エンタプライズ発信〜メールマガジン【№46】2015. 2

統合医療の時代と言われて10年以上の時間がたちますが、その骨子は想像していたほど発展形になっていません。わが国では、超高齢化社会が進む2030年には、自宅で最期を迎える人も大勢でてくると見込まれています(看取り難民47万人という試算も)。その受け皿はどこにあるのか、これは病院だけではむずかしい。こうした事態に対応すべく家庭医・総合医=ゼネラリスト=の役割の重要性が問われています。ヨーロッパでは医師の3〜4割が家庭医・総合医であり、地域の医療・福祉・共同体づくりを行っていて身近な存在となっていますが、わが国ではまだ遠い存在だと感じているが多いと思います。課題は大きく2点ありそうです。ひとつはわが国の医学教育課程ではこうした家庭医・総合医を専門とする医師を養成するカリキュラムやプログラムがないこと、次に地域のゼネラリストを育成するために、行政、自治体とどう連携させていくのかプロモートできる人(ゼネラリストの伝道師)を職業化することだと思われます。医師はもっと院外へ出て、さらに統合医療に目を向け、私たち民間療法家と協働態勢を組むことを視野に入れ、医師主体の医療共同体を作っていくことが超高齢化社会に臨む要訣だと考えますが、既得権等に硬直化したわが国保険医療では想像以上にハードルが高いと感じる読者も多いのではないでしょうか。

***** テキストフェア開催中! 書籍・DVDを 《 20%OFFセール 》 ****

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【統合医療展2015/出展報告】

「意識」に基づいたエネルギー療法「BodyTalk」

今田  泰(BJA理事)


BodyTalk Japanは1月28日(水)、29日(木)の2日間にわたって開催された統合医療展に今年もブース出展を行った。今年で3回目となる出展だったが例年にも増して来場者の反応が良く、盛況裡に終えることができた。今回はその出展の様子をレポートしてみたい。

[統合医療展2015]
統合医療展は第11回を数える統合医療・補完医療の展示会で、出展社は伝統医学や手技療法、ハーブやアロマ、健康補助食品、医療機器など多岐にわたる。主に医療関係者やセラピストをはじめとした業界関係者が来場し、併催のメディケアフーズ展とあわせ、今年は2日間で13,554名の来場者となった。

[BodyTalk Japanのブース]
ブースではパネル展示のほか、30分のショートセッション用に4席用意したが両日とも昼過ぎには当日予約分が定員となり、受付を終了せざるを得ない状態であった。結果2日間で約120名に体験していただくことができ、またプロトコールチャートの包括性や緻密さに感心される方が多く、どうしたら学べるのか、どのくらいの費用がかかるのかなどの具体的な質問を多数お寄せいただいた。

[出展社プレゼンテーション]
会場入口近くのセミナーブースでは20分の枠で出展社プレゼンテーションがあり、こちらでも両日BodyTalkの紹介を行った。両日ともに立ち見が出るほどの盛況ぶりだったが、印象的だったのはプレゼンテーションの最後でお伝えした「人から病気だけを切り取って考えることはできない、BodyTalkはその人の歴史も含めた全体をみていこうとしているものである」という話に多くの方が深く頷いていらっしゃったことだった。

[総 評]
プロトコールチャートをご覧になって中国の古典医学である『素問』との共通性に感動を持ってお話しくださった方、いろいろなブースがある中で本当の意味の統合医療と言えるのはここが最高だという評価をくださった方、スタッフがいきいきとしていて雰囲気がとても良いとお褒めくださった経営者の方、体験後にこれをぜひ学んでみたいというお声をくださった多くの方々など、大変好意的な反応をいただき2日間の出展を終えることができた。BodyTalkは多くの方々に潜在的に求められている手法だとあらためて感じた今回の出展であった。


◎連載vol.4

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


《 増 幅 》

たとえば楽器奏者のように、同じ体の動きを何度も繰り返していると、大脳の知覚領野と運動領野の活動を示す脳波が増強される。これと同じ現象は、治療のために繰り返し手を使うセラピストにも起こると推測され、ヨガや武道、瞑想などの修行を積むことによっても、当然より強力で位相の揃った磁気波が発生するだろう。
さらなる研究が必要であるにせよ、脳の活動によって生じる電気や磁気が体外から検出されるほど強くなるのは、周囲組織を通過するときに増幅されるからではないかと推測される。脳のリズムは、全身の分子の振動と共鳴することによって、より大きな波となる。したがって生体マトリックスの結晶構造を構成する分子が次々と振動しはじめると、それらが共鳴し、強力な場を生み出すのだろう。

