エンタプライズ発信〜メールマガジン【№43】2014. 11

「グループウォーキング」がストレス解消に効果があるという研究結果が最近発表されました。カラダを動かすことにより脳内で分泌されるのがセロトニンやエンドルフィンです。これらは人間の快適さや安らぎといった状態と関連が深く、「幸せホルモン」と呼ばれていることはご存知だと思います。このホルモンは軽い運動によっても分泌され、感情にポジティブな影響を与えると言われています。一人よりもグループ、あるいはパートナーと二人でウォーキングすることは、肩を並べて歩く協同という親しみと、部屋から出て自然空間の中で心をオープンにすることにもつながります。日本ではまだ馴染みがないですが、「walk and talk」という心理療法が増えているのもこのためです。ただウォーキングによる有酸素運動という意味では、隣に他者がいると自分に合った歩きスピードが(遠慮が生じ)自由にできません。速歩が運動機能を高めることも事実だからです。この辺の折り合いをつけるには、歩く距離の半分はグループウォーキング、残り半分はマイペースによるトレーニングと分別し、ゴール地点でまた合流しクールダウンするというのがコミュニケーションと言えそうですね。

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

TOPIC
【1】新連載/エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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【TOPIC】

「咬合と全身」=顎口腔医学の実践へ発信基地を開設(東京)

小社刊『図説 直立動態と心身症状』の著者・臼井五郎氏(歯科医師)、編著者の一人である吉田和生氏(動的平衡・顎口腔医学研究会会員、歯科医師)が、本書のメソッドである顎口腔医学(スウィング歯科医療)の実践体系化に向けて、このたび東京・神田駿河台に“発信基地”を開設しました。JR御茶ノ水駅から徒歩約3分、デンタルクリニック「キャビネ・ダンテール御茶の水」内において、紹介患者限定、完全予約制、保険外診療のみで、当面月2回・日曜日に診療します。直近の診療日は11/30、12/14、12/28(いずれも日曜日)、診療時間10:00〜17:00(最終入室16:00)です。ヒトの「直立=動的平衡」「咬合と全身」に着目したスウィング歯科医療に関心のある方はお問合せ先に連絡を。

<キャビネ・ダンテール御茶の水>
東京都千代田区神田駿河台1-5-5 レモンパートⅡビル2階
・お問合せ キャビネ・ダンテール御茶ノ水
(月−金10:00〜19:00)
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◎新連載

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


早すぎる分野 (はじめに)

“早すぎる発見というのは、一般常識の範囲の知識では理解できない発見のことだ。”—-G.ステント(1972)

どの時代にも早すぎる発見というものがある。それは単にその時代の常識では理解できなかっただけのことだ。「生命力」や「治癒力」という概念は何百年も前から折に触れ注目されてきたが、最近になるまでずっと早すぎる概念でありつづけてきた。
しかし時代は変わった。以前は、不可能であるとか、あり得ないとみなされてきたエネルギー現象が、確かな根拠によって不可能ではないと証明されてきたのだ。科学者たちは、生体のエネルギーと一般的な科学的知識とを結びつける、適切で分かりやすい仮説を導き出した。重要な発見は、標準的な手法と理論に基づくさまざまな分野の日常的な科学研究の中から生まれた。しかし治癒力や生命力をテーマにした研究は、そのテーマだけで偏見を受け続けてきたために、真の科学の革命は、科学者たちがほとんど知らないところで起きたのである。願わくは近い将来にすべての科学者たちが生体エネルギーの重要性に気づき、新しい研究や治療法の可能性に目を向けてもらいたいと思う。

はじめに、今日までの生体に関わる重要なエネルギーの発見を概観してみたい。
1)20世紀前半、生体の種々の臓器・器官から電気が発生していることと、その電気を体外から測定できることが発見された。この発見から、心電計や脳波計などの重要な検査器械が開発された。

2)生体組織に電流が流れているとすると、物理学の法則によれば、周囲の空間には磁場が生じていることになる。しかし生体磁気を検出することができたのは、1950年代に入って高感度の検出装置が開発されてからのことだった。現在では、スクイド磁気計測器が世界中の医学研究で使用され、各臓器・器官から発生する生体磁気の微妙な変化を観察するのに役立っている。

