理師」を創設する法案を衆院に提出していた。日本国内にはこれまで、臨床心理士など民間の心理職資格はあったが、国家資格はなかった。2005年に臨床心理士を国家資格にしようとする動きがあったが、医療関係団体から「現場が混乱する」「民間資格である臨床心理士そのままの名称で国家資格になるのは不公平」など反対され断念した。
受験資格は、大学で心理学など必要な科目を修めたうえで卒業し、大学院で必要な課程を終了した者や一定期間の実務経験を積んだ者などとされている。試験は、毎年1回以上、文部科学大臣および厚生労働大臣が行う。(9/10 朝日新聞)


NEWS ■音楽療法が不眠症に有用

音楽鑑賞は睡眠を助ける手段として広く用いられているが、それが成人の不眠症を実際に改善しうるか否かは不明確であった。デンマーク・オーフス大学のKira V Jespersen氏らは、成人の不眠症に対する音楽療法の有効性を明らかにするため、メタ解析を行った。その結果、音楽療法は通常の治療法に比べ、睡眠の質の改善に有効であることを示唆するエビデンスが得られたことを報告した。今回の結果を踏まえて著者らは、「音楽療法は安全で、その導入は簡便である。さらなる研究により、音楽鑑賞等の睡眠の側面に対する効果や、不眠症に起因する日中の症状に対する効果を確立することが求められる」とまとめている。Cochrane Database Systematic Reviews誌オンライン版8月13日号の掲載報告。試験の選択基準は、成人の不眠症において、音楽療法単独と未治療または通常の治療法の効果とを比較しているランダム化対照試験および準ランダム化対照試験とした。6試験、被験者計314例が解析対象例となった。メタ解析は固定効果モデルとランダム効果モデルの両方を用いて実施した。試験間における不均質性はI2検定で検証した。(9/8 ケアネット)


NEWS ■医療費、初の40兆円突破へ。14年度概算

厚生労働省は9月3日、2014年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費が概算で39兆9556億円となり、12年連続で過去最高を更新したと発表した。労災分などは含まれておらず、医療費全体に当たる「国民医療費」は初めて40兆円を超えることが確実となった。
概算医療費は医療費全体の98%を占め、14年度は前年より約7000億円増えた。伸び率は1.8%とやや鈍化し、厚労省は「人口減や価格の安いジェネリック医薬品(後発薬)の使用促進で、伸びが抑えられた」と分析している。
ただ医療費は高齢化や医療技術の進歩で年々増え続け、国の財政を圧迫している。16年度の診療報酬改定で医療費の効率化が焦点となる。政府は健康づくりや病気の予防への取り組みを強化し、後発薬の使用割合も80%まで引き上げる方針。
14年度の1人当たりの概算医療費は31万4千円(13年度より6千円増)。75歳未満が21万1千円だったのに対し、75歳以上は93万1千円に上った。都道府県別の総額は、東京が4兆1990億円で最も多く、大阪(3兆590億円)、神奈川(2兆4385億円)が続いた。最も少なかったのは鳥取の2014億円。
診療別では外来と調剤が合わせて21兆円で、全体の52.5%。入院が16兆円(40.2%)、歯科は2兆8千億円(7.0%)だった。調剤は薬の値段と薬剤師の技術料を合計したもので、13年度より2.3%伸びており、診療報酬改定で抑制を図る。(9/4共同通信社)


NEWS ■日本人が最も食べる野菜はダイコン、2位はタマネギ

日本人が最も多く食べる野菜はダイコン――。厚生労働省は、国内で多く食べられている野菜のランキングを初めて公表した。なじみの食材が上位に並んだが、同省は、もう一皿野菜を加え、バランスのよい食事を心がけるよう呼びかけている。
同省は「国民健康・栄養調査」をもとに、2012年11月のある1日に、約3万2000人が食べた野菜の量を分析した。その結果、平均摂取量はダイコンが33.8gで最多で、タマネギの31.6g、キャベツの26.9gが続いた。1日に食べる人の割合が高かったのは、ニンジンの77%、タマネギの65%、ダイコンの51%の順だった。1回の料理で使われる量が多いダイコンが摂取量で最多となったとみられる。2013年で「1日の野菜の平均摂取量」は283gだが、同省は22年に350gに引き上げる目標を掲げている。(9/2 読売新聞)