ボディワークをはじめ、ヨガ、気功、太極拳、瞑想、セラピューティック・タッチなどを反復していると、組織構造のコヒーレンス(結晶性)が徐々に高まり、エネルギーの感知能力および放出能力が促進される。その過程には、高分子の周囲に存在する水分子の配列も関係していると考えられる。
液晶の構造に関する研究によると、液晶には「コヒーレンス・ドメイン」と呼ばれる配列の形成が報告されている。生体では、細胞膜や結合組織、あるいはDNA、筋、細胞骨格、神経細胞の髄鞘、感覚器細胞において、何百万個という杆状分子が位置的も方向的にも規則正しく並ぶ構造が認められるが、この規則性は、コヒーレンス・ドメイン形成と同じメカニズムで定着するのだろう。規則的な配列が一部に定着すると、その影響が周囲の分子にも広まり、細胞や組織、あるいは器官全体の分子が秩序正しく並ぶようになるのである。デル・ギーディスによると、このプロセスは個々の分子が「独立性を失って一体化しあたかもバレエの群舞を舞っているかのように動きを共にする。そしてその群舞から生じた電磁波によって規則正しい配置が保たれる」のだという。

デル・ギーディスよりもずっと以前に、同じようなことを考えていたのがハロルド・サクソン・バールである。バールはコヒーレンス・ドメインの形成を次のように表現していた。「生物のあらゆる組織の構造パターンは電気によって決定される。その電気は組織の構造要素から生み出されると同時に、構成要素の配列を決定している。つまり構成要素そのものの動きから発生した電気が、組織の構造を維持しているのである。このような電気の作用があるからこそ、生体組織は健全な構造と機能を保てるのだ」(つづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』小社刊2004)


★連載エッセイ ⑭☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


ストレスを認知して脳(心)のコップを広げよう!

PCRT(心身条件反射療法:ニューロパターンセラピー)は、脳(心)のコップに溜まったストレスの誤作動を解放させて、様々な症状を改善します。さらにストレスに対する「認知力」を高めて、ストレスを整理し、脳のコップの枠(容積)を広げます。そうすることでストレスに対する「耐性力」や「適応力」を上げ、「脳の体質改善」へと導くことができます。
痛み、コリ、しびれ、疲れなどの様々な症状は、意識的にも無意識的にも様々なストレスが溜まり、脳(心)のコップの中で、耐性のボーダーラインを超え、緊張が持続し続けることで生じます。一般的にはストレス解消としてストレスの対象から離れて、息抜きに非日常的な行動をしたり、運動したりしてストレス発散に努めます。
そのようなストレス解消法で一時的に改善することもあるかもしれません。しかしながら、表面的には解消された気分になっても、深層的にはその緊張が芯から取れていないことも少なくはないのではないでしょうか。深層的に芯からその緊張を取り除くためには、脳・神経系の誤作動を調整することが必要です。人間の身体をコントロールしている脳・神経系の誤作動が調整されると、痛みやコリを引き起こしている原因の緊張は自然に解放されます。

人は生きている以上、様々なストレスと接しながら生活しています。そのストレスは生きていくうえでも大切な「刺激」で、何らかの刺激がなければ生きていくことができません。しかしながら、そのストレスが一時的であれば問題はないのですが、慢性的に長引くようなストレスを抱える場合があります。そのような場合、できるだけそのような慢性的なストレスは元から解放させなくてはなりません。PCRTではその元のストレスを特定してそれに関係する誤作動を調整し、脳(心)のコップにストレスが溜まらないようにサポートすることができます。
さらにPCRTの施術を継続していると、脳(心)のコップの枠が広がり、様々なストレスが溜まっても、整理されやすくなります。また、脳(心)のコップの容積が広くなっているので、ストレスに対する「耐性力」と「適応力」が身に付き、様々なストレスの影響を受けにくい体質へと改善されていきます。ストレスの影響を受けにくい体質改善へ患者様を導いていきましょう!