3)医学の世界では、電気や磁気によって治癒を促進する方法が研究されており、磁気パルスがとくに有効であることがわかってきた。驚くべきことに、一定の条件下では人間の手からも磁気パルスが発生する。この自然の磁気の周波数は、治療効果が確認されている周波数域と一致する。また人体から発生する磁気は、地磁気の活動リズムの影響を受け、脳波などの生体リズムが地球のリズムと同調化することもある。この現象は、物理学的法則で表現できる限界レベルのエネルギーにも生体が反応するという発見によって裏づけられた。環境から抽出された情報はほとんどノイズに妨害されることなく、生体マトリックスや神経系によって処理される。(つづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』小社刊2004)


★連載エッセイ ⑪☆

“こころ” と “からだ”  …… 臨床にモノ思う。

保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


緊張の「糸」を切り離そう!

腰痛や肩こり、関節痛など体の不調は、何らかの「緊張」から生じることが多いようです。
「緊張??? 緊張している感じはないけど……」
「あまり人前で緊張することもないし、不安もないけど……」

『緊張』が一つの原因のプロセスになっていると言われると、上記のように考える人も少なくはないかもしれませんね。ここで言っている緊張とは、意識して分かるレベルの緊張のことではありません。それは、無意識に、あるいは自動的に体に生じている微細なレベルの「緊張」のことを述べています。
力を抜いているかのように見えても、実はとても微細なレベルで筋肉が自動的に緊張したままになっています。そして、その緊張はあたかも「糸」で引っ張られているかのように身体の柔軟性を制限しています。つまり、身体は目で見てもわからないレベルで制限され、自由に、スムーズに、しなやかに動かせていない状態になっているのです。

その自由な動きを制限する「糸」の多くが「感情」と関連しています。
「え、感情???」
身体の緊張が「感情」とどのように関係するのか不思議に思われる方も少なくはないかもしれません。しかし、「感情」すなわち「心の動き」と「身体の動き」は密接に関係しあっているのです。だからこそ、身体を「感情」と関連付けて治療を施すことで、その「糸」が切り離されて、本来の自由な身体の動きを取り戻すことができます。

「コリ感」や「関節痛」、あるいは「疲れ感」を感じたら、何らかの「糸」によって制限されているかもしれません。その「糸」に関連する感情は、「仕事関係」や「家族関係」、あるいは「飲食関係」や「未来関係」につながったりしているのです。心身条件反射療法ではそのような関係性をひも解いて、症状の改善に努めています。


《 連載25 》

伝統医学をシルクロードに求めて

       池上正治(作家・翻訳家)


南医vs北医から「東医」へ(つづき)

中国の諺に「ベトナム人は薬の山の下で死ぬ」というものがある。これは、ベトナムに生育している数多くの薬用植物が十分に使いこなされていないことを、多少の羨望の気持ちをこめて皮肉ったものである。ただそれなりの理由はある。というのは、中国とベトナムでは気候や動植物相が異なっており、「北医」をそのまま機械的にベトナムの地に適用することはできなかったからである。ベトナムの医師たちは薬材の多くを中国からの輸入に頼っていたが、逆に、中国でもベトナムの薬用植物を不可欠のものとしていた。
ベトナム人が自身の体質に合ったベトナム-中国医学を創り出したのは15世紀あたりとされている。中国語と字喃(チュノム;民間ベトナム語)とを併用して書かれた15世紀以後の医学書には、ベトナム人の体質に完全に合った薬材と治療法が考証されている。それはちょうど、ルネッサンス時代のドイツ人医師が、それまでの地中海やアラビア地方の薬用植物に替えて、ヨーロッパ北部および中央部の薬草によって患者を治そうと努めたことに似ている。

漁師や樵(きこり)が医学を自分のものとする

1822年、グエン・ディン・チウ(阮廷炤)はベトナム南部のジア・ディンに生まれた。当時のベトナムでは、最後の王朝となる阮朝のもとで、中国に倣った官吏登用の試験制度、科挙が行われていた。21歳で秀才に合格したグエン・ディン・チウは、1849年、中部ベトナムのホエに行き、来るべき挙人(きょじん)の試験に備えていた。その試験が間近に迫ったある日、彼のもとに母の訃報が届いた。彼は母の葬儀に間に合うようにと、大急ぎで故郷へと出発したが、あまりの悲しみのために、帰途、遂に失明してしまったと言われている。
挙人の試験を受けられず、また失明した以上、士大夫として登用の道を閉ざされたグエン・ディン・チウは、郷里で私塾を開き、青年を教えて、ドー・チウ(チウ先生)と親しまれるようになった。チウ先生の名声を慕って、この私塾にはベトナム各地から生徒たちが集ったという。