NEWS ■「健康寿命」日本が首位…英誌ランセットで発表

世界188カ国の2013年の「健康寿命」を調べたところ、日本が1位だったとする調査結果を米ワシントン大学(西部ワシントン州)などの研究チームが8月27日付の英医学誌ランセットで発表した。健康寿命は介護が必要だったり、日常生活に支障が出る病気にかかったりする期間を除き、自立して過ごせる期間を示す。
同チームによると、日本の健康寿命は男性が71.11歳、女性が75.56歳で、男女とも健康寿命は1位だった。この年の日本人の平均寿命は男性が初めて80歳を超え、女性は86歳台だった。健康寿命の男女平均で2位は72.1歳のシンガポール。アンドラ、アイスランド、キプロスが続いた。日本以下は、男性はシンガポール、アンドラ、アイスランド、イスラエル。女性はアンドラ、シンガポール、フランス、キプロスの順。
同チームは1990年のデータも算出。世界では90年〜2013年に、平均寿命が65歳台から71歳半ばまで延び、健康寿命も57歳から62歳台に延びた。背景としてエイズウイルス(HIV)やマラリアなどの感染症対策が進んだことなどを挙げた。
健康寿命は、単に寿命を延ばすのではなく、健康に長生きすることを重視する考え方に基づき、世界保健機関(WHO)が2000年に提唱した。(8/28 共同通信社)


NEWS ■1錠8万円の肝炎新薬保険適用…治験で全員治癒

C型慢性肝炎の治療薬「ハーボニー」(一般名・ソホスブビルとレジパスビルの合剤)について、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は8月26日、保険適用を承認した。9月上旬に発売予定。
遺伝子型1型の患者を対象とした臨床試験(治験)で、157人全員が治癒する高い効果を示したことから、薬価は1錠(1日分)8万171円とされたが、患者の自己負担は国の助成により、月額で最大2万円に抑えられる見通し。
ギリアド・サイエンシズ社のハーボニーは、C型肝炎感染者の約7割を占める遺伝子型1型を対象とした飲み薬。治療に必要な12週間の服用で約670万円かかるが、類似薬の半分の治療期間で安全性も高いことなどが評価された。同社は治療対象となる患者を約26万人と推計している。(8/26 読売新聞)


NEWS ■歯周病リスク、受動喫煙が喫煙より高い数値

たばこを吸わない人でも、ほかの人のたばこの副流煙にさらされると歯周病リスクが高まるという研究結果を国立がん研究センターと東京医科歯科大の共同研究グループが発表した。男性の非喫煙者で、家庭と家庭以外で受動喫煙した人の場合、非喫煙者で受動喫煙の経験がない人に比べリスクは約3.6倍となり、喫煙者のリスクを上回る結果だった。このため、同グループは喫煙者に対し、「自分や家族の健康のために禁煙を」と呼び掛けている。
この研究は、生活習慣とがんなどの生活習慣病との関連について追跡調査する多目的コホート研究の一環として実施された。40-59歳の男女を対象に、歯科アンケート調査への回答と歯科検診を受けてもらい、そのうち1164人(男性552人、女性612人)を対象に解析した。
対象者を男女別に「受動喫煙経験のない非喫煙者」から「喫煙者」まで6つのグループに分けるとともに、6ミリ以上の歯周病ポケットが1歯以上ある場合を重度の歯周病と定義した上で解析したところ、男性の場合、受動喫煙経験のない非喫煙者に比べて、喫煙者の重度の歯周病リスクは約3.3倍に跳ね上がった。
しかし、非喫煙者でも家庭と家庭以外で受動喫煙経験のある人の場合は約3.6倍と喫煙者を上回る数値となった。家庭のみで受動喫煙経験のある非喫煙者も約3.1倍と高かった。家庭以外のみの受動喫煙の場合は約1.3倍だった。ただ、女性については喫煙・受動喫煙の状況と歯周病との間に関連は見られなかったという。(8/21 医療介護ニュース)


■次号のメールマガジンは10月10日ごろの発行です。お楽しみに。(編集人:北島憲二)


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