《連載28 》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


グエン・ディン・チウが詩人として有名であるのは、これまでに見てきた『漁樵問答』よりは、むしろ自分の体験を踏まえた演歌『陸雲僊(ルクバンティエン)』の作者としてである。この2076行からなる一大詩は、阮攸(グエンドー)の『金雲翹(キムバンキウ)』とともに黎朝から阮朝にかけて全盛期に達した字喃(チュノム)文字の最高傑作とされている。書写文字の正統とされてきた漢字によってのみ表現された詩文に較べ、民間ベトナム語とも言うべき字喃の68体の詩形が、ベトナム民族の心情を豊かに汲み上げ、民衆の間に広く伝わったことは当然であろう。
その内容は、主人公・雲僊(バンティエン)と月俄(グエトガー)が波瀾万丈の生涯を送るというもので、自身の体験を織り込みながら封建社会の道徳である三綱五常を強調したものである。しかしフランスの侵略が拡大し、それにつれて阮朝の脆弱ぶりが明らかになるとともに、グエン・ディン・チウの作風は一変する。

仏人、到来とともに土地を奪い、新朝をとなえ、あらたに怨仇の責を負わす
旧帝を懐うを背逆とは、民は天災を蒙るに等しく、
士農工賈のすべては双身の銃の難を受け
総里社邑あるところ漲る三色旗の迫害……
災、女子幼童を許さず、家は焼かれ尽くし物は奪われた
幾年にもわたる苦しみ、拷問、入獄、流謫(るたく)、処刑の数さえ知れぬ……

これは1867年、フランス側の一方的宣言により、東西6省が併合されたときに作られた「祭文」であるが、亡国の深い悲しみのうちに、阮朝の無力を怒り、犠牲者を追悼している。仏領インドシナ総督府がサイゴン(現ホーチミン市)におかれた1887年の翌年、グエン・ディン・チウは66歳の生涯を閉じた。その遺志は引き継がれ、南ベトナム解放戦線によりグエン・ディン・チウ文学賞が設けられ、受賞作品も相次いでいるが、それらの作品が日本に翻訳、紹介されていないのは残念なことである。

東医の林に若い芽は伸びる

故ホー・チ・ミン大統領は医療関係の従事者に対し、ベトナムの伝統的な医学を重視し、それを現代医学と結合させるよう呼びかけている。
「私たちの祖先は、ベトナムと中国の医学により病気を治療する上で、豊富で貴重な経験を積んできています。私たちの医学をより幅広いものにするため、大いに努力して、伝統医学の研究を行い、それを現代医学と結合させるべきであります」
事実、TAP CHI DONG Y(東医雑誌)の副主幹リウ・キ・ロク氏は、グエン・ディン・チウを回想する詩の中で、伝統医学の分野に育つ若い人たちと、その光栄ある任務に就いている様子を歌っている。(以下、次号で紹介)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(21))

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****

■イラクとアフガニスタンで腰痛を発症した兵士1410名を対象にした前向き研究によると、戦闘中に腰を負傷したのは5%だったにもかかわらず原隊復帰率はわずか13%にすぎず、身体的問題よりも心理・社会的問題が原因と考えられる。http://1.usa.gov/mylrz4
……つまり、腰痛の95%は戦闘中に発症したものではなく、87%が戦場に戻らなかったことから、兵士の腰痛は心理・社会的因子によるものだということです。

■イラクやアフガニスタンから離脱した米軍兵士34,006名を対象とした前向き研究によると、離脱原因は筋骨格系・結合組織疾患(24%)、戦闘による負傷(14%)、神経疾患(10%)などであり、ほとんどが原隊復帰しなかった。http://1.usa.gov/kkNruO
……人は極限状態に置かれると腰痛や関節痛などの筋骨格系・結合組織疾患を発症しやすくなるようです。東日本大震災の影響を心配しているのはこうした事実があるからで、一日も早く腰痛にまつわる迷信や神話を一掃したいものです。