冬ともなれば、西風(かぜ)だ雨だと、天気は悪い
民の疾病(やまい)を診るのは、先生の仕事
王は治め、民は従うのは昔からの慣習(ならい)
老いも若きも、その命は私の掌中にあるようなもの
戦場で国の運命は決まり
(医者の)兵法には、木と草(みょうやく)とがある
それを知りたい者は、私のところに来るがよい
——-「医師自述」

こうして始まる『漁樵問答(グウテイウヴァンダブ)』をグエン・ディン・チウが著したのは盲目になってからのことである。(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(18)

   長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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■複雑な固定術を必要とする脊柱管狭窄症がわずか6年で15倍に増加したとは考えられない。脊椎分野のオピニオンリーダーの影響や思い込み、経済的利益などの要因が関与している。正確な情報を与えられれば患者は低侵襲性のリスクの小さい手術を選択するだろう。http://n.pr/8XAf9S
……独りよがりなのかもしれませんが「医は仁術なり」という格言は現代でも通用すると考えています。病名を増やして弱者を食い物にすることに大きな疑問を感じます。正確な情報が広く国民に伝わることを切に願っています。

■fMRIを用いた研究によると、痛みに関連した言葉とイメージを思い浮かべると脳のペインマトリックスが活性化するが、注意を逸らせると活性レベルが低下した。ゆえに、痛みをくよくよ考えたり頻繁に話題にしたりする患者は自ら症状を悪化させている。http://1.usa.gov/kRj6OS
……慢性疼痛の治療には言葉とイメージがとても大切です。だからこそ、医療関係者は不安と恐怖をあおるような説明を避けるべきなのです。安心と勇気を与えましょう。

■腰痛分野の研究はこの20年間で目覚しい進展がみられ、腰痛疾患の疫学や理解が進んだにもかかわらず、腰痛の臨床転帰や活動障害の予防に改善は認められない。集学的チーム医療が行なわれていないからだ。このままでは急速な進歩は見込めない。http://1.usa.gov/kLP8z6
……これは変化を怖れるという人間の本能的な心理も働いているのかもしれません。医療関係者はこの恐怖心を克服して、新しい腰痛概念を臨床現場に導入していただきたいと願うばかりです。

■「激しい」「突き刺ささる」「ヒリヒリする」などの言葉で頭を満たした場合、レーザー光による熱刺激に対する感受性が増大して疼痛感覚が増強される。痛みに関連した言葉と疼痛刺激が組み合わさるとプライミング効果で疼痛体験が雪だるま式に膨れ上がる。http://1.usa.gov/mFRvuz
……症状に注意を集中するのはよくありません。「多くの場合、その効果が無意識的である点、およびかなりの長期間(例えば1年間)にわたり効果が持続する点、記憶に障害を受けた者にも無意識的なプライミング効果は損なわれずにある(機能し続けている)点に、この現象の面白さがある」って怖いじゃないですか。http://bit.ly/13qgOQk

■坐骨神経痛に対する椎間板手術は、保存療法よりある程度の優位性を示すものの一過性でしかない。ノルウェーのRCT(ランダム化比較試験)では1〜4年間優位性が持続したが(http://1.usa.gov/lflO3P)、オランダのRCTでは1年未満だった(http://1.usa.gov/l8WVTV)。
……椎間板ヘルニア手術の短期成績は比較的よいのですが、長期成績はといえば保存療法と変わりません。それでも手術を選択しますか? 手術は世界各国の腰痛診療ガイドラインが勧告している保存療法を試してからでも遅くないと思います。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (43)

       根本 良一(療動研究所主宰)


【 連動操体法の応用編 】
1.足首、腓腹部の異常(つづき)

7)靴を選ぶ

今や、靴は生活の大部分を占めており、生活の靴、スポーツの靴、仕事の靴など、足とのつきあいは多様化している。そうした生活の場で、足と地面に介在して、いかに足をいたわるか、身体をやさしくサポートしてくれるかが靴の役割である。靴を選ぶにあたっては以下の要素が大事である。
①形がよい。
②履き心地がよい。足先の形、適度の広さ
③身体にやさしい、足底の当たりがよい
④価格が妥当である。