■腰椎の変形が腰痛の原因でないことは半世紀以上も前から証明されてきた。最も古い対照試験は1953年に実施された腰痛患者100名と健常者100名の腰部X線写真を比較したもので、両群間の変形性脊椎症の検出率に差はなかった。http://1.usa.gov/lCMbXb
……レントゲン写真に映ったシミやシワは腰痛の原因ではありません。レッドフラッグ(危険信号)のない腰痛患者に対してルーチンに画像検査を行なうのは百害あって一利なし。もはや犯罪行為といっていいでしょう。国民はそれをしっかり頭に叩き込んでおくべきです。

■腰痛患者378名と健常者217名の腰部X線写真を比較した研究でも、両群間における変形性脊椎症の検出率に差はなく、加齢と共に増加する傾向が見られることから、変形は正常な老化現象にすぎず、腰痛の原因とは考えられないと結論。http://1.usa.gov/msMFAV
……変形性脊椎症はただのシミやシワと同じだということが証明されています。ですからまったく気にする必要はありません。このおかしなレッテル(病名)は早くなくせばいいのにと思います。レッテルを貼っても、悪くなることはあっても良くなることはありませんから。

■60歳の一般住民666名を対象に胸椎と腰椎のX線写真を分析した結果、腰痛経験者の58.7%に、未経験者の57.5%に変形性脊椎症が確認されたが、両群間の検出率に差はなかった。老化よる脊椎の変形は腰痛の原因ではない。http://1.usa.gov/kLY3o9
……まさか変形性脊椎症が腰痛の原因だと考えている医師はいないと思いますけど、念には念を入れてご忠告申し上げます。レッドフラッグ(危険信号)がなければ背骨の変形と腰痛はまったく無関係です。

■港湾労働就職希望者208名、急性腰痛を発症した港湾労働者207名、6ヶ月以上続いている慢性腰痛患者200名を対象に、腰部のX線写真の異常検出率を比較した結果、3群間の加齢による異常検出率に差は認められなかった。http://1.usa.gov/jVFqUC
……レントゲン写真で確認できる背骨の変形は腰痛とは無関係であると同時に、腰痛の原因は老化現象ではないということです。歳だから腰痛になるなんて根拠のないデタラメな話を信じてはいけません。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (46)

根本 良一(療動研究所主宰)


【 連動操体法の応用編 】

2. 腰に関わる障害

2)ギックリ腰 〜つづき〜
【例2】2階でギックリ…… 2階を住居にし、1階は仕事場という家でのこと。奥さん45歳、子どもを学校に送り出し、古新聞を片づけようとし、束ねたものを持って階段を下りようとしたとき、ギク! 束を放し、かろうじて這って戻ったがもう動けない。
ご主人からその旨電話があったので駆けつけてみると、もうどうにも動けない。必死に這い上がって布団に寝ることはできたが動けないと嘆く。ここでも基本的には、
①腹部が硬いので、外腹斜筋の操作を中部、下部について行う。
②腹直筋は、胸部肋間神経から胸骨の剣状突起に始まり、恥骨上縁に着く。
これを触診しながら腕の角度で上部を、続いて足首の動きから腹直筋下部の操作をする。患者は何もなかったかのように、腰、首を動かせるようになった。…これは首の動きも良くする。

ギックリ腰といえば急性症状だが、決して急性ではなく前から予定されていたと筆者は考えている。ふつうは朝方に惹起することが多いのだが、それではいつ“予定”されていたのだろうか。逆説的になるが、ヒトは寝ているときが一番疲れる。腰の悪い人は明け方によく足が攣(つ)れる。また朝起きるとき腰がどうも重い。これでは会社へ着いて重いものを持ってギク! は十分ありうる。
寝る姿勢を診てほしい。仰向けに寝ても、横向きに寝ても、指が開かないはずである(フィンガースケール=文末参照=で確認)。事実、疲れの残ったままの身体で中腰になったり、重いものを持つのはきつい。
運動をするときは柔軟体操をはじめにするが、ふつうはしない人が多い。朝、トイレ操体法(大腰筋の自療操体法)をすることをお勧めする。肩の角度を変えてみると外腹斜筋も調整される。便通もよくなる。(つづく)

■フィンガースケール(開指計測器)とは…
ひとつの操作が終わった時点で、患者の五指をいっぱいに開かせ、母指尖から小指尖までの開指角度を見る器具として使われる。このスケールがなくても術者の開指を基準にして判断することもできる。開指角は、歪源を解消する連動があるところまで到達したときに急に拡大する。このときから良い連動が始まる。十分に連動ができると開指角は大きくなり、患部の愁訴は消失し、動作が楽になる。(だいたいの目安は130-150°)
この開指角は、患者の歪体の状態や姿位・姿勢などにより頚髄神経へ連動し変化する。また個人差もあるので絶対値としての評価はできないが、操体の効果度や条件負荷時(悪い姿勢)などを知る上では有効かつ手短な計測方法と言える。


**** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■<インフル退治>まず歯磨きから…口内細菌対策


口の中が不潔だとタミフルなどのインフルエンザ治療薬が効きにくくなる可能性があることが分かり、落合邦康・日本大教授=口腔細菌学=らの研究チームが近く、高齢者を対象に検証のための疫学調査を始める。歯磨きの徹底など日常生活の注意で、インフルエンザを予防したり、重症化を防いだりできる可能性があるという。
インフルエンザウイルスは、細胞内に入り込んで増殖し、他の細胞に感染を広げる際、ウイルス表面の酵素「ノイラミニダーゼ(NA)」を使って、自身を細胞表面から切り離す。タミフルやリレンザなどはNAの働きを妨げることでウイルスの感染拡大を防ぐ。
チームのこれまでの研究で、歯垢に含まれる2種類の細菌がNAを作り出し、ウイルスの増殖を助けることが分かった。インフルエンザウイルスに感染させた細胞に細菌の培養液を加えると、細胞からのウイルスの放出量が21〜28倍に増え、リレンザやタミフルを投与してもウイルスの放出量は抑えられなかった。
インフルエンザウイルスはのどや鼻の奥で感染、増殖する。落合教授は「感染部位が口と近いことを考えると、口の中の細菌が感染の進行に関与していることは十分に考えられる」と話す。チームは今季のインフルエンザ流行中に、協力病院や介護施設の高齢者から口の中の細菌を採取し、口腔ケアとインフルエンザ感染の関係を調査する。口内細菌は近年、糖尿病の悪化や誤嚥性肺炎の要因になっていることが指摘されるなど、他の病気との関係が注目されている。(毎日新聞 2/15)


NEWS ■「高価な薬」というプラセボ……パーキンソン病患者


パーキンソン病患者を対象とした小規模研究で、薬剤価格によってプラセボ効果に違いがあることが示され、「Neurology」オンライン版に1月28日報告された。この研究では、12人の患者に対してプラセボ2薬を1剤ずつ、時間をおいて投与した。どちらの注射薬も実際には生理食塩水だったが、患者は一方の薬剤は1回分1,500ドル(約17万6,000円)の新薬であり、もう一方は1回分100ドル(約1万2,000円)だと告げられた。医師は患者に、どちらの薬剤も同様の効果があると断言していた。
その結果、高価な薬剤を投与されていると告げられた場合、投与後4時間にわたって振戦、筋固縮などの症状の改善が大きくなり、MRIでも患者の脳活動に違いがみられた。
これらのプラセボではパーキンソン病の標準薬剤であるレボドパほどの効果は得られなかったものの、高価なプラセボの効果は、レボドパと安価なプラセボの中間に位置したという。さらに、高価なプラセボを投与した時の患者の脳活性はレボドパと同様であったという。
研究を主導した米シンシナティ大学医学部のAlberto Espay氏によると、パーキンソン病の場合、プラセボ効果は脳が化学物質ドパミンを放出することによって生じると考えられるという。パーキンソン病はドパミンを産生する脳細胞の機能不全によって生じるが、一方で脳は「治療によって症状から解放されるかも」といった報酬を期待したとき、ドパミンを大量生産する。今回の知見は「期待」が重要な役割を果たすことを示し、患者が「薬」を信じているかぎり、効果は保たれると同氏は考えている。(HealthDayNews 2/7)