8)足首の痛み、捻挫、突き趾

足首の痛みというと、立つとき、座るとき、歩行するときの問題がほとんどである。局所に炎症はないか、損傷はないか、あればその手当てをする。炎症と損傷がなければ、次のような操体診断を行なう。
①足指をまわす:どの操作をする場合でも、足指を気持ちのよい方、柔らかにまわる方へまわすと、それ以降の操作をしやすくする。
②姿勢に関わる腰からの影響で、足首を取り巻く筋が硬くなったときに起こる2つの状態。
・腓腹部が硬い:内腿部から殿部の梨状筋が緊張しているから、坐骨神経の脛骨神経から処理する。
・腓腹筋かヒラメ筋が硬い:触診しながら、足首をラクな方へ動かし、適した補助動作を添える。
③腰の状況を見る:大腰筋は? 腹部の外腹斜筋は? 動作分析または大腿二頭筋、腹部の触診をしてみる。
④足指基部からの影響を見る:動作分析から足指の屈診をし、そのとき局所の痛みがどうかを診て操作する。
(つづく)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■<糖尿病> 脂肪分の多い食べ物の取り過ぎ…東大チーム


脂肪分の多い食べ物を取り過ぎると糖尿病になる仕組みを、マウスを使った実験で解明したと広川信隆・東京大学特任教授(細胞生物学)のチームが米科学誌デベロップメンタル・セルに発表した。この成果を応用し、既存の胃潰瘍の薬に治療効果のあることも確かめた。今後、人での有効性を検証していく。
チームは、45種見つかっている「分子モーター」と呼ばれるたんぱく質のうち、働きが謎だった「KIF12」をマウスで調べた。その結果、KIF12は膵臓と腎臓に多く分布していることが判明。その働きを失わせると、血糖値を下げるインスリンを分泌する膵臓の細胞で、細胞内の反応を調整している小器官の働きが損なわれ糖尿病を発症した。脂肪分の多い食べ物を与えたときも、KIF12が減少し、同じ小器官が働かなくなり糖尿病を発症した。
この過程に関与するさまざまな物質の構造から、胃潰瘍の薬テプレノン(商品名セルベックス)が有効と考え、2週間投与するとインスリンの分泌量がほぼ正常なマウスと同じになった。広川教授は「KIF12は人にもある。テプレノンが、糖尿病の治療薬や予防薬として使えるか調べると同時に、明らかになった仕組みを活用し、より効果のある薬剤を製薬会社と協力して開発していきたい」と話す。(11/4 毎日新聞)


NEWS ■プラセボ治療で子どもの咳がとまる


幼児に天然甘味料のアガベネクターまたは風味と色をつけた水のプラセボを投与すると、どちらも、何も投与しない場合よりも咳症状の軽減に役立つことが新たな研究結果でわかった。
米ペンシルベニア州立大学医学部のIan Paul氏らの研究で、Paul氏らは明確な原因疾患がないと思われる夜間の咳が1週間以内に始まった4歳未満の小児120人を対象に、3種類の治療を比較した。40人には治療を行わず、40人にはプラセボ(カラメル色をしたブドウ味の水)、40人にはZarbees社の低温殺菌したアガベネクターを投与し、保護者が治療前後の夜の症状を報告した。同社は今回の研究の資金を提供している。
その結果、アガベネクターおよびプラセボを使用した小児では治療しなかった小児よりも咳の頻度が少なく、重症でなかった。アガベネクターではプラセボを上回る便益はみられなかった。Paul氏は、「甘い液体の“プラセボ”投与は、不必要で悪影響を及ぼすことすらある抗生剤を投与するよりも、家族や小児に好まれる可能性がある」と結論している。(10/27 JAMA Pediatrics)