NEWS ■介護報酬2.27%下げ 認知症など在宅に重点


厚生労働省は2月6日、社会保障審議会の分科会を開き、平成27年度から3年間、介護事業者に支払う介護報酬の具体的な改定内容を決めた。高齢化の進展で施設による受け入れには限界があることを踏まえ、介護の中心を住み慣れた自宅に誘導するため、介護の必要度が高い要介護者や認知症高齢者の在宅支援に重点配分した。一方、利益率が高い特別養護老人ホーム(特養)などの基本報酬を軒並み引き下げた。
介護報酬は3年に1度改定する。政府は27年度改定で膨らみ続ける介護費を抑制するため、平均単価を9年ぶりに2.27%引き下げた。介護報酬は基本報酬に各種の加算を上乗せする仕組み。
在宅支援のうち、訪問介護は重度の要介護者を重点的に受け入れ、介護職員も拡充した事業所に「特別事業加算」として上乗せする。通いを中心に宿泊などを組み合わせる小規模多機能型居宅介護では、高齢者宅への訪問サービスを充実させれば加算する。
基本報酬は特養が5%超、小規模な通所介護(デイサービス)は9%前後など大部分のサービスで減額とした。事業者側は職員を増やしたり、終末期の「みとり」ケアの体制を強化したりして加算を上乗せすれば、現行の収入を維持できる場合もあるが、加算の程度によって利用者負担が軽くなるケースもある。人手不足の介護職員の処遇改善加算(1人当たり平均月1万2千円)も拡充する。労働環境を改善した事業所が対象となる。(産経新聞 2/7)


NEWS ■階段使用時の膝の痛みは関節炎の初期徴候


階段を使うときの膝痛は、関節炎の初期徴候である可能性があることがわかった。英リーズ大学筋骨格系医学教授のPhilip Conaghan氏らの研究で示唆された。研究論文は「Arthritis Care & Research」1月号に掲載された。今回の研究は関節炎リスクの高い4,600人超を対象として、最長7年間の追跡調査を実施した。その結果、初期の膝関節炎患者が最初に痛みに気づく体重負荷活動は、階段の使用だった。その後、歩行時、立位、臥位または座位で痛みが発現し、最終的に就寝時も痛みが出現するようになる。
Conaghan氏によると現在、「初期」変形性関節炎という概念はほとんどなく、長期にわたる著しい疼痛と機能喪失が認められる患者のみを診察することが多いという。「今回の研究は、変形性膝関節炎の初期症状を解明するうえで重要である。これを知ることは早期介入に有用であり、おそらくこの非常に痛みの強い疾患を治療するための一層有効な方法につながるだろう」と同氏は述べている。(HealthDayNews 1/22)


NEWS ■運動不足は肥満よりも危険


座ってばかりの生活は、肥満の2倍有害である可能性が新たな研究で示された。研究の筆頭著者である英ケンブリッジ大学のUlf Ekelund氏は、「運動不足の人は、運動量をわずかに増やす努力をするだけで大きな健康効果が得られる」と述べている。このリスク低減は、正常体重、過体重および肥満のいずれの人にも認められたという。
今回の研究では、33万4000人の男女のデータを収集。平均12年の追跡期間中、被験者は身長、体重、胴囲を測定し、身体活動レベルを自己申告した。その結果、全く運動しない場合に比べ、中程度の運動が早期死亡リスクを低減する鍵となることがわかった。1日に90〜110カロリーを消費する運動により、早期死亡リスクを16〜30%低減できると研究グループは推定している。
中等度の運動による効果は正常体重の人で最も高かったが、過体重および肥満の人にも便益が認められた。最新のデータを用いると、ヨーロッパの男女において920万件の死亡のうち33万7,000件が肥満に関連するものであると推定されたが、運動不足に関連すると思われる死亡数はその2倍であったという。
「ヒトの身体をみると、骨や筋肉は不規則な変わった形をしている。この筋骨格の構造から、人体は動くためにできていることがわかる」と、米ニューヨーク大学メディカルセンターのSamantha Heller氏はいう。人体の運動への適応力は驚くべきものであり、有酸素運動は免疫系を刺激し、精神機能を向上させ、エネルギーを増大させ、筋肉や骨を強化し、心疾患、がん、糖尿病などの慢性疾患リスクを低減すると同氏は指摘している。(American Journal of
Clinical Nutrition 1/14)


NEWS ■親に自殺未遂経験があると子どもの自殺企図リスクも上昇


自殺未遂経験がある親を持つ子どもは、そうでない場合に比べて自殺未遂のオッズ比が5倍高いことが新たな研究でわかった。米ピッツバーグ大学医療センターのDavid Brent氏らの研究結果。今回の研究では、うつ病または双極性障害などの気分障害のある親334人と、彼らの子ども700人超を調査・追跡した。子どもの年齢は10〜50歳だった。調査の結果、親のうち計191人は過去に自殺未遂をしていた。子どものうち44人には自殺未遂の経験があった。6年近くの追跡調査期間中に、さらに29人の子どもが自殺しようとした。子どもの自殺企図歴は、親子に共通して存在する可能性のある気分障害を全て考慮しても、親の自殺企図経験と強く関連していた。
「衝動的な攻撃性」などの行動が気分障害と密接に関係しており、この行動を標的とすることで、家族性リスクの高い若年者の自殺未遂に予防的に介入できることも判明した。別の専門家は、うつ病や双極性障害の既往がある親は子どものリスクを認識すべきだとしている。前兆である「衝動的な攻撃性」は見過ごされがちだが、自殺リスクを高める可能性がある。そのため子どもが感情を調節するための良い方法を学べるよう、治療を受けることが重要だと述べている。(JAMA Psychiatryオンライン版 1/12)


NEWS■コーヒー豆に鎮痛作用のペプチドを新たに発見、


ブラジル農牧研究公社(Brazilian Agricultural Research Corporation、Embrapa)とブラジリア大学は1月24日、コーヒーに鎮痛作用のあるペプチド(タンパク質の破片)の含有を確認したことを発表した。このペプチドは、モルヒネに似た効果を持つという。
Embrapaによると、同社の遺伝・バイオ技術部とUnBの科学者からなるチームは先ごろ、鎮痛や穏やかな鎮静作用のある性質を持つ、これまで知られていなかったオピオイドペプチドを発見したという。また、実験用のマウスを使った実験の結果、見つかったオピオイドペプチドの持続時間がモルヒネよりも長いとみられることも分かった。
今回の発見についてEmbrapaは、健康食品業界にとってバイオ技術面での新たな可能性を与えるものであり、また他方では、食肉処理される家畜のストレス軽減にも応用できるかもしれないと期待を寄せている。EmbrapaとUnBは、品質向上を目的にコーヒー豆の研究を続けている。Embrapaは、2004年にコーヒー豆のゲノムの解析に成功していた。(時事通信 1/26)


NEWS ■温泉療法でうつや睡眠も改善


12日間の温泉治療プログラムにより、健康な高齢者の疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態が有意に改善したことが示された。スペイン・ハエン大学のPedro Angel Latorre-Roman氏らが、52例の高齢者を対象に試験を行った結果を報告した。
検討は、スペイン国内の複数の地域から高齢者52例を集め、政府機関Elderly and Social Servicesが作成した水治療(hydrotherapy)プログラムに参加してもらい評価を行った。参加者には12日間の温泉治療プログラムを提供。疼痛は視覚的アナログスケールを用いて、気分状態はProfile of Mood Statusを用いて、睡眠はOviedo Sleep Questionnaire、抑うつ状態はGeriatric Depression Scaleを用いて評価した。
温泉治療プログラムは、スペイン・ハエンにある温泉付きホテルで行われた。同ホテルの温泉は、スペインミネラル水ハンドブックによると、低温(20℃以上)に分類され、重炭酸塩、硫酸塩、ナトリウム、マグネシウムを豊富に含む中硬水のアルカリイオン水であった。主な結果は以下のとおり。
・参加者52例の内訳は、男性23例(年齢69.74±5.19歳)、女性29例(同:70.31±6.76歳)であった。
・温泉療法は、全被験者のすべての変数(疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態)を有意に改善した(p<0.05)。
・疼痛の改善については性差がみられた。治療後、男性では有意な改善(p<0.01)がみられたが、女性ではみられなかった。
・気分状態の改善についても性差がみられた。女性では抑うつ症状と疲労感の両者で有意な改善(p<0.05)がみられたが男性ではみられなかった。
・12日間の温泉治療プログラムは、健康高齢者の疼痛、気分、睡眠の質、抑うつ状態にポジティブな効果をもたらすことが示唆された。
(Psychogeriatrics誌オンライン版 12/30)


■次号のメールマガジンは2015年3月10日ごろです。お楽しみに。(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