NEWS ■<混合診療> 高リスク治療は15病院に限定


厚生労働省は10月22日、公的な医療保険が利用できる診療と、保険外の自由診療を併用する「混合診療」に関し、国内での投与実績がない抗がん剤新薬の投与や医療技術などのリスクが高い治療については、臨床研究で実績がある東大病院など全国15カ所の中核病院に限って実施できるとする案を、中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)に提示した。
中核病院は患者が医師と相談の上で診療を申し出たら国に実施を申請、国は診療の安全性などを審査し、可否を判断する。リスクが中程度の治療については、全国約80カ所の医療機関でも、中核病院が診療体制などを審査した上で実施できるとした。一方、美容目的のように将来的にも保険適用の見込みがない治療は混合診療の対象外とした。
限定案は、政府が混合診療の拡充策として成長戦略に盛り込み、平成28年度の導入を目指す「患者申出療養制度(仮)」の骨格。制度の導入により、がんなどの難病患者が希望すれば、迅速に未承認薬が使用できるようになるなど治療の選択肢が広がる。
厚労省は年内に制度設計をまとめ、来年の通常国会に関連法案を提出する。中核病院は次の通り。北大病院(北海道)、東北大病院(宮城)、群馬大病院(群馬)、千葉大病院(千葉)、国立がん研究センター、東大病院、慶応大病院、国立成育医療研究センター(以上、東京)、名大病院、国立病院機構名古屋医療センター(以上、愛知)、京大病院(京都)、阪大病院、国立循環器病研究センター(以上、大阪)、岡山大病院(岡山)、九大病院(福岡)=(10/22 産経新聞)


NEWS ■週100球以上の投球で肩障害リスク〜10代スポーツ選手


若いアスリートが週100球以上の投球をすると、肩峰のapophysiolysisという痛みを伴うオーバーユース障害のリスクが生じ、これが正常な肩の発達を妨げ、腱板断裂など他の障害につながる可能性があることがわかった。米トーマス・ジェファーソン大学病院のJohannes Roedl氏らの研究報告。
肩峰は思春期に4個の骨が癒合して発達するが、25歳未満の肩峰のオーバーユース障害は後の不完全な癒合に関連するという。Roedl氏らは、肩痛を訴えて1988〜2012年にMRIを受けた15〜25歳の男女2,372人の記録を検討した。ほとんどが野球またはソフトボールの投手で、3%近くに肩上部の痛みを認め、肩峰の癒合が不完全であった。
この患者群と無症状群を比較し、投球歴を調べたところ、練習と試合における100球超えのオーバーヘッドでの投球が症状発症の大きな危険因子であることがわかった。患者群では40%が週100球超を投げており、対照群では8%のみだった。障害のある選手は全員3カ月間投球を休み、1人は手術、残りは非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けた。
少なくとも2年以上経過し、選手が25歳以降になってから、MRIまたはX線画像の撮影を行った。その結果、肩峰の不完全な癒合が障害のあった選手の86%で見られたが、健康な選手では4%のみだった。患者群の3分の2超、健康な群の29%に腱板断裂が見られた。断裂は、患者群のほうが重症だった。
Roedl氏は、「子どもにスポーツをさせることは推奨するが、同じ運動を繰り返させないことが大切だ」とアドバイスしている。(10/14 Radiologyオンライン版)


NEWS ■<脳脊髄液減少症> 労災認定は33件


交通事故で頭を打つなどして脳脊髄液が少なくなる「脳脊髄液減少症」が2012年6月以降、労働災害として認定され、今年3月までに計33件に上ることが分かった。脳脊髄液減少症患者・家族支援協会(中井宏代表)が10月14日、厚生労働省労災補償部が調べた数字として公表した。協会によると、同症状の労災認定数が明らかになったのは初めて。
厚労省や協会によると、12年6月に、同症状の治療法のブラッドパッチ療法が「先進医療」に承認され、保険適用が始まったことをきっかけに労災に認定されるようになったという。
中井代表は「以前はほとんど労災に認定されることはなく、これだけの数が認定を受けているのが分かったのは大きい。労災の認定に準拠している自賠責保険などにも影響するだろう」と話した。(10/14 毎日新聞)


NEWS ■高齢者、アクティブPTを受けるほど疼痛改善


アクティブな理学療法(PT)を受けるほど、患者の疼痛強度は改善することが、米国・ワシントン大学のSean D. Rundell氏らが3,771例を対象に行った前向きコホート研究の結果、報
告した。ただし結果については慎重に解釈する必要があるとしている。高齢者において、どのようなPTをどれくらい実践すれば腰痛症や身体機能と関連するかは明らかとなっていない。研究グループは、それらの関連を明らかにするため1年間にわたる検討を行った。
検討は、腰痛症で一般医を新規に受診した3,771例の高齢者を登録して行われた。12ヵ月間のPTの利用を電子ヘルス記録から調べ、患者の自己申告によるアウトカムデータ(腰部関連障害:ローランド・モリス障害質問票、腰痛・下肢痛強度:11ポイント評価尺度で評価)を集めて検討した。
周辺構造モデルを用いて、PT利用量別効果の平均値を、患者の障害程度、疼痛強度、アクティブ、受動的、徒手的のPT別に算出した。主な結果は以下のとおり。
・被験者の1,285例(34.1%)が、何らかのPTを受けた。
・PT利用と腰部関連障害スコアについては、統計的に有意な関連はみられなかった。
・受動的および徒手的PTの利用は、疼痛アウトカムと関連性が認められなかった。
・アクティブPT利用が大きいほど、利用のなかった患者と比べて、腰部(p=0.023)および下肢(p<0.001)の疼痛低下との関連が認められた。また、腰部および下肢の臨床的に意味のある改善オッズの増大も認められた(それぞれp=0.001、p<0.001)。
・なお本検討は、高レベルのPT利用者が少なかったこと、利用量に関する非線形関係の検定の精度および検出力に限界があり、結果は限定的なものであり、著者は「慎重に解釈すべき」としている。(10/2 Physical Therapy誌オンライン版)


NEWS■ ウォーターサーバーの注ぎ口は細菌だらけ!?


今ではほとんどのオフィスで見かけるウォーターサーバーや無料ベンダー。しかし、最近報告された麻布大学の古畑勝則教授の調査によると、検査した家庭や会社の約30%のサーバーの水が、水道水の基準細菌数を上回ったという。健康被害を及ぼす細菌に詳しいFCG総合研究所の橋本一浩氏はサーバーの危険性をこう指摘する。
「カルキ臭が嫌だからとミネラルウォーターを飲む人がいますが、そもそもカルキは微生物を殺菌するために入っているもの。常に外気にさらされているウォーターサーバーの注ぎ口には、ばい菌やカビの温床となる『バイオフィルム』ができやすい」
「注ぎ口や受け皿のメンテナンスを怠れば水垢やカビが発生するし、受け皿の水が腐れば異臭が発生することも。不衛生なサーバーの水を口にしたからといって、直ちに健康に害が出るわけではありませんが、病原性を持つ細菌やカビが口に入ってしまう可能性は十分にあります。絶対に安全、とは言いきれません」
飲み物といえばペットボトル飲料も要注意。デスクに飲み残しのペットボトルを置き、翌日も飲むなどもってのほか。『病気にならない新常識72』の著者・秋津医院院長 秋津壽男氏も警告する。「開封後は早めにお召し上がりくださいと表記していますが、『直接口をつけて飲んで1日経つと食中毒を起こす可能性がありますが責任は取りません』と読んだほうがいい」(10/2 spa!)


NEWS ■痛風が糖尿病リスク上昇に関連


炎症性関節炎の一形態である痛風が、特に女性では2型糖尿病リスク上昇に関連することが新しい研究で示された。「痛風は、肥満などの他の糖尿病リスクファクターとは独立して、糖尿病リスクに寄与していた」と、研究を率いた米マサチューセッツ総合病院(ボストン)リウマチ学・アレルギー・免疫学部門のHyon Choi氏は述べている。
今回の研究では、英国の1995年1月〜2010年5月の健康記録を利用し、新たに痛風と診断された3万5,000人強を、非痛風者13万7,000人強と比較した。痛風患者の約4分の3が男性で、平均年齢は61歳、女性患者の平均年齢は68歳だった。
痛風と糖尿病の関連を独立して考えるために、年齢、性別、また特に肥満について考慮した。肥満は痛風と2型糖尿病に共通したリスクファクターであるためだ。その結果、痛風の女性は痛風ではない女性に比べ、糖尿病発症リスクが71%高いことが判明した。男性でのリスク上昇は22%だった。Choi氏によると、女性痛風患者が糖尿病を発症する絶対リスクは5%で、男性では3%とのこと。
本研究は痛風が糖尿病リスクを高めることを示唆したが、証明したわけではない。Choi氏は、「関連は明らかだが、理由は不明だ。痛風による低レベルの炎症の継続が、糖尿病リスクを高めるのかもしれない。あるいは高コレステロール、高血圧などの両疾患に共通する他のリスクファクターが関与している可能性もある」と述べている。(10/2 Annals of the Rheumatic Diseasesオンライン版)


■次号のメールマガジンは12月1日ごろです。お楽しみに。


[発行]産学社エンタプライズ